この数週間、中国海軍の空母の話題が目につきます。
上掲のNHKのニュースでは中国海軍初の国産空母「山東」と旧ロシア海軍から(経緯的にはウクライナ海軍から、と言うべきか)から購入した「遼寧」の二空母が同時に初めて太平洋に進出したと伝えています。哨戒警備に当たっていた海上自衛隊のP3Cが艦載機からおそらく駆逐目的で異常接近されたようです。そしてれぞれの戦闘群が沖縄本島と宮古島の間を抜けて、「山東」は小笠原諸島の西側、「遼寧」は同諸島の東側海域まで進出したことが認められています。ニュースによっては「小笠原諸島が挟まれた」と言うような表現も・・・。
中国海軍は台湾有事などの際の米海軍の展開への対応として、南西諸島からフィリピンに至るいわゆる「第1列島線」、小笠原諸島からマリアナを経てグアムへ至る「第2列島線」をそれぞれ防衛ラインと設定しているそうで、これを念頭においた遠方海域での作戦遂行能力の向上を図ったとみられるようです。
中国海軍の航空母艦
さて、モデルのお話ですが、実は筆者は現用艦船の空母のモデルを中国海軍の限らずほとんど保有していません。空母という艦種自体のフォルムが単調である割にモデルが大きく収納に場所を取ることが大きな理由ですが、おそらく筆者の中の「少年」の部分が「艦載機も欲しがるだろう」と言う懸念も強い理由の一つです。1:1250スケールの艦載機というのはとにかく小さくて扱いが厄介なのです(まあ、箱に入れてしまっておけばいいのですが)。
とはいえ、計画がなかったわけではなく、たとえばインド海軍の第二次世界大戦以降の空母、などはほぼほぼ揃っています。さらに中国海軍などは全部で今の所3隻ですので、実はコレクションをするには最適なのです。
ということで、フォルムの単調さから考えると3D printing modelでも十分だろうなどと、以前はShapewaysで商品情報の収集など行ってはいたのです。が、残念なことにShapewaysが破綻してしまい、計画は調達段階で頓挫してしまった、というわけです。
ともあれ、Shapewaysに掲載されていたモデルの写真の何点かは手元にあるので、ご紹介しておきます。
まずは中国海軍の空母を就役順にご紹介しておきましょう。
「001級」空母:「遼寧:Liaoning」(2012年から就役)

(上掲の写真は、かつてShapewaysのMarket Placeに掲載されていた「遼寧」のモデル。Amature Wargame Figure製:筆者は未入手。Shapewaysの破綻で現時点では入手が困難かも:1:1250スケールでの理論値では244mmの長さのモデルになります)
同艦は財政難で70%の完成度で工事が止まっていた旧ソ連海軍の「アドミラル・グズネツォフ級」航空母艦2番艦「ヴァリャーグ」を中国海軍が購入し、中国海軍初の空母として完成させたものです。このような経緯から、しばしば「遼寧」は「アドミラル・グズネツォフ:の準同型艦として扱われます。
購入時にはソ連の崩壊以降の海軍分割の経緯からウクライナに同艦の所有権はあり、中国はウクライナから「洋上ホテル」への転用という名目で購入したと言われています。
59000トン級(満載排水量)全長305mの船体を持ち蒸気タービンを主機として30ノットの速力を発揮できます。艦首をスキージャンプ台形状にしたいわゆるSTOBAR(Short Take Off But Arreted Recovery:短距離離艦拘束着艦)式の発着艦方式を「アドミラル・グズネツォフ」から踏襲し、固定翼機18〜24機(J-15艦上戦闘機)、ヘリコプター12機を運用することができます。
固有の兵装としては、個艦防衛用のHHQ-10SAM18連装発射機4基、1130型CIWS3基、それに対潜ロケット発射機2基を搭載しています。
Shapewaysではないですが・・・3D printing model を発見

上の写真はEbayで見つけたモデルです。フルハル・モデルとウォーターラインを選べるようです。寸法を明記した別のサイトなどもあるのですが、計算上の寸法と必ずしも合致しません。Ebayで提示されている価格より格段に安い値付けになっていることもあり、もう少し慎重に検討したいと思っています。
「002級」航空母艦:「山東:Shandong」(2019年から就役)

(写真は3D shipsから発売されていた「山東」の1:1250スケールモデル:Shapewaysで入手可能でした。1:1250スケール換算では全長253mmのモデルになるようです。1:1250スケールでは、ShapewayのMarketPlaceで3D shipsやBill's Modelsなど複数の製作者から出ているようですが、入手前にShapewaysが破綻し未入手です)
同級は中国海軍初の国産航空母艦です。上述の「遼寧」の設計をベースに外見上は艦橋の大きさを除きほぼ「遼寧」に準じており、「002級」空母はこの改良型と言っていいと考えています。「002級」と称されていますが、現時点で同型艦の建造予定はないようです。
満載排水量67000トン(「遼寧」は59000トン)、全長315mの船体を持ち、艦首をスキージャンプ台形状にしたいわゆるSTOBAR式の発着艦方式を「遼寧」から踏襲しています。
搭載機は固定翼機32−36機(J-15艦上戦闘機)と、回転翼機(ヘリコプター)最大16機を搭載する能力があるとされています。
固有武装は「遼寧」に準じて個艦防衛用のHHQ-10SAM18連装発射機4基、1130型CIWS3基、それに対潜ロケット発射機2基を搭載しています。
3D printing model を発見

上の写真はEbayで見つけたモデルです。フルハル・モデルとウォーターラインを選べるようです。
今回のニュースでは登場しませんが、2024年から試験航海を始めているとされている中国海軍の3隻目の空母、「福建」もご紹介しておきましょう。
「003級」空母:「福建:Fujian」(2024年試験航海)

(3D shipsから上梓されていた「福建」のモデル:フラットな飛行甲板を持っています。船体は幅がひと回り大きいようです)
同艦の最大の特徴は、それまでの中国海軍の空母がスキージャンプ台形状の艦首を有したいわゆるSTOBAR式の発着艦方式を採用していたことを改め、海軍初の電磁カタパルトを有したフラットな艦首形状を持った本格的(?)な空母となったことでした。これにより運用可能な固定翼機の機種が多様化し、遠海での運用に対する適応が高められたと考えられます。
満載排水量は80000トン、全長317mの船体を持ち、前級と比べやや間幅を大きくとって、耐波性と減揺性を向上させ、発着艦作業への適応性を高めた設計となっています。
搭載機数等については未発表ですが、最大で80機程度と推測されています。また運用機種ではカタパルト発艦方式に改めたことにより、ターボプロップ機であるKJ−600が早期警戒機として搭載されることが予定されており、それまでのKa-31 早期警戒ヘリコプターに比べ格段の警戒域の拡大が期待されています。
電磁カタパルトは艦首部に2基、アングルド・デッキに1基搭載される予定で、これにより搭載機の運用効率が格段に向上することが期待されています。しかし一方で電磁カタパルトの運用には膨大な電力が必要で、通常動力推進である「福建」が運用に支障をきたさないか、という疑問も上がっているようです(ちなみに米海軍が太平洋戦争で大量に運用した「エセックス級」空母は蒸気式のカタパルトを搭載していたのですが、名前の通り蒸気を流用して発艦させる機構であったため、搭載機の発艦時=カタパルトが蒸気を使用する際には、母艦自体の速力が低下する、というような弊害が実際に発生していたようです)。
固有兵装では、個艦防御兵装として前級「山東」と同様にHHQ-10SAM18連装発射機4基、1130型CIWS3基を搭載していますが、対潜ロケット発射機は廃止しています。加えて短・中距離対空ミサイルのVLSを搭載する計画もあるようで、いずれにせよ対空戦闘能力を強化する方向での装備搭載となるようです。
就役時期は2025年前半と言われてきており(まさに今ですね)、上述の中国海軍の空母戦闘群の太平洋での活動の活発化などを考えると、同艦には大きな期待が寄せられていることは容易に想像できます。
3D printing model を発見

上の写真はEbayで見つけたモデルです。フルハル・モデルとウォーターラインを選べるようです。前述の通り少し寸法に疑念が・・・。
ということで、少々乱暴ながら保有モデルもないままに中国海軍の空母のお話をしてきましたが、空母戦闘群などという物騒な記述をした通り、空母が単艦で行動するはずもなく、必ず数隻の随伴艦を伴って行動していることが確認されています。
空母随伴艦の話
海上自衛隊の発表によると、最新(2026年6月8日)の随伴艦の構成は「山東」は「レンハイ級」ミサイル駆逐艦1隻(艦番号107)、「ジャンカイII級」フリゲート艦2隻(艦番号571, 572)「フユ級」高速戦闘支援艦1隻(艦番号905)を伴っていると発表しています(統合幕僚監部 報道発表資料 6月8日)。
また「遼寧」についても6月8日付けの報道発表資料で「ルーヤンIII級」ミサイル駆逐艦(艦番号122)、「レンハイ級」ミサイル駆逐艦(艦番号104)、「フユ級」高速戦闘支援艦(艦番号901)、各1隻を伴っていると発表しています。これらの艦級についても見ておきましょう。
先にお断りしておくと、上掲の記載のうち「フユ級」高速戦闘支援艦というのは、いわゆる補給艦のことで、またまた筆者のコレクションにはありません。そこまで手が回らない、というのが正直なところです。
「901級」高速戦闘支援艦=「福裕(フユ)級」(NATOコードネーム):2017年から就役:同型艦4隻(さらに建造を継続中)
ja.wikipedia.org

(Ebayで「901級」高速戦闘支援艦のモデルを発見:計算上は193mmのモデルになりそうです)
空母戦闘群の遠海域での継続的活動を支援する目的で同級は設計されており、48000トンの満載排水量を持ち、長大な航続力を実現するディーゼルを主機としています。さらに25ノットの高速を発揮でき、空母戦闘群への高い随伴性を想像することができます。
艦の中央部に設置された3箇所の門型ポストからは高い洋上補給能力が推測できますし、ヘリコプター搭載機能もあり、病院船機能や工作船機能も有しているようです。
個艦防御兵装としてはCIWS4基のみを搭載しています。
「052D級」ミサイル駆逐艦=「旅洋(ルーヤン)III級」(NATOコードネーム):2014年から就役 同型艦21隻:建造中8隻
(「052D級」ミサイル駆逐艦の概観:124mm in 1:1250 by 幕之内弁当三次元造形:SFD素材で出力したシャープなディテイルを持つモデルです。特に本級の特徴である艦中央部の八木アンテナがコンパクトに再現されるなど、その特徴が顕著に現れているように思います)
同級は現状では中国海軍、特に空母機動部隊の中核を構成する艦級です。外見からも明らかなように中国版イージスと呼称されています。現在21隻が就役しており、最終的には同級の建造数は29隻に達する予定であるとされています。「旅洋(ルーヤン)Ⅲ」はNATO側のコードネームです。
満載排水量7500トンの船体を持ちディーゼルとガスタービンエンジンを併載し30ノットの速力を発揮できます。
同級では、これまでの中国海軍の(ロシア海軍の、というべきか?)特徴的なリボルバー式VLSではなく、米海軍や海上自衛隊と同じようなキャニスター式のVLSを採用しています。(装填等が同じ方式かどうかは不明のようです)
この艦首部と艦中央部に装備された各32セルのVLSにはHHQ-9対空ミサイルと、YJ-18対艦ミサイルが装填されていますが、さらに、対潜ミサイル、巡航ミサイルにも対応している、と言われています。

(同級に搭載されたVLS部分の拡大)

(同級に搭載されたVLS:前級052Cのリボルバー式(下段)から、キャニスター式への変更が見られます)
主要武装は、主砲として130mm単装速射砲を装備し、近接防御用に30mm CIWSとHHQ-10近接防空ミサイルを保有しています。
対潜装備としてはヘリコプター1機を搭載し、さらに短魚雷発射管を装備しています。

(艦橋側面に装着された改良型のフューズド・アレイ・レーダーと八木アンテナ)
同級の14番艦以降はヘリ発着艦甲板を拡大し、全長をやや延長しています。
(下の写真は「052D級」(写真下)と14番艦以降のヘリ甲板を延長した「052DL級」の比較)

ちなみに自衛隊の発表にあった艦番号122は北海艦隊所属の「唐山(Tnagshan)」です。
「055級」ミサイル駆逐艦=「刃海(レンハイ)級」(NATOコードネーム):2020年から就役:同型艦:8隻(12隻まで建造中)

(「055級」ミサイル駆逐艦の概観:145mm in 1:1250 Amatuer Wargame Figures製:3D printing model)
現時点では中国海軍の最新型防空駆逐艦です。西側ではその装備の充実ぶり、艦型の大きさから「中国版イージス」巡洋艦に分類しています。
設計の基本思想は前出の「052D級」ミサイル駆逐艦の拡大・改良版です。中国海軍はこの「052D級」を量産しながらも、さらに先進性を求め同級を建造しました。
艦型は13000トン(満載排水量)を超える大型艦となっています。中国海軍としては初めて統合電気推進システムを採用し、30ノットの速力を発揮できると言われています。
主要な兵装は艦首部(64セル)、艦中央部(48セル)に配置されたVLSに搭載された対空ミサイル、対艦ミサイル、巡航ミサイル、対潜ミサイルで、目的に応じた組み合わせを選択できる優れた汎用性を持っています。
(同級に搭載されたVLS。前級よりもセル数が大幅に増加された)

(艦橋側面に装着された新型のフューズド・アレイ・レーダー)

レーダーシステムもステルス性の高い目標への探知能力を高めています。
他の兵装としては、主砲は052D級と同じ 130mm単装速射砲を1基搭載しています。他に、近接防御用として30mm CIWS、HHQ-10近接防空ミサイル発射機を各1基装備しています。
対潜兵装としては、短魚雷発射管と対潜ヘリ2機を搭載しています。
(下の写真は同級の主砲、CIWS、金札対空ミサイル等の拡大)

ちなみに海上自衛隊の発表にあった艦番号104は北海艦隊所属の「無錫(Wuxi)」、107は南海艦隊所属の「遵義(Zunyi)」です。
(中国海軍のイージス艦の艦型比較。手前から052C級駆逐艦、052D級駆逐艦、055級駆逐艦)

「054A級」フリゲート=「江凱(ジャンカイ)II級」(NATOコードネーム):2008年から就役:同型艦:30隻
同級は外洋進出を目指す中国海軍の中核的な存在となるべく、艦型を一気に4000トン級(満載排水量)に大型化し、これまでのフリゲートとは一線を画する高い航洋性を有する艦級となりました。ディーゼルエンジンを主機として27ノットの速力を発揮できます。
NATOのコードネームは「江凱(ジャンガイ)II」。

(「054A級」フリゲートの概観:108mm in 1:1250 by 幕之内弁当三次元造形製:3D printing model SFD素材で出力されたディテイルまで再現性の高いモデルです)
西側諸国の技術を導入し、ステルス性を意識した艦容となっています。
VLSに搭載した対空ミサイル、対潜ミサイルで高い対空・対潜戦闘力を保有し、YJ-83対艦ミサイル4連装ランチャー2基で対艦戦闘能力も確保したバランスのいい艦級となっています。他に対潜ロケット、短魚雷発射管、対潜ヘリ等の対潜兵装も充実し、汎用フリゲートとして高い完成度を見せています。
(同級に搭載されたVLS(写真上段)と艦中央部に装備された対艦ミサイル発射機(中段写真)ヘリの格納整備甲板(写真下段))

ちなみに自衛隊の発表にあった艦番号571は南海艦隊所属の「運城(Yuncheng)」、572は同じく南海艦隊所属の「衡水(Hengshui)です。
中国海軍、フリゲート艦の系譜
ちなみに下の写真では中国海軍のフリゲートの艦型を比較しています。手前から053A級、053H級、054A級の順:054A級が大きな船体を持ち、それまでの沿岸警備的なフリゲートの設計とは一線をかくする設計であることがよくわかります。

さらに下の写真では、中国海軍のフリゲートと駆逐艦の艦型を比較しています。054A級フリゲート(手前)と052D級駆逐艦。フリゲート艦が航洋性を備え、兵装を充実させ、大さが駆逐艦に迫ってきているのがよくわかります。

今回のニュースでも、中国海軍は沿岸海軍から航洋海軍へと明らかに変質を遂げようとしていることがわかると思います。ざっと2022年時点での艦艇構成をまとめておくと、戦略原潜6隻 攻撃原潜6隻 通常動力潜水艦46隻 空母2隻 大型駆逐艦(巡洋艦:055級)4隻 駆逐艦34隻 フリゲート49隻 コルベット56隻 哨戒艇67隻 大型揚陸艦36隻 中型揚陸艦16隻と、もちろんアジアでは突出した存在になっています。
そして、その実力の程を実感する場面があまりないことは、ありがたいこと、と言わねばならないと考えています。
と言うことで、今回はこの辺りで。
これから二週末ほど、立て続けに本業が入りそうです。再掲ものか、簡単な新着モデルのご紹介などを考えています。その間に、少し宇宙物の工作など進めてみたいという思いもあります。
もちろん、もし「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。
模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。
特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。
もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。
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