相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

投稿開始から5年が経過!:現用艦船:米海軍のコレクションからの欠落モデルのアップデート

まずは心からのお礼を

本稿がスタートしたのは2018年9月2日でした。第1回投稿はこちら。

fw688i.hatenablog.com

今回の投稿で5年を経過したことになります。溜まってきたモデルの整理を少しストーリーをつけてやってみようか、という思いつきで始めたのですが、5年間も続けることになるとは思いもしていませんでした。

そもそもこんな投稿を読んでくださる方がいるとは思いもせずに、最初は少しこだわりもあって持って回った分かりにくい文体になっています。ここまで続けられたのは、一重に読んで下さっている皆さんのお陰と心より感謝します。

艦船模型についての興味はなかなか尽きないので、今しばらくは続けてゆきたいと思っています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

 

さて。今回は、これまでご紹介してきた現用艦船へと続く第二次世界大戦以降の米海軍の駆逐艦フリゲート艦のコレクションから、これまでのご紹介時には揃っていたなかったモデルのいくつかが入手・整備できたので、そちらのご紹介を簡単に。

 

下記の回では、米海軍の現在のミサイル巡洋艦へと続く開発系譜の始祖を第二次世界大戦に設計思想が生まれ、戦後に就役した「嚮導駆逐艦」(DL)において、話を進めています。

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その起源となった「嚮導駆逐艦」(DL)については以下のように記述しています。

嚮導駆逐艦フリゲート(DL)という艦種

米海軍は艦隊護衛の指揮基点となる艦種として嚮導駆逐艦の建造構想を持っていました。同艦種は個艦としての対空戦闘・対潜戦闘能力はもちろん、併せて高い通信能力、指揮能力を有し、艦隊護衛に任じ周辺輪形陣を構成する駆逐艦だけでなく、上空警戒にあたる航空機も管制する機能も兼ね備えていました。

米海軍では同様の艦種にDL(Destroyer Leader)の艦種記号を与え、フリゲートと呼称していました。

 

そのプロトタイプとして、前掲の回では「ミッチャー級」嚮導駆逐艦フリゲート)のみをご紹介したのですが、実はもう一隻、少し出自の異なる嚮導駆逐艦が建造されていました。

まずはそちらのご紹介を。

嚮導駆逐艦ノーフォーク」(就役期間:1953-1970:同型艦なし)

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(上の写真は「ノーフォーク級」駆逐艦の概観:133mm in 1:1250 by Trident:モデルは後期のアスロック対潜ミサイルの導入に向けての試験艦となった際を表現しています。就役時には艦後部のアスロック発射機の搭載位置に艦首部と同様に「ウェポン・アルファ」2基を装備していました))

同艦は、第二次世界大戦において航空機と並び通商路への重大な脅威となることが明らかとなった潜水艦への対応策として設計された艦級でした。米海軍は航空機への対策として大戦中に「アトランタ級防空巡洋艦(CLAA)を建造していましたが、同艦は同様の設計思想で当初はいわば「対潜巡洋艦」(CLK=sub-killer cruiser)として1隻のみ建造されたものでした(計画時には2隻の予定でした)。

就役時には嚮導駆逐艦(DL)に艦種名称が変更され、1955年にはフリゲート艦に艦種名称が変更されました。

アトランタ級防空巡洋艦に範をとったため、船体は5000トン級と大きく、33ノットの速力を出すことができました。

対潜艦として設計されてところから、就役時の主兵装はMk.108「ウエポン・アルファ」(対潜ロケット砲)4基と誘導魚雷でした。

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Mk.108対潜ロケット砲は、ロケット弾を目標近辺に投射し、搭載する磁気信管で目標を感知させ炸裂させるもので、250−800メートルの射程を持ち、毎分12発投射することができたました。

(余談ですが筆者はこの対潜ロケットが大好きです。というのも小学生の頃の愛読書、小沢さとる先生の名作「サブマリン707」に登場していまして、なんと未来的な(SFなんて言葉知らなかったからね)すごい兵器なんだろう、というのが原体験なのです。興味のある方は是非ご一読を)

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と、筆者の大好きな「ウェポン・アルファ」なのですが、実情は不発率が高いなど不評だったようです。

ノーフォーク」は1960年代からアスロックの試験艦となったため、艦尾部の「ウェポン・アルファ」2基をアスロック発射機に置き換えています。f:id:fw688i:20230903100939p:image

(「ノーフォーク」の兵装配置の拡大:艦首からMk.26 3インチ連装速射砲2基、「ウェポン・アルファ」対潜ロケット砲2基、艦橋脇のボートの下に対潜魚雷発射管(以上写真上段)、同艦後期に試験的に設置されたアスロック8連装発射機(就役時にはこの位置に「ウェポン・アルファ」対潜ロケット砲2基が設定されていました(、そしてMk.26 3インチ連装速射砲2基)

一方、砲兵装は個艦防御用として新開発の70口径Mk.26 3インチ連装速射砲4基が予定されていました(就役時には間に合わず50口径Mk.33 3インチ連装速射砲、いわゆるラピッドファイアが搭載されていました。のち当初予定のMk.26に換装)。

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(各装備の拡大:Mk.26 70口径3インチ連装速射砲(上段左)、「ウェポン・アルファ」対潜ロケット砲(上段右)、対潜魚雷発射管(下段左)、アスロック8連装発射機(下段右:就役時にはこの位置に「ウェポン・アルファ」対潜ロケット砲2基が設置されていました:筆者はそちらを見たかった!))

 

DDGへの改装案(1959年頃)

この時期には大型の艦船には必ずと言って良いほど、ミサイル駆逐艦への改装計画がありました。同艦もご多聞にもれずターターシステムを搭載したミサイル駆逐艦への改装計画があったようです。その際には、「ウェポン・アルファ」を全部撤去して、アスロックとターターに載せ替える、というようなことになってようです。

この時期、「ノーフォーク」が新型レーダーやアスロックの試験艦として運用されていたことなどから、この改装案は実現しないまま、1970年に同艦は退役しました。

(下の写真は、「ノーフォーク」と「ミッチャー級」の大きさを比較したもの。「ノーフォーク」が軽巡洋艦出自のかなり大きな設計だったことがよくわかります)

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「ミッチャー級」フリゲートミサイル駆逐艦への改造

もう一つ、前掲の投稿では、「ミッチャー級」フリゲート嚮導駆逐艦)4隻のうち2隻がミサイル駆逐艦に改造されたと紹介しながらも、モデルは未調達ということでご紹介できていませんでした。

その後、3D printimg modelを調達し塗装等完了したので、ご紹介しておきます。

「ミッチャー級」について再録しておくと。

「ミッチャー級」嚮導駆逐艦フリゲート)(就役期間:1953−1978:同型艦4隻)

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(上の写真は「ミッチャー級」駆逐艦の概観:120mm in 1:1250 by Trident: 鋭く切り出された艦首などは非常にいいんじゃないでしょうか?Mk 33のみ手持ちのパーツに変更しています)

同級は対空・対潜能力の強化を目的に米海軍が設計した艦級で、自艦の対空兵装の管制だけでなく、艦載戦闘機の管制もその任務として想定されたため「嚮導駆逐艦フリゲート」(DL)に分類されました。

3600トンの、駆逐艦としては破格に大きな船体を持ち、36.5ノットの高速を発揮することができました。

対空用兵装としては新開発の54口径Mk 42 5インチ両用単装砲2基、と50口径Mk 33 76mm連装速射砲を主兵装とし、対潜用にはMk 108対潜ロケット砲と対潜誘導魚雷発射管、爆雷投射軌条を搭載していました。

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(上の写真は「ミッチャー級」の主要兵装配置:(上段)艦首部のMk 42 5インチ両用砲とMk 33 連装速射砲そして筆者の大好きなMk 108対潜ロケットランチャー(下段)艦尾部のMk 108、Mk 33とMk 42、さらに爆雷投射軌条)

各兵装の解説を簡単に。

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本砲は毎分40発という高い射撃速度を誇り、23000メートルに達する射程距離を有していました。

(Mk. 33 3インチ砲とウェポン・アルファについては既述)

 

DDGへの改装

同級のうち2隻(「ミッチャー」「ジョン・S・マッケイン」)は1963年にタータ・システムを搭載してミサイル駆逐艦(DDG)に改装されています。

その改装は、艦橋前のMk.33 3インチ連装速射砲とウェポン・アルファを撤去してアクロックランチャーを設置、艦尾部のMk.33 3インチ連装速射砲とウェポン・アルファを撤去したスペースにターターシステムの単装ミサイル発射基とミサイル誘導用のイルミネーターを設置しています。後部マストは大型のトラス構造となり、三次元レーダーが搭載されました。

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(上の写真はDDG改装後の「ミッチャー級」駆逐艦の概観:下の写真はDDG改装後の主要兵装:(上段)艦首部の76mm連装速射砲はアスロック対潜ミサイルの8連装発射機に置き換えられています。(下段)艦後部にはMk 108とMk 33を撤去し、ターター対空ミサイルシステムの単装発射機:Mk.13と誘導用のイルミネーター等が設置されました)

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FRAM改装(ここからは以前お投稿の再録です)

DDGに改装されなかった2隻は、FRAM改装されています。内容はMk 108対潜ロケット砲(大好きなのに!)を廃止し、艦後部にDash2機搭載に対応する運用施設を追加しています。

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(上の写真はFRAM改装後の「ミッチャー級」駆逐艦の概観:by Triden:下の写真はFRAM改装後の主要兵装:(上段)艦首部の76mm連装速射砲は開発の遅れていたMk 26 70口径連装速射砲に改められています。(下段)艦後部にはMk 108とMk 33を撤去し、Dash運用用の発着甲板と整備用ハンガーが設けられています。対潜誘導短魚雷発射管がDashハンガーの前方に設置されました)

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Dashは昨今の無人ドローンのご先祖のような兵器で、対潜魚雷を糖鎖した小型無人ヘリを無線操縦で潜水艦の潜む海域に飛ばし、そこから魚雷を投下し攻撃するシステムで、ヘリ搭載の無理な小型艦でも運用できるという利点がありました。

 

「ミッチャー級」フリゲートの3形態

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(上から就役時、DDG改装時(「ミッチャー」「ジョン・S・マッケイン」)、FRAM改装時(「ウィルス・A・リー」「ウィルキンソン」)の順)

 

さて、もう一つのアップデートは以下の投稿から

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一番最後にご紹介した米海軍の最新鋭フリゲート間「コンステレーション級」の3D Printing modelへの塗装等が慣リュしましたので、ご紹介しておきます。

コンステレーション級」ミサイルフリゲート艦(就役予定:2026年から:同型艦:20隻(計画)

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米海軍は「オリバー・ハザード・ペリー級」ミサイルフリゲート艦の最後の艦が2015年に退役して以来、同クラスの艦船の建造を局地紛争への介入や同様の地区の哨戒・警備を主任務とする「沿海域戦闘艦」に移し、フリゲートを持たない海軍となっていました。

しかし昨今の「ウクライナ戦争」や、想定される「台湾有事」に見るように、覇権主義国家の台頭も再び(というべきか)顕在化しつつある状況を考慮して、「沿海域戦闘艦」の整備を計画された52隻から32隻へと縮小して打ち切り、次の20隻を次の新たなミサイル・フリゲート艦の建造に充てる、ある種回帰的とも言える決断をしました。

こうして生まれたのが「コンステレーション級」ミサイルフリゲート艦です。

設計条件として既存感をベースとして既に実績が検証されていることなどが盛り込まれ、さらにベースとするタイプシップとして外国艦を許容したため、設計コンペには外国企業も参加し国際コンペの様相を呈しました。

結果、イタリアのフリゲート艦(カルロ・ペルがミーニ級)をタイプシップとした設計案が採択されました。

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(上の写真は「コンステレーション級」フリゲートの概観:121mm in 1:1250 by Amature Wargame Figures in shapeways:素材との相性もいいのでしょうが、エッジがしっかり立ったシャープなモデルに仕上がっています)

同級は前級(オリバー・ハザード・ペリー級)のほぼ倍の6500トン級の大きさの船体にアクティブ・フューズドアレイ・レーダーを搭載するなど、イージスシステム化に対応した設計となっています。

艦首に70口径57mm単装速射砲を搭載し、その直後に32セルのVLSを搭載しています。このVLSは対空・対潜両用とされていますが、対空ミサイルに比重を置いた搭載弾数になるようです。個艦防御用の兵装としては、ヘリ格納庫上に21連装の近接防空ミサイルが搭載されています。さらにNSM対艦ミサイルの4連装発射筒を4基、艦中央部の構造物上位搭載しています。4連装が4基ですので計16発の対艦ミサイルの搭載弾数は、このクラスの艦級としてはかなり多いと言っていいと思います。

艦尾に比較的広く取られたヘリ格納庫と発着甲板からは、哨戒ヘリ1機(M H-60Rシーホーク)と、無人ヘリ1機(MQ-8C)を固有戦力として搭載・運用できます。

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(上の写真は「コンステレーション級」フリゲートの主要兵装配置:(上段)艦首部の70口径57mm単装速射砲につづき32セルのVLS(対空・対潜療養です):(中段)艦橋部のフューズドアレイ・レーダーとNSM対艦ミサイルの4連装発射筒4基:(下段)ヘリハンガーとその上に設置された近接防空ミサイル発射機、MH-60Rシーホークと無人ヘリMQ-8Cを各1基搭載しています)

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船型比較

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(上の写真は「コンステレーション級」(奥)と前級「オリバー・ハザード・ペリー級」の新旧フリゲート艦の艦型の比較:「コンステレーション級」がかなり幅広で大きな船体を持っていることがわかります。下の写真はこれからの米海軍空母機動部隊の主要護衛艦となるであろう「コンステレーション級」フリゲート(手前)と「アーレイ・バーク級」イージス駆逐艦の関係の比較:いずれも最近の米海軍の設計の傾向を反映して、幅広の船体形状が採用されていることがわかります。これは荒天時の速度維持に対する優位性を考慮されてのことだとか)

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ということで少し取り止めのないアップデートになりましたが、今回はこの辺りで。

次回はロシア海軍フリゲート艦のお話などを予定しています(例によって当てになりませんが。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

 

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