相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

現用艦船シリーズ:アメリカ海軍のミサイル巡洋艦vol.2:嚮導駆逐艦(フリゲート)の発展系譜

今回は本稿前々回の続き。米海軍のミサイル巡洋艦の発展系譜についての整理です。

前々回では、米海軍の艦隊防空が航空機の発展から、従来の対空砲から誘導ミサイルを中心とした防空圏構成のために、第二次世界大戦で量産された巡洋艦を改装し誘導ミサイルのプラットフォームとして活用しようという試みを見てきました。

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結果として重巡洋艦ベースの改造艦5隻、軽巡洋艦ベースの改造艦6隻という成果は見られました。一方で「数を揃える」という視点では第二次世界大戦で大量に建造された駆逐艦の改造も検討されましたが、こちらは結果的にはシステムの搭載スペース、搭載弾数等に余裕がなく、実現しませんでした。

 

駆逐艦改造の試み:ミサイル駆逐艦「ジャイアット」:米海軍初の艦対空誘導ミサイル駆逐艦(DDG)

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(上の写真は米海軍初のミサイル駆逐艦(DDG)に改装された「ギアリング級駆逐艦3番艦「ジャイアット」の概観:by Hansaに武装を少し手を入れています)

同艦は「ギアリング級」3番艦で、第二次世界大戦終結間際の1945年6月に就役しました。1956年計画で対空ミサイル駆逐艦に改造が決定し、テリア・ミサイル搭載の米海軍初のミサイル駆逐艦となる栄誉に預かりました。

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(上の写真は「ジャイアット」の主要兵装の配置:艦中央のMk 33はシールドなしの方が良かったかも。艦尾にはテリア・システムのRIM-2連装ミサイルランチャーが搭載されました(写真下段))

 

嚮導駆逐艦フリゲート(DL)という艦種

一方で、米海軍は艦隊護衛の指揮基点となる艦種として嚮導駆逐艦の建造構想を持っていました。同艦種は個艦としての対空戦闘・対潜戦闘能力はもちろん、併せて高い通信能力、指揮能力を有し、艦隊護衛に任じ周辺輪形陣を構成する駆逐艦だけでなく、上空警戒にあたる航空機も管制する機能も兼ね備えていました。

米海軍では同様の艦種にDL(Destroyer Leader)の艦種記号を与え、フリゲートと呼称していました。

 

そのプロトタイプとして建造されたのが「ミッチャー級」嚮導駆逐艦フリゲート)でした。

 

 

「ミッチャー級」嚮導駆逐艦フリゲート)(就役期間:1953−1978:同型艦4隻)

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(上の写真は「ミッチャー級」駆逐艦の概観:120mm in 1:1250 by Trident: 鋭く切り出された艦首などは非常にいいんじゃないでしょうか?Mk 33のみ手持ちのパーツに変更しています)

同級は対空・対潜能力の強化を目的に米海軍が設計した艦級で、自艦の対空兵装の管制だけでなく、艦載戦闘機の管制もその任務として想定されたため「嚮導駆逐艦フリゲート」(DL)に分類されました。

3600トンの、駆逐艦としては破格に大きな船体を持ち、36.5ノットの高速を発揮することができました。

対空用兵装としては新開発の54口径Mk 42 5インチ両用単装砲2基、と50口径Mk 33 76mm連装速射砲を主兵装とし、対潜用にはMk 108対潜ロケット砲と対潜誘導魚雷発射管、爆雷投射軌条を搭載していました。

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(上の写真は「ミッチャー級」の主要兵装配置:(上段)艦首部のMk 42 5インチ両用砲とMk 33 連装速射砲そして筆者の大好きなMk 108対潜ロケットランチャー(下段)艦尾部のMk 108、Mk 33とMk 42、さらに爆雷投射軌条)

各兵装の解説を簡単に。

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本砲は毎分40発という高い射撃速度を誇り、23000メートルに達する射程距離を有していました。

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本砲は半自動式砲で、ラピッドファイアと呼称され、毎分45発(砲身あたり)の射撃速度を持つ優れた砲でした。

Mk 42とMk 33の組み合わせで、強力な防空圏を構成する事ができました。

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Mk.108対潜ロケット砲は、ロケット弾を目標近辺に投射し、搭載する磁気信管で目標を感知させ炸裂させるもので、250−800メートルの射程を持ち、毎分12発投射することができたました。

(余談ですが筆者はこの対潜ロケットが大好きです。というのも小学生の頃の愛読書、小沢さとる先生の名作「サブマリン707」に登場していまして、なんと未来的な(SFなんて言葉知らなかったからね)すごい兵器なんだろう、というのが原体験なのです。興味のある方は是非ご一読を)f:id:fw688i:20190921205626j:plain

 

DDGへの改装

同級のうち2隻(「ミッチャー」「ジョン・S・マッケイン」)は1963年にタータ・システムを搭載してミサイル駆逐艦(DDG)に改装されています。

その改装は、艦橋前のMk.33 3インチ連装速射砲とウェポン・アルファを撤去してアクロックランチャーを設置、艦尾部のMk.33 3インチ連装速射砲とウェポン・アルファを撤去したスペースにターターシステムの単装ミサイル発射基とミサイル誘導用のイルミネーターを設置しています。後部マストは大型のトラス構造となり、三次元レーダーが搭載されました。

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(上の写真はDDG改装後の「ミッチャー級」駆逐艦の概観:下の写真はDDG改装後の主要兵装:(上段)艦首部の76mm連装速射砲はアスロック対潜ミサイルの8連装発射機に置き換えられています。(下段)艦後部にはMk 108とMk 33を撤去し、ターター対空ミサイルシステムの単装発射機:Mk.13と誘導用のイルミネーター等が設置されました)

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FRAM改装

DDGに改装されなかった2隻は、FRAM改装されています。内容はMk 108対潜ロケット砲(大好きなのに!)を廃止し、艦後部にDash2機搭載に対応する運用施設を追加しています。

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(上の写真はFRAM改装後の「ミッチャー級」駆逐艦の概観:by Triden:下の写真はFRAM改装後の主要兵装:(上段)艦首部の76mm連装速射砲は開発の遅れていたMk 26 70口径連装速射砲に改められています。(下段)艦後部にはMk 108とMk 33を撤去し、Dash運用用の発着甲板と整備用ハンガーが設けられています。対潜誘導短魚雷発射管がDashハンガーの前方に設置されました)

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Dashは昨今の無人ドローンのご先祖のような兵器で、対潜魚雷を糖鎖した小型無人ヘリを無線操縦で潜水艦の潜む海域に飛ばし、そこから魚雷を投下し攻撃するシステムで、ヘリ搭載の無理な小型艦でも運用できるという利点がありました。

 

「ミッチャー級」フリゲートの3形態

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(上から就役時、DDG改装時(「ミッチャー」「ジョン・S・マッケイン」)、FRAM改装時(「ウィルス・A・リー」「ウィルキンソン」)の順)

 

併せて、もう一隻、少し出自の異なる嚮導駆逐艦が建造されていました。

嚮導駆逐艦ノーフォーク」(就役期間:1953-1970:同型艦なし)

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(上の写真は「ノーフォーク級」駆逐艦の概観:133mm in 1:1250 by Trident:モデルは後期のアスロック対潜ミサイルの導入に向けての試験艦となった際を表現しています。就役時には艦後部のアスロック発射機の搭載位置に艦首部と同様に「ウェポン・アルファ」2基を装備していました))

同艦は、第二次世界大戦において航空機と並び通商路への重大な脅威となることが明らかとなった潜水艦への対応策として設計された艦級でした。米海軍は航空機への対策として大戦中に「アトランタ級防空巡洋艦(CLAA)を建造していましたが、同艦は同様の設計思想で当初はいわば「対潜巡洋艦」(CLK=sub-killer cruiser)として1隻のみ建造されたものでした(計画時には2隻の予定でした)。

就役時には嚮導駆逐艦(DL)に艦種名称が変更され、1955年にはフリゲート艦に艦種名称が変更されました。

アトランタ級防空巡洋艦に範をとったため、船体は5000トン級と大きく、33ノットの速力を出すことができました。

対潜艦として設計されてところから、就役時の主兵装はMk.108「ウエポン・アルファ」(対潜ロケット砲)4基と誘導魚雷でした。

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Mk.108対潜ロケット砲は、ロケット弾を目標近辺に投射し、搭載する磁気信管で目標を感知させ炸裂させるもので、250−800メートルの射程を持ち、毎分12発投射することができたました。しかしながら、実情は不発率が高いなど不評だったようです。

ノーフォーク」は1960年代からアスロックの試験艦となったため、艦尾部の「ウェポン・アルファ」2基をアスロック発射機に置き換えています。f:id:fw688i:20230903100939p:image

(「ノーフォーク」の兵装配置の拡大:艦首からMk.26 3インチ連装速射砲2基、「ウェポン・アルファ」対潜ロケット砲2基、艦橋脇のボートの下に対潜魚雷発射管(以上写真上段)、同艦後期に試験的に設置されたアスロック8連装発射機(就役時にはこの位置に「ウェポン・アルファ」対潜ロケット砲2基が設定されていました(、そしてMk.26 3インチ連装速射砲2基)

一方、砲兵装は個艦防御用として新開発の70口径Mk.26 3インチ連装速射砲4基が予定されていました(就役時には間に合わず50口径Mk.33 3インチ連装速射砲、いわゆるラピッドファイアが搭載されていました。のち当初予定のMk.26に換装)。

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(各装備の拡大:Mk.26 70口径3インチ連装速射砲(上段左)、「ウェポン・アルファ」対潜ロケット砲(上段右)、対潜魚雷発射管(下段左)、アスロック8連装発射機(下段右:就役時にはこの位置に「ウェポン・アルファ」対潜ロケット砲2基が設置されていました:筆者はそちらを見たかった!))

 

DDGへの改装案(1959年頃)

この時期には大型の艦船には必ずと言って良いほど、ミサイル駆逐艦への改装計画がありました。同艦もご多聞にもれずターターシステムを搭載したミサイル駆逐艦への改装計画があったようです。その際には、「ウェポン・アルファ」を全部撤去して、アスロックとターターに載せ替える、というようなことになってようです。

この時期、「ノーフォーク」が新型レーダーやアスロックの試験艦として運用されていたことなどから、この改装案は実現しないまま、1970年に同艦は退役しました。

(下の写真は、「ノーフォーク」と「ミッチャー級」の大きさを比較したもの。「ノーフォーク」が軽巡洋艦出自のかなり大きな設計だったことがよくわかります)

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「クーンツ級」ミサイルフリゲート(就役期間1960-1991:同型艦:10隻:1975年より駆逐艦に類別変更)

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(「クーンツ級」ミサイルフリゲートの概観:124mm in 1:1250 by Hansa)

同級は先行して建造された「ミッチャー級」嚮導駆逐艦フリゲートの船体設計をベースに、これに1956年に実戦配備が始まった「テリアミサイル」を搭載したもので、「ミサイルフリゲート」(DLG)の名称を冠した最初の艦級となりました。(設計上の一番艦は「ファラガット」でしたが、建造途中で兵装の変更があったりして最初に就役したのは4番艦の「クーンツ」でした。このため「クーンツ級」と呼称されることもあります)

同級は「ミッチャー級」フリゲートの発展系ではありましたが、同級が3600トン級であったのに対し、テリアミサイルとその管制システムの搭載から排水量は4700トン級に大型化しています。

機関等は「ミッチャー級」のものを踏襲し、32ノットの速力を発揮することができました。

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(「クーンツ級」の兵装配置の拡大:詳細は下記本文で:下段中央のMk.33  3インチ連装速射砲はシールドなしのストックパーツに置き換えてあります。テリアミサイルはMk.10連装発射機の後ろの収納庫から装填される仕掛け?)

兵装はテリアミサイルを主兵装として、Mk.10連装発射機とテリアミサイルの管制機構が艦尾部に搭載されています。Mk.10発射機下の弾庫には40発のミサイルが収納されていました。砲兵装としてはMk.42 5インチ砲1門が艦首に搭載され、その直後にアスロック8連装発射機が設置されました。その他対潜兵装として短魚雷三連装発射管2基が搭載され、個艦防空用にはMk.33 3インチ連装砲が両舷に装備されました。後にこの両舷の3インチ連装砲はハープーン対艦ミサイルの発射機に換装されています。

主兵装であるテリアミサイルは後にスタンダードミサイルに換装されています。

 

同級は1975年の艦種再分類でミサイルフリゲートからミサイル駆逐艦に艦種変更されました。

「リーヒ級」ミサイルフリゲート(就役期間1962-1995:同型艦:9隻:1975年より巡洋艦に類別変更)

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(「リーヒ級」ミサイルフリゲートの概観:130mm in 1:1250 by Delphin)

同級は米海軍初のミサイルフリゲートである「クーンツ級」についづいて、さらにミサイル化を進めてテリアミサイルを艦首・艦尾にダブルエンダーで搭載した設計になっています。ミサイル設備の拡充に伴って発電関係の装備を増設し、艦型は大型化しています。

6000トン弱の船体に機関は全休のものを踏襲して搭載し、33ノットの速力を出すことができました。

同級からマストと煙突を一体化したマック構造が採用されました。

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(「リーヒ級」の兵装配置の拡大:詳細は下記本文で:下段中央のMk.33  3インチ連装速射砲はシールド付きのストックパーツに置き換えてあります:実はシールドなしが正解だったかも。テリアミサイルはMk.10連装発射機の後ろの収納庫から装填される仕掛け。アスロックは発射機直後のブリッジ下が収納庫になっています)

主兵装としてはテリアミサイルのMk.10連装発射機を艦首・艦尾にダブルエンダーで搭載し、いわゆる主砲は廃止されました。テリアミサイルは後にスタンダードミサイルに換装されています。対潜兵器としては前級と同様、アスロック8連装発射機1基と三連装単魚雷発射菅2基を装備し、個艦防空用にMk.33 3インチ連装速射砲を両舷に搭載しています。(後にこの連装速射砲はハープーン対艦ミサイル発射機に換装され、加えて個艦防空用にCIWSが搭載されました)

 

同級は1975年の艦種再分類でミサイルフリゲートからミサイル巡洋艦に艦種変更されました。

 

原子力ミサイルフリゲート「ベインブリッジ」(就役期間1962-1996:同型艦なし:1975年より巡洋艦に類別変更)

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原子力ミサイルフリゲート「ベインブリッジ」の概観:135mm in 1:1250 by Delphin)

同艦は1959年度計画で1隻のみ建造されました。前述の「リーヒ級」の設計を踏襲し、機関を原子力に置き換えた設計でした。

大型艦の機関の原子力化については空母「エンタープライズ」、ミサイル巡洋艦ロングビーチ」等で実装化が進められていましたが、この事で第二次世界大戦時からすでに懸案であった小型艦の航続力不足がより深刻になることが懸念されました。同艦はこの課題に対する中型艦での導入研究として建造されました。

兵装、およびその配置等は「リーヒ級」に準じています。

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(「ベインブリッジ」の兵装配置の拡大:兵装配置は通常動力推進の「リーヒ級」に準じています。艦首からテリアミサイルMk.10 連装発射機とその直後の装填庫、アスロック発射機、ちょっとわかりにくいですが三連装短魚雷発射管、Mk.33  3インチ連装速射砲、シールド付き(ストックパーツに置き換えてあります)、艦尾のテリアミサイルMk.10連装ランチャーの順。Mk.33  3インチ連装速射砲は後にハープーン対艦ミサイル発射筒に換装されています。さらにその周辺にCIWSが増設されています)

 

同級は1975年の艦種再分類でミサイルフリゲートからミサイル巡洋艦に艦種変更されました。

 

同型艦なのに艦型が随分と異なるのは?

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(「リーヒ級」ミサイルフリゲート:130mm と「ベインブリッジ」:135mmの艦型比較)

同型艦、動力の違い、と説明しながら、随分、艦型も異なるようです。実艦でも「リーヒ級」は全長162.5mに対し「ベインブリッジ」は172mです。煙突がない分、上部構造が「ベンブリッジ」では簡素化されているのは理解できます。

これが原型製製作者の相違、あるいは気まぐれによるものかどうか、筆者にはわかりませんが、首を傾げるうちに、一つ面白い記述を見つけました。それは、この後紹介する原子力ミサイル巡洋艦「カリフォルニア級」についてのWikipediaでの記述です。

こんな一節が。

「通常動力艦は巡航速度で抵抗が最小になるような船体設計としており・・(中略)・・核動力艦のメリットを活かして、巡航速度よりも高速時の抵抗が最小になるように設計されている」

つまり核動力艦の場合には燃料の心配が不要なので、いつでも高速航行ができる、その状況に船体の設計は合わせている、そういうことですね。

 

「ベルナップ級」ミサイルフリゲート(就役期間1964-1995:同型艦:9隻:1975年より巡洋艦に類別変更)

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(「ベルナップ級」ミサイルフリゲートの概観:134mm in 1:1250 by Delphin)

同級は前級の「リーヒ級」ミサイルフリゲートが艦隊防空の専任艦とした設計であったのに対し、より汎用任務をも視野に入れた設計とされました。このためテリアミサイルは「リーヒ級」から1基減じて代わりにMk.45  5インチ砲が艦尾に搭載されました。f:id:fw688i:20230716095703p:image

(「ベルナップ級」の兵装配置の拡大:詳細は下記本文で)

艦首に設置されたテリアミサイルの連装発射機Mk.10は新開発のMod.7が採用され、弾庫の収納弾数が従来の40発から60発に増加しています。さらにアスロックの発射も可能で、同級ではアスロックの8連装発射機は廃止されました。テリアミサイルは後にスタンダードミサイルに換装されています。対潜兵器としてはアスロック以外に短魚雷3連装発射管2基を搭載していました。個艦防御用の兵装としてはMk.34  3インチ単装速射砲が両舷に配置されています。この単装速射砲は後にハープーン対艦ミサイル発射筒に換装され、CIWSが搭載されました。

艦尾部を砲兵装としたことにより、艦尾にヘリ発着甲板と格納庫のスペースを得ることができ、無人ヘリDash2機が搭載されました。

 

同級は1975年の艦種再分類でミサイルフリゲートからミサイル巡洋艦に艦種変更されました。

 

原子力ミサイルフリゲート「トラクスタン」(就役期間1967-1995:同型艦なし:1975年より巡洋艦に類別変更)

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原子力ミサイルフリゲート「トラクスタン」の概観:138mm in 1:1250 by Argos:モデルはCIWSやハープーン対艦ミサイル4連装発射筒を装備していますので、後述するように、就役当初を再現したものではなく1980年代以降の改装後を再現したものです)

同艦は「ベルナップ級」ミサイルフリゲートを核動力化したものです。

米海軍の原子力ミサイル巡洋艦(就役当時はフリゲートの艦種分類でした)としては、「ロングビーチ」「ベルナップ」につぎ3隻目です。f:id:fw688i:20231223134852p:image

(「トラクスタン」の兵装配置の拡大:武装の詳細は下記本文で:中段写真では同感の大きな特徴である巨大なラティス構造のマストが見ていただけます:写真上段のCIWS、写真下段のハープーン発射筒から、モデルは1980年以降のを再現したものであるkとがわかります

搭載する兵装、その配置等は「ベルナップ級」に準じ、主要兵装である対空ミサイルは当初はテリア・システムを搭載していましたが、「ベルナップ級」が艦首にMk.10.Mod7 連装発射機を装備したのに対し、同艦ではこれを艦尾に装備し、ドラム型弾倉3基を搭載して60発のミサイルを収容していました。この発射機はアスロックの運用も兼用していました。加えて砲兵装としてMk.42 54口径5インチ速射砲を1基、50口径3インチ単装砲2基を艦中央部に搭載していました。

対潜装備としては、上記のMk.10Mod7 連装発射機から射出されるアスロックに加え533mm魚雷発射管、324mm短魚雷連装発射管を固定式で搭載していましたが、後に533mm魚雷発射管は撤去されました。同艦は米海軍の原子力ミサイル巡洋艦としては唯一ヘリコプターの搭載・運用能力を備え、ヘリコプター1基を搭載していました。

同艦も当初搭載していたテリアミサイルはスタンダードミサイルに換装され、両舷の個艦防御用の速射砲に変えてハープーン対艦ミサイルとCIWSが搭載されました。

 

同級は1975年の艦種再分類でミサイルフリゲートからミサイル巡洋艦に艦種変更されました。

 

原型である「ベルナップ級」ミサイル巡洋艦との比較

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(写真上段と下段左が原型である「ベルナップ級」(Delphin社製):一番大きな差異はミサイルと主砲の搭載位置が逆であることと、艦中央部のマストの構造=「ベルナップ級」は煙突を収容したマック構造ですが、「トラクスタン」は原子力推進ですので煙突を持たず、したがってラティス構造のマストを持っています)

 

フリゲート艦(嚮導駆逐艦)出自のミサイルフリゲート艦の艦級の比較

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「カリフォルニア級」原子力ミサイルフリゲート(就役期間1974-1999:同型艦:2隻:1975年より巡洋艦に類別変更)

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(「カリフォルニア級」原子力ミサイルフリゲートの概観:145mm in 1:1250 by Argos:このモデルはブリッジ前のアスロック8連装発射機を撤去したのちを再現したものです)

同級は「ニミッツ級原子力空母の啓造計画に準じ、「原子力空母機動部隊の艦隊防空中枢艦」となるために設計されたミサイルフリゲートで、これまでの原子力ミサイルフリゲートが従来動力艦を核動力化したものであったのに対し、初めて核動力を機関として想定して設計された艦級です。2隻が建造されました。

これまでの駆逐艦由来の艦級の系統とは異なり、9000トンを超える大きな船体を持ち、30ノットの速力を有していました。

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(「カリフォルニア級」の兵装配置の拡大:詳細は下記本文で:Argos製モデルの精緻な細部は圧巻というべき。写真上段は艦首部の主要兵装の配置を示していますが、アスロック8連装発射機が撤去された後が再現されています。アスロックランチャーの設置後の直前の構造物は、アスロックの次発装填用の弾庫で、次発装填時にはランチャーを180度旋回させて、ランチャー後部を弾庫に向ける必要がありました。アスロックの撤去後は何に使ったんだろう?:中段写真では、ハープーン対艦ミサイルの発射筒やCIWSの装備位置が確認できます)

主兵装はターターDシステムで、対空ミサイル発射機に単装のMk.13(各40発収納)を採用し、これを艦首尾にダブルエンダーで搭載しています。

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砲兵装としては新開発の軽量Mk.45  5インチ単装砲をこれも艦首尾に搭載しています。

対潜装備としてはアスロック8連装発射機を艦首に、連装短魚雷発射管を両舷に装備し、これら以外にはハープーン対艦ミサイル4連装発射筒を2基、個艦防御用にCIWS2基を搭載しています。

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同級は1975年の艦種再分類でミサイルフリゲートからミサイル巡洋艦に艦種変更されました。

 

バージニア級」原子力ミサイル巡洋艦(就役期間1976-1998:同型艦:11隻)

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(「バージニア級」原子力ミサイル巡洋艦の概観:141mm in 1:1250 by Argos:このモデルは艦尾にトマホーク搭載用のMk.143 装甲ボックスランチャーを搭載した状態を再現したものです)

同級は前級に引き続き、原子力空母機動部隊の直衛、防空中枢艦として設計されました。

10000トンを超える船体に核動力を搭載し、30ノットの速力を発揮することができました、

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(「カリフォルニア級」の兵装配置の拡大:詳細は下記本文で:ブリッジ直前に装備されたハープーン対艦ミサイルの発射筒、艦尾のトマホーク用装甲ボックスランチャーなどが確認できます)

主兵装等は原則、前級「カリフォルニア級」のものを踏襲しました。主兵装は前級同様ターターDシステムで、対空ミサイルの発射機としては艦首尾に配置された連装のMk.26発射機(44発収納)が搭載されました。

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他に砲兵装としてMk.45  5インチ単装砲、ハープーン対艦ミサイル4連装発射筒を2基、個艦防御用にCIWS2基等、全て「カリフォルニア級」の兵装を踏襲しています。

対潜装備としてはアスロックをMk.26から発射できるほか、三連装短魚雷発射管2基を装備しています。さらに、のちにトマホーク巡航ミサイル用として、Mk.143  4連装装甲ボックスランチャー2基が追加装備されました。

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同級の搭載するターターDシステムはターターシステムから発展した武器統合システムであり、やがてイージスシステムへと発展します。同級も後期型設計ではイージスシステムを搭載する計画もありましたが、同級では搭載が困難とされ、11隻の計画は4隻で打ち切られ、イージスシステム搭載は次級の「タイコンデロガ級」に引き継がれました。

 

Argos製モデルについて

上掲のように、Argos社のモデルは大変精度が高く、一方で大変高価で取引されています。筆者は以前ご紹介した「ロングビーチ」、今回登場している「カリフォルニア」「バージニア」の各モデルを保有してますが、いずれもEbayで調達したもので、しかしながら一体いくらで入手したのか、記憶にありません。(記憶にない、ということは、それほど無理をして入手したということではなさそうなのですが。Ebayには時々、そのようなエアポケットのようなラッキーな瞬間があることはあるのです。それほどその機会が多くはありませんが)

(Argo社製「ベインブリッジ」:例によって筆者がモデル検索等にお世話になっているsammelhafen.de掲載の写真。下は筆者の保有している「ベインブリッジ」(写真上段:Delphin製)と現在ebayに出品されているArgos社製「ベインブリッジ」の比較。うーん、こうやって比べてしまうと・・・。しかしebayでの価格差はおよそ5倍。こちらも、うーん!)

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同社のラインナップは現用艦が多く、いずれも大変精度の高いモデルになっています。筆者はこれまで第二次世界大戦前までのコレクションにまず力を入れ、特に外国艦船の場合、現用艦の収集にはあまり熱心ではありませんでした。ですので、接する機会が少なかったのですが、改めてこうして観察すると、やはりすごいメーカーであることを再認識しました。が・・・。

 

タイコンデロガ級」イージスミサイル巡洋艦(就役期間1983-現在:同型艦:27隻)

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タイコンデロガ級イージス巡洋艦1−5番艦の概観:同級の1番艦から5番艦までは、Mk 26連装ミサイルランチャーを搭載していました。装弾数は2基合わせて44発で、イージスシステムの効力を考慮すると十分ではなく、6番艦以降はVLS装備艦となっています。直下の写真は、1-5番艦の兵装配置) 

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同級は米海軍が導入した世界初のイージスシステム艦で、スプルーアンス級の船体をベースとして利用し、高い対空、対潜、対艦、対地攻撃能力を持っています。当初はミサイル駆逐艦として分類されましたが、後にミサイル巡洋艦に再分類されました。

イージスシステムの詳細については、優れた説明がたくさんありますのでそちらに委ねるとして、(例えばこちら)

ja.wikipedia.org

やや乱暴に整理してしまうと、イージスシステム(Aegis Weapon System: AWS)は、ターターシステムなど従来のいわゆる防空システムの枠にとどまらず、レーダー等のセンサーシステム、情報処理システム、武器システムを全て連結した統合的戦闘システムを意味しています。

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タイコンデロガ級イージス巡洋艦の最大の特徴は、なんと言っても巨大な上部構造物にはめ込まれたレーダーパネルでしょう) 

同システムは同時に128目標を補足・追跡し、脅威度の大きい10目標程度を特定し迎撃することが、自動でできるとされています(もしかすると、ここで上げている目標数などは、さらに更新されているかもしれません)。

さらに、このシステムへの接続は、イージスシステム搭載艦にとどまらず、他の機器搭載艦艇とも接続可能で、従って、個艦の武器システムのみでなく、例えば近接する艦隊全体の武器システムによる艦隊防空が可能となるわけです。

と、このように優れた可能性を持つシステムなのですが、一方でシステムを構成する兵器・機器の重量は膨大で、およそ700トンにも達します。そこで余裕のある「スプルーアンス級」の船体が、搭載プラットフォームの候補に上がって来るわけです。

同級の余裕のある船体でも、大きな重量の上部構造を搭載したため1•2番艦の就役時には復元性に課題が生じたため3番艦以降は重量軽減のための船側外板の素材見直しや設計変更が行われています。

機関は基本的に「スプルーアンス級」のものを踏襲しましたが、イージスシステムの搭載により搭載発電機の増設等、電源確保に向けての改修が行われました。

 

VLS装備艦の登場

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タイコンデロガ級イージス巡洋艦6番艦以降の概観:Mk26連装ミサイルランチャーではなく61セルのVLSを艦の前方後方に装備し、装弾数と即応性を向上させています)

兵装面で見ると、5番艦まではMk 26連装ランチャー2基を主兵装とし、その他の砲兵装や対艦兵装、個艦防御兵器については「スプルーアンス級」と同様、5インチ速射砲(Mk 45)2基、CIWS2基、三連装短魚雷発射管2基、対潜ヘリ2機、ハープーン4連装発射筒2基を搭載していました。しかしMk26連装ランチャー2基の装填数が44発しかなく、システムに対し不釣り合いであったため、6番艦以降は61セルのVLSを艦種部、艦尾部に各1基搭載し、装弾数と即応性を高めています。

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余談ですが、確か、トム・クランシーの小説「レッド・ストーム・ライジング」で、主人公の一人の乗艦である「タイコンデロガ」がその装弾数の少なさと即応性の低さから、せっかくイージスシステムが目標を捕捉しながらも撃沈されてしまう(大破だったかも?)というような「くだり」があったのを思い出しました。

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現在、Mk26搭載艦5隻は全て退役済みですが、残りのVLS搭載艦22隻は現役です。

 

ところで、同級のベースとなった「スプルーアンス級駆逐艦については本稿の下記の回でご紹介しています。そちらも是非。

fw688i.hatenablog.com

 

「カリフォルニア級」「バージニア級」とイージスミサイル巡洋艦(「タイコンデロガ級」)
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(手前から「カリフォルニア級」「バージニア級」「タイコンデロガ級」の順:「タイコンデロガ級」の上部構造物の大きさが目につきます。イージスシステムを搭載するにはこれくらいのスペースが必要、ということでしょうか?「バージニア級」のイージス艦化ができなかった理由がなんとなくわかるかも。電源供給等の視点で言えば、核動力艦は圧倒的に優位なはずなんですがね)

ということで、嚮導駆逐艦フリゲートに由来するの艦隊防空艦の現在に続く系譜は、ともあれこの辺りで。

 

次回は今回の流れで米海軍の「今日の」フリゲート艦の艦級の系譜のお話か、あるいは、ロシア海軍の「ウダロイ級」駆逐艦のヴァリエーション、その辺りをご紹介いたいと思います

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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