相州の、1:1250スケール艦船模型ブログ 主力艦の変遷を追って

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

ロイアル・ネイヴィーの駆逐艦(その2:黎明期の駆逐艦)

今回は、ロイアル・ネイヴィーの駆逐艦の成立期のお話です。

 

駆逐艦という艦種

駆逐艦という艦種は19世紀の半ばに誕生します。そもそもは高い破壊力を持つ魚雷を抱いて高速で主力艦に向けて突っ込んでくる「水雷艇」に対し、駆けつけて追い払う=駆逐する艦種、「水雷艇駆逐艦」として成立しました。この目的のために、新たな艦種開発としての模索があったわけで、それは「水雷砲艦(Torpedo gunboat)」や「水雷艇捕捉艦(Torpedo boat catcher)」などの「打ち払う」的な発想の艦種として試行されますが、いずれも速度の面で十分な成果が得られず、結局、「水雷艇」の設計を拡大したある種「大型水雷艇」的な発想の設計に帰結する事になりました。

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(各国が装備した水雷艇ドイツ帝国海軍の小型水雷艇(黒)と、日本海軍の水雷艇(白2タイプ))

水雷艇よりも少し大きな船体に高い出力の機関を搭載し、高い運動性の水雷艇に追随できる速射性の高い艦砲を多く搭載する、というわけですね。ならばついでに魚雷も搭載して仕舞えば、水雷艇としても使用できるじゃないかということで、やがて大型水雷艇駆逐艦は、実質的に「駆逐艦」という艦種に統合されてゆきます。船体が大きいので、「水雷艇」よりも航洋性が高く、かつ航続距離も長くでき、主力艦隊への随伴も可能で・・・。と利用目的がどんどん広がってゆく大変便利な汎用軍艦の艦種が誕生したわけです。

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水雷艇駆逐艦の対比:ドイツ帝国海軍の小型水雷艇(黒)と、日本海軍の水雷艇(白2タイプ)と下記で紹介する英海軍の27ノッタータイプの水雷艇駆逐艦(1番奥))

このように護衛にも攻撃にも使え、かつ主力艦などよりははるかに安価なため、数を揃えることができるということもあって、新興海軍(当時の日本海軍など)もこぞってこれを装備してゆきました。

 

200トン前後の小さな船体で荒天では活動できなくなるような「水雷艇」を巡り、何故こんな騒ぎが起きたかということについて、さらに少し背景を考察すると、当時の主力艦が砲戦だけでは非常に沈めるのが困難だった、ということが挙げられます。

当時列強は(列強以外の国も)、こぞって装甲を持った軍艦をそろえてゆきます。艦型は大型化し、同時に搭載される艦砲も強力なものに発展してゆくのですが、陸上の固定された目標を破壊するならまだしも、航行中の軍艦同士の砲撃戦では、まず砲弾を命中させることが大変難しいのです。さらに十分に装甲防御を施された主力艦を少ない命中弾で行動不能にすることは至難の技で、反面、装甲帯のない船底を狙う魚雷という兵器は大変脅威だったわけです。

 

少し駆逐艦から離れ、余談になりますが、砲戦で主力艦が沈まない、という事については、その後の海戦史を見ても明らかです。あれだけ各国が凌ぎを削って整備した主力艦は、ほとんど主力艦同士の砲撃戦で沈んでいないのです。

そもそも、主力艦同士の海戦というのが、事例が非常に少ないのです。

そして喪失艦を強いて挙げるならば、日本海海戦日露戦争)でのボロジノ級3隻、第一次世界大戦のドッカー・バンク海戦、ユトランド沖海戦での英独両海軍の巡洋戦艦の喪失、第二次世界大戦デンマーク海峡海戦での「フッド」の喪失、北岬海戦での「シャルンホルスト」の喪失、第三次ソロモン海戦での「霧島」の喪失、その辺りでしょうか?

こうして並べてみると、日本海海戦を除いて、その後の喪失例は「軽防御の主力艦」がその弱点を突かれて撃沈されたと言えるような気がします(ユトランド沖海戦の「リュッツォー」北岬海戦の「シャルンホルスト」の場合は、もう少し事情が複雑かもしれませんが)。

弱点を突かれた、という点では、ボロジノ級も同じかもしれません。日本海海戦の場合は、ボロジノ級の設計に課題があり、せっかくの舷側装甲が健全に防御機能を果たせなかった、ということかと考えています。

これ以外に「ビスマルク」やレイテ沖海戦での「山城」「扶桑」などが挙げられるかもしれませんが、これらは主力艦同士の砲撃戦での戦果としてしまうのは、少し違うのかな、と考えています。

 

 ロイアル・ネイヴィーの駆逐艦整備

上記の駆逐艦黎明期、英海軍の仮想敵国はフランス海軍でした。

少し当時の状況を乱暴にまとめると、当時は装甲を持った外洋航行可能な戦艦(後に前弩級戦艦と呼称されますが、その少し前)のこれまた黎明期でありました。この後に「戦艦」とシテ我々が良く知る艦種は、この時期以降、急速に発展するのですが、機関と燃料(当時はまだ石炭)の積載量、その補給方法(給炭ですね)を考慮すると、いわゆる「戦艦」はまだ行動範囲が大陸沿岸に限られていた、と言っていいと考えています。

+++また余談ですが、こうした時期の最盛期に日露戦争が行われているわけで、こうした背景を考えても、ロシア艦隊の日本への回航は、その悲劇的な結末はさておき、まさに「壮挙」だと改めて思います。

 

fw688i.hatenablog.com

 

当時フランスでは、防御にせよ攻撃にせよ、沿岸で行動に限定される「戦艦」の有用性について大きな議論があり、議論の末、大鑑巨砲の対局をゆく海軍戦略を掲げる「新生学派(ジューヌ・エコール)」が台頭していました。この学派の台頭により、フランス海軍はその後の「主力艦整備」という視点では英独に大きく遅れを取り、列強が前弩級戦艦弩級戦艦超弩級戦艦の整備へと凌ぎを削ってゆく海軍軍備競争からは脱落するのですが、一方で、1881年の予算で水雷艇70隻、1886年の予算で100隻、と大量の水雷艇整備を実行し、近海海軍活動を充実させてゆく動きを見せていました。

この大量の水雷艇整備計画への英海軍の回答が、「水雷艇駆逐艦」という艦種となって現れてゆくのです。

 

(前述の「新生学派(ジューヌ・エコール)」とその影響下でのフランス主力艦整備については、下記に少し記述がありますので、もし興味のある方はどうぞ。模型的には、或いはコレクター視点で見ると、なんとも宝箱のような海軍です)

fw688i.hatenadiary.jp

 

27ノッター」「30ノッター」の登場

当時の「水雷艇」の標準速度が23ノットであり、概ね100トン程度の船体に速射砲1門、魚雷2発を抱えて敵性軍艦に向けて近距離まで接近し魚雷を放つ、という戦い方でした。 

これを捕捉し撃破するのが、「水雷艇駆逐艦」の主任務でしたので、英海軍はこの艦種の速力を「水雷艇」より優速の27ノットと定めます。こうして「27ノッター」と呼ばれる「水雷艇駆逐艦」の艦級が誕生しました。

以下、英海軍の駆逐艦の艦級は「A級」「B級」など、アルファベットで紹介されますが、実はこの呼称は後の航洋型駆逐艦の艦級が整備された後の再種別の際に厚漬けされたもので、この「駆逐艦黎明期」には、その速度特性から「27ノッター」とその発展形である「30ノッター」の2種に大別されていました。

当時の「水雷艇」は形状の特徴として、敵への肉薄を少しでも容易にするために、低い平甲板型の船体を持ち、「亀甲型」と言われる艦首形状をしていました。結果的に「水雷艇」から発展した「水雷艇駆逐艦」も同様の船体形状をしていました。この形状は穏やかな海面では高速を発揮し視認性を低減する意味では有効でしたが、一方で凌波性が低く、荒天時には行動できませんでした。「水雷艇駆逐艦」である間は、それでも良かったのでしょうが、機関技術や造船技術、船体に使う鋼板の発展に伴い主力艦が大型化し、「駆逐艦」が随伴すべき主力艦隊の活動が外洋に広がると、航洋性を高める設計へと移行してゆくことになるのです。

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(初期の水雷艇駆逐艦の艦首形状=亀甲型(上段)と航洋型駆逐艦:後の紹介する予定の「F級」の艦首形状=船首楼型の対比)

 

 

27ノッター型 

A級駆逐艦:(準同型艦 42隻)

ja.wikipedia.org

ロイアル・ネイビーが初めて整備した駆逐艦の艦級です。

前述のように、整備時点では「A級」の呼称はなく、250トンから350トンの船体に27ノットの速力を発揮できる機関を搭載することから「27ノッター」型とひとまとめにされていました。機関の形式は多岐にわたり、煙突の数を含め、多様な艦型を含んでおり、まさに模索期の様相を呈しています。

武装は45センチ単装魚雷発射管を2基、7.6センチ単装砲1基、5.7センチ単装砲3〜5基を搭載していました。

 

1本煙突型(同型艦:2隻)

(残念ながらモデルを保有していません:モデルがないかも)

ハンナ・ドナルド&ウィルソン社が建造を担当しました。

 

2本煙突型(同型艦:10隻)

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(「27ノッター型:A級2本煙突型の概観:47mm in 1:1250 by Oceanic-TV)

ヤーロウ社、ソーニクロフト社、フェアフィールド社が建造しました。初期型は水雷艇襲撃任務の際には魚雷発射管を57mm砲に換装して出撃することも想定されていたようです。が、この装備換装の造作は初期型のみで廃止されました。

 

3本煙突型(同型艦:23隻)

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(「27ノッター型:A級3本煙突型の概観:47mm in 1:1250 by Oceanic-TV)

 ヤーロウ社をはじめ9社が建造を担当しました。

 

4本煙突型(同型艦:7隻)

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(「27ノッター型:A級4本煙突型の概観:54mm in 1:1250 by Oceanic-TV)

キャメル・レアード社とアール社が建造を担当しています。

 

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(「27ノッター型:A級」の勢揃い)

 

30ノッター型 (準同型艦:74隻)

27ノッター」型で一応の成功を収めた英海軍は、より機関を強化した駆逐艦のグループを「30ノッター」型と称し、量産に入りました。

標準武装は「27ノッター」型に準じました。(45センチ単装魚雷発射管を2基、7.6センチ単装砲1基、5.7センチ単装砲5基)

機関の強化に伴い艦型も400トン前後に拡大しています。一方で蒸気レシプロ機関では出力の限界が見えたため、蒸気タービンの導入など新たな試みが行われ始め、何隻かに試験的に搭載されました。

 

B級駆逐艦:(同型艦 24隻)

ja.wikipedia.org

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(「30ノッター型:4本煙突型=B級の概観:57mm in 1:1250 by Oceanic-TV)

 「30ノッター」型のうち4本煙突の形式がのちに「B級」と呼称されました。同級から、57mm砲の搭載数が5基とされました。

さらに高速化への模索として、一部の艦はレシプロ蒸気機関に変えて、タービンが試験搭載されました。

日本海軍の「雷級」駆逐艦は同級をプロトタイプとして建造されています。

 

 C級駆逐艦:(同型艦 40隻)

ja.wikipedia.org

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(「30ノッター型:3本煙突型=C級の概観:54mm in 1:1250 by Navis)

 「30ノッター」型の3本煙突の外観を持つループが後に「C級」と再種別されました。

 

 

D級駆逐艦:(同型艦 10隻)

ja.wikipedia.org

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(「30ノッター型:2本煙突型=D級の概観:54mm in 1:1250 by Hai)

 「30ノッター」型の2本煙突の外観を持つループが後に「D級」と再種別されました。2本煙突型「30ノッター」はは全てソーニクロフト社で建造され、他の形式に比べ艦型は統一されていました。機関と煙突の関係が整理され、艦型はややコンパクトにまとめられています。(350トン)

 

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(「30ノッター型:B級, C級, D級」の勢揃い)

 

今回は、英海軍の「駆逐艦」の黎明期とそこで運用された艦級を見てきましたが、前述のようにその随伴し護衛すべき「主力艦」の行動範囲が 広がると、「駆逐艦」にも高い航洋性が求められるようになります。こうして、黎明期の「水雷艇駆逐艦」の時代は終わり、「航洋型駆逐艦」の模索が始まるのです。

ということで今回はここまで。

 

次回は、モデルの到着状況次第で、この続きをやるか、あるいはフランス海軍の巡洋艦、もしくは日本海軍の空母あたり(こちらは始めると少なくとも4回程度のミニシリーズになりそうです)で・・・。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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ロイアル・ネイヴィーの新着モデルとあれこれ

今回は前回からの流れでロイアル・ネイヴィーの新着モデルとその関連、そういうお話を少々。

 

前回の「第一次世界大戦期の英国(ロイアル・ネイヴィー)の駆逐艦」の4艦級で欠けていた「S級」が到着しましたので、まずはそのご紹介から。(以下の項は、前回分にも反映しておきます)

 

2本煙突駆逐艦時代の到来

S級駆逐艦(初代)(同型艦:準同型艦67隻) 

ja.wikipedia.org

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(「アドミラルティS級」の概観:67mm in 1:1250 by Navis)

 「S級」駆逐艦は艦数の急速な整備という要求に応えるために、「アドミラルティR級」(2本煙突)をベースに量産された艦級です。艦首形状をシアとフレアを強めたものとして乾舷をより高くし凌波性を高めています。1000トン級の船体を有し、兵装は基本従来艦級のものを継承していましたが、従来の標準装備である53.3cm連装魚雷発射管2基に加え、45cm単装魚雷発射管を艦橋両側に装備していました。

 

以下のサブ・クラスが含まれています。

アドミラルティS級:55隻
ヤーロウS級:7隻
ソーニクロフトS級:5隻

サブ・クラスのそれぞれの特徴を少し。

「ヤーロウS級」はヤーロウ社の設計の特徴である縦横比の大きな船体を持ち、機関は直結タービンを搭載していました。
「ソーニクロフトS級」の最大の外観的な特徴は1番主砲を台座の上に装備したことと、艦橋を後ろにずらせたことでしょう。

 

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(「アドミラルティS級」の武装配置:基本的な配置は「改R級」と変わりませんが、特に「S級」に場合は、艦橋脇に45cm単装魚雷発射管を両舷に1基づつ設置したことです。艦尾の探照灯台が2番連装発射管上に装備されているのは、実際にはどうなっていたんでしょうか?図面で見てもそうなので、発射管の回転軸上に探照灯台があったのかな?) 

第一次世界大戦終結までに20隻が就役し、大半が1930年代に売却されていますが、11隻が第二次世界大戦時に参加、7隻が生き残りました。

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アドミラルティR級アドミラルティS級の比較)

 

第一次世界大戦期の英海軍駆逐艦総覧

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(今回ご紹介した4艦級:手前からアドミラルティM級、アドミラルティR級アドミラルティS級、V/W級の順) 

 

第一次世界大戦期の駆逐艦のトピック

実はあるところでフランス海軍の「アラブ級」駆逐艦についてモデルを紹介する機会がありました。

フランス海軍:アラブ級駆逐艦同型艦:12隻)

ja.wikipedia.org

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(「アラブ級」駆逐艦の概観:65mm in 1:1250 by Navis)

同級はフランス海軍が第一次世界大戦中に就役させた駆逐艦の艦級なのですが、実は日本海軍の「樺」級二等駆逐艦を原型としフランス海軍が日本に発注した、という経緯があるのです。

第一次世界大戦中、日本海軍は連合国として参戦し、船団護衛部隊として、第二特務艦隊を編成し、これを遠く地中海に派遣しています。この艦隊の主力を構成したのが、「桃級」駆逐艦と「樺級」駆逐艦でした。

当時、日本海軍は外洋での航洋能力を持つ駆逐艦の整備に着手したところでした。そのため、それまで400トン前後であった駆逐艦は一気に1000トン級の「海風級」に発展し、航洋性という視点では合格であったものの、駆逐艦という艦種の特性から数を揃える必要があり、並行して中型駆逐艦(600トン級:二等駆逐艦)のに建造にも着手します。この中型駆逐艦の初めての量産型が「樺級」でした。折から第一次世界大戦の勃発を受け、プロトタイプの「桜級」をベースに幾つかの小規模な改正を施し、民間造船所を総動員して起工から竣工まで105日という短期間で完成させられました。

地中海に派遣された第二特務艦隊は、初めての対潜水艦戦という不慣れな状況に直面しながら、およそ一年半の派遣期間に70万人の兵員輸送に貢献し7000人の救出に携わるなど、非常に高い評価を受けています。世界のどの海軍も対潜水艦戦は初めての経験であり、当初は対潜水艦戦用の装備などあるはずもなく、掃海具であるパラベーンを流してワイアにUボートを引っ掛け破壊するというような方法で、ドイツ帝国オーストリア=ハンガリー帝国の潜水艦と戦ったようです。同級の「榊」は雷撃で艦首を吹っ飛ばされ、死傷者を出しています。

一方、フランスはもちろん第一次世界大戦のまさに当事国であり、自国での造船も思うに任せないまま航洋型駆逐艦の不足に悩んでいました。そうした状況下で日本海軍の派遣艦隊の活躍を目にし、かつその短期間での量産実績と併せて日本への発注となったようです。

ja.wikipedia.org

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(直上の写真は「アラブ級」の武装配置:艦首に12cm砲、艦橋直後に45cm連装魚雷発射管、艦中央部両舷に8cm砲を各一門、砲台上に8cm高角砲:「樺級」ではここには8cm平射砲が装備されていました。そして2番連装魚雷発射管、艦尾に8cm砲、と高角砲をの除いてはほぼタイプシップの「樺級」と同じ兵装配置でした。速力は30ノット)

 

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(直上の写真は、上段:「アラブ級」(手前)と「樺級」の対比。模型ですので、色違いくらい? 下段:「アラブ級」と同時期の英海軍の航洋型駆逐艦アドミラルティM級」の対比:1000トン級の「M級」に対して「アラブ級」はかなり細身に見えます)

「アラブ級」駆逐艦をめぐり、そのルーツが日本海軍の「樺級」駆逐艦であること、その導入経緯が地中海への派遣艦隊であったことなど、色々と面白いことを思い出させてもらいました。

そして、上の写真を見ていると、1000トン級の「M級」を準同型艦を合わせれば105隻も揃えていたこと、さらには戦時に「M級」に続けて「R級(62隻)」「S級(67隻)」「V/W級(67隻)」と量産を続けることができた(?)当時の英国の「凄み」を改めて感じました。

 

ダイドー級軽巡洋艦のヴァリエーションモデルの到着

本稿では英海軍の巡洋艦紹介の際に、「ダイドー級軽巡洋艦防空巡洋艦)のご紹介をしました。その際に、同級では建造時に主砲として搭載を予定されていた5.25インチ連装両用砲の生産が間に合わず、最初の3隻では1基を欠いた4基搭載の状態で就役せざるを得ず、同級の最後の2隻については駆逐艦や空母の対空火器として搭載されていた4.5インチ対空連装砲を4基搭載して就役した、と書きました。

en.wikipedia.org

この「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」のArgonaut社製のモデルが到着しましたので、ご紹介しておきます。

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(「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」の概観:by Argonaut:やはり主砲がやや弱々しく見えませんか?) 

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(直上の写真は、「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」(左列)と「ダイドー級5.25インチ両用砲装備型」の対比。武装の違いだけながら、かなり細部の造作が異なることがよくわかりますね。大きくは両用砲が砲塔になっているのに対し、高角砲が防盾仕様になっているところから砲座周辺の波返板、ブルワーク等に差異が出てくるのでしょうね)

 

結局、この両艦「カリブディス(HMS Chrybdis)」「シラ(HMS Scylla)」は、巡洋艦とは言いながら対艦戦闘では駆逐艦並みの火力で就役せねばならなかったわけです。

一方、対空戦闘に関していうと5.25インチ両用砲が毎分7−8発の射撃速度で、かつ連装砲塔の重量から高速化する航空機に対しては運動性が不足する等、対空砲としては十分とはいえなかったのに対し、4.5 インチ砲は毎分16発ほどの射撃速度をもっていたため、どちらが有効だったか。

 

もう一つの英海軍防空巡洋艦の話:つまり「ユリシーズ号」

実は上掲の「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」を2隻入手しました。

何故2隻か?その目的の一つとして、これをベースとした「もう一つの英防空巡洋艦」のモデル制作があったのです。(1隻はもちろんそのまま、です。ですから2隻欲しかった)

本稿でも既にご紹介した通り英海軍は第二次世界大戦期に、第一次世界大戦型の巡洋艦を防空艦に改造したものに加え、新たに防空巡洋艦を2艦級、投入しています。「ダイドー級」とその改良型である「ベローナ級」ですが、この両艦級の間に非常に有名な防空巡洋艦が、ある意味、存在しているのです。

アリステア・マクリーンの海洋小説の名作「女王陛下のユリシーズ号」に登場する「ユリシーズ」です。

本書はフィクションで、もちろん「ユリシーズ」は物語に出てくる架空の軍艦です。小説の本文中に「有名なダイドー級改型の5500トン、ブラック・プリンス級の先駆で、この型のものとしてはただ一艦である」(ハヤカワ文庫版:村上博基氏訳56ページより)という文章があり、全長510フィート(155.5m)、5.25インチ連装両用砲4基(前後に2基づつ)、ポムポム砲3基などの搭載火器に関する記述が続きます。

ja.wikipedia.org

スペックで比較すると「ダイドー級」「ベローナ級」(本文では「ブラック・プリンス級」と表記されています)のいずれよりも少し小さく、乱暴にまとめると主要武装は「ベローナ級」と同等、速力はやや早い、そんな感じです。

当初は今回入手した「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」をベースに主砲を換装すればいいかと考えていたのですが(オリジナルの「ダイドー級」は、艦首部に主砲塔が三段背負式で装備されていて、艦橋部がやや高すぎる、と思うのです)、先述のように砲塔前の波返板などの造作が想像以上に大きく、細部も思いの外4.5インチ対空砲に合わせた仕様に変更になっているので、さて、どうしたものか、と・・・。

違和感や作業の大変さを考えると、いっそ、記述されているスペックを全部無視して新しいストーリーに基づいて全くの架空艦(どうせ元々架空艦なんだし)を作ってもいいかな、と思い始めているところです。

そうすると、「ダイドー級」がそもそも「アリシューザ級」軽巡洋艦をベースに設計された、という背景に乗っかって、「アリシューザ級」の防空艦改造版、というのでも良いかな、という妄想がむくむくと頭をもたげてきます。

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(直上の写真は、「アリシューザ級」軽巡洋艦の概観:123mm in 1:1250 by Neptune)

ダイドー級」と「ベローナ級」の間で建造されながら、どちらよりも少し小さい、というのも設定としてそもそも違和感がありますし、建造の経済性を考慮するあまり「ちょっとスペックダウンしすぎたかな」と思われ始めた「アリシューザ級」の建造途中の5番艦が船団護衛の中核艦として防空巡洋艦として完成させられた、というのもなかなか良いストーリーではないかと。(もう全然、小説とは関係なくなるかも、ですが)

ということで、「ユリシーズ」の制作は現在入手途上にある「アリシューザ級」のモデル(2隻目)が到着してから、じっくり改造手順なども併せて考えることにします。「ユリシーズ」の名前をつけずに、作ってしまいそうです。

 

違和感といえば・・・

実は以前から「女王陛下のユリシーズ号」という邦題には違和感を抱いていました。原題は「H.M.S. Ulysees」で、第二次世界大戦当時の英国は国王ジョージ6世の治下にあり、H.M.S.は当然 His Majesty's Ship=「国王陛下の船」であるべきだと思ってきたのです。艦船ファンとしては原題のまま「H M.S. ユリシーズ号」でも良いのに、と思いながら。

ダグラス・リーマンの本は「国王陛下のUボート」になっているのに。(こちらは原題は"Go In and Sink!" で全く似ても似つきませんが)

まあ、今となっては名作としてもう定着してしまっているから、改題とかはしないほうがいいのかもしれませんが。

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と言うことで今回はここまで。

 

 次回は・・・。やっぱりこんな感じで、とりとめなく、になりそうな。

日本海軍の航空母艦小史」やるやると言いながら、なかなか重い腰が上がりませんが、モデルは全部、揃いましたので、必ずやりますから、気長にお待ちください。(「アラブ級」仏海軍駆逐艦、なんて、また別の箱が開いた感もありますが・・・)でも「脇道探索」はやっぱり楽しいなあ。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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ロイアル・ネイヴィーの駆逐艦(その1:第一次世界大戦期の駆逐艦):ああ、「箱」を開けてしまった、かも。

ああ、「●●●●の箱」を開けてしまったかも。

ちょっと長い言い訳と説明を。

 

筆者の大好物「系統の遡上」と英海軍(ロイアル・ネイヴィー)について

本稿の読者ならば、何度か目にしていただいていると思いますが、筆者は本稿を書くほどのことなので、軍艦の系統を見つけると後に先にと辿らずには置かれないという習性を持っています。(コレクターとはそういう傾向を人並外れて強く持つ類稀なる人種なのだ、と、筆者の行いに首を傾げる周囲には、そのように説明しています。もちろん、全く納得も共感も得ている実感はありませんが)

一方、ご承知のように英海軍は近代海軍の本家で、第一次世界大戦終結まで「2国標準主義=常に2カ国の海軍に対応できる戦力を整備する方針」を掲げ、従って大量の軍艦を整備して来ていました。当然そこには綿々と続く長い「系統」がある訳で、特に筆者の場合にはインテリジェンスの側面のみならずモデルのコレクションと言うフィジカルな側面からも「迷い込もうものなら抜け出せなくなるぞ」、とできるだけ近づかないようにしてきたのですが、「英国巡洋艦」の辺りから、次第に自分で立てていたフェンスに綻びが生じ始め、気がつくとついに前々回の「V/W級駆逐艦のヴァリエーションと「タウン級(初代)」軽巡洋艦の新着モデル」と言う稿に手をつけてしまっていた訳です。

fw688i.hatenablog.com

軽巡洋艦」の系統の遡上もまだ筆者の中では決着がついていないにも関わらず、別系統の「スウェーデン海軍」「ノルウェー海軍」などの系統の遡上と並行して、今回は何と「英海軍の駆逐艦」と言うおそらく最も深い迷宮の入り口へと足を踏み込むと言う暴挙に出るわけです。

 

この「暴挙」に臨み、少しこれまでとは、やり方を変えてみようかと。

これまで、ある系統をテーマとする場合には、筆者は「モデル」の整備も並行してある程度目処を立てながら、できるだけ数回に集中して、と言うミニシリーズ的な展開を心がけてきたのです。これは、「モデルコレクション」と言うフィジカルにお金と時間を使う作業が伴うため、英海軍という迷宮に挑むにあたり、これまでのように準備段階での完成度を気にせず、手元状況優先でまとめてゆこうかと考えています。ぶつぶつ理屈を並べているので「何を言いたいか、わからんよ」と言うことだと思いますが、要は「モデルの抜けとか、艦級の飛ばしとか、あまり気にせず、手元のモデル優先でいかせてもらいます」と言うことです。まあ、気楽に行きます。足りないものはもし手元に入手できたら、その都度、アップデートしてゆきます、と言うことです。

これはある意味、自分への宣言とでもいうべきでしょうかね。

 

第一次世界大戦期の英海軍駆逐艦

と、長々と言い訳めいた文章を書いて少し気楽になったところで、前々回の「V/W級」駆逐艦の流れで第一次世界大戦期の「駆逐艦」の艦級のご紹介を。

今回ご紹介するのは「M級」「R級」「S級」と前々回でご紹介した「V/W級」の艦級です。

実は英海軍は、第一次世界大戦の開戦に伴い、これらの他にも他国海軍向けに建造していたいくつかの艦級を半ば強制的に購入し自国海軍に組み入れています。そちらは、また追々と(つまりこれが冒頭にくどくどと書いた言い訳の「実行」です)。

 

第一次世界大戦が勃発すると、英海軍は駆逐艦の大量建造に入ります。折からライバルのドイツ帝国海軍は両海軍の主戦場である北海での活動を想定し、大型で高性能の駆逐艦水雷艇を建造しつつあり、従来の英海軍が大量に揃えてきた近海行動用の警備艦艇としての駆逐艦はもとより、北海での行動を想定し設計されてきた航洋型駆逐艦の艦級では、必ずしも見劣りはせずとも、圧倒できる状況ではなくなることが想定されました。そこで、特にこれらに対抗する目的から、それまでの航洋型駆逐艦よりも、より高速の駆逐艦群が生み出されることになります。

 

高速駆逐艦の第一陣

M級駆逐艦(初代)(同型艦:準同型艦103隻)

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(「アドミラルティM級」の概観:66mm in 1:1250 by Navis)

「M級」駆逐艦(初代)は、第一次世界大戦の勃発直前に建造が開始された駆逐艦の艦級で、上記の北海を巡る英独の駆逐艦の性能向上競争で御優位を目指し、特に速力の向上に重点が置かれた設計でした。その結果、それまでの英海軍の駆逐艦の速力が27ノットから31ノットの速力であったのに対し、34ノットの速力を有する高速艦が生まれました。

同級は以下のサブ・クラスを含んでいます。

アドミラリティM級:85隻

ホーソンM級:2隻

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 ヤーロウM級:10隻

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 ソーニクロフトM級:6隻

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(上記の3つのサブ・クラスについては、モデル調達中です。探せばあるんですよねえ) 

 

建造時期によって、あるいはサブ・クラスによって少し異なるのですが、概ね900トンから1000トン級の船体に、4インチ単装砲3基、53.3センチ連装魚雷発射管2基を搭載しています。また同級は初めて設計段階から高角機関砲を装備に組み入れた艦級で、当初は37mmポムポム砲、後には40mmポムポム砲を搭載していました。f:id:fw688i:20210530131437j:image

(直上の写真は「アドミラルティM級」の武装配置:連装魚雷発射管の間に対空機関砲座が設定されています)

問題の速力は「アドミラルティM級」で34ノット、「ホーソン M級」「ヤーロウM級」「ソーニクロフトM級」が標準的に35ノットでした。

各サブ・クラスの外観的な特徴としては、

ホーソンM級」は高速を発揮するために缶数を1基多く搭載したため唯一4本煙突となりました。ちなみに英海軍が建造した最後の4本煙突駆逐艦となりました。

「ヤーロウM級」は軽量化と縦横比の増大(船幅に対し船長を長く取る)により高速化を狙い、二本煙突のスマートな艦型をしていました。39ノットの高速を記録した艦も建造されています。

「ソーニクロフトM級」はやや高い乾舷を有していました。37ノットの高速を記録した艦もあったようです。

 

サブ・クラスも含め12隻が戦没、もしくは戦争中に事故で失われましたが、残りのほとんどが第一次世界大戦終結後、1920年代に売却されています。

(ちなみに、第二次世界大戦日本海軍が投入した艦隊駆逐艦(一等駆逐艦)の総数が、開戦後に完成したものなど全て合わせても、手元の粗々の計算で167隻ですので、英海軍がいかに大量の駆逐艦を整備しようとしたか・・・)

 

サブ・クラスの名前の見方

以後、暫く同様のサブ・クラス(準同型艦)は多出しますので、ここで少しこの艦級名の見方を整理しておきましょう。

「アドミラリティ」型はその名の通り「海軍本部=The Admirality」の設計を採用したサブ・クラスの艦級名で、この艦級の設計の基本形となると考えていただいていいと思います。建造される隻数も、準同型艦内では最も多くなっています。

それ以外のサブ・クラスは「海軍本部=アドミラルティ」型の設計をベースとして、民間造船所に設計委託された「特別発注型」であることを意味しています。

ホーソン M級=ホーソンレスリー社の設計案採用型、ヤーロウM級=ヤーロウ社の設計案採用型、ソーニクロフトM級=ソーニクロフト社の設計案採用型 をそれぞれ意味している、と読んでいただければ。

 

オール・ギアードタービンの採用

R級駆逐艦(初代)(同型艦:準同型艦62隻)

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(「アドミラルティR級」の概観:68mm in 1:1250 by Navis: 延長された船首楼が特徴ですね)

 

R級駆逐艦はオール・ギアードタービンの搭載の2軸艦で、以降の駆逐艦の機関・推進機の原型となった艦級です。

1000トン級の船体に、前級と同様4インチ単装砲3基、40mm対空機関砲(ポムポム砲)1基、53.3cm連装魚雷発射管2基を搭載していました。速力は36ノットを発揮することができました。

このため「アドミラルティR級」の外観は、「アドミラルティM級」に酷似していました。

以下のサブ・クラスを含んでいます。

アドミラルティR級:39隻
アドミラルティR級:11隻

ソーニクロフトR級:5隻
ヤーロウ後期M級:7隻(同サブ・クラスはオール・ギアードタービンではなく、従来の直結タービンを搭載していたため、M級の名称を冠していました)

 

それぞれのサブ・クラスの特徴を以下にまとめておきます。

「ソーニクロフトR級」は排水量をやや小さくした設計で、前期型で37ノット、後期型で40ノットを超える速力を記録しました。
「ヤーロー後期M級」はオール・ギアードタービンではなく、従来の直結タービンを搭載していたため、M級の名称を冠していました。従来型の機関ながらヤーロウ社の設計の特徴である縦横比の大きな船体(つまり細長い)を持ち「R級」と同様の速力を有していました。外観は「ヤーロウM級」同様、、2本煙突でした。

アドミラルティR級」は荒天時での航行性の確保に向けて、船首楼を長くした船体設計となり、併せて2本煙突となりました。

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(「アドミラルティR級」の武装配置:基本的な配置は「M級」と変わりませんが、特に「改R級」に場合は、2本煙突と、凌波性を考慮した長い船首楼が特徴ですね) 

 

9隻が戦没、もしくは事故で失われ、残りのほとんどは1920年台後半に売却されていますが、「アドミラルティR級」の「スケイト」のみ、第二次世界大戦に参加しています。

 

2本煙突駆逐艦時代の到来

S級駆逐艦(初代)(同型艦:準同型艦67隻) 

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(「アドミラルティS級」の概観:67mm in 1:1250 by Navis)

 「S級」駆逐艦は艦数の急速な整備という要求に応えるために、「アドミラルティR級」(2本煙突)をベースに量産された艦級です。艦首形状をシアとフレアを強めたものとして乾舷をより高くし凌波性を高めています。1000トン級の船体を有し、兵装は基本従来艦級のものを継承していましたが、従来の標準装備である53.3cm連装魚雷発射管2基に加え、45cm単装魚雷発射管を艦橋両側に装備していました。

 

以下のサブ・クラスが含まれています。

アドミラルティS級:55隻
ヤーロウS級:7隻
ソーニクロフトS級:5隻

サブ・クラスのそれぞれの特徴を少し。

「ヤーロウS級」はヤーロウ社の設計の特徴である縦横比の大きな船体を持ち、機関は直結タービンを搭載していました。
「ソーニクロフトS級」の最大の外観的な特徴は1番主砲を台座の上に装備したことと、艦橋を後ろにずらせたことでしょう。

 

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(「アドミラルティS級」の武装配置:基本的な配置は「改R級」と変わりませんが、特に「S級」に場合は、艦橋脇に45cm単装魚雷発射管を両舷に1基づつ設置したことです。艦尾の探照灯台が2番連装発射管上に装備されているのは、実際にはどうなっていたんでしょうか?図面で見てもそうなので、発射管の回転軸上に探照灯台があったのかな?) 

第一次世界大戦終結までに20隻が就役し、47隻が大戦後に就役しました。大半が1930年代に売却されていますが、11隻が第二次世界大戦時に参加、7隻が生き残りました。

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アドミラルティR級アドミラルティS級の比較)

 

 

 (ここからはちょっと手抜きです。本稿、前々回から、ほとんど一緒)

最後の第一次世界大戦駆逐艦

V/W級駆逐艦(初代)(同型艦:準同型艦67隻)

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 (「V/W級」駆逐艦の概観:写真は「アドミラルティV級」だと思われます:75mm in 1:1250 by Navis)

「V/W級」駆逐艦は、英海軍が第一次世界大戦中に建造した駆逐艦の艦級で、艦名がWまたはVで始まっているところから「V/W級」と総称されています。

同級はドイツ帝国海軍が建造中の大型駆逐艦・大型水雷艇への対抗上から、大型・重武装駆逐艦として設計されました。従来の英駆逐艦の基本装備であった40口径4インチ(10.2cm)砲3門を強化し45口径4インチ(10.2cm)4門とし、さらに連装魚雷発射管2基の標準装備を3連装発射管2基搭載へと、魚雷射線の強化も行われました。(実際には3連装発射管の製造が間に合わず、当初は連装発射管を搭載し就役し、後に三連装に換装されています)

「V/W級」と総称されますが実は大別して下記の5つのサブ・クラス(おお大好きなサブ・クラス!)に分類されます。

アドミラルティV級(28隻:大戦に間に合ったのは25隻)

アドミラルティW級(19隻)

ソーニクロフトV/W級(4隻)

ソーニクロフト改W級(2隻)

アドミラルティ改W級(14隻)

さらに「改W級」では搭載主砲を45口径4インチ(10.2cm)から45口径12センチに強化しています。

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(直上の写真は「V級」の主要武装等の拡大:艦首部・艦尾部に背負い式に主砲(45口径4インチ単装砲)を配置し、3連装魚雷発射管を2基、艦の中央部に搭載しています。艦のほぼ中央部に3インチ対空砲を搭載しています(写真中段))

武装の強化に伴い艦型は大型化(1100トン級)しましたが、機関の見直しは行われなかったため、速力は前級の36ノットから34ノットに低下しています。しかしソーニクロフト社製の「改W級」では機関の強化も併せて行われ36ノットの速力を発揮しています。

就役は1918年からで、この年の11月に第一次世界大戦終結したことから、奇しくも第一次世界大戦型の駆逐艦の最終形となりました。

 

大戦終結後、英海軍は疲弊した国力と、大戦期中に膨大に膨れ上がった大量の艦船の整理に追われるわけですが、最も艦齢の若い同級は多くが残置され、第二次世界大戦でも活用されました。

 

機雷敷設駆逐艦への改造

V級」の一部の艦は、魚雷発射管の連装から3連装への換装を行う代わりに、連装発射管1基を撤去し、さらに主砲1基も撤去、艦尾形状を整形すると共に機雷敷設軌条を設置して、60基程度の機雷敷設能力を持つ敷設駆逐艦に改造されています。

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 (「V級駆逐艦のヴァリエーション機雷敷設駆逐艦の概観 by Navis:下の写真は、「機雷敷設駆逐艦」に改装された艦の細部の拡大:艦首部の主砲配置は変わらず、魚雷発射管は連装のまま1基のみ搭載、艦尾部は主砲1基を撤去して艦尾形状を機雷敷設軌条等の張り出しを追加しています )

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第二次世界大戦時:護衛駆逐艦」への改造

第一次世界大戦駆逐艦としては最も艦齢が若かった「V/W級」は、一部(4隻?)がオーストラリア海軍に供与された他、本稿でも「巡洋艦」の回に見て来たように航空機や潜水艦の脅威の増大を見越して、通商路保護の役割を担う「護衛駆逐艦」への改装に充当されます。

 

WAIR改修艦(14隻・15隻?)

本稿前回・前々回で見たように、航空機の脅威に備えて英海軍は「C級」巡洋艦の数隻を防空艦へと改装しました。WAIR改修は、それと同趣旨で「V/W級」駆逐艦に長射程の対空砲を搭載し、併せて対潜兵装も強化して船団護衛の要として活用しようとする狙いでした。

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 (「V/W級」WAIR改修型駆逐艦の概観 by Argonaut:下の写真は、WAIR改修型の主要武装の拡大:艦首・艦尾に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を各1基搭載。魚雷発射管は全て撤去され、対空火器が強化されています。艦尾部には爆雷投射機と投射軌条が搭載され、対潜能力が強化されています)

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改修対象となった艦は全ての主砲・魚雷発射管を撤去し、代わりに4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)2基を搭載、他にも対空機関砲を増設した上で、対潜装備として爆雷投射機、投射軌条を搭載する他、後にはレーダーやソナーなどを装備しています。en.wikipedia.org

主要兵装となった4インチ連装対空砲は、「C級」巡洋艦を改装した防空巡洋艦などにも搭載されていた対空砲で、80度の仰角で11800m、45度の仰角で18000mの範囲をカバすることができました。

***さて、ちょっとこぼれ話。名称の「WAIR」が何に基づくものか、今でははっきりしないようです。「W級」の「対空化(ant-AIRcraft)」ではないか、という説も。

 

 長距離護衛駆逐艦への改装(21隻)

「V/W級」に限らず、「艦隊駆逐艦」は高速をその特徴の一つとするため、実はあまり長い航続距離を持たせる設計にはなっていません。しかし、通商路の保護には経済性を持つ商船で構成される低速の船団の航行に合わせた長い航続距離が必要で、「V/W級」の一部はこれに適応するような改装を受けています。

具体的には機関の一部を撤去し、そのスペースに燃料タンクと居住区画を増設し長い航続距離の獲得と、乗員の居住性を向上させました。当然、速力は落ちましたが、対潜警戒用のソナーの運用等を考慮するとかえって20ノット以上では支障が生じるなどの要件もあり、この目的では25ノット程度の速力があれば十分だったということです。

兵装は主砲を2基減らせて、ヘッジホッグや爆雷投射機・投射軌条を搭載し対潜兵装を充実させ、さらに対空砲・対空機銃等を強化しています。

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(「V/W級」改造長距離護衛駆逐艦の概観 by メーカーは不明:下の写真は、長距離護衛駆逐艦型の主要武装の拡大:艦首1番主砲が撤去されヘッジホッグに換装されています(上段写真)。主砲は45口径4.7インチ(12cm)単装砲を、艦首・艦尾に1基づつ搭載しています。機関搭載数を減らしたため煙突が一本に。魚雷発射管は全て撤去され、4インチ単装高角砲が搭載されています(中段写真)。艦尾部には爆雷投射機と投射軌条が搭載され、対潜能力が強化されています)

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ちょっと余談

以前ご紹介したことのあるニコラス・モンサラットの小説「非常の海:The Cruel Sea」にも、「V/W級」が出て来ます。

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(「非常の海」ちょっと古い本です。古書は今のところそれほど高価ではなく手に入るのですが、本の状態もちょっと不安なので文庫を出してほしいなあ。特に最近、WFHで出勤時にはPC を持ち歩きます。手荷物が重いので、是非、文庫が欲しい! (「光人」文庫あたりにあってもいいかと、お願いしてみてはいるのですが・・・)でも、いい本ですよ。船団護衛とか興味のある方にとっては、ね)

 

この小説、主人公が乗艦しているのは「フラワー級コルベット「コンパス・ローズ」なのですが、「コンパス・ローズ」が属している船団護衛部隊の指揮艦が「旧式のV/W級駆逐艦:ヴァイパラス:Viperous」と表記されています。

「ヴァイパラス」は架空の船ですので、流石に「V/W級」駆逐艦のどのタイプかまでは記述がないのですが、船団護衛部隊はこんな感じかと。

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(左から「V級長距離護衛駆逐艦」、「フラワー級コルベット」(前期型)、「フラワー級コルベット」(改良型)、「対潜型トローラー」の順。船団の規模にもよるでしょうが、ちょっと、重装備すぎるかな。下の編成の方が現実的かもしれません)

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このほかにも、アリステア・マクリーンの「女王陛下のユリシーズ号」にも「V/W級」は登場するようです(ちょっと記憶がないです。「V/W級」が登場するかどうか、というよりも物語そのものの記憶が・・・。読み返してみよう。この小説は、そもそも「ダイドー級」と「ベローナ級」の中間の架空の艦級の防空巡洋艦が舞台でしたよね。大好きな「架空艦」である訳です。作ってみたくなるかも。さらに「シアリーズ級」軽巡洋艦も出てきた記憶があります。読んだ当時には「シアリーズ級」についての認識は旧式の巡洋艦、という程度だったので、今読み返すと、もっと興味深いんだろうなあ、と期待が膨らみます。ああ、話がうんと「V/W級」から外れてしまった)

さらに未邦訳のダグラス・リーマンの「The Destroyer」という小説では「V/W級」で構成される駆逐艦部隊(8隻全部?)が主役(物語の舞台?)のようなのですが、もちろんこれは読んだことがありません。

 

これぞコレクションの醍醐味というカット

(下の写真は「V/W級」駆逐艦のヴァリエーションの贅揃い。手前から第一次世界大戦期の「V級駆逐艦のオリジナル。第一次世界大戦期の「V級」機雷敷設駆逐艦への改造。第二次政界大戦期のWAIR改修護衛駆逐艦への改装。第二次世界大戦期の長距離護衛駆逐艦の順)

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第一次世界大戦期の英海軍駆逐艦総覧

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(今回ご紹介した4艦級:手前からアドミラルティM級、アドミラルティR級アドミラルティS級、V/W級の順) 

 

ということで、取り敢えず今回はここまで。

さてさて、えらいところに手をつけてしまった、という思いが強いのですが、結局はいつか手をつけたんだろうし、冒頭に書かせていただいたように、あまり連続でミニ・シリーズ化はせずに少しづつやっていこうと考えています。たまたま今回は前々回の「V/W級」の流れを遡って第一次世界大戦期の駆逐艦の紹介ということになりましたが、系統という視点で見れば、大変中途半端なところからの開始になってしまいました。

つまり、これより「前」があるし、もちろん「後」もある訳です。「モデルコレクション」的視点でいうと、とても揃っていると言えるような状況ではなく、例えば今回も上記でも少し触れましたが、英国海軍は、第一次世界大戦の勃発に伴い本来は「他国向け」に建造していた駆逐艦を全て半ば強制的に購入し艦隊に編入しているのですが、それについては一切紹介していません。また、水雷戦隊の旗艦として大型の嚮導駆逐艦の艦級を二つほど建造しているのですが、これについても触れていません。つまり穴だらけですので、気長にやらせてもらおうと思っています。

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(これらの艦級についても、鋭意モデル調達中です。「アンザック級」はあるのかな?今のところ見当たりません)

 

次回は、この続きをやるか、あるいはフランス海軍の巡洋艦、もしくは日本海軍の空母あたり(こちらは始めると少なくとも4回程度のミニシリーズになりそうです)で・・・。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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ノルウェー海軍:第二次世界大戦期の艦艇(抄録)

このところ、「脇道探索」にはまっています。

少しこの脇道探索をおさらいしておきますと、この「脇道」は「イルマリネン級」海防戦艦フィンランド)に始まり、スウェーデン海軍の海防戦艦の発展小史、さらに北欧諸国の海防戦艦の系譜という比較的太い幹と、さらにそこからスウェーデン海軍の第二次世界大戦期の巡洋艦という枝葉を生じ、現在はその先の駆逐艦他の小艦艇、というあたりを彷徨っています。

もちろんこれに1:1250スケールの模型の検索とその入手、というプロセスが絡んできますので、結構、多くの時間をかけることになっています。

 

前回・前々回と「本道(?)」に戻って「英海軍」の巡洋艦周りを少し整理し、そのまま「本道」を続け、長らく積み残し(先延ばし)てきた感の濃厚な「日本海軍の航空母艦小史」の展開を予告したりしたのですが、「脇道」への興味が尽きず、「スウェーデン海軍」を探るうちに、お隣の「ノルウェー海軍」に興味が波及し、今回は少し「脇道」のさらに「脇道」に入り込んでみようかな、と、今回はそういうお話です。

(もしかして「日本空母」を期待してくださった方がいらっしゃったら、「ごめんなさい。いずれは必ず」ということでご容赦ください)。

 

ノルウェー第二次世界大戦

ということで「脇道」の「脇道」もう「路地裏探索」(ノルウェー海軍さん、ごめんなさい。他意はありません。単に路地裏大好き、ということが言いたいだけです)とでもいうべきまさに「迷走」なのですが、まずは「ノルウェー」と第二次世界大戦の関わりを少し整理しておきたいと思います。

ノルウェー第一次世界大戦には参戦していません。

ご承知のようにノルウェーはヨーロッパの北端に位置し、スカンジナビア半島の西海岸沿いに広がる国家です。いわゆるヨーロッパ大陸の中心からは少し離れたところに位置し、幸いなことに第一次世界大戦では中立を貫き、戦火に巻き込まれませんでした。

しかし、第一次世界大戦で戦争そのもののあり方が、以前の「会戦」形式から「総力戦」に移行し、すなわち「補給路」「資源調達路」の重要度が増すにつれ、ノルウェーの北海・大西洋に向けて開かれた長い海岸線は戦略的な重要性を帯びてゆきます。かつ第一次世界大戦の敗戦で海上決戦戦力としての海軍を失ったに等しいドイツにとって、仮想敵であるイギリスに対する有効な戦略が通商路破壊による物資供給を断つことほぼ一点に絞られていくると、発達著しい航空機、浸透的な通商破壊を行うのに最適な潜水艦の基地としてのノルウェーの長い海岸線は放置できる状況ではなくなります。

こうして、第二次世界大戦初期の1940年4月、ドイツ軍はデンマークノルウェーへの侵攻を開始します(ウェーザー演習作戦)

デンマークは1日で降伏しましたが、ノルウェーは英仏連合軍の派兵を受け、6月までの2ヶ月間、戦闘を続けました。その後ノルウェー政府はイギリスに亡命しノルウェーはドイツの占領下に置かれました。

 

映画「ヒトラーに屈しなかった国王」

このドイツによるノルウェー侵攻をめぐる戦いを当時のノルウェー国王ホーコン7世を主人公に据えて描いた映画が「ヒトラーに屈しなかった国王」(原題:Kongens nei /英題:King's choice)です。映画の中でも確か一部触れられていた記憶があるのですが、この国王は元々がデンマーク王室の生まれで、自身「選ばれて迎入れられた国王」であるという意識が強く、映画でもそのように描かれていた、と記憶します。もしかすると、そういう背景を知って見ていると、そのように解釈できた、ということかも。この辺り定かではありません。が、大変、いい映画ですので、特にこの辺りの歴史に興味がある方にお勧めです。

www.youtube.com

(それにしてもどうしてこう言う邦題になるんでしょうかね。縁遠い話材の映画だから分かり易い邦題をつけた、と言うことでしょうか?原題の直訳「国王の拒絶」でいいような気がしますが)

ja.wikipedia.org

 

ノルウェー海軍の戦い

ドイツ軍のノルウェー侵攻時のノルウェー海軍の装備艦艇の一覧が下図の上段です。ざっくり言うと、大型艦としては旧式の海防戦艦4隻、他に海上戦闘用の艦艇としては新旧取り混ぜて駆逐艦9隻、旧式の水雷艇30隻足らず、他に潜水艦9隻、数隻の機雷戦用艦艇と言うこじんまりとした海軍でした。

Poster of the Norwegian Royal Navy

Royal Norwegian Navy in WW2

(この資料は上記のウェブサイトからお借りしています。ちなみに上図下段は、英国に亡命した政府が組織した「自由ノルウェー海軍」の艦艇です。主として英国からの供与艦艇で構成されています。今回はあまり触れません)

 

 

海防戦艦:Coastal Deffence Ship

ノルウェー海軍は以下の2艦級の海防戦艦第二次世界大戦時には運用していました。f:id:fw688i:20210523130845j:image

(ノルウェー海軍の海防戦艦2艦級:「ハラール・ホールファグレ級」(手前)と「ノルゲ級」(奥))

しかし「ハラール・ホールファグレ級」の2隻は既に旧式で主砲も陸揚げして沿岸砲として活用されるなど、ほとんど浮施設(ハルク)的な利用に限られていました。

 

ハラール・ホールファグレ級海防戦艦」(同型艦2隻) 

ja.wikipedia.or

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(「ハラール・ホールファグレ級」海防戦艦の概観:74mm in 1:1250 by C.O.B. Constructs and Miniature: 3D printing modelです)  

 

本級はノルウェー海軍が建造した最初の海防戦艦の艦級です。就役は同型艦2隻とも1898年で、同世代のスウェーデン海軍の海防戦艦にほぼ準じて、3500トン弱の船体に主砲として21センチ単装砲を2基、艦首と艦尾に、副砲として12センチ単装砲を6基、こちらは各舷上甲板に3基づつ搭載しています。速力は17ノットを発揮することができました。

 

両艦とも1940年のドイツ軍侵攻時には既に旧式であったため主砲は沿岸砲として陸揚げされ(1930年ごろ)、海防戦艦としては機能していませんでした。

 

防空艦「テーティス級」への改装

しかしドイツ軍に接収後、2隻ともに自力航行のできる防空砲台(防空艦)に改造され、「テーティス」「ニンフェ」と改名されました。防空艦としては10.5センチ単装対空砲6基、40ミリ対空機関砲2基、20ミリ対空機関砲14基を搭載していました。ここでご紹介するのは、そう言う理由からです。

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(ドイツ海軍接収後、防空艦に改装されました。「テーティス」の概観(上)と兵装配置の拡大(下):ハリネズミのように(と陳腐な表現ですが)配置された対空火器:by Argonaut)

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1945年、ドイツ降伏後は両艦ともノルウェーに返還され艦名も旧名に戻されましたが、まもなく解体されています。

 

「ノルゲ級海防戦艦」(同型艦2隻) 

ja.wikipedia.org

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(「ノルゲ級」海防戦艦の概観:75mm in 1:1250 by C.O.B. Constructs and Miniature: 3D printing modelです)  

 

本級はノルウェー海軍が就役させた2番目の海防戦艦の艦級で、4000トン級と前級よりも少し艦型を大きくし、主砲は前級同様の21センチ単装砲塔2基でしたが、副砲の口径を15センチに強化して6基を搭載していました。速力は前級とほぼ同等でした。

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( 4000トン級の船体に21cm単装砲2基と15cm単装砲6基を搭載するノルウェー海軍の保有する最大最強の海防戦艦です)

1940年のドイツ軍の侵攻時にはノルウェー海軍最大の艦船で、2隻ともナルヴィクフィヨルドに配置されていました。

両艦は上陸部隊を輸送してきたドイツ駆逐艦部隊と戦闘を交えますが、最初の交戦で駆逐艦の発射した魚雷により撃沈されました。この戦いを皮切りとしてナルヴィク・フィヨルドでは、その後、英海軍とドイツ海軍の間で数次にわたる海戦が行われ、ドイツ駆逐艦の墓場となるのですが、本稿下記の回で少し触れています。

fw688i.hatenablog.com

 

 機雷敷設艦「Froya」(同型艦なし)

en.wikipedia.org

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機雷敷設艦「Froya」の概観: 62mm in 1:1250 by Argonaut)  

 本艦はノルウェー海軍が第一次世界大戦中に建造した機雷敷設艦です。機雷敷設艦として設計された艦としては、ノルウェー海軍で最初のものでした。

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(機雷敷設艦「Froya」の兵装配置の拡大:魚雷発射管まで搭載しています(下段)。速力を除けば、ほぼ駆逐艦と同等の戦力を有しています)

 600トンの小ぶりな船体を持ち、4インチ単装砲4基、魚雷発射管2基を備え、180発の機雷を敷設する能力がありました。就役時、当時の機雷敷設艦としては高速の22ノットを発揮することができました。のちに3インチ対空砲が追加装備されています。

 

ドイツ軍の侵攻時にはトロンハイムに停泊中で、砲撃や爆撃にさらされました。結局、脱出の見込みが失われ、ドイツ軍への接収を避けるために自沈してしまいました。

 

自沈跡は今でもダイビングスポットになっている、とか。

 

駆逐艦:Destoryer/Torpedo boat 

ノルウェー海軍は第二次世界大戦には以下にご紹介する2艦級9隻の駆逐艦保有していました。

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(ノルウェー海軍の駆逐艦2艦級:「ドラグ級」(手前)と「スレイプニル級」(奥))

 

「ドラグ級」駆逐艦同型艦:3隻)

ja.wikipedia.or

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(「ドラグ級駆逐艦の概観: 57mm in 1:1250 by Argonaut)  

本級はノルウェー海軍が第一次世界大戦前に自国の沿岸警備目的で建造した駆逐艦です。550トンの小さな船体に3インチ単装砲6基、単装魚雷発射管3基とやや同時代の列強の駆逐艦と比較すると重装備艦と言っていいかと思います。おそらく航洋性や航続距離には目を瞑り、自国沿岸での敵性排除の戦闘力に重点を置いた設計だったのではないかと。27ノットの速力を出すことができました(これは当時:1909年頃の標準的な速度)。

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(「ドラグ級」の兵装配置の拡大:小さな船体に不似合いなほど隙間なく兵器が配置されています。フィヨルドの多いノルウェーの海岸線警備に重点をおけば、航洋性の犠牲にしてでもこうした過多な兵装もある意味納得できるかも)

 

ドイツ軍の侵攻時には、もちろんもう十分に旧式でしたが、周辺情勢の悪化から1939年に再就役し、戦闘に参加しています。1隻が失われ、2隻がドイツ軍に接収されましたが、ほとんど戦力としては活用されなかったようです。1隻は1944年に除籍され解体。もう1隻はドイツ降伏後に返還されましたが、1949年に解体されました。

 

スレイプニル級」駆逐艦同型艦:6隻)

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(「スレイプニル駆逐艦の概観: 60mm in 1:1250 by Argonaut)  

本級は第二次世界大戦直前にノルウェー海軍が建造した駆逐艦の艦級です。後期型3隻がやや大きな船体を持ったことから「オーディン級」として扱うこともあるようです。f:id:fw688i:20210523125207j:image

(「スレイプニル級」の兵装配置の拡大:「ドラグ級」の血筋? 小さな船体にも関わらず、航洋性の犠牲にしてでもこうした過多な兵装は、継承されてるようです)

 600トン級の小さな船体を持ち、これに4インチ単装砲3基、40ミリ対空機関砲1基、連装魚雷発射管1基を装備、さらに爆雷投射基を4基装備すると言う、やはり前級同様、沿岸警備に特化した重装備艦と言ってもいいかもしれません。速力は30ノットを発揮することができました。

 

1940年のドイツ軍の侵攻時には、2隻はまだ艤装中で、1隻(「エーゲル」)がドイツ空軍の爆撃で失われています。戦闘の終結後は、1隻(「スレイプニル」)はイギリスに脱出し自由ノルウェー海軍の一員として活躍しましたが、残る4隻は艤装中のものも含めてドイツ海軍に接収され、ドイツ海軍の水雷艇として活動しました。

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(「スレイプニル駆逐艦は、ドイツ海軍の接収後、水雷艇として運用されました。「レーヴェ」「パンター」「ティーガ^」「レオパルド」などネコ科の大型捕食獣の名前がつけられました。2番主砲が対空砲に換装されています(下段)by Argonaut) 

1945年のドイツ降伏後は全て返還され、ノルウェー海軍で再就役し、1953年にはフリゲート艦に艦種移籍しています。1959年に全て退役しました。

 

**ノルウェー基軍は第二次世界大戦期に、多数の第一次世界大戦当時、あるいはそれ以前の旧式な水雷艇を沿岸警備目的で運用していました。

 

 潜水艦:Submarine

ノルウェー海軍は第二次世界大戦開戦時には2クラス9隻の潜水艦を保有していました。 「A2級」潜水艦(同型艦:3隻)

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(「A2級」潜水艦の概観: 37mm in 1:1250 by Oceanic )  

 本級は第一次世界大戦直前にノルウェー海軍がドイツから購入した潜水艦です。300トン弱の小さな潜水艦で、主兵装として魚雷発射管3基を搭載していました。

3隻ともにドイツ軍のノルウェー侵攻作戦で失われました。(「A2」:戦闘で喪失、「A3」「A4」:自沈)

 

「B級」潜水艦(同型艦:6隻)

en.wikipedia.org

本級は1920年代に米海軍の「L級」潜水艦をノルウェーライセンス生産した潜水艦です。

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(モデル未入手)

「L級」潜水艦は、第一次世界大戦期に米海軍が建造した初の450トンクラスの航洋型潜水艦で、18インチ魚雷発射管4基を主兵装としていました。性能的には凡庸でしたが、偵察巡行では良好な成績を示していたようです。

ドイツ軍のノルウェー侵攻時には「B1」は英国に脱出しましたが、「B3」は自沈。残りの4隻はドイツ海軍に接収されました。

 

デンマークの話

ところで、前述の通り、第二次世界大戦期のノルウェー国王ホーコン7世は、デンマーク王室の出身で、当時のデンマーク 国王クリスチャン10世は実の兄にあたる方でした。

ドイツ軍のノルウェー侵攻に先立ち、デンマークはドイツ軍の侵攻を受け、1日で降伏しました。この1日を描いた映画が「エイプリル・ソルジャーズ」です。(原題:April 9th)

www.youtube.com

この映画、デンマーク軍の装備が実にいい感じで再現されています。画像

まず、主人公の率いるのは自転車歩兵分隊。ヘルメットや外套、マドセン軽機関銃などの装備品が、なんとも言えません。そして極め付けは⬇️

Nimbus MC with 20 mm MG (Front view, right side)

ニンバス・サイドカー部隊。マドセン20mm機関砲(対戦車銃?対空機関砲?)を搭載したサイドカーでドイツ軍の装甲車・軽戦車に挑むのですが。

「おや」と思った方、必見です。

en.wikipedia.org

 

と言うことで、最後は少し話がブレちゃいましたが、今回はここまで。

と思ったのですが、せっかくなので、デンマーク海軍の海防戦艦をご紹介。ただし、この艦級、第二次世界大戦期には2隻が既に解体されていて、3番艦の「ペダー・スクラム」のみ、残存していました。

デンマーク海軍海防戦艦「ペダー・スクラム

ja.wikipedia.org

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(「ヘルルフ・トロル級海防戦艦の概観: 70mm in 1:1250 by C.O.B. Constructs and Miniature: 3D printing modelです。モデルは就役時の姿を再現しています。1939年に近代化改装を受け、対空兵装を強化、併せて前檣が近代化に合わせて大型化されていたようです)  

 本艦は「ヘルルフ・トロル級」海防戦艦の3番艦で、他の2隻が除籍された後も、唯一就役していました。1939年に対空兵装の強化と前檣の大型化などの近代化改装を受けました、

「ヘルルフ・トロル級」海防戦艦は3500トン級の船体に24センチ単装砲2基と15センチ単装砲4基を搭載し、15.6ノットの速力を有していました。非常に低い乾舷を持ち、デンマーク沿岸での運用に重点が置かれていました。

 

1940年のデンマークの降伏後、1943年にドイツ軍による接収をきらい自沈しています。本艦は最終的にはドイツ海軍により引き揚げられ、練習艦アドラー」となりました。後に防空艦への改装の計画があったようですが、実現はしなかったようです。

1945年4月に連合軍の空襲で撃沈されましたが、背の浮揚されデンマークに返還されました。しかし再び就役することはなく、スクラップにされました。

(下のURLで詳しいお話が。「IF]艦などについての、大変面白いサイトです。他のお話も退園楽しめますよ)

web.archive.org

 

と言うことで今度は本当にここまで。

 

 次回は・・・。やっぱり「脇道探索」は楽しいなあ。いくつかモデルを調達中です。最近、やはりご多分にもれず海外からの荷物の到着に時間がかかっているようです。

「本道」の方でいくと前回予告した「日本海軍の航空母艦小史」(多分、4回シリーズ?)と巡洋艦分野で唯一積み残してきた「フランス海軍の第二次世界大戦期の巡洋艦」(1回でいけるかな?)がありますね。まあその辺りで。(「空母小史」はスタートに結構覚悟がいるので・・・)

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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ロイアル・ネイヴィー:V/W級駆逐艦のヴァリエーションと「タウン級(初代)」軽巡洋艦の新着モデル

英海軍の「2国標準主義」と旧式艦船の改装=ヴァリエーションの話

本稿では、前回・前々回とイギリス海軍巡洋艦史に触れるうちに、「第一次世界大戦巡洋艦第二次世界大戦での再利用」のような話材に触れる機会がありました。

具体的には、第一次世界大戦に参加した巡洋艦おうちでは艦齢の比較的若い「C級軽巡洋艦」のサブ・クラスのうち、さらに後期の「カレドン級」「シアリーズ級」「カーライル級」、それに続く「D級」「E級」などが防空巡洋艦に改装され、あるいは対空兵装を強化するなどして、主として通商路の護衛艦艇として活躍したわけです。

fw688i.hatenablog.com

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近代海軍の本家であり、「2国標準主義=常に2カ国の海軍に対応できる戦力を整備する方針」のもとに多種の艦船を大量に整備したイギリス海軍ならではの状況ではあるのですが、いずれにせよ、ここには筆者の大好きな「ヴァリエーション=枝分かれ」的な要素が濃厚にあるわけで、筆者はいたく刺激を受けたわけです。同様のことが他にはないだろうか、と探してみると「やはりありました」。

しかも、知らず知らずのうちに、モデルまである程度揃っているじゃないか、という、今回はそういうお話です。

 

最後の第一次世界大戦駆逐艦

V/W級駆逐艦(初代)(同型艦:準同型艦67隻)

ja.wikipedia.org

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 (「V/W級」駆逐艦の概観:写真は「アドミラルティV級」だと思われます:75mm in 1:1250 by Navis)

「V/W級」駆逐艦は、英海軍が第一次世界大戦中に建造した駆逐艦の艦級で、艦名がWまたはVで始まっているところから「V/W級」と総称されています。

同級はドイツ帝国海軍が建造中の大型駆逐艦・大型水雷艇への対抗上から、大型・重武装駆逐艦として設計されました。従来の英駆逐艦の基本装備であった40口径4インチ(10.2cm)砲3門を強化し45口径4インチ(10.2cm)4門とし、さらに連装魚雷発射管2基の標準装備を3連装発射管2基搭載へと、魚雷射線の強化も行われました。(実際には3連装発射管の製造が間に合わず、当初は連装発射管を搭載し就役し、後に三連装に換装されています)

「V/W級」と総称されますが実は大別して下記の5つのサブ・クラス(おお大好きなサブ・クラス!)に分類されます。

アドミラルティV級(28隻:大戦に間に合ったのは25隻)

アドミラルティW級(19隻)

ソーニクロフトV/W級(4隻)

ソーニクロフト改W級(2隻)

アドミラルティ改W級(14隻)

少し補足しておくと、「アドミラルティ」は海軍本部(アドミラルティ)の基本設計によるものを指し示し、「ソーニクロフト」はソーニクロフト社の設計によるものであることを示しています。

さらに「改W級」では搭載主砲を45口径4インチ(10.2cm)から45口径12センチに強化しています。

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(直上の写真は「V級」の主要武装等の拡大:艦首部・艦尾部に背負い式に主砲(45口径4インチ単装砲)を配置し、3連装魚雷発射管を2基、艦の中央部に搭載しています。艦のほぼ中央部に3インチ対空砲を搭載しています(写真中段))

武装の強化に伴い艦型は大型化(1100トン級)しましたが、機関の見直しは行われなかったため、速力は前級の36ノットから34ノットに低下しています。しかしソーニクロフト社製の「改W級」では機関の強化も併せて行われ36ノットの速力を発揮しています。

就役は1918年からで、この年の11月に第一次世界大戦終結したことから、奇しくも第一次世界大戦型の駆逐艦の最終形となりました。

 

大戦終結後、英海軍は疲弊した国力と、大戦期中に膨大に膨れ上がった大量の艦船の整理に追われるわけですが、最も艦齢の若い同級は多くが残置され、第二次世界大戦でも活用されました。

 

機雷敷設駆逐艦への改造

V級」の一部の艦は、魚雷発射管の連装から3連装への換装を行う代わりに、連装発射管1基を撤去し、さらに主砲1基も撤去、艦尾形状を整形すると共に機雷敷設軌条を設置して、60基程度の機雷敷設能力を持つ敷設駆逐艦に改造されています。

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 (「V級駆逐艦のヴァリエーション機雷敷設駆逐艦の概観 by Navis:下の写真は、「機雷敷設駆逐艦」に改装された艦の細部の拡大:艦首部の主砲配置は変わらず、魚雷発射管は連装のまま1基のみ搭載、艦尾部は主砲1基を撤去して艦尾形状を機雷敷設軌条等の張り出しを追加しています )

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第二次世界大戦時:護衛駆逐艦」への改造

第一次世界大戦駆逐艦としては最も艦齢が若かった「V/W級」は、一部(4隻?)がオーストラリア海軍に供与された他、本稿でも「巡洋艦」の回に見て来たように航空機や潜水艦の脅威の増大を見越して、通商路保護の役割を担う「護衛駆逐艦」への改装に充当されます。

 

WAIR改修艦(14隻・15隻?)

本稿前回・前々回で見たように、航空機の脅威に備えて英海軍は「C級」巡洋艦の数隻を防空艦へと改装しました。WAIR改修は、それと同趣旨で「V/W級」駆逐艦に長射程の対空砲を搭載し、併せて対潜兵装も強化して船団護衛の要として活用しようとする狙いでした。

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 (「V/W級」WAIR改修型駆逐艦の概観 by Argonaut:下の写真は、WAIR改修型の主要武装の拡大:艦首・艦尾に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を各1基搭載。魚雷発射管は全て撤去され、対空火器が強化されています。艦尾部には爆雷投射機と投射軌条が搭載され、対潜能力が強化されています)

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改修対象となった艦は全ての主砲・魚雷発射管を撤去し、代わりに4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)2基を搭載、他にも対空機関砲を増設した上で、対潜装備として爆雷投射機、投射軌条を搭載する他、後にはレーダーやソナーなどを装備しています。en.wikipedia.org

主要兵装となった4インチ連装対空砲は、「C級」巡洋艦を改装した防空巡洋艦などにも搭載されていた対空砲で、80度の仰角で11800m、45度の仰角で18000mの範囲をカバすることができました。

***さて、ちょっとこぼれ話。名称の「WAIR」が何に基づくものか、今でははっきりしないようです。「W級」の「対空化(ant-AIRcraft)」ではないか、という説も。

 

 長距離護衛駆逐艦への改装(21隻)

「V/W級」に限らず、「艦隊駆逐艦」は高速をその特徴の一つとするため、実はあまり長い航続距離を持たせる設計にはなっていません。しかし、通商路の保護には経済性を持つ商船で構成される低速の船団の航行に合わせた長い航続距離が必要で、「V/W級」の一部はこれに適応するような改装を受けています。

具体的には機関の一部を撤去し、そのスペースに燃料タンクと居住区画を増設し長い航続距離の獲得と、乗員の居住性を向上させました。当然、速力は落ちましたが、対潜警戒用のソナーの運用等を考慮するとかえって20ノット以上では支障が生じるなどの要件もあり、この目的では25ノット程度の速力があれば十分だったということです。

兵装は主砲を2基減らせて、ヘッジホッグや爆雷投射機・投射軌条を搭載し対潜兵装を充実させ、さらに対空砲・対空機銃等を強化しています。

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(「V/W級」改造長距離護衛駆逐艦の概観 by メーカーは不明:下の写真は、長距離護衛駆逐艦型の主要武装の拡大:艦首1番主砲が撤去されヘッジホッグに換装されています(上段写真)。主砲は45口径4.7インチ(12cm)単装砲を、艦首・艦尾に1基づつ搭載しています。機関搭載数を減らしたため煙突が一本に。魚雷発射管は全て撤去され、4インチ単装高角砲が搭載されています(中段写真)。艦尾部には爆雷投射機と投射軌条が搭載され、対潜能力が強化されています)

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ちょっと余談

以前ご紹介したことのあるニコラス・モンサラットの小説「非常の海:The Cruel Sea」にも、「V/W級」が出て来ます。

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(「非常の海」ちょっと古い本です。古書は今のところそれほど高価ではなく手に入るのですが、本の状態もちょっと不安なので文庫を出してほしいなあ。特に最近、WFHで出勤時にはPC を持ち歩きます。手荷物が重いので、是非、文庫が欲しい! (「光人」文庫あたりにあってもいいかと、お願いしてみてはいるのですが・・・)でも、いい本ですよ。船団護衛とか興味のある方にとっては、ね)

 

この小説、主人公が乗艦しているのは「フラワー級コルベット「コンパス・ローズ」なのですが、「コンパス・ローズ」が属している船団護衛部隊の指揮艦が「旧式のV/W級駆逐艦:ヴァイパラス:Viperous」と表記されています。

「ヴァイパラス」は架空の船ですので、流石に「V/W級」駆逐艦のどのタイプかまでは記述がないのですが、船団護衛部隊はこんな感じかと。

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(左から「V級長距離護衛駆逐艦」、「フラワー級コルベット」(前期型)、「フラワー級コルベット」(改良型)、「対潜型トローラー」の順。船団の規模にもよるでしょうが、ちょっと、重装備すぎるかな。下の編成の方が現実的かもしれません)

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このほかにも、アリステア・マクリーンの「女王陛下のユリシーズ号」にも「V/W級」は登場するようです(ちょっと記憶がないです。「V/W級」が登場するかどうか、というよりも物語そのものの記憶が・・・。読み返してみよう。この小説は、そもそも「ダイドー級」と「ベローナ級」の中間の架空の艦級の防空巡洋艦が舞台でしたよね。大好きな「架空艦」である訳です。作ってみたくなるかも。さらに「シアリーズ級」軽巡洋艦も出てきた記憶があります。読んだ当時には「シアリーズ級」についての認識は旧式の巡洋艦、という程度だったので、今読み返すと、もっと興味深いんだろうなあ、と期待が膨らみます。ああ、話がうんと「V/W級」から外れてしまった)

さらに未邦訳のダグラス・リーマンの「The Destroyer」という小説では「V/W級」で構成される駆逐艦部隊(8隻全部?)が主役(物語の舞台?)のようなのですが、もちろんこれは読んだことがありません。

 

これぞコレクションの醍醐味というカット

(下の写真は「V/W級」駆逐艦のヴァリエーションの贅揃い。手前から第一次世界大戦期の「V級駆逐艦のオリジナル。第一次世界大戦期の「V級」機雷敷設駆逐艦への改造。第二次政界大戦期のWAIR改修護衛駆逐艦への改装。第二次世界大戦期の長距離護衛駆逐艦の順)

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ここからは第一次世界大戦期の軽巡洋艦の新着モデルのご紹介

もう一つ、本稿前々回でご紹介した「タウン級(初代)」のサブ・クラスのモデルが未入手だったのですが、ようやく手元に揃いましたので、それをご紹介します。

 

以下は、本稿前々回の抄録。前々回の本文も更新しておきます。

 「タウン級」防護・軽巡洋艦(過渡期的な・・・)

ja.wikipedia.org

タウン級(初代)」巡洋艦には以下の5つのサブ・クラスがあります。

ブリストル級」防護巡洋艦

「ウェイマス級」防護巡洋艦

「チャタム級」軽巡洋艦

バーミンガム級」軽巡洋艦

「バーケンヘッド級軽巡洋艦

全ての艦名が、イギリス(あるいは英連邦諸国)の都市の名前に由来するところから「タウン級」と総称されています。

そのうち最初の二つは舷側装甲を石炭庫による空間装甲とする設計で防護巡洋艦に分類されています。

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(「タウン級」サブ・クラスの勢揃い。手前から「ブリスター級」防護巡洋艦、「ウェイマス級」防護巡洋艦、「チャタム級」軽巡洋艦、「バーミンガム級」軽巡洋艦、「バーゲンヘッド級軽巡洋艦の順) 

 

ブリストル級」防護巡洋艦同型艦:5隻)

ja.wikipedia.org

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 (「ブリストル級」防護巡洋艦の概観:109mm in 1:1250 by Navis)

本級は外洋作戦用の巡洋艦として設計された艦級で、外洋の悪天候化でも行動ができるように4800トンの比較的大きな船体を持ち、良好な航洋性を発揮しました。

しかし、舷側には装甲帯を持たず、防御は舷側の石炭庫と船内の防護甲板による、という未だに防護巡洋艦の設計でした。

艦隊随伴護衛艦としては高い評価を得ましたが、通商路保護の観点からは25ノットの速力は十分とは言えませんでした。6インチ単装砲2基と4インチ単装砲10基を搭載していました。

 

「ウェイマス級」防護巡洋艦同型艦:4隻)

ja.wikipedia.org

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 (直上の写真:「ウェイマス級」防護巡洋艦の概観:110mm in 1:1250 by Navis)

同級は「ブリストル級」では6インチ砲と4インチ砲の混載であった主砲を、6インチ単装砲に統一し、砲力の強化を図っています。(6インチ単装砲8基搭載)併せて、航洋性改善のために船首楼を延長するなど、船体構造を見直し、排水量が5250トンに拡大しています。

水線部の装甲帯はまだなく、防護巡洋艦の形態であったと言えるでしょう。 

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(直上の写真は、「ブリストル級」(左列)と「ウェイマス級」の細部比較:「ウェイマス級」では主砲を6インチ砲に統一し砲力を強化しています。中段の写真では航洋性改善のために延長された船首楼の形状がよくわかります)

 

「チャタム級」軽巡洋艦同型艦:6隻)

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(直上の写真:「チャタム級」軽巡洋艦の概観:112mm in 1:1250 by Navis)

本級は初めて水線部に装甲帯を装着し、前2級の「防護巡洋艦」の設計から「軽装甲巡洋艦」に基本設計を変更した艦級です。本級によって「軽巡洋艦=軽装甲巡洋艦」の設計が確立されたと言っていいでしょう。船体は前級よりさらに大型化し、船首楼のさらなる延長などにより、航洋性がさらに改善されています。艦種形状をクリッパー型に改めていますが、速力は25.5ノットに留まっています。(5400トン、6インチ単装砲8基搭載)

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(直上の写真は、「ウェイマス級」(左列)と「チャタム級」の細部比較:「チャタム級」では艦首形状をクリッパー型の改め、船首楼を艦中央部まで延長し、さらに航洋性を高めています)

 

 

 バーミンガム級」軽巡洋艦同型艦:4隻)

ja.wikipedia.org

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(直上の写真:「バーミンガム級」軽巡洋艦の概観:112mm in 1:1250 by Navis)

本級は、6インチ単装砲を更に1基増設し、9基と砲力を強化しています。しかし、一方で他艦種で改善著しい高速化への対応に遅れを取った結果となり、「タウン級巡洋艦は本級を最後のサブ・クラスとして、建造が打ち切られました。(5440トン、6インチ単装砲9基搭載)

 
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(直上の写真は、「チャタム級」(左列)と「バーミンガム級」の細部比較:艦首部に単装主砲を2基装備しています(上段写真)。その他には大きな差異はなく、「チャタム級」後期型、とでもいうべき艦級です。写真では前檣方位版を搭載した姿を現しています)

 

「バーケンヘッド級軽巡洋艦同型艦:2隻) 

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(直上の写真:「バーゲンヘッド級軽巡洋艦の概観:112mm in 1:1250 by Navis)

本級はギリシア海軍が英国に発注していたものを、第一次世界大戦の勃発に伴い接収し自国艦隊に編入した艦級です。「タウン級」の他のサブ・クラスが6インチ砲装備であったのに対し、一回り小さな14センチ単装砲塔10基を搭載しています。14センチ砲は弾体重量が6インチ砲に比べ20%ほど軽く、扱いが容易で高い射撃速度を発揮することができました。一方で、当然のことながら単体あたりの破壊力が劣り、英海軍では本級のみの装備となりました(5185トン、25.5ノット)

余談ですが、14センチ砲は、日本海軍では、日本人の体格を考慮し、「伊勢級」「長門級」戦艦の副砲、軽巡洋艦主砲などに、広く採用されました。

 

(直上の写真は、「バーミンガム級」(左列)と「バーゲンヘッド級」の細部比較:今回の比較は「艦級」間の比較、というよりも、模型的な視点で見た「再現度の差異」が気になります。以前にも少し愚痴をこぼしましたが、これはコレクションをしていて、いつも頭の痛い問題なのです。まあ、当たり前のことと言ってしまえばそれまでですが、この両者はいずれもNavis社製のモデルなのですが、制作年次が違うのです。当然のことながら模型メーカーは品質改善のために新たなヴァージョンを発売し、ヴァージョン違いで精度に大きな差異が発生するわけです。コレクター的には「キリがない」ということになってしまいます。「思い切り」しか解決法はない、とはわかっているのですが、やはりここまで大きな再現性の進化を見てしまうと・・・。困ったなあ)

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タウン級」の勢揃い

(「タウン級」サブ・クラスの勢揃い。手前から「ブリスター級」防護巡洋艦、「ウェイマス級」防護巡洋艦、「チャタム級」軽巡洋艦、「バーミンガム級」軽巡洋艦、「バーゲンヘッド級軽巡洋艦の順) 

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タウン級」防護・軽巡洋艦のまとめをしておくと、「ブリストル級」防護巡洋艦:5隻が就役し戦没艦はなし、「ウェイマス級」防護巡洋艦:4隻が就役し戦没艦1隻、「チャタム級」軽巡洋艦:就役6隻、戦没艦なし、「バーミンガム級」軽巡洋艦:4隻就役、1隻戦没、「バーケンヘッド級軽巡洋艦:2隻就役、戦没艦なし、という戦歴でした。やはり高速化へ対応の遅れからでしょうか、ほとんどの艦が第一次世界大戦直後の1920年代に退役しています。

 

ということで、取り敢えず今回はここまで。

 

次回は、いよいよ「日本海軍の航空母艦小史」に着手しましょうか?あるいは・・・。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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ロイアル・ネイヴィー:第二次世界大戦期の巡洋艦・軽巡洋艦/防空巡洋艦

本稿では前回、英海軍の軽巡洋艦の開発系譜を遡って「第一次世界大戦期の軽巡洋艦」のご紹介をしましたが、今回は番狂わせなく、第二次世界大戦期の英国巡洋艦の結び「軽巡洋艦」編、です。

 

英海軍の新設計巡洋艦条約型巡洋艦とその発展の系譜)

第一次世界大戦で著しく国力を疲弊し、かつ人類史上初の「総力戦」の直接体験者であった英国は、それまでの「会戦方式の艦隊決戦」を念頭に置いてきた伝統の「二国標準主義=仮想敵2国の海軍と渡り合える装備を準備する」を捨て、軍縮条約による制限で自国海軍の優位を保とうと目論みます。これが結実したのが、ワシントン条約ロンドン条約だったのですが、世界第一位の海軍国の地位は維持したものの、特にロンドン条約で自ら提唱した巡洋艦等の補助艦艇の保有制限枠に苦しむことになります。

少しおさらいをしておくと、主力艦の保有制限を定めたワシントン条約では、巡洋艦については、「排水量1万トン以下、主砲8インチ砲10門以下」という個艦建造についての制限のみが決められましたが、ロンドン条約では保有枠についても制限が定められました。

以下に巡洋艦保有制約をまとめておくと、

米国:カテゴリーA(重巡洋艦):180,000トン、カテゴリーB (軽巡洋艦):143,500トン

英国:カテゴリーA(重巡洋艦):146,800トン、カテゴリーB (軽巡洋艦):192,200トン

日本:カテゴリーA(重巡洋艦):108,000トン、カテゴリーB (軽巡洋艦):100,450トン

となります。 

 

当時、英国は依然、海外に多くの連邦国・植民地を保有しており、これら海外通商路の保護、海外植民地の警備等での巡洋艦の存在は、まさに英海軍の存在の根幹と言うべきものでした。このためには巡洋艦の隻数を揃えねばならず、一方で、大戦後に新たに台頭した日米海軍が補助主力艦としての位置づけから次々と巡洋艦の個艦性能の向上を試みるのを目の当たりにするわけですが、こうした高性能の巡洋艦群への性能上での対抗と、隻数の維持・確保という矛盾する要求との兼ね合いが、これからご紹介する軽巡洋艦の発達史とも深く関わってくる、今回はそういうお話です。

 

既に前々回でご紹介した重巡洋艦の開発系譜でも、「カウンティ級重巡洋艦から次級の「ヨーク級」へのスペックダウンに、既にその一例を見ることができました。

 

新造軽巡洋艦 第一世代(大英帝国海軍の栄光と苦悩)

重巡洋艦エクセター」の建造で、ロンドン条約重巡洋艦の枠を使い切った英海軍は、軽巡洋艦の整備に着手します。前述のように広範囲な連邦領・植民地や通商路の警備・保護には、軽快な機動性を持つ軽巡洋艦の隻数を揃える必要があり(理想的な理論値は一説では70隻と言われていますが、とてもこれを賄えるような状況ではありませんでした)、大量に保有する第一次世界大戦型の軽巡洋艦を廃棄処分し、これをいかに置き換得てゆくか、条約の保有枠の制限と、疲弊した経済の両面から、英国の苦悩が始まります。

 

リアンダー級軽巡洋艦同型艦:5隻)

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(直上の写真は、「リアンダー級」軽巡洋艦の概観。 135mm in 1:1250 by Neptune) 

本級は英海軍が第一次世界大戦後初めて設計した「軽巡洋艦」です。

保有枠の関係から、最後の条約型重巡洋艦となった「エクセター」をタイプシップとして、7000トン級の船体に6インチ連装砲4基を搭載しています。重巡洋艦の設計をベースとしただけに堅牢な艦に仕上がっています。高圧缶の採用で缶数を減らし、煙路をまとめることができたため、大きな一本煙突の外観をしています。

 

前々回の「英海軍重巡洋艦」の稿でも紹介しましたが、ドイツ海軍の通商破壊艦(ポケット戦艦)「グラーフ・シュペー」の追撃戦、に本級の「エイジャックス」と「アキリーズ」が参加し、ラプラタ沖で「シュペー」を捕捉し自沈に追い込んだことで有名です。

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(直上の写真はドイツ海軍装甲艦(ポケット戦艦)「アドミラル・グラーフ・シュペー」の概観:148mm in 1:1250 by Hansa: 下の写真では、その細部を拡大。「装甲艦」という実態は通商破壊専任の巡洋艦ながら「ポケット戦艦」の二つ名の由来となった11インチ主砲と重厚な装甲司令塔(上段・下段)、6インチ副砲の配置など(中段)がよくわかります)

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ベルサイユ条約で課せられた大型艦の代艦建造の際の「排水量上限1万トン、主砲の上限11インチ」(これは、第一次世界大戦前の前弩級戦艦以上の戦力をドイツ海軍に持たせない、という意図)を逆手とり、革新的な通商破壊艦として建造された「ドイッチュラント級」装甲艦3隻の一隻として建造されました。3隻の中では同艦と姉妹艦の「アドミラル・シェーア」(就役時)は装甲司令塔(風)の艦橋部を持ち、重厚な外観を示しています。(「シェーア」は後に「ドイッチュラント」と同様な軽快な艦橋に改装されました)

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航続力に優れるディーゼル機関を搭載し、その発揮する26ノットの速力は、英海軍の戦艦では追いつけず(「フッド」「レナウン級」のいわゆる巡洋戦艦のみ、これを補足することができました)、活動阻止にあたることが想定される英巡洋艦に対しては11インチ主砲で射程外から圧倒する、という非常に厄介な存在でした。

第二次世界大戦初頭の1939年8月の出撃以降、12月までの4ヶ月間で南大西洋、インド洋で50000トンほどの戦果を上げ、次の作戦領域と定めたラプラタ河方面に向かいました。英海軍はこの阻止のために5つの部隊を派遣し、12月にその一つハーウッド准将の率いるG部隊と遭遇し、海戦に入ります。

ラプラタ沖海戦では、英海軍G部隊の重巡洋艦エクセター」と「リアンダー級」軽巡洋艦の「エイジャックス」「アキリーズ」が「グラーフ・シュペー」の追撃戦に参加します。約1時間の砲撃戦の結果「エクセター」は大破、「エイジャックス」も主砲塔2基が使用不能になるなど、英艦隊は大きな損害を受けますが、「グラーフ・シュペー」も被弾し中立港であるモンテビデオに逃げ込みます。その後、中立国ウルグアイと損傷修理等の交渉を行いますが、英国の外交の効果で、これは叶わず、併せて英艦隊集結等の欺瞞情報により、「グラーフ・シュペー」はラプラタ河口で自沈しました。

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(直上の写真はドイツ海軍装甲艦(ポケット戦艦)「アドミラル・グラーフ・シュペー」(下段)とその阻止に当たった英海軍G部隊の対比(上段):「リアンダー級」軽巡洋艦(手前:「エイジャックス」と「アキリーズ」はこのクラスでした)と「エクセター」)。下の写真では、「エクセター」と「グラーフ・シュペー」の大きさ比較:「グラーフ・シュペー」の主砲塔の大きさが目立ちます) 

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第二次世界大戦では1隻の戦没艦を出しています。

 

パース級軽巡洋艦同型艦:3隻)

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本級は、「リアンダー級」軽巡洋艦の改良型準同型艦として建造されました。建造の経済効率の模索から、大型の缶を採用し、「リアンダー級」よりも更に缶数を減らし、かつ機関と缶の分離配置によって艦の生存性を高めています。これに伴い、前級「リアンダー級」が船体中央に大きな集合煙突を持っていたのに対し、本級では二本煙突と、外観に差異が生じています。

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(直上の写真は、オーストラリア海軍「パース級」軽巡洋艦の概観:135mm in 1:1250 by Neptune)

 

当初は英海軍の「アンフィオン級」軽巡洋艦命名されましたが、後に全てオーストラリア海軍に供与され艦名がオーストラリアの都市名と変更されたため、「パース級」と呼称されています。船体の大きさ、標準的な武装配置等は「リアンダー級」を継承しています。

 

第二次世界大戦では、日本海軍との戦闘で「パース」が、ドイツ海軍の通商破壊艦(偽装商船)「コルモラン」との戦闘で「シドニー」が失われました。

 

「コルモラン」(秘匿名:軍艦41号/Shiff 41・英海軍のコードネーム:襲撃艦G/Raider G)

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Kormoran (HSK 8)

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(HSK 8「コルモラン」の概観:131mm in 1:1250 by Neptune: 8,736トン、主砲:155mm*6門、魚雷発射管6門、 水偵2機搭載、小型魚雷艇1隻搭載、機雷360個、18ノット)

1938年の建造された商船を改造した船で、1940年10月に通商破壊艦8号(HSK 8)として就役しました。通商破壊艦としては最大の船で、1940年12月から1941年11月までの戦闘航海で 大西洋、インド洋で11隻、約69,000トンの連合国船舶を拿捕・撃沈しました。

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(「コルモラン」の主砲や魚雷発射管は舷側の遮蔽板内や船倉に隠蔽されていました。後甲板部には船倉内に水偵や小型魚雷艇が収納されていました) 

1941年11月29日、オーストラリア海軍の巡洋艦シドニー」と遭遇し、オランダ船を偽装して接近した後、近距離砲戦の結果、複数の命中弾を与え、加えて魚雷も命中させるなど「シドニー」を大破(後、沈没。生存者なし)させましたが、自艦も被弾し大火災を起こし乗組員は艦を放棄せざるを得ませんでした。こうして、「コルモラン」はドイツの偽装商船の中で唯一、連合国軍艦を沈める戦果を挙げた艦となりました。

 

アリシューザ級軽巡洋艦同型艦:4隻)

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(直上の写真は、「アリシューザ級」軽巡洋艦の概観:123mm in 1:1250 by Neptune)

本級は前級「パース級」の主砲塔を1基減じて、それに合わせて5000トン級に縮小した船体に出力を減じた機関を搭載することで経済性を求めた設計となっています。第一次世界大戦型の旧式軽巡洋艦(C級、D級)の代艦として隻数を確保しようとする狙いではあったのですが、この辺りに、条約の保有制限枠、疲弊した国力と隻数の両立への模索・苦悩が現れています。

船体の小型化により、生存性はやや低下しましたが、速力は前級と同レベルを維持し、ある程度の戦闘力を持ち高い居住性と航洋性を兼ね備えた、通商路保護の本来の軽巡洋艦の目的に沿った手堅い設計の艦だったと言えるでしょう。

主として地中海方面の戦場に投入され、2隻が失われました。

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(直上の写真は、英海軍の新造軽巡洋艦第一世代の比較:てまえか「リアンダー級」「パース級」「アリシューザ級」配置の微妙な違いを見ていただければ・・・)

 

大型軽巡洋艦建造への方針転換

 英国は、これまでに見てきたように、条約体制のもとでの最後の重巡洋艦の艦級となった「ヨーク級:(ヨーク・エクセター)」に続き、久々の新造軽巡洋艦となった「リアンダー級」その改良型の「パース級」、そしてその経済版ともいうべき「アリシューザ級」と12隻の軽巡洋艦を世に送り出しましたが、その建造方針は一貫して大英帝国の宿命ともいうべき世界に広がる通商路と連邦領の警備・保護を主目的とし、そのための長期航海での居住性と航洋性、かつ広域への対応を念頭において多数を揃えるという、いわば「小型多数主義」ともいうべきものでした。

一方、英国海軍を脅かす存在となり、さらに成長を続ける日米海軍では、条約の保有制限一杯となった「重巡洋艦」を補完すべく備砲口径のみ条約の「軽巡洋艦」規定に則ったそれまでの軽巡洋艦の概念を覆す大型で強力な「軽巡洋艦」が建造されてゆきます。

それらの大型軽巡洋艦は日米ともに巡洋艦の規定枠である10000トンの排水量制限をいっぱいに使い、かつ軽巡洋艦の規定である6インチ砲を主砲としながらも、従来の「軽巡洋艦」の装備する主砲のほぼ倍に等しい15門程度を装備するというもので、いずれも条約型の「重巡洋艦」に撃ち負けない設計となっていました。

英海軍もこれらの両海軍の「潮流」を無視しきれず、ついには同様の主旨での巡洋艦設計に方針を転換してゆきます。

こうして、「タウン級(2代)」軽巡洋艦が誕生します。

 

タウン級軽巡洋艦

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 上述のように海外連邦領との通商路保護・警備に主眼をおいた「小型多数主義」から、一転して設計された大型軽巡洋艦の艦級です。

基本設計は条約制限いっぱいの1万トンの上限枠を配慮し、これも条約規定で軽巡洋艦の定義にあたる6インチ砲を多数そろえる、というものでした。

以下の3つのサブ・クラスを含んでいる、という解釈が一般的なようですが、一括りにする意味があるかどうかは・・・・「?」でしょうか。

サウサンプトン級」5隻

グロスター級」3隻

エジンバラ級」2隻

初代「タウン級」と同様に、艦名が全て英国の都市名に由来するところから「タウン級」の名称がつけられました。

 

サウザンプトン軽巡洋艦同型艦:5隻)

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(直上の写真は、「サウサンプトン級」軽巡洋艦の概観:144mm in 1:1250 by Neptune)

本級は「タウン級軽巡洋艦の第1グループとして5隻が建造されました。条約による軽巡洋艦保有枠の残(91000トン)を意識したため、9000トン級の船体(10隻の建造を予定していました)に6インチ3連装砲塔4基を搭載し、32ノットの速力を発揮する、という基本設計となっています。

これは「小型多数主義」で建造された「リアンダー級」に比べると、排水量で約3割大型、主砲数で1.5倍、速力はほぼ同等、という設計で、以降の英海軍の巡洋艦設計の原型となりました。

日米の同設計主旨の条約型軽巡洋艦の艦級と比べると、やや小ぶりで主砲搭載数が少ないですが、英国海軍の巡洋艦らしく優れた居住性・航洋性を持っていました。

 

第二次世界大戦中には航空機の発達に伴い主砲塔1基を対空兵装に換装するなど、改装が行われた艦もありました。

 

本級の「サウサンプトン」は地中海での船団護衛任務中にイタリア空軍の爆撃を受け大破し、その後味方魚雷で処分され失われました。

 

グロスター級軽巡洋艦同型艦:3隻)

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(直上の写真:「グロースター級」軽巡洋艦の概観 144mm in 1:1250 by Neptune) 

グロスター級」は「タウン級」の第2グループとして3隻が建造されました。第1グループである「サウサンプトン級」の装甲強化型であり、この強化に伴い、機関も見直され、速力は32.25ノットに向上しています。

装甲強化に伴い若干排水量が増えていますが、外観、装備配置等に前級と大差はありません。

 

(直下の写真:「サウサンプトン級」と「グロースター級」の比較。後橋の構造が少し大型化したことを除けば、ほとんど差異はありません。模型をどこまで信じるのか、という問題にもなりますが、Neptune社製ですので、多分、いいんじゃないかな?) 

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 同級の各艦は就役直後から地中海方面での船団護衛等に活躍しましたが、1941年に「グロスター」がドイツ空軍の爆撃で、1942年には「マンチェスター」がイタリア海軍の魚雷艇との交戦で失われました。

 

エディンバラ軽巡洋艦同型艦:2隻)

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(直上の写真:「エジンバラ級軽巡洋艦の概観 149mm in 1:1250 by Neptune) 

本級は「タウン級」第3グループとして2隻が建造されました。前級では船団護衛等の場面での対空兵装の強化が求められましたが、対空兵装の強化のために主砲塔1基を下さねばならないほど、設計に余裕がなかったため、同級では設計段階から艦形を拡大して対級兵装を強化しています。その結果、排水量は10000トンを超えました。

併せて機関配置を変更し、航空艤装を艦橋直後に移転し、煙突位置を後方にずらすことにより前方煙突からの煤煙の環境への流入を減らしています。

 

第二次世界大戦では、「エジンバラ」が船団護衛中にドイツ海軍のUボートに雷撃とその損傷後の回航途中の戦闘で失われています。

(下の写真は、「タウン級」の3サブ・クラスの比較。手前から「サウサンプトン級」「グロスター級」「エジンバラ級」の順。「エジンバラ級」の大きさと、煙突位置に注目)

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再び経済性への回帰

上述のように、日米の巡洋艦整備に刺激される形で大型巡洋艦の建造に方針転換した(せざるを得なかった?)英海軍でしたが、やはり英海軍の存在理由から来る「量」(隻数)への要求も軽くはなく、再び経済性を考慮した艦級の建造に回帰します。

それが次のご紹介する「クラウン・コロニー級」軽巡洋艦です。

 

クラウン・コロニー級軽巡洋艦同型艦:11隻)

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(直上の写真:「クラウン・コロニー級」の概観。135mm in 1:1250 by Neptune )

同級は、上記のような事情から、前傾の「タウン級」第1グループ、「サウサンプトン級」軽巡洋艦タイプシップとして、数を揃えるためにやや小型化した軽量版です。植民地名を艦名としたため、「クラウン・コロニー級(あるいは単に「コロニー級」)」と呼称されています。

軽量化のために艦型を少し小型化し、舷側装甲を軽減するなどしています。

(直下の写真は、速射性の高いMk XXIII 15.2cm(50口径)速射砲の3連装砲塔を4基搭載しています。)

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 後期型

大戦後期には、敵性水上艦の脅威がほとんどなくなり、変わって対空兵装の強化が求められました。これへの対応として3番主砲塔を対空兵装に換装する改装が行われましたが、後期に建造された3隻については最初から主砲塔を3基として対空兵装を強化した形で建造されました。このため前期型を「フィジー級」、後期型を「セイロン級」と呼ぶこともあります。

(下の写真は「「クラウン・コロニー級後期型」の概観)

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(下の写真は「「クラウン・コロニー級」前期型(手前)と後期型の比較:兵装配置の比較も併せて) 

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(上掲写真と同じく下の写真は「「クラウン・コロニー級」前期型(左)と後期型の主砲配置比較)  

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大戦中には、「フィジー」が1941年クレタ島近海でドイツ空軍の爆撃により、「トリニダード」が1942年にムルマンスク向けの船団護衛任務中にドイツ海軍の駆逐艦と交戦し損傷、イギリスへの回航途中にドイツ空軍の空襲で撃沈されました。

 

スウィフトシュア級軽巡洋艦同型艦:2隻)

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(残園ながら、モデルは未入手) 

本級は「クラウン・コロニー級」後期型軽巡洋艦タイプシップとして、レーダー等の発達のために有効性の減った航空艤装を廃止し対空兵装を強化した艦級です。

就役したのは大戦末期でした。

 

防空巡洋艦の整備

英海軍は第一次世界大戦後、航空機の発達による脅威の増大を予見して、旧式のC級軽巡洋艦の数隻の主砲を4インチ対空砲に換装し防空巡洋艦に改装します。

(これは、検索した限りどこにもそれらしい資料が見当たらないので、ここだけの筆者による憶測、ということにして欲しいのですが、ロンドン条約では軽巡洋艦の定義を「備砲、5.1インチ以上で6.1インチ以下」としています。主砲を4インチ(対空)砲とすることで軽巡洋艦保有枠の対象外、としたかったのではないかな?どこかで記述しましたが、英国はその広範な連邦領との通商路を保全するためには巡洋艦保有数として70隻必要、と試算していました。ところが条約で認められた保有枠はカテゴリーA(重巡洋艦)、カテゴリーB(軽巡洋艦)併せて34万トン余りで、単純に割り算すると、平均4850トンを切るサイズの船でないと数を賄えないことになってしまいます。さすがにこの時期に5000トン以下の巡洋艦は計画されていませんので、どうしても規定外の通商路保護のための艦船が必要だったのではないかと・・・。一方で前大戦で国力は疲弊しきっていて、既に旧式化していた第一次大戦期の巡洋艦を主砲換装で「軽巡洋艦」の規定枠外で有力な戦力化できる方法があるとすれば・・・。などと、妄想したりするのですが。まあ、これはその後の第二次大戦での航空優位の歴史を知る我々の「後知恵」による少々こじつけめいた憶測ですので、あまり他所で話さないでね。どこかに資料ないかな?)

 

C級軽巡洋艦防空巡洋艦への改装

C級軽巡洋艦のサブ・クラス「カレドン級」のうち1隻、「シアリーズ級」のうち3隻と「カーライル級」のうち4隻が、第二次世界大戦前には、早くも兵装を高角砲に換装し、防空巡洋艦として参加しています。主砲を全て高角砲に換装し、艦隊防空を担わせる専任艦種を整備する、という思想に、第二次世界大戦前に発想が至っていた、というのは「慧眼」というか、ある種、驚きですね。

同級で防空巡洋艦への改装を受けた3隻のうち「コベントリー(Coventry)」と「カーリュー(Curlew)」は4インチ単装高角砲(QF 4 inch Mk V gun)10基をその主兵装として改装されました。

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この両艦の防空巡洋艦改装時のモデルはArgonaut製のものが市販されていますが未入手です(Argonaut製のモデルはオーナー氏の他界により、希少化し高騰しています)。

キュラソー(Curacoa)」は4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)4基を主兵装として改装されました。

en.wikipedia.org

今回はこの「キュラソー」をNavis製の「カーディフ(Cardiff) 」のモデルをベースにセミ・スクラッチしたものをご紹介。

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(上下の写真は、防空巡洋艦に改装後の「キュラソー(Curacoa)」:同級は3隻が防空巡洋艦に改装されていますが、「キュラソー」が改装時期が最も遅く、他の2艦が4インチ単装高角砲(QF 4 inch Mk V gun)10基を搭載していたのに対し、同艦のみ4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を4基搭載しています。外見的には同艦が最も防空巡洋艦らしいのではないかな、と筆者は考えています。1番砲、3番砲、4番砲、5番砲が連装高角砲に換装されました。艦橋前の2番砲座にはポンポン砲が設置されました):本稿前回でご紹介した「キュラソー」のセミ・スクラッチ・モデルで他もモデルから転用した4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)のパーツがやや大味な気がしていたので、より再現性が高い(と筆者が勝手に判断した)パーツに置き換えてみました。

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防空巡洋艦として就役した3隻はいずれも大戦中に失われています。

 

「カレドン級」防空巡洋艦への改装(架空艦の制作)

「カレドン級」軽巡洋艦第二次世界大戦にも船団護衛等の任務で運用されました。中でもネームシップの「カレドン」は艦容が全く変わってしまうほどの改装を受けるのですが、残念ながらモデルが筆者の知る限りありません。(どこかで製作してみようかな。ちょっと改装範囲が大きいので、しっかり準備が必要です)

同級の他の艦はあまり改装を受けず、原型に近い状態で任務についたのですが、「もし、防空巡洋艦に改装されていたとしたら」と言ういわゆる「if艦」を作成してみました。

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(直上の写真:「カリドク(Caradoc)」の防空巡洋艦改装後の姿(下記に記述したように、多分、改装計画のスケッチのみのいわゆる「If艦」で実在しませんのでご注意を。))

(下の写真:同級4番艦「カリドク(Caradoc)」の防空巡洋艦改装案のスケッチはみたことがあるので、手持ちのNavis製「カリプソ(Calypso)」をベースに、スケッチを参考にし、少し兵装過多のような気がしたので、兵装を軽くして製作してみました:艦橋前、1番砲座に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を設置(上段)、2番砲座、3番砲座の位置にポンポン砲を設置(中段)、4番砲座と5番砲座に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を(下段):スケッチでは2番砲座も連装高角砲に換装、となっていたと記憶します):実は、上で紹介した「キュラソー」のセミ・スクラッチ・モデル同様に、4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)のパーツを再現性の高いものに置き換えてみています。筆者の自己満足。

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この改装に一定の価値を見出した英海軍は、防空専任艦を設計します。これが次にご紹介する「ダイドー級防空巡洋艦と「ベローナ級」防空巡洋艦です。

 

ダイドー級軽巡洋艦同型艦:11隻)

ja.wikipedia.org

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(直上の写真:「ダイドー級」の概観。125mm in 1:1250 by Neptune )

 本級は「アリシューザ級」軽巡洋艦の設計をベースにした5500トン級の船体に新開発の5.25インチ両用砲を連装砲塔形式で5基搭載しています。

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本級の種兵装として採用された5.25インチ両用砲は、その名の通り対空戦闘と対艦戦闘の双方に適応することを目的に開発され、砲塔形式の異なるタイプが新型戦艦「キング・ジョージV世級」等にも従来の副砲に代わる兵装として搭載されています。しかし、本級は対空戦闘に重点を置き設計された艦であったにもかかわらず、結果的には対艦戦闘への適応から弾体にある程度の重量が必要で、このことが対空射撃時の発射速度の低下を招き、高速化の著しい航空機に対する対応力を低下させてしまうという結果を招き、必ずしも当初の目的のためには成功作であるとは言えない結果となりました。

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(直上の写真:「ダイドー級」の兵装配置の拡大。5.25インチ両用砲塔の配置に注目)

 

併せて砲塔の生産が間に合わず、第1グループとして建造された3隻は5.25インチ連装砲塔4基と4インチ単装対空砲1基の装備で就役せざるを得ませんでした、第2グループ6隻はようやく連装砲塔5基を装備して就役しました。定数の砲塔5基を装備できた艦は同級11隻中6隻にすぎず、第3グループ2隻は、空母「イラストリアス」等で実績のあった4.5インチ対空連装砲を4基搭載して完成されました。

en.wikipedia.org

 

ダイドー級4.5インチ対空砲装備型

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(「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」の概観:by Argonaut:やはり主砲がやや弱々しく見えませんか?) 

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(直上の写真は、「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」(左列)と「ダイドー級5.25インチ両用砲装備型」の対比。武装の違いだけながら、かなり細部の造作が異なることがよくわかりますね。大きくは両用砲が砲塔になっているのに対し、高角砲が防盾仕様になっているところから差異が出てくるのでしょうね)

 

結局、この両艦「カリブディス(HMS Chrybdis)」「シラ(HMS Scylla)」は、巡洋艦とは言いながら駆逐艦並みの火力で就役せねばならなかったわけです。

 

大戦では主に地中海方面運用されることが多く、11隻中4隻が戦没しています。 

 

 

ベローナ級軽巡洋艦同型艦:5隻)

ja.wikipedia.org

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(直上の写真:「ベローナ級」の概観。125mm in 1:1250 by Neptune )

本級は「ダイドー級」の改良型で、設計段階から5.25インチ両用連装砲4基として、撤去された3番砲塔(Q砲塔)跡に40mm4連装ポンポン砲を追加して近接防御砲を2基から3基に強化しています。両用砲塔をポンポン砲に置き換えたことで、艦橋構造が一層低くなり、砲塔の撤去と併せて低重心化しています。

また対空火器をレーダー・コントロールとして対空戦闘能力を強化しています。

ダイドー級」ではやや後方に傾斜していた煙突とマストが直立し、上記の上部構造の低重心化と併せて「腰高感」の否めなかった外観が改善されています。


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(直上の写真:「ベローナ級」の兵装配置の拡大 )

 

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(直上の写真:「ダイドー級」と「ベローナ級」の比較。煙突とマストの角度の違いに注目)

同級の「スパルタン」は1944年1月、アンツィオ上陸作戦支援中にドイツ空軍の放った誘導爆弾(Hs 293:いわゆる対艦ミサイルのはしり、ですね)により撃沈されました。

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ということで、ようや英海軍の第二次世界大戦期の軽巡洋艦の系譜をご紹介しました。

少々乱暴にまとめれば「質」と「量」のバランスに葛藤した開発史という見方で見ていただけると、興味深いかも、と考えます。

結局、英海軍は、第二次世界大戦終了までに、英連邦諸国海軍や亡命政権海軍への供与も含め、軽巡洋艦35隻、防空巡洋艦16隻、重巡洋艦15隻 計66隻の巡洋艦を投入し、さらに第一次世界大戦期の旧式巡洋艦26隻(C級13隻、D級8隻、E級2隻、ホーキンス級3隻)を運用し、軽巡洋艦11隻、防空巡洋艦5隻、重巡洋艦5隻、第一次世界大戦型8隻、計29隻の戦没艦を出しながら、「通商路保護のために必要な巡洋艦70隻」をなんとかクリアしました。

取り敢えず今回はここまで。

 

次回は、「第一次世界大戦期の英国海軍、軽巡洋艦」の未入手艦の何隻かが到着しています。併せてRhenania社から、スウェーデン海軍の駆逐艦も到着しています。その辺りのご紹介でもと、検討中です。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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ロイアル・ネイヴィー:少し遡って第一次世界大戦期の軽巡洋艦の系譜

 本稿では前回から「第二次世界大戦期の英海軍巡洋艦」というテーマを取り上げているのですが、第二次世界大戦期の軽巡洋艦を語るには、やはり「軽巡洋艦」の系譜を少し遡ってみておくべきかと考え、今回は「軽巡洋艦」の成り立ち、つまり「第一次世界大戦型の軽巡洋艦」を見ておこうと考えています

少し余談ですが、筆者には、サケやアユの仲間の様に「系統・系譜」という「流れ=川」を見ると遡上する習性がある様です。この「第一次世界大戦期の英海軍軽巡洋艦」というテーマも、第二次世界大戦期の英海軍巡洋艦の系譜を辿るうちに、系譜の流れを遡上して行き着いた、そんな感じです。

更に、その中で、以下のようなサブ・クラスなどが出てくると、もう涎ダラララ。コレクターの哀しい(「愉しい」というべきか)性として、小さな支流だろうが遡ります。

 

今回はそういうお話。

ですので、あれ、どこかで読んだかも、という感じになるかもしれませんが、そこはご容赦を。

 

防護巡洋艦(Protected Cruiser)から「軽巡洋艦=軽装甲巡洋艦(Light Armoured Cruiser)

これまで何度か紹介してきていますので、少しくどい感じなりますが、やや乱暴に整理すると、「軽巡洋艦」という艦種は艦船の燃料の重油化により防護巡洋艦から派生(進化?)した艦種、と言えると考えています。英海軍は世界最初の近代海軍の保有国であり、その長い歴史における海軍の主要な任務は「太陽の沈まぬ帝国」と表現される世界各地に広がった海外植民地との通商路保護でした。

その目的のために「巡洋艦」という艦種が開発されるのですが、通商路保護(あるいは時には適性国の通商路破壊)の目的のためには、保護対象である(あるいは捕捉対象である)商船を凌駕する軽快な機動性と、長い通商路に適応する航続距離が求められました。

この両立を狙い設計された巡洋艦が「防護巡洋艦」(Protected Cruiser)です。

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防護巡洋艦」は、その構造を乱暴に整理すると、舷側の石炭庫を一種の空間装甲とし、加えて船体内に機関部と弾薬庫を保護する中間装甲甲板を装備することで、艦主要部の防御力を確保した艦種です。これにより舷側に装甲帯を装備するよりも船体重量を軽減し、速力と航続力を求めた設計と言えます。

この艦種の始祖は、チリ海軍が英国に発注した「エスメラルダ」(1883)と言われ、後に日本海軍が購入し「和泉」となりました。本艦がアームストロング社エルジック造船所で建造されたところから、以降、同様の設計で建造された防護巡洋艦は、造船所の場所に関わらずエルジック・クルーザーと呼ばれるようになりました。

防護巡洋艦「和泉」

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Japanese cruiser Izumi - Wikipediaf:id:fw688i:20180917122434j:image

(「和泉=エスメラルダ」 68mm in 1;:1250 Navis:3000トン弱の船体に、主要兵装として25.4センチ単装砲2門を主砲、他に15センチ砲6門を装備し、18ノットの速力を出すことが出来ました)

 

やがて、二つの要因が、この「防護巡洋艦」に終焉と進化をもたらすことになります。  

一つは燃料の重油化。重油は燃焼効率、補給の簡便さ(「積み込み作業」(公海上での給炭時など、乗組員が真っ黒になって行った、なんてエピソードもあります)から「給油」への移行)等の点から、急速に進むのですが、一方で「防護巡洋艦」の設計では防御の基本要件の一つであった「石炭庫を利用した空間装甲」が成立しなくなるわけです。

もう一つは、中口径「速射砲」の発達。「速射砲」はその名の通り射撃速度を格段に高め、砲戦時の命中弾を格段に増やす効果があります。「日清戦争」「日露戦争」では、速射砲を搭載した巡洋艦が多用され、これらの実戦での戦訓から「防護巡洋艦」の機関や弾薬庫など主要部分を覆った防護装甲甲板を撃ち抜かれなくても、上部構造の破壊や非装甲部からの浸水などで戦闘力を失うケースが現れ、急速に「防護巡洋艦」の価値が減少してしまいます。

これらの二つの要因から、再び舷側の垂直防御装甲の必要性が見直され、既に補助的な主力戦闘艦として成立し、主力艦の一翼として大型化の一途を辿りつつあった「装甲巡洋艦=やがて巡洋戦艦」をベースとして、これらよりも軽快で長い航海に適応した「軽装甲巡洋艦軽巡洋艦」が生まれます。

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「そもそも「装甲巡洋艦」って、どうなんだっけ?」という方には、こちら。第一次世界大戦期の英独両海軍の装甲巡洋艦を対比しています。ちょっと他にも諸々記述してますが・・・。

fw688i.hatenablog.com

 

第一次大戦型英海軍軽巡洋艦 

前述のように英海軍は世界最初の近代海軍であり、その長い歴史に登場する艦級を網羅することは相当な覚悟がいるので、どこかで遡上の線引きをすることになるのですが、「軽装甲巡洋艦軽巡洋艦」については、以下の様に発展形態を辿ることができます。

タウン級軽巡洋艦(初代)

アリシューザ級軽巡洋艦(初代)

C級軽巡洋艦

ダナイー級(D級)軽巡洋艦

エメラルド級(E級)軽巡洋艦

 

 「タウン級」防護・軽巡洋艦(過渡期的な・・・)

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タウン級(初代)」巡洋艦には以下の5つのサブ・クラスがあります。

ブリストル級」防護巡洋艦

「ウェイマス級」防護巡洋艦

「チャタム級」軽巡洋艦

バーミンガム級」軽巡洋艦

「バーケンヘッド級軽巡洋艦

全ての艦名が、イギリス(あるいは英連邦諸国)の都市の名前に由来するところから「タウン級」と総称されています。

そのうち最初の二つは舷側装甲を石炭庫による空間装甲とする設計で防護巡洋艦に分類されています。

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(「タウン級」サブ・クラスの勢揃い。手前から「ブリスター級」防護巡洋艦、「ウェイマス級」防護巡洋艦、「チャタム級」軽巡洋艦、「バーミンガム級」軽巡洋艦、「バーゲンヘッド級軽巡洋艦の順) 

 

ブリストル級」防護巡洋艦同型艦:5隻)

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 (「ブリストル級」防護巡洋艦の概観:109mm in 1:1250 by Navis)

本級は外洋作戦用の巡洋艦として設計された艦級で、外洋の悪天候化でも行動ができるように4800トンの比較的大きな船体を持ち、良好な航洋性を発揮しました。

しかし、舷側には装甲帯を持たず、防御は舷側の石炭庫と船内の防護甲板による、という未だに防護巡洋艦の設計でした。

艦隊随伴護衛艦としては高い評価を得ましたが、通商路保護の観点からは25ノットの速力は十分とは言えませんでした。6インチ単装砲2基と4インチ単装砲10基を搭載していました。

 

「ウェイマス級」防護巡洋艦同型艦:4隻)

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 (直上の写真:「ウェイマス級」防護巡洋艦の概観:110mm in 1:1250 by Navis)

同級は「ブリストル級」では6インチ砲と4インチ砲の混載であった主砲を、6インチ単装砲に統一し、砲力の強化を図っています。(6インチ単装砲8基搭載)併せて、航洋性改善のために船首楼を延長するなど、船体構造を見直し、排水量が5250トンに拡大しています。

水線部の装甲帯はまだなく、防護巡洋艦の形態であったと言えるでしょう。 

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(直上の写真は、「ブリストル級」(左列)と「ウェイマス級」の細部比較:「ウェイマス級」では主砲を6インチ砲に統一し砲力を強化しています。中段の写真では航洋性改善のために延長された船首楼の形状がよくわかります)

 

「チャタム級」軽巡洋艦同型艦:6隻)

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(直上の写真:「チャタム級」軽巡洋艦の概観:112mm in 1:1250 by Navis)

本級は初めて水線部に装甲帯を装着し、前2級の「防護巡洋艦」の設計から「軽装甲巡洋艦」に基本設計を変更した艦級です。本級によって「軽巡洋艦=軽装甲巡洋艦」の設計が確立されたと言っていいでしょう。船体は前級よりさらに大型化し、船首楼のさらなる延長などにより、航洋性がさらに改善されています。艦種形状をクリッパー型に改めていますが、速力は25.5ノットに留まっています。(5400トン、6インチ単装砲8基搭載)

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(直上の写真は、「ウェイマス級」(左列)と「チャタム級」の細部比較:「チャタム級」では艦首形状をクリッパー型の改め、船首楼を艦中央部まで延長し、さらに航洋性を高めています)

 

  バーミンガム級」軽巡洋艦同型艦:4隻)

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(直上の写真:「バーミンガム級」軽巡洋艦の概観:112mm in 1:1250 by Navis)

本級は、6インチ単装砲を更に1基増設し、9基と砲力を強化しています。しかし、一方で他艦種で改善著しい高速化への対応に遅れを取った結果となり、「タウン級巡洋艦は本級を最後のサブ・クラスとして、建造が打ち切られました。(5440トン、6インチ単装砲9基搭載)

 
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(直上の写真は、「チャタム級」(左列)と「バーミンガム級」の細部比較:艦首部に単装主砲を2基装備しています(上段写真)。その他には大きな差異はなく、「チャタム級」後期型、とでもいうべき艦級です。写真では前檣方位版を搭載した姿を現しています)

 

「バーケンヘッド級軽巡洋艦同型艦:2隻) 

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(直上の写真:「バーゲンヘッド級軽巡洋艦の概観:112mm in 1:1250 by Navis)

本級はギリシア海軍が英国に発注していたものを、第一次世界大戦の勃発に伴い接収し自国艦隊に編入した艦級です。「タウン級」の他のサブ・クラスが6インチ砲装備であったのに対し、一回り小さな14センチ単装砲塔10基を搭載しています。14センチ砲は弾体重量が6インチ砲に比べ20%ほど軽く、扱いが容易で高い射撃速度を発揮することができました。一方で、当然のことながら単体あたりの破壊力が劣り、英海軍では本級のみの装備となりました(5185トン、25.5ノット)

余談ですが、14センチ砲は、日本海軍では、日本人の体格を考慮し、「伊勢級」「長門級」戦艦の副砲、軽巡洋艦主砲などに、広く採用されました。

 

(直上の写真は、「バーミンガム級」(左列)と「バーゲンヘッド級」の細部比較:今回の比較は「艦級」間の比較、というよりも、模型的な視点で見た「再現度の差異」が気になります。以前にも少し愚痴をこぼしましたが、これはコレクションをしていて、いつも頭の痛い問題なのです。まあ、当たり前のことと言ってしまえばそれまでですが、この両者はいずれもNavis社製のモデルなのですが、制作年次が違うのです。当然のことながら模型メーカーは品質改善のために新たなヴァージョンを発売し、ヴァージョン違いで精度に大きな差異が発生するわけです。コレクター的には「キリがない」ということになってしまいます。「思い切り」しか解決法はない、とはわかっているのですが、やはりここまで大きな再現性の進化を見てしまうと・・・。困ったなあ)

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タウン級」の勢揃い

(「タウン級」サブ・クラスの勢揃い。手前から「ブリスター級」防護巡洋艦、「ウェイマス級」防護巡洋艦、「チャタム級」軽巡洋艦、「バーミンガム級」軽巡洋艦、「バーゲンヘッド級軽巡洋艦の順) 

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タウン級」防護・軽巡洋艦のまとめをしておくと、「ブリストル級」防護巡洋艦:5隻が就役し戦没艦はなし、「ウェイマス級」防護巡洋艦:4隻が就役し戦没艦1隻、「チャタム級」軽巡洋艦:就役6隻、戦没艦なし、「バーミンガム級」軽巡洋艦:4隻就役、1隻戦没、「バーケンヘッド級軽巡洋艦:2隻就役、戦没艦なし、という戦歴でした。やはり高速化へ対応の遅れからでしょうか、ほとんどの艦が第一次世界大戦直後の1920年代に退役しています。

 

 「アリシューザ級」軽巡洋艦同型艦:8隻)

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(直上の写真:「アリシューザ級」軽巡洋艦の概観  105mm in 1:1250 by Navis)  

前述の「タウン級巡洋艦での課題を踏まえ、 艦隊巡洋艦の高速化を主眼に置き、速度を重視して、本級は設計されました。駆逐艦で使用されていた機関を使用し、燃料は重油のみとなっています。それまでの巡洋艦の速力が25ノット代であったのに対し、28ノットの速力を出すことができました。3750トンの船体に、6インチ砲2門、4インチ砲6門を装備し、連装魚雷発射管2基を装備していました。

高速性と水線防御装甲帯の装着の両立により、「軽装甲巡洋艦」が確立されたという点で、本級は記念すべき艦級であると言っていいでしょう。

しかし、カタログ上の性能はさておき、実際の運用場面では設計に無理があり、通常運用において性能を全面的に発揮することはできなかったようです。

 

「C級」軽巡洋艦 

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「C級」軽巡洋艦は、艦名が「C」で始まる軽巡洋艦群で、サブクラスが以下の7クラスあり、北海での行動を想定して設計されました。

「カロライン級」Caroline class

「カライアビ級」Calliope class

「カンブリアン級」Cambrian class

「セントー級」Centaur class

「カレドン級」Caledon class

「シアリーズ級」Ceres class

「カーライル級」Carlisle class

 

 

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(直上の写真:「アリシューザ級」と「C級」の形状比較:大型化されていることがわかります)

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(直上の写真は、「C級」軽巡洋艦の7つのサブクラスの一覧。右から、「カロライン級」「カライアビ級」「カンブリアン級」「セントー級」「カレドン級」「シアリーズ級」「カーライル級」の順)

 

 「カロライン級」軽巡洋艦同型艦:6隻)

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(直上の写真:「カロライン級」軽巡洋艦の概観 108mm in 1:1250 by Navis) 

「アリシューザ級」の拡大改良型で、船体を大型化することにより、前級で課題のあった復原性、高速での航洋性を改善しています。大型化した船体により武装を強化しています(「6インチ砲2門:艦尾部に搭載、4インチ砲8門、連装魚雷発射管2基 4219トン 28.5ノット 同型艦6隻)。

 

 

「カライアビ級」軽巡洋艦同型艦:2隻)

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(直上の写真:「カライアビ級」軽巡洋艦の概観 108mm in 1:1250 by Navis) 

「カロライン級」の機関を改良した艦級で、缶数の現象から煙突が2本に減りました。29ノットその速度を発揮し、武装は「カロライン級」を継承し、6インチ砲と4インチ砲を混載していましたが、前級も含め、後に6インチ単装砲に主砲口径を統一し単装砲4基搭載としています。(4228トン。同型艦2隻)

 

「カンブリアン級」軽巡洋艦同型艦:4隻)

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(直上の写真:「カンブリアン級」軽巡洋艦の概観: 艦首部の主砲を4インチ砲から6インチ砲に換装した後の姿 108mm in 1:1250 by Navis) 

1914-1915年次に建造された「カライアビ級」のほぼ同型艦です。前級「カライアビ級」では実験的にセミ・ギアードタービンが搭載されましたが、本級では従来の直結タービン搭載とし、速力が28ノットにやや低下しています。建造後、武装の強化などが行われています。(4320トン。28ノット。同型艦4隻)

 

「セントー級」軽巡洋艦同型艦:2隻)

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(直上の写真:「セントー級」軽巡洋艦の概観 108mm in 1:1250 : 本艦級は既成の模型がありません。そこでNavis社の「カレドン級」をベースに艦首形状を修正しています。サブスクラッチで再現を目指したつもりだったのですが、実はこの艦級は、水中魚雷発射管を艦内に装備していた事に、作業後、気がつきました。ベースとして使用した「カレドン級」では魚雷発射管が水上発射管係式になっています。ちょっと失敗かも

「カンブリアン級」とほぼ同型の船体を持ち、4インチ砲との混載をやめ、武装を6インチ砲5門に統一しています。トルコ海軍向けに製造されたセミ・ギアードタービンを、工期退縮を目的に採用し、速力が29ノットに向上しています。設計当初から三脚式前檣を採用し、大型方位版照準装置を搭載し射撃指揮能力を向上しています。(4165トン。29ノット。同型艦2隻)

 

「カレドン級」軽巡洋艦同型艦:4隻)

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(直上の写真:「カレドン級」軽巡洋艦の概観 109mm in 1:1250 by Navis) 

第一次世界大戦勃発に対応し急造された艦級です。「セントー級」の武装を継承し、6インチ砲5門を搭載し、魚雷発射管をそれまでの水中発射管から甲板上に上げ、連装魚雷発射管4基と強化しています。艦首形状を、直線的な形状に改めています。4120トン。29ノット。同型艦4隻。

第一次世界大戦で失われた「カサンドラ」を除き、第二次世界大戦に参加しています。

 

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(直上の写真:「セントー級」(上段)と「カレドン級」軽巡洋艦の艦首形状の比較。「カレドン級」から艦首形状が変わりました)

 

「カレドン級」防空巡洋艦への改装

前述のように「カレドン級」軽巡洋艦第二次世界大戦にも船団護衛等の任務で運用されました。中でもネームシップの「カレドン」は艦容が全く変わってしまうほどの改装を受けるのですが、残念ながらモデルが筆者の知る限りありません。(どこかで製作してみようかな。ちょっと改装範囲が大きいので、しっかり準備が必要です)

同級の他の艦はあまり改装を受けず、原型に近い状態で任務についたのですが、「もし、防空巡洋艦に改装されていたとしたら」と言ういわゆる「if艦」を作成してみました。

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(直上の写真:「カリドク(Caradoc)」の防空巡洋艦改装後の姿(「If艦」で実在しませんのでご注意を。))

(下の写真:同級4番艦「カリドク(Caradoc)」の防空巡洋艦改装案のスケッチはみたことがあるので、それを参考にし、少し兵装過多のような気がしたので、スケッチよりは兵装を軽くして製作してみました:艦橋前、1番砲座に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を設置(上段)、2番砲座、3番砲座のいちにポンポン砲を設置(中段)、4番砲座と5番砲座に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を(下段):スケッチでは2番砲座も連装高角砲に換装、となっていたと記憶します)
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 「シアリーズ級」軽巡洋艦(同型艦:5隻)

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(直上の写真:「シアリーズ級」軽巡洋艦の概観 109mm in 1:1250 by Navis) 

「カレドン級」の改良型。搭載砲の数は変わりませんが、それまで艦橋を挟んで前後に配置されていた6インチ砲を、艦橋前に背負式に搭載する形式に改め、艦首方向の砲力を強化しています。(4190トン。29ノット・同型艦5隻)

 

防空巡洋艦への改装

同級のうち3隻が、第二次世界大戦前には、早くも兵装を高角砲に換装し、防空巡洋艦として参加しています。主砲を全て高角砲に換装し、艦隊防空を担わせる専任艦種を整備する、という思想に、第二次世界大戦まえに発想が至っていた、というのはある種驚きですね。

同級で防空巡洋艦への改装を受けた3隻のうち「コベントリー(Coventry)」と「カーリュー(Curlew)」は4インチ単装高角砲(QF 4 inch Mk V gun)10基をその主兵装として改装されました。

en.wikipedia.org

モデルはArgonaut製のものが市販されていますが未入手です。

キュラソー(Curacoa)」は4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)4基を主兵装として改装されました。

en.wikipedia.org

今回はこの「キュラソー」をNavis製のモデルをベースにセミ・スクラッチしたものをご紹介。

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(上下の写真は、防空巡洋艦に改装後の「キュラソー(Curacoa)」:同級は3隻が防空巡洋艦に改装されていますが、「キュラソー」が改装時期が最も遅く、他の2艦が4インチ単装高角砲(QF 4 inch Mk V gun)10基を搭載していたのに対し、同艦のみ4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を4基搭載しています。1番砲、3番砲、4番砲、5番砲が連装高角砲に換装されました。2番砲座にはポンポン砲が設置されました)

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防空巡洋艦として就役した3隻はいずれも大戦中に失われています。

 

「カーライル級」軽巡洋艦同型艦:5隻)

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(直上の写真:「カーライル級」軽巡洋艦の概観 109mm in 1:1250 :この艦級は、Navisからは模型が出ていません。そこで入手できたCopy製のモデルをディテイル・アップする事にしました。武装や艦橋の上部構造をNavisの他の模型や他のパーツのストックから転用して、仕上げてみました) 

「シアリーズ級」の改良型。前級で課題であった艦首部の搭載砲への飛沫対策として「トローラー」船首に形状を改めています。(4290トン・29ノット。同型艦5隻)

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(直上の写真:「シアリーズ級」(上段)と「カーライル級」軽巡洋艦の艦首形状の比較。課題だった艦首主砲への飛沫対策が「トローラー・バウ」形式と呼ばれる艦首形状の変更となって現れました。以後、この艦首形状は英海軍巡洋艦の標準仕様となってゆきます)

 

防空巡洋艦への改装

第二次世界大戦には前級「シアリーズ級」同様、改装が間に合わなかった「ケープタウン」をのぞき、主砲を高角砲に換装し防空巡洋艦として参加しています。「シアリーズ級」で紹介した「キュラソー」とほぼ同様の、つまり防空巡洋艦としては最も徹底的に改装されたわけですが、防空巡洋艦に改装された4隻のうち3隻が戦没しています。(モデルはAugonaut製のものが出ていますが、未入手です。Augonautは、最近希少で高い!)

 

 「D級」軽巡洋艦同型艦:8隻・4隻が建造中止)

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(直上の写真:「D級」軽巡洋艦の概観 117mm in 1:1250 by Navis) 

「C級」軽巡洋艦(後期型:「カレドン級」以降の3サブクラス)をタイプシップとして、その拡大強化版。6インチ主砲を1門増やし、雷装も3連装魚雷発射管4基と強化しています。(4970トン。29ノット。同型艦8隻)

 

「D級」軽巡洋艦第二次世界大戦中、英国に亡命したポーランド傍系政府の指揮下にある自由ポーランド海軍に貸与されています。

「ドラゴン級」軽巡洋艦(1943- :同型艦2隻・旧英「ダナイー級」軽巡洋艦f:id:fw688i:20201011135045j:image

(直上の写真:自由ポーランド海軍に貸与された「ドラゴン級」軽巡洋艦の概観。117mm in 1:1250 by B-Plan:)

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 1943年、イギリスは自由ポーランド海軍からの要請を受け「ダナイー級」軽巡洋艦を2隻貸与します。同艦級は自由ポーランド海軍最大の艦となりました。

貸与された2隻はそれぞれ「ドラゴン」(旧名「ドラゴン」)、「コンラッド」(旧名「ダナイー」)と命名され、雷装を全廃し、対空兵装を強化し、船団護衛等の任務への適性を高める改装を受けました。

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(直上の写真:自由ポーランド海軍に貸与された「ドラゴン級」軽巡洋艦の強化された対空装備)

「ドラゴン」は1944年7月に ドイツ海軍の小型潜水艇の雷撃で大破。その後、ノルマンディー上陸作戦で防波堤として自沈しました。

コンラッド」は大戦を生き抜き、1947年にイギリスに返還されています。

 

「E級」軽巡洋艦同型艦:2隻)

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(直上の写真:「E級」軽巡洋艦の概観 138mm in 1:1250 by  Argonaut) 

 「E級」軽巡洋艦は、敵性巡洋艦の排除を目的として、速力を重視して設計されました。大きな機関を搭載するため、艦型は大型化しています。兵装は「D級」よりも6インチ砲を1門増やし、さらに対空兵装を格段に強化しています。(7550トン。33ノット。同型艦2隻)

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(直上の写真は、「E級」軽巡洋艦の主砲配置を表したもの)

『E級」軽巡洋艦は、「エメラルド」と「エンタープライズ」の2隻が建造されましたが、主砲の装備形態が「エメラルド」は全て単装砲架で搭載していますが、「エメラルド」では艦首部に背負式に搭載されている単装砲架を、「エンタープライズ」は連装砲塔で搭載しています。「エンタープライズ」は現在、手元のモデルを整備中ですので、今回は「エメラルド」のみご覧いただきます。

「手元のモデルを調整中・・・」:この件、後日談的に追記すれば、結局、この目論見、あまりにも仕上がりに差が出るので、この方式でのコレクションへの追加は断念しました。質の良い艦船の調達には、模型の世界でも「お金がかかる」、そういうことですね。Argonautの精度は高い。しかし、本稿のどこかで紹介した気もしますが、Argonautのオーナー氏が他界され、以降、Argonautレーベルのモデルが新たに流通に乗ることはなさそうですので、以後、当面。Argonaut製品の調達は、現在の中古市場に頼らざるをえず、各区の高騰が始まっているとか。やれやれ)

 

ということで、突然、割り込んだ形の「第一次世界大戦期の英国巡洋艦」。これで、「第二次世界大戦期の英国軽巡洋艦」紹介への地ならしはできたかな?

取り敢えず今回はここまで。

 

次回は、この流れで「第二次世界大戦期の英国海軍、軽巡洋艦」ですね。ほぼ確定、かな?

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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ロイアル・ネイヴィー:第二次世界大戦期の巡洋艦・重巡洋艦

本稿の読者ならばご承知のように、このところ筆者の関心は「スウェーデン海軍」の艦艇、と言う非常に狭域にのめり込んでいます。

時折、本稿でもご紹介していますが、収集の過程を通じ、製作者とのコネクションなども生まれ、艦艇のコレクション以外の部分でも、興味が尽きない大変幸せな時間を、その部分では過ごさせていただいています。

というような次第で「スウェーデン海軍」艦艇のモデルのコレクションはかなり充実してきているのですが、体系的にご紹介するにはまだ少し時間がかかりそうです。

そこで今回は少し「本流」的な流れに戻して、積み残してきた「第二次世界大戦期のイギリス海軍巡洋艦」のご紹介を。多分、重巡洋艦軽巡洋艦の2回に分けて、と言うお話です。

  

英海軍の巡洋艦

本稿では、下記のリンクの回で英海軍の巡洋艦の開発の系譜について、触れています。

少し簡単に(乱暴に)おさらいしておくと、巡洋艦と言う艦種は、そもそも列強の海外植民地との通商路を保護、あるいは襲撃するために開発された艦種です。長い後続力と高い機動性・戦闘力を、その設計の根幹に据えられている艦種です。

下記のリンクでも触れていますが、英海軍はいわゆる近代海軍の本家であり、その中で巡洋艦という艦種は、海外植民地を多く保有する英国にとっては、まさに中核を構成する艦種と言っていいと考えています。

巡洋艦」の発達に目を向けると、石炭をその機関の燃料とした時代には、舷側の石炭庫を自艦の防御に利用し、装甲を軽減し軽快性と航続力を確保した「防護巡洋艦」が一世を風靡しますが、燃料が効率の良い重油に移行するに従い、石炭庫に代わり軽い舷側装甲を持った「軽装甲巡洋艦軽巡洋艦」へと発展します。(既に主力艦の補助的な役割の艦種として存在した「装甲巡洋艦巡洋戦艦」に対比した艦種呼称、と言う対比の上での理解がわかりやすいかも)

筆者のコレクションでは長い歴史を持つイギリス海軍巡洋艦を網羅するところまでは及んでいませんが、せめて「軽巡洋艦」以降にトライしよう、と言う試みをある程度まとめた回が、下記のリンクです。

fw688i.hatenablog.com

 

英国海軍が第二次世界大戦期に運用した巡洋艦の艦級は以下のとおりです。

重巡洋艦

ホーキンス級

カウンティ級(ケント級、ロンドン級、ノーフォク級の3つのサブ・クラスがあります)

ヨーク級 

 

軽巡洋艦(下記は若干、筆者独自のグルーピングですので、ご注意を)

条約型軽巡洋艦第一世代:リアンダー級、パース級、アリシューザ級

条約型軽巡洋艦第二世代:タウン級サウザンプトン級、グロスター級、エディンバラ級の3つのサブ・クラスがあります)、クラウン・コロニー級、スイフトシュア級

防空巡洋艦ダイドー級、ベローナ級

これらの艦級に加えて、多くの第一次世界大戦型の軽巡洋艦の多くが主砲を対空砲に換装し、防空巡洋艦として、船団護衛等、巡洋艦本来の通商路保護の任務で運用されました。

 

今回は、まず上記のうち、重巡洋艦をご紹介。

 

ホーキンス級重巡洋艦(1919年より就役:同型艦:5隻)

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長々と前置を書きましたが、実はこの「ホーキンス級重巡洋艦」は、本級以降でご紹介する「重巡洋艦:いわゆる条約型重巡洋艦」の艦級とは一線を画し、「軽装甲巡洋艦軽巡洋艦」の強化型、と言う系譜に続していると言えます。

開発の背景には、第一次世界大戦期に列強が整備した(特に英独両海軍)新型の強力な「軽装甲巡洋艦軽巡洋艦」への対応があり、具体策として当時の「軽装甲巡洋艦」の標準的主砲であった6インチ砲を圧倒できる7.5インチ単装砲を7基搭載した大型「軽装甲巡洋艦」として建造されました。

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(直上の写真は、「ホーキンス級」の概観。147mm in 1:1250 by Argonaut:写真は就役時ではなく航空艤装等を改善したのちの第二次世界大戦期の姿かと(ちょっと確信はありませんが) )

 

後にロンドン条約により「重巡洋艦:Category A」「軽巡洋艦:Category B」の定義が設定され、本級は「重巡洋艦」に分類されますが、保有枠制限の関係で、順次武装等を変更し、艦種変更(練習艦等)、あるいは1936年までに退役する予定でした。しかしその後の、条約制限の撤廃、周辺事情の緊張から再び巡洋艦、あるいは大きな艦型を活かした水上機母艦として再就役し、主として船団護衛等の任務に就ています。

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(直上の写真:「ホーキンス級」のディテイルのアップ:(上段・中段)7.5インチ主砲の配置。(下段)近代化改装後、後甲板部の3基の主砲のうち2基が撤去され、航空艤装に置き換わっています)

近代化改装後のエフィンガムは6インチ単装砲9基を搭載しています。

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(直上の写真は、「ホーキンス級」の「エフィンガム」の近代化改装後の概観。147mm in 1:1250 by Argonaut:下の写真と合わせて、7.5インチ主砲は全て6インチ砲に置き換えられ、航空艤装や対空砲が強化されています。機関の換装により煙突の数も1本に)

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第二次世界大戦には1922年に座礁で失われた1隻を除き5隻中4隻が参加し、座礁により1隻が失われましたが、戦没艦はありませんでした。

 

カウンティ級重巡洋艦

ja.wikipedia.org

英海軍の建造した「条約型重巡洋艦」です。

以下の紹介する「ケント級」「ロンドン級」「ノーフォーク級」の3つのサブ・クラスに分類されます。3つのサブ・クラスの艦名が全て英国の行政区画名(州:カウンティ)に由来するところから「カウンティ級」と総称されます。

 

ケント級重巡洋艦同型艦:7隻)

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(直上の写真は、「ケント級」の概観。152mm in 1:1250 by Neptune )

 

「ケント級」重巡洋艦は、英海軍が建造した条約型重巡洋艦カウンティ級の第一グループで、条約制限内での建造の条件を満たし、かつ英海軍の巡洋艦本来の通商路保護の主要任務に就く為、防御と速力には目を瞑り火力と航続力に重点を置いた設計としています。10000トンをやや切る船体に8インチ砲8門を装備し、31.5ノットを発揮しました。

日本海軍の「高雄級」の主砲と同様に、本級でも主砲の仰角をあげ高角砲との兼用についての試みが行われましたが、航空機の高速化が進み射撃速度が追いつかなくなり実用的ではありませんでした。

魚雷は53.3cm魚雷を上甲板に搭載した発射管から射出する形式でしたが、就役当時の魚雷には投射の衝撃に対する耐性がなく、新型魚雷の開発まで、実装は待たねばなりませんでした。

7隻が建造され、そのうち「オーストラリア」と「キャンベラ」の2隻が、オーストラリア海軍に供与されました。

 

1942年4月「コーンウォール」がセイロン沖で日本海軍の空母機動部隊の空襲で、「キャンベラ」は1942年8月の第一次ソロモン海戦日本海軍の巡洋艦部隊と交戦し失われました。

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ロンドン級重巡洋艦同型艦:4隻)

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(直上の写真は、「ロンドン級」の概観。152mm in 1:1250 by Neptune )

 

 

同級は英海軍の条約型重巡洋艦カウンティ級」の第2グループで、4隻が建造されました。基本的な設計は第1グループの「ケント級」に準じていますが、速力向上のため舷側のバルジを廃止したため、防御力が低下しています。(速力は 31.5ノットから32.5ノットに向上)

その他、兵装等は基本的に前級を継承しています。

外見的には搭載機の格納庫が小型化しています。

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(直上の写真は、「ケント級」と「ロンドン級」の中央部の比較。航空艤装が変更され、格納庫が小型化しています)

 

第二次世界大戦では戦没艦はありませんでした。

 

 ノーフォーク重巡洋艦同型艦:2隻)

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(直上の写真は、「ノーフォーク級」の概観。152mm in 1:1250 by Neptune )

 

同級は「カウンティ級重巡洋艦の第3グループで、2隻が建造されました。前級まで課題のあった弾薬装填装置の軽量化改良が同級の目玉でしたが、実際には軽量化にはいたりませんでした。しかし、弾薬庫防御等の付随的な改善には成功しています。

外見的には前級「ロンドン級」と大差はありませんが、艦橋の構造が変更されています。

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(直上の写真は、「ロンドン級」と「ノーフォーク級」の艦橋の比較)

 

同級の「ドーセットシャー」が、1942年4月、日本海軍の空母機動部隊のインド洋作戦で撃沈されています。

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ヨーク級重巡洋艦同型艦:2隻)

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York-class cruiser - Wikipedia

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(直上の写真は、「ヨーク級」の2番艦、重巡洋艦エクセター」の概観。138mm in 1:1250 by Neptune) 

 

ヨーク級」は、いわゆる条約型巡洋艦の一連のシリーズに属し、英国の通商航路保護の要求によって隻数を揃えるために、前級「カウンティ級」よりも装甲が強化された代わりに、連装砲塔を1基減じて、排水量を抑え、建造費用を安価にした設計でした。

結果的にはサイズダウンにチャレンジした割には建造コストの削減効果は低く、以降、条約型の「軽巡洋艦」に建造の主力が移行してゆきます。結果、英海軍が建造した最後の「重巡洋艦」となりました。

「ヨーク」と「エクセター」の2隻が建造されましたが、細部には差異が見られ、準同型艦と見るべきかもしれません、外観的には大きく艦橋構造が異なっています。

同級は8300トン級の船体に8インチ砲6門を搭載し、53.3cm3連装魚雷発射管を2基、装備していました。速力は32ノットを発揮。

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(直上の写真は、「エクセター」の主砲配置と航空艤装。魚雷発射管の搭載位置:下段写真)

 

エクセター」は、第二次世界大戦開戦後、大西洋で大暴れしたドイツが放った通商破壊艦(ポケット戦艦)「グラーフ・シュペー」の追跡戦で活躍し、「グラーフ・シュペー」の11インチ砲によって大損害を受けながらも、ラプラタ河口で自沈に追い込んだことで有名になりました。

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(直上の写真はドイツ海軍装甲艦(ポケット戦艦)「アドミラル・グラーフ・シュペー」の概観:148mm in 1:1250 by Hansa: 下の写真では、その細部を拡大。「装甲艦」という実態は通商破壊専任の巡洋艦ながら「ポケット戦艦」の二つ名の由来となった11インチ主砲と重厚な装甲司令塔(上段・下段)、6インチ副砲の配置など(中段)がよくわかります)

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ベルサイユ条約で課せられた大型艦の代艦建造の際の「排水量上限1万トン、主砲の上限11インチ」(これは、第一次世界大戦前の前弩級戦艦以上の戦力をドイツ海軍に持たせない、という意図)を逆手とり、革新的な通商破壊艦として建造された「ドイッチュラント級」装甲艦3隻の一隻として建造されました。3隻の中では装甲司令塔(風)の艦橋部を持ち、最も重厚な外観を示しています。

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航続力に優れるディーゼル機関を搭載し、その発揮する26ノットの速力は、英海軍の戦艦では追いつけず(「フッド」「レナウン級」の巡洋戦艦のみ、これを補足することができました)、活動阻止にあたることが想定される英巡洋艦に対しては11インチ主砲で圧倒する、という非常に厄介な存在でした。

第二次世界大戦初頭の1939年8月の出撃以降、12月までの4ヶ月間で南大西洋、インド洋で50000トンほどの戦果を上げ、次の作戦領域と定めたラプラタ河方面に向かいました。英海軍はこの阻止のために5つの部隊を派遣し、12月にその一つハーウッド准将の率いるG部隊と遭遇し、海戦に入ります。

ラプラタ沖海戦では、英海軍G部隊の重巡洋艦エクセター」と「リアンダー級」軽巡洋艦の「エイジャックス」「アキリーズ」が「グラーフ・シュペー」の追撃戦に参加します。約1時間の砲撃戦の結果「エクセター」は大破、「エイジャックス」も主砲塔2基が使用不能になるなど、英艦隊は大きな損害を受けますが、「グラーフ・シュペー」も被弾し中立港であるモンテビデオに逃げ込みます。その後、中立国ウルグアイと損傷修理等の交渉を行いますが、英国の外交の効果で、これは叶わず、併せて英艦隊終結等の欺瞞情報により、「グラーフ・シュペー」はラプラタ河口で自沈しました。

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(直上の写真はドイツ海軍装甲艦(ポケット戦艦)「アドミラル・グラーフ・シュペー」(下段)とその阻止に当たった英海軍G部隊の対比(上段:「リアンダー級」軽巡洋艦(手前:「エイジャックス」と「アキリーズ」はこのクラスでした)と「エクセター」)。下の写真では、「エクセター」と「グラーフ・シュペー」の大きさ比較:「グラーフ・シュペー」の主砲塔の大きさが目立ちます) 

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エクセター」はその後、東洋艦隊所属となり、ABDA艦隊の一員としてジャワ島の攻防をめぐり発生したスラバヤ沖海戦に参加し、1942年3月、日本艦隊との戦闘で失われました。

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上記の「エクセター」の喪失に先立ち、「ヨーク」は地中海で作戦活動を行い、1941年5月、クレタ島攻防戦で損傷し行動不能となり放棄されました。 

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ということで、今回は、ここまで。次回は今回に引き続き「軽巡洋艦」の系譜をご紹介する予定です。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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Neptune版:第二次世界大戦下のドイツ海軍駆逐艦、水雷艇(再録:追加コラムあり)

今回は、つい最近アップしたばかりの「第二次世界大戦期のドイツ海軍駆逐艦水雷艇」の再録です。

今回はそういうお話。

ですので「本文はもういいや」という方、確かに修正箇所はそれほどたくさんはないので、この直下の「言い訳」のセクションと、本文は写真だけパラパラっと見て、でも一番最後に、多分、「ちょっと面白い」と思ってもらえるんじゃないかな、と思うRhenania社オーナー氏との対話の紹介があるので、そこだけは読んでいってもらえると嬉しいなあ(と、これは筆者の「心の声」です)。

 

脱稿から間もない「回」にも関わらず「再録」の言い訳と、艦船模型のコレクションについて

基本的に筆者のコレクションでは、主としてディテイルの確かさから、Neptune社製のモデルを中心に(第二次世界大戦以前の艦船はNavisのブランド名で展開されています)、これを補完する狙いで同様に再現精度の高い(と筆者が勝手に評価している) Argonaut社、Hai社、Mercator社を中心にご紹介してきています。最近のSwedenコレクションではこれに新たに(以前から実は時々顔を出してはいたのですが)Rhenania社製のモデルもこのラインに加わってきています。

更に、主としてこれに筆者のお財布事情が加わり、かつIf艦、未成艦のラインナップの豊富さと、筆者による加工のしやすさなどの観点から、Shapewaysなどで入手可能な3D printing modelがかなりウエイトを高めてきています。

 

そのような一般的な背景の中で、実は第二次世界大戦期のドイツ艦艇は、種々の事情から(価格も含めたモデルの入手しやすさ、が一番大きいかな)、Hansa社のモデルで統一されて来ています。(Hansa社製のモデルはebayで比較的安価で出品されていて、特にドイツ海軍艦艇のコレクションに手厚いラインナップを誇っています)

という事情で、コレクションのドイツ海軍艦艇にはNeptune社製のモデルがほとんどなく、これまであまり気にしてこなかったのですが、実は本稿で表題の「第二次世界大戦期のドイツ海軍駆逐艦水雷艇」を脱稿した際に、唯一コレクションに入っていたNetune社製の「Z17  級」のモデルをHansa社製のモデルと並べてしまったのでした。やはり細部の再現性、それと、実は全体の「大柄さ」の方が気になってしまったのでした。

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(上段:Hansa社製「Z17級」駆逐艦と下段:Neptune社製「Z17級」駆逐艦。「気にしない」はずが、気になると、何とも・・・。困ったことです)

ということで、急遽、Neptune社製のモデルを調達、ほぼその入れ替えが完了しましたので、模型の写真を入れ替えて、再録、とさせていただきます。(本文は前回投稿のものを使用してゆきますが、若干、細部に手を入れてゆきます)

 

ドイツ海軍の駆逐艦水雷艇

第一次世界大戦敗戦後、ドイツはベルサイユ条約により海軍軍備に大きな制限を受けます。具体的には、駆逐艦は800トン以下に排水量制限が設けられ予備艦4隻を含め16隻、水雷艇は200トン以下の排水量のものを、やはり予備艦4隻を含め16隻という保有制限でした。加えて艦齢15年を越える場合にのみ代艦建造が認められていました。

こうした厳しい制限下で、ドイツ海軍は、特に大型戦闘艦の分野ではこの制約を逆手に取ったような「ポケット戦艦」などの新機軸の新造艦を建造し始めました。

 

ヴェルサイユ条約の制約下での新造駆逐艦

1923年の建艦計画から、旧式駆逐艦の代艦の建造計画が始動し始めます。この流れは1924年度の建艦計画でも継続し、併せて12隻の駆逐艦の代艦建造が始められました。

 

1923年型水雷艇同型艦6隻)1924年水雷艇同型艦6隻)

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(「1923年級」水雷艇の概観:73mm in 1:1250 by Neptune)  

両級合わせて12隻が1926年から1929年にかけて就役しました。

就役当初は、前出のベルサイユ条約の制約から駆逐艦に分類されていました。

公称800トン(実際には900トンを少し超えていました)の制限いっぱいの船体を持ち、4インチ砲3基と500mm三連装発射管2基を搭載し、33ノットの速力を発揮することができました。このスペックは例えば本稿前回でご紹介したスウェーデン海軍の「エレンスコルド級駆逐艦(1927年就役)にほぼ準じるもので、同じクラスの艦級と比較して見劣りするものでありませんでしたが、列強の駆逐艦の標準は1500トンクラスに移行しており、これらと比較すると「格下」の感は否めませんでした。「1924年型」ではこれらに対するせめてもの対策として、主砲口径を4インチから5インチに拡大する設計が盛り込まれたようですが、連合国の反対にあって4インチ砲の実装となりました。

 

ナチス政権の台頭後、1935年にドイツは再軍備を宣言、同年には英独海軍協定が結ばれ、実質上、ベルサイユ条約の制限下から解き放たれました。この結果建造されることとなった2000トン級の船体を持つ「1934年級」駆逐艦(後述)の誕生とともに、同級は水雷艇に艦種変更されました。同時期に搭載魚雷の口径を21インチに拡大し、対空兵装の増設を行うなど、兵装強化が実行されました。

第二次世界大戦期には、同級に続けて建造された後述する新型「水雷艇」の艦級(800トン級、1200トン級)とともに、護衛任務、機雷戦任務等に、使い勝手の良い汎用艦として活躍しました。

第二次世界大戦前に僚艦との衝突事故で沈没した1隻を除き、残り11隻全てが第二次世界大戦中に失われました。

 

ドイツ再軍備宣言後、英独海軍協定後の駆逐艦

「Z1級:1934級」駆逐艦同型艦4隻)

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(「Z1級」駆逐艦の概観:95mm in 1:1250 by Neptune) 

同級は前述のドイツ最軍備宣言、英独海軍協定の締結を経て、それまでのベルサイユ条約の制限を脱した艦級として新たに建造されました。

それまでドイツの駆逐艦は800トンの排水量制限を受けていましたが、同級は同時期にフランスやポーランドが整備中であった大型駆逐艦に対抗するため、いきなり2200トン級の大きな船体を与えられています。

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搭載兵装は、5インチ単装砲5基と21インチ4連装魚雷発射管2基と標準的で、36ノットの速力を有していました。しかし搭載した新型の高圧ボイラー等の機関の整備が難しいなど、課題が見つかったため、4隻で建造が打ち切られ、改良型の後述の「Z5級」に建造は移行しました。

4隻中3隻が第二次世界大戦で失われ、生き残った一隻は英国に賠償艦として移譲されました。

 

「Z5級:1934A級」駆逐艦同型艦12隻)

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(「Z5級」駆逐艦の概観:96mm in 1:1250 by Neptune) 

 前出の「Z1級」駆逐艦の改良型で、12隻が建造されました。

前級で課題のあった機関に改良が加えられ、併せて凌波性を改善するために船首楼を若干高くするなど設計に手が入れられ、結果やや船体が大きくなり、速力も38ノットに向上しています。一方兵装とその配置はほぼ前級を踏襲しています。

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(「Z1級」(左)と「Z5級」の比較。船首楼の高さ、ほとんどこれではわかりませんね(笑))

第二次世界大戦では12隻中7隻が失われ、残りの5隻は賠償艦として連合国に引き渡されました。

 

「Z 17級:1936級」駆逐艦同型艦6隻) 

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(「Z17級」駆逐艦の概観:97mm in 1:1250 by Neptune) 

 同級は前級「Z5級」の改良型で、若干船体が大きくなっています。外見的には煙突が低くなる、後檣の位置の変更、艦首形状の変更などが見られます。兵装は前級に準じています。

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(「Z5級」と「Z 17級」(右列)の比較。船首楼の形状、煙突の高さ、後檣の位置、など相違点が見受けられます)

6隻が建造され、5隻が1940年4月の第二次ナルヴィク海戦で失われました。生き残った一隻は第二次世界大戦を戦い抜き、戦後、賠償艦としてソ連に引き渡されました。

 

 

さて、ドイツ駆逐艦を語る際に、やはりナルヴィク攻略戦での活躍と悲劇を紹介しないわけにはいかないかな、と。 

ナルヴィク攻略戦 :ドイツ駆逐艦の墓場

1940年4月、ドイツはノルウェー侵攻を開始します。(ウェーゼル演習作戦)

ノルウェーの北極圏に位置するナルヴィクはオーフォートフィヨルドの最深部に位置し、北大西洋海流に影響されて冬季でも利用可能な不凍港でした。ドイツは鉄鉱石の多くをスウェーデンから供給されていましたが、そのボスニア海に面した積み出し港が冬季には凍結するため、ナルヴィクはその搬出ルートとして大変重要でした。

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侵攻戦の一環として、ドイツはエデュアルト・ディートルの指揮する山岳猟兵連隊を基幹とする精鋭部隊約2000名を、当時22隻しか保有していなかった駆逐艦のうち10隻を割いてナルヴィクに直接送り込みました。

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この際に陸兵輸送に使用された駆逐艦は、Z1級1隻、Z5級4隻、Z17級5隻でした。

当時ナルヴィク港にはノルウェー海軍の主力ともいうべきノルゲ級海防戦艦2隻が守備についていて、侵入するドイツ駆逐艦に対し砲撃を加えましたが、両艦共にドイツ駆逐艦の魚雷で撃沈され、ドイツ軍山岳猟兵連隊は無事に上陸を果たし、ナルヴィクを無血占領しました。

ノルゲ級海防戦艦

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ノルウェー海軍「ノルゲ級」海防戦艦の概観:75mm in 1:1250 by C.O.B. Constructs and Miniature: 3D printing modelです)  

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 3500トン級の船体に21cm単装砲2基と15cm単装砲6基を搭載するノルウェー海軍の保有する最大最強の海防戦艦です。ああ、こんなところで「脇道探索」の海防戦艦コレクションが役に立つとは・・・。

 

第一次ナルヴィク海戦

陸兵を下ろしたドイツ駆逐艦部隊は、帰途につくために燃料補給を行いますが、給油船の手配に齟齬があり、予定より時間を要してしまいました。

その間に、イギリス海軍のH級駆逐艦5隻からなる駆逐艦部隊がオーフォートフィヨルドに侵入し、ドイツ艦隊を奇襲しました。ドイツ駆逐艦もこれに反撃し、双方2隻づつの駆逐艦を失いました。規模としては小さな戦闘でしたが、双方の指揮官が戦死するなど、狭い海面での激戦だったと言えるでしょう(第一次ナルヴィク海戦:1940年4月9日)。

この戦闘の結果、ドイツ駆逐艦部隊は2隻の損失の他4隻が損傷を受け、損傷のない4隻は給油を受けていない状況で帰途につける状態ではありませんでした。

「H級」駆逐艦

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(「H級」駆逐艦とほぼ同等の外観を持つ「G級」駆逐艦の概観:79mm in 1:1250 by Neptune: そして直下の写真は、「G級」と「I級」駆逐艦の艦橋のアップ。「H級」の艦橋は下の「I級」の方が近い形状をしているかもしれません。こうして整理するまで、実は「H級」のモデルが手元にないことに気がつきませんでした。やれやれ) 

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第二次ナルヴィク海戦

4月13日、戦艦「ウォースパイト」と「トライバル級駆逐艦を中心に9隻の駆逐艦で構成された英艦隊がオーフォートフィヨルドに再び侵入し、ドイツ駆逐艦部隊と交戦しました。

戦艦「ウォースパイト」

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(「クイーン・エリザベス級」戦艦の1942近代化改装後: 32,930t, 23knot, 15in *2*4, 5 ships,154mm in 1:1250: 戦艦「ウォースパイト」は第一次世界大戦中に建造された「クイーン・エリザベス」級の一隻で、数次改装を経たとは言え、第二次世界大戦期にはすでにロートル艦と言っても良い艦齢でした。しかし大戦中には八面六臂ともいえる活躍をし、多くの識者から「大戦中の最優秀戦歴戦艦」の呼び声が高い船ですね。 日本海軍でも最も活躍した「金剛級」の4隻もやはり主力艦中の最旧式艦であり、旧式艦ならでは、物惜しみされずいろいろな戦場に投入される、ということなのかもしれません。

ナルヴィクでの戦闘でもフィヨルド外まで「ウォースパイト」と同行していた「レナウン」は、その稀な高速性からオーフォートフィヨルドの狭い海面での戦闘での不測の事態を懸念して温存方針が出され、フィヨルド侵入戦に投入されませんでした。

 

トライバル級駆逐艦

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 (直上の写真:「トライバル級駆逐艦の概観。91mm in 1:1250 by Neptune

イギリス海軍第一次世界大戦後新たな設計のもとで1920年代以降建造してきた一連の駆逐艦の集大成というべき艦級で、駆逐艦部隊の旗艦として巡洋艦の代替も出来る様に設計された大型駆逐艦です。1900トンクラスの船体を持ち、これに12cm連装砲4基、53.3cm4連装魚雷発射管1基を搭載し、36.5ノットの速力を発揮しました。

 

4隻の損傷艦と初期の侵攻戦と第一次海戦で弾薬の欠乏したドイツ駆逐艦部隊は次第に追いつめられ、最終的には10隻全てが失われました。英艦隊は駆逐艦3隻が損傷しました。

冒頭にも記述しましたが、当時ドイツ海軍は駆逐艦を22隻しか保有しておらず、そのうち10隻が一気に失われたことは大打撃でした。

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直上の写真は、ドイツ海軍の「Z17級」駆逐艦(左)と英海軍の「トライバル級」(中央)、「G級」(右)の大きさ比較。かなりドイツの駆逐艦が大きいことがわかります。Neptune社製モデル同士の比較なので、ほぼ見た目通りと思っていただければ)

 

その後、ナルヴィクを巡ってはノルウェー軍とそれを支援するイギリス軍、フランス軍ポーランド軍部隊により、5月ナルヴィクは奪還され、ドイツ陸軍の山岳猟兵部隊は周辺の山地に追いやられましたが、結局、フランスでの英仏軍の敗北により、連合軍は撤退を決定し、ドイツ軍が再度占領することとなりました。

 

「Z 23級:1936A級」駆逐艦同型艦前後期型あわせて15隻)

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(「Z23級」駆逐艦の概観:101mm in 1:1250 by Neptune)  

 同級では搭載主砲の大口径化が行われています。具体的にはそれまでの5インチ単装砲5基搭載という標準的な駆逐艦の主砲兵装を、軽巡洋艦並の150mm単装砲4基に搭載口径を強化し、それに伴い船体がさらに大型化しました。前期型・後期型(「Z31級」とされる場合もあります)併せて15隻が建造されました。

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 (直上の写真:「Z23級」(奥)と前級である「Z17級」の比較。主砲口径の違いに加え、クリッパー型の艦首形状に変更されていることがわかります。この巻首形状は、順次、「Z17級」にも取り入れられました) 

 

主砲搭載の形式については、設計当初では艦首部に150mm連装砲塔を搭載し、後檣周辺に単装砲3基、計5門の搭載とする予定でしたが、連装砲塔の製造が間に合わず、初期型の8隻は単装砲4基搭載で建造され、後に4隻が連装砲塔に換装しています。

 (直下の写真:「Z23級」の特徴である150mm砲の配置のアップ。前期型では連装砲塔の生産が間に合わず、艦首部に単装砲1基と艦尾部に3基の配置となっています) 

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「Z23級」駆逐艦後期型

後期型7隻は建造時から艦首には連装砲塔を搭載していました。

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(「Z 23級後期型=Z31級」駆逐艦の概観:101mm in 1:1250 by Neptune: 直下の写真では、「後期型」の最大の特徴である艦首部の連装砲塔のアップをご覧いただけます)  

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第二次世界大戦で前期型・後期型併せて15隻中6隻が先頭で失われ、残り9隻は賠償艦として連合国に引き渡されました。

 

150mm砲の話

砲力強化を狙い採用された150mm主砲でしたが、小型の駆逐艦には負担が大きく、連装砲塔の重量(単装砲の3倍:60トン)による艦首浮力の低下と凌波性の悪化、砲弾重量の増加に伴う射撃速度の低下(装弾等は人力で行われたようです)と主戦場の北海等の荒れる海での運用の困難さ等から、主砲口径の大きさの有利さを活かすことができず、次級では再び5インチ主砲に戻されました。

 

駆逐艦の艦名の話

同級から駆逐艦の艦名はZ(Zerstorer)の「駆逐艦艦種記号」と番号の組み合わせのみで表記されることとなりました。ちなみに同級以前の駆逐艦には第一次世界大戦で戦死したドイツ帝国海軍軍人の名前が与えられていました。

 

「Z 35級:1936B級」駆逐艦同型艦3隻 建造途中2隻)

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(「Z35級」駆逐艦の概観:102mm in 1:1250 by Neptune:  直下の写真:「Z35級」の主砲。「Z35級」では不評だった前級の150mm主砲を再び4インチ砲に変更しています)  

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 ナチス・ドイツ海軍が建造した最後の駆逐艦の艦級です。

 前級で採用した150mm主砲が、課題のみ多く、大口径の有利さを発揮できないことが明確になったため、主砲は同級では5インチ砲に戻されています。

主砲口径を除いては、基本的には前級「Z23級」を継承しており、5隻の建造が計画されていましたが、うち3隻が就役、残りの2隻は敗戦のためそのままスクラップにされました。

就役した3隻は2隻が自軍機雷で失われ、残る1隻も敗戦時に自沈しています。

(下の写真は、第二次世界大戦期に投入されたドイツ海軍の駆逐艦の形式の一覧。手前から、「Z1級」「Z5級」「Z17級」「Z23級前期型」「Z23級後期型」「Z35球」の順)

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水雷艇

「T1級:1935級」「T13級:1937級」水雷艇同型艦21隻)

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 同級は前級にあたる「1923年級」水雷艇が、前述のように本来はベルサイユ条約の制限下での代艦駆逐艦として設計されたのに対し、ロンドン条約での駆逐艦の定義から逃れるために制限外の600トン級の船体の「水雷艇」として設計されました。結果両者は、最終的には同じような大きさとなりましたが、そのため全く異なる外観を持つ艦級となりました。

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(「T1級」水雷艇の概観:66mm in 1:1250 by Neptune) 

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(直上の写真は、「T1級」から始まる新水雷艇のシリーズの特徴的な兵装配置。主砲は艦尾に4インチ砲を1基のみ搭載し、主兵装が魚雷であることがよくわかります。後々、この砲兵装の弱さは課題となってゆきます。しかし意欲的な設計であることは伝わってきますよね)

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(「T13級」水雷艇の概観:68mm in 1:1250 by Neptune: 艦首部にバウチェイサーと言われる機関砲を搭載し砲力を少し強化しています) 

 同級の主兵装は21インチ三連装魚雷発射管2基で、砲兵装は艦尾に4インチ単装砲1基を搭載するのみで、他には機関砲しか搭載しておらず、このクラスの艦種に期待される警備活動や、船団護衛、機雷戦等の用途には少し物足りない結果となりました。

800トン級の船体を持ち、35ノットの速力を発揮することができました。

「T13級」はやや船体を大型化して航続距離等を伸ばしていますが、基本的な兵装等には大きな差異はありませんでした。

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(「T1級」(手前)と「T13級」の比較:直下の写真では艦首形状の違いやボートダビッドの形状の違いなどをみていただければ。上が「T1級」)
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「T1級」「T13級」あわせて21隻が建造されましたが、12隻が戦没しています。

 

「T22級:1939級」水雷艇同型艦15隻) 

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(「T22級」水雷艇の概観:81mm in 1:1250 by Neptune:  直下の写真では、「T22級」の特徴的な主砲配置。前級で課題であった砲兵装の弱点を各段に強化し、汎用性の高い小型駆逐艦を実現しました)

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 「同級」は前級「T1級・T13 級」が砲兵装に課題があったことを踏まえ、砲兵装を著しく強化した設計となりました。1200トン級の船体を持ち32.5ノットの速力を発揮しました。前級から飛躍的に大きくなった船体に4インチ単装砲を4基搭載し、21インチ三連装魚雷発射管2基を搭載しています。大型化した船体に各種の機関砲等も搭載し火力が強化され、小型駆逐艦としての汎用性が向上しています。

 

15隻が建造され、11隻が戦没しています。

 

(直下の写真:ドイツ海軍の水雷艇の諸形式を一覧で。手前から「1923級」「T1級」「T 13級」「T 22級」の順。こうして一覧すると、改めて「1923級」と「T22級」は小型駆逐艦としての性格が顕著で、「T1級」「T3級」では警備艦的な性格が期待されていることが、よくわかります)

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ちょっとおまけで、

Sボート:高速戦闘艇

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(直上の写真:「Sボート」前期型(左:26mm)中期型(中央:28mm)後期型(右: 29mm)の概観比較: 下の写真では概観の最大の違いである魚雷発射管の装備形態の比較:上から前期型、中期型、後期型の順)
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ドイツ海軍は「Sボート」の呼称で知られる高速戦闘艇を多数戦闘に投入しています。2基の魚雷発射管を搭載し、予備魚雷も含め4本程度(一部は予備魚雷なし)の魚雷を搭載しこれを主兵器としているところから、魚雷艇と分類されています。主兵装の魚雷以外に複数の機関砲を搭載しており、後期型になる程、重武装化が進んでゆきます。

連合国の魚雷艇に比べ、船体が100トン程度と概ね大きく(連合国の代表的なPTボート「エルコ80フィート級」は51トン)、40ノット程度の速力を出すことができました。特に後期型は魚雷発射管が船首楼内に格納され、凌波性、航洋性が優れていました。

形式には各種ありますが、外見的には艦首の魚雷発射管を露出している前期型と、魚雷発射管を船首楼に格納した中期型(S-30型)、船体を延長して機関砲を増強した後期型( S-26型、S-100型)に大分類ができるでしょう。

「Sボート」は247隻(?)が建造され、沿岸哨戒や警備活動のほか、船団護衛、あるいは通商破壊戦、 機雷敷設など幅広い目的で運用され、第二次世界大戦期間中を通じ、水上戦闘による戦果21万トン、機雷戦による戦果15万トン、計36万トンの戦果をあげました

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ということで今回は第二次世界大戦期のドイツ海軍艦艇で紹介できていなかった「駆逐艦水雷艇」そしておまけで「Sボート」をご紹介しました。

 

再びコレクションと模型ブランドの話

ということで、今回はこれまでHansa製モデルで揃えて来たドイツ海軍艦艇のコレクションを、駆逐艦に限りNeptune社製に置き換えてみた、という話でした。

ほとんど自己満足の世界なのですが、では、他のコレクションはこのままでいいのか、ということにも少し触れておいた方がいいかも。

下の写真は原則Hansa製で揃っているドイツ海軍艦艇のうちで、Neptunes社製のモデルも保有している大型艦の比較、2点です。

 

まず「ビスマルク級」戦艦:上段がHansa製モデル、下段がNeptune社製です。

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次が軽巡洋艦ニュルンベルグ」:同じく上段がHansa製モデル、下段がNeptune社製です。

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そして両艦の上からの比較:上がいずれもHansa製、下がNeptune社製です。

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こうして比較すると、全体のサイズやプロポーションには目立つほどの大差がありませんが、あえていうならば、エッジなどのシャープさには差が見られます。更に、主砲や副砲、更に対空火器等、武装パーツの造作に顕著に差が現れています。

さて、この差と価格差を天秤にかける訳ですが、3倍から4倍(最小でも2倍)の調達価格と見合うかどうか。これは難しい。

・・・ということで、このリプレイスは駆逐艦のみで止め、大型艦のコレクションはそのままにする、というのが、当面の結論です。(と言いながら、実はebayでNeptune社製のポケット戦艦のモデルに入札していたりします。当面、というのはそういうことなので、多分、チャンスがあれば次第に置き換えてゆく、ということなんでしょうね。「なんか他人事みたいに聞こえるけど」と言われそうですが、まあ現実は、お財布事情も関わってくるし、他にもコレクションしなきゃね。そんなところです)

Neptune(Navisを含む), Argonaut(オーナーが亡くなられて、新作も追加ロットも製作される予定がないようですので、流通数がますます少なくなり、中古市場でも同社のモデルが高騰しています:これはあとでご登場いただくRhenaniaオーナー氏からの情報), Hai, Mercator, そしてこれに最近コンタクトのあるRhenania、この辺りが筆者にとって、Tier 1の模型ブランド、ということになるかと思います。まあ、できるだけこの辺りに集約してゆく、そういうことになりそうです。

**上記の筆者の「Tier 1ブランド」は、明治期から第二次世界大戦にかけての艦船モデルについてのことで、現用艦船や商船を入れると少し事情は違ってくるとは思います。

 

そしてRhenaniaオーナー氏との対話

本稿の読者の方ならば、最近、筆者がRhenania社のオーナー氏と、スウェーデン海軍の艦艇を巡って密にコンタクトを始めていることにお気づきかもしれません。対話の主題であったスウェーデン海軍駆逐艦の同社のモデルは、先週、発送されたとの連絡をもらいましたので、月内には手元に届くことになると思います。モデルについては、改めてまたご紹介するとして、今回は、そのやり取りの中でちょっと面白い話を。

 

3D printing modelにひと言

まず、オーナー氏から「ところで、どうしてスウェーデン海軍なの?」と質問をいただき、「次は、日本ではあまりメジャーじゃない1:1250スケールの艦船モデルのコレクションの紹介のブログやっていて、今の興味領域がスウェーデン海軍なんです」と。「日本語しかないけど」と、ちょっと調子に乗って本稿のリンクをお送りしました。

すると、筆者のブログでShapewaysのモデルをたくさん紹介していることが、少しお気に召さなかったご様子。仰りたいことは「1:1250スケールのモデルのためには、質の良いものを揃えて紹介してよ。NeptuneとかAugonautとか。そうすると1:700スケールよりも優れていることも、ちゃんと認識してもらえるんじゃないのかな」ということのようです。どうやら、ごく一部を除いては、あまり3D printing modelを評価していらっしゃらないように見受け、それが1:1250スケール全体の基盤を損なうんじゃないか、ということのようです。

 

「私のモデルに手を入れると言うのかね・・・」

併せて、そもそも、この方とコンタクトを取る発端となったスウェーデン駆逐艦「Klas Horn級」については、オーナー氏のTo Doリストにはあるものの、モデルはまだないとのことで、であれば筆者の方針としては「近しいモデルから捻り出す」という方針ですので、モデルがないのであれば、近いのは「Ehrenskjold級」なので、このモデルの在庫をお尋ねし「これをベースにセミ・スクラッチしてみようと思うんですが」と申し出ました。すると「確かに似ているかもね。でも、私のブランド名では出して欲しくない。いずれは作るから」とのこと。これまでいろいろなモデルのオーナーにコンタクトして、こんなふうに触っちゃいましたよ、と紹介すると大抵は「おお、楽しんでくれて嬉しいなあ」という反応だったので、ちょっとびっくり。

とはいえ、快くモデルは売ってくださるようなので、筆者としては「不快」とかそういうことでは、全くもってないのですが、要は相当、ご自身の品質に対してこだわりを持っていらっしゃる、ということろに妙に感銘を受けてしまいました。本家「クラフトマンシップ」という感じでしょうか?

筆者にとっては確かに「週末の趣味」なんですが、彼は「プロ」なんですよね。失礼のないように、楽しませていただこうっと。

 

Rhenaniaというブランドネームについて

もう一つRhenaniaというブランドネームについて伺ってみました。すると「ライン川のローマ時代の名前からもらったブランドネームなんだよ。すぐ近くなんだよ。RHENUS =RHEIN=Rhine in English」という丁寧な解説付きのお答え。確かに本稿でも下記のリンクの回でRhenania社のアドレスがライン川にほど近い場所にあることを機載していましたね。

何とも素敵な名前ですね。

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ということで、実はRhenania社への発注第二弾も済ませました。何と航空巡洋艦「ゴトランド=Gotland」と例の駆逐艦、という組み合わせです。Gotlandはオーナー氏からのお勧めで、もしかすると本稿の3Dモデルのクオリティに対する危惧もあるのかも。「Gotlandには搭載機があった方がいいから、なんか探してあげるよ」という親切なお言葉も。

こういうお付き合いは大事にしてゆきたい。

 

ということで、今回はここまで。

 

来週は、新着モデルがいくつかあるはず。そのご紹介か、あるいは、フランス海軍の第二次世界大戦期の巡洋艦のご紹介の準備がほぼ整ったので、その辺りを。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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脇道探索:スウェーデン海軍の新着モデルのご紹介:巡洋艦コレクションのアップデート

このところ週末に本業対応があり、それを理由に、過去の投稿をベースにした「再録」をお届けしてきました。

その間にも現在の興味領域である「スウェーデン海軍」関連の艦艇の模型が着々と到着しています。それらの仕上げの作業もあり、「再録」ベースの投稿をしてきたのですが、今回はいくつかスウェーデン海軍の巡洋艦周りの新着モデルのご紹介です。

 

まず最初にご紹介するのは、ちょっと変わったところで、特設機雷敷設艦「アルヴァスベン」。

機雷敷設巡洋艦「アルヴァスベン」(Alvsnabben:1943)

en.wikipedia.org

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(特設機雷敷設巡洋艦「アルヴァスベン 」の概観:84mm in 1:1250 by Oceanic?)

本艦は元々は貨物船として建造された船を1943年にスウェーデン海軍が徴用し機雷敷設艦として使用したものです。本稿では何度か触れてきていることですが、ご承知のようにスウェーデンは両大戦を中立で貫き通した稀有な存在であり、その為、海軍艦艇に戦没艦がありません(事故での喪失艦は何隻かありますが)。ですので一般的に就役期間が長く、本艦も1982年まで、数次の改装を経て使用されました。就役当初は特設機雷敷設艦でしたが、商船としての素性からくる良好な燃費と居住性から、海外遠征を伴う士官候補生の練習艦としても使用されました。

入手したのはOceanic社製のモデルでしたが、備砲の形状、煙突の形状から、第二次世界大戦以降の形状を再現したモデルだと思われたので、煙突の形状を直線的なものに置き換え、主砲を6インチ平射砲に変えるなど、少し手を入れています。

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(特設機雷敷設巡洋艦「アルヴァスベン 」の主要兵装:艦首部・艦尾部に配置された6インチ砲。就役時には平射砲ですたが、後に5インチ両用速射砲に換装されます。概観:煙突の形状を直線的なものに交換し、その他、少し銃座やマストなど追加しています)

4250トンの船体を持つ小ぶりな特設艦艇としては(スウェーデン海軍艦艇としては大型艦ではあるのですが)、6インチ砲4門、40ミリ対空砲、20ミリ対空砲、等、非常に強力な兵装を持っています。14ノットの速度を発揮し、200基の機雷を搭載することができました。後に主砲は全て両用砲に換装されています。

  

同じくスウェーデン海軍の機雷敷設艦つながりで、次にご紹介するのは「クロース・フレミング

機雷敷設巡洋艦「クロース・フレミング(Clas Fleming)」

 実は同艦については本稿の下記の回で一度ご紹介しています。

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この回ではArgonaut製の大改装前のモデルと、Rhenania製の大改装後(第二次世界大戦時)のモデルをご紹介しましたが、今回はShapewaysの3D printing model、Brown Water Navy Miniaturesから、就役直後のモデルと、一次改装時のモデル、そして大改装後の第二次世界大戦時モデルの3点セットを入手し、これを完成させたので、そちらをご紹介しておきます。

en.wikipedia.org

竣工時(1912年)

本艦は1912年に就役。1550トンの船体に8基のボイラーを搭載し20ノットの速力を出すことができました。200基の機雷を搭載敷設する能力を持っていましたが、就役当時は艦尾の機雷敷設作業甲板は上甲板より一段低い位置に露出されていました。主砲として4.7インチ(120mm)単装砲を4基、艦首部・艦尾部にそれぞれ2基づつ、背負い式で配置されていました。

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(機雷敷設巡洋艦「クロース・フレミング 」の竣工時の概観: 63mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature

直下の写真は同艦竣工時の特徴のクローズアップ:特徴的な艦首部・艦尾部の背負い式に配置された主砲と一段低い機雷作業甲板(下段)。特に艦尾の露出された作業甲板は、荒天時には波を被り作業に課題があったようです)

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一次改装(1918−19年)

艦尾の機雷敷設作業甲板は位置が低く、さらに前述のように露出されていたため、荒天時の運用に課題があり、1918年頃に艦尾上甲板を延長し、機雷作業甲板はその中に収納されました。この際に4基の主砲配置が変更され、艦首・艦尾にそれぞれ1基、舷側やや後方両舷にそれぞれ1基づつ、という配置に変更されています。f:id:fw688i:20210411105714j:image

(機雷敷設巡洋艦「クロース・フレミング 」の一次改装時の概観: by Brown Water Navy Miniature

直下の写真は同艦一次改装で大幅な配置変更が行われた主砲配置と延長された艦尾上甲板。この改装で機雷作業甲板は船体内に収容され、荒天時の作業が改善されました。主砲は艦首・艦尾に各1門が配置され(上段・下段)、2門は両舷側に1門ずつ配置されました。(写真中段:少しわかりにくいですが。後方のボートの下に砲座の張り出しが見えています)

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第二次世界大戦前の大改装(1939年)

1939年に同艦は、機関を従来の蒸気タービンに加え、珍しいディーゼルタービンを追加搭載し、このために艦の長さを6メートル延長する大改装を受けています。煙突の数も2本から3本に増え、鑑容が一変しています。f:id:fw688i:20210411105717j:image

(機雷敷設巡洋艦「クロース・フレミング 」の最終改装時の概観: 68mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature: ディーゼルタービンを追加搭載したため、艦の長さが6メートル延長されました。煙突も従来の2本から3本に。直下の写真は最終改装時の主砲配置。両舷に配置された主砲がよくわかります) 

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三形態比較(お約束的な?)

(下の写真は、「クロース・フレミング」三形態の比較:手前から、竣工時(1912)、一次改装時(1918-19)、最終改装時(1939)の順)

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**少し模型的なコメントを。

下の写真は、以前本稿でご紹介した同艦のモデルです。上の写真が一次改装時のArgonaut社製のモデルで、下の写真が最終改装時のRhenania社製のモデルです。いずれも艦尾の機雷投下扉が再現されているのですが、今回のBrown Water Navy Miniatureのシリーズではそれが再現されおらず、少し残念かも

(敷設巡洋艦「クロース・フレミング」就役時の概観:66mm in 1:1250 by Argonaut: 右下カットには機雷敷設用の二つの投下軌条口がよくわかります。就役時の機雷搭載数は100基でした)

(敷設巡洋艦「クロース・フレミング」近代化改装後の概観:69mm in 1:1250 by Rhenania: 1939年次の大改装で機関をディーゼルに換装し、船体も延長されています。煙突の数も増えて、全く別の艦容を示しています。右下カットには機雷敷設用の二つの投下軌条口。これは残ったんですね。改装後の機雷搭載数は200基に。中立を明示する白線が目立ちます)

 

 

そして最後にご紹介するのは、スウェーデン海軍唯一の装甲巡洋艦「フィルギア」の就役直後のモデル。

装甲巡洋艦「フィルギア」(1907年就役:同型艦なし)

ja.wikipedia.org

本稿では、これまでに下記の回で、装甲巡洋艦「フィルギア」の第二次世界大戦の姿についてご紹介していました。 

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本艦は1907年に就役した4300トンの装甲巡洋艦です。

就役時(1907年)

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(装甲巡洋艦「フィルギア 」の竣工時の概観: 91mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature)

列強の装甲巡洋艦が軒並み8000トン、10000トン級であったことを考慮すると、小ぶりな装甲巡洋艦です。が、バルト海での運用を考慮すると、このサイズがベストかも。主砲を全て連装砲塔とするなど、意欲的な設計と言ってもいいと感じています。

 

改装時(1939−41年)

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(装甲巡洋艦「フィルギア 」の竣工時の概観: 93mm by Brown Water Navy Miniature)

本艦は、1939−41年に練習巡洋艦として近代化改装されています。概観的な変更としては、艦橋形状の変更(塔状へ)と煙突の本数でしたが、機関は 重油専焼に換装されボイラー数が減っています。さらに対空砲を強化、艦首形状をクリッパー型に改めるなど手が入れられ、艦の長さがかわっています。


二形態比較

(艦首形状がクリッパー型に変更されている他、艦橋の形状、煙突の数、位置も変更されています)
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ということで、今回はここまで、ですが、他にも小艦艇のモデルがいくつか到着、あるいはこちらに向けて発送されています。

以前少しご紹介したスウェーデン海軍の艦隊駆逐艦のコレクションも、Rhenania社から、今週末には発送できそう、という連絡をもらったりしています。

 

次回は多分、本稿でご紹介したドイツ海軍の第二次世界大戦時の駆逐艦のモデルがNeptune社製で揃いそうなので、そちらをご紹介できるかも。

 もちろん、もし「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

併せて模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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再録:護衛艦「いそかぜ」その三形態 (「亡国のイージス」から「空母いぶき」へ)、そして架空DDGの制作

先週に引き続き、ちょっとお仕事でバタバタ。そして溜まっていた模型の制作で、今回も過去記事の再録でご容赦を。

 

今回、再録するのは、本稿の134投稿の中で2019年11月4日に投稿されてから、ずっとトップのアクセス数を保ち続けている「護衛艦いそかぜ」その三形態 (「亡国のイージス」から「空母いぶき」へ)」というタイトルの投稿です。

 

本稿は2018年9月4日に初回を投稿して以来、fw688i.hatenablog.com

ずっといわゆる「主力艦:戦艦・巡洋戦艦装甲巡洋艦」の発達史を1:1250スケールの模型の紹介を軸に続けてきました。このメインの主題であった「主力艦発達史」が2019年7月に一応の終了を迎え、

fw688i.hatenablog.com

2019年9月から海上自衛隊護衛艦発達史のミニシリーズを展開、その締め括り的な位置付けでとして取りあげたのが表題に掲げた「護衛艦いそかぜ」その三形態 (「亡国のイージス」から「空母いぶき」へ)」でした。

本稿が利用させていただいている「はてなブログ」には、アクセス解析という機能があり、ここではアクセス先としてどの投稿が多いのかが分かるのですが、Google  Yahooなどのいわゆる大手の検索サイトからこの投稿が常にトップにランキングされている、そういうことなのです。

 

まあ、護衛艦いそかぜ 」の映画や小説、コミックの関連でアクセスが多いのだろうと推測はするのですが、投稿以来、ずっとトップの座に座り続けており、それはそれで筆者としては「不思議」ではある訳です。

まあ、ちょっとうがった見方をすると、そもそも本稿のアクセス数全体がそれほど多いわけでもないので、ちょっとエッジが立っていると(エッジ=この場合には映画関連や小説・コミックとの関連ということになりますかね?)「すぐにトップに」という構造的な流れがあるのかもしれません。

まあ、理由はともあれ、筆者自身でも結構気にいっているし、まあ一度見ていただけたらなあ、という訳です。

 

ということで、ここから、以下、再録です。

いそかぜ」と言う護衛艦

今回は、海上自衛隊護衛艦開発史のスピンアウト第二弾(誰が勝手にシリーズにしたんだ?)として、護衛艦いそかぜ」について、いろいろと。

 

まず最初に、本稿を読んでいらっしゃるような方ならば(艦船好きな、というほどの意味です)、おそらくご承知のこととは思いますが、海上自衛隊に「いそかぜ」と言う名前の護衛艦は、その創設以来、かつて存在していません。

にも関わらず、護衛艦いそかぜ」の名前は、そこそこ「有名」なのです。(そもそも、護衛艦の名前の認知率などは、たかが知れていますので、「有名」の基準とは何か、などと言う話は、まあ、それは、ちょっと横に置いておきましょう)

そして、実在しない護衛艦ながら、実は「いそかぜ」には、三つの形態があるのです。

今回は、そういうお話です。

 

まず最初に「いそかぜ」第二形態 

海上自衛隊 護衛艦いそかぜ」の名は、筆者の知る限り福井晴敏さんの小説「亡国のイージス」で初めて登場します。そしてこの小説が映画化され、その名は一層広く世に出ることになりました。(2005年)

福井晴敏」という原作者にして優れたプロデューサーを持つ「亡国のイージス」は、小説に始まり、映画に続き漫画にもなる、と言ういわゆるメディアミックス展開されます。

ja.wikipedia.orgYouTube 

 https://www.youtube.com/watch?v=moqAqiyJ4eo&t=66s

 

 

www.youtube.co 

www.youtube.com

「艦船好き」の皆さんなら、おそらく既にこの作品はご覧になったでしょうが、ざっとこの作品のあらすじをご紹介しておくと、イージス護衛艦いそかぜ」を舞台として、「いそかぜ」を乗っ取り、東京湾でグソー(GUSOH)という化学兵器(毒ガス)によるテロを実行し、世界に反北朝鮮の世論を沸騰させ、祖国の政治形態を転覆させようとする北朝鮮の元工作員ホ・ヨンファ(中井貴一)と、それを防ごうとして、乗組員として潜入した防衛省情報局(DAIS)の工作員如月(勝地領)の死闘を描いたものでした。

 

映画では、「こんごう」級イージス護衛艦の3番艦「みょうこう」(DDG-175)が、「いそかぜ」の撮影舞台として使用されています。ですので映画に登場する艦番号は「175」なのです。

(直下の写真は、F-toysの「みょうこう」をストレートに組み立てたもの)

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映画の中で、「いそかぜ」に乗組員として潜入した防衛省情報局の工作員に協力する「いそかぜ」の先任伍長仙石(真田広之)が、「グソー(化学兵器)を発射するなら、前部のVLSか、後部のVLSか・・・」と迷うシーンがありますが、下の写真は艦首と後甲板の艦番号。それぞれの少し後ろ(前?)に前後部のVLSが写っています。
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 仙石と如月は凄惨な死闘ののち、ホ・ヨンファの計画を阻止するのですが、最後に「いそかぜ」は自爆して沈没してしまいます。

 

余談ですが、亡国のイージスに登場する化学兵器「グソー(GUSOH)」は、アメリカ軍が沖縄で開発したVXガスの50倍の毒性を持つとされる神経ガスですが、福井晴敏さんの小説には数度にわたり登場します。(もちろんフィクションの世界です。・・・と筆者は希望します)

最初は「Twelve Y.O.」という小説で登場し、そのあまりに強力な毒性のために、漏出事件の末、ほぼ唯一効果を無効にできるテルミット・プラスという兵器(架空の強力な特殊焼夷弾)で、漏出を起こした辺野古基地ごと焼き払われてしまいます。(「辺野古ディストラクション」:福井作品では、しばしば登場します)

この残り(試料)が移送中に元北朝鮮工作員のホ・ヨンファに奪われて、「亡国のイージス」事件に話が繋がって行くのですが、さらに、これが驚くべきことに、数千年後にやはり福井晴敏さんの「ターンA・ガンダム」(小説名「月に繭 地には果実』)にも登場するのです。

ちなみに「グソー(GUSOH)」とは「後生」の沖縄方言読みで、冥界(死後の世界)を意味するそうです。

  

次に「いそかぜ」第三形態

そして「いそかぜ」は2019年に、もう一度映画に登場します。

それは本稿でも紹介した「空母いぶき」。「いそかぜ」は「いぶき」が所属する第五護衛隊群の一隻で、やはりここでも「こんごう」級イージス護衛艦の一隻、という設定です。

映画では「いそかぜ」ですが、原作であるコミックでは実在するイージス護衛艦「ちょうかい」として登場し、「いそかぜ」は登場しません。
ja.wikipedia.org

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ちなみに、第五護衛隊群は原作コミックでは、「空母いぶき」(DDV-192)を中心に、これを護衛するイージス護衛艦「あたご」(DDG-177)、同じくイージス護衛艦「ちょうかい」(DDG-176)、汎用護衛艦「ゆうぎり」(DD-153)、「せとぎり」(DD-156)、AIP推進潜水艦「けんりゅう」(SS-504)、補給艦「おうみ」(AOE-426)で編成されていることになっています。

一方、映画では、諸々の設定の違い(周辺への配慮?)から、第五護衛隊群は全て架空艦で編成されています。「空母いぶき」(DDV-192)はそのままですが(これは元々架空艦です)、これを護衛するイージス護衛艦「あしたか」(DDG-190):原作では「あたご」、同じくイージス護衛艦いそかぜ」(DDG-161):原作では「ちょうかい」、汎用護衛艦「はつゆき」(DD-122):原作では「ゆうぎり」、「しらゆき」(DD-124):原作では「せとぎり」、AIP推進潜水艦「はやしお」(SS-515):原作では「けんりゅう」、というような変更が加えられています。

 

(直下の写真は、「空母いぶき」版イージス護衛艦いそかぜ」。F-toysの「ちょうかい」をベースにして、艦番号をデカールを貼り替えて変更しました。ちなみに艦番号「161」は、現用艦では使用されておらず、初代「あきづき」級護衛艦の一番艦「あきづき」の番号です)

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(直下の写真は、艦首部、艦後甲板の艦番号の拡大)
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 そして、「いそかぜ」をこの映画で一際目立たせた要因は、なんと言っても山内圭哉さんが扮する浮舟艦長の「いてまえ〜!」ではなかったでしょうか?

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 原作コミックでも「ちょうかい」艦長の浮舟一佐は、ここぞと言う時には関西弁で指揮をとります。

 

そして「いそかぜ」第一形態

さて、なぜ、本稿が「いそかぜ」第二形態から始まったか、と言うお話になるのですが、これまで二形態の「いそかぜ」をご紹介してきましたが、この2隻はいずれも「こんごう」級イージス護衛艦の外観を示してきました(あまり明言はされていないような記憶があります)。

が、実は「亡国のイージス」の原作小説に登場するいわゆる初代「いそかぜ」は、「はたかぜ」級ミサイル護衛艦の3番艦として登場します。

皆さんはご承知だと思いますが、「はたかぜ」級ミサイル護衛艦は、海上自衛隊の対空ミサイル護衛艦としては第三世代にあたり、搭載するシステムはイージス・システムではなく、ターター・システムでした。ターター・システム搭載艦としては、「はたかぜ」級は最終世代に属し、システムもデジタル技術の導入により高度化し、イージス以前のミサイル駆逐艦としては頂点に立つ、という評価を得ていましたが、やはり弱点として、2-3目標までしか捕捉追尾出来ないと言う限界を抱えていました。

海上自衛隊でも次世代DDGとしてイージス・システム搭載艦が就役しており、第一線で活躍できる期間はそれほど長くないと思われていました。

一方、次々と就役が予定されているイージス艦は、従来のDDHを中心とした護衛隊群の艦隊防空の他に、周辺有事の状況変化(相次ぐ北朝鮮弾道ミサイルの発射実験など)に伴い、弾道ミサイル防衛(BMD)の役割も担うこととなります。実はこの二つの役割は迎撃高度、タイミングの差異から、同時対応、つまり両立が難しく、新たに艦隊防空の任務の分担を検討することが必要になってきます。

現在、実際にはこの役割は、イージス艦とコンビを組む汎用護衛艦に一部負担させるべく、汎用護衛艦の高性能化で対応することになっていますが、「亡国のイージス」では、「はたかぜ」級3番艦の「いそかぜ」に試験的に白羽の矢が立ち、この対策の一つとして、試験艦「あすか」で試験されてきた「ミニ・イージス・システム」を搭載し、それに関連する改装を行った、と言う設定になっています。

これに関連した記事(もちろん架空)が下のURLにあります。

http://www.masdf.com/news/isokaze.html

www.masdf.com

この、ミニ・イージス・システムの搭載に伴い、艦橋前に搭載されていたアスロック・ランチャーを16セルのVLSに換装し、従来から搭載されていた艦首のMK.13ミサイル発射基に加え発射即応性を高め、主砲も従来の54口径5インチ単装速射砲(Mk.42)から、オート・メララ製の54口径5インチ単装速射砲(127mmコンパット砲)に変更し、対空能力の向上が図られました。

(直下の写真は、F-toys製「はたかぜ」をベースに改装された「いそかぜ」。「はたかぜ」の艦橋上部にDesktop Fleet 製のAsukaの艦橋上部のイージスシステムドームを追加。主砲を換装し、アスロックランチャーに換えて16セルのVLSを搭載しました。さらに艦番号を183に変更)

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www.shapeways.com

(艦橋上部に追加搭載されたイージスシステムドームと、換装した主砲、VLSのアップ。艦番号を変更)

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いそかぜ」という名前

ところで、本稿を読んでいただいているような方ならば、映画で「いそかぜ」が「こんごう」級 イージス護衛艦の姿で登場したことに若干の違和感を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

イージス護衛艦「こんごう」級は「こんごう」「きりしま」「みょうこう」「ちょうかい」と全て「山」の名前がつけられており、その後の「あたご」級でも、「あたご」「あしがら」と山の名前を命名することが踏襲されています。これは旧海軍の重巡洋艦巡洋戦艦(後に高速戦艦)が「山」の名前を艦名としてことを踏襲しています。

 

元来、護衛艦はDDの分類符号からも、多くは駆逐艦に分類され、旧海軍の慣例に倣って(慣例かどうかはよく知りませんが、多分そうですよね)「つき」「なみ」「きり」「ゆき」「あめ」そして「かぜ」など気象関連の名前が付けられる事が、創設以来一般的でした。

その慣例は海上自衛隊初のヘリコプター搭載護衛艦「はるな」級の就役から変わって行きます。「はるな」級は「はるな」「ひえい」、続く「しらね」級では「しらね」「くらま」と、以降、大型艦には「山」の名前がつけられるようになります。前出のイージス護衛艦もこの系列にありますね。(さらに最近はさらに大型の全通甲板型のDDHには日本の律令制以来の旧国名が艦名として使われ始めています。「ひゅうが」級の「ひゅうが:日向」「いせ:伊勢」、「いずも」級の「いずも:出雲」「かが:加賀」という感じですね)

そうした意味では、「こんごう」級イージス護衛艦の形態を示す艦に「いそかぜ」と気象関連の名前を付けることには違和感を覚えずにはいられません。

では、護衛隊群の防空を担うイージス艦以前のミサイル護衛艦(DDG)にはどのような名前がつけられていたか、というと、その初代は「あまつかぜ」、第二世代「たちかぜ」級は「たちかぜ」「あさかぜ」「さわかぜ」、そして第三世代「はたかぜ」級は前出のように「はたかぜ」「しまかぜ」と、全て「かぜ」で統一されています。

従って、「はたかぜ」級の3番艦であれば、「いそかぜ」の名はふさわしい、と言うべきでしょう。

 

もう一つ、ついでに艦番号について。

艦隊防空を担うDDGは、「あまつかぜ」DDG-163、「たちかぜ」級3隻がDDG-168~170、「はたかぜ」級2隻がDDG-171, 172、続くイージス艦「こんこう」級の4隻がDDG-173~176、「あたご」級2隻はDDG-177,178、そして最新の「まや」級2隻がDDG-179,180と続きます。

艦隊防空、という視点で言えば、初代「あきづき」級の2隻も、そういう役割を負っていましたが、艦番号はDD-161,162でしたし、「あまつかぜ」と「たちかぜ」級の間の「たかつき」級4隻(DDA-164,165,166,167)も、新型の54口径5インチ単装速射砲(Mk.42)を2基搭載する対空能力に優れた艦でした。「こんごう」級の就役以前には、ターター・システム搭載のDDGとDDA「たかつき」級が護衛隊群の防空を担当するという時期がありました。

こうした観点で見れば、「空母いぶき」に登場した浮舟艦長の「いそかぜ」第二形態がDDG-161の艦番号を継承したことも、なんとなく納得ですね。

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一方で「はたかぜ」級3番艦である「いそかぜ」第三形態が背負っているDDG-183は、現在、DDH「いずも」の番号になっていますが、当時はおそらく「いずも」級の計画前であり、この番号を付与された、と考えることもできるでしょう。

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 と、名前、艦番号にも選択や付与に一定の法則がありそうです。これもまた興味深い。

 

幻の「亡国のイージス」前日譚:Call the Role

余談ですが、長編小説「亡国のイージス」には、その姉妹編として、この改装にまつわる前日譚を描いた短編小説集があるのです。

その改装は非常に大規模で、約9ヶ月を要しました。更にその後の公試などで再就役までに、「いそかぜ」はほぼ1年を要しているのです。

その改装工事中には、前出の「いそかぜ」の仙石先任伍長 は、造船所とのやり取りに疲れ果て、完工後には艦橋上に現れた「芽の生えたタマネギ」のようなミニイージスシステムのドームを見て「おれの艦を、こんなに不細工に造り変えやがって」と憤慨し、更に彼自身の部署であったターター・システムがミニ・イージス・システムによって無用の長物化したことに、自分も時代遅れになったかのように寂しい思いをするのです。

さらに、艦長と副長以外ほとんどの幹部クルーが入れ替わり(実は、この異動は、その後のテロ実行に向け仕組まれたものだったのですが)、乗組員たちも入れ替わり、これから先の混乱を予想して、先任伍長はため息をつくのです。

・・・と言うような「亡国のイージス」前日談が、実は「Call The Role」という別冊小説になっています。この本は仙石先任伍長だけでなく、その他の主要な本編登場人物の前日譚の短編集というような趣の本になっています。(「Call The Role」というのは「点呼」というような意味合いだそうです)

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この本、実はピットロード社製の「いそかぜ」のフィギュアとセットで販売されていたのですが、今や入手が非常に困難な「幻の本」となっています。

https://www.amazon.co.jp/原作版《いそかぜ》-精密フィギュアセット-福井-晴敏/dp/4062751518

フィギュアはさておき、本だけでも再版されればいいと思うのですが。できれば文庫本でね。

この本にはもう一つ、大変貴重な点があります。実はその後書き(?)がフィギュアを手掛けた模型メーカー「ピットロード」の企画開発部のお二人(そのうちの一人は原型製作者)によって書かれているのです。前述の「後書き」という言葉に?をつけたのは理由があって、後書きと言うよりも、「いそかぜ」のFRAMによる性能向上と意義を記述された内容になっています。大変コンパクトで面白い!

欲しくなってきたでしょう。再版してくれればいいのに。

 

おまけ?

さて、最後に直下の写真は、「はたかぜ」級ミサイル護衛艦のそろい踏み(?)。手前からDDG-172「しまかぜ」、DDG-171「はたかぜ」、DDG-183「いそかぜ」の順。
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 前出の「DDG-183」の記事www.masdf.comには、僚艦「うらかぜ」と共に第65護衛隊を編成、という記載があります(もちろん架空ですよ)。どうしようかな、「うらかぜ」も作ってみようかな。

しかし、同記事の中にはしかしこの近代改修工事は、いそかぜの場合で450億円と高額であるため財務省片山さつき担当主計官は「近年の緊縮財政期においてこのような費用対効果が悪い計画に意味があるのか?ミニ・イージス戦艦なんて時代遅れよ!」と、今後の予算化には消極的。またアメリカ政府も日本の「ミニ・イージスシステム」開発に対して日本の軍事的独立を警戒し不快感を募らせており、今後順調に計画が進行するかどうかはまったく不透明である」という記載があり、その後さらにミニ・イージス化が進められたのかどうか。

つまり「うらかぜ」をミニ・イージス搭載艦形態で作るべきかどうか、はっきりしませんね。ちょっと困った。

・・・ああ、そうか、いいこと思いついた。両方作っちゃえ!

まあ、これも新たな楽しみ発見、ということで。

(再録、ここまで。そして、オリジナルは下記を。内容は「再録」なので、全く一緒です)

fw688i.hatenablog.com

 

ここからは架空DDGの制作の話

ということで、上記「再録」部分では、最後に護衛艦いそかぜ 」第三形態が小説「亡国のイージス」で第65護衛隊を形成した僚艦「うらかぜ」の話が出てきますが、実は上記では「「うらかぜ」を「はたかぜ」級DDGの4番艦(あるいは3番艦?いずれにせよ現実では「はたかぜ」級護衛艦は2隻しか実在しませんので、架空艦の話ではあるのですが)として扱っていたのですが、実は福井晴敏氏の原作小説では1世代前の「たちかぜ」級の4番艦(これも3隻しか実在しないので架空艦です)であることが判明し、結局、「うらかぜ」を「たちかぜ級」として制作したりしています。

 

そしていよいよ、ここからが架空DDGの制作のお話、その「パート1」です。

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(以下、上記投稿より、その関連部分の再録)

「たちかぜ」級の4番艦、と言うことになりますが、実際には「たちかぜ」級は3隻しか建造されていないので、いわゆる架空艦を制作することにします。

 

本稿で、以前、架空の護衛艦いそかぜ」(DDG-183)について述べたことがあります。

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いそかぜ」と言う護衛艦は実在しないのですが、一方で、「亡国のイージス」(小説版・映画版)あるいは「空母いぶき」(映画版)で活躍する「有名な護衛艦」なのです、と言うのが、この回の主題だったのですが、この「亡国のイージス」に登場する「いそかぜ」の第65護衛隊を構成する僚艦が「うらかぜ」として登場します。

本稿の上記URLでも、ほんの少しだけ「うらかぜ」について触れているのですが、その際には、私の勉強不足から、てっきり「うらかぜ」は「いそかぜ」と同様、「はたかぜ」級DDGなのだと決め付けていました。

しかし、その後、原作等を読み返すと、「隊司令の衣笠一佐が、あえて旧型の第二世代ミサイル護衛艦「うらかぜ」を座乗艦に選んだのも・・」と言う記述があるではないですか。

ありゃリャ、これは「たちかぜ」級だぞ。と言うわけで、残った一隻は「うらかぜ」として制作することに・・・。

 

「うらかぜ」(DDG-162):架空護衛艦

(直下の写真:DDG-162: うらかぜ Amature Wargame Figures製 WNV素材モデル。写真を下記のようにアップにすると、やはりWNV素材の仕上がりの荒さが気になりますね。肉眼で見ている分には、それほど気にならないのですが)

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細部は、武装の換装など、ほぼ「さわかぜ」と同じ仕様で仕上げてあります。最後に艦番号「162」を貼付して、出来上がり。

この艦番号、決定までに少し紆余曲折がありました。

と言うのも、「いそかぜ」については原作中に「183」と言う艦番号が明記されているのですが、「うらかぜ」については、艦番号に関する記述はありません(少なくとも、私が読みこんが限りでは。もしどこかに記載があったら、是非お知らせ下さい)

そこで、「たちかぜ」級の4番艦であれば、本来は艦番号「171」が付与されるべきなのですが、この番号は実際には、すでに次級「はたかぜ」級DDGのネームシップ「はたかぜ」に付与されています。その後はミサイル護衛艦の番号は最新型の「まや」級の「はぐろ」の「180」まで、すべていっぱいで、さらにその後は181から184までDDHの「ひゅうが」級、「いずも」級に付与されていて、空きがありません。(そう言う意味では小説版「亡国のイージス」の「いそかぜ」の183番も、実際にはDDH「いずも」の艦番号になってはいるのですが)

止むを得ず、「うらかぜ」の就役時点ではすでに退役していたであろう防空担当護衛艦の番号を、と言うことで、初代「あきづき」級の2番艦「てるづき」(1981年、特務艦籍に変更 この時点で、DD-162からASU-7012に艦番号を変更)の番号をいただいた、と言うわけです。「うらかぜ」の前の「たちかぜ」級3番艦の「さわかぜ」の就役が1983年ですので、少なくとも「うらかぜ」の就役はそれ以降と想定できますので、なんとか辻褄は合うかと。(余談ですが、前述の「いそかぜ」の項でも触れましたが、映画版「空母いぶき」の「いそかぜ」は初代「あきづき」の艦番号「161」をもらっています)

と言うことで、少し苦労しましたが、艦番号は「162」に決定。

 

第65護衛隊(「いそかぜ」(DDG-183), 「うらかぜ」(DDG-162))

(直下の写真は、第65護衛隊の2隻。手前:「うらかぜ」(DDG-162) と奥:ミニ・イージスシステム搭載艦に改装後の「いそかぜ」(DDG-183))

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(直下の写真:参考までにターターシステムからイージスシステムへの換装後の「いそかぜ」(DDG-183)。「はたかぜ」級DDGをベースに、艦橋上部にミニ・イージスシステム用のドームを追加。主砲をオート・メララ製の54口径コンパット砲に換装、併せて、アスロック・ランチャー設置箇所に、16セルのVLSを設置して即応性を高めるなどの工夫があります)

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と言うことで、第二世代ミサイル護衛艦「たちかぜ」級4隻(一隻は架空艦です)が完成しました。

(直下の写真:DDG第二世代たちかぜ級の揃い踏み。手前から「たちかぜ」「あさかぜ」「さわかぜ」そして架空艦「うらかぜ」の順)

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 そしてここからが、架空DDG制作編の「パート2」

本稿では、Shapewaysをはじめとする3D printing modelを数多くご紹介しています。筆者にとってコレクションの充実には欠かせない調達ソース、ということです。現在展開中の「スウェーデン海軍」艦艇も多くがShapewaysで調達されています。

そして本稿では一時期集中的に3D printing modelをご紹介した時期がありました。その中で、別の架空DDGの制作について触れた回がありましたので、それも併せてご紹介します。

ちょっと補足しておくと、今回の「架空艦」は純粋な「架空艦」ではなく、実在する「海上自衛隊護衛艦」を改装してできた「架空艦」です(ややこしいなあ)。

(以下、下記の投稿よりの抜粋です)

fw688i.hatenablog.co

 

架空艦の製作へ

さて、SFD素材の竣工時モデルがもう1隻残ったけど、どうしよう?

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そうだ、そもそも、このモデルストックは「いずれは加工して架空艦を作成する際の素材として入手したものです」と書いてたんじゃないか。

 

と言うことで、ちょっと頭の中をゴソゴソ。

そう言えば、海上自衛隊初のDDG「あまつかぜ」の就役が 1965年。第二世代DDGの「たちかぜ」級の就役が1976年。この間、「あまつかぜ」は唯一のDDGであったわけで、ターター・システムの複数艦での運用データを得るためにも、この空白を埋めるために、1967年から就役の始まった「たかつき」級の1隻が早々にDDGへ改装・転用された、と言うカバーストーリーがなんとなくいい感じなのでは?

 

DDG「もちづき」の制作

こうして、DDG「もちづき」の誕生です。

SFD素材の竣工時モデルのいくつかのパーツを撤去。撤去部分は、艦首から前部主砲、アスロック・ランチャー、前部マスト上部、後部煙突上部、後部上部構造物、後部主砲。

換装、もしくは追加したパーツ:前部主砲(Ftoys)、アスロック・ランチャー(Ftoiys)、前部マスト上部(Ftoiys:「しらね」前部マストを転用)、短魚雷発射管(ロッドより製作)、ハープーン・ランチャーを追加(Ftoys)、後部煙突上部(Ftoiys:「しらね」後部煙突上部を転用)、ボートを両舷に追加(Ftoys)、イルミネーター2基を追加(Ftoys「しまかぜ」より転用)、Mk13対空ミサイル・ランチャーを追加(Ftoys「しまかぜ」より転用)、CIWSを追加(Ftoys)

下の写真は、上記の作業後、下地処理を経てざっと塗装をしてみたものです。艦中央部の白いパーツは、ロッドで製作した短魚雷発射管です。

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少し制作の裏話を。

当初、艦後部のイルミネーターの後方に2番主砲を残していたのですが、Mk13ミサイル発射機とCIWSをその後ろに追加すると、2基のイルミネーターの配置に余裕がなく、併せてあまりにも艦後部が荷重になるように思われ、2番主砲の設置を断念しました。

その上で、少しイルミネーターの間隔に余裕を持たせ、Mk13対空ミサイル発射機をDASH無人対潜攻撃ヘリコプター格納庫上に設置、DASHの運用甲板であった後甲板にCIWSを設置、と言う配置にしました。CIWSの射界を広く持たせるためにはMk13とCIWSの配置を逆に、とも考えたのですが、Mk13の下に収納されるミサイル弾庫を考慮すると、この順序が良いのではないかと言う結論です。なんとなく、DASHの格納庫をそのままに、と言う状況も活かせたような気もしています。

直下の写真:DDG改装後の「もちづき」

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直下の写真:僚艦「あまつかぜ」と共に。

上記のカバーストーリーでは、DDG「もちづき」は「あまつかぜ」と組んで活躍することになります。

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直下の写真:そしてやがては第二世代DDGの「たちかぜ」級と共に行動する機会もあるかもしれませんね。

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 さて、どちらのクラスと護衛隊を組んでも、いくつもカバーストーリーが書けそうな・・・。

 

とうわけで、「再録」編集でお茶を濁させていただいた今回でした。

 

さて次回は、模型の到着次第ではあるのですが、もう一度「再録」を続けるか、新着モデルの情報をお届けするか、たぶんどちらかで。

それと近々、前々回投稿の「第二次世界大戦下のドイツ海軍駆逐艦水雷艇」を改定させていただくことになると考えています。ご紹介した模型が精度の高い「Neptune社製」のもので統一できそうなのです。写真を貼り替えるだけにするか、少し加筆などするか、それは検討中、ということで。

 もちろん、もし「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

併せて模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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再録:模型ならでは、If艦・計画艦のデザイン・ヴァリエーションの一例

前回、予告しましたが、今週末はお仕事でした。

ということで、今回は過去掲載の中から、If艦・未成艦のデザイン・ヴァリエーションのご紹介。模型ならでは、というか、筆者が一人で思い切り遊んだ、という記録です。

 

まず、米海軍のダニエルズ・プランから米海軍初の巡洋戦艦レキシントン級」のデザイン・ヴァリエーション。

 

レキシントン級巡洋戦艦(オリジナルデザイン) 

レキシントン級巡洋戦艦について、少し基礎知識のおさらいを。

レキシントン級巡洋戦艦は、ダニエルズプランで建造に着手された、米海軍初の巡洋戦艦の艦級です。元々、米海軍は、戦艦の高速化には淡白で、21ノットを標準速度としてかたくなに固守しつづけ、巡洋戦艦には触手延ばしてきませんでした。

しかし本稿でも既述のとおり、第一次世界大戦の英独両海軍主力艦による「ドッカー・バンク海戦」や「ユトランド沖海戦」の戦訓から、機動性に劣る艦隊は決戦において戦力化することは難しいという情況が露見し、米海軍も遅ればせながら(と敢えて言っておきます)高速艦(巡洋戦艦)の設計に着手した、というわけです。

(背景情報は下記を)

fw688i.hatenablog.com

 

レキシントン級巡洋戦艦の設計当初のオリジナル・デザインでは、34300トンの船体に、当時、米海軍主力艦の標準主砲口径だった14インチ砲を、3連装砲塔と連装砲塔を背負式で艦首部と艦尾部に搭載し、35ノットの速力を発揮する設計でした。

その外観的な特徴は、なんと言ってもその高速力を生み出す巨大な機関から生じる7本煙突という構造でしょう。

モデルは、Masters of Miitaly社製で、White Natural Versatile Plasticでの出力を依頼していました。

(直下の写真は、到着したレキシントン級巡洋戦艦のモデル概観。Masters of Miitaly社製。素材はWhite Natural Versatile Plastic)

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本稿で行った「レキシントン級デザイン人気投票」では、「籠マスト+巨大集合煙突デザイン」に継ぎ第二位という結果で、私も大変気になりながらも、14インチ砲搭載艦というところに少し引っかかりがあり(あまりたいした理由はないのですが、この巨体なら16インチ砲だろう、という思いが強く)、なかなか手を出していなかったのですが、この人気投票に背中を押してもらった感じです。ありがたいことです。(なんでも都合よく解釈できる、この性格もありがたい)

www.shapeways.com

 

と言うわけで、今回はその完成形のご紹介です。

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モデルは非常にバランスの取れたスッキリとしたプロポーションを示しています。どこか手を入れるとしたら、当時の米主力艦の特徴である「籠マスト」をもう少しリアルな感じに、かなあ、とは思いますが、今回は手を入れずに仕上げることにしました。

なんかいいアイディアあれば、是非お聞かせください。

 

レキシントン級巡洋戦艦(デザインバリエーション)

上記のように、同級の原案設計の当時には、米海軍の主力艦標準備砲ということで14インチ砲搭載の予定だったのですが、その後、日本の八八艦隊計画が「全て16インチ砲搭載艦で主力艦を揃える」という設計であることを知り、急遽16インチ砲搭載に設計変更した、という経緯があったようです。

こうして同級は、結局16インチ砲搭載の巡洋戦艦として着工されるのですが、その後、ワシントン軍縮条約で制約、整理の対象となり、同級のうち2隻がその高速性と長大な艦形を活かして大型の艦隊空母として完成されました。「レキシントン」と「サラトガ」ですね。

つまり巡洋戦艦としては、同級はいわゆる「未成艦」に分類されるわけですが、その「未成」故に、完成時の姿を想像することは、大変楽しいことです。

 

筆者もご他聞に漏れず想像の羽を伸ばしたがるタイプですので、今回の「オリジナル・デザイン案」の完成に勢いづいて、筆者の想定するバリエーションの完結を目指してみました。

肝は「煙突」かな?

 

バリエーション1:二本煙突シリーズ

竣工時:籠マスト+二本煙突

en.wikipedia.org

上記リンクにあるように、実際に16インチ砲搭載巡洋戦艦として起工されたものが、完成していたら、と言う想定ですね。(こちらは本稿でも既にご紹介しています)

起工当時の米主力艦の標準デザインであった籠マストと、さすがに7本煙突という嬉しいほどユニークではあるけれど何かと問題のありそうなデザインは、実現しなかったんだろうなあ、と、その合理性には一定の納得感がありながら、一方では若干の落胆の混じる(かなり正直なところ)デザインですね。アメリカの兵器は時として、量産性や合理性にともすれば走り、デザインは置き去りになったりします。あくまで筆者の好みですが、「デザイン置き去り」が、「無骨さ」として前に出るときは、言葉にできないような「バランス感の無さ」につながり、それはそれで「大好き」なのですが(M3グラント戦車、M4シャーマン、F4Fワイルドキャット、ニューオーリンズ重巡洋艦等がこれに当たるかなあ)、正直今回の「レキシントン・二本煙突デザイン」これは「味気なさ」が先に立つと言うか・・・)
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(42,000t, 30knot, 16in *2*4, 2 ships, 213mm in 1:1250 by Delphin :こちらはDelphin社のモデルに少しだけ色を入れた程度です)

 

最終改装時:塔状艦橋+二本煙突

同級の近代化改装後の姿で、米海軍が主力艦に対し行なった、射撃システムの変更、副砲撤去、両用砲を砲塔形式で装備、上部構造物の一新、等々を実施、と言う想定です。艦様が一変してしまいました。

特に、外観上での米海軍主力艦の特徴の一つであった艦上部構造の前後に佇立する篭マストが、塔状の構造物に置き換えられました。

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(直上の写真:舷側に迷彩塗装を施しています。筆者のオリジナルですので、ご容赦を。本級は未成艦であるため新造時の模型は製造されていましたが、近代化改装後の模型までは存在せず、ごく最近になって近代化改装後の3Dプリンティングモデルを発見し、その製作者Tiny Thingajigsに発注をかけ、模型の到着を心待ちにしていました。ベースとなったモデルはこちら)

www.shapeways.com

 

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(直上の写真は、上)と最終改装後(下)の艦様の比較)

 

バリエーション2:巨大集合煙突シリーズ(こちらは筆者の妄想デザインです)

竣工時:籠マスト+巨大集合煙突

そもそも発端は、ワシントン・ロンドン体制で、巡洋戦艦から空母に転用された「レキシントン」の巨大な煙突からの妄想でした。

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この煙突がついている主力艦は、どんな感じだったろうか、作っちゃおうか、という訳です。で、その巨大な煙突の背景には大きな機関があり、元々は7本の煙突が初期の設計段階では予定されていたことを知る訳です。おそらくは転用されたのが「空母」なので、高く排気を誘導する必要があったんでしょうが、まあ、今回はそれはそれで少し置いておきましょう。

完成後に改めて見ると、ああ、半分くらいの高さ、と言うデザインもあったなあ、と。(うう、こんな事に気が付いてしまうと、いつか手を付けるんだろうなあ)

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 直上の写真は、今回急遽製作した竣工時の「レキシントン級巡洋戦艦」で、籠マストと「レキシントン級」空母譲りの巨大集合煙突が特徴です。

本稿でも以前ご紹介しましたが、本来は下記のTiny Thingajigs製の3D Printing Modelをベースに制作する予定だったのです。

www.shapeways.com

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しかしShapeways側のデータ不備とかの理由で入手できず、この計画が頓挫。では、ということで、ebay等で、これも前出のDelphin社製のダイキャストモデルを新たに入手しそれを改造しようかと計画変更。しかし少し古いレアモデルだけに新たに入手が叶わず(ebayで、格好の出品を発見。入札するも、落札できず:ebayは1:1250スケールの艦船モデルの場合、当然ですが多くがヨーロッパの出品者で、終了時間が日本時間の明け方であることが多く、寝るまでは最高入札者だったのに、目が覚めると「ダメだった」というケースが多いのです)、結局、手持ちのDelphinモデルをつぶす事にしました。(つまり、これ↓を潰す事に・・・)f:id:fw688i:20190310173715j:image

Delphin社のモデルは、こうした改造にはうってつけで、パーツが構造化されており、その構造が比較的把握しやすいのです。従って、少し注意深く作業をすればかなりきれいに分解することができます。今回は上部構造のうち、前後の煙突部と中央のボート甲板を外し、少し整形したのち、Deagostini社の空母「サラトガ」の完成模型(プラスティックとダイキャストのハイブリッドモデル)から拝借した巨大な集合煙突(プラスティック製)を装着する、という作業を行いました。

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で、出来上がりがこちら。設計の合理性は爪の先ほども感じませんが、なんかいいなあ、と自画自賛。この巨大な煙突は格好の標的になるでしょうから、まず、この設計案は採用されないでしょうねえ。

或いは、上掲の2本煙突デザインでは、7本煙突からこのデザインへの変更の際には機関そのものの見直しが必須のように思うのですが、それが何らかの要因で困難だった(あまりに時間がかかる、とか、費用が膨れ上がる、或いは新型の機関を搭載するには一から設計し直したほうが早い、とか)というような状況で、ともあれ完成を早めた、というような条件なら、有りかもしれませんね。

(やっぱり、煙突の高さ、半分でも良かったかもしれません。ああ、気になってきた!

 

最終改装時:塔状艦橋+巨大集合煙突

そして、巨大集合煙突のまま、近代化改装が行われます。米海軍が主力艦に対し行なった、射撃システムの変更、副砲撤去、両用砲をこの場合には単装砲架で装備、上部構造物の一新、等々の近代化改装を受けた後の姿、と言う想定です。

この場合でも、やはり篭マストが、塔状の構造物に置き換えられました。煙突の中央に太い縦線が入れられ、2本煙突への偽装が施されています。

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こちらは下記の3Dプリンティングモデルをベースとしています。

www.shapeways.com

このモデルの煙突をゴリゴリと除去し、Deagostini社の空母「サラトガ」の完成模型(プラスティックとダイキャストのハイブリッドモデル)から拝借した巨大な集合煙突(プラスティック製)を移植したものが、下の写真です。f:id:fw688i:20200328161044j:image

 この後、下地処理をして、少し手を加え塗装を施し完成です。

 

 (直下の写真は、巨大煙突デザインの竣工時(上)と最終改装時(下)の艦様の比較)

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レキシントン級巡洋戦艦」デザインバリエーションの一覧

上から・・・もう説明はいいですかね。

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こうやって一覧すると、「どれが好きですか?」と聞きたくなるのですが・・・。また、アンケートかよ、という声が聞こえてきそうなので、今回はやめておきます。

(そのうち、もう一回、巨大集合煙突の高さ、ちょっと変えてみました、なんて紹介をするかもしれませんね。きっとするなあ、これは)

 

ともあれ、合理性はさておき、やはり巨大煙突、いいと思うんですがねえ。

 

次は記憶に新しいところで、最近のA-140号計画艦(いわゆる「大和」ですね)のヴァリエーションから最大の特徴である18インチ主砲を全て艦首部に集中配置したA-140a計画艦。

大和級計画案( A-140号計画)」のデザインバリエーション

まず、A-140計画艦のお話です。

「A-140計画艦」には20数種のデザイン案があると言われています。これはその中でも最初期の案とされる「A-140a」をベースにし、これに「大和級」建造の実現技術を反映した形としています。副砲の配置も、「大和級」の配置案に準じています。

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 (A-140a案の資料を示しておきます。諸々、Net上で見つけた資料から)

 

大和級」設計案での機関に関する議論

大和級」の多様な設計案の一つの重要な軸は、主機選択の変遷であったと言ってもいいかもしれません。

資源の乏しい日本にとって、燃料問題は常に重大な課題であり、従って高速力と航続距離を並立させることを考慮すると、燃費に優れるディーゼル機関の導入は重要な目標であったわけです。さらに大型潜水艦用のディーゼル機関の開発の進展など、これを後押しする要素も現れ始めていました。

このため原案はタービン機関のみの搭載案でしたが、その後の案は全てディーゼル機関とタービンの併載案、あるいはディーゼル機関のみの搭載案、でした。

艦隊決戦の想定戦場を、日本海軍はマーシャル諸島辺りとしていたので、航続距離はできるだけ長くしたかった、そういう事ですね。

最終的には、当時のディーゼル機関の故障の多さ、性能不足(潜水艦なら「大型」と言っても2000トン程度、1番大きな潜特型(伊400型)でも3500トン程度だったのですが、10000トン級の潜水母艦「大鯨」のディーゼル機関は所定の性能を発揮できませんでした)から、工期との兼ね合いを考え、結局ダービン機関のみの搭載案が採用されましたが。「大和級」他の戦艦群が大戦中に後方(トラック等)からなかなか前に出れなかった理由の一つは、この辺りにありそうです。

 

そして制作へ

発端は京商製「大和」「武蔵」の1:1250モデルのストックを棚の奥から発見したこと。京商製のこのモデルは、樹脂製のパーツで構成されており、下の写真にあるように非常にバランスが良く、かつディテイルもかなりしっかり作られています。

ただ、大変惜しいことに、船体の長さが197mmで、一般に知られている「大和級」の船体長263.3mの1:1250モデルとしては、やや船体長が短いのです(Neptune社製のモデルは約210mm)。このため筆者の1:1250コレクションには加われず、長い時間、デッドストックとして棚の奥に眠っていました。これが4隻発見された(単に筆者が忘れてただけなんですが)わけです。(就役時=副砲塔4基搭載を再現した「武蔵」が3隻と、対空兵装強化後の「大和」が1隻)

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京商製の「武蔵」立派な台座に乗っています。ディテイルはバッチリです。下段はDelphin社製の船体との大きさ比較。約13mm短い!)

よく見ると、船体長こそ短いものの、その他の主砲、副砲、上部構造等はそれほど小さいわけではなく(まあ、誤差程度、小振りではありますが)、 ムクムクとこれを何かに生かせないだろうか、とイタズラ心が蠢き始めました。

 

大和級」で残っているものと言えば・・・

そもそもこのブログは、実は筆者が「大和級」のバリエーションとして海上自衛隊のイージス護衛艦「やまと 」を制作したところからスタートしています。かつ、筆者の制作していた「八八艦隊」の戦艦群バリエーションの完成と、超「大和」、スーパー「大和」などのコレクションを備忘録的にまとめておきたい、という想いからスタートしています。

(以下のリンクは、上記に関連しそうな回を総覧したもの。ちょっと手前味噌な宣伝ぽくて申し訳ないですが。よろしければお楽しみください)

fw688i.hatenablog.com

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というようなわけで、今回発見された京商製のモデル以外にも、これら「大和級」のバリエーション制作過程で、お蔵入りした試作品、あるいは制作のための部品取りで入手したモデルのストックなどがいくつか眠っているのです。

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(上の写真:眠っていたDelphin社製「大和」の船体部分(上段および下段左)と、京商製「武蔵」就役時モデルの上部構造と主砲塔(下段右))

これらを組み合わせて、比較的大きなモデル改造を伴う「A-140計画艦」のうち「主砲前部集中搭載案」を実現してみます。

 

大和級計画案(A-140計画)」から、戦艦「甲斐」(仮称)の制作

大和級」の建造にあたっては、その設計案が20数案あったことはよく知られています。

そのヴァリエーションは多岐にわたり、例えば排水量では50000トン案から70000トン案、主砲も18インチ砲10門搭載案から16インチ砲9門搭載案等々、種々検討されて、最終案として纏まったのが我々が知る「大和級」ということになります。

その概観も種々あり、その中でも筆者が気になっていたのは原案の当初から数案に展開され続けた「主砲前方集中配置案」とでも呼ぶべき形状でした。

他のディテイルの再現はさておき、この「主砲前方集中配置」だけでも再現できないか、というのが筆者のぼんやりとした「想い」だったのですが、今回それを一気に形にすることに。

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(戦艦「甲斐」(=「大和級」というより「A-140計画艦」というべきか。主砲前部集中搭載案から)の概観:主砲の前部集中配置で防御装甲の配置を効率化し、タービンとディーゼルの混載と共に、日本海軍悲願の高速性と長い航続距離を両立させることを目指しました)

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(直上の写真:「大和」(奥)と「甲斐」の概観比較:「甲斐」がほんの少し小振りで、主砲搭載位置の差異など見ていただけるかと。何故か主砲前部集中配置の方が、機動性が高そうな気がしませんか?写真ではわかりにくいですが、煙突が「甲斐」の方がやや細く、タービンとディーゼルの混載だから、と無理やり・・・)

 

 

『A-140a号計画艦」主砲塔山形配置案の制作

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(戦艦「美濃」A-140a案の山形主砲配置デザイン:主砲の配置位置がよりコンパクトになっていることがよくわかります。主砲配置以外は上掲の「甲斐」と同じスペックです)

そして次に制作したのは、主砲の山形配置案(重巡那智級」などでお馴染みの配置)です。後方への主砲斉射界を広く取ることができると言う点と、主砲弾庫をコンパクトにまとめられる、と言うメリットもあるかも。もしこのメリットがあるとすると、機関に余裕を持たせることができたかもしれませんね。f:id:fw688i:20210228115632j:image

(直上の写真:主砲配置と副砲配置の拡大カット)

(下の写真は「甲斐」と「美濃」のレイアウト比較:中段は主砲の前方斉射の射角比較。下段は後方斉射の射角比較。かなり両者の斉射射角に差があることがわかります)

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「東郷元帥は戦艦の主砲は首尾線の砲力を重視せよ、とおっしゃった」というお言葉が、こういう場合にも影響するのかな?

 

残り1隻分のストックをどう使おうか

こうして2隻を製作した後、残り1隻分のストックで、対空兵装の強化改装後を制作するか、副砲を「A-140a」案に準じて艦尾部に集中配置する艦を作成するか、迷っていました。副砲の集中配置案がいまいち筆者の感覚にしっくりこなかった、というところに迷いの源泉がありました。

 

「A-140号計画艦」副砲集中配置案の制作

上記にうだうだと書いていますが、結局製作したのは「副砲集中配置案」でした。

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(A-140a案の副砲艦尾集中配置デザイン:副砲塔の配置位置は原案のA-140aに近いものにしてみました。両舷副砲の配置はもう少し後方でも良かったのかも。副砲塔の配置以外は上掲の「甲斐」と同じスペックです)

この副砲の集中配置は「感覚的に好きじゃない」とか書いていましたが、結局、「模型的に面白い」方を取ってしまった、という感じです。

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(前々回でご紹介した戦艦「甲斐」とのレイアウト比較)。

副砲塔の配置は意外と違和感がないかも。これはこれでアリかもしれないなと、制作してみて思います。作った意味があった、ということでしょうかね。どうですか、なかなか「面白い」と思いませんか?作ってみないとわからない!(模型作ってて良かったなあ)

 

ちょっと未練がましく:対空火器強化案の再現にもトライしてみます

せっかくなので、対空火器強化案の制作用に準備しておいた両舷の対空砲座増設パーツを仮置きしてみます。(マスキングテープでそっと固定して設置してみました)

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なんとなく「大和級」で見慣れた配置なので、違和感はありません。しかし実際にはかなりの重量増になるでしょうね。速力低下や復元性に課題が間違いなく出たでしょう。

しかも下の比較カットでわかるように、両舷の副砲塔の射界は大きく制限されてしまいます。やはり対空火器強化の際には実用性と重量を考慮すると、両舷の副砲塔は撤去されるべきだ、ということでしょうね。もしかすると副砲は全て撤去、でも良いのかもしれません。
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「A-140a号計画艦」デザインバリエーションの一覧

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この船は横からのシルエットではあまり違いが出ないですね。もっと言うと、デザインヴァリエーションの幅が狭いのかも。

まあ、お決まりの質問ですが、どれが好きですかね?

 

と言うわけで、今回は少々手抜きですが、ここまで。 

模型なら、こんなこともできるんですよ、と言うことで。

 

次回は・・・???

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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第二次世界大戦下のドイツ海軍駆逐艦、水雷艇

今回は、このところ続けてきた「脇道探索」は、一休みして、溜まっていた懸案のお題を一つこなすことにします。

 

ドイツ海軍の駆逐艦水雷艇

第一次世界大戦敗戦後、ドイツはベルサイユ条約により海軍軍備に大きな制限を受けます。具体的には、駆逐艦は800トン以下に排水量制限が設けられ予備艦4隻を含め16隻、水雷艇は200トン以下の排水量のものを、やはり予備艦4隻を含め16隻という保有制限でした。加えて艦齢15年を越える場合にのみ代艦建造が認められていました。

こうした厳しい制限下で、ドイツ海軍は、特に大型戦闘艦の分野ではこの制約を逆手に取ったような「ポケット戦艦」などの新機軸の新造艦を建造し始めました。

 

ヴェルサイユ条約の制約下での新造駆逐艦

1923年の建艦計画から、旧式駆逐艦の代艦の建造計画が始動し始めます。この流れは1924年度の建艦計画でも継続し、併せて12隻の駆逐艦の代艦建造が始められました。

1923年型水雷艇同型艦6隻)1924年水雷艇同型艦6隻)

ja.wikipedia.org

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(「1923年級」水雷艇の概観:70mm in 1:1250 by Hansa?)  

両級合わせて12隻が1926年から1929年にかけて就役しました。

就役当初は、前出のベルサイユ条約の制約から駆逐艦に分類されていました。

公称800トン(実際には900トンを少し超えていました)の制限いっぱいの船体を持ち、4インチ砲3基と500mm三連装発射管2基を搭載し、33ノットの速力を発揮することができました。このスペックは例えば本稿前回でご紹介したスウェーデン海軍の「エレンスコルド級駆逐艦(1927年就役)にほぼ準じるもので、同じクラスの艦級と比較して見劣りするものでありませんでしたが、列強の駆逐艦の標準は1500トンクラスに移行しており、これらと比較すると「格下」の感は否めませんでした。「1924年型」ではこれらに対するせめてもの対策として、主砲口径を4インチから5インチに拡大する設計が盛り込まれたようですが、連合国の反対にあって4インチ砲の実装となりました。

 

ナチス政権の台頭後、1935年にドイツは再軍備を宣言、同年には英独海軍協定が結ばれ、実質上、ベルサイユ条約の制限下から解き放たれました。この結果建造されることとなった2000トン級の船体を持つ「1934年級」駆逐艦(後述)の誕生とともに、同級は水雷艇に艦種変更されました。同時期に搭載魚雷の口径を21インチに拡大し、対空兵装の増設を行うなど、兵装強化が実行されました。

第二次世界大戦期には、同級に続けて建造された後述する新型「水雷艇」の艦級(800トン級、1200トン級)とともに、護衛任務、機雷戦任務等に、使い勝手の良い汎用艦として活躍しました。

第二次世界大戦前に僚艦との衝突事故で沈没した1隻を除き、残り11隻全てが第二次世界大戦中に失われました。

 

ドイツ再軍備宣言後、英独海軍協定後の駆逐艦

「Z1級:1934級」駆逐艦同型艦4隻)

ja.wikipedia.org

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(「Z1級」駆逐艦の概観:95mm in 1:1250 by Hansa) 

同級は前述のドイツ最軍備宣言、英独海軍協定の締結を経て、それまでのベルサイユ条約の制限を脱した艦級として新たに建造されました。

それまでドイツの駆逐艦は800トンの排水量制限を受けていましたが、同級は同時期にフランスやポーランドが整備中であった大型駆逐艦に対抗するため、いきなり2200トン級の大きな船体を与えられています。f:id:fw688i:20210321125652j:image

搭載兵装は、5インチ単装砲5基と21インチ4連装魚雷発射管2基と標準的で、36ノットの速力を有していました。しかし搭載した新型の高圧ボイラー等の機関の整備が難しいなど、課題が見つかったため、4隻で建造が打ち切られ、改良型の後述の「Z5級」に建造は移行しました。

4隻中3隻が第二次世界大戦で失われ、生き残った一隻は英国に賠償艦として移譲されました。

 

「Z5級:1934A級」駆逐艦同型艦12隻)

ja.wikipedia.or

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(「Z5級」駆逐艦の概観:96mm in 1:1250 by Hansa) 

 前出の「Z1級」駆逐艦の改良型で、12隻が建造されました。

前級で課題のあった機関に改良が加えられ、併せて凌波性を改善するために船首楼を若干高くするなど設計に手が入れられ、結果やや船体が大きくなり、速力も38ノットに向上しています。一方兵装とその配置はほぼ前級を踏襲しています。

第二次世界大戦では12隻中7隻が失われ、残りの5隻は賠償艦として連合国に引き渡されました。

 

「Z 17級:1936級」駆逐艦同型艦6隻) 

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(「Z17級」駆逐艦の概観:97mm in 1:1250 by Hansa) 

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 同級は前級「Z5級」の改良型で、若干船体が大きくなっています。外見的には煙突が低くなる、後檣の位置の変更、艦首形状の変更などが見られます。

兵装は前級に準じています。

6隻が建造され、5隻が1940年4月の第二次ナルヴィク海戦で失われました。生き残った一隻は第二次世界大戦を戦い抜き、戦後、賠償艦としてソ連に引き渡されました。

 

<<ちょっと模型の話>>

下の写真は、「Z17級」のNeptune社製モデルです。ドイツ駆逐艦で唯一筆者が保有するNeptune製モデルです。筆者のコレクションではドイツ艦は基本的にHansa社製で統一するということにしてきましたが、改めて細部等の造作にはかなりの差があることに気がつきました。やっぱりNeptune社製でコレクションをしてみようかな?Hansa社製はしっかりしてはいますし、寸法等に何か大きな誤差があるわけではないのですが、全体に大柄、というか「ゴツイ」印象を受けますね。まあ、上の写真と比べてみてください。皆さん、ご感想はいかがでしょうか?Hansa社の方が手に入りやすんだよねえ。特に金額的に・・・。ちょっと考えどころですね。

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さて、ドイツ駆逐艦を語る際に、やはりナルヴィク攻略戦での活躍と悲劇を紹介しないわけにはいかないかな、と。 

ナルヴィク攻略戦 :ドイツ駆逐艦の墓場

1940年4月、ドイツはノルウェー侵攻を開始します。(ウェーゼル演習作戦)

ノルウェーの北極圏に位置するナルヴィクはオーフォートフィヨルドの最深部に位置し、北大西洋海流に影響されて冬季でも利用可能な不凍港でした。ドイツは鉄鉱石の多くをスウェーデンから供給されていましたが、そのボスニア海に面した積み出し港が冬季には凍結するため、ナルヴィクはその搬出ルートとして大変重要でした。

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侵攻戦の一環として、ドイツはエデュアルト・ディートルの指揮する山岳猟兵連隊を基幹とする精鋭部隊約2000名を、当時22隻しか保有していなかった駆逐艦のうち10隻を割いてナルヴィクに直接送り込みました。

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この際に陸兵輸送に使用された駆逐艦は、Z1級1隻、Z5級4隻、Z17級5隻でした。

当時ナルヴィク港にはノルウェー海軍の主力ともいうべきノルゲ級海防戦艦2隻が守備についていて、侵入するドイツ駆逐艦に対し砲撃を加えましたが、両艦共にドイツ駆逐艦の魚雷で撃沈され、ドイツ軍山岳猟兵連隊は無事に上陸を果たし、ナルヴィクを無血占領しました。

ノルゲ級海防戦艦

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ノルウェー海軍「ノルゲ級」海防戦艦の概観:75mm in 1:1250 by C.O.B. Constructs and Miniature: 3D printing modelです)  

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 3500トン級の船体に21cm単装砲2基と15cm単装砲6基を搭載するノルウェー海軍の保有する最大最強の海防戦艦です。ああ、こんなところで「脇道探索」の海防戦艦コレクションが役に立つとは・・・。

 

第一次ナルヴィク海戦

陸兵を下ろしたドイツ駆逐艦部隊は、帰途につくために燃料補給を行いますが、給油船の手配に齟齬があり、予定より時間を要してしまいました。

その間に、イギリス海軍のH級駆逐艦5隻からなる駆逐艦部隊がオーフォートフィヨルドに侵入し、ドイツ艦隊を奇襲しました。ドイツ駆逐艦もこれに反撃し、双方2隻づつの駆逐艦を失いました。規模としては小さな戦闘でしたが、双方の指揮官が戦死するなど、狭い海面での激戦だったと言えるでしょう(第一次ナルヴィク海戦:1940年4月9日)。

この戦闘の結果、ドイツ駆逐艦部隊は2隻の損失の他4隻が損傷を受け、損傷のない4隻は給油を受けていない状況で帰途につける状態ではありませんでした。

「H級」駆逐艦

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(「H級」駆逐艦とほぼ同等の外観を持つ「G級」駆逐艦の概観:79mm in 1:1250 by Neptune: そして直下の写真は、「G級」と「I級」駆逐艦の艦橋のアップ。「H級」の艦橋は下の「I級」の方が近い形状をしているかもしれません。こうして整理するまで、実は「H級」のモデルが手元にないことに気がつきませんでした。やれやれ) 

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第二次ナルヴィク海戦

4月13日、戦艦「ウォースパイト」と「トライバル級駆逐艦を中心に9隻の駆逐艦で構成された英艦隊がオーフォートフィヨルドに再び侵入し、ドイツ駆逐艦部隊と交戦しました。

戦艦「ウォースパイト」

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(「クイーン・エリザベス級」戦艦の1942近代化改装後: 32,930t, 23knot, 15in *2*4, 5 ships,154mm in 1:1250: 戦艦「ウォースパイト」は第一次世界大戦中に建造された「クイーン・エリザベス」級の一隻で、数次改装を経たとは言え、第二次世界大戦期にはすでにロートル艦と言っても良い艦齢でした。しかし大戦中には八面六臂ともいえる活躍をし、多くの識者から「大戦中の最優秀戦歴戦艦」の呼び声が高い船ですね。 日本海軍でも最も活躍した「金剛級」の4隻もやはり主力艦中の最旧式艦であり、旧式艦ならでは、物惜しみされずいろいろな戦場に投入される、ということなのかもしれません。

ナルヴィクでの戦闘でもフィヨルド外まで「ウォースパイト」と同行していた「レナウン」は、その稀な高速性からオーフォートフィヨルドの狭い海面での戦闘での不測の事態を懸念して温存方針が出され、フィヨルド侵入戦に投入されませんでした。

 

トライバル級駆逐艦

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 (直上の写真:「トライバル級駆逐艦の概観。91mm in 1:1250 by Neptune

イギリス海軍第一次世界大戦後新たな設計のもとで1920年代以降建造してきた一連の駆逐艦の集大成というべき艦級で、駆逐艦部隊の旗艦として巡洋艦の代替も出来る様に設計された大型駆逐艦です。1900トンクラスの船体を持ち、これに12cm連装砲4基、53.3cm4連装魚雷発射管1基を搭載し、36.5ノットの速力を発揮しました。

 

4隻の損傷艦と初期の侵攻戦と第一次海戦で弾薬の欠乏したドイツ駆逐艦部隊は次第に追いつめられ、最終的には10隻全てが失われました。英艦隊は駆逐艦3隻が損傷しました。

冒頭にも記述しましたが、当時ドイツ海軍は駆逐艦を22隻しか保有しておらず、そのうち10隻が一気に失われたことは大打撃でした。

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直上の写真は、ドイツ海軍の「Z17級」駆逐艦(左)と英海軍の「トライバル級」(中央)、「G級」(右)の大きさ比較。かなりドイツの駆逐艦が大きいことがわかります。Neptune社製モデル同士の比較なので、ほぼ見た目通りと思っていただければ)

 

その後、ナルヴィクを巡ってはノルウェー軍とそれを支援するイギリス軍、フランス軍ポーランド軍部隊により、5月ナルヴィクは奪還され、ドイツ陸軍の山岳猟兵部隊は周辺の山地に追いやられましたが、結局、フランスでの英仏軍の敗北により、連合軍は撤退を決定し、ドイツ軍が再度占領することとなりました。

 

「Z 23級:1936A級」駆逐艦同型艦前後期型あわせて15隻)

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(「Z23級」駆逐艦の概観:101mm in 1:1250 by Hansa)  

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(直上の写真:「Z23級」の特徴である150mm砲の配置のアップ。艦首部に単装砲1基と艦尾部に3基の配置)

 同級では搭載主砲の大口径化が行われています。具体的にはそれまでの5インチ単装砲5基搭載という標準的な駆逐艦の主砲兵装を、軽巡洋艦並の150mm単装砲4基に搭載口径を強化し、それに伴い船体がさらに大型化しました。前期型・後期型(「Z31級」とされる場合もあります)併せて15隻が建造されました。

主砲搭載の形式については、設計当初では艦首部に150mm連装砲塔を搭載し、後檣周辺に単装砲3基、計5門の搭載とする予定でしたが、連装砲塔の製造が間に合わず、初期型の8隻は単装砲4基搭載で建造され、後に4隻が連装砲塔に換装しています。

後期型7隻は建造時から艦首には連装砲塔を搭載していました。

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(「Z 23級後期型=Z31級」駆逐艦の概観:101mm in 1:1250 by Hansa: 直下の写真は、「後期型」の最大の特徴である艦首部の連装砲塔) 

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第二次世界大戦で前期型・後期型併せて15隻中6隻が先頭で失われ、残り9隻は賠償艦として連合国に引き渡されました。

150mm砲の話

砲力強化を狙い採用された150mm主砲でしたが、小型の駆逐艦には負担が大きく、連装砲塔の重量(単装砲の3倍:60トン)による艦首浮力の低下と凌波性の悪化、砲弾重量の増加に伴う射撃速度の低下(装弾等は人力で行われたようです)と主戦場の北海等の荒れる海での運用の困難さ等から、主砲口径の大きさの有利さを活かすことができず、次級では再び5インチ主砲に戻されました。

駆逐艦の艦名の話

同級から駆逐艦の艦名はZ(Zerstorer)の「駆逐艦艦種記号」と番号の組み合わせのみで表記されることとなりました。ちなみに同級以前の駆逐艦には第一次世界大戦で戦死したドイツ帝国海軍軍人の名前が与えられていました。

 

「Z 35級:1936B級」駆逐艦同型艦3隻 建造途中2隻)

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(「Z35級」駆逐艦の概観:102mm in 1:1250 by Hansa:  直下の写真、「Z35級」では不評だった前級の150mm主砲を再び4インチ砲に変更しています)  

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 ナチス・ドイツ海軍が建造した最後の駆逐艦の艦級です。

 前級で採用した150mm主砲が、課題のみ多く、大口径の有利さを発揮できないことが明確になったため、主砲は同級では5インチ砲に戻されています。

主砲口径を除いては、基本的には前級「Z23級」を継承しており、5隻の建造が計画されていましたが、うち3隻が就役、残りの2隻は敗戦のためそのままスクラップにされました。

就役した3隻は2隻が自軍機雷で失われ、残る1隻も敗戦時に自沈しています。

 

水雷艇

「T1級:1935級」「T13級:1937級」水雷艇同型艦21隻)

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 同級は前級にあたる「1923年級」水雷艇が、前述のように本来はベルサイユ条約の制限下での代艦駆逐艦として設計されたのに対し、ロンドン条約での駆逐艦の定義から逃れるために制限外の600トン級の船体の「水雷艇」として設計されました。結果両者は、最終的には同じような大きさとなりましたが、そのため全く異なる外観を持つ艦級となりました。

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(「T1級」水雷艇の概観:66mm in 1:1250 by Neptune) 

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(直上の写真は、「T1級」から始まる新水雷艇のシリーズの特徴的な兵装配置。主砲は艦尾に4インチ砲を1基のみ搭載し、主兵装が魚雷であることがよくわかります。後々、この砲兵装の弱さは課題となってゆきます。しかし意欲的な設計であることは伝わってきますよね)

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(「T13級」水雷艇の概観:68mm in 1:1250 by Neptune: 艦首部にバウチェイサーと言われる機関砲を搭載し砲力を少し強化しています) 

 同級の主兵装は21インチ三連装魚雷発射管2基で、砲兵装は艦尾に4インチ単装砲1基を搭載するのみで、他には機関砲しか搭載しておらず、このクラスの艦種に期待される警備活動や、船団護衛、機雷戦等の用途には少し物足りない結果となりました。

800トン級の船体を持ち、35ノットの速力を発揮することができました。

「T13級」はやや船体を大型化して航続距離等を伸ばしていますが、基本的な兵装等には大きな差異はありませんでした。

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(「T1級」(手前)と「T13級」の比較:直下の写真では艦首形状の違いやボートダビッドの形状の違いなどをみていただければ。上が「T1級」)
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「T1級」「T13級」あわせて21隻が建造されましたが、12隻が戦没しています。

 

「T22級:1939級」水雷艇同型艦15隻) 

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(「T22級」水雷艇の概観:81mm in 1:1250 by Neptune:  直下の写真では、「T22級」の特徴的な主砲配置。前級で課題であった砲兵装の弱点を各段に強化し、汎用性の高い小型駆逐艦を実現しました)

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 「同級」は前級「T1級・T13 級」が砲兵装に課題があったことを踏まえ、砲兵装を著しく強化した設計となりました。1200トン級の船体を持ち32.5ノットの速力を発揮しました。前級から飛躍的に大きくなった船体に4インチ単装砲を4基搭載し、21インチ三連装魚雷発射管2基を搭載しています。大型化した船体に各種の機関砲等も搭載し火力が強化され、小型駆逐艦としての汎用性が向上しています。

 

15隻が建造され、11隻が戦没しています。

 

ちょっとおまけで、

Sボート:高速戦闘艇

ja.wikipedia.org

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(直上の写真:「Sボート」前期型(左:26mm)中期型(中央:28mm)後期型(右: 29mm)の概観比較: 下の写真では概観の最大の違いである魚雷発射管の装備形態の比較:上から前期型、中期型、後期型の順)
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ドイツ海軍は「Sボート」の呼称で知られる高速戦闘艇を多数戦闘に投入しています。2基の魚雷発射管を搭載し、予備魚雷も含め4本程度(一部は予備魚雷なし)の魚雷を搭載しこれを主兵器としているところから、魚雷艇と分類されています。主兵装の魚雷以外に複数の機関砲を搭載しており、後期型になる程、重武装化が進んでゆきます。

連合国の魚雷艇に比べ、船体が100トン程度と概ね大きく(連合国の代表的なPTボート「エルコ80フィート級」は51トン)、40ノット程度の速力を出すことができました。特に後期型は魚雷発射管が船首楼内に格納され、凌波性、航洋性が優れていました。

形式には各種ありますが、外見的には艦首の魚雷発射管を露出している前期型と、魚雷発射管を船首楼に格納した中期型(S-30型)、船体を延長して機関砲を増強した後期型( S-26型、S-100型)に大分類ができるでしょう。

「Sボート」は247隻(?)が建造され、沿岸哨戒や警備活動のほか、船団護衛、あるいは通商破壊戦、 機雷敷設など幅広い目的で運用され、第二次世界大戦期間中を通じ、水上戦闘による戦果21万トン、機雷戦による戦果15万トン、計36万トンの戦果をあげました

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ということで今回は第二次世界大戦期のドイツ海軍艦艇で紹介できていなかった「駆逐艦水雷艇」そしておまけで「Sボート」をご紹介しました。

今回はここまで。

 

来週末は、多分、「本業対応」で一回スキップ、あるいは新着モデルがあればサクッとその辺りをご紹介、ということで。

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脇道探索:スウェーデン海軍第二次世界大戦期の艦隊駆逐艦総覧

このところ、「脇道探索」にはまっています。具体的にはご紹介の続いている「スウェーデン海軍」の諸艦艇であり(もう一つ、なんとか、急に沸き起こった「A-140計画艦」の方は先週で一応の一段落をしましたので)、筆者の知識不足もあり、なかなか体系的な理解に進んでいきません。

本稿では、「日本海軍の航空母艦小史」(4回シリーズ)、「フランス海軍の第二次世界大戦期の巡洋艦総覧」「ドイツ海軍:第二次世界大戦期の駆逐艦」「英海軍:第二次世界大戦期の巡洋艦/駆逐艦」(2−3回シリーズ)等、ずっと温めて準備中のテーマがいくつかあるのですが、筆者の興味・関心がすっかり「スウェーデン」の方へ行ってしまっていて、気持ちをそちらに持っていけない、というのは実情なのです。

加えて非常に現実的な話をすると、来週末とその次の週末には、もしかすると珍しく週末に仕事をせねばならないかもしれず(筆者も本業があるのです)、そんなこんなで、集中力のいるテーマを手がけるのは少し先になりそうです。

ということで、もうしばらく、このところ続いている「取り止めのない感じ」は続くと思います。何卒、ご容赦願います。

 

スウェーデン海軍の近代的艦隊駆逐艦の系譜

気を取り直し、今いまの関心事である「スウェーデン海軍」です。現在第二次世界大戦期(中立を貫き、参戦はしませんでしたが)の艦艇は結構充実してきました。ともあれ、艦隊駆逐艦の6艦級 がなんとか揃いましたので、そちらのご紹介を。

 

第一次世界大戦期、スウェーデンはこの大戦にも中立を貫き、参戦しませんでしたが、当時、海軍は10隻の駆逐艦と29隻の水雷艇を運用していたとされています。この時期の同海軍の駆逐艦は、おおむね他のヨーロッパ諸国の海軍と同様、500トン前後、3インチ砲を主砲として搭載し18インチの魚雷発射管を搭載している、いわゆる第一次世界大戦型の標準的なものでした。バルト海での運用という特性もあり、同海軍の駆逐艦はその中でもやや小型の部類に属していた、と言ってもいいかもしれません。

スウェーデン海軍の代表的な第一次世界大戦駆逐艦「フギン級:Hugin Class (1911)」

en.wikipedia.org

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(「フギン級」二等駆逐艦の概観:就役時の姿:53mm in 1:1250 by Argonaut) 

第一次世界大戦前に建造された駆逐艦で、400トン級の船体に就役時には75mm砲3基と457mm魚雷発射管2基を搭載し、30ノットの速力を出すことができました。

第二次世界大戦期には、主砲を100mm砲3基とし、その他対空火器、対潜水艦装備等を搭載し速力22ノットの護衛艦艇として就役していたようです。

Spec: 460 tons. /22 knots in operation./3 x 100mm, 4 x 40 mm AA, 3 x 20 mm AA, TLT 533 mm, 4 ASM mortars and 20 mines. /Crew 80. from Swedish Navy in WW2

 

そして、これらの一連の「第一次世界大戦型」の駆逐艦からの脱却を図り設計されたのが。「エレンスコルド級駆逐艦でした。

「エレンスコルド級:Ehrenskold-class」級駆逐艦:2隻:1927年より就役

en.wikipedia.org

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(「エレンスコルド級駆逐艦の概観:74mm in 1:1250 by Rhenania :下の写真は「エレンスコルド級駆逐艦の主砲等の配置を拡大したもの) 

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それまでの駆逐艦と比較するとほぼ倍程度の900トン級の大きな平甲板型の船体に、12cm(4.7インチ)主砲を3基搭載していました。21インチ級の三連装魚雷発射管2基を搭載し、36ノットの速力を発揮することができました。

同級の搭載兵装、武装配置等は、以降の駆逐艦の標準となりました。

Spec: 974 tons. /36 knots in operation./3 x 120mm, 2 x 2-pdr AA,  2x3TLT 533 mm /Crew 120. from Swedish Navy in WW2

 

「クラース・ホルン級:Klas Horn-class」駆逐艦:2隻:1932年より就役

en.wikipedia.org

f:id:fw688i:20210314134236j:image

(「クラス・ホルン級」駆逐艦の概観:74mm in 1:1250 by  semi-scratch from Wiking:Wiking 社製の次級「ヨーテボリ級」駆逐艦のモデルを使用し、寸法の調整等行いました)

同級は前級「エレンスコルド級」の改良型です。やや船体を拡大し、搭載兵装等はほとんど同じでした。準同型艦とみなす場合もあるようです。

1941年に原因不明の爆発により両艦とも大きな損傷を受けましたが、「クラス・ホルン」のみ修復され増した(「クラス・ウグラ」は「クラス・ホルン」の再建のために部品供給し、再建されませんでした)。

Spec: 1020 tons. /36 knots in operation./3 x 120mm, 2 x 40mm AA, 2x3TLT 533 mm /Crew 130from Swedish Navy in WW2

 

ヨーテボリ級:Goteborg-class」駆逐艦:6隻:1936年より就役
en.wikipedia.org

f:id:fw688i:20210314134519j:image

(「クラス・ホルン級」駆逐艦の概観:76mm in 1:1250 by Wiking:主砲のみ、少しディテイルアップしています)

同級は、「エレンスコルド級駆逐艦の系譜の最終形と言えるでしょう。船体は1040トンに拡大され、39ノットの高速を発揮することができました。兵装等は、「エレンスコルド級」「クラス・ホルン級」と同等のものを継承しています。

駆逐艦勢力の中核として6隻が建造され、後にフリゲート艦に改装されて、1960年代まで活躍しました。

Spec: 1040 tons. /39 knots in operation./3 x 120mm, 6x 25mm AA, 2x3TLT 533 mm /Crew 135from Swedish Navy in WW2

 

コラム:少し模型の話

下の写真は、Wiking 社の「ヨーテボリ級」(上段:今回、筆者が紹介している、筆者の所有するモデル)」とRhenania社の「ヨーテボリ級」を比較したものです。(下段:Rhenania社モデルの写真はネットより) もちろん基本的なレイアウトなどは同じですが、全体のフォルムやできているの再現など、Rhenania社の方が優れているのが、理解いただけると思います。f:id:fw688i:20210314141427j:image

また、下の写真はRhenania社製の「エレンスコルド級」(上段)と「ヨーテボリ級」の比較。今回文章ではご案内しているように、「ヨーテボリ級」が「エレンスコルド級」の発展型であるということがよくわかると思います。

f:id:fw688i:20210314141424j:image
やはりこうして比較すると、水準の高いモデルにあわせてコレクションをしたくなります。幸いなことに、筆者は現在、本稿の2月21日の投稿でもご紹介したように、Rhenania社と直接交渉し、同社の「ヨーテボリ級」駆逐艦のモデルを入手できる目処がつきました。入手次第、アップデートし差し替える予定です。

 

「プシランデル級:Psilander class」駆逐艦:2隻:1941年より就役(この部分は前回と同じ内容です)

「プシランデル級」駆逐艦は、1920年台後半に建造されたイタリア海軍の「セラ級」駆逐艦の3番艦と4番艦で、1940年にスウェーデン海軍に売却されました。

f:id:fw688i:20210307100826j:image

(「プシランデル級」駆逐艦の概観:67mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature)

Spec: 1250 tons. / 35 knots /4 x 120mm, 2 x 40 mm AA, 2 x 13.2 mm AA, 4 TLT 533 mm, 10 mines /Crew 106.from Swedish Navy in WW2

 

ja.wikipedia.org

1250トンの船体に12cm連装砲を2基、連装魚雷発射管を2基搭載し、イタリア海軍では既に旧式艦に分類されながらも35ノットの高速を発揮することができました。これは当時のスウェーデン海軍の艦隊駆逐艦(上記の3艦級)よりも少し大きく、兵装はこれらを上回っており、同じく内海である地中海での行動を想定された設計とも併せて、購入が決められたのかもしれません。

イタリアからの回航途上、既にイタリアと開戦直前の緊張関係にあった英国に1ヶ月間、抑留されています。そのような苦労の末入手した同級駆逐艦でしたが、バルト海での運用には不向きであった、という評価だったようです。1947年まで在籍していました。

(使用したモデルはこちら:いつものShapeways

www.shapeways.com

 

コラム:再び模型の話

下の写真は、本稿前回でご紹介したBrown Water Navy Miniaturem製の「プシランデル級」駆逐艦(奥)とArgonaut社製「セラ級」駆逐艦の模型を塗装したものの比較。実は前回ご紹介のために入手したものの制作途中から、BWNM社のモデルがやや小さいことが気になっていました。3D printingのモデルは、素材によってはディテイルの再現性が高く(もちろん製作者によりばらつきはありますが、BWNM社は非常に高い水準にあるメーカさんだと認識しています)、その割には価格が安いので、非常に頼りにしているのですが、今回はArgonaut 社製のモデルの方がしっくりきますね。ということで、イタリア海軍からスウェーデン海軍に移籍。あらら、イタリア海軍の駆逐艦コレクションには穴が開いちゃうけど、まあ、こういうこともあります。

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ということで、本文中の写真を下記の写真にいずれ差し替えます。

f:id:fw688i:20210314133708j:image
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「ヴィズビュー級:Visby-class」駆逐艦:4隻:1943年から就役

en.wikipedia.org

f:id:fw688i:20210314134828j:image

(「ヴィズビュー級」駆逐艦の概観:77mm in 1:1250 by Star: 主砲のみ少しディテイルアップしています)

 (下の写真は、「ヴィズビュー級:駆逐艦お特徴である主砲と煙突の配置の拡大)

f:id:fw688i:20210314134824j:image

同級はスウェーデン海軍が第二次世界大戦中に建造した駆逐艦の艦級です。4隻が建造されましたが、うち2隻の予算は前述の爆発事故で損傷した「クラス・ホルン級」の代艦として認められたものでした。

前級「ヨーテボリ級」までの「エレンスコルド級」をタイプシップとした駆逐艦お系譜とは異なり、船体が一気に200トン近く大型化し、かつ艦尾形状も角型に改められるなど、新機軸が盛り込まれています。

一方主要兵装は、前級までの装備をほぼ継承していますが、艦尾に搭載した対潜戦闘装備、機雷戦装備等が充実しています。

1960年代に全てがフリゲート艦に艦種変更され、内2隻はヘリコプター搭載能力を付与されるまでの改装を受けています。

1980年前後まで現役で活躍しました

Spec: 1200tons. / 39 knots /3 x 120mm, 4 x 40 mm AA, 3 x 20 mm AA, 6 TLT 533 mm, 4 ASM mortars and 20 mines /Crew 140 .from Swedish Navy in WW2

 

「エーランド級:Oland ~class」駆逐艦:2隻:1947年より就役

en.wikipedia.org

f:id:fw688i:20210314135236j:image

(「エーランド級駆逐艦の概観:88mm in 1:1250 by Delphine)

 (下の写真は、「エーランド級駆逐艦の特徴である連装主砲塔の拡大と角形の艦尾形状)

f:id:fw688i:20210314135626j:image

同級はスウェーデン海軍が第二次世界大戦中に建造した駆逐艦です。どう海軍としては、初めて2000トンを超える大型駆逐艦で、主砲の搭載も連装砲塔を採用するなど、それまでの同海軍の駆逐艦とは一線を画する外観を示しています。

当初4隻の建造が計画されていましたが、大戦の終結とともに2隻がキャンセルされました。就役は大戦終了後となりました。

6基の40mm対空機関砲、8基の25mm対空機関砲など、対空装備と対潜戦闘装備、機雷戦装備が充実しています。

Spec: 2000tons. / 35 knots /4 x 120mm, 6 x 40 mm AA, 8 x 25mm AA, 6 TLT 533 mm,  /Crew 210 .from Swedish Navy in WW2

 

スウェーデン海軍は上記の「エーランド級」の後も、「ハッランド級」「エステルイェートランド級」の2艦級の駆逐艦を建造しますが、その後、コルベットと高速戦闘艇中心への計画の転換があり、現在は駆逐艦を運用していません。

やはりバルト海沿岸の警備、という同海軍の主要任務を考慮すると、小回りの効く艦艇が有効ということでしょうか?今回ご紹介した駆逐艦も、同時期の他国海軍に比べると小ぶりな艦級が多く、これも同じ背景なのかもしれません。

 

・・・と、つらつらと書いてきましたが、今回、一番書きたかったのは、「二つのコラム」かもしれません。つまり、コレクションが進むにつれ(今回も含め、最近の一連の「スウェーデン海軍」話の流れの中で、皆さんにも、「コレクションの充実過程」を一緒に体験してもらっています)、モデルの品質のばらつきがどうしょうもなく気になってくる、という一種の「業」について、だったのかもしれない、と感じています。

 

というわけで今回はここまで。

 

次回は・・・??? Rhenania社からはまだ「準備できたから発送します。お金払って頂戴」という連絡が来ませんので、多分、次回も間に合わないでしょうね。来週末は時間作れるのかな?

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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続続「脇道探索」:A-140計画艦のデザインバリエーション(第1期?)は最終回、その他のアップデート

A-140計画艦:3隻目の制作

さて、前回の続きです。

fw688i.hatenablog.com

fw688i.hatenablog.com

本稿では、上掲の前々回、前回で、手持ちの「大和級」戦艦のストックを用いて、「大和級」設計当初に考案された設計案の中からA-140a案を実現していたら、という「IF」艦を試作し、ご紹介してきました。

「A-140」計画艦は帝国海軍が140番目に計画した軍艦、という意味であり、aからfまでの枝符号分けがされた上で、さらにそれぞれに機関のバリエーションなどがあり、全部で20数種(23種?)の計画案があったとされています。

「A-140a」というのは、その枝番が示す通りその最初期の案で、外観的には主砲を全て艦首部に集中配置しており、さらにその特長として計画案の中でオリジナル(A-140)とともに、30ノットを超える速力を有した計画案でした。少し補足すると実際のA-140a計画艦は、実際にはもう少し長い船体を持っていました(今回制作したモデルは、Delphine社製の船体を用いている「筆者事情」から、実在の「大和級」とほぼ同じ長さになっています)。

もう一つ、この20数種の計画案を見て興味深いのは、オリジナル案(A-140)と実在の「大和級」のみがタービン機関搭載艦であるのに対し、他の案は全てタービンとディーゼルの混載艦であったというところだと考えています。つまり日本海軍は機関にディーゼルを採用することにより、なんとか燃料効率を改善し、つまりは搭載燃料に比して長い航続距離を持ち、さらにタービン機関との混載により高速力をも併せ持つ戦艦を作ろうと足掻いた、ということだと思います。このうち高速力という点は比較的早い段階で諦めがついたのか、A-140b案で既に27.5ノットとし、その後、実現案に至るまで30ノットクラスの高速艦の案は提示されませんでした。

しかし残念なことに信頼できるディーゼル機関が間に合わず、実在の「大和級」はタービン機関のみの搭載となっています。

 

少しこれまでの制作艦をおさらいしておくと・・・。

前々回掲載の「A-140a」計画艦:「甲斐」と命名(If艦ですので、もちろん架空名です)

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(戦艦「甲斐」(=「大和級」というより「A-140計画艦」というべきか。主砲前部集中搭載案から)の概観:主砲の前部集中配置で防御装甲の配置を効率化し、タービンとディーゼルの混載と共に、日本海軍悲願の高速性と長い航続距離を両立させることを目指しました)

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(直上の写真:「大和」(奥)と「甲斐」の概観比較:「甲斐」がほんの少し小振りで(これは狙ったわけではなく、単純にNeptune社(大和)とDelphine社のモデルフォルムの違いに起因しています)、主砲搭載位置の差異など見ていただけるかと。何故か主砲前部集中配置の方が、機動性が高そうな気がしませんか?写真ではわかりにくいですが、煙突が「甲斐」の方がやや細く、タービンとディーゼルの混載だから、と無理やり・・・)

 

前回掲載の「A-140a」計画艦:「美濃」と命名(If艦ですので、もちろん架空名です

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(戦艦「美濃」A-140a案の山形主砲配置デザイン:主砲の配置位置がよりコンパクトになっていることがよくわかります。主砲配置以外は上掲の「甲斐」と同じスペックです)

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(上の写真は「甲斐」と「美濃」のレイアウト比較:中段は主砲の前方斉射の射角比較。下段は後方斉射の射角比較。かなり両者の斉射射角に差があることがわかります)

 

残り1隻分のストックをどう使おうか

前回で、ストックが残り1隻分であるとご案内し、筆者の中では上掲の「甲斐」の対空兵装強化後を作成するか、副砲を「A-140a」案に準じて艦尾部に集中配置する艦を作成するか、迷っている、というご紹介をしました。どちらかというと、対空兵装強化後のモデルに気持ちは傾いている、とも・・・。

 

で、結局作成したのは、副砲艦尾部集中配置案を作成

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(A-140a案の副砲艦尾集中配置デザイン:副砲塔の配置位置は原案のA-140aに近いものにしてみました。両舷副砲の配置はもう少し後方でも良かったのかも。副砲塔の配置以外は上掲の「甲斐」と同じスペックです)

本稿前回では。この副砲の集中配置は「感覚的に好きじゃない」とか書いていましたが、結局、「模型的に面白い」方を取ってしまった、という感じです。

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(前々回でご紹介した戦艦「甲斐」とのレイアウト比較)。

副砲塔の配置は意外と違和感がないかも。これはこれでアリかもしれないなと、制作してみて思います。作った意味があった、ということでしょうかね。どうですか、なかなか「面白い」と思いませんか?作ってみないとわからない!(模型作ってて良かったなあ)

 

ちょっと未練がましく:対空火器強化案の再現にもトライしてみます

せっかくなので、対空火器強化案の制作用に準備しておいた両舷の対空砲座増設パーツを仮置きしてみます。(マスキングテープでそっと固定して設置してみました)

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なんとなく「大和級」で見慣れた配置なので、違和感はありません。しかし実際にはかなりの重量増になるでしょうね。速力低下や復元性に課題が間違いなく出たでしょう。

しかも下の比較カットでわかるように、両舷の副砲塔の射界は大きく制限されてしまいます。やはり対空火器強化の際には実用性と重量を考慮すると、両舷の副砲塔は撤去されるべきだ、ということでしょうね。もしかすると副砲は全て撤去、でも良いのかもしれません。
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「脇道探索」のアップデート

そしてもう一つの今回のお題は、この所のマイブームである「脇道探索」、つまり「スウェーデン海軍」のモデル収集のアップデートを少し。駆逐艦が少し充実しました。

 

イタリア製駆逐艦の購入

スウェーデン海軍は、いわゆる大戦間に自国製の艦隊駆逐艦を、下記の3艦級あわせて10隻保有していました。

「エレンスコルド級:Ehrenskjold-class」:2隻

「クラース・ホルン級:Klas Horn-class」:2隻

ヨーテボリ級:Goteborg-class」:6隻

しかし駆逐艦の絶対数が不足しているのは否めず、第二次世界大戦の勃発を受け、急遽、イタリアから2隻の艦隊駆逐艦を購入しました。 

 

「プシランデル級:Psilander class」駆逐艦

「プシランデル級」駆逐艦は、1920年台後半に建造されたイタリア海軍の「セラ級」駆逐艦の3番艦と4番艦で、1940年にスウェーデン海軍に売却されました。

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(「プシランデル級」駆逐艦の概観:67mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature)

Spec: 1250 tons. / 35 knots /4 x 120mm, 2 x 40 mm AA, 2 x 13.2 mm AA, 4 TLT 533 mm, 10 mines /Crew 106.from Swedish Navy in WW2

 

ja.wikipedia.org

1250トンの船体に12cm連装砲を2基、連装魚雷発射管を2基搭載し、イタリア海軍では既に旧式艦に分類されながらも35ノットの高速を発揮することができました。これは当時のスウェーデン海軍の艦隊駆逐艦(上記の3艦級)よりも少し大きく、兵装はこれらを上回っており、同じく内海である地中海での行動を想定された設計とも併せて、購入が決められたのかもしれません。

イタリアからの回航途上、既にイタリアと開戦直前の緊張関係にあった英国に1ヶ月間、抑留されています。そのような苦労の末入手した同級駆逐艦でしたが、バルト海での運用には不向きであった、という評価だったようです。1947年まで在籍していました。

(使用したモデルはこちら:いつものShapeways

www.shapeways.com

 
ロムルス級:Romulus class」沿岸警備駆逐艦:Coastal Destroyer

上記の「プシランデル級」駆逐艦とほぼ同時期に、スウェーデン海軍は、やはりイタリアから「スピカ級」水雷艇を2隻購入し、これを「ロムルス級」沿岸警備駆逐艦(小型駆逐艦)として就役させています。f:id:fw688i:20210307100820j:image

(「ロムルス級」沿岸警備駆逐艦の概観:66mm in 1:1250 by XP Forge)

Spec: 620 tons. /34 knots /3 x 100mm, 3 x 20 mm AA, 4 TLT 450 mm, 2 ASM mortars and 18 mines. /Crew 100. from Swedish Navy in WW2

ja.wikipedia.org

「スピカ級」水雷艇は、1930年代に32隻が建造されました。軍縮条約の制限を受けない600トン級の船体を持ち、これに10cm単装砲3基と魚雷発射管4基を搭載し、34ノットの速力を発揮することができました。

 スウェーデン海軍はその1番艦と2番艦を購入し、寒冷地仕様に改造し就役させています。同級もイタリアからの回航途上、英海軍に1ヶ月間抑留されています。

同級は1958年まで、在籍していました。

(使用したモデルはこちら)https://xpforge.com/listing/765979483/destroyer-spica-class-italian-navy

 

第二次世界大戦開戦時のスウェーデン海軍保有駆逐艦の一覧f:id:fw688i:20210307100824j:image

 (左から「エレンスコルド級:Ehrenskjold-class」、「クラース・ホルン級:Klas Horn-class」、ヨーテボリ級:Goteborg-class」、「プシランデル級:Psilander class」、「ロムルス級:Romulus class」沿岸警備駆逐艦の順:)

 

2nd class destroyer:二等駆逐艦

スウェーデン海軍は、上記のように10隻の自国製駆逐艦と2隻のイタリアから購入した駆逐艦、同じくイタリアから購入した2隻の沿岸警備駆逐艦という戦力で、第二次世界大戦に中立国として臨みましたが、これ以外にも第一次世界大戦期の500トン以下の旧式駆逐艦を沿岸警備等の任務に就役させていました。

これらは2nd class destroyer:二等駆逐艦と分類され、以下の4つの艦級、9隻が第二次世界大戦期に就役していました。

「マグニ級:Magne Class (1906)」:2隻

「シグルズ級:Sigurd class (1909)」:3隻

「フギン級:Hugin Class (1911)」:2隻

「ウランゲル級:Wrangel Class (1918)」:2隻

 

今回、上記のうち「フギン級」のモデルが入手出来ましたので、ご紹介します。

「フギン級:Hugin Class (1911)」:2隻

en.wikipedia.org

f:id:fw688i:20210307101021j:image

(「フギン級」二等駆逐艦の概観:就役時の姿:53mm in 1:1250 by Argonaut) 

第一次世界大戦前に建造された駆逐艦で、400トン級の船体に就役時には75mm砲3基と457mm魚雷発射管2基を搭載し、30ノットの速力を出すことができました。

第二次世界大戦期には、主砲を100mm砲3基とし、その他対空火器、対潜水艦装備等を搭載し速力22ノットの護衛艦艇として就役していたようです。

Spec: 460 tons. /22 knots in operation./3 x 100mm, 4 x 40 mm AA, 3 x 20 mm AA, TLT 533 mm, 4 ASM mortars and 20 mines. /Crew 80. from Swedish Navy in WW2

 

スウェーデン海軍の二等駆逐艦については、「ウランゲル級」も入手の手当て済みではありますが、その他の艦級については入手の目処が立っていません。鋭意、探索中!

というわけで今回はここまで。

 

次回は・・・???

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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