相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

現用艦船シリーズ:米海軍の第二次世界大戦後の護衛駆逐艦・フリゲート艦の系譜

今回はこのところ続けてご紹介している現用艦船(に続く)の艦級の開発系譜の流れで、第二次世界大戦後の米海軍の護衛艦フリゲート艦の艦級のご紹介です。

米海軍の艦種呼称は少しややこしくて、本稿、前々回あたりでご紹介したように1975年以前には「フリゲート艦」と言う呼称は「嚮導駆逐艦:DL=Destroyer Leader:大型の駆逐艦部隊の指揮にあたる艦種」に端を発する、やや大型の艦隊駆逐艦あるいは艦隊巡洋艦に使われていました。しかし今回ご紹介する一連の「フリゲート艦」は1975年の艦種呼称改正以降のもので、それ以前は「護衛艦護衛駆逐艦:DE=Destroyer Escort」と呼ばれていた艦種から発展した艦級の系譜です。ですので、1975年の呼称改正以前は「航洋護衛艦」などと呼ばれていました。

第二次世界大戦では、米海軍は太平洋戦線での島嶼作戦での大規模船団の護衛や、大西洋で猛威を振るったドイツ海軍のUボートへの対抗策として、大量の護衛駆逐艦を建造しました。今回ご紹介する艦級はその発展系として理解していただくのがいいのではないかと考えています。

今回はそう言うお話です。

 

「ディーレイ級」護衛駆逐艦(就役期間:1954−1974:同型艦13隻/2隻はウルグアイ海軍・コロンビア海軍で再就役:1991・1994に退役)

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(「ディーレイ級」フリゲートの概観:77mm in 1:1250 by Trident:Tridentのモデルは制作年代によって細部の仕上がりに大きな差があるので少し注意が必要です。このモデルはかなり端正な印象があります)

同級は米海軍が第二次世界大戦後初めて設計した護衛駆逐艦です。当初米海軍は新型のソナーや対潜兵器を搭載するもっと小型の護衛艦艇を構想しましたが、それらの新型装備を搭載する余裕の必要性から、最終的には第二次世界大戦期の「ジョン・C・バトラー級」護衛駆逐艦をベースとして設計されることとなりました。

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(直上の写真:「ディーレイ級」のベースとなった「ジョン・C・バトラー級」護衛駆逐艦の概観。74mm in 1:1250 by Neptun:下の写真は両級の比較(手前が「ジョン・C・バトラー級」))

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「ディーレイ級」は、1300トン級の船体を持ち27ノットの速力を発揮することができました。

就役当初、兵装は50口径Mk.33 3インチ連装速射砲(ラピッドファイア)を2基、対潜ロケット砲(ウェポン・アルファ)1基、3連装短魚雷発射管2基、爆雷投射機8基、爆雷投下軌条を備えていました。

後に対潜ロケット砲は原子力推進の導入により高速化する潜水艦に対して有効ではないしとして撤去され、またより広範囲な対潜攻撃範囲をカバーする目的から、艦尾部の武装を撤去してDash(無人対潜ヘリ)の搭載甲板およびハンガー等に改装されましたが、こちらもあまり芳しい運用実績を残せませんでした。

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(「ディーレイ級」フリゲートの兵装配置の拡大:(上段)MK.33 3インチ連装速射砲、その直後に対潜ロケット砲の撤去後の台座のみ見ることができます。その両脇に短魚雷発射管2基:(下段)艦尾部のMk.33(シールドなし)と爆雷投下軌条など)

1954年から57年の間に13隻が建造され、米海軍では1972年から73年にかけて全て退役しています。その後、ウルグアイ海軍とコロンビア海軍に各1隻が譲渡・売却されています。

 

同型艦

ノルウェー海軍とポルトガル海軍では、同級の設計を元にしたフリゲート艦が、建造されています。

ノルウェー海軍:「オスロ級」(就役期間:1966−2007:同型艦5隻)

オスロ級フリゲート - Wikipedia

ポルトガル海軍:「アルミランテ・ペレイラ・ダ・シルバ級」(就役期間:1966-1989:同型艦3隻)

アルミランテ・ペレイラ・ダ・シルヴァ級フリゲート - Wikipedia

 

「クロード・ジョーンズ級」護衛駆逐艦(就役期間:1959−1974:同型艦4隻)

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(モデル未保有:写真はおそらく唯一販売されているStar社製のモデル:ちょっとぼんやりした印象のモデルで、食指が動きません。下のShapewaysの方がいいかも)

同級は前級「ディーレイ級」が高価であり、量産性に難ありとされたことから、簡素化が図られた設計となりました。1300トン級の船体にディーゼル機関を搭載し22ノット程度の速力を有していました。

兵装も「ディーレイ級」に比べて簡素化が図られ、50口径Mk.34 単装3インチ速射砲2基と、ヘッジホッグ2基、三連装短魚雷発射管2基、爆雷投射機4基、爆雷投射軌条と言う構成でした。

4隻が建造されましたが、高度化する兵器システムへの対応力に限界があるとされ、当初の同級設計の目的であった量産には至りませんでした。1974年に4隻全部、インドネシア海軍に譲渡・売却されました。

 

同型艦

トルコ海軍では同級の設計を元にした「ベルク級」フリゲートが2隻建造されています

トルコ海軍:「ベルク級」(就役期間:197?−1995:同型艦2隻)

TCG Berk (D-358) - Vikipedi

 

「ブロンシュタイン級」フリゲート(就役期間:1963−1990:同型艦2隻/メキシコ海軍で再就役:1993-2017))

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(「ブロンシュタイン級」フリゲートの概観:92mm in 1:1250 by Bill's Model(3D):あまりこれまで気にならなかったのですが、こうして写真で拡大すると、3Dプリントモデルならではの素材感が出てしまいますね。下地処理をしただけでは、ちょっときついのか?フォルム自体は端正だと思いますので、何か対策を考えましょう。Mk.33とアスロックランチャーは、筆者のストックパーツを転用しています)

同級は米海軍が新型のソナーシステム(AN/SQS-26)と対潜ミサイル(アスロック)を搭載した強力な対潜戦闘能力も持つ第二世代の航洋護衛艦(1975年の呼称改正でフリゲート艦)として建造した艦級です。

新システム搭載に対応した2300トン級の船体を持ち、26ノットの速力を発揮することができました。

兵装は就役当初は艦首部に50口径Mk.33 3インチ連装速射砲(ラピッドファイア)1基、アスロック8連装ランチャー1基を搭載し、魚雷発射管2基、Dash(無人対潜ヘリ)2機の運用設備、艦尾部に50口径Mk.34 3インチ単装速射砲を搭載していました。

後にDash運用設備はヘリ対応設備に改修され、魚雷発射管は対潜短魚雷三連装発射管に感想さっれています。併せて曳航ソナー(AN/SQR-15)の搭載にあわせて艦尾の単装砲は撤去されました(後に曳航ソナー設備も撤去)。

2隻が建造され、退役後、2隻ともメキシコ海軍に譲渡・売却され、2017年まで同海軍で運用されていました。

 

「ガーシア級」フリゲート(就役期間:1964−1989:同型艦10隻/うち8隻はブラジル海軍・パキスタン海軍で再就役:1993〜2004の間に退役)

 

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(「ガーシア級」フリゲートの概観:99mm in 1:1250 by Trident:前述のようにTridentのモデルは制作年代によって、かなり細部の再現度に差異があります。このモデルはかなり最近のもので、大変良い、と思います)

同級は前級「ブロンシュタイン級」の拡大改良型として10隻建造されました。前級は前述のように新ソナーシステムとアスロック(対潜ミサイル)を初めて搭載したフリゲート艦(航洋護衛艦)として建造されましたが、速力不足が懸念され2隻が建造されたに留まりました。

同級では船体は2500トン級に拡大され、速力は27ノットと改善されています。

兵装も前級を強化する方向で検討され、砲兵装は前級の3インチ連装砲に変えて38口径Mk.305インチ単装砲2基が装備され、対潜兵装としては前級と同じアスロック8連装ランチャーが搭載されています。しかし前級がアスロックの次発装填設備を持たなかったのに対し、同級では艦橋下部に予備弾庫を設けて、次発装填が可能になっています。両舷には対潜用の三連装短魚雷発射管がそれぞれ1基装備され、艦尾部はDash(無人対潜ヘリ)運用設備と発着甲板とされました。しかしDashの運用実績の不調等から対潜ヘリコプターの運用に切り替えられています。

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(「ガーシア級」フリゲートの兵装配置の拡大:(上段)MK.30 5インチ単装速射砲、アスロック8連装ランチャー、艦橋下部の再装填用の弾庫も再現されています:(下段)短魚雷発射管、Mk.30、Dash(後に哨戒ヘリ)運用のためのハンガーと発着甲板:かなり端正な再現かと。ちょっとMk.30が大きいかな?)

同級の米海軍での退役後、建造された10隻のうち8隻がブラジル海軍とパキスタン海軍に4隻づつ譲渡・売却され、パキスタン海軍では1993年まで、ブラジル海軍では2008年まで運用推されていました。

 

「ブルック級」ミサイルフリゲート(就役期間:1966−1988:同型艦6隻/うち4隻はパキスタン海軍で再就役:1989-2005)

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(「ブルック級」ミサイル・フリゲートの概観:99mm in 1:1250 by Trident:上掲のモデルは筆者が「ガーシア級」のTrident製のモデルから武装変換等、手を加えたもの)

米海軍では早い時期から「航洋護衛艦」の「ミサイル艦」化が検討されていました。そしてある程度ミサイル搭載に対し余裕の見出せる艦級として、「ガーシア級」の一部をその嚆矢として建造することとなりました。これが「ブルック級」ミサイル護衛艦(1975年の艦種改正でミサイル・フリゲート艦に変更)です。

基本設計は「ガーシア級」と同じで、マックとヘリハンガーの間のMk.30 5インチ単装砲塔をターターシステムに対応するMk.22単装ミサイル発射機に置き換えた構造でした。Mk.22の下部には16発のミサイルを収容する弾庫を装備していました。マックの直後にはミサイルを誘導するミサイル射撃指揮装置(GMFCS)が設置されました。

その他の兵装は「ガーシア級」に準じていました。f:id:fw688i:20230730094518p:image

(「ブルック級」フリゲートの兵装配置の拡大:(上段)MK.30 5インチ単装速射砲、アスロック8連装ランチャー、艦橋下部の再装填用の弾庫も再現されています。:(下段)こちらが筆者が手を加えた部分。まずマック直後にミサイル射撃式装置(GMFCS )らしきものを追加。M K.13単装ミサイル発射機を5インチ砲に置き換えています。ああ、今気がついた!マックのレーダーを3次元タイプに変更するのを忘れました。後でこっそり・・・)

こうして念願のミサイル・フリゲート艦を就役させた米海軍だったのですが、同時期のミサイル駆逐艦が同時に3目標程度への対応力が可能であったのに対し、同級では1目標追尾にとどまり、性能不足の感が否めず、13隻建造の計画が6隻で打ち切られました。6隻は1989年までに全て米海軍では退役しましたが、うち4隻がパキスタン海軍に譲渡・売却され再就役、1995年ごろまで運用されました。

 

なぜ筆者が「ブルック級」のモデルを、自作したかという件について、少しモデル事情を。

Trident社は「ブルック級」のモデルを販売しています。しかしおそらく制作年次が古く、前出の「ガーシア級」(本級のベースとなった艦級ですね)と並べるには忍びない仕上がりなのです。

(直下の写真:Trident製の「ブルック級」:わかるよ、でもね、と言う感じですよね)

更新されたモデルも同級の「ラムジー」として販売はされているのですが、筆者は見たことがありません。ですので2隻を保有している「ガーシア」に手を入れてしまおうと。そういう経緯です。

(ちなみに下の写真がTrident製の「ラムジー」:うう、マックのアンテナは3次元タイプにちゃんとなっています

(今回ご紹介している筆者の保有しないモデルの写真は、いつものようにsammelhafen.deから拝借しています)

 

「ノックス級」フリゲート(就役期間:1969−1994:同型艦46隻/うち23隻は6カ国の海軍で再就役:20隻は退役)

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(「ノックス級」フリゲートの概観:106mm in 1:1250 by Trident)

同級は前級「ガーシア級」「ブルック級」を発展させた第二世代「航洋護衛艦」の決定版とも言える艦級で、46隻が建造されました。

船体は3000トン級に拡大されており、改善された機関から27ノット以上の速力を発揮することができました、

余裕のある船体を得たことから、前級では重量等に考慮して装備を見送った新開発の50口径Mk.42 5インチ単装砲を主砲として装備。対潜兵装として、アスロック8連装発射機は前級を踏襲して搭載しています。アスロック発射機からは対艦ミサイル ハープーンの発射も可能となり、予備弾庫もふくめ16発の搭載ミサイルのうち4発はハープーンとされ、主砲の5インチ砲化と合わせ対艦戦闘力が強化されました。他の対潜装備としては短魚雷発射管をそれまでの三連装回転式のものから連装固定式に改められ、軽量化が図られました。

対潜装備といえば当初はDash(無人対潜ヘリ)2機の搭載が織り込まれ、発着甲板と整備庫が設置されましたが、同級の就役時期と前後して課題の多かったDashの運用終了が決定し、小型対潜ヘリ(S H-2)の運用に切り替えられました。これに合わせ格納庫が伸縮式に改められました。

個艦防御用の対空兵装として、シースパロー短SAMが採用され、艦尾に8連装ランチャーが装備されました。このランチャーは後日、多くの艦でCIWSに換装されています。

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(「ノックス級」フリゲートの兵装配置の拡大:(上段)MK.42 5インチ単装速射砲:フリゲート艦で同砲を搭載しているのは「ノックス級」だけです。アスロック8連装ランチャー、艦橋下部の再装填用の弾庫も再現されています。:(下段)Dash(後に哨戒ヘリ)運用のためのハンガーと発着甲板:Dashの運用停止後、同級は小型哨戒ヘリを搭載するようになりましたが、そのためハンガーは伸縮式となりました。モデルはハンガーをヘリ整備のために伸ばした状態で再現しています。艦尾部には短SAMシースパローの8連装発射機が。これは後に多くの艦でCIWSに換装されています)

1980年代末から近代化改装が計画されていましたが、冷戦終結により計画は見送られ、1990年代前半に全ての艦が退役しました。その後、6カ国(ギリシア、トルコ、エジプト、タイ、台湾、メキシコ)の海軍に順次譲渡・売却が行われ、その総数は27隻に登っています。そのうちまだ13隻が現役にあると考えられます。

 

派生型準同型艦:スペイン海軍「バレアレス級」ミサイル・フリゲート)(就役期間:1974−2006:同型艦5隻)

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(スペイン海軍「バレアレス級」ミサイル・フリゲートの概観:106mm in 1:1250 by Trident:「ノックス級」の設計をベースにスペイン海軍がライセンス生産しました)

同級は「ノックス級」フリゲートの設計をベースとして、スペイン海軍が「ノックス級」の航空設備(発着甲板とハンガー部分)に換えてターターシステムを搭載し建造したミサイル・フリゲートの艦級です。5隻が建造されました。f:id:fw688i:20230730095228p:image

(「バレアレス級」ミサイル・フリゲートの兵装配置の拡大:(上段)MK.42 5インチ単装速射砲、アスロック8連装ランチャー:(下段)マックの直後両舷に見えるのは、おそらくメロカ20mmCIWS、その後ろにハープーン対艦ミサイルの4連装発射筒2基、さらに同級の主兵装であるターターシステムのGMFCS(ミサイル射撃式装置)とMk.22単装ミサイル発射機:主砲用のGFCSとGMFCSの併用により2目標の同時追尾が可能でした)

 

オリバー・ハザード・ペリー級」ミサイル・フリゲート(就役期間:1977−2015:同型艦51隻/6カ国の海軍で再就役:少なくとも19隻)

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(「オリバー・ハザード・ペリー級」ミサイル・フリゲートの概観:112mm in 1:1250 by Argos:やはりArgosのモデルは再現の格の違いを見せてくれます)

同級はそれまでの対潜装備に重点を置いていた「フリゲート艦」と言う艦種を、対空・対潜双方への対応力を兼ね備えたものにする目的で設計された新世代のフリゲート艦を目指した艦級です。

3000トン級という船体にまとめられたバランスの良い兵装は同級の大きな特徴で、長射程の防空能力を持つスタンダードミサイルを装備し、併せて2機のヘリを運用する能力、曳航ソナーの運用力に表れる高い対潜戦闘力を併せ持つなど、汎用性の高い艦級で、艦隊防空から局地哨戒・警備まで多用途に対応しています。

この使い勝手の良さに対して、米海軍の特徴の一つというべき量産性が発揮され、51隻が建造されました。

当初、主要兵装は艦首部に設置されたMk.13単装ミサイルランチャーでした。このランチャーからは、長射程のスタンダード対空ミサイルはもちろん、ハープーン対艦ミサイルの発射も可能です。しかし一方で艦隊防空の主軸がイージスシステム搭載艦に移行すると、同級の防空面での役割は限定的となり、順次、Mk.13ランチャーは撤去されて、撤去後には遠隔操作式の87口径Mk.38 25mm単装機銃が設置されました。

砲兵装は主として個艦防御に限定され、オート・メラーラ製76mmコンパット砲のライセンス生産であるMk.75 3インチ砲とCIWSが搭載され、他に近接戦闘用に25mm機銃、12.7mm機銃などが搭載されています。

対潜兵装としては、これまで米海軍はアスロック(対潜ミサイル)を対潜戦闘の中核に置いてきましたが、発展の著しい戦術曳航ソナーの遠距離探知能力を加味し哨戒ヘリを中核とした戦術への転換が行われ、アスロックの陳腐化がある意味立証される結果となりました。従って同級ではアスロックは搭載されていません。2機の哨戒ヘリと3連装短魚雷発射管のみの搭載となっています。

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(「オリバー・ハザード・ペリー級」ミサイル・フリゲートの兵装配置の拡大:(上段)MK.13単装ミサイルランチャー」スタンダード対空ミサイルとハープーン対艦ミサイルの発射が可能でした:実はこのモデルは同級「フォード」のモデルで、Mk.13ランチャーの撤去後を再現したものだった(かもしれません)。というのもMk.13は筆者が追加したものだから。上述のように「ペリー級」の任務の性質の変遷から、同級の対空兵装の艦隊防空としての役割は、その就役後かなり軽減されていました。代わりに紛争介入や治安活動、哨戒警備などの任務には、機銃等の近接火器が重要になってきていたわけです。:(下段)主砲でるMk.75 3インチ砲はほぼ艦の中央に設置されています。その下には三連装対潜短魚雷発射管とおそらく25mm単装機銃が。ヘリハンガー上にはCIWSが設置されています。2機の哨戒ヘリ運用とヘリの大型化に対応するために、延長された艦尾部)

同級は米海軍では前述のようにイージスシステム艦の浸透に従い役割を終了し2015年までには全艦が退役しました。その後、6カ国の海軍(トルコ、パキスタンバーレーン、エジプト、ポーランド、台湾)に少なくとも19隻が譲渡・売却されています。

 

同型艦

同級の設計は以下の各国に輸出され、ライセンス生産されています。

オーストラリア海軍:「アデレード級」(就役期間:1980−2019:同型艦6隻/2隻はチリ海軍で再就役)

アデレード級フリゲート - Wikipedia

スペイン海軍:「サンタ・マリア級」(就役期間:1986-現在:同型艦6隻)

サンタ・マリア級フリゲート - Wikipedia

台湾海軍:「成功級」(就役期間:1993-現在:同型艦8隻)

成功級フリゲート - Wikipedia

 

フリゲート艦(航洋護衛艦)から沿海域戦闘艦へ、そして再びフリゲート艦へ

今回、第二次世界大戦以降の米海軍のフリゲート艦の開発経緯を見てきたわけですが、最後の「オリバー・ハザード・ペリー級」で、米海軍においては明らかに冷戦構造の終結以降、一旦、フリゲート艦の役割の終焉を見たように思っています。

米海軍の中核である空母機動部隊の艦隊護衛はイージスシステム艦に移行し、「ペリー級」に残されたのは優れた汎用性を用いた局地警備や局地的な作戦支援への対応場面だったと言っていいと考えています。仮想敵が、敵対する正規軍から局地的な敵対勢力に移った、と見るべきかもしれません。

こうして、新たな「沿海域戦闘艦」という艦種が、米海軍の中で注目を浴びてくることになるのです。

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インディペンデンス級」沿海域戦闘艦(就役期間:2008ー現在:同型艦:19隻)

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(「インディペンデンス級」沿海域戦闘艦の概観:104mm in 1:1250 by Mountford?:下の写真は「インディペンデンス級」の細部拡大:同級は固有の固定的な兵装としては、艦首のMk.110 5インチ単装速射砲とヘリハンガー上のSeaRAM近SAM11連装ランチャー、機銃、程度です。多様化するミッションに対応するために、追加兵装はモジュール化されており、都度選択し搭載されます。写真下段のヘリ発着甲板下には広大なペイロードがあり、完備周辺に見える開閉ドアから搬入が行われます。このドアは緊急展開部隊の車両展開にも利用可能です。艦尾の開閉ドアからは高速艇の展開や機雷戦対応が可能です。ヘリハンガーには哨戒ヘリ2機、あるいは哨戒ヘリ1機と無人ヘリ3機の搭載が可能です)

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沿海域戦闘艦は局地有事への対応を想定した、ある意味、限定的な戦力での紛争介入と地域の治安維持、平常化支援を想定した艦種です。2500トン級の船体を持ち、敵性小型高速艇との戦闘を想定し40ノットの高速を発揮することができます。

再びフリゲート艦へ

一方で昨今の「ウクライナ戦争」や、想定される「台湾有事」に見るように、覇権主義国家の台頭も再び(というべきか)顕在化しつつある状況です。

米海軍が「沿海域戦闘艦」の整備を計画された52隻から32隻へと縮小して打ち切り、残りの20隻を次の新たなミサイル・フリゲート艦の建造に充てる、ある種回帰的とも言える決断をしたことは、やはりそのような情勢変化を踏まえてのことだと言わざるを得ないと考えています。

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(Shapewaysにアップロードされている「コンステレーション級」ミサイル・フリゲート:121mm in 1:1250 by Amature Wargame Figures in Shapeways)
少し話がきな臭くなってきましたが、実際に戦争は続いています。戦闘自体は遠いところの話で、爆音も空気の震えも実感することはありません。しかし、こうした一見呑気な話の中からでも、その緊迫感は見え隠れするのです。

コンステレーション級」ミサイルフリゲート艦(就役予定:2026年から:同型艦:20隻(計画)

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米海軍は「オリバー・ハザード・ペリー級」ミサイルフリゲート艦の最後の艦が2015年に退役して以来、同クラスの艦船の建造を局地紛争への介入や同様の地区の哨戒・警備を主任務とする「沿海域戦闘艦」に移し、フリゲートを持たない海軍となっていました。

しかし昨今の「ウクライナ戦争」や、想定される「台湾有事」に見るように、覇権主義国家の台頭も再び(というべきか)顕在化しつつある状況を考慮して、「沿海域戦闘艦」の整備を計画された52隻から32隻へと縮小して打ち切り、次の20隻を次の新たなミサイル・フリゲート艦の建造に充てる、ある種回帰的とも言える決断をしました。

こうして生まれたのが「コンステレーション級」ミサイルフリゲート艦です。

設計条件として既存感をベースとして既に実績が検証されていることなどが盛り込まれ、さらにベースとするタイプシップとして外国艦を許容したため、設計コンペには外国企業も参加し国際コンペの様相を呈しました。

結果、イタリアのフリゲート艦(カルロ・ペルがミーニ級)をタイプシップとした設計案が採択されました。

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(上の写真は「コンステレーション級」フリゲートの概観:121mm in 1:1250 by Amature Wargame Figures in shapeways:素材との相性もいいのでしょうが、エッジがしっかり立ったシャープなモデルに仕上がっています)

同級は前級(オリバー・ハザード・ペリー級)のほぼ倍の6500トン級の大きさの船体にアクティブ・フューズドアレイ・レーダーを搭載するなど、イージスシステム化に対応した設計となっています。

艦首に70口径57mm単装速射砲を搭載し、その直後に32セルのVLSを搭載しています。このVLSは対空・対潜両用とされていますが、対空ミサイルに比重を置いた搭載弾数になるようです。個艦防御用の兵装としては、ヘリ格納庫上に21連装の近接防空ミサイルが搭載されています。さらにNSM対艦ミサイルの4連装発射筒を4基、艦中央部の構造物上位搭載しています。4連装が4基ですので計16発の対艦ミサイルの搭載弾数は、このクラスの艦級としてはかなり多いと言っていいと思います。

艦尾に比較的広く取られたヘリ格納庫と発着甲板からは、哨戒ヘリ1機(M H-60Rシーホーク)と、無人ヘリ1機(MQ-8C)を固有戦力として搭載・運用できます。

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(上の写真は「コンステレーション級」フリゲートの主要兵装配置:(上段)艦首部の70口径57mm単装速射砲につづき32セルのVLS(対空・対潜療養です):(中段)艦橋部のフューズドアレイ・レーダーとNSM対艦ミサイルの4連装発射筒4基:(下段)ヘリハンガーとその上に設置された近接防空ミサイル発射機、MH-60Rシーホークと無人ヘリMQ-8Cを各1基搭載しています)

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船型比較

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(上の写真は「コンステレーション級」(奥)と前級「オリバー・ハザード・ペリー級」の新旧フリゲート艦の艦型の比較:「コンステレーション級」がかなり幅広で大きな船体を持っていることがわかります。下の写真はこれからの米海軍空母機動部隊の主要護衛艦となるであろう「コンステレーション級」フリゲート(手前)と「アーレイ・バーク級」イージス駆逐艦の関係の比較:いずれも最近の米海軍の設計の傾向を反映して、幅広の船体形状が採用されていることがわかります。これは荒天時の速度維持に対する優位性を考慮されてのことだとか)

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ということで、今回はここまで。

 

次回は、以前少し話に出ていた米海軍初の原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」のイージス艦改造モデルが到着したので、そのお話でも。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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