相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

新着モデルのご紹介:Argos製原子力ミサイル巡洋艦「トラクスタン」と米海軍原子力ミサイル巡洋艦の系譜

年末です。

本業も含め、筆者は身辺が何かと慌ただしくなってきました。皆さんはいいクリスマス迎えていらっしゃいますか?

さて今回はこれまで欠けていた米海軍の原子力ミサイル巡洋艦「タクストン」が到着したので、そのご紹介と、Argos製モデルが揃ってきましたので米海軍の原子力ミサイル巡洋艦の系譜も、下記の2回の投稿も含めて、改めておさらいしておきましょう。

fw688i.hatenablog.com

fw688i.hatenablog.com

今回はそういうお話で。

 

ますは新着モデルのご紹介から。

原子力ミサイルフリゲート「トラクスタン」(就役期間1967-1995:同型艦なし:1975年より巡洋艦に類別変更)

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原子力ミサイルフリゲート「トラクスタン」の概観:138mm in 1:1250 by Argos:モデルはCIWSやハープーン対艦ミサイル4連装発射筒を装備していますので、後述するように、就役当初を再現したものではなく1980年代以降の改装後を再現したものです)

同艦は「ベルナップ級」ミサイルフリゲートを核動力化したものです。

米海軍の原子力ミサイル巡洋艦(就役当時はフリゲートの艦種分類でした)としては、「ロングビーチ」「ベルナップ」につぎ3隻目です。f:id:fw688i:20231223134852p:image

(「トラクスタン」の兵装配置の拡大:武装の詳細は下記本文で:中段写真では同艦の大きな特徴である巨大なラティス構造のマストが見ていただけます:写真上段のCIWS、写真下段のハープーン発射筒から、モデルは1980年以降のを再現したものであるkとがわかります

搭載する兵装、その配置等は原型である「ベルナップ級」に準じ、主要兵装である対空ミサイルは当初はテリア・システムを搭載していましたが、「ベルナップ級」が艦首にMk.10.Mod7 連装発射機を装備したのに対し、同艦ではこれを艦尾に装備し、ドラム型弾倉3基を搭載して60発のミサイルを収容していました。この発射機はアスロックの運用も兼用していました。

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加えて砲兵装としてMk.42 54口径5インチ速射砲を1基、50口径MK.34 3インチ単装砲2基を艦中央部に搭載していました。

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対潜装備としては、上記のMk.10Mod7 連装発射機から射出されるアスロックに加え533mm魚雷発射管、324mm短魚雷連装発射管を固定式で搭載していましたが、後に533mm魚雷発射管は撤去されました。同艦は米海軍の原子力ミサイル巡洋艦としては唯一ヘリコプターの搭載・運用能力を備え、ヘリコプター1基を搭載していました。

同艦も当初搭載していたテリアミサイルはスタンダードミサイルに換装され、両舷の個艦防御用の速射砲に変えてハープーン対艦ミサイルとCIWSが搭載されました。

 

同級は1975年の艦種再分類でミサイルフリゲートからミサイル巡洋艦に艦種変更されました。

 

原型である「ベルナップ級」ミサイル巡洋艦との比較

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(写真上段と下段左が原型である「ベルナップ級」(Delphin社製):一番大きな差異はミサイルと主砲の搭載位置が逆であることと、艦中央部のマストの構造=「ベルナップ級」は煙突を収容したマック構造ですが、「トラクスタン」は原子力推進ですので煙突を持たず、したがってラティス構造のマストを持っています)

 

参考:「ベルナップ級」ミサイルフリゲート(就役期間1964-1995:同型艦:9隻:1975年より巡洋艦に類別変更)

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(「ベルナップ級」ミサイルフリゲートの概観:134mm in 1:1250 by Delphin)

同級は前級の「リーヒ級」ミサイルフリゲートが艦隊防空の専任艦とした設計であったのに対し、より汎用任務をも視野に入れた設計とされました。このためテリアミサイルは「リーヒ級」から1基減じて代わりにMk.45  5インチ砲が艦尾に搭載されました。f:id:fw688i:20230716095703p:image

(「ベルナップ級」の兵装配置の拡大:詳細は下記本文で)

艦首に設置されたテリアミサイルの連装発射機Mk.10は新開発のMod.7が採用され、弾庫の収納弾数が従来の40発から60発に増加しています。さらにアスロックの発射も可能で、同級ではアスロックの8連装発射機は廃止されました。テリアミサイルは後にスタンダードミサイルに換装されています。対潜兵器としてはアスロック以外に短魚雷3連装発射管2基を搭載していました。個艦防御用の兵装としてはMk.34  3インチ単装速射砲が両舷に配置されています。この単装速射砲は後にハープーン対艦ミサイル発射筒に換装され、CIWSが搭載されました。

艦尾部を砲兵装としたことにより、艦尾にヘリ発着甲板と格納庫のスペースを得ることができ、無人ヘリDash2機が搭載されました。

 

同級は1975年の艦種再分類でミサイルフリゲートからミサイル巡洋艦に艦種変更されました。

 

Argos製モデルについて

今回入手した「トラクスタン」はArgos製のモデルです。上掲の写真からおわかりいただけるように、Argos社のモデルは大変精度が高く、しかし一方で大変高価で取引されています。筆者は以前ご紹介した「ロングビーチ」、今回登場している「カリフォルニア」「バージニア」の各モデルを保有してましたが、いずれもEbayで調達したもので、しかしながら一体いくらで入手したのか、記憶にありません。(記憶にない、ということは、それほど無理をして入手したということではなさそうなのですが。Ebayには時々、そのようなエアポケットのようなラッキーな瞬間があることはあるのです。それほどその機会が多くはありませんが)

今回も比較的それに近い状況で落札ができました。それでも、筆者のコレクションとしては最上級の価格帯に入ると思います。

同社のラインナップは現用艦が多く、いずれも大変精度の高いモデルになっています。筆者はこれまで第二次世界大戦前までのコレクションにまず力を入れ、特に外国艦船の場合、現用艦の収集にはあまり熱心ではありませんでした。ですので、接する機会が少なかったのですが、改めてこうして観察すると、やはりすごいメーカーであることを再認識しました。が、やっぱり高いなあ・・・。

 

現時点(2023.12.24)で、下のやはり米海軍の原子力ミサイル巡洋艦「ベインブリッジ」にも入札中です。

(Argo社製「ベインブリッジ」:現在、入札中!落札したいですが、どこまで根が釣り上がるのか・・・?写真はEbayより拝借:下の写真は筆者の保有している「ベインブリッジ」(写真上段:Delphin製)とArgos社製「ベインブリッジ」の比較。うーん、こうやって比べてしまうと・・・。しかしebayでの価格差はおよそ5倍。こちらも、うーん!)

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米海軍の原子力ミサイル巡洋艦の系譜

「トラクスタン」の加入で、筆者のコレクションでは、米海軍の原子力ミサイル巡洋艦がそいましたので、系譜的なおさらいを。

米海軍の原子力水上艦の整備計画

1952年度計画で建造した2隻の原子力潜水艦を皮切りに、米海軍は核動力を導入し始めます。水上艦艇に関しては、大型化し重くなるジェット艦載機の運用に当たる空母にはより広い発着甲板が求められ、したがって船体の大型化に伴い動力の原子力化は設計の可能性を大きく広げるものでした。

これを護衛する艦艇についても原子力化の検討は進められましたが、本来は最も原子力化を進めたかった(つまり十分な航続距離と速度を兼ね備えた護衛艦を揃えたかった)駆逐艦クラスの護衛艦艇(2000トンクラス)への核動力の搭載は、船体の大きさから困難であることがわかり、より大型の随伴艦への搭載が模索され始めます。

今回はその開発の系譜を整理してみましょう。

 

原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」ミサイル巡洋艦(就役期間:1961-1995年:同型艦なし)

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(上の写真は世界初の原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」の概観:177mm in 1:1250 by Argos: 同社のモデルはかなり精密に作り込まれています。モデルは1963年以降の5インチ砲を追加装備したのちを再現しています。 Argosモデル:次回詳しくご紹介しますが、現用艦船のモデルでは群を抜いています。しかし流通量がそれほど多くなく、その分、中古市場(Ebay等)でも大変高価です<<<これは困った!

第二次世界大戦後、米海軍が初めて設計した巡洋艦で、同型艦はありません。世界初の原子力を推進機関とする水上戦闘艦であり、かつミサイルを主兵装とする初めての戦闘艦でもありました。

空母機動部隊の艦隊防空の必要性から、新世代の水上戦闘艦艇では従来の砲兵装主体からミサイル主体への主兵装の転換は必須であり、システムへの電力供給、ミサイルシステム自体の規模を考慮すると、ある程度の大型艦が必要でした。同艦は「ボルチモア級」重巡洋艦なみの14000トン級の船体に原子炉2基を搭載し、30ノットの速力を発揮する設計でした。

搭載兵装はタロスとテリアの2種を併載して、広範囲な防空圏を構成することができました。艦首部にテリア用の連装ランチャー2基を装備し、それぞれ40発、80発の弾庫を直下に設置しています。タロスは艦尾部に搭載され、連装ランチャー1基とその下に52発装填の弾庫が設置されました。

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対潜兵装としては艦中央にアスロック8連装発射機と3連装魚雷発射管が設置されました。f:id:fw688i:20230702105432p:image

原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」の主要兵装:艦首部のテリアミサイルの連装発射機2基とその管制レーダー(写真上段):同艦の特徴の一つでもある特異な形状の艦橋とアスロック8連装発射機、後日追加装備された5インチ単装砲塔2基(中段):艦尾部のタロスミサイル発射機と管制レーダー。ヘリコプターの発着艦が可能でしたが、格納庫はありませんでした(写真下段))

就役当初は砲兵装を全く持たない同艦でしたが、後に低空目標や水上目標に対する対抗手段として5インチ砲2基を艦中央部に搭載しています。

1961年から95年までの長い就役期間中に数度の兵装変更が行われました。艦首部のテリアミサイルはスタンダードミサイルに更新され、タロスミサイルは1980年代に撤去され、ハープーン対艦ミサイルの発射筒とトマホークの装甲発射ランチャーが設置されています。さらに90年代にはCIWS2基が装備されています。

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(上の写真は、模型のヴァリエーションで見る兵装変更:(上段)就役時の装備に比較的近く、艦首部にテリア、艦中央にアスロック、艦尾にタロスが装備されています。5インチ砲は未装備ですね。(中段)5インチ砲2基が、艦中央部に設置されました。(下段)スタンダードミサイルへの換装に伴い、艦尾のタロスが撤去され、ハープーン対艦ミサイルの発射筒が設置されました。わせてCIWS2基もタロス管制レーダーの装備跡に設置されています:写真はいずれもsammelhafen.de掲載のものを拝借しています)

その後、1970年代末期には新造イージス艦の建造に変えて同艦のイージス艦への改装案も検討されましたが、実現しませんでした。

結局、1995年に退役、2002年には原子炉の破棄も完了し、2012年にスクラップにされました。

 

史実はそうなのですが、当ブログは幸いなことに艦船モデルのブログですので、イージス艦となった「ロングビーチ」のモデルもご紹介しています。

ロングビーチ」;原子力イージス艦改装 第一形態(1985年ごろ?)

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原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」のイージスシステム館への改装の第一形態の概観:イージスシステムの搭載により上部構造が大きく様変わりし、艦容は一変しています)

ロングビーチ」は1970年代末に実際にイージスシステム艦への改装が検討されていました。その際のコンセプト図が残っていて、今回のモデルはそれに大変忠実だと言うことがわかると思います。

ロングビーチ」はご承知の通り原子力推進で、余裕のある電力等はイージスシステムを搭載するにはうってつけと見られたかもしれません。同様に他の原子力ミサイル巡洋艦もあクァせて検討俎上に上がったようですが、それぞれシステム搭載スペースを捻り出すには大規模な改装が必要で、いずれも見送られています。

ロングビーチ」も同様で、今回のモデルを見ていただければ一目瞭然ですが、上部構造は原型をとどめないほどの改装を受ける必要がありました。f:id:fw688i:20230806151014p:image

(巨大な上部構造:イージスシステムの搭載と対潜哨戒ヘリの運用施設:四隅にはパッシブ・フューズドアレイアンテナが)

艦橋部には巨大なシステムが搭載され、上部構造物の四すみにはパッシブ・フューズドアレイ・アンテナが設置されています。上部構造物の頂点には大きなトラス構造のマストが聳え、その前後にミサイルの最終誘導用のイルミネーターが4基搭載されています。

同艦の兵装は、対空兵装としてスタンダード対空ミサイル用にMk.26連装ランチャーを艦首、艦尾に配置しています。長い船体を生かしてランチャー下には大きな弾庫が設定されています対艦・対地上兵装としては、Mk.45 5インチ単装両用砲、ハープーン対艦ミサイル、トマホーク巡航ミサイルを搭載しています。対潜兵装としては、その主軸は搭載する長距離ソナーと対潜哨戒ヘリにおかれアスロックは廃止されています。他に短魚雷三連装発射管は通常は館内に収納されていました。個艦防御用として2基のCIWSを搭載しています。f:id:fw688i:20230806151005p:image

(写真は主要兵装のアップ:(上段写真)58口径5インチ単装砲(Mk.45)が艦種部に設置され、Mk.26連装ミサイルランチャーがその後に続きます。さらに対艦用の主要兵装として、ハープーン4連装発射筒が4基搭載され、艦橋前には個艦防御用にCIWSが設置されました(オリジナルのモデルにもコンセプト図にもなかったのですが、追加してみました)。:(写真下段)上構造物の後部、ヘリハンガー上にもCIWSは装備されています。対潜哨戒ヘリ2機を運用できるハンガーと発着甲板を経て、後部のMk.26連装ミサイルランチャー、艦尾にはトマホーク用装甲ボックスランチャー2基が搭載されています)

 

Mk.45 5インチ両用砲

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米海軍が広く導入したMk.42 5インチ単装両用砲は毎分40発という高い射撃速度を誇りミサイル装備に主軸が移るまでは対空兵装のカナメとも言うべきものでした。しかし一方で早い射撃速度を実現するために揚弾機構を二重にするなど重く(61トン)、かつ操作に人数を要するものでした(12−16名)。

対空戦闘の主軸がミサイルに移ると、射撃速度への要請の比重は低くなり、揚弾機構を減らすなど軽量化、砲塔の無人化。自動化が進められました。こうして生まれたのがMk.45 5インチ砲でした。

重量は24トンまで軽減され、無人化によりステルス性を意識した砲塔デザインが可能となりました。操作員も6名まで軽減されています。一方で発射速度は毎分20発程度まで下がりましたが、主砲の標的が対空目標から地上目標、水上目標に移っているため、大きな問題にはなりませんでした。

 

模型的な視点から

模型的には、かなり大幅に手を入れています。まあ、Amature Wargame Figuresのモデルは概ねそのように扱っていますので、特にこのモデルの何か課題があると言うわけではありません(前出の3Dモデル関連の投稿を見ていただくと、その辺りはよくわかっていただけるかも)。

モデルからオリジナルの兵装とマストを切除し、全て筆者のストックパーツに置き換えてあります。今回使用したパーツはほとんどがHobbyBoss製の「スプルーアンス級駆逐艦、「タイコンデロガ級イージス艦のもので、特に一番気になっていたマストは「スプルーアンス級」のトラス構造のマストを流用しています。ランチャー下には大きな弾庫を抱えている、と前述していますが、Mk.26連装ランチャーをもう1基艦首部に追加しようかな、などと考えはしたのですが、モデルとしては少しうるさくなるかなと、即応性への対応はVLSへの換装を待った、と言うことで、原型と同じく2基のランチャー搭載としました。(唯一、艦尾部のトマホーク用の装甲ボックスランチャーのみ、適当なパーツがないので、プラロッドを切ってそれらしく作ってあります。

 

タイコンデロガ級」初期タイプとの比較

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(「ロングビーチ」は大きなセンタを生かし、大きなミサイル弾庫を確保することができました)

 

ロングビーチ」;原子力イージス艦改装 第二形態:VLSへの換装(1998年ごろ?)

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原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」のイージスシステム館への改装の第二形態の概観:VLSへの換装で、艦容は水分すっきりしてしまいました)

第二形態は、Mk.26連装ランチャーからVLSへと換装された形態を表しています。第一形態で記述したイージスシステムの複数目標への即応性への対応力強化のために、2基のMk.26はVLSへ換装された、と言う想定のモデルです。Mk.41 VLS(48セル)を5基搭載しています。マストは頑丈なトラスタイプのものからステルス性を意識したレーダー反射の低い塔構造のものに改められました。VLSは対空・対艦・対地上全ての搭載ミサイルに対応しているため、非常にすっきりした外観になっています。f:id:fw688i:20230806151615p:image

(写真は主要兵装のアップ:Mk.41 VLS (48セル)を艦首部に3基、艦尾部に2基、装備しています。固有の対潜哨戒ヘリを2機搭載しています)

タイコンデロガ級VLS搭載タイプとの比較

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(「ロングビーチ」は長い船体を生かし、48セルのVLSを5セット装備し、高い即応性を発揮できたはず)

ロングビーチ」三形態比較

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(「ロングビーチ」三形態の変遷:上から実艦、改装案第一形態、改装案第二形態:やはり巨大な上部構造が・・・)

 

原子力ミサイルフリゲート「ベインブリッジ」(就役期間1962-1996:同型艦なし:1975年より巡洋艦に類別変更)

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原子力ミサイルフリゲート「ベインブリッジ」の概観:135mm in 1:1250 by Delphin)

同艦は1959年度計画で1隻のみ建造されました。前述の「リーヒ級」の設計を踏襲し、機関を原子力に置き換えた設計でした。

大型艦の機関の原子力化については空母「エンタープライズ」、ミサイル巡洋艦ロングビーチ」等で実装化が進められていましたが、この事で第二次世界大戦時からすでに懸案であった小型艦の航続力不足がより深刻になることが懸念されました。同艦はこの課題に対する中型艦での導入研究として建造されました。

兵装、およびその配置等は「リーヒ級」に準じています。

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(「ベインブリッジ」の兵装配置の拡大:兵装配置は通常動力推進の「リーヒ級」に準じています。艦首からテリアミサイルMk.10 連装発射機とその直後の装填庫、アスロック発射機、ちょっとわかりにくいですが三連装短魚雷発射管、Mk.33  3インチ連装速射砲、シールド付き(ストックパーツに置き換えてあります)、艦尾のテリアミサイルMk.10連装ランチャーの順。Mk.33  3インチ連装速射砲は後にハープーン対艦ミサイル発射筒に換装されています。さらにその周辺にCIWSが増設されています)

 

同級は1975年の艦種再分類でミサイルフリゲートからミサイル巡洋艦に艦種変更されました。

 

同型艦なのに艦型が随分と異なるのは?

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(「リーヒ級」ミサイルフリゲート:130mm と「ベインブリッジ」:135mmの艦型比較)

同型艦、動力の違い、と説明しながら、随分、艦型も異なるようです。実艦でも「リーヒ級」は全長162.5mに対し「ベインブリッジ」は172mです。煙突がない分、上部構造が「ベンブリッジ」では簡素化されているのは理解できます。

これが原型製製作者の相違、あるいは気まぐれによるものかどうか、筆者にはわかりませんが、首を傾げるうちに、一つ面白い記述を見つけました。それは、この後紹介する原子力ミサイル巡洋艦「カリフォルニア級」についてのWikipediaでの記述です。

こんな一節が。

「通常動力艦は巡航速度で抵抗が最小になるような船体設計としており・・(中略)・・核動力艦のメリットを活かして、巡航速度よりも高速時の抵抗が最小になるように設計されている」

つまり核動力艦の場合には燃料の心配が不要なので、いつでも高速航行ができる、その状況に船体の設計は合わせている、そういうことですね。

 

原子力ミサイルフリゲート「トラクスタン」(就役期間1967-1995:同型艦なし:1975年より巡洋艦に類別変更)

(「トラクスタン」はここに入ってきます。前出)

 

「カリフォルニア級」原子力ミサイルフリゲート(就役期間1974-1999:同型艦:2隻:1975年より巡洋艦に類別変更)

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(「カリフォルニア級」原子力ミサイルフリゲートの概観:145mm in 1:1250 by Argos:このモデルはブリッジ前のアスロック8連装発射機を撤去したのちを再現したものです)

同級は「ニミッツ級原子力空母の啓造計画に準じ、「原子力空母機動部隊の艦隊防空中枢艦」となるために設計されたミサイルフリゲートで、これまでの原子力ミサイルフリゲートが従来動力艦を核動力化したものであったのに対し、初めて核動力を機関として想定して設計された艦級です。2隻が建造されました。

これまでの駆逐艦由来の艦級の系統とは異なり、9000トンを超える大きな船体を持ち、30ノットの速力を有していました。

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(「カリフォルニア級」の兵装配置の拡大:詳細は下記本文で:Argos製モデルの精緻な細部は圧巻というべき。写真上段は艦首部の主要兵装の配置を示していますが、アスロック8連装発射機が撤去された後が再現されています。アスロックランチャーの設置後の直前の構造物は、アスロックの次発装填用の弾庫で、次発装填時にはランチャーを180度旋回させて、ランチャー後部を弾庫に向ける必要がありました。アスロックの撤去後は何に使ったんだろう?:中段写真では、ハープーン対艦ミサイルの発射筒やCIWSの装備位置が確認できます)

主兵装はターターDシステムで、対空ミサイル発射機に単装のMk.13(各40発収納)を採用し、これを艦首尾にダブルエンダーで搭載しています。

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砲兵装としては新開発の軽量Mk.45  5インチ単装砲をこれも艦首尾に搭載しています。

対潜装備としてはアスロック8連装発射機を艦首に、連装短魚雷発射管を両舷に装備し、これら以外にはハープーン対艦ミサイル4連装発射筒を2基、個艦防御用にCIWS2基を搭載しています。

 

同級は1975年の艦種再分類でミサイルフリゲートからミサイル巡洋艦に艦種変更されました。

 

バージニア級」原子力ミサイル巡洋艦(就役期間1976-1998:同型艦:4隻/計画では11隻)

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(「バージニア級」原子力ミサイル巡洋艦の概観:141mm in 1:1250 by Argos:このモデルは艦尾にトマホーク搭載用のMk.143 装甲ボックスランチャーを搭載した状態を再現したものです)

同級は前級に引き続き、原子力空母機動部隊の直衛、防空中枢艦として設計されました。

10000トンを超える船体に核動力を搭載し、30ノットの速力を発揮することができました、

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(「カリフォルニア級」の兵装配置の拡大:詳細は下記本文で:ブリッジ直前に装備されたハープーン対艦ミサイルの発射筒、艦尾のトマホーク用装甲ボックスランチャーなどが確認できます)

主兵装等は原則、前級「カリフォルニア級」のものを踏襲しました。主兵装は前級同様ターターDシステムで、対空ミサイルの発射機としては艦首尾に配置された連装のMk.26発射機(44発収納)が搭載されました。

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他に砲兵装としてMk.45  5インチ単装砲、ハープーン対艦ミサイル4連装発射筒を2基、個艦防御用にCIWS2基等、全て「カリフォルニア級」の兵装を踏襲しています。

対潜装備としてはアスロックをMk.26から発射できるほか、三連装短魚雷発射管2基を装備しています。さらに、のちにトマホーク巡航ミサイル用として、Mk.143  4連装装甲ボックスランチャー2基が追加装備されました。

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同級の搭載するターターDシステムはターターシステムから発展した武器統合システムであり、やがてイージスシステムへと発展します。同級も後期型設計ではイージスシステムを搭載する計画もありましたが、同級では搭載が困難とされ、11隻の計画は4隻で打ち切られ、イージスシステム搭載は次級の「タイコンデロガ級」に引き継がれました。

 

米海軍の原子力ミサイル巡洋艦の一覧:もう原子力水上戦闘艦は作られないのか?

結局、核動力化の狙いのもとに米海軍は5艦級、9隻の原子力ミサイル巡洋艦を建造しましたが、艦隊防空の要目がイージスシステムの搭載による艦隊のシステム化に移行したため、高価な原子力動力艦は量産に課題が残ろことから、「バージニア級」も上述のように11隻の計画が4隻の建造で打ち切られ、以降、原子力ミサイル巡洋艦は建造されていません。

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(上の写真は米海軍の原子力ミサイル巡洋艦の艦型比較:下から「ロングビーチ」「ベインブリッジ」「トラクスタン」「カリフォルニア級」(同型艦2隻)「バージニア級」(同型艦4隻)の順)

一方で、システム艦は巨大な電力を必要とするところから、核動力への期待は消え去ったわけではないと考えています。ただし、システムの進歩の速度は設計の定まった艦を長期に使用し続けることをも許容していないことも明らかで、寿命の長い動力・機関の搭載とシステムの拡張性への適応力をどのように一つの艦に共存させることを実現してゆくのか、この辺りに今後の方向性があるように考えています。

 

というわけで、今回はここまで。

 

次回は本当に年末なので、帰省などあり、一回スキップさせていただくことになろうかと。

そして新年は少し初心に還って「八八艦隊」のモデルのお話などから始めてみようかと考えています(モデル的な新作やm何かのアップデートのお話などがあるわけではないので、いきなり全く別の新作モデルのお話などするかも、ですが)。

もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

少し気が早い気もしますが、本年も当ブログを訪れていただき、本当にありがとうございました。そして良い新年をお迎えください。

来年もまだ続けるつもりですので、どうかよろしくお願いいたします。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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