相州の、1:1250スケール艦船模型ブログ 主力艦の変遷を追って

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

新着モデルのご紹介:ドイツ帝国大型巡洋艦、英海軍V-W級駆逐艦改造機雷敷設艦、仏海軍練習巡洋艦 など

本稿で(というよりも筆者が)最近、頻度高く取り上げているモデルメーカーのヴァージョン・アップへの対応、あるいは、モデルメーカー間での精度比較、今回は偶然、そういう視点で語るべきモデルがいくつか手元に到着しましたので、そういうお話を。いつものことですが、予告をあっさり反故にしてしまいました。ごめんなさい。

(ひとつ、混乱を避けるために、もしかすると筆者がミスリードしているかもしれないので。本稿で「新着」という言葉を使っている場合、「筆者の手元へ新たに到着したモデル」を意味しています。世に言う「新着≒新発売」ではありません)

 

まず、モデルメーカーのヴァージョン・アップのお題から。

Navis Nシリーズの新着モデル

本稿で最近よく取り上げているNavis製のモデルのヴァージョン・アップ・シリーズ=Nシリーズ(品番にNの記号が入るので、筆者が勝手に名付けています)の新着モデルを2点、今週入手しました。

これまでこの話題はドイツ帝国海軍の前弩級戦艦装甲巡洋艦、英海軍の装甲巡洋艦などの系統的なヴァージョン・アップ対応の試みのご紹介、ということで下記の回で取り上げてきています。せっかくいったん揃えたモデルがこのヴァージョン・アップで一夜にして旧モデル化してしまう、という筆者にとっては(特にお財布的に)大きな試練でもあります。

fw688i.hatenablog.com

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(どこかで一度書いた気もしますが、「ドレッドノート」の登場(1906年)がそれまで営々と整備されてきた、あるいはその時点でも建造の途上にあった所謂「前弩級戦艦・準弩級戦艦」を、一夜にして「旧世代の主力艦:二線級主力艦」に貶めてしまった、そんな現象を思い描いています。kれもどこかで描きましたが、たかがモデルの再現精度なのですが、気になりだすと・・・。一番いいのはNシリーズを入手しないこと。だったんだというのが分かったのですが、入手してから気がついたので)

 

ドイツ帝国海軍大型巡洋艦「ヴィクトリア・ルイーゼ級」(1898年から就役、同型艦5隻)

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 (「ヴィクトリア・ルイーゼ級」大型防護巡洋艦のの概観 89mm in 1:1250by Navis N(=新モデル):下の写真は、同級の上部構造、武装配置の拡大:単装主砲塔、艦橋、舷側の副砲、ボート甲板の細部が丁寧に再現されています )

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同級は舷側装甲を持たない所謂「防護巡洋艦」で、5500トン級の船体に21センチ単装速砲2基と15センチ単走速射砲8基という強力な火力を持っていました。石炭専焼のレシプロ機関から19ノットの速力を発揮できる設計でした。ドイツ帝国海軍では大型巡洋艦と類別され、同艦種は次級以降、舷側装甲を有した装甲巡洋艦「フュルスト・ビスマルク」(1900年就役)「プリンツ・ハインリッヒ」(1902年)へと発展してゆきます。

(両艦については本稿の上掲の回

新着モデルのご紹介:ドイツ海軍装甲巡洋艦のモデル更新状況 - 相州の、1:1250スケール艦船模型ブログ 主力艦の変遷を追って

でご紹介しています)

同時期の帝国海軍の戦艦がバルト海での戦闘を想定した、どちらかというと海防戦艦的な艦容を示していたのに対し、同艦種では高い乾舷を有した長距離航行に適応した航洋性の良好な船体形状を有していました。

後に機関を換装したため煙突数が2本に減少しています。

 (下の写真は「ヴィクトリア・ルイーゼ級」大型防護巡洋艦の機関換装後、つまり二本煙突時期の概観 89mm in 1:1250by Navis (=こちらは旧モデル)

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第一次世界大戦期には、既に旧式艦として第一線を離れ、宿泊艦、練習艦等として利用され、1920年前後に解体されています。

 

新旧モデル比較

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 (上の写真は「ヴィクトリア・ルイーゼ級」大型防護巡洋艦のの概観比較:上段が旧モデルの二本煙突時、下段は就役時(新モデル):下の写真は、旧モデル(左列)と新モデルの細部比較:再現されている時期が異なりますので、ストレートに比較していいものか少し迷いますが、新モデルでは艦橋周りや上部構造、ボート甲板の細部の再現精度が上がっているように思われます )

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英海軍「V-W級」駆逐艦、及び改造:機雷敷設駆逐艦

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「V/W級」駆逐艦第一次世界大戦駆逐艦の決定版

まずは改造のベースとなった「V\W級」駆逐艦についてですが、同級は本稿でも何度かご紹介してきています。

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 (上の写真「V/W級駆逐艦の概観:「アドミラルティV級」だと思われます:75mm in 1:1250by Navis N(=多分新モデル):下の写真は、同級の上部構造、武装配置の拡大 )f:id:fw688i:20220703095645p:image

「V/W級」駆逐艦は、英海軍が第一次世界大戦中に建造した駆逐艦の艦級で、艦名がVまたはWで始まっているところから「V/W級」と総称されています。

同級はドイツ帝国海軍が建造中の大型駆逐艦・大型水雷艇への対抗上から、大型・重武装駆逐艦として設計されました。従来の英駆逐艦の基本装備であった40口径4インチ(10.2cm)砲3門を強化し45口径4インチ(10.2cm)4門とし、さらに連装魚雷発射管2基の標準装備を3連装発射管2基搭載へと、魚雷射線の強化も行われました。(実際には3連装発射管の製造が間に合わず、当初は連装発射管を搭載し就役し、後に三連装に換装されています)

「V/W級」と総称されますが実は大別して下記の5つのサブ・クラス(おお大好きなサブ・クラス!)に分類されます。

アドミラルティV級(28隻:大戦に間に合ったのは25隻)

アドミラルティW級(19隻)

ソーニクロフトV/W級(4隻)

ソーニクロフト改W級(2隻)

アドミラルティ改W級(14隻)

さらに「改W級」では搭載主砲を45口径4インチ(10.2cm)から45口径12センチに強化しています。

 

(「V/W級」駆逐艦(旧モデル)の概観:下の写真は:旧モデル(左列)と新モデルの細部比較。マストの形状の差が目立つ程度で、後はあまり大差ないかと)

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艦隊駆逐艦としては高い完成度を持ち、比較的余裕のある設計でもあったことから、大戦終結後も長く現役に留まり、第二次世界大戦期には装備を改修するなどの手当てを行い数の不足する輸送船団の護衛駆逐艦として多くが使用されました。(この辺りのお話は、ごく最近では本稿の下記の回でも紹介しています)

fw688i.hatenablog.com

 

機雷敷設駆逐艦への改造

V級」の一部の艦は、魚雷発射管の連装から3連装への換装を行う代わりに、連装発射管1基を撤去し、さらに主砲1基も撤去、艦尾形状を整形すると共に機雷敷設軌条を設置して、60基程度の機雷敷設能力を持つ敷設駆逐艦に改造されています。

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 (上の写真「V級」機雷敷設駆逐艦の概観(新モデル):下の写真は、「機雷敷設駆逐艦」に改装された艦の細部の拡大:艦首部の主砲配置は変わらず、魚雷発射管は連装のまま1基のみ搭載、艦尾部は主砲1基を撤去して艦尾形状を機雷敷設軌条等の張り出しを追加しています )f:id:fw688i:20220703100521p:image

新旧モデル比較

 

(上の写真「V級」機雷敷設駆逐艦(旧モデル)の概観:下の写真は、「旧モデル」(左列)と「新モデル」の比較:主砲・魚雷発射管等、兵装の細部の再現性が上がり、艦橋脇の支柱やボート周りも精度が上がっています)

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次に、モデルメーカーの比較を。

仏海軍練習巡洋艦ジャンヌ・ダルク」(Neptun版とTrident版の比較)

今回、Neptun版の「ジャンヌ・ダルク」を入手しました。これまで保有していたTrident版と比較してみましょう。

その前に「ジャンヌ・ダルク」というのはどういう船なのか。

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ジャンヌ・ダルク」は従来は旧式の装甲巡洋艦を士官候補生の遠洋航海訓練の練習艦として使用してきた仏海軍が、初めて練習艦として設計した船です。「デュケイ・トルーアン級」軽巡洋艦タイプシップとして、魚雷発射管等を減らし士官候補生用の居住施設や訓練施設を追加しています。

主砲には新設計の55口径15.5センチ連装砲を採用し、これを4基搭載し、そのほかに7.5センチ単装対空砲を8基搭載するなど、従来の軽巡洋艦に匹敵するものでした。上述のように雷装は減じられましたが、水上偵察機2機と射出用のカタパルトを備えるなど、27ノットに抑えられた速力を除けば、ほぼ軽巡洋艦に匹敵する戦力を有していました。

第二次世界大戦勃発時には大西洋での警戒任務にあたり、独仏休戦協定の締結後(フランスの降伏、戦線離脱後)にはヴィシー政権に従いカリブ海で不稼働状態となりました。1943年に連合国の反攻が始まると自由フランス軍に加わり反攻作戦に参加しています。

 

モデル比較(Trident版とNeptun版)f:id:fw688i:20220703101517p:image

(直上の写真はTrident版練習巡洋艦ジャンヌ・ダルク」136mm in 1:1250:下の写真はNeptun版「ジャンヌ・ダルク」134mm in 1:1250)

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艦尾の形状がやや異なりますが、概観に大差はありません。Trident版では乾舷が高く表現されており、やや客船的なデザインで練習艦らしさが表現されているようです。一方でNeptun版の方がやや低い姿勢で巡洋艦的な表現が表されている、そんなふうに解釈しましたがいかがでしょうか?そして、これは概ね全てのモデルに言えることだと筆者は考えているのですが、Neptun版では細部が繊細に作り込まれています。

(下の写真はNeptun版練習巡洋艦ジャンヌ・ダルク」(左列)とTrident版の比較:乾舷の高さのわずかな違いで随分艦の印象が変わるものですね。主砲塔の表現もかなり異なります。細部の作り込みはNeptun版に軍配が上がると言わざるを得ないかと)

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同価格であれば迷いなくNeptun版を選ぶのですが、実際にはEbayなどでは2倍から3倍の価格差がつきますので、悩ましい選択をしなくてはなりません。

WW2関連の艦船に関してはNeptunは非常にラインナップが充実していて、WW2の主要な参戦国であればほぼNeptun版で揃えることができます。筆者のような体系的なコレクションを目指すならば、それも一つのポイントになってきます。

 

他社からも「ジャンヌ・ダルク」のモデルが

ちょっとおまけにArgonaut版の「ジャンヌ・ダルク」もしたのご紹介しておきます。こちらは筆者はモデルを保有していません。主砲等の形状など、少しNeptun版ともTrident版とも異なります。

(下の写真はNeptun版練習巡洋艦ジャンヌ・ダルク」(上段)とArgonaut版(未入手)の比較:両モデルに再現精度の大きな差はないように思われます。どちらを選択するかは、かなり難しい判断になりそうですね)

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Argonaut版のモデルはやはりかなり細部の再現精度が高い製品になっているようです。Neptun版とも引けは取らないかと。

Argonaut社製のモデルについては、実は一昨年(?)製作者が亡くなられた為、以降、新製品、新品の流通は望めなくなっています。Ebay等での中古品を調達するしか入手方法がないような状況だと聞いています。筆者が懇意にしているEbay出品者に聞いたところでは、ある出品者が、製作者が亡くなられたのちの在庫を全て引き取ったとか。そうした事情で、今後希少価値が上がることは間違いなく、一般的に大変高値での取引になっています。

 

ちょっとオマケ

スウェーデン海軍海防戦艦「アラン級」を入手

本稿下記の回で第二次世界大戦期の「スウェーデン海軍の海防戦艦」について、ご紹介しています。同海軍は第二次世界大戦当時8隻の海防戦艦保有していました。

fw688i.hatenablog.com

そして下記の回では「アラン級」海防戦艦の艦首形状の異なる「マンリゲーテン」と対空砲座の形状の異なる「タッパレーテン」を入手し、残るは「ヴァーサ」のみ、というようなお話をしています。fw688i.hatenablog.com

そして「ヴァーサ」のモデルがRhenania社初め各社から出ていないとも。おそらくネームシップの「アラン」と大きな差がないからだろう、と結論づけていたのですが、この度「アラン」のモデルをもう1隻入手することができ、これで「アラン級」の4隻が揃いました。

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(今回入手の「アラン級」海防戦艦近代化改装後のモデル by Rhenania:一応モデルが市販されていない同級の二番艦「ヴァーサ」として入手したものです)

ネームシップ海防戦艦「アラン」の近代化改装後の概観:by Rhenania)

海防戦艦「アラン級」三番艦「タッパレーテン」近代化改装後の概観:by Rhenania)

(「アラン級」4番艦「マンリゲーテン」の近代化改装後の概観:by Rhenania:艦首形状のクリッパー型への変更にと同時にボイラーが新型に換装され、対空火器の配置変更等も行われています)

 

「アラン級」海防戦艦4隻

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(直上の写真:「アラン級」海防戦艦4隻の勢揃い:右から「アラン」「ヴァーサ」「タッパレーテン」「マンリゲーテン」の順(上段):「マンリゲーテン」のクリッパー型艦首形状の拡大(中段左):上部構造の差異の拡大(下段))

 

第二次世界大戦期のスウェーデン海軍の海防戦艦一覧

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(左から「スヴァリイェ級」の近代化改装後の「グスタフV世」「ドロットニング・ヴィクトリア」「スヴァリイェ」、「オスカーII世」(近代化改装後:同型艦はありません)、「アラン級」の近代化改装後の「マンリゲーテン」「タッパレーテン」「ヴァーサ」「アラン」の順:スウェーデン海軍は第二次世界大戦では中立を守り抜きますが、にこの8隻の海防戦艦を中心とした海軍を有していました。これらの艦船は主力艦として海軍の象徴的な存在でしたが、戦力としての存在意義は小さくなっており、大戦以降、同海軍は小型高速艦艇と潜水艦の整備に軸足を置き換えてゆきます)

 

その他、最近の新着物

Shapewaysからフランス海軍の戦艦黎明期(前弩級戦艦よりも前)の艦級がいくつか届いています。

写真は下地処理をした状態。さあてこれから色を塗らねば・・・。(お楽しみの始まりです)

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(11000トン級装甲艦「アミラル・デュプレ」(写真上段)と「アミラル・ボーダン級」戦艦(写真下段))

上段の「アミラル・デュプレ」は中央砲塔艦の一種と見ることができるでしょう。そして「アミラル・ボーダン」は仏海軍が初めて船体の中央線上に主砲塔を配置した艦、だとか・・・。いずれにせよ前弩級戦艦(近代戦艦)への主力艦黎明期の模索途上、の設計だと言っていいと思います。

こちらは完成次第またご紹介します。

 

これで第二次世界大戦期のスウェーデン海軍の海防戦艦は、どう海軍が当時保有していた8隻を一応揃えることができたと考えています。

 

ということで、今回は最近の新着モデルのご紹介を中心にしたお話でした。

今回はここまで。

 

次回は、今度こそフランス海軍艦艇の続きで、同海軍の弩級戦艦以降の開発のお話にしましょうか?

もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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ウクライナ海軍の主要艦艇+敷設艇「怒和島」という書籍

いつものことながら、本稿前回で予告した「宝箱のような海軍:フランス海軍の続き」というのをちょっと横に置いておいて、少しモデルが揃ってきたので、今回は「ウクライナ海軍」の艦艇のお話を。

と言っても、現有の主要な戦闘艦艇は3隻程度。接続海面を有する黒海沿岸の沿岸警備隊的な戦力に留まっています。しかし実際にはこれもかなり情報が古く、以下でそれぞれご紹介してゆきますが、これら3隻にしても、その艦齢が結構高く、現在どのような状態なのか・・・。

元々は旧ソビエト連邦黒海艦隊を二分して発足したはずの「ウクライナ海軍」だったはずなのですが、どうしてそのようになったのか、それも併せて少し纏めておきましょう。

 

ウクライナ海軍について

ごく最近では、ロシア海軍ミサイル巡洋艦「モスクワ」のウクライナ紛争での喪失のニュースが伝わってきましたが、これも「ウクライナ海軍」の直接的な戦果というわけではなさそうです。あまり情報が伝わってくない「ウクライナ海軍」について、その海軍事情を少し見ておきましょう。

ja.wikipedia.org

 

旧ソ連黒海艦隊をベースとして発足

ソ連崩壊後、旧ソ連黒海艦隊はロシアとウクライナに二分されることが決まりました。

そのため多くの艦艇を保有してスタートした同海軍でしたが、財政難から保有艦艇の削減に動かざるを得ませんでした。

さらに悪天候で多くの艦艇が損傷するなどの状況も重なり、この削減に拍車がかかります。

 

未完の艦艇群

fw688i.hatenablog.com

本稿の上記の回でご紹介したように、旧ソ連海軍から引き継いだ建造途上の何隻かの大型艦艇群は、主に経済的な理由で完成に至らず、そのまま放置、あるいは他国に売却されています。

ミサイル巡洋艦ウクライナ

先般、今も続いている「ウクライナ戦争」で、撃沈が報じられたロシア海軍のミサイル巡洋艦「モスクワ」の同型艦(4番艦)「ウクライナ=旧名アドミラル・フロタ・ロポフ」は未成のままで工事が見送られた一隻です。他国への売却が計画されていますが、一世代前の設計でもあり、売却の話は宙に浮いたままです。

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(「1164級:スラヴァ級」ミサイル巡洋艦の概観:148mm in 1:1250 by Decapod Model: 艦橋部分から前方に装備された対艦ミサイルが本級の最大の特徴と言っていいでしょう。下の写真は「1163級」の主要兵装の配置:艦首部にAK-130:130mm連装速射砲, RBU-6000対潜ロケットランチャー, P-1000の連装ランチャー、艦中央少し後ろ目にS-300F:対空ミサイルの八連装リボルバー式の垂直発射装置8基、ヘリ格納庫両脇に4K-33短SAMの連装発射機を2基、そしてヘリ発着甲板を備えていました)

 

航空母艦「ヴァリャーグ」(現中国海軍航空母艦遼寧」)

未成で旧ソ連海軍から引き継いだ「グズネツォフ級」航空母艦の2番艦である「ヴァリャーグ」も完成しないまま廃艦となり、後に中国海軍に売却されました(中国海軍「遼寧」として完成されました)。

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(空母「ヴァリャーグ」:257mm in 1:1250 by Bill's Models in Shapeways:モデル自体は未入手です)

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クリミア危機での事実上の消滅

2014年のロシアのクリミア侵攻に付随して、クリミア半島セヴァストポリに拠点を置いていたウクライナ海軍はロシア軍の地上部隊、の侵攻を受け、その保有艦艇のほとんどをロシア軍に接収され、事実上、消滅してしまいました。

実はこの直前に、「ウクライナ海軍」待望の潜水艦「ザポリージャ」が就役していたのですが、同艦もクリミア侵攻でロシア海軍に接収されてしまった1隻でした。

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現有の戦闘艦艇(?マーク付きです)

現有の主要な水上戦闘艦艇としては、たまたま侵攻時に地中海にいたフリゲート艦「ヘーチマン・サハイダーチヌイ」(旧「クリヴァクIII級」フリゲート)やコルベットヴィーンヌィツャ」(旧「グリシャ級」コルベット)、ミサイル艇「プルィルークィ」(旧「マトカ級」水中翼型ミサイル艇)等が挙げられます。


フリゲート艦「ヘーチマン・サハイダーチヌイ」

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(フリゲート艦「ヘーチマン・サハイダーチヌイ」(旧ソ連海軍「1135.1級」国境警備艦NATOネーム「クリヴァクIII級」フリゲート)の概観:102mm in 1:1250 by Delphin)

同艦は旧ソビエト海軍が建造した「1135.1計画ネーレイ級」国境警備艦NATOコードネーム「クリヴァクIII級」国境警備艦)の8番艦「キーロフ」を、「ウクライナ海軍」が取得したものです。「ネーレイ級」国境警備艦は、「1135警備艦」(NATOコードネーム「クリヴァク1級」フリゲートをベースにKGBソ連国家保安委員会)向けに設計された国境警備の専任艦です。

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3700トンの船体に100mm両用砲1基、30mm6砲身機関砲(ロシア式CIWS)2基、対空ミサイル連装ランチャー1基、4連装魚雷発射管2基、12連装対潜ロケット発射機2基を主要兵装として備え、さらに対潜ヘリコプター1機を搭載する、強力な艦です。

ウクライナ海軍」は建造中の同級をもう1隻取得していましたが、こちらは完成しないまま、除籍されています。

「ヘーチマン・サハイダーチヌイ」はどう海軍が保有する唯一の本格的な外洋航行能力を備えた戦闘艦で、かつ唯一のヘリコプター搭載艦でもあることから、常に修理が優先されるなど海軍の「顔」として優遇されてきています。

2022年のロシア軍のウクライナ侵攻の際に、同艦は黒海沿岸のムイコラーイウで修理中でしたが、ロシア側の接収を恐れ同地で自沈しました。引き揚げ復元の予定があるという情報も。

 

参考:原型となった「1135級警備艦」(NATO名「クリヴァク級」フリゲート

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(「1135級」警備艦NATOネーム「クリヴァクI級」フリゲート)の概観:102mm in 1:1250 by Delphin)

同級は中型艦としては初めて対潜ミサイルを搭載した艦級でした。3300トン級の船体に4連装対潜ミサイル発射機1基、対空ミサイル連装ランチャー1基、4連装魚雷発射管2基、12連装対潜ロケット発射機2基を搭載、これに加えて艦尾に76mm連装両用砲または100mm単装両用砲2基を搭載した強力な艦級でした。

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(上の写真は「1135級」(左列)と「1135.1級」の比較等:主砲位置、対潜ミサイルの有無、ヘリ搭載施設の有無が大きな差異となって、全く別の艦容を示しています)

 

コルベット艦「ヴィーンヌィツァ」

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(旧ソ連海軍「1124級」小型対潜艦:NATOネーム「グリシャ級」コルベットの概観:モデルは「I 型」のものです:56mm in 1:1250 by Delphin)

同艦は旧ソ連海軍が沿岸での対潜戦闘を担当する小型駆潜艇として開発した「1124級」小型対潜艦の1隻である「ドニエプル」をウクライナ海軍が取得したものです。武装等のヴァリエーションでいくつかの形式がありますが、「ヴィーンヌィツァ」はII型に属しています。

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(上の写真は艦首部の短SAM連装ランチャーを57mm連装砲に換装した「II型」のもの。ウクライナ海軍のコルベット「ヴィーンヌィツァ」は「II型」に属しています。筆者が知る限り「II型」のモデルは市販されていません)

II型は800トン級の船体に57mm連装砲2基、対潜ロケット砲2基、連装魚雷発射管2基等を搭載し、34ノットの速力を出すことができます。

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(上の写真は、「1124級」小型対潜艦の主要武装の拡大:モデルは短SAM発射機搭載の「I型」ですので、艦首から短SAM発射機格納ハッチ、対潜ロケット発射機(ここまで写真上段)、連装魚雷発射管、57mm連装砲、爆雷投射装置の順。ウクライナ海軍の「ヴィーンヌィツァ」は「II型」ですので、艦首部の短SAM発射機格納ハッチの代わりに57mm連装砲がもう1基装備されています)

2022年のロシア軍のウクライナ侵攻時には、すで2021年に同艦は退役し処分待ちの状態でドネプロバク加工の桟橋に繋がれていたのですが、そこにミサイルを被弾し横転した状態になっているようです。

 

ミサイル艇「プルィルークィ」

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(ミサイル艇「プルィルークィ」(旧ソ連海軍「206MR級」大型ミサイル艇NATOネーム「マトカ級」水中翼型ミサイル艇)概観:32mm in 1:1250 by Trident)

同艇は旧ソ連海軍の「206MR級」大型ミサイル艇の7番艇「エール・ドヴィェースチ・シヂスャード・ドヴァー」をウクライナ海軍が取得したものです。

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「206MR級」大型ミサイル艇は沿岸部での戦闘を想定して旧ソ連海軍が設計した小型戦闘艇で、従来の魚雷艇に代替される構想でした。水中翼形式の船体を持ち42ノットの高速を有していました。

(上の写真は「206MR級」の武装の拡大:「テルミート」対艦ミサイルが勇ましい:下段)

武装の目玉はなんと言っても「テルミート」対艦ミサイル発射機2基で、42kmの射程を有していました。その他には76mm両用砲1基と30mm6砲身機関砲(ロシア式CIWS)2基を装備していました。

就役年次が1979年と古く、2007年には退役するという情報もありましたが、2011年ではまだ現役にありました。

 

ウクライナ海軍の主要水上戦闘艦艇の一覧

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奥から、フリゲート艦「ヘーチマン・サハイダーチヌイ」(旧ソ連海軍「1135.1級」国境警備艦NATOネーム「クリヴァクIII級」フリゲート)、旧ソ連海軍「1124級」小型対潜艦:NATOネーム「グリシャ級」コルベットミサイル艇「プルィルークィ」(旧ソ連海軍「206MR級」大型ミサイル艇NATOネーム「マトカ級」水中翼型ミサイル艇)の順)

今回、整理してみて、現状で活動が確認される艦艇はありませんでした(2隻は今回の戦争で損傷し、着底、実質行動不能。もう1隻は、情報がありません。ちょっと残念!)。

 

 

さて、少し話題が飛びますが、最近入手した一冊の書籍に絡んで、筆者の大好きな小型鑑定のお話を少し。(再録、というか、いくつかに分かれていたものをまとめた感じです)

敷設艇「怒和島」という書籍

本稿の読者の皆さんなら、筆者がいわゆる小型の「護衛艦艇」が大好きなのはご存知かと。

 

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4769832591/ref=ppx_yo_dt_b_asin_title_o08_s00?ie=UTF8&psc=1

そんな筆者がこの本を買わないわけがない。こういう書籍には登場する艦種柄、華々しい大作戦やそこでの海戦のお話などはほとんどありません。日常の延長での戦闘が(戦闘の気配や業務としての戦闘が)、しかし、リアルに描かれることが多いのです。こうした話材は、まさに筆者の大好物、ということで、もし同じ指向の方がいらっしゃったら、この本はおすすめです。

 

この本の主人公は表題の通り掃海艇「怒和島」、「測天級」掃海艇の一隻です。

本稿では以前、「怒和島」が属する「測天級」掃海艇をセミクラッチしています。そのお話を再度ご紹介。以下、ほぼ再録です。

「測天級」敷設艇の製作

機雷戦艦艇のうち、敷設艇については「燕級」「夏島級」「測天級」「神島級」の4つの艦級が建造されました。このうち「燕級」と「夏島級」についてはOceanic製のモデルを入手していましたが、「測天級」「神島級」についてはモデル未入手のままでした。

 「測天級」敷設艇(同型15隻:1938-終戦時4隻残存)  

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それまでの敷設艇を大型化した艦型で、機関をディーゼルとしてより汎用性を高め、太平洋戦争における敷設艇の主力となりました。前級までの復原性不足を解消し、航洋性に優れ活動範囲は日本近海に留まらず広い戦域に進出し活躍しています。(720トン、20ノット、主兵装:40mm連装機関砲×1・13mm連装機銃×1、機雷120基 /6番艦「平島」以降は主兵装:8cm高角砲×1・13mm連装機銃×1)

終戦時に「巨済」「石埼」「濟州」「新井埼」の4隻が残存していました。

(上の写真は「測天級」敷設艇の概観:59mm in 1:1250 by Tremoの水雷艇モデルをベースにしたセミ・スクラッチ:「測天級」は40mm連装機関砲を主兵装としていましたが、同機関砲は特に対潜水艦戦で有効ではなく、6番艦以降、8センチ高角砲を主砲として搭載しています。この艦級は「平島級」とされることもありますが、ここでは「測天級」の第二グループとしています)

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さらに改良型の「網代」級が12隻、建造される予定でしたが、1隻のみの建造で打ち切られ、次級の「神島級」へ計画は移行されました。

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下の写真は、「測天級」のディテイルのクローズアップ。特に写真下段では、敷設艇ならではの艦尾形状に注目)

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本稿の「機雷敷設艦艇小史」では文中で「測天級」「神島級」については「Oceanic レーベルでモデルあり、未入手」と記載していましたが、実は誤りでどうやら「測天級」にはモデルがないようです。そこで、「では作ってしまおうか」という訳です。

手持ちのストックモデルの中から適当な水雷艇モデルをピックアップして、「測天級」「神島級」を製作(セミ・スクラッチ)しています。モデル製作のお話は少し後に。

 

 「神島級」敷設艇(同型2隻:1945-終戦時に2隻とも残存) 

「神島級」敷設艇にはOceanic社からモデルが出ている、という情報はあるのですが、これまでお目にかかったことはありません(日本海軍の700トン級の敷設艇ですから、おそらく生産量もごく少数でしょうし、流通もしていない、というのは納得できますね)。ということで、やはりセミ・スクラッチにトライしました。

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(上の写真は「神島級」敷設艇の概観:59mm in 1:1250 by Tremoの水雷艇モデルをベースにしたセミ・スクラッチ:「神島級」はいわゆる戦時急造艦であるため、直線的な艦首形状等、建造工程の簡素化に留意された設計となっています。主兵装は40mm単装機関砲2基でした)

本土防衛のために「測天級」の簡易版として急遽建造された艦級です。計画では9隻の建造が予定されましたが、実際には3隻が着工し、1隻が建造中止、「神島」のみ1945年7月に就役しました。「粟島」は艤装中に終戦を迎え、終戦後に復員輸送船として就役しました。戦時急造艦であったため、海防艦に似た直線的な艦首形状を持ち、機関にも海防艦と共通のディーゼルが採用されています。(766トン、16.5ノット、主兵装:40mm単装機関砲×2・25mm連装機銃×3他)

 

少しだけ制作過程の話

今回改めてご紹介した「測天級」も「神島級」も、同一の水雷艇のモデルをベースにしています。ベースに利用したモデルがこちら。

全長68mmの水雷艇のモデルです。おそらくアメリカのSuperior社製です。Superior社のモデルはスケールが1:1200とされています。従って1:1250のコレクションに混ぜてしまうと少し寸法が大きく見えてしまいますので要注意です。しかし第二次世界大戦期の艦艇を中心にラインナップが充実しており、特に未成艦・計画艦などのいわゆる「IFモデル」が豊富に揃っています。筆者がクオリティで一押ししているNeptun社などヨーロッパの1:1250モデルのほとんどは彩色済みの完成モデルで供給されているのですが、同社のモデルはダイキャストの地色のまま未彩色のモデルで入手することができ、そういう意味では制作する(と言っても彩色がその中心になりますが)楽しみを味わうことができ、実は筆者もコレクションの初期はSuperior社のモデルからのスタートでした。しかも未彩色である分、安い価格で入手できます。

「Superior派」は一大勢力を形成しています。

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少し話がそれましたが、このSuperior社製の水雷艇をベースに、セミ・スクラッチを行います。

まず、船体上部構造物を全て撤去(中段)。次に艦首形状の修正(ベースのモデルはダブルカーブドバウ的な船首形状をしているので、直線的な形状に修正しています)。そして全体の長さの調整と艦首楼を短くする加工を行います(中断写真の墨入れラインが艦尾部のものは全体の長さ調整の目標ライン、艦首楼の墨入れラインが艦首楼長の調整目標のラインです)。全体の長さ調整は単に切断し、艦尾形状を若干調整する比較的単純な作業ですが、艦首楼長の調整は、筆者の場合にはひたすら「ヤスリがけ」を行うのみです。船体は正確な名称がわからないのですが、ホワイトメタル的な比較的柔らかい素材ですので、金属用のやすりで容易に整形ができます。上部構造物の撤去も仕上げはやはり「ヤスリがけ」です。作業自体は単純で難しくはないのですが、長さ70ミリ弱、幅10ミリ程度の小さな物を対象とするので、結構指が疲れる作業です。

で、完成したのが下段の写真。これに新たに設定してゆく上部構造物の位置を墨入れしてゆきます(下段写真は墨入れ後の状態)

あとはこの上部構造物に使えそうなパーツをストックから探し、見当たらないものはプラパーツなどで製作し、最後に彩色をして完成です。

注意点:金属片が飛んだり散らばったりするので、作業スペースを大きめの箱などで区切っておいたほうが良いですね。そうしないと・・・。

というような工程で、「測天級」「神島級」敷設艇の完成です。手順はほぼ一緒、上部構造物の作り込みが異なります。

(下は「測天級」敷設艇と「神島級」敷設艇の『比較:ほぼ同じ大きさの2艦級でしたが、上部構造の配置や艦首の形状が異なっていました。)

ということで、書籍をネタに、大好きな小艦艇モデルの再録でした。

ということで今回はここまで。

 

次回は、今度こそフランス海軍艦艇の続きで、同海軍の弩級戦艦以降の開発のお話にしましょうか?

もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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小説「女王陛下のユリシーズ号」:第14護衛空母戦隊(the 14th Aircraft Squadron)の話

以前、本稿では、下記の回で英国海軍の防空巡洋艦のご紹介をしています。

fw688i.hatenablog.com

その際にGW期間であったこともあって、表題の「あの防空巡洋艦」、アリステア・マクリーンの海洋小説の名作「女王陛下のユリシーズ号」に登場する架空の防空巡洋艦ユリシーズ」のセミ・スクラッチ・モデルをご紹介しました。

少しかいつまんでこの小説をご紹介しておくと、この作品では、第二次世界大戦中の北大西洋で輸送船団を護衛し、来襲するドイツ空軍・海軍と死闘を繰り広げつつ続けられた第14護衛空母戦隊の航海が、その旗艦「ユリシーズ」を中心に描かれています。

表題の「ユリシーズ」(この小説のある意味主人公と言っていいと思います)については、紆余曲折がありながら、ドンピシャのモデル作成のベースとなりそうな艦級を見いだせないまま、「アリシューザ級」軽巡洋艦をベースに改造しました(この辺りの経緯、紆余曲折も含め、上掲の回でご紹介しています)。

今回は「ユリシーズ」が旗艦として率いた第14護衛空母戦隊の構成艦のモデルがほぼ揃ったので、そのご紹介、そう言うお話です。

 

まず、第14護衛空母戦隊の各艦のご紹介の前に、「ユリシーズ」のおさらいを。

防空巡洋艦ユリシーズ

完成したモデルがこちら。

(直上の写真は、防空巡洋艦ユリシーズ」の概観:123mm in 1:1250 by Neptunモデルをベースにしたセミ・スクラッチ:「アリシューザ級」がベースなので寸法は同じです。そしてユリシーズ」の主要兵装配置の拡大を下の写真でご紹介しています:艦首部に5.25インチ連装両用砲塔2基、艦橋脇に対空機関砲座(写真上段):艦中央部にポンポン砲砲座3基と魚卵発射管(写真中段):艦尾部に5.25インチ連装両用砲塔2基:基本的な主要兵装は「ベローナ級」に準じています)

小説ではあまり建造経緯については詳細に説明されてはいないのですが、設定では同艦は「ダイドー級防空巡洋艦とその改良型である「ベローナ級」防空巡洋艦の間に一隻だけ建造されたことになっていて同型艦がないとされています。本稿ではその建造経緯を以下のように創作してご紹介(「アリシューザ級」に艦型が酷似していることの「こじつけ」をしたかっただけなのですが)しています。

「英海軍は航空機攻撃の脅威に備えるために「アリシューザ級」軽巡洋艦の設計をベースとした「ダイドー級防空巡洋艦11隻の建造に着手しましたが、同時に同種の船団護衛部隊の中核艦の切実な必要性を考慮して、当時建造予定だった「アリシューザ級」軽巡洋艦の5番艦の防空巡洋艦への転用を決定しました。こうして防空巡洋艦ユリシーズ」は同型艦をもたない巡洋艦として1隻だけ誕生しました」(繰り返しですが、「架空艦」のお話ですので、ご注意を)

 

ベースとなった「アリシューザ級」軽巡洋艦

そもそも今回のセミ・スクラッチ制作で「ユリシーズ」のベースとなった「アリシューザ級」軽巡洋艦は、前級「パース級」軽巡洋艦の主砲塔を1基減じて、それに合わせて5000トン級に縮小した船体に、出力を減じた機関を搭載することで経済性を求めた設計となっています。

(「アリシューザ級」軽巡洋艦の概観:123mm in 1:1250 by Neptune

同艦の設計は、艦型の小型化と武装の軽減により、英海軍の重要な任務である広範囲な連邦領・植民地や通商路の警備・保護に必要な軽快な機動性を持つ軽巡洋艦の隻数を揃える試みの一つでした。広大な通商路の警備に必要な巡洋艦の理想的な理論値は一説では70隻と言われていますが、未だに第一次世界大戦の痛手の癒えない財政はとてもこれを賄えるような状況ではなく、一方で大量に保有する第一次世界大戦型の旧式軽巡洋艦(C級、D級)を廃棄処分し、これをいかに置き換えてゆくか、条約の保有枠の制限と、疲弊した経済の両面から、当時の英国の苦悩が現れた艦級の一つと言ってもいいでしょう。

船体の小型化により、生存性はやや低下しましたが、速力は前級と同レベルを維持し、ある程度の戦闘力を持ち高い居住性と航洋性を兼ね備えた、通商路保護の本来の軽巡洋艦の目的に沿った手堅い設計の艦だったと言えるでしょう。

折からやはり軍縮条約の制限を意識した日米海軍は奇しくも制限枠に達しこれ以上新造艦を建造できない重巡洋艦に代わり、重巡洋艦とも対峙できる大型重装備の軽巡洋艦の建造(6インチ砲15門装備)に指向しており、これと対比すると同級の非力さは否めず(6インチ砲6門装備)、平時向けの巡洋艦、という評価も受け入れざるを得ない状況でした。

そもそも艦型縮小により隻数をそろえると言う目的に対しては、同様の試みが英海軍の最後の重巡洋艦となった「ヨーク級」でも行われたのですが、スペックを抑え上記のように生存性をやや低下させながらも期待ほどの経済効果(建造費の圧縮)が得られず、同級も4隻で建造が打ち切られ、建造途上の5番艦の船体は整備が急がれた防空巡洋艦に転用されました。(と、ここで強引に「ユリシーズ」と結びつけている訳です。下の写真は「アリシューザ級」と「ユリシーズ」の差異を比較しています)

セミ・スクラッチ:模型製作の話 1)主砲の換装:これは今回の改造の目玉となる重要な部分です。6インチ連装砲塔3基を撤去し、砲塔基部を活かして5.25インチ連装両用砲塔4基を設置しています。3番砲塔の位置にはもともと砲塔がありませんでしたので、基部らしき造作を加えています。搭載した5.25インチ連装両用砲塔はAtlas社製「プリンス・オブ・ウェールズ」から転用しています。このモデルはプラスティックと金属で構成されているモデルで、価格も手頃でパーツ取りモデルとしては大変優秀だと思い、重宝しています。5.25インチ連装両用砲塔のフォルムは特徴をよく捉えていると思っているのですが、何故か8基ある砲塔の大きさが揃っていません。今回は複数のモデルから大きさの揃っているものをチョイスして搭載しています。(上掲の写真の上段と下段:左が「アリシューザ級」)

2)艦中央部、航空艤装用クレーン・カタパルトの撤去と中央ポンポン砲砲座の設置。基部からパーツをカットし、ヤスリで平坦にして、その上にこれもAtlas社製の「フッド」から基部付きのポンポン砲を転用しています。高さなどは適当に調整してあります。この位置は、ほぼ原作通り(ハヤカワ文庫版「女王陛下のユリシーズ号」にはこの小説の戦闘航海の航路図と「ユリシーズ」の艦内配置図が掲載されています。今回の制作にあたってはこれを参考にさせていただいています)ですが、やや射界に問題はないのかな、などと考えています。砲座が艦の中央構造線上にあるので左右の射界はかなり広いのですが、前後は艦橋と後部煙突等が射界を遮ります。(写真中段:左が「アリシューザ級」)

3)艦後部、「アリシューザ級」が装備していた4インチ連装対空砲4基と後部探照灯台座等を撤去して後部対空砲射撃指揮所の設置及び指揮所両脇に後部ポンポン砲砲座を設置しています。少し後部上構の基部を整形してあります。撤去後はヤスリで平坦に仕上げてその上に対空砲射撃指揮所らしきものをストックパーツから転用しています。(写真下段:左が「アリシューザ級」))

 

原作に登場する「ユリシーズ」との相違点

「アリシューザ級」をベースにし今回筆者が制作した「ユリシーズ」と原作に記載されているスペックの相違点は以下の通りです。

まず、全長が筆者制作版の方が少し短い。原作では前述のように全長510フィート(155.5m)であるのに対し、「アリシューザ級」をベースにした筆者版は506フィート(154.2m)となりました。加えて現作では3基のポンポン砲は艦橋前、艦中央部、3番砲塔前と、間の中央線に沿って配置されていることになっています。(下の艦内配置図(ハヤカワ文庫版掲載)を参照してください)

筆者版では3基と言う装備数は同一ながら、艦橋前は設置スペースが捻出できず、艦中央部(「アリシューザ級」ではカタパルト台の位置)と後橋の両脇の配置となっています。更に、筆者版では艦橋前の近接防空兵装が手薄に思われたので、単装機関砲2基を増設してあります。

(下の写真:筆者版「ユリシーズ」の原作版と異なる武装配置の拡大:2番主砲塔後ろに対空機関砲座を増設(写真上段):後橋周りに配置されたポンポン砲砲座(写真下段)

 

少し長い前置き(おさらい)になりましたが、いよいよ本論の第14護衛空母戦隊(the 14th Aircraft Squadron)のお話を。

 

第14護衛空母戦隊(the 14th Aircraft Squadron)

小説に登場する第14護衛空母戦隊は、護衛空母4隻、防空巡洋艦1隻(ユリシーズ)、旧式軽巡洋艦1隻、艦隊駆逐艦1隻、小型駆逐艦1隻、旧式駆逐艦3隻、フリゲート艦1隻、旧式スループ1隻、艦隊随伴掃海艇1隻、計14隻で構成されている護衛艦部隊で、18隻の輸送船団FR77(貨物船15隻、タンカー3隻)を護衛する任務に出撃します。小説では出撃前の日曜日から目的地に到着した翌週の日曜日までの航海と戦いが描かれています。

同戦隊は月曜日の午後にスカパ・フローを出撃し、水曜日の朝ハリファックスからやってきたFR77船団とアイスランド沖で合流しその護衛任務につくのですが、船団と合流するまでに、すでに6隻が損傷或いは損傷艦の護衛随伴で戦隊を離れ、スカパ・フローに帰投しています。以降も損害を重ね目的地ムルマンスクに辿り着いたのは護衛部隊(第14護衛空母戦隊)では損傷を負った艦隊駆逐艦1隻のみ、FR 77輸送船団では貨物船3隻とタンカー1隻、という惨憺たる結果でした。

小説に登場する第14護衛空母戦隊を以下にご紹介します。

 

防空巡洋艦ユリシーズ

同艦については、もうあまり紹介の必要はないかと。

戦隊旗艦でしたが、小説内では度重なる損傷で満身創痍になり、日曜日の戦いで沈んでしまいます。

防空巡洋艦ユリシーズ」の概観:123mm in 1:1250 by Neptunをベースとしたセミ・スクラッチ

 

軽巡洋艦スターリング」:「シアリーズ級」軽巡洋艦

第一次世界大戦型の旧式軽巡洋艦「シアリーズ級」の一隻とされています。

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(直上の写真:「シアリーズ級」軽巡洋艦の概観 109mm in 1:1250 by Navis) 

同級は第一次世界大戦期に就役した「C級軽巡洋艦」のサブグループで、艦名は全て「C」で始まるはずなのですが・・・(「スターリング」は”Staring"すなわち”S"で始まっています)。

同級のうち3隻は第二次世界大戦前にいち早く主砲を対空砲に換装し防空巡洋艦の「はしり」となった艦級でもありますが、小説に登場するスターリング」は「6インチ単装砲を5基装備」と記述されており、防空巡洋艦への改装を受けていないことがわかります。

小説内ではスターリング」はドイツ空軍の雷撃を受け損傷し、さらに受けた爆撃により日曜日の朝に沈んでいます。

 

「シアリーズ級」の防空巡洋艦への改装

ちなみに「シアリーズ級」軽巡洋艦は前述のように同級のうち3隻が、第二次世界大戦前に、早くも主兵装を高角砲に換装し、防空巡洋艦として参加しています。主砲を全て高角砲に換装し、艦隊防空を担わせる専任艦種を整備する、という構想に、第二次世界大戦まえに発想が至っていた、というのはある種驚きですね。

同級で防空巡洋艦への改装を受けた3隻のうち「コベントリー(Coventry)」と「カーリュー(Curlew)」は4インチ単装高角砲(QF 4 inch Mk V gun)10基をその主兵装として改装されました。

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(上の写真は防空巡洋艦へ改造された「コベントリー」の概観:108mm in 1:1250 by Argonait:下の写真では「コベントリー」の単装対空砲の配置をご覧いただけます。艦首部に2基(写真上段)、艦中央部に4基(写真中段)、艦尾部に4基(写真下段)が配置されていました)

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一方「キュラソー(Curacoa)」は4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)4基を主兵装として改装されました。

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今回はこの「キュラソー」をNavis製のモデルをベースにセミ・スクラッチしたものをご紹介。

f:id:fw688i:20210502143213j:image(上下の写真は、防空巡洋艦に改装後の「キュラソー(Curacoa)」:同級は3隻が防空巡洋艦に改装されていますが、「キュラソー」が改装時期が最も遅く、他の2艦が4インチ単装高角砲(QF 4 inch Mk V gun)10基を搭載していたのに対し、同艦のみ4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を4基搭載しています。1番砲、3番砲、4番砲、5番砲が連装高角砲に換装されました。2番砲座にはポンポン砲が設置されました)

防空巡洋艦として就役した3隻はいずれも大戦中に失われています。

 

護衛空母ディフェンダー」・「インヴェイダー」・「ブルー・レインジャー」・「レスラー」:「アタッカー級」護衛空母

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(「アタッカー級」=ボーグ級」護衛空母の概観:119mm in 1:1250 by Neptun)

「ボーグ級」護衛空母は英海軍では「アタッカー級」護衛空母と呼ばれました。24機の搭載機を持ち、船団の周辺哨戒の活躍しました。

レンドリース法で米国から貸与された設定ですが、「レスラー」のみ二軸推進とわざわざ記述があります。「アタッカー級」は一軸推進で、二軸推進は次級の「サンガモン級」なのですが、こちらは英国に貸与されていません。

英海軍の「ニ軸推進の護衛空母」となると英海軍が独自に商船を改造した「ナイラナ級」もしくは「オーダシティ」「アクティヴィティ」などになります。

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(写真は「アクティヴィティ」(上段)と「ナイラナ級」の3D モデル from Shapeways:「アゥティヴィティ」125mm, 「ナイラナ級」129mm:   モデル未入手です)

第14護衛空母戦隊はその名の通り、4隻の護衛空母とその艦載機という強力な空中哨戒能力を誇る戦隊でした。しかし、4隻の空母のうちまず「インヴェイダー」が月曜日の夜に浮遊機雷に触雷して艦首を大破し戦隊から離脱、続いてディフェンダーが火曜日に酷い波浪で飛行甲板が捲れ上がるほどの損傷を負い、やはりスカパ・フローへの帰途につきました。さらに水曜日の夜には「レスラー」(例の艦級不明のニ軸推進艦です)が操舵装置の故障により座礁し脱落、スカパ・フローに引き返しました。

唯一残っていた「ブルー・レインジャー」でしたが、水曜日の夜、雷撃を受け撃沈されてしまいました。こうして、第14護衛空母戦隊は水曜日の夜には全ての護衛空母を失ってしまったのでした。

 

艦隊駆逐艦「サイラス」:「S級」駆逐艦

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(「S級」駆逐艦とほぼ同一の外観の「Q級駆逐艦の概観:87mm in 1:1250 by Argonaut:艦首、艦橋、単装放課の形状等、「S級」とは異なっています:下の写真は「Q級」の兵装配置等、細部の拡大)

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同級は1940年次の戦時急造予算で建造された英海軍の最新鋭駆逐艦です。ほぼ「Q級駆逐艦の基本スペックを受け継いでおり、8隻が建造されました。1650トン級の船体を持ち、37ノット弱の高速を発揮することができました。英海軍は対空戦闘の必要性を早くから認識しており同級にも両用砲の搭載が検討されましたが、重量増から生じるトップヘビーが懸念され、結局従来の4.7インチ単装砲が主砲として採用されました。しかし砲架を新型のものに変更し、仰角を55度として対空戦闘への対応力を高めています。また、近接対空兵装としては連装40mm機関砲を採用しています。

「サイラス」は潜水艦に雷撃された貨物船の乗組員の救護の途中、この貨物船と衝突し舷側を大きく削られる損傷を受けました。しかしその後も救護活動等を継続し、護衛戦隊中、唯一、目的地ムルマンスクに到着しました。

 

旧式駆逐艦「ヴェクトラ」:第一次大戦型の「V級駆逐艦

旧式駆逐艦ヴァイキング」:第一次大戦型の「W級」駆逐艦の対空・対潜戦闘対応への改良型

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 (「V/W級」駆逐艦の概観:写真は「アドミラルティV級」だと思われます:75mm in 1:1250 by Navis)

「V/W級」駆逐艦は、英海軍が第一次世界大戦中に建造した駆逐艦の艦級で、艦名がVまたはWで始まっているところから「V/W級」と総称されています。

同級はドイツ帝国海軍が建造中の大型駆逐艦・大型水雷艇への対抗上から、大型・重武装駆逐艦として設計されました。従来の英駆逐艦の基本装備であった40口径4インチ(10.2cm)砲3門を強化し45口径4インチ(10.2cm)4門とし、さらに連装魚雷発射管2基の標準装備を3連装発射管2基搭載へと、魚雷射線の強化も行われました。(実際には3連装発射管の製造が間に合わず、当初は連装発射管を搭載し就役し、後に三連装に換装されています)

「V/W級」と総称されますが実は大別して下記の5つのサブ・クラス(おお大好きなサブ・クラス!)に分類されます。

アドミラルティV級(28隻:大戦に間に合ったのは25隻)

アドミラルティW級(19隻)

ソーニクロフトV/W級(4隻)

ソーニクロフト改W級(2隻)

アドミラルティ改W級(14隻)

さらに「改W級」では搭載主砲を45口径4インチ(10.2cm)から45口径12センチに強化しています。

(直上の写真は「V級」の主要武装等の拡大:艦首部・艦尾部に背負い式に主砲(45口径4インチ単装砲)を配置し、3連装魚雷発射管を2基、艦の中央部に搭載しています。艦のほぼ中央部に3インチ対空砲を搭載しています(写真中段))

武装の強化に伴い艦型は大型化(1100トン級)しましたが、機関の見直しは行われなかったため、速力は前級の36ノットから34ノットに低下しています。しかしソーニクロフト社製の「改W級」では機関の強化も併せて行われ36ノットの速力を発揮しています。

就役は1918年からで、この年の11月に第一次世界大戦終結したことから、奇しくも第一次世界大戦型の駆逐艦の最終形となりました。

大戦終結後、英海軍は疲弊した国力と、大戦期中に膨大に膨れ上がった大量の艦船の整理に追われるわけですが、最も艦齢の若い同級は多くが残置され、第二次世界大戦でも活用されました。

機雷敷設駆逐艦への改造

V級」の一部の艦は、魚雷発射管の連装から3連装への換装を行う代わりに、連装発射管1基を撤去し、さらに主砲1基も撤去、艦尾形状を整形すると共に機雷敷設軌条を設置して、60基程度の機雷敷設能力を持つ敷設駆逐艦に改造されています。f:id:fw688i:20210515173543j:image

 (「V級駆逐艦のヴァリエーション機雷敷設駆逐艦の概観 by Navis:下の写真は、「機雷敷設駆逐艦」に改装された艦の細部の拡大:艦首部の主砲配置は変わらず、魚雷発射管は連装のまま1基のみ搭載、艦尾部は主砲1基を撤去して艦尾形状を機雷敷設軌条等の張り出しを追加しています )

 

第二次世界大戦時:護衛駆逐艦」への改造

第一次世界大戦駆逐艦としては最も艦齢が若かった「V/W級」は、一部(4隻?)がオーストラリア海軍に供与された他、本稿でも「巡洋艦」の回に見て来たように航空機や潜水艦の脅威の増大を見越して、通商路保護の役割を担う「護衛駆逐艦」への改装に充当されます。

WAIR改修艦(14隻・15隻?)

本稿前回・前々回で見たように、航空機の脅威に備えて英海軍は「C級」巡洋艦の数隻を防空艦へと改装しました。WAIR改修は、それと同趣旨で「V/W級」駆逐艦に長射程の対空砲を搭載し、併せて対潜兵装も強化して船団護衛の要として活用しようとする狙いでした。

 (「V/W級」WAIR改修型駆逐艦の概観 by Argonaut:下の写真は、WAIR改修型の主要武装の拡大:艦首・艦尾に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を各1基搭載。魚雷発射管は全て撤去され、対空火器が強化されています。艦尾部には爆雷投射機と投射軌条が搭載され、対潜能力が強化されています)

改修対象となった艦は全ての主砲・魚雷発射管を撤去し、代わりに4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)2基を搭載、他にも対空機関砲を増設した上で、対潜装備として爆雷投射機、投射軌条を搭載する他、後にはレーダーやソナーなどを装備しています。en.wikipedia.org

主要兵装となった4インチ連装対空砲は、「C級」巡洋艦を改装した防空巡洋艦などにも搭載されていた対空砲で、80度の仰角で11800m、45度の仰角で18000mの範囲をカバすることができました。

***さて、ちょっとこぼれ話。名称の「WAIR」が何に基づくものか、今でははっきりしないようです。「W級」の「対空化(ant-AIRcraft)」ではないか、という説も。

長距離護衛駆逐艦への改装(21隻)

「V/W級」に限らず、「艦隊駆逐艦」は高速をその特徴の一つとするため、実はあまり長い航続距離を持たせる設計にはなっていません。しかし、通商路の保護には経済性を持つ商船で構成される低速の船団の航行に合わせた長い航続距離が必要で、「V/W級」の一部はこれに適応するような改装を受けています。

具体的には機関の一部を撤去し、そのスペースに燃料タンクと居住区画を増設し長い航続距離の獲得と、乗員の居住性を向上させました。当然、速力は落ちましたが、対潜警戒用のソナーの運用等を考慮するとかえって20ノット以上では支障が生じるなどの要件もあり、この目的では25ノット程度の速力があれば十分だったということです。

兵装は主砲を2基減らせて、ヘッジホッグや爆雷投射機・投射軌条を搭載し対潜兵装を充実させ、さらに対空砲・対空機銃等を強化しています。

en.wikipedia.org

(「V/W級」改造長距離護衛駆逐艦の概観 by メーカーは不明:下の写真は、長距離護衛駆逐艦型の主要武装の拡大:艦首1番主砲が撤去されヘッジホッグに換装されています(上段写真)。主砲は45口径4.7インチ(12cm)単装砲を、艦首・艦尾に1基づつ搭載しています。機関搭載数を減らしたため煙突が一本に。魚雷発射管は全て撤去され、4インチ単装高角砲が搭載されています(中段写真)。艦尾部には爆雷投射機と投射軌条が搭載され、対潜能力が強化されています)

「ヴェクトラ」ヴァイキングに関しては、「それぞれV級、W級駆逐艦の改造ニ軸艦で、速力と火力において劣るため、今や老朽の部類に入れられていたが、強靭性と耐久性は無類だった」(早川文庫版村上博基氏訳を引用させていただいています)と言う記述が小説の冒頭部にあります。同級は第一次世界大戦型とは言いながら艦齢が他のクラスよりも若く、多くが第二次世界大戦期にも補助戦力として大いに活用されていました。その多くが艦隊随伴駆逐艦から護衛任務に適性が出るように改造を受けています。上述の「長距離護衛駆逐艦」への改造を受けた21隻は、上述のように機関の一部を撤去し、そのスペースに燃料タンクと居住区画を増設し長い航続距離の獲得と、乗員の居住性を向上させています。主砲も2基をヘッジホッグや爆雷投射機に換装され、船団護衛、対潜戦闘への適性を高めています。

「ヴェクトラ」は土曜日のUボートとの戦闘で砲撃戦のすえUボートを潜航不能に陥れ、浮上した敵潜水艦に体当たりを試みますが、その際に何かが大爆発して、敵潜水艦共に沈んでしまいました。おそらくは体当たりの衝撃でUボートの艦首に搭載された魚雷が爆発し、これに「ヴェクトラ」の艦首の主砲弾薬が誘爆を起こしたのではなかろうか、と記述されています。この一連の戦闘について4.7インチ砲の発射が記述されているので、WAIR改修艦ではなさそうであることがわかります(WAIR改修艦は4インチ連装高角砲を主砲としています)。おそらくは「長距離護衛駆逐艦」への改造艦ではないかと。

ヴァイキングの最後ははっきりとは描かれていません。「告げる生存者がいないから、誰も知らない」と。

 

小型駆逐艦「バリオール」:「ハント級駆逐艦

ja.wikipedia.org

f:id:fw688i:20220619105450p:image

(「ハント級駆逐艦の概観:68mm in 1:1250 by Argonaut:モデルは1型です。対空兵装を強化した2型、雷装を搭載した3型など、ヴァリエーションがあります。下の写真は「ハント級」の兵装配置等、細部の拡大)

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同級は戦時急造を想定した1000トン級の小型駆逐艦で魚雷装備は持たず、対空・対潜戦闘に特化した武装をしていました。4インチ連装対空砲を2基乃至3基搭載し、爆雷投射器を装備していました。

27ノット程度の速力を有していました。

「バリオール」は月曜日の夜に触雷して損傷した護衛空母「インヴェイダー」を護衛して、スカパ・フローに帰投し、戦隊を離れています。

 

旧式駆逐艦「ポート・パトリック」:「タウン級駆逐艦

ja.wikipedia.org

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(「タウン級駆逐艦の概観:77mm in 1:1250 by Argonaut:小説に登場する「ポート・パトリック」の兵装については、記述がありませんので、確証はないのですが、この写真ほどの充実はなかったのではないかと思います)

同級は米国との間で交わされた「駆逐艦・基地協定」に基づきバハマ基地等との引き換えで米海軍より譲渡された旧式駆逐艦です。米海軍の艦級としては「コールドウェル級」「ウィックス級」「クレムソン級」の3艦級を含んでいましたが、英海軍では「タウン級」と言う総称で一括りにされています。「タウン級」と言う名称の由来は、艦名に米国・英連邦の双方に存在する町の名前をつkwtwところから来ています(一部はカナダ海軍に譲渡されましたが、カナダ海軍では米国とカナダの双方にある川の名前を艦名としています)。

1000トン級の船体に4インチ砲3基、3連装魚雷発射管2基を装備し、30ノットの速力を出すことができました。

しかし、既に老朽化が進んでおり、かつ艦型が極端に細長く横揺れが酷かったため居住性は劣悪で、あまり乗組員には好まれませんでした。「女王陛下のユリシーズ号」でも姉妹艦が強風下で転覆した例を挙げ、天候が悪化する都度、転覆が心配されるような艦、と記述されています。

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(上の写真は「タウン級」の船団護衛兵装(対空・対潜)拡充時の兵装配置等、細部の拡大。このモデルは米海軍で護衛・警備任務に改装された姿、です。この兵装なら、本文中ほどの酷い記述はないかと。もう少し原型に近いモデルの方が「頼りなさ」がわかってもらえましたかね)

「ポート・パトリック」悪天候で飛行甲板を損傷した護衛空母ディフェンダー」を護衛して、スカパ・フローに帰投しています。

 

フリゲート「ネイアン」:「リバー級」フリゲート

ja.wikipedia.org

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(「リバー級」フリゲートの概観:72mm in 1:1250 by Argonaut:他の護衛艦に比べ、量産を想定した民間造船所での建造を意識した商船規格での少しぽっちゃりした艦型がよくわかるかと)

同級は1942年から就役し始めた外洋航行への適性を考慮して設計された船団護衛専任艦で、就役当初は「高速コルベット」「二軸コルベット」と呼ばれていました。民間造船所での建造を想定し商船規格の1300トン級の船体に、4インチ単装砲2基と複数の対空機関砲、ヘッジホッグや爆雷投射器を装備した対空・対潜戦闘に特化した護衛艦でした。142隻が建造されました。

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(上の写真は「リバー級」の兵装配置等、細部の拡大。船団護衛専任艦らしく対潜装備が充実しています)

「ネイアン」は艦首を触雷で損傷した護衛空母「インヴェイダー」を護衛して、前出の「バリオール」と共にスカパ・フローに帰投しています。

 

スループ「ガネット」:「キングフィッシャー級」スループ

ja.wikipedia.org

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(「キングフィッシャー級」スループの概観:58mm in 1:1250 by Argonaut)

同級はワシントン・ロンドン海軍軍縮体制下で、制約を受けない艦種として整備が期待された沿岸スループという沿岸むけの護衛・警備艦種でした。500トン級の小さな艦体に4インチ単装砲、対空機銃、対潜装備を搭載した艦級で、20ノットの速力を出すことができました。

量産性、航洋性の観点から、戦時急造の護衛艦としては民間でも造船可能な捕鯨船をベースとした「フラワー級コルベットに生産が集中されたため、10隻の建造に留まりました。

「ガネット」は「もっぱら沿岸任務にあたるべき艦」と記載され、「相当な時代物」と紹介されています。悪天候で飛行甲板を損傷した護衛空母ディフェンダー」を「ポート・パトリック」とともに護衛して、スカパ・フローに帰投しています。

 

艦隊掃海艇「イーガー」艦級の明示は小説内ではありません

en.wikipedia.org

f:id:fw688i:20220619101957p:image

(「ハルシオン級」掃海艇の概観:60mm in 1:1250 by Argonaut)

小説中には「艦隊随伴掃海艇」と記述があるだけで、艦級や兵装についての記述は見当たりません。

北極海へ進路をとる輸送船団を想定し、英海軍の艦隊随伴掃海艇の中では大きなものをあげてみました。「ハルシオン級」掃海艇は850トン級の掃海艇としては比較的大きな船体を持ち、16−17ノットの速度を出すことができました。実際に北極圏の多くの船団護衛に帯同し、本来の掃海任務(進路開削)と対潜任務をこなしています。敵前での掃海等を想定したため、比較的強力な兵装を有しています。f:id:fw688i:20220619102005p:image

(上の写真は「ハルシオン級」の兵装配置等、細部の拡大。同級は掃海スループとも呼ばれ、「フラワー級」などの対潜専任艦種が充実する前は、船団護衛任務にはしばしば帯同しています)

「イーガー」護衛空母「レスラー」が操舵装置を故障し座礁した際に、これを護衛して取り残されました。のちに旗艦「ユリシーズ」が「レスラー」の座礁地点に引き返し「イーガー」と共に「レスラー」を曳航し離礁させました。その後、「イーガー」は操舵装置を損傷した「レスラー」を護衛してスカパ・フローに引き返しています。

 

以上14隻。

まとめておくと、

戦闘で失われたもの:護衛空母1隻(ブルー・レインジャー)、防空巡洋艦1隻(ユリシーズ)、旧式軽巡洋艦1隻(スターリング)、旧式艦隊駆逐艦2隻(ヴェクトラ、ヴァイキング

損傷を受け引き返したもの:護衛空母3隻(触雷:インヴェイダー、天候による損傷:ディフェンダー、故障による座礁:レスラー)

損傷艦の護衛として引き返したもの:艦隊随伴掃海艇1隻(イーガー)、小型駆逐艦1隻(バリオール)、旧式駆逐艦1隻(ポート・パトリック)、スループ1隻(ガネット)、フリゲート1隻(ネイアン)

損傷した駆逐艦「サイラス」のみが目的地に辿り着きました。

 

第14護衛空母戦隊の水上戦闘艦の一覧

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(第14護衛空母戦隊の空母以外の艦艇の一覧を。まず上の写真では戦隊の中核をなす2隻の巡洋艦と大きさの比較のために駆逐艦「サイラス」(実際には「Q級駆逐艦ですが)を比較:手前から駆逐艦「サイラス」、軽巡洋艦スターリング」、防空巡洋艦ユリシーズ」の順)


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(上の写真では戦隊の駆逐艦他の艦型・大きさ比較:手前から掃海スループ「イーガー」、スループ「ガネット」、フリゲート「ネイアン」、小型駆逐艦「バリオール」、米国からの譲渡駆逐艦「ポート・パトリック」、旧式駆逐艦改造護衛艦ヴァイキング」、同「ヴェクトラ」、艦隊駆逐艦「サイラス」の順)

こうやって改めて見ると、この戦隊はいわゆる船団直衛の戦力としては、かなり充実していますね。やや対潜装備に偏っているような気はしますが、本来はそこ=対空は4隻の護衛空母が賄うはずだったんでしょうね。4隻で少なく見積もっても80機程度の艦載機は保有していたはずで、そのうち30機程度は護衛戦闘機だったでしょうから。これが早々に失われた(1隻が撃沈され、3隻が損傷で離脱)のが痛かった、ということでしょう。護衛艦艇大好きな筆者としては、今回は大変充実していました。

 

というわけで、今回はここまで。

 

次回はフランス海軍艦艇の続きで、同海軍の弩級戦艦以降の開発のお話にしましょうか?

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

 

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新着モデルのご紹介:Navis製モデルのヴァージョン・アップ話の続編:ロイヤル・ネイビーの装甲巡洋艦

本稿では1ヶ月ほど前の投稿で、筆者のコレクションの特に第一次世界大戦期のコレクションの主力を占めるNavis製のモデルのヴァージョン・アップのお話を、何度か、ドイツ帝国海軍(第一次世界大戦期)の前弩級戦艦装甲巡洋艦を例に引いてご紹介してきました。

どういう事か、未読の方のためにかいつまんで言うと、「コレクション時は高品質という認識で集めたモデルも、次のヴァージョンがメーカーから発表されると、まず、「どうしても」新旧ヴァージョンの比較をしたくなってしまう、そして一旦比較したら、その差異は当然歴然としているので(メーカーさんはそのために更新しているわけですし、模型製作の技術やスキルも上がっているのは間違いないですから)全てを新ヴァージョンに置き換えたくなる、いつまで経ってもコレクションが完成しない(この部分については、筆者の懐事情が大きな要因でもあるわけですが)、こうした「困った状況」に直面している」と、まあそう言う一種の「ぼやき」のお話なのです。

そして、その中で、「この新旧ヴァージョン問題はその他の国の艦艇でも同じように惹起しており、ドイツ装甲巡洋艦の次は、そのライバルの英海軍装甲巡洋艦でも、より深刻な形で進行中です。(筆者としては、実はこの英海軍のNavis製モデルの新旧ヴァージョンの方がその差異が大きく、なんとかしたい、と思っていますので、これも近々、ご紹介することになるだろうなあと考えています)」とご紹介していました。

 

と言うわけで、今回は英海軍(ロイヤル・ネイビー)の装甲巡洋艦のNavis新モデルが幾つか揃ってきたので、そのご紹介です。

全ての英海軍の装甲巡洋艦の艦級がアップデートできた訳では無いので、体系的なご紹介はまた後日、と言うことになるのかな、と思っています。

 

ロイヤル・ネイビー装甲巡洋艦

列強海軍の例に漏れず、英海軍も装甲巡洋艦の整備を20世紀の初頭から始めています。

これまで装甲巡洋艦という艦種がどのような艦種なのか、ということを何度かご紹介しているので、少し端折って改めてご紹介すると、装甲巡洋艦の成立は実は2系統あった、と筆者は感じています。一つは前弩級戦艦を主力艦として列強が整備した時期に、装甲巡洋艦を準主力艦、と位置付けて、同種艦数隻で戦列を構成して戦艦部隊とともに行動させる、いわゆる高速主力艦として艦隊決戦の戦力として位置付けた発展の系統で、こちらは海外にあまり多くの植民地を持たず、つまり守るべき通商路をあまり意識しなかった海軍、ドイツ帝国海軍や日本海軍における装甲巡洋艦の在り方でした。

そしてもう一つの系統は、通常の巡洋艦本来の適性国に対する通商破壊や自国の商船護衛、植民地警備といった任務を想定し、長期間の作戦航海への適性や快速性に重点をおき、さらにそれに砲力や防御力を付加した強化型巡洋艦の到達点としての段階が「装甲巡洋艦」だった、という系統で、海外に植民地を多く持つ英海軍やフランス海軍において保有され、発展を遂げました。

少し英海軍独自の問題点を挙げておくと、この強化型巡洋艦の整備については、英海軍は従来の防護巡洋艦の形式を多彩にすることによって(一等、二等、三等等のクラス分け等)ある程度対応していましたので、たとえばフランス海軍などに比べると装甲巡洋艦の整備としてはやや立ち上がりが遅かったように見えます。

 

今回はアップデートモデルがまだ揃っていないので、各艦級についての説明はあまり詳しくせず、モデルのヴァージョン・アップのお話にとどめたいと考えていますが、一応、英海軍が整備した装甲巡洋艦の艦級を整理しておくと、以下の7艦級、ということになります。

クレッシー級装甲巡洋艦(1901年から就役:同型艦6隻、12,000トン、23.4cm(40口径)単装砲2基、21ノット)

ドレイク級装甲巡洋艦(1902年から就役:同型艦4隻、14,150トン、23.4cm(45口径)単装砲2基、23ノット)

モンマス級装甲巡洋艦1903年から就役:同型艦10隻、9,800トン、15.2cm(45口径)連装速射砲2基+同単装速射砲10基、23ノット)

デヴォンシャー級装甲巡洋艦(1905年から就役:同型艦6隻、10,850トン、19.1cm(45口径)単装砲4基、22.25ノット)

デューク・オブ・エジンバラ級装甲巡洋艦1906年から就役:同型艦2隻、13,550トン、23.4cm(45口径)単装砲6基、23.25ノット)

ウォーリア級装甲巡洋艦1906年から就役:同型艦4隻、13,550トン、23.4cm(45口径)単装砲6基、19.1cm(45口径)単装砲4基、23ノット)

マイノーター級装甲巡洋艦(1908年から就役:同型艦3隻、14,600トン、23.4cm(50口径)連装砲2基、19.1cm(50口径)単装砲10基、23ノット)

 

上掲の各艦級の概要を一覧していただくと、およそこのような概ね二段階の発展の概要が見えてくるように考えています。

第一グループ巡洋艦本来の任務である海外植民との通商路警備を主任務として、襲撃してくる敵性巡洋艦を排除できる火力と打ち負けない防御力(舷側装甲)を併せ持った「強化型巡洋艦」として発展を遂げた艦級群で、クレッシー級からデヴォンシー級までの4艦級26隻が建造されています。

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(第一グループ=強化型巡洋艦の関係推移の一覧:手前から「クレッシー級(旧モデル)」「ドレイク級(旧モデル)」「モンマス級」「デヴォンシャー級」の順)

第二グループ:英海軍の仮想敵であるドイツ帝国海軍やフランス海軍で発展を遂げつつあった装甲巡洋艦を意識して、主力艦船体の補助戦力や高速を活かした前衛として格段に火力を強化した「準主力艦」としての艦級群で、デューク・オブ・エジンバラ級からマイノーター級の3艦級9隻がこれに該当すると考えています。

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(第二グループの艦型推移の一覧:手前から「デューク・オブ・エジンバラ級」「ウォーリア級」「マイノーター級」の順)

そしてちょうど第二グループの模索中に、一方の艦隊主力艦では革新的な「ドレッドノート」が就役し、続々とこれに続けて「弩級戦艦」が量産されてゆきます。この主力艦はこれ以弩級戦艦」「超弩級戦艦」へと発展してゆき、「前弩級戦艦」の補助戦力として整備された「装甲巡洋艦」という艦種自体が役目を終え「巡洋戦艦」という艦種がこれに変わり登場してくるのです。

 

装甲巡洋艦のモデル、新旧ヴァージョン比較

今回はまだ全てのモデルの新ヴァージョンが揃っている訳ではないの、各艦級についてはまた後日ご紹介数rとして、今回は新旧モデルの比較のみ、簡単にご紹介したいと考えています。

今回、Navis新モデル(いわゆるNavis Nですね)が入手できているのは上掲の7艦級のうち、「モンマス級」「デヴォンシャー級」「デューク・オブ・エジンバラ級「ウォーリア級」「マイノーター級」の5艦級です。

 

モンマス級装甲巡洋艦1903年から就役:同型艦10隻)

(9,800トン、15.2cm(45口径)連装速射砲2基+同単装速射砲10基、23ノット)

ja.wikipedia.org

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(「モンマス級」装甲巡洋艦の概観:110mm in 1:1250 by Navis N=新モデル)

広範な英国の通商路警備を想定すると隻数を確保する必要があることから、前級「ドレイク級」を縮小したタイプとして10隻が建造されました。従来の主砲は搭載が見送られ、15.2センチ速射砲を新開発の連装砲塔2基と舷側の10基の単装砲の形式で搭載されました。意欲的に開発された連装砲塔でしたが、重量が大きい割に動作が緩慢で、重量対策に舷側装甲を抑えねばならず、結果的に攻撃力・防御力共に満足のいく結果は得られなかったようです。

第一次世界大戦では1隻の戦没艦を出しています。

(下は「モンマス級」のNavis旧モデル:もちろん旧モデルも決して品質が低かった訳ではなく、かなり満足がいっていたのですが、新ヴァージョンと比べてしまうと見劣りは否めません。やはり新モデルはキリッと締まっている、というか・・・

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(上の写真は「モンマス級」の新旧モデル比較:左列が旧モデル:上部構造物やボート類、舷側砲門のモールドなどの精度が上がっているのがわかると思います)

 

デヴォンシャー級装甲巡洋艦(1905年から就役:同型艦6隻)

(10,850トン、19.1cm(45口径)単装速射砲4基、15.2センチ単装速射砲6基、22.25ノット)

ja.wikipedia.org

(「デヴォンシャー級」装甲巡洋艦の概観:125mm in 1:1250by Navis N)

課題の多かった前級の経験に基づき主砲が復活され、19.1センチ単装砲4基が搭載されました。配置は艦首部・艦尾部に加え、艦首方向への火力を重視したため両舷舷側の艦首よりの位置に1基づつ配置されました。舷側装甲もやや強化されています。

第一次世界大戦では1隻が触雷で失われています。

(下は「デヴォンシャー級」のNavis旧モデル)

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(上の写真は「デヴォンシャー級」の新旧モデル比較:左列が旧モデル:艦橋等の丈夫構造物やボート類、舷側砲門のモールドなどの精度が上がっているのがわかると思います)

 

デューク・オブ・エジンバラ級装甲巡洋艦1906年から就役:同型艦2隻)

(13,550トン、23.4cm(45口径)単装砲6基、15.2センチ単装速射砲10基、23.25ノット)

ja.wikipedia.org

(124mm in 1:1250)

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(「デューク・オブ・エジンバラ級装甲巡洋艦の概観:124mm in 1:1250by Navis N) 

英海軍は同級から、装甲巡洋艦の設計を一新しています。これまで通商路警備に重点を置かれた設計であった同海軍の装甲巡洋艦でしたが、特に風雲の怪しいドイツ帝国海軍で整備の進む装甲巡洋艦群を指揮して、同級から艦隊戦での優位を意識した設計へと移行しています。このため主砲の口径が大威力の23.4センチに戻され、単装砲塔で6基(艦首・艦尾・舷側に各2基)が搭載されています。この配置で艦首尾線上には主砲3基、舷側方向には主砲4基の指向が可能となりました。

第一次世界大戦では巡洋戦艦の登場で戦略価値が下がっていましたが、1隻(「ブラック・プリンス」)がユトランド沖海戦で失われています。 

(下は「デューク・オブ・エジンバラ級」のNavis旧モデル)

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(上の写真は「デューク・オブ・エジンバラ級」の新旧モデル比較:左列が旧モデル:艦橋等の上部構造物やボート類、主砲塔のモールドなどの精度が見違えるほど上がっているのがわかると思います)

 

ウォーリア級装甲巡洋艦1906年から就役:同型艦4隻)(13,550トン、23.4cm(45口径)単装砲6基、19.1cm(45口径)単装砲4基、23ノット)

ja.wikipedia.org

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(「ウォーリア級」装甲巡洋艦の概観:127mm in 1:1250by Navis N)前級「デューク・オブ・エジンバラ級」でそれまでとは一線を画した新たな装甲巡洋艦像を世に問うた英海軍でしたが、同級ではそれを一歩進め主砲(23.4センチ)に加え19.1センチ砲を中間砲として採用しさらに火力を強化しています。これら主砲・中間砲を全て砲塔形式で搭載し、荒天時でも射撃を可能としています。

第一次世界大戦では事故で2隻を失い、1隻を戦闘で失っています。

(下は「ウォーリア級」のNavis旧モデル)

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(上の写真は「ウォーリア級」の新旧モデル比較:左列が旧モデル:艦橋等の上部構造物やボート類、主砲塔のモールドなどの精度が見違えるほど上がっているのがわかると思います)

 

マイノーター級装甲巡洋艦(1908年から就役:同型艦3隻)

(14,600トン、23.4cm(50口径)連装砲2基、19.1cm(50口径)単装砲10基、23ノット)

ja.wikipedia.org

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(「マイノーター級」装甲巡洋艦の概観:127mm in 1:1250by Navis N)前級「ウォーリア級」で採用した主砲(23.4センチ)と中間砲(19.1センチ)の混載方式による火力強化をさらに進め、主砲(23.4センチ)は艦首尾に連装砲塔で搭載し、舷側には中間砲(19.1センチ)の単装砲塔を各舷5基搭載する、重装備艦でした。しかし既に格段の攻撃力と速力を備えた巡洋戦艦の建造へと移行しつつあり、就役時に既に旧式設計艦として二線級の扱いを受け座絵雨を得ませんでした。同級が英海軍が建造した最後の装甲巡洋艦となりました。

第一次世界大戦では1隻を戦闘で失っています。

(下は「マイノーター級」のNavis旧モデル)

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(上の写真は「マイノーター級」の新旧モデル比較:左列が旧モデル:艦橋等の上部構造物やボート類、主砲塔のモールドなどの精度が見違えるほど上がっているのがわかると思います)

 

新ヴァージョンのモデル未入手の艦級(旧モデルをご紹介)

さて、以下のご紹介するのは、今回モデルのヴァージョン・アップから漏れた2艦級です。結構Navis Nのモデルを探しましたが見つからない、困ったものです。さてどうしたものか、という感じではあるのですが、WTJ(フランス艦船のコレクションで結構お世話になっているメーカーです。3D printing modelの「はしり」と言ってもいいかもしれません)で、カタログに載っているので、Navisモデルのヴァーション・アップ・モデル以外にも考えてみようかな、と考えています。

www.wtj.com

こちらは入手し、完成したらご紹介します。今回は。Navisの旧モデルを再掲しておきます

 

クレッシー級装甲巡洋艦(1901年から就役:同型艦6隻)

(12,000トン、23.4cm(40口径)単装砲2基、15.2センチ単装速射砲12基、21ノット)

ja.wikipedia.org

(「クレッシー級」装甲巡洋艦の概観:114mm in 1:1250by Navis) 

英海軍は多くの海外植民地に至る広範な通商露防護を目的に、敵性通商破壊艦の出没に対抗するため、10000トンを超える大型防護巡洋艦の艦級を整備していました(「パワフル級」「ダイアデム級」)。一方でフランス海軍で建造された舷側装甲を持った巡洋艦の登場に刺激され、これら大型防護巡洋艦に舷側装甲を持たせた同級を建造しました。建造の経済効率に配慮された「ダイアデム級」一等防護巡洋艦タイプシップとして、英国の広範な通商路保護を念頭に置くと数を揃える必要があることから6隻が建造されました。

第一次世界大戦では3隻の戦没艦を出していますが、これらはいずれも潜水艦からの雷撃によるものでした。

 

ドレイク級装甲巡洋艦(1902年から就役:同型艦4隻)

(14,150トン、23.4cm(45口径)単装砲2基、15.2センチ単装速射砲16基、23ノット)

ja.wikipedia.org

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(「ドレイク級」装甲巡洋艦の概観:128mm in 1:1250 by Navis)

「クレッシー級」の拡大改良版で、大型の機関を搭載したため大幅に関係が大型化しています。この機関の搭載で23ノットの速力を発揮することができるようになりました。関係の大型化により搭載火器も強化され、23.4センチと口径は同じながら、砲身長を45口径にすることにより主砲の破壊力は強化されています。副砲(15.2センチ単装速射砲)の搭載数も前級の12基から16基に強化されています。

第一次世界大戦では2隻が戦没していますが、そのうちの1隻(「グッド・ホープ」)はコロネル沖海戦でドイツ帝国が準主力艦として整備した「シャルンホルスト級装甲巡洋艦との砲撃戦で失われています。

 

というわけで、今回はこのところ筆者の大きな関心事となっているNavis新旧モデルのヴァージョン・アップ問題の続き、ということで、ある程度新ヴァージョン・モデルが揃ってきた英海軍の装甲巡洋艦の艦級のご紹介をしました。こうして一通り揃ってくると、やはり関連の英海軍の前弩級戦艦群のモデルのヴァージョン・アップも意識に登ってきます。キリがない。困ったことです。

 

次回はフランス海軍艦艇の続きで、同海軍の弩級戦艦以降の開発のお話にしましょうか?

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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宝箱のようなフランス海軍:装甲巡洋艦の系譜

「宝箱のようなフランス海軍」その2回目です。

前回、本稿では奇しくも当時の仮想敵国から「サンプル艦隊」と揶揄された試行錯誤の連続として現れたフランス海軍の主力艦(前弩級戦艦)の系譜を再整理したのですが、この「サンプル艦隊」の実現の背景には、当時急速な発展を遂げ、かつ日清・日露両戦役で行われた史上初の蒸気装甲艦同士の実戦からもたらされたデータや戦訓からあるべき「主力艦」の姿についての議論が沸騰し、蒸気装甲艦(蒸気機関による自前の推力を得た為、装甲を装備できるに至ったわけですが)の建造と運用を巡る主導権争いがあったわけです。

少し乱暴に整理すると、「いろいろと実戦をみてみたが、実戦では戦艦の巨砲は特にその射程をより優位に生かせる遠距離射撃ではめったに当たらない。当たらない巨砲で敵艦を沈めることはなかなかできない。当たっても真っ当に設計された装甲を打ち破るためには、少数の命中弾では難しい。こんな実態の艦種の整備が必要なんだろうか」と、まあこんな主題だったのだろうと推測します。

一方で同時期に世に現れた水雷兵器の威力の大きさも実戦で証明されてきました(日露開戦時の旅順要塞への水雷艇攻撃は沈没艦こそ出ませんでしたが、一定の効果がありましたし、日本海海戦以前に両海軍が失った主力艦(戦艦)は全て機雷によるものでした(「ペトロパブロフスク」「初瀬」「八島」))。砲弾に対し装備された装甲のない船底を抜いて仕舞えばいい、と言うわけですね。しかし当時の水雷兵器は射程が短くかつ高価で、これを運用するには敵艦まで肉薄する必要がありました。これには小型で俊敏な運動性を持つ高速艦艇が向いており、つまり水雷艇が開発され、フランス海軍の艦艇整備の議論は限られた財源を不沈性の高い戦艦か、大量の水雷艇整備か、どちらに振り向けるのか、その辺りの綱引きになってゆくわけです。

こうした背景から一種の戦艦の理想型を見出す試行錯誤の過程として「サンプル艦隊」が生み出されるわけですが、模型コレクターとしては、この期間に実に創意に飛んだ艦級が多く生み出されているので、興味は尽きず、一方でコレクションのためのこれは個人としての財源を気にしながら、と言うまさにうれしい悲鳴をあげながらの取り組みになるわけで、つまりこれが「宝箱のような」と言う言葉になって現れています。

 

長々とした説明になってしまいましたが、今回はその「宝箱のような」前弩級戦艦時代のフランス海軍の主力艦の流れを汲んで、同時期に開発が進んでいたフランス海軍の「装甲巡洋艦」の系譜を改めてご紹介しておこうと考えています。今回はそう言うお話。

 

ちょっとくどいけど、装甲巡洋艦とは

前回ご紹介したように(上掲でも言及していますが)、開発に「迷い」の見られた「戦艦」に比べ、「装甲巡洋艦」についてはそのような迷いは見受けられないように筆者は感じています。おそらくこれは「装甲巡洋艦」の成り立ち、つまりその原型となった「巡洋艦」からこれらの艦種の任務の必要性が明らかで、その必要性に沿った発展を遂げた、と言うことなのだろうと考えています。

すでに何度も何度も本稿では言及しているので「耳にタコ」状態かもしれませんが、あえてできるだけ簡単に再掲すると、「巡洋艦」と言う艦種はそもそもがすぐれた航洋性と高速性を兼ね備え、かつ長い航続距離を持って適性国の通商路・植民地周辺に出没してこれを脅かし、あるいは同様に適性国からの自国通商路、植民地への襲撃からこれを防御することを目的として開発された艦種です。襲撃対象が通商路を航行する商船ですので、元来はそれほど重武装を施す必要はなかったのですが、蒸気機関の出力・効率の向上(高速で大きな火力を搭載し長い距離運べる)と速射性を向上させた中口径砲の開発が、上述の通商破壊(あるいは通商破壊艦からの商船護衛)を主任務とする巡洋艦の防御力強化の必要性を顕在化させていったわけです。こうして船団護衛、もしくは通商破壊戦の展開をその主任務とする巡洋艦(当時は防護巡洋艦が全盛)に、近接戦闘での戦闘能力を喪失し難い能力を与えるべく、舷側装甲を追加した「装甲巡洋艦」という艦種が生まれたわけです。

 

そしてフランス海軍の装甲巡洋艦

フランスはイギリスに次いで、海外に多くの植民地を保有し、当然、それらとの間に守るべき長大な通商路を展開していました。まさに上記の通商路破壊と保護を巡る状況の急速な変化と脅威を肌で感じていたわけで、巡洋艦の防御力強化の必要性から「装甲巡洋艦」の発想に至ります。日本海軍などに代表される、戦艦戦力の補助、いわばミニ戦艦的役割の艦隊決戦戦力としての「装甲巡洋艦」とは、一線を画し、速力と航続力を重視した設計になっています。

この艦種、「強化型巡洋艦」と言う構想は新たな艦級が生まれるごとに大型化し、やがては巡洋戦艦登場によりこれに統合され姿を消すまでの約20年間に、フランス海軍は11クラス、25隻を建造しました。

 

その系譜は大雑把に以下の三つに区分できると考えています。

第一期:防護巡洋艦を凌駕する防御力と戦闘力を持った戦闘艦の開発

第二期:汎用戦闘艦としての発達

第三期:補助主力艦としての発達

 

創設期:防護巡洋艦を凌駕する戦闘艦の開発

フランス海軍は世界初の装甲巡洋艦の栄誉を担う「デピュイ・ド・ローム同型艦なし)」、その縮小量産型の「アミラル・シャルネ級」、その強化版の「ポテュオ (同型艦なし)」を立て続けに送り出しますが、これが第一期のグループで、速射砲の発達により全盛を極めた通商路とそこを航海する商船を保護する任務を帯びた防護巡洋艦を圧倒して通商破壊戦を実施する、あるいは通商破壊戦を防止する目的で建造されました。

4,000トンから6,000トン程度の中型艦艇で、いずれも流麗なタンブルホーム形式の船体を持っていました。

 

世界初の装甲巡洋艦「デュピュイ・ド・ローム(1895年就役:同型艦なし)

(1895: 6,676t 19.7knot, 19.4cm *2 + 16.3cm *8)

ja.wikipedia.org

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装甲巡洋艦「デュピュイ・ド・ローム」の概観:92mm in 1:1250, WTJ:以後ご紹介するモデルの迷彩塗装は筆者のオリジナルなので、気にしないでください)

1895年、フランスは世界に先駆けて、舷側に装甲帯を施し、かつ従来の防護巡洋艦よりも口径の大きな方を搭載した世界初の装甲巡洋艦を建造します。これが「デュピュイ・ド・ローム」です。

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装甲巡洋艦「デュピュイ・ド・ローム」の砲塔配置:特徴は主砲(19.4センチ速射砲)、副砲(16.3センチ速射砲)全てを単装砲塔で搭載しているところです。実は資料により配置には諸説があるようですが、模型を見ていただければ、主砲である19.4センチ速射砲は舷側、艦のほぼ中央部に各舷1基づつ配置されていることがわかります。艦首部と艦尾部には各3基の副砲塔が配置されていました。:Dupuy de Lôme's main armament consisted of two 45-calibre Canon de 194 mm Modèle 1887guns that were mounted in single gun turrets, one on each broadside amidships. Her secondary armament comprised six 45-calibre Canon de 164 mm Modèle 1887 guns, three each in single gun turrets at the bow and stern. The three turrets at the stern were all on the upper deck and could interfere with each other.(英文版wikipediaより引用 French cruiser Dupuy de Lôme - Wikipedia )

6600トン級の船体に19.4センチ速射砲2基と16.3センチ速射砲8基を装備し、19.7ノットの速力を出すことができました。特徴的な船体の軽量化を狙ったタンブルホーム形式の流麗な船体を持ち、これに高速を発揮するための大型機関を搭載し、三軸推進方式を大型軍艦としてはこれも世界で初めて採用した意欲的な一隻でした。

主砲は艦のほぼ中央部に格言に1基づつ配置されていましたが、艦首尾線上には主砲の全てを思考させることが可能ですが、各舷側方向には最も強力な主砲を一射線しか振り向けられず、以降の搭載配置ではこの形式はとられませんでした。

1920年にベルギーの海運会社に売却され高速貨物船となり1923年に解体されました。

 

「アミラル・シャルネ級」装甲巡洋艦(1895年から就役:同型艦4隻)

(1895, 4,748t, 18knot, 19.4cm *2 + 13.8cm *6, 4 ships

ja.wikipedia.org

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(「アミラル・シャルネ級」装甲巡洋艦の概観:89mm 9n 1:1250 WTJ)

自国の広範囲にわたる通商路を意識して隻数を確保することを狙い、船体の大きさを前級の6600トン級から4600トン級まで大幅に下げています。小型化に伴い副砲の口径を13.8cmに下げ、二軸推進方式として、速力の若干の低下を甘んじて受け入れています。f:id:fw688i:20220605093842p:image

(主砲:19.4センチ速射砲は同級では艦首と艦尾に1基づつ装備されています)

船体形状は前級を踏襲した流麗なタンブルホーム形式を採用していました。

 

装甲巡洋艦「ポデュオ」(1897年就役:同型艦なし)

(1897, 5,374t, 19knot, 19.4cm*2 + 13.8cm*10)

ja.wikipedia.org

f:id:fw688i:20220605094212p:image
装甲巡洋艦「ポデュオ」の概観:93mm in 1:1250, Hai)

前級「アミラル・シャルネ級」の改良型として1隻のみ建造されました。船体をやや大型化し(4600トン級から5400トン級へ)砲塔、艦橋等の防備装甲をやや強化しています。副砲 (13.8cm速射砲)を2基増やしています。f:id:fw688i:20220605094216p:image

(「ポデュオ」の砲兵装の配置)

1919年に対空砲射撃用の練習艦に転用され1929年に解体されています。

筆者としてはやや残念なことに、同艦はフランス海軍の艦船の特徴であった流麗なタンブルホーム形式の船体を採用した最後の装甲巡洋艦となりました。

(下は「装甲巡洋艦創設期」の3艦級の比較:手前から建造年次順に「デュピュイ・ド・ローム」「アミラル・シャルネ」「ポデュオ」の順:いずれも顕著なタンブルホーム形態の船体を持っていて、筆者は大のお気に入りです)

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発展期:汎用戦闘艦への発展

第二期のグループは外洋での通商破壊活動(あるいはその防御)を行えるように大型の高揚製の高い形状の船体を持ったグループで、「ジャンヌ・ダルク同型艦なし)」、その縮小量産型である「ゲイドン級」、植民地警備に主題をおいて開発された「デュプレクス級」、「ゲイドン級」の改良版として計画された「アミラル・オーブ級」がこれに属していると考えています。

通商破壊活動から艦隊直衛まで幅広い任務への適性を持つことを狙った一連の艦級でした。

大好きなタンブルホーム形式の船体は廃止されましたが(実に残念!)、高い乾舷を持ち、外洋での凌波性の良好さを狙った艦型となりました。本稿、前回でご紹介した「前弩級戦艦」の系譜でも、「レピュブリク級」のあたりで同様の変化が起こったと考えています。

 

装甲巡洋艦ジャンヌ・ダルク(1902年就役:同型艦なし)

(1902, 11,445t, 21knot, 19.4c,m*2 + 13.8cm *14)

ja.wikipedia.org

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装甲巡洋艦ジャンヌ・ダルク」の概観:116mm in 1:1250, WTJ)

 フランス海軍の装甲巡洋艦の設計は、同艦からそれまでのタンブルホーム形式を改め、設計を一新してより航洋性に優れ、より高速を目指しました。大出力の機関(それまでの10000馬力から一気に33000馬力に)を搭載し速力を21ノット超まで向上させたため艦型が10000トンを超える大型になりました。武装は主砲は従来と同様の19.4cm単装速射砲2基でしたが、副砲は口径は前級と同様(13.8cm)ながらの搭載数を14基と増やしています。

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(砲兵装等の拡大:艦型を一気に大型化し、高速と大航続距離を兼ね備えた艦となりました。以降のフランス海軍の装甲巡洋艦の標準的な設計に。タンブルホームではなくなってしまって少し残艶な気がしつつも、やはりフランス艦らしい配置で、これはこれでいい感じ(ではないですか?))

ボイラー室を分離配置するなど、意欲的な試みが盛り込まれた試作艦的な性格の強い鑑でした。

フランス海軍は同感の設計で以降のの装甲巡洋艦の標準を確立したと言っていいでしょう。

 

「ゲイドン級」装甲巡洋艦(1902年から就役:同型艦3隻)

(1902-, 9,516t, 21.4knot, 19.4cm *2 + 16.3cm *8, 3 ships

ja.wikipedia.org

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(「ゲイドン級」装甲巡洋艦の概観:101mm in 1:1250/ Hai社製改造)

同級は、新世代の装甲巡洋艦を目指した試作鑑的な色合いの濃かった「ジャンヌ・ダルク」を原型として、やや小型化し量産を目指した艦級となりました。機関には初めて石炭・石油の混焼缶を採用しています。艦型は10000トンを少し切るところまで減量され、機関出力は抑えたものになっていますが、減量の結果速力は「ジャンヌ・ダルク」と同等を発揮できる設計でした。

主砲は従来のまま19.4センチ単装速射砲でした。副砲の口径が従来の13.8センチから16.4センチに強化されましたが、搭載数は8基に抑えられています。f:id:fw688i:20220605095502p:image

(「ゲイドン級」装甲巡洋艦の砲兵装等の拡大:モデルの作り(Hai製のメタルモデル)によるところも大きいかもしれませんが、かなり手堅い設計であるように感じます)

第一次世界大戦で同級の「デュプティ・トゥアール」がドイツUボートの雷撃で撃沈されています。

 

デュプレクス級」装甲巡洋艦(1904年から就役:同型艦3隻)

(1904-, 7,600t, 20knot, 16.3cm*2*4, 3 ships )  

ja.wikipedia.org

f:id:fw688i:20220605095855p:image
(「デュプレクス級」装甲巡洋艦の概観:103mm in 1:1250, WTJ)

同級は植民地警備等の遣外任務を主目的として想定され設計された艦級で、1897年計画で3隻が建造されました。船体は7400トンクラスと、初期の艦級を除くとフランス海軍の装甲巡洋艦としては最も小型で従来は装甲巡洋艦の副砲として搭載されていた16.3センチ速射砲を主砲として搭載していました。搭載形式は装甲巡洋艦としては初めて採用された連装砲塔形式で艦首尾方向にも舷側方向にも連装砲塔3基が指向できる設計となってました。

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(前出の「ジャンヌ・ダルク」や「ゲイドン級」が強力な砲兵装を搭載した戦闘艦的な色合いが濃い一方で、同級は植民地警備等、遣外任務用に設計されたクラスで、前級よりもやや小型で、やや小さな口径の主砲を連装砲塔で装備するなど軽快で機能的な「巡洋艦」本来の任務を意識して設計されたように感じます)

石炭・石油混焼缶を搭載し、21ノットの速力を発揮し、従来よりも2割程度長い航続距離を備えていました。

 

「アミラル・オーブ級」装甲巡洋艦(1904年から就役:同型艦5隻)

(1904-, 9,534t, 21knot, 19.4cm *2+16.3cm *8, 5 ships)  

ja.wikipedia.org

f:id:fw688i:20220605100159p:image
(「アミラル・オーブ級」装甲巡洋艦の概観:113mm in 1:1250, WTJ)

同級は「ゲイドン級」の改良型として設計されました。最大の改良点は副砲(16.3センチ速射砲)の搭載形式で、搭載数は8門と同等ながら、半数を単装砲塔形式で搭載し、広い射界を確保しています。

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(砲兵装配置の拡大:6.5インチ(16センチ)副砲の半数を砲塔形式で装備し、広い射界を確保しています。フランス的な機能美、というと言い過ぎでしょうか?)

5隻が建造されました。

(下は「装甲巡洋艦第二期」の4艦級の比較:手前から建造年次順に「ジャンヌ・ダルク」「ゲイドン級」「デュプレクス級」「アミラル・オーブ級」の順:タンブルホーム形態でなくなってしまって少し残念なのですが、新たな機能美というか、なんとも言えない新たな「フランス艦」らしさが表れています)

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展開期:補助主力艦へ

第三期の装甲巡洋艦のグループは、砲力と防御力を前汎用巡洋艦のグループから格段に強化し、艦隊主力艦を補助する、いわゆるミニ戦艦的な運用を意識したものになったと考えています。

このグループには、「レオン・ガンベッタ級」、「ジュール・ミシュレ」、「エルネスト・ルナン」、そして「エドガー・キーネ級」が含まれています。いずれも12,000トンを超える大型艦でした。英海軍、ドイツ帝国海軍の装甲巡洋艦がそれぞれ開発の系譜は異なるものの巡洋戦艦に吸収統合されていったのに対し、フランス海軍は巡洋戦艦という艦種を結果的には持ちませんでした(計画はあったようですが)。

これも艦隊決戦用の強力な戦艦戦隊を持てなかった(持たなかった?)のと同じ理由でしょうか?英独海軍の激突で戦艦(主力艦)が揚げた戦果を見れば(決定的な戦果はお互いあげていません)、ある種「慧眼」と言えるかもしれません。「新生学派」時代の議論は無駄ではなかった、ということかな?

 

「レオン・ガンベッタ級」装甲巡洋艦1903年から就役:同型艦隻)

(1903, 12,400t, 22.5knot, 19.3cm *2*2 + 16.3cm*2*6 +1*4, 3 ships

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(「レオン・ガンベッタ級」装甲巡洋艦の概観: 115mm in 1:1250, Navis)

同級は「アミラル・オーブ級」の改良型として設計されましたが、艦型が大幅に拡大され、特に火力が強化されました。具体的には主砲には口径は従来と同じ19.4センチ速射砲が採用されていますが、従来の単装砲塔形式を連装砲塔形式に改めてで艦首、艦尾に1基づつが搭載され、2倍とした他、副砲も口径は同じながら前級の8門の搭載数を連装砲塔で6基、単装砲で4基と一気に倍の搭載数と強化しています。

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(「レオン・ガンベッタ級」の砲兵装配置: 主砲・副砲とも連装砲塔での搭載として、火力を格段に強化、砲塔としたことにより、副砲も広い射界を確保しています)

機関も出力を強化されたものを搭載し、22.5ノットを発揮することができました。

3隻が建造されました。

 

装甲巡洋艦「ジュール・ミシュレ1906年就役:同型艦なし)

(1906, 13,105t, 22.5knot, 19.3cm *2*2 +16.3cm*12)

ja.wikipedia.org

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装甲巡洋艦「ジュール・ミシェル」の概観:115mm in 1:1250, Hai)

「レオン・ガンベッタ級」の改良型として1隻のみ建造されました。主砲に新開発の長砲身の50口径砲を採用し、これを艦首・艦尾に連装砲塔で搭載しています。

新型の機関を搭載して速力を上ていますが、新型主砲と主砲塔の重量増を副砲の数を減じることでカバーし、速力向上を実現させました。

副砲は8基を単装砲塔形式で、残り4基をケースメイト形式で搭載し、広い射界を確保する配置としています。

(下の写真は「ジュール・ミシュレ」の砲兵装配置: 長砲身の主砲を連装砲塔で搭載し、重量増分を副砲の数w歩減少させることでまかなっています。副砲は12基中8基を単装砲塔で装備し、射界を広く確保しています)

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装甲巡洋艦「エルネスト・ルナン」(1909年就役:同型艦なし)

 (1909, 13,644t, 23knot, 19.3cm*2*2 +13.4cm*12)

ja.wikipedia.org

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装甲巡洋艦「エルネスト・ルナン」の概観:126mm in 1:1250,by Hai)

同艦は前出の「ジュール・ミシェル」同様、「レオン・ガンベッタ級」の改良型として1隻のみ建造されました。主砲、副砲の数、搭載形式は「ジュール・ミシェル」と同様でしたが、速力を上げるために艦を12メートル延長し、新型の機関を搭載して速力を23ノットまで上げることに成功しています(公試時には24ノットを上回る速力を記録しています)。一方で艦型は13000トンを超える大型艦となりました。

(下の写真は「エルネスト・ルナン」の砲兵装配置: 搭載砲、搭載形式などは「ジュール・ミシュレ」に準じています。より強力な機関を搭載したため、煙突の数が6本に増えています。ボイラー室を前後に振り分けたため、煙突の位置は2箇所に離れた配置となりました(これは他の装甲巡洋艦との共通の配置))

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エドガー・キーネ級」装甲巡洋艦(1911年就役:同型艦2隻)

(1911-, 13,847t, 23knot, 7.6in *2*2 +7.6in *10, 2 ships

ja.wikipedia.org

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(「エドガー・キーネ級」装甲巡洋艦の概観:129mm in 1:1250 3D printing model by Master of Miy)

同級はフランス海軍が建造した最後の装甲巡洋艦で、2隻が建造されました。その最大の特徴は副砲を廃止し、19.3センチ速射砲を連装砲塔で2基、単装砲塔形式で6基(片舷3基)そして船体内にケースメイト方式で四基(片舷2基)搭載しています。この配置により艦首尾方向にはそれぞれ19.3センチ速射砲を6門、舷側方向には9門指向することが出来ました。

(下の写真は「エドガー・キーネ級」の砲兵装配置等:副砲を廃止して主砲(19.3センチ速射砲)のみの搭載としています。大型の機関を搭載したため、煙突のk図は6本に)f:id:fw688i:20220605102203p:image

新型の機関を搭載し24ノットの速力を得ています。

 

(下は「装甲巡洋艦第三期」の4艦級の比較:手前から建造年次順に「レオン・ガンベッタ級」「ジュール・ミシュレ」「エルネスト・ルナン」「エドガー・キーネ級」の順:いずれも大型で高速の戦闘艦として、主力艦部隊を支える役割を果たすべく、建造されました)

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(下は「フランス海軍の装甲巡洋艦」の形態変化を総覧したもの:手前から第一基の代表として「デュピュイ・ド・ローム」第二期から「デュプレクス級」と「あみらる・オーブ級」第三期から「レオン・ガンベッタ級」と最後の装甲巡洋艦エドガー。キーネ級」の順:艦型の大型化を顕著にみることができます。この中でも「デュプレクス級」は大型戦闘艦というよりも、植民地警備など本来の巡洋艦任務に回向製が高い摂家だということがわかります)

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というわけで、前回のフランス海軍の前弩級戦艦の系譜に続いて、同時期の装甲巡洋艦の開発系譜を見ていただいたわけですが、前弩級戦艦のケースほどの迷走は見られず、少し物足りない感じ(?)ではないかと思います。

この2回を振りかっえってみて、「巡洋艦」には通商路保護をめぐる比較的明確な、そして基本的な自国商船の保護という目的があるのに対し、「戦艦」にはそれほど明確な保有目的がないのかな、などと考えさせられました。特にフランス海軍の場合には、艦隊決戦に対するそれほど明確な必要性を感じていなかったんじゃないかと。

この辺りは、もっと時間をかけて、そして他の艦種の開発系譜やその背景なども考えてみると、きっと面白そうです。

というわけで今回はこの辺で。

 

次回はフランス海軍艦艇の続きで、同海軍の弩級戦艦以降の開発のお話にするか、あるいは少し週末を跨ぐプライベートなイベントがあるので、もしかすると最近新着が続いている英海軍の装甲巡洋艦のモデルで、再びモデルメーカー(Navis Nモデル)のヴァージョンアップに関するぼやきなどを聞いていただくかも。どうしようかな。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

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特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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宝箱のようなフランス海軍:弩級戦艦登場以前のフランス海軍主力艦の系譜

本稿、前回はドイツ帝国海軍の第一次世界大戦期の装甲巡洋艦のご紹介を、コレクションモデルのヴァージョン・アップのお話を交えてご紹介しましたが、「そもそも装甲巡洋艦とは」というくだりで、「その始祖は実はフランス海軍」というようなお話をしました。

少しそのまま引用すると・・・・。

「少し意外に聞こえるかもしれませんが、この艦種の家元はフランス海軍であると考えています。世界初の装甲巡洋艦デピュイ・ド・ローム同型艦なし)」を1895年に就役させています。

f:id:fw688i:20220529103406p:image

(1895: 6,676t 19.7knot, 7.6in *2 + 6.4in *6 92mm in 1:1250, WTJ:明細は筆者のオリジナルなので、気にしないでください)

フランス海軍は、速射砲の性能向上に伴う戦闘艦の攻撃力の格段の強化に伴い、これに対抗し船団護衛、もしくは通商破壊戦の展開をその主任務とする巡洋艦(当時は防護巡洋艦が全盛)に、近接戦闘での戦闘能力を喪失し難い能力を与えるべく、舷側装甲を追加しました。こうして「装甲巡洋艦」という艦種が生まれたわけです。

19.4センチ速射砲2基と16.3センチ速射砲8基を装備し、19.7ノットの速力を出すことができました。性能もさることながら、そのデザインの何と優美な事か。」

 

まあ、こんな感じでドイツ帝国海軍の装甲巡洋艦のお話にも関わらず、冒頭、フランス海軍の装甲巡洋艦のご紹介で始めていたわけです。

そんなわけで、ここらで再度、フランス海軍の主力艦の開発系譜などご紹介しておく良い折り合いかな、と思い、今回はそういうお話をしたいと思います。

全部一気に、というのは少し荷が重いので、今回は行けるところまで、という感じで進めますが、筆者のフランス海軍艦艇への関心は特に「弩級戦艦」の登場以前、に集中していますので、今回はその辺りまでなんとか行きたいな、そう思っています。

今回はそういうお話。

(上述のように、再録、的な回ですので(かなり文章は変わると思いますが)、もし出し惜しみせず全部行こうぜ、という方は下記をご覧ください)

fw688i.hatenadiary.jp

 

「宝箱のようなフランス海軍」

弩級戦艦登場以前のフランス海軍の主力艦開発の「迷走」

フランス海軍は、ご承知のように元々は英国と並ぶ海軍の老舗で、近代戦艦(いわゆる後に前弩級戦艦、準弩級戦艦と分類されるわけですが)全盛の時期にも実に多くの設計を世に送り出しています。その形式は12形式に及びますが、建造された近代戦艦(前弩級戦艦・準弩級戦艦)の総数は23隻にすぎません。つまり多くが同型艦を持たぬ、いわば試行錯誤的な艦艇、あるいはタイプシップの改良型であったと言ってもいいかもしれません。

背景には「新生学派」(ジューヌ・エコール)と呼ばれる、ある意味では、いかにも議論の国フランスらしい、「大艦巨砲主義」の対局をゆく海軍戦略を主導しようとする一派の海軍首脳部での台頭がありました。彼らの主導する海軍中枢により、戦艦建造への疑問符から生じる予算制約、建造条件の設定など、いわば戦艦設計における迷走期が長く続いたわけです。

確かにこの時期は、蒸気装甲艦の出現後、初めて日清、日露での実戦が行われ、多くの戦略的、戦術的データがあらわれた時期でもありましたので、その中で多くの仮説が現れ、それに国民的な体質が重なり(本当かな?)、このような現象が発生する必然があったと言えるかもしれません(この時期、史上初と言ってもいい蒸気装甲艦同士の海戦が「日清戦争」で行われ、そこで現れた装甲艦の浮沈性、にも関わらず、大口径砲は命中せず、勝敗は中口径の速射砲が決定した、というような海戦から現れた諸相を見れば、戦艦の存在そのものに疑問符がもたれても、ある意味仕方がない、ということかもしれないと、筆者も感じています)

が、経緯はどうあれ、日本海軍が日清・日露で実戦で体感し実証し、その後、ドイツやイギリス、日本などが、同一口径の戦艦の集中的な運用による艦隊決戦の思想に至り、果ては「弩級戦艦」に行き着く艦艇開発を進めた時期に、フランス海軍で生起したこの議論と試作(あえてこの段落のサブタイトルでは「迷走」と言い切りました)は、フランス海軍を世界の二大海軍の座から脱落させた要因の一つと言っていいように考えています。

 

一方で、このことは艦艇設計的には長い期間、競争試作的な時期が続いたということでもあるわけで、その設計は常にユニークで、例えば他国に先駆けた副砲の砲塔化、あるいは四連装砲塔の実現など、その技術的な発展には見るべきものが多い時期でもあった、と考えています。

 

これらのことを艦船模型的な視点でまとめると、実に多くの試作品がカタログに盛り込まれた「宝箱のような海軍」で、筆者のモデルコレクターの魂を強く揺さぶるのです。

例えば、1891年から就役したシャルル・マルテル準級(準級:聞き慣れませんが、緩やかなグループ、というような意味ですよね、きっと)には5隻の戦艦が属しているとされているのですが、発注時に排水量・備砲・速力などは一定の基準を設けられたものの、デザイナーも造船所も異なり、まさに「競争試作」が、なんと「戦艦」で実際に行われた、というようなことが見て取れるわけです。

既にほぼ同時期に、永年の仮想敵であったイギリス海軍は、同型艦を多数揃え、戦隊での統一指揮下における戦闘運用を構想するという主力艦艦隊(戦隊)の設計思想を確立していました。ドイツ帝国艦隊もこれに追随し、その果てにいずれは「ドレッドノート」という革命的な艦の設計と、その後の両海軍を中心とした大建艦競争が待っているわけですが、そうした統一構想を持たない(むしろ背を向けた?)フランス艦隊を、イギリス海軍は「サンプル艦隊」と揶揄していました。

しかし、まさにこの「サンプル」感覚から、これからご紹介する興味深い、そして優美な(筆者にとっては!?)艦船群が生み出されたということには、本当に感謝したいのです。

 

重ねて感謝

下のリンク、フランス海軍の艦船開発史について、大変興味深くまとめていらっしゃいます。

上記の整理についても、大変参考にさせて頂きました。紹介させて頂きます。

フランス艦艇に興味のある方、必読です。

軍艦たちのベル・エポック(前編)

軍艦たちのベル・エポック(後編)

 

近代戦艦:前弩級戦艦 

フランス海軍は「1890年計画」で、主力艦24隻配備を目標に向こう10年間に10隻の主力艦を建造することを目標として掲げます。以下にご紹介する一連の主力艦はこの計画に沿ったものなのです。(実は最初の「ブレニュス」は少し微妙です。起工は1889年ですので、「1890年計画」以前なのですが、後述のように軍政サイドのゴタゴタで工事が中断し、中断期間中に開発された技術などを取り込んで建造が再開されていますので、この1隻に数えるべきかどうか・・・)

戦艦「ブレニュス」(1895年就役)

ja.wikipedia.org

(1891-, 11,190t, 18knot, 340mm *2*1+340mm*1*1)

f:id:fw688i:20220529095351p:image

(戦艦「ブレニュス」の概観 :97mm in 1:1250 by WTJ )

 同艦は上述のフランス海軍の「新生学派」主導時代(ジュール・エコール)における、最初の戦艦 です。

建造の経緯は少し複雑で、元々は前級「マルソー級」(装甲艦?いずれ改めてご紹介)の4番艦として予算確保されましたが、軍政面でのゴタゴタ(海軍大臣の交代等)で一旦建造中止となり、再度の大臣交代に伴い、全く新しい設計で新造されました。f:id:fw688i:20220529095347p:image

(戦艦「ブレニュス」の砲兵装の配置:艦首部の34センチ連装砲塔(上段)、艦中央部の16センチ単装速射砲。中央砲郭の名残的な配置ですが、一部は単装砲塔?(中断)、艦尾部の単装34センチ砲塔)

34センチ砲を主砲とし、前部に連装砲塔、後部に単装砲塔の形で搭載していました。全周装甲の連装砲塔や、16センチ速射砲を単装砲塔形式で登載、あるいは新型のボイラー採用等、新機軸を多数盛り込んだ意欲的な設計でした。当時の戦艦としては18ノットの高速を発揮することができました。

 

「シャルル・マルテル準級」戦艦(1893年から就役:準同型艦5隻)

大鑑巨砲に懐疑的な「新生学派」支配下のフランス海軍は、次世代の主力艦に明確な構想を見出すことができませんでした。しかし一方で仮想敵である英海軍の海軍軍備整備は進んでおり、主として英海軍への対抗上、建艦計画をスタートさせることとなりました。その辺りの紆余曲折は上記の「ブレニュス」の建造の経緯にも現れているのですが、それとほぼ平行して、シャルル・マルテル準級が建造されることとなりました。これは、設計の基本スペックを規定し、すなわち排水量(11,500t ±)、搭載砲(30.5cm * 2+27cm *2)、速力(17.5 knot ±)などのスペックを与え、設計者・造船所により一種の競争試作を行わせる、というようなものでした。

この競争試作の結果、「シャルル・マルテル」「カルノー」「ジョーレギベリ」「マッセナ」「ブーヴェ」の5隻が建造されました。いずれも主兵装を菱形配置とし、30.5センチ砲2門を艦の前後に、27センチ砲2門を艦の左右に単装砲等で登載しています。

 (「シャルル・マルテル準級」の5隻:「シャルル・マルテル(左上段)」「カーノウ(左下段)」「マッセナ(右上段)」「ブーヴェ(右中段)」「ジョーレギベリ(右下段)」 注:それぞれの塗装は筆者のオリジナル塗装です。この様な迷彩(?)塗装の記録はありません。「ふざけるな!」<<<お叱りごもっともです。ご容赦ください)

 

戦艦「シャルル・マルテル」(1897年就役)

ja.wikipedia.org

(1897, 11,639t, 18knot, 30.5cm *1*2+ 27cm *1*2 )  

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(「シャルル・マルテル」の概観:94mm in 1:1250 by WTJ:War Time Jornal)

同艦は「「準級」計画の一環として建造され、ブレスト海軍造船所が建造にあたりました。美しいタンブルホーム型船体を有しています。

艦首部、艦尾部に主砲である30.5センチ砲を単装砲塔で装備し、両舷側に中間砲である27センチ砲をこれも単装砲塔形式で装備していました。併せて14センチ副砲も全て単装砲塔形式で搭載され、広い射界を与えられていました。f:id:fw688i:20220529100716p:image

(「シャルル・マルテル」の砲兵装配置:艦首部から30.5センチ単装主砲塔と両脇の14センチ単装速射砲(上段)、艦中央部の27センチ単装中間砲とその周辺の14センチ単装速射砲、さらに艦尾部の30.5センチ単装主砲塔と周辺の14センチ単装速射砲(下段):「準級」の標準的な砲兵装配置、と言っていいでしょう)

この搭載形式。配置により艦首尾方向に30.5センチ砲1門、27センチ砲2門、14センチ砲4門が、舷側方向には30.5センチ砲2門、27センチ砲1門、14センチ砲4門が、それぞれ指向でき、強力な火力を有していました。

 

戦艦「カルノー」(1897年就役)

ja.wikipedia.org

(1897, 11,954t, 17.8knot, 30.5cm *1*2+ 27cm *1*2)  

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(「カルノー」の概観:94mm in 1:1250 by WTJ:War Time Jornal)

同艦はトゥーロン海軍造船所が「準級」計画の一環として建造しました。

「シャルル・マルテル」同様、タンブルホーム型の船体を有し、主砲・中間砲・副砲の搭載形式もほぼ同等で、艦首尾、舷側それぞれの方向に強力な火力を指向することができました。f:id:fw688i:20220529100523p:image

(「カルノー」の砲兵装配置:搭載砲とその配置は上掲の「シャルル・マルテル」に準じた配置になっています。艦首部から30.5センチ単装主砲塔と両脇の14センチ単装速射砲(上段)、艦中央部の27センチ単装中間砲とその周辺の14センチ単装速射砲、さらに艦尾部の30.5センチ単装主砲塔と周辺の14センチ単装速射砲(下段))

同艦が属するこの「準級」計画は 1890年海軍計画の一部で、10年間で10隻の新造戦艦を建造する、という計画の一部でした。「準級」計画の特徴は同じ基本スペックに対する競争試作を行うとするもので、様々な創意を具現化し個艦の性能向上を目指す効果を促進する一方で、同時期に英独海軍が推進していたような同型艦を量産し統制された戦隊行動により強大な破壊力を創出する、というような戦術的な運用に対しては、適性が高いとは言えないものでした。

 

戦艦「ジョーレギベリ」(1897年就役)

ja.wikipedia.org

(1897, 11,818t, 17knot, 30.5cm *1*2 + 27cm *1*2 )  

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(「ジョーレギベリ」の概観:89mm in 1:1250 by WTJ:War Time Jornal)

同艦の設計者はアントワーヌ・ジャン・アマブル・ラガヌで、ラ・セーヌ造船所で建造されました。設計者のラガヌは、本艦の設計以前にフランス戦艦「マルソー」(菱形主砲配置の先駆的存在)、やスペイン戦艦「ペラーヨ」を手がけたベテランで、この後、馴染みのあるロシア太平洋艦隊旗艦の「ツェザレヴィッチ」の設計を手がけることになります。

本艦のみ副砲を連装砲塔で装備しています。連装の副砲は前部艦橋と後部艦橋のそれぞれ脇の上甲板状に配置され、広い射界を与えられ、主砲・中間砲の菱形配置と併せて、艦首尾方向、舷側方向それぞれに強力な火力を指向することができる設計でした。f:id:fw688i:20220529101040p:image

(「ジョーレギベリ」の砲兵装配置:同艦のみ副砲は連装砲塔形式で搭載されていました:艦首部から30.5センチ単装主砲塔と両脇の14センチ連装速射砲塔(上段)、艦中央部の27センチ単装中間砲、さらに艦尾部の30.5センチ単装主砲塔と周辺の14センチ連装速射砲塔(下段))

この副砲の連装砲塔での搭載は、のちにロシア海軍向けに設計された「ツェザレヴィッチ」やこれをタイプシップとする「ボロディノ」級戦艦などにも影響を与えたと言っていいでしょう。

 

戦艦「マッセナ」(1898年就役)

ja.wikipedia.org

(1896, 11,735t, 17knot, 30.5cm *1*2 + 27cm *1*2 )  

f:id:fw688i:20220529101339p:image

(「マッセナの概観:94mm in 1:1250 by WTJ:War Time Jornal)

同艦の設計者はルイス・マリー・アンヌ・ド・ビュシィで、世界初の装甲巡洋艦である「デュピュイ・ド・ローム」の設計者として有名です。ロアール造船所で建造されました。「デュピュイ・ド・ローム」との共通点が多く見られ、世界初の3軸推進の戦艦となりました。

主砲・中間砲・副砲などの搭載形式は「準級」の他艦と同様で強力な火力を周囲に向けることが可能でしたが、完成後は、設計に対し重量超過となり、肝心の装甲帯が水中に没し防御力に課題があることが判明しました。また、極端なタンブルホーム形状から、安定性に問題があったとされています。

f:id:fw688i:20220529101344p:image

(「マッセナ」の砲兵装配置:搭載砲とその配置は上掲の「シャルル・マルテル」に準じた配置になっています。艦首部から30.5センチ単装主砲塔と両脇の14センチ単装速射砲(上段)、艦中央部の27センチ単装中間砲とその周辺の14センチ単装速射砲、さらに艦尾部の30.5センチ単装主砲塔と周辺の14センチ単装速射砲(下段):極端なタンブルホーム形式の船体を採用していることがよく分かります。意欲的なことは伝わってきますが、課題の多さもなんとなく予見できますね)

筆者としてはこの「極端なタンブルホーム」というのが大のお気に入りで、この「準級」の中では一番だったので、少しこれらの課題があることは残念です。もう一つ、確かにここまで艦型が多感と異なると戦隊としての行動は運動特性から難しそうですよね。

(下の二点の写真は多くの共通点があるとされる世界初の装甲巡洋艦「デュピュイ・ド・ローム」の概観:再掲と両艦の概観比較)

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戦艦「ブーヴェ」(1898年就役)

ja.wikipedia.org

(1898, 12,007t, 18knot, 30.5cm*1*2 + 27cm *1*2)

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(「ブーヴェ」の概観:96mm in 1:1250 by WTJ:War Time Jornal)

同艦は「準級」最終艦としてロリアン造船所で建造されました。

砲装備の配置などは、「準級」の他艦と同様で、全周に対し強力な火力を指向することができました。

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(「ブーヴェ」の砲兵装配置:搭載砲とその配置は上掲の「シャルル・マルテルに準じた配置になっています。艦首部から30.5センチ単装主砲塔と両脇の14センチ単装速射砲(上段)、艦中央部の27センチ単装中間砲とその周辺の14センチ単装速射砲、さらに艦尾部の30.5センチ単装主砲塔と周辺の14センチ単装速射砲(下段):同艦の絞り込みの強いタンブルホーム形式の船体の特徴がよくわかるのでは)

寸法、排水量とも同準級の他艦を少し上回るサイズとなりましたが、最新式のハーヴェイ・ニッケル鋼を装甲に用いるなど、同準級の中では最もバランスの取れた艦となったとされています。同艦も「マッセナ」同様、三軸推進でした。

第一次世界大戦ではガリポリの戦いで触雷し、「準級」の中で唯一の戦没艦となりました。

 

シャルルマーニュ級」戦艦(1899年から就役:同型艦3隻)

ja.wikipedia.org

(1899-, 11275t, 18knot, 30.5cm *2*2, 3 ships)

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(「シャルルマーニュ級」戦艦の概観:94mm in 1:1250 by WTJ:War Time Jornal)

「シャルル・マルテル準級」でフランス海軍が主力艦のあるべき姿を瞑想(迷走?)している間に、英海軍は近代戦艦の標準を見い出し、同型艦のセットを揃えてこれを戦隊で運用するという構想を実現しようとしていました。この「量産=同型艦の建造」には、同一口径の巨砲を数多く揃え、これらを統一指揮する戦術運動への指向も併せ持っていたわけです。

ところがフランス海軍ではこれまで見てきたように、いわゆる「サンプル艦隊」としてスペックの共通性はあったものの、個艦の性能向上への指向が設計に色濃く現れており、運動性の統一、戦隊としての運用等には大きく出遅れていることに気付かざるを得なかったわけです。

英海軍に続きドイツ帝国海軍もこれに追随する動きを見せ、これらに対応するために、フランス海軍が建造したのが、「シャルルマーニュ級」からその改良型である「イエナ」「シュフラン」に至る戦艦群でした。

シャルルマーニュ級」ではそれまでフランス戦艦の標準的な搭載砲であった主砲・中間砲・副砲の三種混載を改めて、中間砲を廃止し主砲を連装砲塔2基で艦首・艦尾に配置しています。「シャルル・マルテル準級」では標準化していた感のあった副砲の搭載形式も砲塔から軽量化が可能なケースメイト方式に改め、連装主砲塔2基の搭載による重量増に対応した形としました。

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(「シャルルマーニュ級」戦艦の砲兵装配置:艦首部から30.5センチ連装主砲塔、重量軽減のためにケースメイト形式で搭載された副砲群が艦中央部に続き(上段)、艦尾部の連装主砲塔へと続きます:実験的な要素は影を潜め、標準化(=量産?)を意識した手堅い設計を目指したことが伝わるような・・・)

第一次世界大戦時には既に弩級戦艦の時代を迎えていたため、同級は二線級戦力として後方支援にあたりました。ガリポリの戦いに参加し、同級の「ゴーロア」は陸上からの砲撃を受け損傷しています。

 

戦艦「イエナ」(1902年就役)

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(1902-, 11688t, 18knot, 30.5cm*2*2)

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(戦艦「イエナ」の概観:100mm in 1:1250 by Hai)

同艦は前級「シャルルマーニュ級」の改良型として1隻建造されました。前級からの改良点は、副砲を14センチ速射砲から16.4センチ速射砲に強化し、装甲の強化を併せておこなっています。

1907年に当時の火薬の不具合から弾薬庫の爆発事故を起こし、多数の死傷者を出し、以降は標的艦とされました。

 

戦艦「シュフラン」(1904年就役)

ja.wikipedia.org

(1904-, 12432t, 17knot, 12in *2*2 )

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(戦艦「シュフラン」の概観:99mm in 1:1250 by WTJ:War Time Jornal)

同艦は前出の「イエナ」同様、「シャルルマーニュ級」の改良型として一隻のみ建造されました。「イエナ」で副砲に採用された16.4センチ速射砲を単装砲塔形式で搭載し、広い射界を確保しています。

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(「シュフラン」の砲兵装配置:艦首部から30.5センチ連装主砲塔、副砲を16.4センチ速射砲として、「イエナ」ではこれをタイプシップの「シャルルマーニュ級」同様メースメイト方式で搭載していましたが、「シュフラン」では単装砲塔形式とケースメイト形式の混載として、射界を広くとる工夫が)

第一次世界大戦では主としてトルコ戦線方面で前弩級戦艦を中心に構成された戦艦戦隊の旗艦を務め活動しましたが、修理のための回航中にドイツUボートの雷撃を受け、弾薬庫が誘爆し轟沈しています。

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(上の写真は「シュフラン」とタイプシップである「シャルルマーニュ級」の比較:艦型はやや大型に(上段:上が「シュフラン」)。中段と下段では副砲搭載形式の比較(下段が「シュフラン」の副砲搭載:単装砲塔とケースメイトの混載))

 

「レピュブリク級」戦艦(1906年から就役:同型艦2隻)

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(1906-, 14605t, 19knot, 30.5cmi*2*2, 2 ships)

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(「レピュブリク級」戦艦の概観:103mm in 1:1250 by Navis)

同級以前のフランス戦艦には、排水量に制限がかけられていました(これも「新生学派」影響?)。本級ではそれが撤廃され、一気に艦型が大型化されています。設計は日本でも「三景艦」で馴染みのある、エミール・ベルタンで、これまでの戦艦とは異なる外観となり、航洋性が改善されました。連装砲塔に収められた主砲は従来と同様ですが、副砲は従来同様16.4センチ速射砲を採用し、これを連装砲塔6基、単装砲6基、計18門と大幅に装備量を強化しています。

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(「レピュブリク級」の砲兵装配置:艦首・艦尾に30.5センチ連装主砲塔を搭載、副砲を16.4センチ速射砲として、連装砲塔とケースメイトの混載で18門と格段に強化しています)

船体の大型化に伴い機関出力をあげ19ノットを越える速力を発揮することができました。

こうして一段階レベルアップした感のあるフランス近代戦艦が誕生したのですが、就役時には、すでに英海軍のドレッドノートが就役しており、いわゆる生まれながらにして旧式新造艦のラベルを貼られることとなってしまいました。

 

強化型近代戦艦:準弩級戦艦 

リベルテ級」戦艦(1908年から就役:同型艦4隻)

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(1908-, 14860t, 19knot, 30.5cm *2*2 & 19.4cm*1*10, 4 ships )

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(「リベルテ級」戦艦の概観:103mm in 1:1250 by Navis)

同級は1900年計画で建造が認められた6隻の戦艦(フランス海軍では艦隊装甲艦)の第二陣です。第一陣は前出の「レピュブリク級」の2隻で、第二陣である同級は4隻が建造されました。

同級は前級「レピュブリク級」の改良型で、基本設計は前級のものを踏襲し、副砲を装甲巡洋艦の主砲並みの19.4センチ速射砲として、これを単装砲で10基、搭載していました。うち6基は単装砲塔形式で搭載され、広い射界が確保される設計でした。f:id:fw688i:20220529105427p:image

(「リベルタ級」の砲兵装配置:艦首・艦尾に30.5センチ連装主砲塔を搭載、副砲を19.4センチ速射砲として、単装砲塔とケースメイトの混載としています)

こうして大幅な火力強化を狙った同級でしたが、前級同様、就役時には、すでにドレッドノートが就役しており、いわゆる旧式新造艦のラベルをはられる結果となりました。

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(上の写真は「レピュブリク級」と「リベルタ級」の比較:「リベルタ級」は「レピュブリク級」の副砲強化改良型として設計されましたので、基本的な艦型、配置等は同一です(上段):中段、下段では「レピュブリク級」(下段)と「リベルタ級」の最大の差異である副砲の比較:いずれも単装砲塔とケースメイトの混でした)

 

「ダントン級」戦艦(1911年から就役:同型艦6隻)

ja.wikipedia.org

(1911-, 18754t 19knot, 30.5cm*2*2 & 24cm *2*6, 6 ships)

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(「ダントン級」戦艦の概観:113mm in 1:1250 by Navis)

前級からさらに艦体を大型化し、副砲口径を前級の19.4センチから、24センチにさらに強化しています。この副砲を連装砲塔6基に収め、広い射界を確保し、火力を強化した設計でした。機関出力をさらに上げ、19ノットを越える速力を発揮することができました。f:id:fw688i:20220529110340p:image

(「ダントン級」の砲兵装配置:艦首・艦尾に30.5センチ連装主砲塔を搭載、副砲を24センチ速射砲として、連装砲塔で6基搭載しています。さらに舷側上甲板直下には、水雷艇対策として7.5センチ速射砲を片舷12門を装備しているのが分かります)

この砲配置により、艦首尾方向には30.5センチ砲2門と24センチ砲8門、舷側方向には30.5センチ砲4門と24センチ砲6門を指向させることができました。

本級も就役時には、イギリスはもちろん、ドイツ、アメリカも弩級戦艦を次々に就役させており、旧式新造艦 として就役せざるを得ませんでした。

第一次世界大戦ではネームシップの「ダントン」が1917年に地中海でドイツUボートの雷撃を受けて失われました。

 

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(上の写真は、フランス海軍の前弩級戦艦と準弩級戦艦の発展を追ったもの:下から最初の前弩級戦艦「ブレニュス」『シャルル・マルテル準級」の代表として「マッセナ」、「シャルルマーニュ球」、「シュフラン」、準弩級戦艦リベルテ級」、「ダントン級」の順:「リベルテ級」はフランス海軍最後の前弩級戦艦である「レピュブリク級」とほぼ同型ですので、「レピュブリク級」以降の艦級で、飛躍的に大型化したことがよく分かります)

 

付録:さらに魅力的な「泥沼」:前弩級戦艦 以前の模索期の装甲艦・海防戦艦(・・・少しだけ)

これまでフランス海軍の前弩級戦艦・準弩級戦艦の開発系譜を見ながら、同海軍の「迷走」に伴う艦級のヴァリエーションを見てきたのですが、実は前弩級戦艦以前にも、同海軍は多様な海防戦艦、艦隊装甲艦(実はフランス海軍には「戦艦」という艦種名称はありません。全て「艦隊装甲艦」と称されています。本稿ではあえて「戦艦」という一般的な総称を使ってきましたが、ここでは「戦艦」と言わないほうがしっくりくるかも。気分的には「いわゆる戦艦とは違う、それ以前のもの」というほどの意味です)を建造しています。とてもこれを体系的にコレクションするところまでは手が回っていないのですが(経済的にも、収集の手段的にも)、いくつか手元のものをご紹介しておきます。

 

装甲艦「オッシュ」(1891年就役)

ja.wikipedia.org

(1891-, 6,224t, 16knot, 34cm*1*2+27cm *1*2 )

f:id:fw688i:20220529104359p:image
(装甲艦「オッシュ」の概観:83mm in 1:1250 by Mercator)

同艦は沿岸防備目的で1隻だけ建造された装甲艦です。海防戦艦と言ってもいいかも。

極めて低い乾舷とその上の大きな上部構造物から安定性に欠くことが容易に想像され、内外から嘲笑の的となった、そんなエピソードがある、ある意味「有名」な艦です。

主砲(34センチ)、中間砲(27センチ)、副砲(14センチ)という後に一時期のフランス戦艦の標準的な搭載砲の構成を見ることができます。f:id:fw688i:20220529104403p:image

(「オッシュ」の砲配置:艦首・艦尾に30,5センチ主砲(上段:下段)、艦中央部両舷に27センチ中間砲が配置されていました)

確かに復原性には重大な課題がありそうで、見るからに沿岸向き、航洋性には課題がある、という形状ですが、それはそれで大変「味」があるデザインだなあ、と思ってしまうのですが、フランス艦船に甘い筆者の贔屓目でしょうか。

 

「ブヴィーヌ級」海防戦艦(1895年から就役:同型艦2隻)

ja.wikipedia.org

(1895-, 6,681t, 17knot, 30.5cm*1*2)

f:id:fw688i:20220529104657p:image
(「ブヴィーヌ級」海防戦艦の概観:77mm in 1:1250 by Mercator)

同級は外洋での航洋性にも配慮した高い艦首を持つ海防戦艦の艦級です。45口径の長砲身を持つ30.5センチ砲を主砲として艦首、艦尾に1基づつ単装砲塔で搭載しています。f:id:fw688i:20220529104701p:image

(「ブヴィーヌ級」海防戦艦の主砲配置:艦首・艦尾に大きな30.5センチ主砲塔を装備していました)

上掲の「オッシュ」とは一味違った洗練されたデザインです(おっと、これも贔屓目か?)

 

他にもこの時期のフランス海軍の艦艇はなんとも言えない魅力があります。

上述しましたが、なかなかコレクションに加えるのが難しい。流通量が多くない、従ってオークションなどで見つけても取り合いで、結局高価で落札され、なかなか手が出ない、そんなこんなでなかなか「系譜」としてご紹介できるところへ至らない、というのが実情です。

でもまた何か動きが出た時に。

 

もちろん弩級戦艦以降の同海軍艦艇には、この回でご紹介した諸艦とは一味違った、「洗練性」とでもいうような味わいが感じられる(例えば4連装砲塔など)と筆者は思っているのですが、それはまた改めて。

というわけで今回はこの辺で。

 

次回はフランス海軍艦艇の続きを。弩級戦艦以降にするか、装甲巡洋艦にするか、どうしようかな。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

 

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新着モデルのご紹介:ドイツ海軍装甲巡洋艦のモデル更新状況

今回は原点回帰、つまりこのところ恒例になっていた感のある「ドラマや映画ネタ」はありません。筆者自身が「少し残念な気持ち」があることに気がつき、それはそれで少し複雑なのですが、今回は久々に純粋な艦船模型のみのお話です。

 

本稿ではこのところ艦船模型のヴァージョン・アップをめぐるお話が、比較的高いウエイトを占めています。

かいつまんで言うと、コレクション時は高品質という認識で集めたモデルも、次のヴァージョンがメーカーから発表されると、まず、「どうしても」新旧ヴァージョンの比較をしたくなってしまう、そして一旦比較したら、その差異は当然歴然としているので(メーカーさんはそのために更新しているわけですし、模型製作の技術やスキルも上がっているのは間違いないですから)全てを新ヴァージョンに置き換えたくなる、いつまで経ってもコレクションが完成しない(この部分については、筆者の懐事情が大きな要因でもあるわけですが)、こうした「困った状況」に直面している、そういうお話です。

「困った状況」というのは筆者の経済的な側面で(もちろんこれはこれで筆者のような「素人」には重要なファクターではあるのですが)、このモデルの比較や入手計画を立てるといった過程は実に興味深いことで、コレクションの醍醐味の一つではあると思っています。

もう一つ、この新旧ヴァージョンの問題が顕在化しているのはNeptun/Navisの銘柄で、本稿では何度か紹介しているのですが、この両銘柄は筆者のコレクションの主力と言っていい銘柄です。Neptun銘柄はWW2周辺の艦船を、Navis銘柄はWW1周辺の艦船モデルを主として扱っています。

www.navis-neptun.de

このうちNavis銘柄ではモデルの型番の末尾に「N」の文字を追加して比較的「露骨に」(と書いてしまおう)新モデルへの製造ラインナップの更新が行われています。一方、Neptun銘柄ではこのような型番を変えるような更新は行われていないようですが、体験的に一部の艦船モデル(例えば「大和」などの多分、人気モデル)ではモデルのヴァージョンの更新が不定期に行われているという認識です。

 

下記の投稿では、「ドイツ帝国海軍の前弩級戦艦」のモデルでのヴァージョン・アップが完了したのを機に、新旧ヴァージョン比較も兼ねて「ドイツ帝国海軍の前弩級戦艦」を総覧しています。

fw688i.hatenablog.com

 

さてここからが今回の本題。

上記のような次第で、Navis銘柄モデルの新旧ヴァージョン更新をどの範囲で取り組むのかが目下のところ筆者の大きな課題なのですが、明確な指針、目標のないままに、なし崩し的に更新が進んでしまっているのが実情です。

という流れで、ドイツ帝国海軍装甲巡洋艦のモデル更新がかなり進んできているので(完了はしていないのですが)、今回は「ドイツ帝国海軍の装甲巡洋艦」のモデル新旧比較とその開発系譜のご紹介を。今回はそういうお話です。

 

その前に「装甲巡洋艦」なる艦種について少しおさらいしておきましょう。

装甲巡洋艦とは(おさらい)

二つの発展系

装甲巡洋艦の系譜には、大きく二種類の発展の方向性があったと認識しています。

いわゆる強化型巡洋艦として

一つは、通常の巡洋艦本来の適性国に対する通商破壊や自国の商船護衛、植民地警備といった任務を想定し、長期間の作戦航海への適性や快速性に重点をおき、さらにそれに砲力や防御力を付加した強化型巡洋艦の到達点としての段階が「装甲巡洋艦」として具現化した、と解釈しています。この系譜は守るべき植民地を海外に多く持った英海軍、フランス海軍、海軍の近代化においてフランス海軍の影響を色濃く受けたロシア海軍で発展してゆきました。

少し意外に聞こえるかもしれませんが、この艦種の家元はフランス海軍であると考えています。世界初の装甲巡洋艦デピュイ・ド・ローム同型艦なし)」を1895年に就役させています。

f:id:fw688i:20190224122933j:image

(1895: 6,676t 19.7knot, 7.6in *2 + 6.4in *6 92mm in 1:1250, WTJ:明細は筆者のオリジナルなので、気にしないでください)

フランス海軍は、速射砲の性能向上に伴う戦闘艦の攻撃力の格段の強化に伴い、これに対抗し船団護衛、もしくは通商破壊戦の展開をその主任務とする巡洋艦(当時は防護巡洋艦が全盛)に、近接戦闘での戦闘能力を喪失し難い能力を与えるべく、舷側装甲を追加しました。こうして「装甲巡洋艦」という艦種が生まれたわけです。

19.4センチ速射砲2基と16.3センチ速射砲8基を装備し、19.7ノットの速力を出すことができました。性能もさることながら、そのデザインの何と優美な事か。

(ああ、フランス艦船の話を始めると、どんどんのめり込んでゆきそうなので、この辺りで。興味のある方は下記へどうぞ.。フランス海軍の装甲巡洋艦の系譜はこちらでご紹介しています。その艦艇群のなんと優美なことか)

fw688i.hatenadiary.jp

 

高機動性を持つ準主力艦として

そしてもう一つの発展の系譜は、装甲巡洋艦を準主力艦、と位置付けて、同種艦数隻で戦列を構成して戦艦部隊とともに行動させる、いわゆる高速主力艦としての位置付けで、植民地をさほど持たず、つまり守るべき長い通商路をさほど意識する必要がなく、常に艦隊を決戦兵力と認識し、比較的短期に集中して海軍を整備し得たドイツ海軍、日本海軍などで発展が見られました。

これらの両タイプ装甲巡洋艦の対決は、まず日露戦役中の「蔚山海戦」において実現しさらに第一次世界大戦でもその劈頭の「コロネル沖海戦」でも再現されました。

当然のことながら、強力な武装を持つ後者の勝利に終わりました。(両海戦については、本稿、下記の回でご紹介しています)

fw688i.hatenablog.com

fw688i.hatenablog.com

こうして艦隊の会戦で主力艦(戦艦)を補佐する一種の高速主力艦としての役割を担い始めた「装甲巡洋艦」だったのですが、一方でこの役割は「戦艦」の高速化から派生した「巡洋戦艦」へと糾合されてゆき、やがて「装甲巡洋艦」はその役割を終え姿を消してゆきます。

 

ドイツ帝国海軍の装甲巡洋艦

上記のような経緯を背景として、ドイツ帝国海軍は以下の6クラス、9隻の装甲巡洋艦を建造しています。

ドイツ帝国海軍は、帝国がそれほど多くの植民地を海外にもたず、つまり守るべき通商路をそれほど意識する必要がなかったところから、装甲巡洋艦は当初から、準主力艦の位置付けに置かれていました。こちらは次第にその機動性の向上(速度と航続力)に戦艦との差異を求め、その側面で特性を伸ばしていくことになります。

 

装甲巡洋艦フュルスト・ビスマルク同型艦なし)

ja.wikipedia.org

新モデル(NM35NT)

f:id:fw688i:20220522104017p:image
(1900年、10,700トン、24cm(40口径)連装速射砲2基、18.7ノット:100mm in 1:1250 by Navis)

本艦はドイツ帝国海軍が建造した初めての舷側装甲を持つ大型巡洋艦、つまり装甲巡洋艦で、一隻のみ建造されました。 既にその最初の艦である本艦から、当時のドイツ海軍の主力戦艦「カイザー・フリードリヒ3世級」「ヴィッテルスバッハ級」と同等の主砲を装備していました。(40 口径24センチ速射砲)

en.wikipedia.org

弩級戦艦時代の英海軍との大建艦競争に突入する以前のドイツ帝国海軍は、バルト海警備を中心任務とした沿岸警備海軍の域を出ておらず、同艦も航洋性と機動性に優れた補助主力艦として建造された色合いが濃いと考えています。問題海域にいち早く到達し、強力な戦闘力を誇示して周囲を圧倒する、そんな感じですかね。

艦首の形状等に明らかなように外洋巡行性に優れた艦型を有し、速力は戦艦に対して優速を発揮することができました。

就役後は機動性を買われて遠く青島のドイツ帝国東アジア艦隊に派遣されていました。帰国後は練習艦となり、第一次世界大戦当初は巡洋艦籍に復帰したものの、老朽化のため1915年に武装を撤去した上で再び練習艦となって1920年に解体されています。

 

 新旧モデル比較

Navis旧モデル(NM 35 )f:id:fw688i:20220522103125p:image

(上の写真は旧モデルの概観:NM35: 入手当時は1:1250スケールでのNavisのモデルの精度の高さに大満足でした。下の写真は新旧モデル比較:旧モデル(NM35)の細部が左:こうやって比べてしまうとやはり新旧の差異はずいぶん大きいですね。上部構造物の再現性などの差は大変顕著です。一旦気になると、やはりコレクターとしては・・・。困ったことです)

f:id:fw688i:20220522103121p:image

 

装甲巡洋艦プリンツ・ハインリヒ(同型艦なし)

ja.wikipedia.o

新モデル(NM34N)

f:id:fw688i:20220522103906p:image
(1902年、8,890トン、24cm(40口径)単装速射砲2基、19.9ノット:102mm in 1:1250 by Navis)

本艦は前級をやや小型化し戦艦に対する優速性向上を意識した、ある種「巡洋艦」としての機動性をより重視し「戦艦」との差異を明らかにした設計となっています。このためやや砲力を抑え、主砲は戦艦と同等の口径の速射砲ながら連装を単装に改め、副砲数を減らしています。

就役時の構想では優速を活かして主力艦隊の前面でこれを補佐する偵察部隊の主力となることが期待されていました。

第一次世界大戦時にはバルト海で活動しましたが、1916年には老朽化から武装を下ろして司令部施設として利用され、敗戦後1920年に解体されました。

 

 新旧モデル比較

Navis旧モデル(NM34 )f:id:fw688i:20220522103858p:image

(上の写真は旧モデルの概観:NM34: それなりに端正に細部が作られていると思っていました。下の写真は新旧モデル比較:旧モデル(NM34)の細部が左:もうコメントは必要ないかな)

f:id:fw688i:20220522103902p:image

 

プリンツ・アーダベルト級装甲巡洋艦同型艦2隻)

ja.wikipedia.org

新モデル(NM33N)

f:id:fw688i:20220522105022p:image
1903年、9,090トン、21cm(40口径)連装速射砲2基、20.4ノット 同型艦2隻:100mm in 1:1250 by Navis)

同級は新開発の40口径21センチ速射砲(21cm SK L/40)を主砲として採用し、これを連装砲塔2基で装備しています。前級よりも少し艦型を大きくし副砲の一部を上甲板に盾付きの単装砲架形式で搭載するなどして射界をを広くとり総合的な砲力を高める設計としています。併せて速力も前級を若干上回る設計とし、機動力をさらに高め、前級のコンセプト「主力艦部隊の前衛偵察部隊の主力と務める」という構想を進めた設計となりました。

主砲に採用された40口径21センチ速射砲は、それまでのドイツ帝国海軍の戦艦、装甲巡洋艦の標準主砲であった40口径24センチ速射砲とほぼ同等の射程距離を持ち(16300メートル)、弾体重量こそ140kgから108kgに減量したものの、発射速度を1.5発/1分から4発/1分にあげることにより単位時間あたりの砲弾発射量を増やすことができ、以降のドイツ帝国海軍の装甲巡洋艦の標準砲となりました。

en.wikipedia.orgこの主砲の採用により、同海軍の装甲巡洋艦の設計が定着した、と言ってもいいかもしれません。

第一次世界大戦の勃発後は両艦ともバルト海での活動に従事しましたが開戦後比較的早い時期に、「フリードリヒ・カール」は触雷で(1914年)「プリンツ・アーダベルト」は英潜水艦の雷撃で(1915年)、それぞれ失われました。

 

旧モデルとの比較

Navis旧モデル(NM 33)f:id:fw688i:20220522105031p:image

(上の写真は旧モデルの概観:NM34::下の写真は新旧モデル比較:旧モデル(NM34)の細部が左)

f:id:fw688i:20220522105027p:image

 

ローン級装甲巡洋艦同型艦2隻)

ja.wikipedia.org

Navis旧モデルのまま(NM32):同級の新モデルは未入手です

f:id:fw688i:20220522105540p:image

(1905年、9,550トン、21cm(40口径)連装速射砲2基、21.1ノット 同型艦2隻:101mm in 1:1250 by Navis)

同級は基本的に前級の特徴を継承し、さらに速度を向上させ、戦艦への優速性を一層充実した、大変バランスの取れた艦となりました。

第一次世界大戦では同型艦2隻はいずれもバルト海で活動しましたが、「ヨルク」は1914年、ヤーデ湾で味方の機雷に触雷して失われ、「ローン」は1916年に退役し、その後水上機母艦に改造されることが決定していましたが、この改造は実施されず、宿泊艦として使用された後、敗戦後に解体されました。

 

水上機母艦への改装計画(計画のみ)

(どこかに図面はないかしら、と探していると、水上機母艦への改造案、一応、想像図(?)発見)出典:Roon Class Seaplane Carrier | CivFanatics Forums

 

(もう一つ、こちらは航空艤装甲板下の構造が想像できるかも。整備格納庫があるんですね、きっと)出典: http://www.shipbucket.com/drawings/6206

作ってみたいなあ。いつかトライしよう。新モデルが入手できれば旧モデルは浮いてきますので、改造にトライするにはいい機会です。

上の二つの図を見る限りでは以前筆者がトライしたスウェーデン海軍の海防戦艦改造の水上機母艦「ドリスへティン」よりは手がかからなそう。

(上の写真はスウェーデン海軍の海防戦艦「ドリスへティン」の水上機母艦への改装後の概観:72mm in 1:1250 by C.O.B. Construvts and Miniature in Shapewaysからのセミ・スクラッチ)f:id:fw688i:20210228113324j:image

 

旧モデルとの比較

Navisの 新モデル未入手です

なかなか手頃なものが見つからない。ちょっと気長に探します。入手したら比較など、アップします。

 

シャルンホルスト級装甲巡洋艦同型艦2隻)

ja.wikipedia.org

Navis新モデル(NM31N)

f:id:fw688i:20220522131910p:image

(1907年、11,610トン、21cm(40口径)連装速射砲2基+同単装速射砲4基、23.5ノット 同型艦2隻:115mm in 1:1250 by Navis)

前級「ローン級」でドイツ帝国海軍の装甲巡洋艦は一応の完成形を得たと言ってもいいと考えるのですが、同級の建造でさらに一段階上の艦種への展開を目論んだと言ってもいいかもしれません。

それまで同海軍の装甲巡洋艦バルト海での活動に主眼を置き、いわば沿岸警備機能を想定して設計されていたのですが、従来の10000トンを切る艦型を、同級では一気に2000トン余り大型化し、強力な機関を搭載し優速性を一層高めた設計としました(23.5ノット)。あわせて主砲である40口径21センチ速射砲を連装砲塔で艦種・艦尾に各1基配置した従来の装備に加え、両舷側にも各単装砲2基を装備し、主砲を首尾線方向に4門(従来の2倍)、側方へ主砲6門(従来の1.5倍)を指向できる設計として、砲力の格段の強化を狙っています。f:id:fw688i:20220522110434p:image

(上の写真は「シャルんホスト級」の砲配置のアップ:中段写真では艦中央部の2層になった砲郭部分の上段に主砲である21センチ40口径速射砲(21cmSKL40)が単装砲架形式(ケースメート)で配置されていることがわかります。これにより同級は首尾線上に主砲4門、両舷に対し主砲6門を指向でき、砲力が格段とアップしました)

同級の登場により、それまで英海軍の装甲巡洋艦に対し一回り小さくやや非力感の否めなかった、同海軍の装甲巡洋艦はこれらを凌駕する戦闘能力を保有し得たと言っていいと思います。

第一次世界大戦では勃発時から東アジア艦隊の中核を構成していましたが、連合国として参戦した日本海軍による封鎖と接収を逃れるために他の艦隊所属巡洋艦と連携して通商破壊戦を展開しながら帰国を目指すこととなります。

その途上、コロネル沖海戦では英海軍の装甲巡洋艦部隊と交戦しこれを砲力で圧倒して撃沈する栄光を得ますが、その直後、フォークランド沖で英海軍の巡洋戦艦部隊に補足され、両艦とも撃沈されました(1914年)。

 

旧モデルとの比較

Navis旧モデル(NM31 )f:id:fw688i:20220522110446p:image

(上の写真は旧モデルの概観:NM31::下の写真は新旧モデル比較:旧モデル(NM31)の細部が左)

f:id:fw688i:20220522110437p:image

 

装甲巡洋艦ブリュッヒャー同型艦なし)

ja.wikipedia.org

Navis旧モデルのまま(NM30a):同級の新モデルは未入手です(現時点では入手計画はなし)

f:id:fw688i:20220522110849p:image

(1909年、15,840トン、21cm(44口径)連装速射砲6基、25.4ノット 同型艦なし:128mm in 1;1250 by Navis)

前級「シャルンホルスト級」の設計で、新たな設計段階に至った感のあるドイツ帝国海軍の走行巡洋艦でしたが、同艦ではその設計思想が更に深められることになります。

艦型を更に大型化し15000トンを超える大きな艦となり、強力な機関から25ノットを超える速力を発揮することができました。主砲は前級と同口径(21センチ)ですがさらに長砲身(44口径)を採用し(21cm SK L/44)、弩級戦艦並みの射程を得ています。連装砲塔6基12門の主砲数は、従来の装甲巡洋艦の概念を一新するものでした。f:id:fw688i:20220522110845p:image

(上の写真は「ブリュッヒャー」の砲配置のアップ:新設計の44口径21センチ砲をこちらも新設計の連装砲塔6基に装備し配置しています。中段写真ではケースメート式の副砲の配置も見ていただけます)

en.wikipedia.org

しかし既に英海軍はインヴィンシブルを始めとする同時期の戦艦と同口径主砲を装備した[巡洋戦艦]を建造し始めており、完成時点ではやや時代遅れの感が否めなくなっていて、同艦以降、装甲巡洋艦の建造は見送られ、ドイツ帝国海軍も巡洋戦艦の建造へと計画を移行させてゆくことになります。

第一次世界大戦では主砲の長射程と高速を有するがゆえに、巡洋戦艦部隊に組み入れられました。しかし主砲の威力の弩級巡洋戦艦超弩級巡洋戦艦との差は如何ともし難く、また高速とはいえ新設計の巡洋戦艦の速度には及ばず、大変苦戦をすることになりました。1915年のドッカー・バンク海戦にも、ドイツ巡洋戦艦部隊(偵察部隊)の一艦として参加しましたが、速度的にも配置的にも縦列の殿艦となり、英艦隊の砲撃で被弾後更に後落したところを集中砲火を受け、撃沈されました。

(前出の「コロネル沖海戦」「フォークランド沖海戦」そして「ドッカー・バンク海戦」については本稿でも下記の回でご紹介しています。興味があれば是非)

fw688i.hatenablog.com

 

少しモデルのヴァージョンの余談

Navisの 新モデル未入手です。それほど細部に不満がないので(上掲の各艦級のモデルも不満があったわけではないのですが)もしかしたら、懐事情から新モデル入手には動かないかも。入手したら比較など、アップします。しかし旧モデルとしては再現精度が相当高いと考えています。

(参考までに新モデル(NM30N)は下の写真で:こちらいつもモデル検索でお世話になっているsammelhafen.deから拝借:比べちゃうと、気になるかも)

(ちょっと余談ですが、Navisには「ブリュッヒャー」のモデルのヴァージョンがいくつかあるようです。筆者のモデルは「NM30a」とあるように、何らかの改良ヴァージョンだろうと推測できます。下の写真は「NM30」つまり元々のオリジナルヴァージョンとして前のsammelhafen.deに掲載されているモデルです)

(そのほかにNM A-19というモデルも(下の写真):主砲塔のモールドがシャープ? このモデル、筆者のコレクションにストックされているもう一隻の「ブリュッヒャー」かもしれません。少し穿った見方をすると、Navisでも「ブリュッヒャー」のモデルではなかなか満足のいくものができなかったのかな、などと考えてしまいます。或いは次々と新しい資料が見つかったとか? こういう想像をしながらモデルのヴァージョンの写真を見ているのも、楽しみのひとつかもしれません)

 

ドイツ帝国海軍装甲巡洋艦の勢揃い

一応、6艦級のモデルを並べておきましょう。艦型の大きさの推移が興味深い。

f:id:fw688i:20220522111604p:image

 (艦型比較:手前(下)から、フュスト・ビスマルクプリンツ・ハインリヒ、プリンツ・アーダルベルト級、ローン級、シャルンホルスト級ブリュッヒャー

 

ということで、今回はこのところ筆者の中では大きな問題(特に経済的な問題:このところの円安は更にそれに拍車をかけています)になってきているメーカーの新旧モデル・ヴァーション・アップの話をドイツ帝国海軍の装甲巡洋艦開発の経緯と絡めてご紹介しました。

この新旧ヴァージョン問題はその他の艦艇でも同じように惹起しており、ドイツ装甲巡洋艦の次は、そのライバルの英海軍装甲巡洋艦でも、より深刻な形で進行中です。(筆者としては、実はこの英海軍のNavis製モデルの新旧ヴァージョンの方がその差異が大きく、なんとかしたい、と思っていますので、これも近々、ご紹介することになるだろうなあと考えています)

ということで、今回はここまで。

 

次回はどうしましょうか?そろそろ「空母機動部隊」の話に戻らないと、と思いながら、なかなかそちらに興味が向かいません。

新着モデルの状況次第、というところで、少々行き当たりばったりで、いきたいと思います。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

 

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ワイマール共和国期のドイツ海軍旧式戦艦のモデル更新、そしてシン・ウルトラマン

本稿の読者ならばよくご承知のことと思いますが、先週の金曜日で「スター・トレック ピカード  シーズン2」が終わってしまいました。筆者としては「スター・トレック」ファンのみならず、全ての方に見ていただきたい大変クオリティの高いドラマシリーズで、ドラマとしてのクオリティもさることながら、テーマ自体がわれわれにとって「大切ななにものか」を伝えてくれる、そんな思わず背筋が伸び、見終わると姿勢が良くなっているような、そんなシリーズだったと思っています。

それが終わってしまった、ああ、これから金曜日はどうすればいいんだ、というのが前回のお話の冒頭だったのですが、世の中はよくしたもので(というか筆者が大変幸運に恵まれているのかもしれませんが)、今週末から「シン・ウルトラマン」が公開されています。

今回はそのお話と、本稿の下記の回でご紹介したモデルのアップデート問題に端を発して、さらにその発展系の新着モデルが届きましたので、そのご紹介を。

fw688i.hatenablog.com

上記の回のお話を少しかいつまんでおくと、ドイツ帝国の旧式な前弩級戦艦の艦級コレクションを例に引いて、筆者がこれまで1:1250スケールモデルとしては最も高品質な銘柄の一つと位置付けていたNavis製のモデルですら、新旧のヴァージョンでその品質(ディテイルの再現性など)に大きな差異が見受けられ、知ってしまうと更新せざるを得ない気持ちに駆られ、いつまで経ってもコレクションが完成しない、という悲鳴に近い嗜虐的な「喜び=興味」の話をご紹介したのでした。

そしてそのお話の延長上で、いくつかのより高品質なモデルが入手できたので、そちらをご紹介しておこう、今回はそういうお話です。

 

と言うことなのですが、さていつものように本題の前に、今週の時事ネタ、というか映画「シン・ウルトラマン」のお話を。

映画「シン・ウルトラマン

youtu.be

上掲の予告編でもお分かりのように5月13日公開の映画です。

 

(さてここからは例によってネタバレは大いに予測されます。、もう気にしません。ネタバレ、あります、きっと)

***(ネタバレ嫌な人の自己責任撤退ラインはここ:ネタバレ回避したい人は、次の青い大文字見出しに「engage!」)***

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Star Trek: Picard - Engage! - Episode 3 finale - YouTube

(おお、ピカード 再登場です!)

 

 

この映画は、その表題からも明らかなように「シン・ゴジラ」に続き庵野秀明氏総監修の「空想特撮映画」。早速映画館へ行ってきました(実は2回見ちゃった)。

もう最初のカットから、なんと盛りだくさんな内容の映画だったことか。盛り沢山すぎて、最初はなにやらパロディ的なものを見ているのか、そう思ったほどでした。「シン・ゴジラ」のDNAを受け継いで、もちろん特撮や細部のリアリティ(一見、リアリティ?=ニヤッとするような)には、思わず唸らせられるシーンが散りばめられていますし、凄いテンポで進む物語も「シン・ゴジラ」から受け継がれています。それでいて「子供の頃の」何かを受け取ってしまう、そんな映画でした。もちろん映像のそこここに「エヴァ」の血を受け継ぐカットが。

 

見終わって最初に思ったことは、「何度か見なきゃ」でした。

筆者は家族によく言われるのですが「同じものを、気に入ったら何度も観る」習性があるようです(自覚もしています、ちゃんと)。これもコレクターの性でしょうかね。そして観るたびに発見があるのです、それも驚くほどの(記憶力が弱いだけ、かも。危ない危ない)。それが愉しい。

この映画も見る度に異なる何かを与えてくれる、そんな映画じゃないかな、というのが実は強烈な第一印象、でした。それはいわゆる「胸を揺さぶるような感動」などとは少し異質の、強いて言うなら「新しい何かを見つけた」時の気持ちに近い何か。

 

とにかく「お勧め」です。しかし決して物事をじっくりと考えさせるような、そんな「思索的な深さ」を強要するような物語ではありません。見る側は物語の流れに素直に乗っかってゆけば良い、それでも与えてもらった何かがじっくりと胸の中で成長していくような、そんな映画だと思うのです。

キャストやストーリーのディテイルについて書きたいことは山ほどありますが、これをすると意図的な「ネタバレ」になってしまうので、じっと、しばらくの間は堪えることにします。

(映画のパンフレットには「ネタバレ注意」と言う帯封がされています。何を語ろうとも、ネタバレにはなっちゃうんだろうなあ)

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次は「シン・仮面ライダー」だそうです。実は筆者は「仮面ライダー」についてはほとんど思い入れがなく、あまり興味がないなあ、と思っていたのですが、やはりこのシリーズ(なのかな?)であれば、見にいくでしょうね。

 

 

さてここからが今回の本題。

ワイマール共和国期のドイツ海軍主力艦(Neptun社製のモデルを入手)

少しおさらいを。

第一次大戦前には英国に次ぐ世界第2位の規模の大海軍を誇っていたドイツは、敗戦後のヴェルサイユ条約で装甲を持つ軍艦としては旧式の前弩級戦艦6隻(予備艦を入れて8隻)しか保有を許されず、沿岸警備海軍へと転落しました。

その際に保有を許されたのがブラウンシュヴァイク級」戦艦5隻(「ブラウンシュヴァイク」「エルザス」「ヘッセン」そして予備艦として「プロイセン」「ロートリンゲン」)と「ドイッチュラント級」戦艦3隻(「ハノーファー」「シュレージエン」「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」)でした。

上掲の回ではこれらニ艦級に加えドイツ帝国海軍時代からの前弩級戦艦全てのモデルのアップデート等をご紹介したのですが、今回は「シュレージェン」と「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」のNeptun社製モデルが入手でき、「ブラウンシュヴァイク級」のNavis社製モデルとあわせてクオリティが揃ったので、そちらをご紹介します。

 

建造年代の古い順に、まずは「ブラウンシュヴァイク級」のご紹介から。(この艦級については、ほぼ上掲でのご紹介のまま。新旧モデルの比較はカットしています

ブラウンシュヴァイク級」戦艦(1904- 同型艦5隻)

ja.wikipedia.org

(1904-, 14394t, 18knots, 11in *2*2, 5 ships)

就役時:Navisモデル(NM 11N)

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(「ブラウンシュヴァイク級」戦艦の概観:102mm in 1:1250 by Navis: ようやく実用化がかなった11インチ速射砲を主砲として採用したため、大型の主砲塔を搭載しています)

同級は英海軍との戦闘、つまりバルト海だけではなく北海での運用を想定して設計された艦級です。最大の特徴は実用化された速射砲としては当時最大口径の新開発11インチ速射砲を主砲として採用したことで、さらに副砲の一部を砲塔形式で搭載し、射界を大きくしています。

第一次世界大戦期には、既に二線級戦力と見做され、主として沿岸防備任務につきました。「ヘッセン」のみは英独の決戦であったユトランド沖海戦に参加しています。1917年に補助艦艇に艦種が変更となりましたが、敗戦後、ベルサイユ条約で同級の「ブラウンシュヴァイク」「エルザース」「ヘッセン」の3隻保有が認められ、ワイマール共和国海軍では主力艦とされました。

 

ヴァリエーション・モデルのご紹介 その1

ワイマール共和国海軍時代:1932年の「ヘッセン」(Navis新モデル(NM 11R))

このお話の発端ともなった新たなNavis社のモデルです。

前述のようにベルサイユ条約で、同級は保有を認められましたが、既に第一次世界大戦期にあっても旧式艦であったので、いずれは沿岸警備艦として近代化改装される計画がありましたが、やがてナチスの台頭と再軍備宣言で新型主力艦の建造に注力されたため、大々的な改装は行われませんでした。

同級のネームシップである「ブラウンシュヴァイク」は1932年に、「エルザース」は1936年にそれぞれ破棄され、第二次世界大戦には参加しませんでした。

下の写真は1932年次にワイマール共和国海軍の主力艦であった当時を再現したモデルで、艦橋構造が変更されているのが分かります。

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1905年次モデル(左列)と1932年次モデルの比較

(艦橋と前檣・後檣の構造の差異が目立ちます)

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ヴァリエーション・モデルのご紹介 その2

標的艦ヘッセン

同級はナチスの台頭と共に再軍備宣言が行われると新型艦の就役に伴い順次退役し1930年代に解体されました。「ヘッセン」のみは標的艦として残され、第二次世界大戦では砕氷船としても運用されました。

標的艦となった「ヘッセン」の概観:by Mercator)

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ドイッチュラント級」戦艦(1906- 同型艦5隻)

ja.wikipedia.org

(1906-, 13200t, 18.5knots, 11in*2*2, 5 ships)

就役時:Navis新モデル(NM 10N)

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(「ドイッチュラント級」戦艦の概観:106mm inn1:1250 by Navis: ようやく実用化がかなった11インチ速射砲を主砲として採用したため、大型の主砲塔を搭載しています)

同級はドイツ帝国海軍が建造した最後の前弩級戦艦です。前級「ブラウンシュヴァイツ級」と同一戦隊を組むという前提で建造されたため、基本設計は前級に準じた、前級の拡大改良版です。前級が武装過多から安定性に欠けるという課題を指摘されたため、同級では艦橋の簡素化や副砲塔の廃止が行われました。

1906年から1908年にかけて就役し、前弩級戦艦としては最新の艦級でしたが、就役時には既に弩級戦艦の時代が到来して旧式艦と見做されていました。

第一次世界大戦の最大の海戦であったユトランド沖海戦には第二戦艦戦隊として同級の5隻と「ブラウンシュバイク級」の「ヘッセン」が序列され、英戦艦隊の追撃を受け苦戦していたヒッパー指揮のドイツ巡洋戦艦戦隊の救援に出撃しています。この救援戦闘で同級の「ポンメルン」が英艦隊の砲撃で損傷し、その後英駆逐艦の雷撃で撃沈されました。

前級と同様に1917年には戦艦籍から除かれました。ネームシップの「ドイッチュラント」は宿泊艦となり状態不良のまま1922年に解体されました。

残る「ハノーファー」「シュレージエン」「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」が新生ドイツ海軍で保有を許され、その主力艦となったわけですが、1930年代に上部構造や煙突の改修などの近代化改装を受けて、艦容が一変しています。

 

ヴァリエーション・モデルのご紹介 

ワイマール共和国海軍時代の「シュレージエン級」戦艦(Neptun製)

(今回入手したNeptun製の「シュレージエン」(手前、下段右)と「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」:NeptunとNavisはいわゆる姉妹銘柄で、原則として第一次世界大戦期周辺のモデルをNavis銘柄で、第二次世界大戦期周辺をNeptun銘柄がカバーしています)

前述のように、同級はヴェルサイユ条約保有を認められ、第一次大戦で戦没した「ポンメルン」と状態不良の「ドイッチュラント」を除く「ハノーファー」「シュレージエン」「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」の3隻がワイマール共和国海軍(新生ドイツ海軍)に編入されました。

ネームシップの「ドイッチュラント」が上述のように状態不良により既に除籍されていたため、この3隻を「シュレージエン級」と呼ぶことが多いようです。

その後ヒトラー再軍備を宣言し新造艦艇が就役し始めると同級は練習艦に艦種変更されました。

同級のうち「ハノーファー」は1931年に除籍され無線誘導式の標的艦への改造が計画されましたが実行はされず、爆弾の実験等に使用された後、1944年頃に解体されました。

 

近代化改装後の「シュレージエン」(Neptun製モデル)

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(近代化改装後の「シュレージエン」の概観 by Neptun):

「シュレージエン級:ドイッチュラント級」の残る2隻「シュレージエン」と「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」は、第二次世界大戦期には練習艦として就役していて、主としてバルト海方面で主砲を活かした艦砲射撃任務等に従事し、緒戦のドイツ軍のポーランド侵攻では「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」のポーランド軍のヴェステルブラッテ要塞への砲撃が第二次世界大戦開戦の第一撃となったとされています。その後も主砲力を活かした地上砲撃等の任務に運用され、東部戦線での退却戦の支援艦砲射撃等を行っています。大戦末期には「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」は空襲で、「シュレージエン」は触雷でそれぞれ損傷し、自沈処分とされました。

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(上の写真はこれまで本稿でご紹介した際の同艦のHansa製モデル)

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(直上の写真は「シュレージェン」のNeptun製モデルとHansa製モデルの比較)

細部の再現性には両者でかなり差があるようです。Hansa製のモデルももちろん標準以上のディテイルを備えているモデルだとは思いますが、やや骨太に表現されすぎているように思います。Neptun製はそれを凌駕した繊細なディテイルで表現されているように感じます。下に紹介する「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」も同様です。

 

近代化改装後の「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」(Neptun製モデル)

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(近代化改装後の「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」の概観 by Neptun:「シュレージエン」と異なり一番煙突に誘導路が設けられ2番煙突との集合煙突になったことがわかります)f:id:fw688i:20220515091834p:image

(上の写真はこれまで本稿でご紹介した際の同艦のHansa製モデル)

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(直上の写真は「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」のNeptun製モデルとHansa製モデルの比較:ディテイルの繊細さではNeptun製モデルに「一日の長」が)

 

標的艦への改装後の「ハノーファー(Neptun製:モデル未入手)

(直下の写真は「ハノーファー」の標的艦仕様のモデルの概観(筆者は保有していません):実際にこの形態になったのかどうかは、不明です。こちらいつもモデル検索でお世話になっているsammelhafen.deから拝借しています。by Neptun:Neptunからモデルが出ているということは、実艦が存在したということかな?)

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というわけで、今回「シュレージェン」と「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」両戦艦(当時は練習艦)のNeptun製モデルの入手を機に、ワイマール共和国期のドイツ海軍が主力艦として保有していた旧式前弩級戦艦の艦級を再度ご紹介しました。

 

ということで、今回はこの辺りで。

 

次回は、今回の流れを受けてもう一度モデルのヴァージョンアップ対応の進捗のお話を、ドイツ帝国装甲巡洋艦と一部の巡洋艦のモデルの状況を中心に、ご紹介したいと思っています。いつものように、筆者の予告編は、あまり当てになりませんが。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

 

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GW:懸案の「あの防空巡洋艦」を製作:そしてピカード ・シーズン2の最終話:終わってしまった

GW、皆さんはゆっくりできましたか?

久々の制限のない大型連休、という事で、これまでやれなかった事、行けなかった場所に行かれた方も多いのでは?筆者はと言うと、取り立てて特別なこれと言った事はなく、静かでゆっくりと自分の時間を持つことができました。これはこれで大収穫。

ご褒美的な出来事としては庭の薔薇が、今年はGWに同時に咲いてくれたこと。

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(上の写真:庭の黄色い薔薇「イルミナーレ」:我が家の庭に来て3年ほどになりますが、実はこんなに一斉に咲いてくれたのは、初めてです)
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(上の写真:我が家の庭の主的な存在である白い薔薇「アイスバーグ」:毎年、この時期は満開に。そして今年は一緒にピンクの薔薇「フューチャー・パヒューム」も一輪だけ花を咲かせてくれました。この子はうちに来て足掛け2年と言うところ(下段中央)。ついでに、と言うと失礼にあたるかもしれませんが、最古参のミニ薔薇君も花をつけてくれています(下段右:こんなに庭が薔薇で賑やかなのは、初めてかも

 

そして、長らく気になっていた英海軍の「あの防空巡洋艦」を形にすることができた、これもささやかな成果、と言っていいでしょう。

この制作についての構想はかなり以前から(本稿でも記述はしていました)持っていて、素材の調達も手順の組み立て(妄想)も終わっていたのですが、GWをきっかけとして手をつけることが出来ました。集めた素材をあらためて広げてみて、設計の最終構想の決定と実際の作業、そして塗装ほか細部の仕上げ、と足掛け3日、7時間ほどの作業でした。これはやはりまとまった時間が取れたから、かと。

今回はその成果のご紹介と、英海軍の防空巡洋艦のおさらいを。

今回はそう言うお話です。

 

・・・と言うことなのですが、本論のその前に、例によって。

スター・トレック ピカード  シーズン2」Episord 10(最終話)

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(ネタバレの禁忌は大いに冒してしまったので、もう気にしません。ネタバレ、あります、今回は特にすごいぞ。この最終話を「ネタバレ無し」で書くなんて、ちょっと無理)

***(ネタバレ嫌な人の自己責任撤退ラインはここ:ネタバレ回避したい人は、次の青い大文字見出しに「engage!」)***

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Star Trek: Picard - Engage! - Episode 3 finale - YouTube

 

ああ、終わってしまった!

散々「こんなことで終われるのか」「シーズン3が制作されているので、そちらに持ち越せば良い」「ゆっくり時間をかけてほしい」、なんて勝手なことを書き散らしてきましたが、終わってみれば、「ああ、これしかないじゃん」という、筆者にとっては、結果、大満足の最終回でした。皆さんはどうでしたか?(見ている前提、でのお話になっています。見てない人、ごめんなさい。でも、とにかく、見たほうがいい)

本稿前回で「パズルのピースは嵌まりつつあるのです。でもわからないのは、全体になんの絵が描かれているのか」と書きましたが、「スター・トレックにふさわしい」こんな絵が描かれていたのだとは、本当に驚きです。

 

ウェスリー・スラッシャーの登場、これもびっくり。(ありゃあ、すっかりオッサンでしたね。シーズン3には出ないとか、ちょっと残念)

スン博士と「カーン計画」(あれほど大切に思っていた「娘」だったはずなのに、なんと気持ちの切り替えの早いことか。あるいは既に構想があったということは、なんか気持ちの散り方が共感できたりします。まあ、レベルの違う話ではありますが)。

 

そして何よりピカード「Q」の対話、これはもう圧巻でしたね。「Q」が「私の友達」と言い、「神々にもお気に入りがいる」と言ってしまうとは。

これを受けてピカード も「独りではない」と「Q」を抱擁するのです。

本稿前回で、この物語の行方が分からず(今となっては、当然でしたね。こんなのわかるはずがなかったし、分からなくて良かった)、それでもあと一回で終わると言う不安に駆られ、つい「ちょっと怖いのは、「Q」がパチンと指を鳴らして「ほら、元通り。楽しんでくれたかな?」なんて展開」と書いたのですが、今回の「指パッチン」なら、これはもう「あり」です。

 

リオスが残る決断をしたのは、個人的には「良かった」。

 

そしてこれも前回書いたのですが、その後現れるジュラティが同化(参画)した(あえて、「同化された」ではなく「同化した」と書きたい)「良きボーグ」と、「暫定的」と謳われた連邦との協力関係の出現。これはなんとも「スター・トレック」的なエンデイングでした。さらにちゃんとシーズン3への脅威も提示されました。

 

最後の「我々は家族だ、そうだろう」のダメ押しは、ちょっと余分な気もしましたが、やがてラリスの元に帰ったピカード の「繰り返したくない瞬間と、戻りたい瞬間」「時間は二度目のチャンスを与えてはくれないが、人にはそれができる」などは、きっとずっと残る名言になるのでしょうね。ラリスとピカード に安らかな時が訪れることを改めて強く願いました。(シーズン3までの短い期間にせよ)

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それにしても、こんな回りくどい口説き文句を使うとは、ピカード 、やるなあ。

 

ともかく全てが第一話に帰納されて、大きな調和が生まれるのを、筆者はただ口を開けて見ていたのでした。魔法のようなひととき、いやあ、凄かった。

ドラマが終わる、この名残惜しい気持ちは、これは全く変わりませんが、見終えた後に残る「喪失感」をはるかに超えた「驚きと充足感」から、大きなものをもらった気がしています。それは「希望」とか「勇気」とか、文字にすれば少し恥ずかしいけどそんなものに近い何か、なんだと思います。

 

とは言え、終わってしまいました。少し落ち着いたら、また見るのでしょうね。

これ以上書くと、思考があらぬ方向へと行ってしまいそうなので、もらった「元気」を大切にしつつ、このお話は今回はこの辺にしておきます。

でも、来週から金曜日、どうしよう。

youtu.be

音楽は、・・・こっちの気分かな?

www.youtube.com

 

 

さてここからは今回の本題。

GW:「あの防空巡洋艦」の制作

本稿ではほぼ一年前の2021年5月9日の投稿で、英海軍の軽巡洋艦防空巡洋艦のご紹介をしています。

fw688i.hatenablog.com

さらにこの投稿の約1ヶ月後、6月6日の投稿で、さらにこのヴァリエーションを追加しています

fw688i.hatenablog.com

 

ロイアル・ネイビーの防空巡洋艦建造事情

この2回を通じて、英海軍の第二次世界大戦期に建造された防空巡洋艦として「ダイドー級」と「ベローナ級」そして「ダイドー級」の装備砲のヴァリエーション、「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」をご紹介しています。

この両艦級を簡単におさらいしておくと。(この後、各艦級の紹介は、上掲の2回の投稿をベースにしていますので、内容がかなり被ります。ご容赦を)

 

ダイドー級軽巡洋艦同型艦:11隻)

ja.wikipedia.org

(直上の写真:「ダイドー級」の概観。125mm in 1:1250 by Neptun)

 本級は「アリシューザ級」軽巡洋艦の設計をベースにした5500トン級の船体に新開発の5.25インチ両用砲を連装砲塔形式で5基搭載しています。

en.wikipedia.org

本級の主兵装として採用された5.25インチ両用砲は、その名の通り対空戦闘と対艦戦闘の双方に適応することを目的に開発され、砲塔形式の異なるタイプが新型戦艦「キング・ジョージV世級」等にも従来の副砲に代わる兵装として搭載されています。しかし、本級は対空戦闘に重点を置き設計された艦であったにもかかわらず、結果的には対艦戦闘への適応から弾体にある程度の重量が必要で、このことが対空射撃時の発射速度の低下を招き、高速化の著しい航空機に対する対応力を低下させてしまうという結果を招き、必ずしも当初の目的のためには成功作であるとは言えない結果となりました。

(直上の写真:「ダイドー級」の兵装配置の拡大。5.25インチ両用砲塔の配置に注目)

 

ダイドー級4.5インチ対空砲装備型(ダイドー級11隻中の2隻)

ダイドー級の建造にあたっては、その最大の特徴であるはずの5.25インチ連装主砲塔の生産が間に合わず、第1グループとして建造された3隻は5.25インチ連装砲塔4基と4インチ単装対空砲1基の混載で就役せざるを得ませんでした。第2グループ6隻はようやく連装砲塔5基を装備して就役しましたが、定数の砲塔5基を装備できた艦は同級11隻中第2グループのこの6隻にすぎず、第3グループ2隻は、空母「イラストリアス」等で実績のあった4.5インチ対空連装砲を4基搭載して完成されました。

en.wikipedia.org

(「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」の概観:by Argonaut:やはり主砲がやや弱々しく見えませんか?) 

(直上の写真は、「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」(左列)と「ダイドー級5.25インチ両用砲装備型」の対比。武装の違いだけながら、かなり細部の造作が異なることがよくわかりますね。大きくは両用砲が砲塔になっているのに対し、高角砲が防盾仕様になっているところから差異が出てくるのでしょうね)

結局、この両艦「カリブディス(HMS Chrybdis)」「シラ(HMS Scylla)」は、巡洋艦とは言いながら駆逐艦並みの火力で就役せねばならなかったわけです。

大戦では主に地中海方面運用されることが多く、11隻中4隻が戦没しています。 

 

ベローナ級軽巡洋艦同型艦:5隻)

ja.wikipedia.org

(直上の写真:「ベローナ級」の概観。125mm in 1:1250 by Neptun)

本級は「ダイドー級」の改良型で、設計段階から5.25インチ両用連装砲4基として、撤去された3番砲塔(Q砲塔)跡に40mm4連装ポンポン砲を追加して近接防御火器を2基から3基に強化しています。両用砲塔をポンポン砲に置き換えたことで、艦橋構造が一層低くなり、砲塔の撤去と併せて低重心化しています。

また対空火器をレーダー・コントロールとして対空戦闘能力を強化しています。

ダイドー級」ではやや後方に傾斜していた煙突とマストが直立し、上記の上部構造の低重心化と併せて「腰高感」の否めなかった外観が改善されています。f:id:fw688i:20210502145721j:image

(直上の写真:「ベローナ級」の兵装配置の拡大 )

(直上の写真:「ダイドー級」と「ベローナ級」の比較。煙突とマストの角度の違いに注目)

 

有名な架空の防空巡洋艦の存在

また、6月6日の投稿では、これらのご紹介の中で、実はこの両艦級の間に非常に有名な防空巡洋艦が、ある意味「存在している」とも記述しています。

それはアリステア・マクリーンの海洋小説の名作「女王陛下のユリシーズ号」に登場する防空巡洋艦ユリシーズ」で、この6月6日の投稿での「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」の入手の紹介の際も、実はこの「ユリシーズ」の制作を意識して、1隻を「ユリシーズ」へ改造することを目論んで「同モデルを2隻入手した」とも書いています。

つまり「ユリシーズ」制作計画は、今からちょうど一年ほど前に始動していたわけです。

 

防空巡洋艦ユリシーズ

本稿の読者のような多少なりとも艦船に興味にある方ならば、おそらく一般よりも高い比率でお読みになった方がいらっしゃるのではないかと思うのですが、本書「女王陛下のユリシーズ号」は前述の通りアリステア・マクリーンの書いた海洋小説の名作で、第二次世界大戦中の北大西洋で輸送船団を護衛し、来襲するドイツ空軍・海軍と死闘を繰り広げつつ続けられた第14護衛空母戦隊の航海を、その旗艦「ユリシーズ」を中心に描いた作品です。

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登場する「ユリシーズ」は本書に登場する架空の軍艦で、小説の本文中の記述を引用させていただくと「有名なダイドー級改型の5500トン、ブラック・プリンス級の先駆で、この型のものとしてはただ一艦である」(ハヤカワ文庫版:村上博基氏訳56ページより)という一文があり、全長510フィート(155.5m)、5.25インチ連装両用砲4基(前後に2基づつ)、ポンポン砲3基などの搭載火器に関する記述が続きます。

ja.wikipedia.org

スペックで比較すると「ダイドー級」「ベローナ級」(本文では「ブラック・プリンス級」と表記されています)のいずれよりも少し小さく、乱暴にまとめると主要武装は「ベローナ級」と同等、速力はやや早い、そんな感じです。

 

これは巷では言わぬが花だそうですが、タイトルに違和感あり

以前から「女王陛下のユリシーズ号」という邦題には違和感を抱いていました。原題は「H.M.S. Ulysees」で、第二次世界大戦当時の英国は国王ジョージ6世の治下にあり、H.M.S.は当然 His Majesty's Ship=「国王陛下の船」であるべきだと思ってきたのです。艦船ファンとしては原題のまま「H M.S. ユリシーズ号」でも良いのに、と思いながら。同じ早川書房さんの文庫でも、ダグラス・リーマンのこれも名作、やはり第二次世界大戦中の小説ではタイトルは「国王陛下のUボート」になっているのに。(こちらは原題は"Go In and Sink!" で全く似ても似つきませんが)まあ、今となっては名作としてもう定着してしまっているから、改題とかはしないほうがいいのかもしれませんね。

 

防空巡洋艦ユリシーズ」制作計画:「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」からの改造プランの挫折

話を戻すと、当初は、約一年前に入手した「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」をベースに4基の主砲を「4.5インチ連装対空砲」から両級の特徴である「5.25インチ連装両用砲」の手持ちのストックパーツに換装すればいいかと、比較的安易に考えていたのですが、入手後、「4.5インチ対空砲装備型」モデルの砲塔前の波返板などの造作が想像以上に大きく、細部も思いの外4.5インチ対空砲に合わせた仕様に変更になっているので、どうも単に主砲塔の換装だけで終わる、と言うようなことではなさそうだ、と言うことに気づいたわけです。

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(上の写真は当初の改造計画を見直す原因となった4.5インチ対空砲周辺の配置のアップ。予想以上に造作の大きかった波返板(上段2番砲塔前と下段3番砲塔後))

もちろん、この「4.5インチ対空砲装備型」のモデルを見つける以前は、オリジナルの「ダイドー級」から主砲塔1基をポンポン砲に換装すればいい、と言う最もイージーな発想だったのですが、「ダイドー級」は艦首部に主砲塔が三段背負式で装備されていて、艦橋部がやや高すぎる、と言う違和感があり、この艦橋部の工作はやや大仕事になるので、最初から艦橋部には手を入れなくて良さそうな「4.5インチ対空砲装備型」をベースにしよう、と言う計算に行きついて、さらにここで課題が見つかった、と言う次第でした。寸法だって微妙に異なるし、さて、どうしたものか、と・・・。

 

防空巡洋艦ユリシーズ」修正制作計画:「アリシューザ級」改造プランの始動

違和感や作業の大変さを考えると、いっそ、記述されているスペックを全部無視して新しいストーリーに基づいて全くの架空艦(どうせ元々架空艦なんだし)を作ってもいいかな、と思い始めているところ、と言う記述が6月6日の投稿では記されています。

そうすると、「ダイドー級」がそもそも「アリシューザ級」軽巡洋艦をベースに設計された、という背景に乗っかって、「アリシューザ級」の防空艦改造版、というのでも良いかな、という妄想がむくむくと頭をもたげてきます。

(直上の写真は、防空巡洋艦ユリシーズ」への改造母体として検討された「アリシューザ級」軽巡洋艦の概観:123mm in 1:1250 by Neptun)

ユリシーズ」に関する小説中の記述で、「ダイドー級」と「ベローナ級」の間で設計されたにも関わらず、どちらよりも少し小さい、というのも設定としてそもそも違和感があります。ならばいっそ、この種の護衛艦艇の建造の緊急性を考慮して、一方では「経済性を考慮するあまり、ちょっとスペックダウンしすぎたかな」と思われ始めた「アリシューザ級」の建造途中の5番艦が船団護衛の中核艦として防空巡洋艦として完成させられた、というのもなかなか良いストーリーではないかと。(もう全然、小説とは関係なくなるかも、ですが)

ということで今回はこの「アリシューザ級」軽巡洋艦改造プランに乗っかった防空巡洋艦ユリシーズ」をご紹介します。

 

防空巡洋艦ユリシーズ

完成したモデルがこちら。

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(直上の写真は、防空巡洋艦ユリシーズ」の概観:123mm in 1:1250 by Neptun:「アリシューザ級」がベースなので寸法は同じです)

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(直上の写真は「ユリシーズ」の主要兵装配置の拡大:艦首部に5.25インチ連装両用砲塔2基、艦首脇に対空機関砲座(写真上段):艦中央部にポンポン砲砲座3基と魚卵発射管(写真中段):艦尾部に5.25インチ連装両用砲塔2基:基本的な主要兵装は「ベローナ級」に準じています)

英海軍は航空機攻撃の脅威に備えるために「アリシューザ級」軽巡洋艦の設計をベースとした「ダイドー級防空巡洋艦11隻の建造に着手しましたが、同時に同種の船団護衛部隊の中核艦の切実な必要性を考慮して、当時建造予定だった「アリシューザ級」軽巡洋艦の5番艦の防空巡洋艦への転用を決定しました。こうして防空巡洋艦ユリシーズ」は同型艦をもたない巡洋艦として1隻だけ誕生しました。(繰り返しですが、「架空艦」のお話ですので、ご注意を)

 

では改造母体となった「アリシューザ級」軽巡洋艦とはどういう船だったのか。

アリシューザ級軽巡洋艦同型艦:4隻)

ja.wikipedia.org

(直上の写真は、「アリシューザ級」軽巡洋艦の概観:123mm in 1:1250 by Neptune)

そもそも「ユリシーズ」のベースとなった「アリシューザ級」軽巡洋艦は、前級「パース級」の主砲塔を1基減じて、それに合わせて5000トン級に縮小した船体に出力を減じた機関を搭載することで経済性を求めた設計となっています。

同艦の設計は、艦型の小型化と武装の軽減により、英海軍の重要な任務である広範囲な連邦領・植民地や通商路の警備・保護に必要な軽快な機動性を持つ軽巡洋艦の隻数を揃える試みの一つでした。広大な通商路の警備に必要な巡洋艦の理想的な理論値は一説では70隻と言われていますが、未だに第一次世界大戦の痛手の癒えない財政はとてもこれを賄えるような状況ではなく、一方で大量に保有する第一次世界大戦型の旧式軽巡洋艦(C級、D級)を廃棄処分し、これをいかに置き換得てゆくか、条約の保有枠の制限と、疲弊した経済の両面から、当時の英国の苦悩が現れた艦級の一つと言ってもいいでしょう。

船体の小型化により、生存性はやや低下しましたが、速力は前級と同レベルを維持し、ある程度の戦闘力を持ち高い居住性と航洋性を兼ね備えた、通商路保護の本来の軽巡洋艦の目的に沿った手堅い設計の艦だったと言えるでしょう。

隻数をそろえる目的と言う意味では、同様の試みが英海軍の最後の重巡洋艦となった「ヨーク級」でも行われたのですが、スペックを抑え上記のように生存性をやや低下させながらも期待ほどの経済効果が得られず、同級も4隻で建造が打ち切られ、5番艦は整備が急がれた防空巡洋艦に転用されました。(この辺りはもちろん筆者の架空の創作(妄想)ですのでご注意を)

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折からやはり軍縮条約の制限を意識した日米海軍は奇しくも制限枠に達しこれ以上新造艦を建造できない重巡洋艦に代わり、重巡洋艦とも対峙できる大型重装備の軽巡洋艦の建造(6インチ砲15門装備)に指向しており、これと対比すると同級の非力さは否めず(6インチ砲6門装備)、平時向けの巡洋艦、という評価も受け入れざるを得ない状況でした。

 

「アリシューザ級」軽巡洋艦からの改造要目

今回の制作にあたり、ベースとなった「アリシューザ級」軽巡洋艦からの改造要目は、以下の通りです。

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1)主砲の換装:これは今回の改造の目玉となる重要な部分です。6インチ連装砲塔3基を撤去し、砲塔基部を活かして5.25インチ連装両用砲塔4基を設置しています。3番砲塔の位置にはもともと砲塔がありませんでしたので、基部らしき造作を加えています。搭載した5.25インチ連装両用砲塔はAtlas社製「プリンス・オブ・ウェールズ」から転用しています。このモデルはプラスティックと金属で構成されているモデルで、価格も手頃でパーツ取りモデルとしては大変優秀だと思い、重宝しています。5.25インチ連装両用砲塔のフォルムは特徴をよく捉えていると思っているのですが、何故か8基ある砲塔の大きさが揃っていません。今回は複数のモデルから大きさの揃っているものをチョイスして搭載しています。(上掲の写真の上段と下段:左が「アリシューザ級」)

2)艦中央部、航空艤装用クレーン・カタパルトの撤去と中央ポンポン砲砲座の設置。基部からパーツをカットし、ヤスリで平坦にして、その上にこれもAtlas社製の「フッド」から基部付きのポンポン砲を転用しています。高さなどは適当に調整してあります。この位置は、ほぼ原作通り(ハヤカワ文庫版「女王陛下のユリシーズ号」にはこの小説の戦闘航海の航路図と「ユリシーズ」の艦内配置図が掲載されています。今回の制作にあたってはこれを参考にさせていただいています)ですが、やや射界に問題はないのかな、などと考えています。砲座が艦の中央構造線上にあるので左右の射界はかなり広いのですが、前後は艦橋と後部煙突等が射界を遮ります。(写真中段:左が「アリシューザ級」)

3)艦後部、「アリシューザ級」が装備していた4インチ連装対空砲4基と後部探照灯台座等を撤去して後部対空砲射撃指揮所の設置及び指揮所両脇に後部ポンポン砲砲座を設置しています。少し後部上構の基部を整形してあります。撤去後はヤスリで平坦に仕上げてその上に対空砲射撃指揮所らしきものをストックパーツから転用しています。(写真下段:左が「アリシューザ級」)

 

原作に登場する「ユリシーズ」との相違点

「アリシューザ級」をベースにし今回筆者が制作した「ユリシーズ」と原作に記載されているスペックの相違点は以下の通りです。

まず、全長が筆者制作版の方が少し短い。原作では前述のように全長510フィート(155.5m)であるのに対し、「アリシューザ級」をベースにした筆者版は506フィート(154.2m)となりました。加えて現作では3基のポンポン砲は艦橋前、艦中央部、3番砲塔前と、間の中央線に沿って配置されていることになっています。(下の艦内配置図(ハヤカワ文庫版掲載)を参照してください)

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筆者版では3基と言う装備数は同一ながら、艦橋前は設置スペースが捻出できず、艦中央部(「アリシューザ級」ではカタパルト台の位置)と後橋の両脇の配置となっています。更に、筆者版では艦橋前の近接防空兵装が手薄に思われたので、単装機関砲2基を増設してあります。

(下の写真:筆者版「ユリシーズ」の原作版と異なる武装配置の拡大:2番主砲塔後ろに対空機関砲座を増設(写真上段):後橋周りに配置されたポンポン砲砲座(写真下段))

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(下の写真は、参考までに、「ベローナ級」のポンポン砲砲座配置の拡大:艦橋前に1基が配置され(写真上段)、艦中央部に2基が配置されています(写真下段))

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艦尾方向にやや「寸詰まり感」のある「アリシューザ級」をベースとしているため(艦尾の主砲塔が1基とされたため?)、艦の中央部が少し間伸びした感じになっていますが、これはこれで「ダイドー級」等とは出自が異なる「ユリシーズ」(これは筆者独自の設定ですが)の特徴を表している、まあ、そう言うことにしておきます。

結論:なかなかいいんじゃない?

架空艦はやはり楽しいなあ。違和感は違和感として、いろいろと考えさせてくれます。・・・と、自己満足はこのくらいにしておきましょう。

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(上の写真は英海軍の防空巡洋艦の大きさ比較:手前から「ユリシーズ」「ベローナ級」「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」「ダイドー級」の順:筆者が抱いている、今回製作した「ユリシーズ」の艦中央部の間延び(?)=煙突の間隔の広さ、と艦尾の寸詰まり感、わかっていただけますかね)

 

ダイドー級」就役以前の英海軍の防空巡洋艦の整備:既存艦の防空巡洋艦への改造

英海軍は第一次世界大戦後、航空機の発達による脅威の増大を予見して、旧式のC級軽巡洋艦の数隻の主砲を4インチ対空砲に換装し防空巡洋艦に改装します。

(これは、検索した限りどこにもそれらしい資料が見当たらないので、ここだけの筆者による憶測、ということにして頂き、「まあそんなこともるかも」くらいの「聞き流し」でお願いしたいのですが、ロンドン条約では軽巡洋艦の定義を「備砲、5.1インチ以上で6.1インチ以下」としています。主砲を4インチ(対空)砲とすることで軽巡洋艦保有枠の対象外、としたかったのではないかな?前述のように、英国はその広範な連邦領との通商路を保全するためには巡洋艦保有数として70隻必要、と試算していました。ところが条約で認められた保有枠はカテゴリーA(重巡洋艦)、カテゴリーB(軽巡洋艦)併せて34万トン余りで、単純に割り算すると、平均4850トンを切るサイズの船でないと数を賄えないことになってしまいます。さすがにこの時期に5000トン以下の巡洋艦は計画されていませんので、どうしても規定外の通商路保護のための艦船が必要だったのではないかと・・・。一方で前大戦で国力は疲弊しきっていて、既に旧式化していた第一次大戦期の巡洋艦を主砲換装で「軽巡洋艦」の規定枠外で有力な戦力化できる方法があるとすれば、これは検討に値する、くらいのことは考えても良いだろう、などと、妄想したりするのですが。まあ、これはその後の第二次大戦での航空優位の歴史を知る我々の「後知恵」による少々こじつけめいた憶測ですので、あまり他所で話さないでね。どこかにそれらしい資料ないかな?)

 

C級軽巡洋艦防空巡洋艦への改装

C級軽巡洋艦のサブ・クラス「カレドン級」のうち1隻、「シアリーズ級」のうち3隻と「カーライル級」のうち4隻が、第二次世界大戦前には、早くも兵装を高角砲に換装し、防空巡洋艦として参加しています。

主砲を全て高角砲に換装し、艦隊防空を担わせる専任艦種を整備する、という思想に、第二次世界大戦前に発想が至っていた、というのは「慧眼」というか、ある種、驚きですね。

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(上の写真は防空巡洋艦へ3隻が改造された「シアリーズ級」軽巡洋艦の概観:108mm in 1:1250 by Navis)
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(上の写真は改造前の「シアリーズ級」軽巡洋艦の主砲配置:6インチ単装砲5基を主砲として装備していました。次級のやはり防空巡洋艦に改造された第一次世界大戦型の「C級」軽巡洋艦の最終サブクラスである「カーライル級」との相違点は、「カーライル級」では、艦首部の搭載砲への飛沫対策として「トローラー」船首に艦首形状を改めているところです)

 

同級で防空巡洋艦への改装を受けた3隻のうち「コベントリー(Coventry)」と「カーリュー(Curlew)」は4インチ単装高角砲(QF 4 inch Mk V gun)10基をその主兵装として改装されました。

en.wikipedia.org

 

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(上の写真は防空巡洋艦へ3改造された「コベントリー」の概観:108mm in 1:1250 by Argonait:下の写真では「コベントリー」の単装対空砲の配置をご覧いただけます。艦首部に2基(写真上段)、艦中央部に4基(写真中段)、艦尾部に4基(写真下段)が配置されていました)

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一方、「キュラソー(Curacoa)」は4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)4基を主兵装として改装されました。

en.wikipedia.org

キュラソー」をNavis製の「カーディフ(Cardiff) 」のモデルをベースにセミ・スクラッチしています。

(上下の写真は、防空巡洋艦に改装後の「キュラソー(Curacoa)」:同級は3隻が防空巡洋艦に改装されていますが、「キュラソー」が改装時期が最も遅く、他の2艦が4インチ単装高角砲(QF 4 inch Mk V gun)10基を搭載していたのに対し、同艦のみ4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を4基搭載しています。外見的には同艦が最も防空巡洋艦らしいのではないかな、と筆者は考えています。1番砲、3番砲、4番砲、5番砲が連装高角砲に換装されました。艦橋前の2番砲座にはポンポン砲が設置されました)

防空巡洋艦として就役した3隻はいずれも大戦中に失われています。

 

「カレドン級」防空巡洋艦への改装(架空艦の制作)

「カレドン級」軽巡洋艦第二次世界大戦にも船団護衛等の任務で運用されました。中でもネームシップの「カレドン」は艦容が全く変わってしまうほどの改装を受けるのですが、残念ながらモデルが筆者の知る限りありません。(どこかで製作してみようかな。ちょっと改装範囲が大きいので、しっかり準備が必要です)

同級の他の艦はあまり改装を受けず、原型に近い状態で任務についたのですが、「もし、防空巡洋艦に改装されていたとしたら」と言ういわゆる「if艦」を作成してみました。

(直上の写真:「カリドク(Caradoc)」の防空巡洋艦改装後の姿(下記に記述したように、多分、改装計画のスケッチのみのいわゆる「If艦」で実在しませんのでご注意を。))

(上の写真:同級4番艦「カリドク(Caradoc)」の防空巡洋艦改装案のスケッチはみたことがあるので、手持ちのNavis製「カリプソ(Calypso)」をベースに、スケッチを参考にし、少し兵装過多のような気がしたので、兵装を軽くして製作してみました:艦橋前、1番砲座に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を設置(上段)、2番砲座、3番砲座の位置にポンポン砲を設置(中段)、4番砲座と5番砲座に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を(下段):スケッチでは2番砲座も連装高角砲に換装、となっていたと記憶します):実は、上で紹介した「キュラソー」のセミ・スクラッチ・モデル同様に、4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)のパーツを再現性の高いものに置き換えてみています。筆者の自己満足。

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この改装に一定の価値を見出した英海軍は、防空専任艦を設計します。これが前述の「ダイドー級防空巡洋艦と「ベローナ級」防空巡洋艦として(そしてもちろん「ユリシーズ」として)結実するわけです。

と言うことで、今回はこの辺りで。

 

実は「ユリシーズ」が旗艦を務めた第14護衛空母戦隊(The 14th Aircraft Squadron)の構成艦艇についてもどこかで纏めたいなあ、と思っているのですが、まだいくつか揃っていない小艦艇があるので、そちらはまたいずれ。

少し前置きしておくとこの戦隊、14隻の戦隊構成艦艇のうちアタッカー級(ボーグ級)護衛空母を4隻も持っています。ちなみに巡洋艦も2隻(1隻は当然のことながら「ユリシーズ」もう1隻は上でご紹介した「シアリーズ級」:原作では「カーディフ級」と表記されていますが同じ艦級です。記述から見ると防空巡洋艦への改装は行われていなさそう)、第一次世界大戦型の旧式艦隊駆逐艦3隻(「V級」「W級」「タウン級:米海軍から貸与された旧式駆逐艦」)、第二次世界大戦期の新型駆逐艦1隻(「S級」)、ハント級小型駆逐艦、リバー級フリゲートキングフィッシャーコルベット、そして艦隊随伴掃海艇(艦級不明)、以上の14隻です。こんな大規模な船団護衛部隊があったのでしょうか?(筆者が知る船団護衛部隊は、せいぜい4−5隻で構成されていることが多いのですが・・・)

この辺りももう少し調べてみたいと思っています。

 

次回はピカード も終了したことでもあり、中断している「空母機動部隊小史」に戻りましょうか?あるいはもう一回、気楽に新着モデルのご紹介でも?

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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GW突入:ピカード もそろそろ終盤、そして時事ネタを少し:ソ連・ロシア海軍のミサイル巡洋艦

GWが始まりました。お仕事にもよると思いますが、工夫すれば「10連休だよ」と言う方もいらっしゃるのではないかと。筆者は、なかなかそうもいかず、前半、後半といわゆる「カレンダー通りです」と言うようなお休みの状況です。(それでもゆっくりできるので、やはり嬉しいですね)

録り溜めている映画の一気見や、読めていない本の整理、庭の手入れ、そしてもちろん模型の手入れと整理など、やること山積みです。それにしても3年ぶりの「制限のない」GWです。今朝もショッピング・モールに買い物に行って来たのですが、駐車場は行列、フードコートも人がいっぱいで、少しコロナ前の日常が戻っているのかな、と言う感触でした。それでも全員がもれなくマスクをしている、そこだけが厳しい日常が続いていることを示している、そんな情景でした。

コロナ前に戻るのはまず短期間では不可能でしょうから、とりあえずはこれが新たな「平常」になっていけばいいなあ、などと思っているのですが、昨夜のニュース番組では「GWは最後の宴」と言う観測もあるようで、これから顕著になるであろう物価上昇と消費マインドの冷え込みを警戒する声を報道していましたし、人の動きの活発化で次の感染拡大も懸念されています。これに慣れていくしかないのでしょうが、せめて気持ちだけは不安要素に負けて萎縮しないように、と思う今日この頃です。

 

と言うわけでもないのですが、その不安要素の一つである「ウクライナ情勢」から、このブログに多少なりとも関心を持ってくださっているような方々ならきっと「おお」と思われただろう大きなニュースが飛び込んできました。

そう「モスクワ」の撃沈です。

今回はそれにちなんでロシア海軍のミサイル巡洋艦「モスクワ」のご紹介を。そこから少し脱線していこう、そう言うお話しです。

 

・・・と言うことなのですが、本論のその前に、例によって。

スター・トレック ピカード  シーズン2」Episord 9

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(ネタバレの禁忌は大いに冒してしまったので、もう気にしません。ネタバレ、あります、きっと)

***(ネタバレ嫌な人の自己責任撤退ラインはここ:ネタバレ回避したい人は、次の青い大文字見出しに「engage!」)***

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Star Trek: Picard - Engage! - Episode 3 finale - YouTube

 

大きな展開がありましたね。

このエピソードでの展開を、ジュラティの参画による「共感」を目指す同化能力のある「良きボーグ」の誕生と見るのか、ボーグの「秩序」の新たな混乱の始まりと見るのか、「ボーグ」の話の続きが気になりますが、それはピカード の話ではない、と言うことなのでしょうか?いずれにせよ宇宙に居場所のない「ボーグ」にとって新たな生存への彷徨が始まった、そう言うことなんでしょうね。

誕生したばかりの「良きボーグ」の棲む世界。このシリーズはしばしば並行宇宙の存在が事も無げに語られるので、これもまたその一つなのでしょうか?

では、ピカード は何を守るのか?スン博士がまともに暮らして(スン博士の「まとも」と言う言葉自体が大きな矛盾を孕んでいて、なんか面白い)データが世に現れる世界を取り戻すのかな。

しかし一方で、彼らは船を失ってしまいました。ええ、戻れないじゃん!

と言うことはもうひと展開ある、そういうことでしょうか?

 

ああ、何か凄いことが起きたはずなんだけど、この混乱はなんなんだろう。「だから「Q」が出てくると嫌なんだよ」と「Q」のせいにしてみてもスッキリしません(あれ、そう言えば「Q」は今回は登場しなかった?)。

本当にあと一回で終わるのでしょうか?まさかの「夢堕ち」、なんてことは、流石にないと思うので、(ちょっと怖いのは、「Q」がパチンと指を鳴らして「ほら、元通り。楽しんでくれたかな?」なんて展開なんですが) 次回とシーズン3に期待しましょうかね。

 

今回示された4つの共感(相互理解と共感、かな?)、ピカード とタリンの労わり(一方的にピカード がもらっている感じでしたが)、セブンとラフィの信頼、リオスとテレサの・・・これは単に恋に落ちただけか(リオスは戻れなくても良さそう)、そしてもちろんボーグ・クイーンとジュラティの「同化(と、あえてこの言葉を使っておきましょう)」。パズルのピースは嵌まりつつあるのです。でもわからないのは、全体になんの絵が描かれているのか。その鍵はやはり「Q」なのかな?

 

繰り返しますがあと一回で終わるとはとても思えない。急がないでほしい、これはみんなが思っていることでは?

次回を待ちましょう。

 

 

さて、ここからが今回のお題です。

ミサイル巡洋艦「モスクワ」の撃沈

皆さんご存知のように4月14日、ロシア国防省がミサイル巡洋艦「モスクワ」が沈没したと発表しました。当初はどうやら艦内の火災発生のために退去命令が出た、と言うような発表だったようですが、ウクライナ大統領府がウクライナ軍の放った対艦巡航ミサイルネプチューン」による戦果と発表し、これを受けて沈没を追認した、と言う少しドタバタした形となりました。

ウクライナ侵攻作戦の途上で、ウクライナ軍のネプチューンミサイル二発を被弾し炎上、弾薬庫が誘爆し大火災となり沈没した、と言うことのようです

ネプチューンミサイルは旧ソ連製の巡航ミサイルシステムをベースに、これをウクライナ軍が改良した地対艦ミサイルで、最大射程300キロメートルと発表されています。

ja.wikipedia.org

 

「モスクワ」は旧ソ連海軍が1970年代に建造した「スラヴァ級」ミサイル巡洋艦の一番艦です。同級は1982年から順次就役を開始しましたが、ソ連の崩壊後(1988年−91年)、1−3番艦はロシア海軍が、建造途上だった4番艦はウクライナ海軍が引き継ぎました。

 

ミサイル巡洋艦ウクライナ」(ウクライナ海軍が継承)は、1984年着工にも関わらず、いまだに未完成

ちなみにウクライナ海軍が引き継いだ上述の4番艦は、起工時には「コソモレーツ(共産党青年団員)」と言う名前でしたがその後「アドミラル・フロタ・ロポフ」と改名、1988年に進水しましたがその後のソ連崩壊の混乱で1993年に工事が中止されています。ウクライナ海軍による継承が決定されたのち、再び艦名を「ウクライナ」と変更し、2001年就役を目指して工事が再開されたのですが、財政難で完成に至らず、その後2013年に未成のままでのロシアへの売却の話が出て来ました。しかしこの話も2014年の「クリミア危機=ロシアによるクリミアの併合」により頓挫。ウクライナ海軍は売却先を見出せないまま、今日に至っている、と言う曰く付きの艦です。

 

スラヴァ級」ミサイル巡洋艦ソ連ロシア海軍の正式呼称「1164級」ミサイル巡洋艦:1982年から就役:同型艦4隻(うち1隻は未完成))

ja.wikipedia.org

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(「1164級:スラヴァ級」ミサイル巡洋艦の概観:148mm in 1:1250 by Decapod Model: 艦橋部分から前方に装備された対艦ミサイルが本級の最大の特徴と言っていいでしょう)

スラヴァ級」ミサイル巡洋艦ソ連海軍が「キンダ級」(1962年1番艦就役)、「クレスタI級」(1967年1番艦就役)、「クレスタII級」(1969年1番艦就役)、「カーラ級」(1971年1番艦就役)と続いた、対空・対潜戦闘能力に重点を置いた従来のミサイル巡洋艦の設計を一新して、水上艦攻撃を重視して設計した巡洋艦です。ロシア海軍では、次級の「キーロフ級」を原子力を推進機関として搭載した「重原子力ミサイル巡洋艦」と分類しているため、現時点ではソ連ロシア海軍の建造した最後の巡洋艦となっています。併せてそれ以前の巡洋艦の艦級が全て退役、あるいは他国に売却されているため、唯一の現役巡洋艦の艦級となっています。

前述のようにロシア海軍には同型艦4隻中3隻が就役しており、1番艦は当初ネームシップの「スラヴァ」と命名されていましたが、後に「モスクワ」に改名され黒海艦隊旗艦となりました。2番艦「マーシャル・ウスチーノフ」(当初「アドミラル・フロタ・ロポフ」から1988年に改名)は北方艦隊に所属、3番艦「ヴァリャーク」(当初「チェルボナ・ウクライナ」から1995年に改名)は太平洋艦隊旗艦を務めています。

10000トン級の船体にガスタービンを主機として搭載し32ノットの速力を出すことができます。

その外観的な特徴は、なんと言っても艦橋より前方に搭載された巨大なP-1000対艦ミサイルの連装ランチャーで、8基16発を搭載しています。この対艦ミサイルは1000kmと言う長大な射程を誇っています。(ちなみにハープーンは300km程度)

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他の武装としては、艦隊防空ミサイルとしてS-300Fを八連装リボルバー式の垂直発射装置VLS)8基に搭載しています。

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加えて個艦防空兵装として、130mm連装速射砲1基、4K-33短SAMの連装発射機を2基、A K-630M30mmCIWSを6基搭載し、緊密な防空域を構成することができます。

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これに反して対潜装備はやや手薄で 対潜ミサイルの類は搭載せず、RBU-6000対潜ロケット砲2基、5連装魚雷発射菅2基を装備しています。

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さらに哨戒ヘリ一機を搭載する能力を有しています。f:id:fw688i:20220501141506p:image

(「1163級」の主要兵装の配置:艦首部にAK-130:130mm連装速射砲, RBU-6000対潜ロケットランチャー, P-1000の連装ランチャー、艦中央少し後ろ目にS-300F:対空ミサイルの八連装リボルバー式の垂直発射装置8基、ヘリ格納庫両脇に4K-33短SAMの連装発射機を2基、そしてヘリ発着甲板を備えていました)

以上のように強力な対艦攻撃能力及び艦隊防空能力を兼ね備えた重装備艦と言っていいのですが、既に一番艦の就役後40年を経過しています。2015年以降、レーダーの換装等を中心とした近代化改装が行われ、艦の寿命を10年から15年程度延長する予定でしたが、2022年に「マーシャル・ウスチーノフ」に行なわれたのみです。今回の「モスクワ」の沈没にも設計の古さからくる脆弱さとシステムの対応力不足があったともいわれていますが、ロシア海軍の基幹戦力であることには間違いなく、これから残りの2隻の去就にはますます注目が集まりそうです。

 

ソ連ロシア海軍のミサイル巡洋艦の系譜

この機会にソ連ロシア海軍のミサイル巡洋艦の開発を少しまとめておきましょう。

ソ連ロシア海軍は1960年代から巡洋艦の主要兵装をそれまでの火砲から誘導ミサイルに置き換えてゆきます。これは当初、巡洋艦等の大型水上艦艇による、明らかに圧倒的に整備の進んだ米海軍の空母機動部隊への対抗を意識したもので、射程の長い対艦ミサイルによる水上艦艇に対する打撃力の保持と、同時に米機動部隊艦載機からの艦隊防空の確立を目指した「58級:キンダ級」の設計となって現れます。

しかしその後は一転して対潜水艦戦と防空重点を置いた兵装へと重点が移り、過渡的な存在としての「1134級:クレスタI級」、一応の完成形としての「1134級:クレスタI級」、その発展形としての「1134B級:カーラ級」へと続いてゆきます。

その各艦級の就役年代は以下の通りでした。

「58級:キンダ級」(1962年1番艦就役:同型艦4隻)

「1134級:クレスタI級」(1967年1番艦就役:同型艦4隻)

「1134A級:クレスタII級」(1969年1番艦就役:同型艦10隻)

「1134B級:カーラ級」(1971年1番艦就役:同型艦7隻)

 

「キンダ級」ミサイル巡洋艦ソ連ロシア海軍の正式呼称「58級」ミサイル巡洋艦:1962年1番艦就役:同型艦4隻)

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(「58級:キンダ級」ミサイル巡洋艦の概観:112mm in 1:1250 by Delphin: 艦首部、艦尾部に配置された大きな対艦ミサイルの四連装発射機が特徴です。モデルは就役時の姿を再現しているようで、30mmCIWSはまだ搭載していません)

ソ連ロシア海軍のミサイル巡洋艦は本級から始まります。米機動部隊への対抗が本級建造の目的の一つでもあったため、従来の巡洋艦とは一線を画する長射程のミサイル兵器を主要兵器としています。SM-70四連装発射機を2基装備し、次発装填機構も搭載し250kmの射程を持つ対艦ミサイルP-35、16発の発射が可能でした。f:id:fw688i:20220501141821p:image

(「58級」の主要装備:写真上段:艦首からRBU-3000対潜ロケット、ZIF-101対空ミサイル連装発射機、SM-70 四連装発射機の順:艦尾部には艦尾からヘリ発着ポート(ただし格納庫なし)、76mm連装速射砲2基、SM-70四連装発射機の順)

来襲する敵航空機や敵性ミサイルに対しては、ZIF-101連装ミサイル発射機2基を装備し16発の対空ミサイルの発射が可能でした。

砲兵装としては、自艦防衛のための76mm連装速射砲2基を装備していました。後に近代化改装の際に30mmCIWSが4基、追加装備されました。加えて対潜装備としてRBU-3000対潜ロケット投射機2基と三連装魚雷発射管2基を搭載していました。

船体は4700トン級で、蒸気タービンを主機として34ノットの速力を発揮することができました。

艦尾にヘリコプターの発着艦甲板を設置していましたが、格納設備は有していませんでした。

旧式化のために1990年代から順次退役し、2002年までに4隻全てが除籍されています。

 

 

「クレスタI級」ミサイル巡洋艦ソ連ロシア海軍の正式呼「1134級」ミサイル巡洋艦:1967年1番艦就役:同型艦4隻)

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(「1134級:クレスタI級」ミサイル巡洋艦の概観:122mm in 1:1250 by Delphin: モデルは就役時の姿を再現したもののようで、30mmCIWSを未搭載です

前級の「キンダ級:58級」が対艦攻撃力を重視した設計だったのに対し、対潜能力の充実に重きを置いて開発されたのは同級です。同級の設計は基本的には前級「58級」の拡大型であり、前級では装備できなかった艦尾のヘリコプター格納庫も装備し、対潜能力を向上しています。

設計時点では新設計の対空ミサイルと対潜ミサイルを搭載する予定でしたが、ミサイルの開発が間に合わず、対潜ミサイルの搭載は見送られ前級と同様の対艦ミサイルを装備していました。対空ミサイルは前級と同じものを搭載数を16発から32発に増やし、艦隊防空能力を高めています。

対艦ミサイルは搭載数を減らし連装発射機を艦の両舷に装備しています。

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(「1134級」の主要装備:写真上段:艦首からRBU-6000対潜ロケット、ZIF-102対空ミサイル連装発射機、対艦ミサイル連装発射機の順:艦尾部には艦尾からヘリ発着ポートと格納庫、格納庫脇にRBU-1000対潜ロケット、ZIF-102対空ミサイル連装発射機、57mm連装速射砲2基、5連装魚雷発射管の順)

個艦防空には57mm連装速射砲2基が当てられ、後の近代化改装の際に30mmCIWS4基が追加搭載されました。対潜装備は、本来、同級の目玉兵器となる予定だった新開発の対潜ミサイルが間に合わずこの搭載を見送った代わりに、RBU-6000 12連装対潜ロケット投射機2基とRBU-1000 6連装対戦ロケット投射機2基を搭載し、これに5連装魚雷発射管を加えてかろうじて充実を図っています。

5500トン級の船体を持ち、蒸気タービンを主機として32ノットの速力を発揮することができました。

設計案では10隻が建造される予定でしたが、上述のように新型の対空ミサイル、対潜ミサイルの開発の遅れから4隻で打ち切られ、新型ミサイルを搭載した次級「1134A」級(クレスタII級)へと建造の重点が移されました。1994年までに同型艦の全てが退役しています。

 

「クレスタII級」ミサイル巡洋艦ソ連ロシア海軍の正式呼称「1134A級」ミサイル巡洋艦:1969年1番艦就役:同型艦10隻)

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(「1134A級:クレスタII級」ミサイル巡洋艦の概観:124mm in 1:1250 by Delphin:  同級は「1134級」の武装更新版として設計されたため、基本的なレイアウトは「1134級」に酷似しています)

上述の「1134級」の紹介で触れたように、「1134級」は本来前級「53級」が対艦兵器と対空兵器に重点を置いた設計であったのに対し、対潜兵装に重点を置いた設計となるはずで、そのため新開発の対空ミサイル・対潜ミサイルを搭載する予定でした。しかし、これらの兵器の開発に遅れが生じたため「1134級」は従来の艦載兵器で就役せざるを得なかったのですが、この為10隻の建造計画を4隻で打ち切り、これらの新開発兵器を搭載した「1134A級」の建造へと計画は更新されました。これが「クレスタII級:1134A級」です。

ですので船体等の設計は、基本的に「1134級」のものをやや改良・拡張した形で踏襲しています。

兵装面では「1134級」の主要兵器(計画に反し結果的にそうなってしまった感は否めませんが)であった対艦ミサイルの連装発射機をおろし新開発のKT-100四連装対潜ミサイル発射機を2基搭載しました。

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このミサイルシステムは、基本的に西側諸国の主要な対潜兵器であったアスロックと同じ設計思想で、対潜魚雷をロケットで遠くに投射する形式でしたが、アスロックの射程が9kmほどであったのに対し55kmと長射程を有していました。後にこの射程は85RUでは90kmまで拡張され、あわせて対艦攻撃能力も付与されています。f:id:fw688i:20220501142734p:image

(「1134A級」の主要装備:写真上段:艦首からRBU-6000対潜ロケット、新開発のB-187対空ミサイル連装発射機、新開発のKT-100四連装対潜ミサイル発射機の順:写真中段では30mmCIWS、五連装魚雷発射管、57mm連装速射砲:写真下段では艦尾方向から順にヘリ発着ポート、ヘリ格納庫、格納庫脇にRBU-1000対潜ロケット、B-187対空ミサイル連装発射機がそれぞれ見えています)

対空ミサイルシステムも新開発のB-187が搭載され防空域が拡大されています(M-1の最大射程22kmからM-11の最大射程55kmへ)。

他の兵装については建造当初から30mmCIWS 4基を搭載していることを除いては「1134級」のものを踏襲しています。

(下の写真は、「1134級」(左列)と「1134A級」の比較:このモデル比較では判別できませんが連装対空ミサイル発射機は新型に更新されています。さらに艦橋脇の対艦ミサイル連装発射機は対潜ミサイル四連装発射機に変更されています(写真上段):ヘリの格納庫重心位置への配慮から、エレベーターで半甲板分下げた位置にヘリを格納し整備するよう設置されています(写真下段))

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同型艦10隻が就役しましたが、全て1991年から93年の間に退役しています。

 

「カーラ級」ミサイル巡洋艦ソ連ロシア海軍の正式呼称「1134B級」ミサイル巡洋艦:1971年1番艦就役:同型艦7隻)

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(「1134B級:カーラ級」ミサイル巡洋艦の概観:138mm in 1:1250 by Delphin: 本級は「1134級」の拡大改良版として設計されたため。基本的なレイアウトは「1134級」に準じています

同級は「1134A級」の設計をほぼ踏襲し、機関を蒸気タービンからガスタービンに変更したもので、旧ソ連海軍の巡洋艦としては初のガスタービン艦となりました。船体が「1134A級」の5500トン級から7000トンに拡大し、主要兵装はほぼ「1134A級」のまま、ただし対空ミサイルの搭載弾数が増やされ自動化が進められました。個艦防衛用として速射砲口径が76mmに強化され連装砲2基を搭載しています。合わせて「1134A級」に搭載されていた30mmCIWS4基に加え、短SAMの連装発射機2基が追加され、個艦防空能力も強化されています。f:id:fw688i:20220501143106p:image

(「1134B級」の主要装備:写真上段:艦首からRBU-6000対潜ロケット、B-187対空ミサイル連装発射機、KT-100四連装対潜ミサイル発射機の順:写真中段では76mm連装速射砲、30mmCIWS:写真下段では艦尾方向から順にヘリ発着ポート、ヘリ格納庫、格納庫脇にRBU-1000対潜ロケット、B-187対空ミサイル連装発射機、五連装魚雷発射管がそれぞれ見えています)

同級の設計は今回の冒頭に紹介した「1164級:スラヴァ級」の設計のベースともなっています。

1970年代に7隻が就役しましたが、2000年までに5隻が退役、最後の1隻(黒海艦隊所属の「ケルチ」も2020年に退役し、全て姿を消しています。

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(上の写真はソ連ロシア海軍ミサイル巡洋艦の系譜の一覧:手前から「58級:キンダ級」「1134級:クレスタI級」「1134A級:クレスタII級」「1134B級:カーラ級」「1164級:スラヴァ級」の順)

 

ウクライナ海軍について

今回はロシア海軍ミサイル巡洋艦「モスクワ」のウクライナ紛争での喪失のニュースから始まり、ソ連ロシア海軍のミサイル巡洋艦の開発について見てきたわけですが、紛争のもう一方の当事者であるウクライナの海軍事情についても、少しだけ触れておきましょう。

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旧ソ連黒海艦隊をベースとして発足

ソ連崩壊後、旧ソ連黒海艦隊はロシアとウクライナに二分されることが決まりました。

そのため多くの艦艇を保有してスタートした同海軍でしたが、財政難から保有艦艇の削減に動かざるを得ませんでした。

さらに悪天候で多くの艦艇が損傷するなどの状況も重なり、この削減に拍車がかかります。

本稿でもふれたように、ミサイル巡洋艦ウクライナ」は未成のままで工事が見送られ他国への売却が計画されていますし、これも未成で旧ソ連海軍から引き継いだ「グズネツォフ級」航空母艦の2番艦である「ヴァリャーグ」も完成しないまま廃艦となり、後に中国海軍に売却されました(中国海軍「遼寧」として完成されました)。

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クリミア危機での事実上の消滅

2014年のロシアのクリミア侵攻に付随して、クリミア半島セヴァストポリに拠点を置いていたウクライナ海軍はロシア軍の地上部隊、の侵攻を受け、その保有艦艇のほとんどをロシア軍に接収され、事実上、消滅してしまいました。

現有の主要艦艇としては、たまたま侵攻時に地中海にいたフリゲート艦「ヘーチマン・サハイダーチヌイ」(旧「クリヴァクIII級」フリゲート)やコルベットヴィーンヌィツャ」(旧「グリシャ級」コルベット)、ミサイル艇「プルィルークィ」(旧「マトカ級」水中翼型ミサイル艇)等が挙げられます。

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(ウクライナ海軍フリゲート艦「ヘーチマン・サハイダーチヌイ」(旧「クリヴァクIII級」フリゲート)の概観:102mm in 1:1250 by Delphinl)

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ということで、今回は珍しく(本稿初?)時事ネタを元にしたお話し、でした。

次回はおそらく「ピカード 最終回」のお話が中心になるんじゃないかな?

 

もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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近代戦艦ミニ前史:A=H帝国海軍の場合

「空母機動部隊小史」を、多分「ピカード :シーズン2」が終わるまで(?)お休みします、と言う宣言をして、随分、気が楽になりました。どうも自分自身の好奇心がひとところに集中して止まれない、そういうことなんだなあ、と痛感する日々です(とはいえ、全く行き当たりばったりなので、突如「空母機動部隊小史」の一節を挟むかも。そこは何卒、ご容赦を)。

 

と言うわけで、今回は、以前、本稿でA=H帝国海軍の中央砲郭型装甲艦「テゲトフ」をご紹介した際に、19世紀後半から列強海軍が競って整備した近代戦艦(前弩級戦艦、といった方がわかりやすいでしょうか。明治期の日本海軍の本格的な艦艇整備はこの前弩級戦艦の登場の少し前から始まっています)の成立の前過程について少し触れたのですが、今回は新着モデルのご紹介も兼ねて、おさらいしてみたいと思っています。

本稿で紹介した「テゲトフ」の投稿はこちら。興味があれば(でも今回もほぼ同じことを紹介しますので、もしタイ海軍の小さな海防戦艦の話など興味があれば、まあ、覗いてみてください)

fw688i.hatenablog.com

今回はそう言うお話です。

 

・・・と言うことなのですが、本論のその前に、例によって。

スター・トレック ピカード  シーズン2」Episord 8

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(ネタバレの禁忌は大いに冒してしまったので、もう気にしません。ネタバレ、あります、きっと)

***(ネタバレ嫌な人の自己責任撤退ラインはここ:ネタバレ回避したい人は、次の青い大文字見出しに「engage!」)***

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Star Trek: Picard - Engage! - Episode 3 finale - YouTube

 

「起承転結」のまさに「転」の回、でしたね、と言っておきましょう。サイド・エピソードがどんどん放たれて、どれもがメイン・ストーリーに紐づいていることが明確に示され始めています。あの「Q」のエピソードですら(これは驚きでした。「Q」については、もう一回くらいは大転換がありそうな予感もしますが。このまま終わるはずがない、といつの間にか少し「Q]が好きになってきています。驚きです)。

あと2回で全て回収するとしたら、随分乱暴なことになるんじゃないかな、と心配(かなり)ではあるのですが、エピソード7で垣間見たピカード の内面世界とボーグ・クイーンとの対決を軸に集約されていくのでしょうか。「今回のシリーズでは「時間」が重要」まさにそういう話になってきました。

エレノアもちょっと出てきましたが、登場人物は話の展開の中でどんどん魅力的になっていくのは驚きです。

リオス艦長とテレサの話は切ないなあ。うまくいく方法があるのかな。

アダム・スン博士の葛藤がやがてデータという、スタートレックワールドにとって「軸」となるような登場人物を生み出すのか(実際は時間軸的には逆なのですが、それをわかった上で)と感慨深いものがあります(もうちょっと時間をかけて丁寧に、とも思いますが。これも絶対に大転換があるはず)。

そして何よりもやはりこのシリーズはボーグのお話だということが、改めて明らかに(そんなの最初からそうだったじゃないって?やっと筆者が理解できた、遅い!)。

これはボーグにとって二度目の(ファースト・コンタクトに続く)歴史改変への挑戦なのだ、ということがやっと理解できたり、だからこそ、この話(シーズン)がボーグがピカード を呼び出すところからスタートしているのか、と一人で頷いたり、ピカード はボーグの一員でありながら(あったからこそ?)天敵足りうるんだなあ、と今更ながら、ピカード がボーグに同化された出来事とその後の「ウルフ359の戦い」周辺は人類だけでなくボーグにとっても本当に重要な出来事だったんだなあ、と痛感してたりします。

ボーグ・クイーン(=ジュラティ)の行方を追う中で語られるセブンの記憶と、史上初のボーグ部隊の誕生のシーンを見て、何故、同化後のボーグがインプラントだらけなのかやっと納得がいきました(敵味方を分かりやすくするため(だけ)じゃなかったんですね)。

ラリスもタリン(オーラ・ブラディ)も、今回は出てこなかった(ちょっと残念!)。

などなど、例によって想いはつきませんが、今回はこの辺りで。

金曜日、楽しみ!

 

 

さて、ここからが今回のお題です。

近代戦艦誕生前史:A=H 帝国海軍の場合

このお話は「発達史への興味」というよりも、「模型事情」が大きく寄与して発生していると筆者は考えています。

つまりA=H (オーストリアハンガリー)帝国海軍は、みなさんご存知のように帝国自体が第一次世界大戦後解体されてしまったため、第一次世界大戦以降は存在しません。当然、海軍も存在せず、艦艇も然り、です。さらにA=H帝国がアドリア海にわずかな接続海面を持つ基本的に内陸国家であったため、それほど大きな海軍を持ちませんでした。このため模型もそのラインナップが筆者が重点を置いている「日本海軍の成立以降=近代海軍の成立以降」というテーマでは、大変、限定されている、という事情が大きく働いている、そういうことです。

翻ると、A=H帝国海軍に関心を持つ、ということは近代海軍以前に少し手を伸ばさねばならず(「ならない」、なんてことはないんですけどね)、その過程で近代戦艦(前弩級戦艦)以前の主力艦発達についていくつか模型を入手するうちに考える機会を得た、そのまとめを少々。今回はそういうお話です。

 

蒸気機関装甲艦の系譜

すでに本稿でもご紹介したことですが、繰り返しを恐れずに少し列強海軍の装甲艦の型式の発達をまとめておきます。

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(ナポレオン期の軍用帆船:上段が砲戦を主要な任務とする戦列艦:舷側に複数層の砲甲板を装備しています。後にいわゆる「戦艦」に発展します。写真の戦列艦は58mm(バウスプリット:船体の先端から突き出している前方に傾斜し突き出している棒を除いた船体の寸法です・下段は軽快な機動性を持つフリゲートスクーナー(左):後に「巡洋艦」等に発展します。写真のフリゲート(右)は48mm(バウスプリットを除く))

 

蒸気機関の発展に伴い艦艇の機動力が飛躍的に向上します。

風力では不可能だった重砲という重量物を装備して自由に動ける艦艇、という概念が艦艇の発達を飛躍的に加速化する「筋立て」の門を開いた訳です。重砲の搭載で、艦艇の攻撃力が増大します。しかし一方で、原則として破壊力の大きな重い砲弾を飛ばすには、その発砲衝撃に耐えうる重い火砲が必要で、火砲の大型化も加速されてゆく訳です。

艦砲の大型化は艦艇への搭載数に対する制約という新たな課題を生み出します。少数の強大な破壊力を持つ艦砲をどのように搭載するか、という命題が新たに発生するわけです。そしてこれは、強力な火砲から放たれる砲弾をいかにして目標に命中させるのかという射撃法の発達を促し、やがてひとつの答えとして一連の「弩級戦艦」「超弩級戦艦」として結実を迎える訳ですが、その模索の期間が18世紀後半から始まったと考えていいと思います。

一方で、強力な砲弾の打撃力から如何に自艦を守るのか、という防御の思想が芽生え、こちらはこれも蒸気機関の発達により機動力との兼ね合いが可能となったもうひとつの重量物「装甲」を備えた装甲艦という概念となって登場します。

これからご覧いただくのは、破壊力の強大化=搭載砲の大型化、これを如何に有効な兵器として=命中が期待できる兵器として搭載するのか、そして自艦をいかに強大な敵の火力から、あるいは自艦が搭載する砲弾・弾薬の被弾時の誘爆から防御するのか、そのバランスの発達史として見ていただくと面白いのではないかと思うのです。

 

併せて軍艦への蒸気機関の浸透の過程を、簡単にまとめておきます。

世界初の実用蒸気船の誕生:1783年(フランス人:クロード・フランソワ・ドロテ・ジュフロワ・ダバンによる)

当初は外輪推進が主流であったため舷側に砲門を並べるそれまでの軍艦では大型の外輪が砲門設置を妨げるため馴染まず、蒸気機関の普及は商船から始まりました。スクリュー推進が実用化するまで軍艦への応用は進みませんでした。運用側の海軍軍人側にも石炭切れによる推進力の喪失を嫌う傾向があり、蒸気船の普及に対する抵抗が根強くあったとか。

スクリュー推進の実用化に伴い、英海軍の帆走74門戦列艦「エイジャックス」が1846年に汽帆走戦列艦に改装されます。これを追う形でフランス海軍も初の蒸気機関搭載の90門戦列艦「ナポレオン」を1850年に就役させ、やがて英海軍も1852年に91門蒸気機関戦列艦アガメムノン」を就役させました。これを皮切りに英仏間を中心に汽帆走軍艦の建艦競走が始まりました。

 

A=H帝国海軍でも同様の経緯から艦船開発が試みられます。そして上記の搭載火砲の大型化と防御としての装甲の装着の兼ね合いから、概ね以下のような経緯を経ることになるのです。

舷側砲門型装甲艦(1850年代-60年代)

中央砲郭型装甲艦(1870年代から80年代)

中央砲塔型装甲艦(1890年代)

そして近代戦艦(前弩級戦艦)の登場(1900年前後から就役)へと続いてゆくわけです。

 

舷側砲門型装甲艦(1850年代-60年代)

各海軍ごとに時期の前後はあるのですが、今回、対象とするA=H帝國海軍を例にとると1850-60年代(ちょっと乱暴に区切ると)に、まず「舷側砲門艦」が建造されます。これは蒸気機関を搭載し(多くは帆装と機関を併用した機帆船でした)帆船と同様に舷側に主砲をずらりと並べた型式でした。

A=H 帝國海軍はこの形式の装甲艦を2艦級5隻建造しています。

 

エルツヘルツォーク・フェルディナント・マックス級装甲艦(1866年就役:同型艦2隻)

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(「エルツヘルツォーク・フェルディナント・マックス級」装甲艦の概観:67mm in 1:1250 by Sextant: 下の写真はマックス級装甲艦(手前)とナポレオン時代のフリゲートの大きさ比較)

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同級はA=H 帝國海軍が建造した舷側砲門型装甲艦の艦級です。5130トン級の船体に、舷側に砲門を有する48ポンド砲(17.8センチ砲)16門を主砲として搭載していました。砲門は全て舷側に向いていたため、その射界は限定的でした。

石炭専焼の機関を搭載し12.5ノットの速力を出すことができました。

就役直後の1866年のリッサ海戦では最新鋭の装甲艦として艦隊旗艦を務め、イタリア艦隊の「レ・ディタリア」を艦首の衝角攻撃で撃沈しました。ja.wikipedia.org

艦砲は未だ発達が始まったばかりで、射程も威力も十分ではなく、何よりも照準が砲側で行うしかなく、つまり射撃術が成立する以前の当時の状況ではかなり近居距離からの射撃でなくては命中が見込めませんでした。このリッサ海戦で列強が得た戦訓は艦首の衝角による攻撃の有効性、というものでした。このためこの時期以降、第一次世界大戦期まで、列強の主力艦は船首に衝角を持つことが標準となります。

 

中央砲郭型装甲艦(1870年代から80年代)

次いで現れたのが「中央砲郭型装甲艦」という形式。艦載砲が大型化し強力になるにつれてその弾薬庫をいかに防護するかも大きな課題になってきます。つまり自艦が搭載する強力な砲弾を被弾時の誘爆から防御する装甲をどのように配置するかとういう課題に対して向き合う必要が出てきた訳です。重厚な装甲で覆えばいい、のですが限られた機関出力との兼ね合いで装甲をどのように貼れば効率良く機動性を確保できるのか、これに対する一つの解答が「中央砲郭」という考え方でした。A=H帝国海軍はこの型式の装甲艦を8隻建造しています。試行錯誤的で決定版の設計を模索したのでしょうか、同型艦を持たない艦級が5つあります。

  • 7,200トン級装甲艦:リッサ(Lissa) - 1隻
  • 7,800トン級装甲艦:クストーザ(Custoza) - 1隻
  • 6,000トン級装甲艦:エルツェルツォーク・アルプレヒト(Erzherzog Albrecht) - 1隻
  • 5,200トン級装甲艦:カイザー(Kaiser) - 1隻
  • 7,500トン級装甲艦:テゲトフ(Tegetthof) - 1隻
  • カイザー・マックス級 - 3隻

 

装甲艦「リッサ」(1871年就役:同型艦なし)

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(中央砲郭型装甲艦「リッサ」の概観:75mm in 1:1250 by Sextant(バウスプリットを除く寸法): 下の写真は装甲艦「リッサ」の中央砲郭の拡大:中央砲郭は上下二層に別れ、下層は舷側方向への限定された射界をもち、上層のみ広い射界がありました)

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同艦は7000トン級の船体に9インチ砲を12門、片舷6門ずつ搭載し、12.8ノットの速力を出すことができました。片舷6門の9インチ砲は艦中央の喫水のすぐ上の装甲帯部分に5門が配置されていました。この5門の砲は基本的には舷側方向へ向けての射撃のみが可能でした。残る1門は上甲板部分の張り出しに配置され、大きな射界を有していました。

この辺りの配置から、舷側砲門形式からの移行期、模索期の試作艦的な要素が見て取れるかと。艦名は言うまでもなくA=H帝国海軍栄光の「リッサ海戦」に由来しています。


装甲艦「クストーザ」(1875年就役:同型艦なし)

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(中央砲郭型装甲艦「クストーザ」の概観:78mm in 1:1250 by Sextant(バウスプリットを除く寸法): 下の写真は装甲艦「クストーザ」の中央砲郭の拡大:中央砲郭は上下二層に別れ、両層とも片舷2門ずつの10インチ砲を配置していました。ちょっとわかりにくいですが、下層の後部砲のみ射界が舷側方向に限定されています)

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同艦は「リッサ」よりは少し大きな7600トン級の船体を持ち、より強力な22口径後装式の26センチ砲(10インチ砲)8門を主砲として搭載していました。主砲は全て中央の厚い装甲で覆われた砲郭部分に上下二段配置で片舷4門づつ配置され、砲郭部分の前後に船体に切り込みなどを入れることにより、各砲には大きな射界が与えられていました。

しかし砲の射撃方向の変更は人力での砲の移動を伴う作業が必要で、特に戦闘中の射撃方向の変更等は大変な労力を伴う作業だったことでしょう。

同艦は第一次世界大戦期まで練習艦として使用され、その後宿泊船となりました。第一次世界大戦後はイタリアへの賠償艦として譲渡され解体されました。

 

装甲艦「テゲトフ」(1882年就役:同型艦なし)

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(中央砲郭型装甲艦「テゲトフ」の概観:71mm in 1:1250 by Sextant(バウスプリットを除いた寸法): マスト等を失った船体のみのジャンクモデルとして入手したものを、少し修復しています:下の写真は「テゲトフ」の中央砲郭の拡大:11インチ主砲を船体中央の装甲で防護された砲郭に片舷3門、装備しています。それぞれの砲には大きな射角が与えられる配置になっています。主砲装備甲板は1層となり、弾庫がその下層甲板に配備されました)

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同艦は1882年に就役しています。7400トンの船体を持ち、その中央砲郭には「クストーザ」よりも更に強力な後装式の11インチ(28センチ)砲を主砲として6門搭載し、13ノットの速力を発揮することができました。主砲は全てマウントに搭載されており、射撃方向の変更等は、砲の移動を人力で行わねばならない前級よりは格段に楽でした。従来の砲郭艦が砲を上下二段の甲板に配置していたのに対し、同艦では砲甲板は一層にまとめられており、弾庫が各砲の下に配置され、砲郭の装甲で保護されていました。就役当時はA=H帝国海軍最大級、最強の艦船でしたが、アドリア海での運用が主目的であったため、同時期の他の列強の同種の装甲艦に比較すると小振でした。ちなみに艦名は1866年のA=H帝国海軍の栄光の戦いである「リッサ海戦」でA=H帝国海軍を率いた提督の名に由来しています。

 

就役以降、機関の不具合に悩まされ続けて、活動は十分ではなかったようです。ようやく1893年に機関が信頼性の高いものに換装され、同時に兵装も一新され、同艦は主力艦としての活動が可能になったようです。

その後、1897年には艦種が警備艦に改められ、一線を退いています。さらに1912年に艦名が「マーズ」に改められ、「テゲトフ」の名はA=H帝国海軍最新の弩級戦艦ネームシップに引き継がれました。「マーズ」は港湾警備艦練習船として第一次世界大戦中も使用され、戦後、イタリアへの賠償艦として引き渡され1920年に解体されました。

 

中央砲郭のヴァリエーション

下の写真では中央砲郭の在り方自体が模索された様子が伺えます。上段の「リッサ」では舷側砲門型から中央砲郭への移行期(1871年就役)にあることがわかりますし、中段の「クストーザ」では中央砲郭への主砲の集中搭載が試みられています(1875年就役)。そして下段の「テゲトフ」では主砲配置と弾庫の配置についての工夫が行われています(1882年就役)。

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中央砲郭のヴァリエーションに見られる創意・発展はやがて艦砲の更なる巨大化(長砲身化)に対応して、この後、砲塔形式で主砲を搭載する「中央砲塔艦」の形式(1890年代)を経て「前弩級戦艦」(1900年以降)へと発展してゆきます。

 

中央砲塔型装甲艦(1890年代)

上述のように中央砲郭形式での主砲搭載が洗練されるにつれ、より巨大な砲の運用についての技術も洗練されてゆきます。たとえば重量の大きな砲の方向転換を人力から動力を伴うターンテーブルで行うといった運用法や、各方の弾庫を砲の直下に置くなど、上述の「テゲトフ」ですでに実現されていました。

こうして更に巨大な火砲を砲塔形式で搭載するという試みが行われます。これが「中央砲塔型装甲艦」で、A=H帝國海軍は2隻の同形式の装甲艦を建造しました。

 

装甲艦「クローンプリンツ・エルツヘルツォーク・ルドルフ」(1889年就役:同型艦なし)

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(中央砲塔型装甲艦「クローンプリンツ・エルツヘルツォーク・ルドルフ」の概観:75mm in 1:1250 by Sextant: 同艦に至り、かなりすっきりとした外観になってきています:下の写真はクローンプリンツ・エルツヘルツォーク・ルドルフ」の砲塔の拡大:12インチ主砲を船体中央の両舷に砲塔形式(といっても装甲で覆われた装甲砲塔ではなく弾片防御カバー付きの露砲塔ですが)で2基、艦尾部に1基の合計3基を装備しています。それぞれの砲には大きな射角が与えられる配置になっています。思い砲塔を艦の上部構造物に搭載したため、重心の低減に配慮された設計となっているようです)

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同艦は6800トンの船体に35口径の12インチ砲を単装砲形式で3基搭載し、15.5ノットの速力を発揮することができました。12インチの主砲は、中央砲郭内での砲の方向転換のターンテーブルからの発展型(?)であるバーベットに搭載され、艦の上甲板部に設置されることにより、より大きな射界が与えられました(艦中央のバーベットでは180度、艦尾のバーベットでは270度)。バーベットはそのまま砲の下部にある弾庫の装甲を兼ねていました。各砲はカバーで覆われていましたが、おそらく装甲砲塔には至っておらず、弾片防御程度の所謂露砲塔だったと思われます。

第一次世界大戦期にはカタロ湾の警備等に従事しましたが、1918年に発生した反乱事件等に巻き込まれました。戦後はA=H帝國解体後の新興国の海軍に移籍し改名され沿岸防備艦として就役しましたが、翌年解体されました。

 

艦名は和訳すると「皇太子ルドルフ大公」そんな感じでしょうか?オーストリアも含めドイツ圏の爵位、称号等は度々艦名に用いられますが、これが大変長く難しい。泣かされます。

 

A=H帝国海軍の近代戦艦以前の主力艦形式の総覧

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そして前弩級戦艦の時代へ

この後、砲塔形式で主砲を搭載する「モナルヒ級」海防戦艦(1898年から就役:5800トン、9インチ連装砲塔2基)を経て「ハプスブルグ級」前弩級戦艦(1902年から就役:8200トン、9.4インチ連装砲塔1基、同単装砲塔1基)へと発展してゆきます。

(下の写真はA=H帝国海軍の中央砲塔型装甲艦と近代戦艦の比較:手前から中央砲塔型装甲艦「クローンプリンツ・エルツヘルツォーク・ルドルフ」、「モナルヒ級」海防戦艦、「ハプスブルグ級」戦艦の順)

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以降の発展は、本稿の下記の回で。興味のある方は是非。

fw688i.hatenablog.com

 

ということで、今回はA=H 帝國海軍の主力艦を例に引いて、近代戦艦(前弩級戦艦)の成立以前の主力艦形式の模索について、少しまとめてみました。

実はこの模索期は様々な試行錯誤が行われており、艦船模型的な視点に立つと、大変な宝箱なのです。しかし、そのモデル数の多さと、その希少性からなかなかコレクションに加えるのはハードルが高い、という事実もあったりします。

 

ということで、今回はこの辺で。

 

次回は「時事ネタ」かな?

 

もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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禁断のモデル・ヴァージョンアップ事情:ドイツ帝国海軍前弩級戦艦の場合

前回お知らせした通り、多分「ピカード :シーズン2」が終わるまで、「空母機動部隊小史」をお休みします。

気分のままに、新着モデルのご紹介を中心に本稿を進めていきたいな、と思い、前回からそのようにお話を組み立てたいと思っているのですが、今回は筆者のようなコレクターにとって大変悩ましいモデルメーカーによるヴァージョンアップの実例をご紹介します。

基調としては「禁断の」と記したように、モデルメーカーによるモデルのヴァージョンアップはディテイルの精度を上げるなど、モデルコレクターの関心を大きく惹きつけるのですが、これにお付き合いするには当然、大きな出費を伴います。どこまでの範囲でお付き合いするのか、大変難しい、という一種の「愚痴」のようなお話です。

ドレッドノート」の登場が一夜でそれ以前の主力艦を二線級の戦力にしてしまった(=見劣りのする戦力にしてしまった)というのと、もちろん規模は異なりますが、その当時の海軍軍政の担当者の気持ちをある種「体感」させてくれるような・・・(ちょっと大袈裟すぎか?)

このお話を共有するには、実際どの程度の差異が新旧モデル間で生じるのか、見ていただいた方が早いでしょう。

今回はそういうお話です。

 

・・・と言うことなのですが、本論のその前に、例によって。

スター・トレック ピカード  シーズン2」Episord 7

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(ネタバレの禁忌は大いに冒してしまったので、もう気にしません。ネタバレ、あります、きっと)

***(ネタバレ嫌な人の自己責任撤退ラインはここ:ネタバレ回避したい人は、次の青い大文字見出しに「engage!」)***

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Star Trek: Picard - Engage! - Episode 3 finale - YouTube

 

前回に引き続きピカード という人間を深く理解するには重要なエピソードでしたね。と言いつつ、やや掘り下げが浅いような気はしました。でも、タリスが寄り添ってくれた(嬉しかった)。ロミュランの耳を見せてくれた(ものすごく嬉しかった。ピカード はもっと嬉しかったはず)。・・・と、きっと掘り下げるよりはロマンスを語るエピソードを目指したのかな、などど考えながら見ていました。にせよ、ピカード 家の、特にピカード の両親のストーリーは気になります。

それにしてもジュラティは(ボーグ・クイーンは、というべきでしょうか)どこへ行くのか?

ガイナン(エルオーリアン)とQ(連続体)の関係の新たな側面、新しい謎が出てきました。ガイナンの言葉「何かがおかしくなってるんだよ」。これらを回収してあと3話でおさまるんでしょうか。シーズン3はあるようなので、そんな心配はしなくてもいいのでしょうかね?それなら、お願いだからあまり待たせずに、すぐにやってね。

 

今週のピカード 話はこの辺で。

 

今週の本論です。

モデル・ヴァージョンアップの話

モデルのヴァージョンアップの話の前に、少し本稿で扱っている1:1250スケールの艦船モデルのおさらいを。

 

1:1250スケールの艦船模型という世界(おさらいです)

本稿では日本ではマイナーな1:1250というスケールのモデルのご紹介をしていますが、特にヨーロッパではこのスケールはメジャーで、数多くのメーカーがひしめき合っています。その品質は正直に申し上げて玉石混交、つまり大変大きな差がメーカー間にある、と言わざるを得ません。筆者もコレクションの当初はその辺りをあまり理解しておらず、ebayへの出品の中から「手頃な設定価格」で選んでいたものだから、相当ひどいモデルを入手することも度々。それはそれで、ディテイルアップの工夫をして手を入れることを覚えたので(スケールが小さいので気が楽だった、ということも大きいですが)、新たな楽しみではあったのですが。

 

メーカー事情

そうした数々のラーニングを通じて(高い「授業料」を支払ったかも)、筆者の現状を整理すると、モデルを調達するメーカーは、一社しか製作していない等の事情を除き、ほぼ次に挙げるものに絞っています。

Neptun・Navis1:1250スケールの最高峰。NeptunがWW2の艦船を中心としたラインナップで、NavisはWW1周辺をラインナップとしたブランドネームです。最近のコレクションの基軸はこの両ブランドに集中しています。

上記の両ブランドが筆者の艦船模型のメインストリームを形成しているのに対し、Hai, Rhenania, Hansa, Delphin, Mercatorといったメーカーはメインストリームを少しはずれた大変ユニーク(マニアック)なラインナップで楽しませてくれます。ああ、もう一つ重要なメーカーがありました。それは小西製作所、日本で多分唯一の(といっていいかな?)1:1250スケールモデルを出していらっしゃる老舗メーカーさんですね。

最近ではこれに加えてPoseidonタイ王国海軍のラインナップ充実)や Anker(未成艦・計画艦のモデル化が得意?)なども、かなり注目しています。

 

さらにShapewaysで調達可能な3D printing modelがこれに加わっています。

Tiny Thingamajigs:Tiny Thingamajigs by matt_atknsn - Shapeways Shops

C.O.B. Constructs and Miniatures C.O.B. Constructs and Miniatures by squint181 - Shapeways Shops

Mini and beyond:Mini and beyond by pinkus12001 - Shapeways Shops

Amatuer Wargame Figures:Amatuer Wargame Figures by Nomadier - Shapeways Shops

Masters of Military:Masters of Military by MastersofMilitary - Shapeways Shops

Desktop Fleet:Desktop Fleet by tmakunouchi - Shapeways Shops

Brown Water Navy Miniatures:Brown Water Navy Miniatures by MG_Lawson - Shapeways Shops

この辺りの製作者が現時点での筆者のおすすめです。それぞれ解釈やこだわりポイントが違ったり、もちろん価格やラインナップも相当な差があるので、見ているだけでも楽しいかも。さらにどんどんデータの提供者が増えていますので、目が離せません。

もう一つ、Shapewaysではなく、独自のShopを持っていらっしゃるのが

The Water Times Journal:WTJ Store - WTJ Store 

ここのStoreでもレジンや3D printing modelを調達することができます。(筆者の大好きなフランス海軍の前弩級戦艦周辺の艦船は大半をここから調達しています。フランス海軍の前弩級戦艦などについては、詳しくは下のURLをご覧ください。筆者のメモ的なまとめサイトです)

French Navy /フランス海軍 - Encyclopedia of 1:1250 scale model ship

3D printing modelは何より価格が魅力で、筆者のように網羅的なコレクターに場合には、この「価格」要因は大変重要なのでついつい多くを頼ってしまいがちなのですが、樹脂製であることから、しばしばディテイルに甘さが目立つ場合があります。そうした際に、上述のHansa, Delphinは、そのモデルのコレクションのユニークさもさることながら、パーツへの分解が比較的容易で、例えばブリッジ周りのディテイルアップであったり武装パーツの入れ替えなどの際のストックパーツ用にもお世話になっています。

さらに日本の食玩F-toys海上自衛隊艦船もebayでは多くの出品を見つけることができるようになってきています。日本人としての贔い屓目と言われるかもしれませんが、ディテイルなど、素晴らしいと思います。何より、インジェクションモデルですので(食玩ですからね)価格がオークションでプレミアムがついても、前出の既存メーカー等(真鍮やメタル製)と比べると大変リーズナブルになっています。(注記:ここで挙げているメーカー名は「軍艦」関連に絞ってあげた名前です。「商船」だとかなり事情は変わると思います。「商船」の領域は筆者は現在ほとんど手をつけていないので、どなたか詳しい方がいらっしゃるのではないかな、と)

 

モデル検索について

筆者が本稿を書いている目的の一つに、1:1250というスケールに関心を持っていただき、いわゆるマーケットを広げ、その波及でもっと日本でも手に入りやすくなればいいなあ、というのがあるので、少しでも関心を持っていただくためにちょうど良い「モデルの検索」サイトをご紹介しておきます。

sammelhafen.de

このサイトはebayで結構いいラインナップのモデルを毎週出品なさっているsarge 2012氏(お世話になっています)のお父上が主催していらっしゃるサイトで、いわゆる1:1250スケールモデルのラインナップ検索サイトです。

サイト中央上にあるserachのボタンで「検索機能」が使えます。既に探したい艦名が英文ではっきりしている場合には「Search by ship name」で探せば、どのメーカーが作成しているか等を調べることができますし、逆に「メーカー名:manifacturer」「艦種:type」「国籍:county of origin」「建造時期:era」で検索することもできます。もちろん複数の項目での検索もできるので、是非お試しあれ。

ちなみに今回の本論でご紹介するNavis社製(manufacturer=Navis)+第一次世界大戦期(era=1st WW)+ドイツ帝国(country of origin=germany)+戦艦(type=Battleship)の検索結果はこちら。(ちょっと、これあとで使うかも)

sammelhafen.de

 

禁断のモデル・ヴァージョンアップ

発端:課題の浮上

3月27日の投稿「新着モデル(だけではないけれど)のご紹介」で、第一次世界大戦の敗戦で海軍の保有に厳しい制約を課せられた再生ドイツ海軍(ワイマール共和国海軍)の発足時の主力艦のご紹介をしました。

fw688i.hatenablog.com

第一次大戦前には英国に次ぐ世界第2位の規模の大海軍を誇っていたドイツは、敗戦後のヴェルサイユ条約で装甲を持つ軍艦としては旧式の前弩級戦艦6隻(予備艦を入れて8隻)しか保有を許されず、沿岸警備海軍へと転落しました。

その際に保有を許されたのがブラウンシュヴァイク級」戦艦5隻(「ブラウンシュヴァイク」「エルザス」「ヘッセン」そして予備艦として「プロイセン」「ロートリンゲン」)とドイッチュラント級」戦艦3隻(「ハノーファー」「シュレージェン」「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」)でした。

上掲の稿ではそれらのモデルをご紹介したのですが、その際に「ドイッチュラント級」戦艦についてはワイマール共和国会軍所属後、近代化改装後のモデル(Hansa社製)をご紹介できたのですが、「ブラウンシュバイク級」については就役時のモデルのご紹介に留まっていました。

コレクターの常としてこういう状況は少し心地が悪いので(普段は気にしないのですが、こうしてまとめると急に気になってきたりします)、例によって「そんなモデルは流石に出てないよね」と上掲のsammelhafen.deで調べ始めました。上掲の結果ではそのようなモデルは見当たらなかったのですが(先程のsammelhafen.deの検索結果を見てみてください)、その後、いつものように(筆者の寝る前の習慣です)ebayで何かいい出物はないかな、と探していると、見つけてしまいました!「-Hessen manufacturer Navis 11R, 1:1250 Ship Model- 」(下はebay出品時の掲載写真)

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見慣れぬ「Navis 11R」の商品ナンバーと、さらに出品者の出品物の紹介として、Name : Hessen /Hersteller: NM 11R /Typ : Schlachtschiff / battleship /Jahr : 1932 /Land : Deutschland/Germany と記されています。これはNavis社の戦艦Hessenの1932年次の再現モデルであることを表しています。

写真の外観から見た感じでは前檣と後檣が低く切り詰められており、後檣周辺に対空砲らしきものが配置されているように見えます。

これは値打ちあり、早速入手、ということになるのですが、送料節約のため、筆者の常として同一出品者の他の出品物も検索してみることにしています。すると「Hessen manufacturer Navis 11N, 1:1250 Ship Model」も見つけてしまいました。(下はebay出品時の掲載写真)

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こちらも商品紹介を見ると、Name : Hessen /Hersteller: NM 11N /Typ : Schlachtschiff / battleship /Jahr : 1905 /Land : Deutschland/Germany とあります。こちらは1905年の状態を再現した、ということなので就役時のモデルのようです。ただしナンバーがNM 11Nとなっていて、新たなモデルであることを示しています。

これらを購入して改めて比較してみたい、という誘惑に駆られるわけですが、これは同時に際限のないヴァージョンアップに付き合っていくという、個人コレクターにとって(特にその財布にとって)大きな禁忌を犯すことにもなる決断をしなくてはならない(なんと大袈裟な)ということでもあるわけです。

更に考えるべきは、これをどの範囲に止めるのか。

状況を整理すると、筆者はドイツ帝国海軍前弩級戦艦ヘッセン」のNavis社の旧モデルをすでに保有しています。これに「ヘッセン」の1932年形態のNavis社製モデルが新たに加わります。そのついでにNavis社製の「ヘッセン」の新モデルも入手することになるわけです。

しかしドイツ帝国海軍の他の前弩級戦艦のモデルはNavis社製の旧モデルのままでいいのだろうか、更に他の保有しているNavis社のモデルも旧モデルでいいのか、と。筆者は前述したように、第一次世界大戦期の艦船モデルの主要な調達先としてNavis社を指定しているので、これは大変大きな財政負担を伴う判断になるわけです。

暫定的な結論

モデルの再現性等を考えると、新モデルが旧モデルに勝ることは自明の理で(そうでなければ製作者の姿勢に瑕疵があると言わねばなりません)、コレクターとしては当然新モデルで揃えたくなるのですが、これはキリがないので、どこかで線を引かねばなりません。(「財政の成り立つはずがない」と、どこかで聞いたことのあるフレーズです)

結局、永続的な結論が出せるはずもなく、今回の暫定的な結論としては、ドイツ帝国海軍の前弩級戦艦に限り、新モデルへの切り替えを行う、ということにしました。

こうして「めでたく、二隻お買い上げ」という運びになり、他のドイツ帝国海軍の前弩級戦艦についても調達可能なものが見つかった場合に調達、ということになったわけです。

 

ドイツ帝国海軍前弩級戦艦の新旧モデル対比

筆者の苦悩を共有したかったので、長々と、多分読者諸氏にはくだらない経緯を書いてしまいましたが、一応、ドイツ帝国海軍の前弩級戦艦の全艦級について、Navis社の新モデルが揃いましたので、旧モデルとの対比を含め、以下でご紹介します。

 

ドイツ帝国海軍の前弩級戦艦

ドイツ帝国海軍の戦艦は、元々がバルト海向けの沿岸用海防戦艦から始まっていることと、キール運河の通行、港湾施設での運用等から、ライバル国のイギリス、フランスに比べひと回り小型の艦級で揃えらていました。前弩級戦艦の時代に入り、以下の5クラス24隻を建造しました。

 

ブランデンブルク級」戦艦(1894- 同型艦4隻)

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(1894-, 10013t, 17knot, 11in/L40*2*2 & 11in/L35*2, 4 ships)

Navis新モデル(NM 14N)

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(「ブランデンブルク級」戦艦の概観:92mm inn1:1250 by Navis: 高い船首楼が外洋での活動を想定しているということを表しているように見えますが、実際には過渡期的な設計だったようです)

同級はそれまでバルト海沿岸の警備行動を想定して設計された海防戦艦しか持たなかったドイツ帝国海軍が洋上戦闘を想定して建造した戦艦の艦級でした。英海軍を仮想敵と想定していたため、フランス海軍の支援を仰いだフランス式の船体設計となっていました。

列強の当時の戦艦が連装主砲塔2基装備を標準としていた時代に、主砲として11インチ連装砲塔(装甲を施した本格的な砲塔ではなく露砲塔にカバーを施したものでした)を3基装備していましたが、のちのドレッドノートの設計のように大口径砲の一斉射撃を想定した先進的な思想に基づくものではなく、それまでの海防戦艦の基本設計であった中央砲塔艦の主砲配置の延長にあったようです。したがって主砲の口径こそ11インチで統一されていたものの、砲身長は艦首・艦尾が40口径であったのに対し間の中央部は35口径で、斉射には不向きでした(もっとも建造時期には斉射法は未成立でした)。

第一次世界大戦期には既に旧式艦とみなされていましたが同級のうち2隻は当時同盟国であったオスマントルコ海軍に売却され、黒海で活躍しました。

 

旧モデルとの比較

Navis旧モデル(NM 14)

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Navis新旧モデル比較(左が旧モデル)

(新モデルではディテイルの再現性が高いのは一目瞭然です。こうやって比較すると、旧モデルが全体にあっさりしている、というのが実感していただけるかと)

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「カイザー・フリードリヒ3世級」戦艦(1898- 同型艦5隻)

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(1898-, 11097t, 17.5knot, 9.4in*2*2, 5 ships)

Navis新モデル(NM 13N)

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(「カイザー・ウィルヘルム3世級」戦艦の概観:96mm inn1:1250 by Navis: 重い主砲塔を船体より一段上に配置するなど、穏やかなバルト海での運用を主眼に置いているように思われます)

同級はドイツ帝国海軍が建造した初の本格的な近代戦艦(前弩級戦艦)の艦級です。基本的に穏やかなバルト海での行動を想定して設計されたため、高い位置に主砲塔をおく設計となっています。主砲としては前級よりも一回り小さな9.4インチ砲を連装砲塔2基に搭載していました。主砲の口径は下がった形でしたが同砲は新設計の速射砲で単位時間当たりの射撃砲弾量は増えています。速射砲の特性を活かすためにどの角度でも装填が可能な装填機構が採用されていました。第一次世界大戦期には既に二線級の戦力と見做され、限定的な任務についていました。

 

旧モデルとの比較

Navis旧モデル(NM 13)

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Navis新旧モデル比較(左が旧モデル)

(新モデルではディテイルの再現性が高いのは一目瞭然です。煙突のモールドや艦載艇の再現などに差が顕著です))

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ヴィッテルスバッハ級」戦艦(1902- 同型艦5隻)

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(1902-, 12798t, 18knot, 9.4in*2*2, 5 ships) 

Navis新モデル(NM 12N)

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(「ヴィッテルスバッハ級」戦艦の概観:100mm in 1:1250 by Navis: 前級に比べ、重心を下げ安定感を増すことに配慮された設計となっています)

同級は基本的に前級「カイザー・ウィルヘルム3世級」と同一船体を構成し活動することを想定して設計されています。防御力の強化、安定性の強化などを目指した「カイザー・ウィルヘルム3世級」の拡大改良型です。同一行動を想定したため搭載砲、配置等は前級を踏襲していますが、副砲は片舷6基から8基に強化されています。

第一次世界大戦期には主としてバルト海で運用されていましたが1917年に全艦が補助艦艇に種別変更されました。ベルサイユ条約では同級は予備艦として保有が認められましたが、後述の「ツェーリンゲン」を除く全艦が1921年前後にスクラップとして売却されました。

「ツェーリンゲン」のみは1944年まで標的艦として運用されました。

 

旧モデルとの比較

Navis旧モデル(NM 12)

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Navis新旧モデル比較(左が旧モデル)

(新モデルではディテイルの再現性が高いのは一目瞭然です。煙突のモールドや艦載艇、原則の副砲の再現などに差が顕著です))

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ヴァリエーション・モデルのご紹介

標的艦「ツェーリンゲン」

1921年頃相次いて同型艦が解体される中で、「ツェーリンゲン」のみは標的艦に改装され、1944年まで運用されていました。

標的艦となった「ツェーリンゲン」の概観:by Mercator(?))

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標的艦「ツェーリンゲン」(奥)と「ヴィッテルスバッハ級」戦艦の比較

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ブラウンシュヴァイク級」戦艦(1904- 同型艦5隻)

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(1904-, 14394t, 18knots, 11in *2*2, 5 ships)

Navis新モデル(NM 11N)

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(「ブラウンシュヴァイク級」戦艦の概観:102mm in 1:1250 by Navis: ようやく実用化がかなった11インチ速射砲を主砲として採用したため、大型の主砲塔を搭載しています)

同級は英海軍との戦闘、つまりバルト海だけではなく北海での運用を想定して設計された艦級です。最大の特徴は実用化された速射砲としては当時最大口径の新開発11インチ速射砲を主砲として採用したことで、さらに副砲の一部を砲塔形式で搭載し、射界を大きくしています。

第一次世界大戦期には、既に二線級戦力と見做され、主として沿岸防備任務につきました。「ヘッセン」のみは英独の決戦であったユトランド沖海戦に参加しています。1917年に補助艦艇に艦種が変更となりましたが、敗戦後、ベルサイユ条約で同級の「ブラウンシュヴァイク」「エルザース」「ヘッセン」の3隻保有が認められ、ワイマール共和国海軍では主力艦とされました。

 

旧モデルとの比較

Navis旧モデル(NM 11)

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Navis新旧モデル比較(左が旧モデル)

(新モデルではディテイルの再現性が高いのは一目瞭然です。新モデルでは副砲以下の中口径砲の配置等がかなり細かく再現されています))

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ヴァリエーション・モデルのご紹介 その1

ワイマール共和国海軍時代:1932年の「ヘッセン」Navis新モデル(NM 11R)

このお話の発端ともなった新たなNavis社のモデルです。

前述のようにベルサイユ条約で、同級は保有を認められましたが、既に第一次世界大戦期にあっても旧式艦であったので、いずれは沿岸警備艦として近代化改装される計画がありましたが、やがてナチスの台頭と再軍備宣言で新型主力艦の建造に注力されたため、大々的な改装は行われませんでした。

下の写真は1932年次にワイマール共和国海軍の主力艦であった当時を再現したモデルで、艦橋構造が変更されているのが分かります。

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1905年次モデル(左列)と1932年次モデルの比較

(艦橋と前檣・後檣の構造の差異が目立ちます)

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ヴァリエーション・モデルのご紹介 その2

標的艦ヘッセン

同級はナチスの台頭と共に再軍備宣言が行われると新型艦の就役に伴い順次退役し1930年代に解体されました。「ヘッセン」のみは標的艦として残され、第二次世界大戦では砕氷船としても運用されました。

標的艦となった「ヘッセン」の概観:by Mercator)

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ドイッチュラント級」戦艦(1906- 同型艦5隻)

ja.wikipedia.org

(1906-, 13200t, 18.5knots, 11in*2*2, 5 ships)

Navis新モデル(NM 10N)

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(「ドイッチュラント級」戦艦の概観:106mm inn1:1250 by Navis: ようやく実用化がかなった11インチ速射砲を主砲として採用したため、大型の主砲塔を搭載しています)

同級はドイツ帝国海軍が建造した最後の前弩級戦艦です。前級「ブラウンシュヴァイツ級」と同一戦隊を組むという前提で建造された前級の拡大改良版です。前級が武装過多から安定性に欠けるという課題を指摘されたため、同級では艦橋の簡素化や副砲塔の廃止を行われました。

1906年から1908年にかけて就役し、前弩級戦艦としては最新の艦級でしたが、就役時には既に弩級戦艦の時代が到来して旧式艦と見做されていました。

第一次世界大戦の最大の海戦であったユトランド沖海戦には第二戦艦戦隊として同級の5隻と「ブラウンシュバイク級」の「ヘッセン」が序列され、英戦艦隊の追撃を受け苦戦していたヒッパー指揮のドイツ巡洋戦艦戦隊の救援に出撃しています。この救援戦闘で同級の「ポンメルン」が英艦隊の砲撃で損傷し、その後英駆逐艦の雷撃で撃沈されました。

前級と同様に1917年には戦艦籍から除かれました。ネームシップの「ドイッチュラント」は宿泊艦となり状態不良のまま1922年に解体されました。

残る「ハノーファー」「シュレージェン」「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」が新生ドイツ海軍で保有を許され、その主力艦となったわけですが、1930年代に上部構造や煙突の改修などの近代化改装を受けて、艦容が一変しています。

 

旧モデルとの比較

Navis旧モデル(NM 10)

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Navis新旧モデル比較(左が旧モデル)

(新モデルではディテイルの再現性が高いのは一目瞭然です。新モデルでは艦橋や煙突部の作り込み、副砲以下の中口径砲の配置等がかなり細かく再現されています))

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ヴァリエーション・モデルのご紹介 

ワイマール共和国海軍時代の「シュレージエン級」戦艦(Neptun製)

(今回入手したNeptun製の「シュレージエン」(手前、下段右)と「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」:NeptunとNavisはいわゆる姉妹銘柄で、原則として第一次世界大戦期周辺のモデルをNavis銘柄で、第二次世界大戦期周辺をNeptun銘柄がカバーしています)

前述のように、同級はヴェルサイユ条約保有を認められ、第一次大戦で戦没した「ポンメルン」と状態不良の「ドイッチュラント」を除く「ハノーファー」「シュレージエン」「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」の3隻がワイマール共和国海軍(新生ドイツ海軍)に編入されました。

ネームシップの「ドイッチュラント」が上述のように状態不良により既に除籍されていたため、この3隻を「シュレージエン級」と呼ぶことが多いようです。

その後ヒトラー再軍備を宣言し新造艦艇が就役し始めると同級は練習艦に艦種変更されました。

同級のうち「ハノーファー」は1931年に除籍され無線誘導式の標的艦への改造が計画されましたが実行はされず、爆弾の実験等に使用された後、1944年頃に解体されました。

 

近代化改装後の「シュレージエン」(Neptun製モデル)

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(近代化改装後の「シュレージエン」の概観 by Neptun):

「シュレージエン級:ドイッチュラント級」の残る2隻「シュレージエン」と「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」は、第二次世界大戦期には練習艦として就役していて、主としてバルト海方面で主砲を活かした艦砲射撃任務等に従事し、緒戦のドイツ軍のポーランド侵攻では「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」のポーランド軍のヴェステルブラッテ要塞への砲撃が第二次世界大戦開戦の第一撃となったとされています。その後も主砲力を活かした地上砲撃等の任務に運用され、東部戦線での退却戦の支援艦砲射撃等を行っています。大戦末期には「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」は空襲で、「シュレージエン」は触雷でそれぞれ損傷し、自沈処分とされました。

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(上の写真はこれまで本稿でご紹介した際の同艦のHansa製モデル)

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(直上の写真は「シュレージェン」のNeptun製モデルとHansa製モデルの比較)

細部の再現性には両者でかなり差があるようです。Hansa製のモデルももちろん標準以上のディテイルを備えているモデルだとは思いますが、やや骨太に表現されすぎているように思います。Neptun製はそれを凌駕した繊細なディテイルで表現されているように感じます。下に紹介する「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」も同様です。

 

近代化改装後の「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」(Neptun製モデル)

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(近代化改装後の「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」の概観 by Neptun:「シュレージエン」と異なり一番煙突に誘導路が設けられ2番煙突との集合煙突になったことがわかります)f:id:fw688i:20220515091834p:image

(上の写真はこれまで本稿でご紹介した際の同艦のHansa製モデル)

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(直上の写真は「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」のNeptun製モデルとHansa製モデルの比較:ディテイルの繊細さではNeptun製モデルに「一日の長」が)

 

標的艦への改装後の「ハノーファー(Neptun製:モデル未入手)

(直下の写真は「ハノーファー」の標的艦仕様のモデルの概観(筆者は保有していません):実際にこの形態になったのかどうかは、不明です。こちらいつもモデル検索でお世話になっているsammelhafen.deから拝借しています。by Neptun:Neptunからモデルが出ているということは、実艦が存在したということかな?)

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というわけで、今回はNavisのドイツ前弩級戦艦を例に、モデルの新旧比較をご紹介いたしました。新旧のディテイルの差異のレベルがご理解いただけたでしょうか?

正直にお話しすると、実は筆者は上述の「ブラウンシュヴァイク級」の1932年モデル(NM 11R)の情報がなければドイツ帝国弩級戦艦の新モデルへの更新は全く行う気がありませんでした。旧モデルでディテイル等に不満があったわけではなかった、ということです。しかしこうして比較してしまうと・・・。

むしろNavisのラインナップでは、英海軍の前弩級戦艦弩級戦艦超弩級戦艦、装甲巡洋艦巡洋戦艦等のモデルのディテイルの簡素さが、特にドイツ帝国海軍の旧モデルとの比較の時点で気にはなっていたのです。

しかし英海軍の前弩級戦艦弩級戦艦超弩級戦艦、装甲巡洋艦巡洋戦艦となるとあまりにも揃えるべき(更新すべき)モデルの数が多く、それこそ「財政の成り立つはずがない」と、半ば諦めています。まあ、今回の整理でかなりその差異がはっきりと明示されてきたので、これからも意識のどこかに引っかかり続けるんでしょうが。

表題の「禁断の」というのはそういう自戒の意味もこめられた言葉でもあるわけです。

 

ということで、今回はこの辺りで。

 

次回は、新着モデルを中心にお話をしたいと思っています。以前、少し中途半端になった(と筆者が思っている)近代戦艦(前弩級戦艦)登場以前の主力艦の発達を、最近入手したA=H海軍艦艇のモデルを交えてご紹介できれば・・・。予告編はあまり当てになりませんが。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

 

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Rhenania製スウェーデン海軍巡洋艦「ゴトランド」を入手:モデル比較など

本稿前回で「空母機動部隊小史」を少しお休みします、と言う宣言をして気が楽になった、と言うか、しばらくは(多分「ピカード :シーズン2」が終わるまで?)気分のままに、新着モデルのご紹介を中心に本稿を進めていきたいな、と思っています。(とはいえ、全く行き当たりばったりなので、突如「空母機動部隊小史」の一節を挟むかも。そこは何卒、ご容赦を)

 

と言うわけで、今回は、筆者が絶賛してやまない、長らく探していた1:1250スケールモデルの「Rhenania」社製のスウェーデン海軍航空巡洋艦「ゴトラント」が到着したので、こちらを、これまで筆者のコレクションにあった3D Printing Modelとの比較などと併せてご紹介。

加えてRhenania社の素晴らしさを少しご紹介。

今回はそう言うお話です。

 

・・・と言うことなのですが、本論のその前に、例によって。

スター・トレック ピカード  シーズン2」Episord 6

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(ネタバレの禁忌は大いに冒してしまったので、もう気にしません。ネタバレ、あります、きっと)

***(ネタバレ嫌な人の自己責任撤退ラインはここ:ネタバレ回避したい人は、次の青い大文字見出しに「engage!」)***

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Star Trek: Picard - Engage! - Episode 3 finale - YouTube

 

 

 

Episord 6は、全編「やはりピカード の物語なのだ」と思わせるエピソードでした。

二人のピカード の交わす「闇」と「光」、「恐怖」と「勇気? 」を巡る対話は、おそらくこの物語を愛する全てのファンが求めている「何か」が凝縮されているようで、圧巻の一幕でした。

そしてそれは形を変えジュラティとボーグ・クイーンの物語でもあり、アダム・スンの内なるエピソードとしても次第に形を表してゆくのです。

いくつかの「真実」が一つの「事実」を紡ぎ出す。

「昼の光に闇の深さがわかるものか」。あるいは逆もまた然り。

ピカード の真骨頂、とでも言うべきエピソードだったなあ、と言うのが筆者の感想でした。

こう書くとなんだかずいぶん難しい話のように聞こえてしまうかもしれませんが、そこをいたるところで繰り出されるジョーク(その多くがトレッキーにしか通じないんじゃないかと、気にはなっっているのですが)が彩り、タリスとピカード の(ロミュラン女性で25世紀(24世紀?)に残してきたラリスとの微妙な関係をピカード だけが意識しているもどかしさ)ぎこちなさがユーモアを添え、リオスとテレサ(21世紀のドクター)のこれまた不器用なコンタクトがくすぐったさを醸し、なんとも言えない暖かさを感じる話になっているように思います。

もう6話まで来ちゃったからあと残すところ4話。筆者にとって大切な時間になることは間違いない。すでに名残惜しいような酸っぱい気持ちになりつつあります。

でも、金曜日が待ち遠しい。

 

いつものことながら、オープニング曲を楽しんでください。

Star Trek Picard Season 2 Intro Opening Sequence Version #1 ► 4K ◄ (Teaser Trailer Clip Promo) - YouTube

是非ともシーズン1も併せて。

www.youtube.com

 

さて、ここから今回の本編。新着モデルのご紹介。

Rhenania製:航空巡洋艦「ゴトランド」を入手

以前から懸案だったRhenania社製のスウェーデン航空巡洋艦「ゴトランド」をようやく入手しました。

この入手には紆余曲折あり、本来ならRhenania社のオーナーが筆者に直接調達してくださる予定だったのですが、その相談をしている矢先に(搭載する適当な水上機を見繕ってあげる、と言うような話でした)例のライン川の大洪水が発生。しばらく連絡がとれなくなっていたのでした。

(ちなみにRhenaniaと言う社名はライン川のローマ時代の名前からもらったブランドネーム」なのだそうです。下の写真は住所から辿ったRhenania社の所在地の航空写真(Google Map)です。本当にライン川のすぐそば、と言うのがわかります)

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こちらもライン川の水害のニュースに接し、あまり暢気な話をするのも気が引けてしまい、この話はそのままになってしまったのですが、最近になってebayでいつも筆者が大変お世話になっているcroschwig(Roger Roschwig)さんから彼の他の出品物を落札した際に「そう言えば、前にあなたがRhenania製の「ゴトランド」を探しているって聞いてたけど、まだ探しているの?ちょうど今手元に入ってきたんだけど、まだ探しているならそちらに優先して回すけど」と連絡をいただき入手に至ったのでした。

その際に「Rhenaniaと連絡が取れてないんだけど、何か情報ありますか?」と聞いたところ、直ぐにRhenaniaのオーナーから「Rogerから、あなたに連絡とれって言われたんだけど、「こっちは大丈夫だから」と連絡をいただきました。何はともあれ一安心。

ちょっと話がそれましたが、ともあれ入手したモデルはやはり素晴らしいものでした。

 

航空巡洋艦「ゴトランド」(1934年就役:同型艦なし)

すこし「ゴトランド」についておさらいを。

ja.wikipedia.org 

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航空巡洋艦「ゴトランド」の概観:109mm in 1:1250 by Rhenania:下の写真では、「ゴトランド」の特徴である艦首部の連装砲塔、中央部の上甲板下の魚雷発射管、艦尾部の航空甲板の拡大)

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 スウェーデン海軍は1929年代から艦載機による防空を目的とした巡洋艦の建造を計画しました。

本稿でも「スウェーデン海軍の海防戦艦」の回にご紹介した海防戦艦「ドリスへティン」が水上機母艦に改造されたのも、この構想の一環です。

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(「ドリスへティン」の水上機母艦への改装後の概観:72mm in 1:1250 by C.O.B. Construvts and Miniature in Shapewaysからのセミ・スクラッチ)f:id:fw688i:20210228113324j:image

fw688i.hatenablog.com

 

この水上艦艇に航空索敵能力を持たせる構想は「4500トン級の水上機母艦案」や「5500トンの航空巡洋艦案」等の検討を経て、本艦は世界初の航空巡洋艦として建造され、4700トンの船体に、6インチ連装砲塔2基、同単装砲2基(ケースメート形式)計6門の主砲を有し、重油専焼缶とタービンの組み合わせで速力27.5ノットを発揮しました。航空艤装としては艦尾部に広い飛行整備甲板を持ち、搭載機6機を定数とし、最大12機まで搭載できる設計でした。(甲板係止:10機・ハンガー収容:2機)搭載機は飛行整備甲板と艦上部構造の間に据えられた回転式のカタパルトから射出される構造でした。

三連装魚雷発射管を両舷に装備し、機雷敷設能力も兼ね備えていました。

巡洋艦という目で見ると、やや速力が物足りないと思われるかもしれませんが、バルト海という主要な行動領域と設計が大戦間の航空機の発達途上の時期であることを考えると、当時としては十分な機動性を持っていたといえるかもしれません。

 

ドイツ戦艦「ビスマルク」の出撃を通報

スウェーデンは永く中立を保ったため、大半の艦艇には目立った戦歴がないのですが、同艦はドイツ戦艦「ビスマルク」の最初で最後の戦闘行動である「ライン演習」への出撃に遭遇し、カテガット海峡通過に随伴する形で行動したことでも有名です。結果的にその接触の通報は海軍司令部を経てイギリスに伝達されました。

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(上の写真:ライン演習作戦に参加した「ビスマルク」と「プリンツ・オイゲン」:本来、このライン演習作戦はドイツ本国から「ビスマルク」「プリンツ・オイゲン」が、占領下にあったフランスのブレストから「シャルンホルスト」「グナイゼナウ」が出撃する、と言う強力な水上兵力を集中する作戦となる予定でしたが、「シャルンホルスト」は機関の故障、「グナイゼナウ」は英軍機の空襲での損傷で作戦に参加できませんでした。この結果、ドイツ本国から出撃した「ビスマルク」戦隊を英本国艦隊のほぼ全兵力が追跡する形となり、デンマーク海峡での英巡洋戦艦「フッド」との砲撃戦と「フッド」の轟沈、新戦艦「プリンス・オブ・ウエールズ」の撃破、その後の「ビスマルク」への集中攻撃による撃沈、と「ビスマルク」に実態以上の「伝説」を産むこととなりました)

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(「ライン演習」参加時のドイツ戦艦「ビスマルク」随伴重巡洋艦プリンツ・オイゲン」と「ゴトランド」の大きさ比較。カテガット海峡を哨戒中の「ゴトランド」の通報から、「ビスマルク」部隊の出撃の情報がもたらされました。参考までに「ビスマルク」:202mm in 1:1250 by Neptun、「プリンツ・オイゲン」:170mm in 1:1250 by Neptun、「ゴトランド」:109mm in 1:1250 by Rhenania)

 

その後、艦載機種更新にあたって、後継予定機種が機体重量の関係で現有のカタパルトでは射出できないことが判明すると、同艦は航空艤装を廃止し、艦尾部の飛行整備甲板に対空兵装を増強するなどして防空巡洋艦に変更されました。

1956年まで現役に留まり、1963年に解体されました。

 

「ゴトランド」モデル比較(Rhenania vs Amature Wargame Figures)

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(上の写真は今回入手したRhenenia製の「ゴトランド」、下の写真は3D Printing Model Amature Wargame Figures製の「ゴトランド」)f:id:fw688i:20210124174227j:image

www.shapeways.com

流石にRheneniaのモデルのディテイルの繊細さが目立ちます。さらに下では細部の比較も。 f:id:fw688i:20220410102441p:image

(「ゴトランド」の細部:上がRhenania製、下がAmature Wargame Figures製:艦首部の連装主砲(上段)、艦中央部の対空砲群(中段)、艦尾部の連装砲塔と回転式のカタパルト、飛行整備甲板(下段):Amature Wargame Figures製の方は、出力されたモデルそのままではなく、主砲塔、対空砲等は筆者の手持ちのストックパーツからどれらしいものを転用してディテイルアップを試みてはいます。いずれにせよ差は歴然かと)

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いずれの視点でも、今回の比較ではRhenaniaの優位は明らかなのですが、価格差をどう考えるか、これは結構大きな問題です、特に筆者のようにコレクションを目的とした場合には。ちなみに今回入手したRhenaniaモデルは62€、一方、Amature Wargame Figuresモデルは3D Printing Modelとしては標準よりも少し安めの15€です(いずれも送料別)。「ゴトランド」は同型艦のない船の場合にはいいのでしょうが、ある程度数を揃えたい(1:1250という小スケールの場合にはこう言った欲求も湧き上がってくることは間違いありません)場合には、この差は掛け算になって効いてきます。

3D Printing Modelとしては今回ご紹介したものは標準的な品質であると言っていいと思います。しかし製作者によってはいわゆるメタルのモデルにも負けないディテイルを再現している場合もあるので(その場合、費用もそれなりに)、個別ケースでの比較にはなってきます。

まあ、結論としては、いろんな選択肢があるのは、「選ぶ」という過程も楽しめるので、さらに「いいですね」としておきましょう(結構、本音です)。

 

Rhenania モデルの楽しみ方:その1

もう少しRhenaniaのモデルの素晴らしさを理解していただく例を挙げてみましょう。

と言っても、筆者もそれほど多くのRhenaniaのモデルを保有しているわけではないので、それなりの範囲で。

その一例が「アラン級」海防戦艦の近代化改装後のモデルかと。これまで筆者はネームシップの「アラン」と4番艦の「マンリゲーテン」の2隻のモデルを所有していたのですが、最近、さらに1隻、3番艦「タッパレーテン」を新たに入手できました。

 

モデルのお話の前に少し「アラン級」のおさらいを。

アラン級(同型艦4隻:1902年から就役)

ja.wikipedia.org

「アラン級」海防戦艦は前級「ドリスへティン」の改良型として建造されました。3600トン級と、やや前級を拡大した船体を持ち、前級と同じ44口径8.2インチ単装砲を主砲として2基装備していました。副砲も同様に6インチ単装速射砲を6基、魚雷発射管を2基装備していました。

石炭専焼缶とレシプロ主機の組み合わせで、17ノットの速力を出すことが出来ました。

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海防戦艦「アラン級」の概観:70mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature in Shapeways:竣工時の姿)

 

近代化改装 (Rhenanaモデルの比較)

同級の同型艦ネームシップの「アラン」と「ヴァーサ」「タッパレーテン」「マンリゲーテン」です。

各艦は1910年ごろから順次、前部マストを3脚化し射撃指揮所を設置したのを皮切りに、機関の重油専焼缶への換装、魚雷発射管の撤去、対空兵装の強化など近代化改装が行われました。改装のレベルは艦によって異なり、外観にも差異が生じました。

今回、記述のようにRhenania製の3番艦「タッパレーテン」を入手しました。

「アラン級」三番艦:「タッパレーテン」

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海防戦艦「アラン級」三番艦「タッパレーテン」近代化改装後の概観:by Rhenania)

 

「アラン級」ネームシップ:「アラン」

こちらは以前から保有していた「アラン級」のネームシップです。f:id:fw688i:20220410110030p:image

海防戦艦「アラン」の近代化改装後の概観:by Rhenania)

 

「アラン級」4番艦「マンリゲーテン」

同級4番艦の「マンリゲーテン」は1941年に艦首をクリッパー型に改装されています。スェーデン海軍の海防戦艦の中で唯一、クリッパー型艦首を持つ艦となりました。f:id:fw688i:20220410110035p:image

(「アラン級」4番艦「マンリゲーテン」の近代化改装後の概観:by Rhenania:艦首形状のクリッパー型への変更にと同時にボイラーが新型に換装され、対空火器の配置変更等も行われています)

 

3隻の比較

3隻の細部を比較したものが下のカット。

(およそ70mm程度の小さなモデルで、なかなかお伝えしにくいのですが、煙突まわりなど全て造作が異なっているのがわかっていただけるでしょうか?
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上段がネームシップ「アラン」、中段が「タッパレーテン」、そして下段が「マンリゲーテン」の順です。大きな差異は左列の艦首形状と右列の対空兵装の配置でしょうか。そして