相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

夏休みの架空艦:「ロングビーチ」のイージス艦改装モデル、到着

今回は以前ご紹介した米海軍原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」のイージス艦改装モデルが到着したので、その仕上げが完了しましたので、ご紹介を少し。

そんなお話で。

 

まずは新着モデルのご紹介から。

本稿の7月2日の投稿「現用艦船シリーズ:アメリカ海軍のミサイル巡洋艦vol.1:第二次世界大戦巡洋艦の改装の系譜」で、世界初の原子力推進戦闘艦として有名な「ロングビーチ」をご紹介しています

fw688i.hatenablog.com

ロングビーチ」の記述を再録しておくと・・・。

(引用ここから)

原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」ミサイル巡洋艦(就役期間:1961-1995年:同型艦なし)

ja.wikipedia.org

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(上の写真は世界初の原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」の概観:177mm in 1:1250 by Argos: 同社のモデルはかなり精密に作り込まれています。モデルは1963年以降の5インチ砲を追加装備したのちを再現しています。 Argosモデル:次回詳しくご紹介しますが、現用艦船のモデルでは群を抜いています。しかし流通量がそれほど多くなく、その分、中古市場(Ebay等)でも大変高価です<<<これは困った!

第二次世界大戦後、米海軍が初めて設計した巡洋艦で、同型艦はありません。世界初の原子力を推進機関とする水上戦闘艦であり、かつミサイルを主兵装とする初めての戦闘艦でもありました。

空母機動部隊の艦隊防空の必要性から、新世代の水上戦闘艦艇では従来の砲兵装主体からミサイル主体への主兵装の転換は必須であり、システムへの電力供給、ミサイルシステム自体の規模を考慮すると、ある程度の大型艦が必要でした。同艦は「ボルチモア級」重巡洋艦なみの14000トン級の船体に原子炉2基を搭載し、30ノットの速力を発揮する設計でした。

搭載兵装はタロスとテリアの2種を併載して、広範囲な防空圏を構成することができました。艦首部にテリア用の連装ランチャー2基を装備し、それぞれ40発、80発の弾庫を直下に設置しています。タロスは艦尾部に搭載され、連装ランチャー1基とその下に52発装填の弾庫が設置されました。

対潜兵装としては艦中央にアスロック8連装発射機と3連装魚雷発射管が設置されました。f:id:fw688i:20230702105432p:image

原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」の主要兵装:艦首部のテリアミサイルの連装発射機2基とその管制レーダー(写真上段):同艦の特徴の一つでもある特異な形状の艦橋とアスロック8連装発射機、後日追加装備された5インチ単装砲塔2基(中段):艦尾部のタロスミサイル発射機と管制レーダー。ヘリコプターの発着艦が可能でしたが、格納庫はありませんでした(写真下段))

就役当初は砲兵装を全く持たない同艦でしたが、後に低空目標や水上目標に対する対抗手段として5インチ砲2基を艦中央部に搭載しています。

1961年から95年までの長い就役期間中に数度の兵装変更が行われました。艦首部のテリアミサイルはスタンダードミサイルに更新され、タロスミサイルは1980年代に撤去され、ハープーン対艦ミサイルの発射筒とトマホークの装甲発射ランチャーが設置されています。さらに90年代にはCIWS2基が装備されています。

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(上の写真は、模型のヴァリエーションで見る兵装変更:(上段)就役時の装備に比較的近く、艦首部にテリア、艦中央にアスロック、艦尾にタロスが装備されています。5インチ砲は未装備ですね。(中段)5インチ砲2基が、艦中央部に設置されました。(下段)スタンダードミサイルへの換装に伴い、艦尾のタロスが撤去され、ハープーン対艦ミサイルの発射筒が設置されました。わせてCIWS2基もタロス管制レーダーの装備跡に設置されています:写真はいずれもsammelhafen.de掲載のものを拝借しています)

その後、1970年代末期には新造イージス艦の建造に変えて同艦のイージス艦への改装案も検討されましたが、実現しませんでした。

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(写真はShapewaysにアップされているイージス艦への改造後の「ロングビーチ」を想定したモデル。連装発射機を装備した形状(おそらくイージスシステム導入直後?)とVLSへの換装後、両方、アップされています:作ってみてもいいかも)

結局、1995年に退役、2002年には原子炉の破棄も完了し、2012年にスクラップにされました。

(引用ここまで)

 

Shapewaysへの発注:Amature Wargame Figures

と言うことで、末尾で「ロングビーチ」のイージス艦改装のモデルを見つけた、と言うご紹介をしています。上掲のようにこのモデルは本稿の読者にはお馴染みの3D printing ModelのShapewaysで手に入れることができます。

www.shapeways.com

www.shapeways.com

早速オーダーを出し、今週、月曜日に到着しました。

モデルを改めて見ておきましょう。(下の写真)

両モデルともAmature Wargame Figures制作で、粘性の高いWhite Natural Velsatile Plastic(制作者のお勧め素材)で成形されています。二つのタイプがあり、初期の「タイコンデロガ級」イージス巡洋艦と同様のMk.26連装ミサイルランチャーをダブルデッカーで搭載した形式(写真上段)と、VLSに換装した形式(写真下段)の2種類がアップロードされています。

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初期型では、Mk.26連装ランチャー以外にもハープーン発射筒(上段写真のブリッジ前)、トマホーク装甲ランチャー(上段写真の艦尾:仰角をかけた発射体制でしょうか)なども再現されていますが、後期型(VLS型)ではそれらは全てVLSに収納されていると言う想定でしょうか、姿を消し、CIWSが上部構造に追加されています。

Amature Wargame Figuresとしては標準的な仕上がりです。上掲の写真でもお分かりのように、ざっくりとした全景はなかなかいいのですが、細部は少し物足りない、乱暴に言うとそんな感じでしょうか。少なくともマストはやはりなんとかしたくなりますね。

いずれにせよこうした架空艦も結構揃っているので、コレクションを充実させるベースとしては、既存のモデルがebayではなかなか見つからない時など、大変ありがたく利用させていただいています。このAmature Wargame Figuresをはじめ、いろいろな艦船モデルの3D printing model製作者や、出力素材の比較など、本稿の下記でもご紹介していますので、興味があればご一読を。

fw688i.hatenablog.com

 

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6回も続けてたんですね。結構ハマってたんだなあ(まあ、今もはまっていますが)。

3年以上前の投稿なので、ここから製作者も増えていますし、クオリティの向上も著しい。素材もヴァリエーションが随分増えていて、この素材との関連で、つまりディテイルの再現性の幅が増えたことで、最近のモデルは本当に素晴らしい、と筆者は思います。価格とも関連するので、その選択も、また醍醐味の一つかと。(こんなことを書いていると、きっとメタルモデルの製作者からは叱られるんだろうなあ。一方で、古くから(つまり3D model登場以前から)素晴らしい精度のメタルモデルを供給してくれてきた製作者は、いわゆる職人が多く、高齢化に伴う引退などの話が聞かれるようになってきています。こんなところでもDigital化の波が)

ひとつ3D modelについてl注意が必要なのは、オーダーしてから手元に届くのに、結構時間がかかる、と言うところでしょうか?気持ちにゆとりを持って(まあ、艦船モデルの話なので、そんなに緊急性はないと思いますが)オーダーしましょう。制作に2週間、配送に1週間、くらいは最低見ておいた方がいいでしょうね。それより早く着いたら「ラッキー」位の気持ちで。面白いのは制作過程も配送過程もトラッキングできるところ。Shapewaysのマイページから、いつでも作業工程がチャックできます。「おお。準備できたな」とか「パッキングに回った」とか。配送も今どのあたりか、こちらはUPSのサイトでチェックできます。発送後Shapewaysから送られてくるトラッキングナンバーで、UPSのサイトにアクセス。「今夜、ケルンについたのか」とか、「おお、成田まで来てるな」とか。おまけ的な楽しみですが、こう言うのは意外と大事かも。

 

と、話がいつものことながら大きく横道にそれましたが、今回のモデルのご紹介を。

ロングビーチ」;原子力イージス艦改装 第一形態(1985年ごろ?)

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原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」のイージスシステム館への改装の第一形態の概観:イージスシステムの搭載により上部構造が大きく様変わりし、艦容は一変しています)

ロングビーチ」は1970年代末に実際にイージスシステム艦への改装が検討されていました。その際のコンセプト図が残っていて、今回のモデルはそれに大変忠実だと言うことがわかると思います。

ロングビーチ」はご承知の通り原子力推進で、余裕のある電力等はイージスシステムを搭載するにはうってつけと見られたかもしれません。同様に他の原子力ミサイル巡洋艦もあクァせて検討俎上に上がったようですが、それぞれシステム搭載スペースを捻り出すには大規模な改装が必要で、いずれも見送られています。

ロングビーチ」も同様で、今回のモデルを見ていただければ一目瞭然ですが、上部構造は原型をとどめないほどの改装を受ける必要がありました。f:id:fw688i:20230806151014p:image

(巨大な上部構造:イージスシステムの搭載と対潜哨戒ヘリの運用施設:四隅にはパッシブ・フューズドアレイアンテナが)

艦橋部には巨大なシステムが搭載され、上部構造物の四すみにはパッシブ・フューズドアレイ・アンテナが設置されています。上部構造物の頂点には大きなトラス構造のマストが聳え、その前後にミサイルの最終誘導用のイルミネーターが4基搭載されています。

同艦の兵装は、対空兵装としてスタンダード対空ミサイル用にMk.26連装ランチャーを艦首、艦尾に配置しています。長い船体を生かしてランチャー下には大きな弾庫が設定されています対艦・対地上兵装としては、Mk.45 5インチ単装両用砲、ハープーン対艦ミサイル、トマホーク巡航ミサイルを搭載しています。対潜兵装としては、その主軸は搭載する長距離ソナーと対潜哨戒ヘリにおかれアスロックは廃止されています。他に短魚雷三連装発射管は通常は館内に収納されていました。個艦防御用として2基のCIWSを搭載しています。f:id:fw688i:20230806151005p:image

(写真は主要兵装のアップ:(上段写真)58口径5インチ単装砲(Mk.45)が艦種部に設置され、Mk.26連装ミサイルランチャーがその後に続きます。さらに対艦用の主要兵装として、ハープーン4連装発射筒が4基搭載され、艦橋前には個艦防御用にCIWSが設置されました(オリジナルのモデルにもコンセプト図にもなかったのですが、追加してみました)。:(写真下段)上構造物の後部、ヘリハンガー上にもCIWSは装備されています。対潜哨戒ヘリ2機を運用できるハンガーと発着甲板を経て、後部のMk.26連装ミサイルランチャー、艦尾にはトマホーク用装甲ボックスランチャー2基が搭載されています)

 

Mk.45 5インチ両用砲

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米海軍が広く導入したMk.42 5インチ単装両用砲は毎分40発という高い射撃速度を誇りミサイル装備に主軸が移るまでは対空兵装のカナメとも言うべきものでした。しかし一方で早い射撃速度を実現するために揚弾機構を二重にするなど重く(61トン)、かつ操作に人数を要するものでした(12−16名)。

対空戦闘の主軸がミサイルに移ると、射撃速度への要請の比重は低くなり、揚弾機構を減らすなど軽量化、砲塔の無人化。自動化が進められました。こうして生まれたのがMk.45 5インチ砲でした。

重量は24トンまで軽減され、無人化によりステルス性を意識した砲塔デザインが可能となりました。操作員も6名まで軽減されています。一方で発射速度は毎分20発程度まで下がりましたが、主砲の標的が対空目標から地上目標、水上目標に移っているため、大きな問題にはなりませんでした。

 

模型的な視点から

模型的には、かなり大幅に手を入れています。まあ、Amature Wargame Figuresのモデルは概ねそのように扱っていますので、特にこのモデルの何か課題があると言うわけではありません(前出の3Dモデル関連の投稿を見ていただくと、その辺りはよくわかっていただけるかも)。

モデルからオリジナルの兵装とマストを切除し、全て筆者のストックパーツに置き換えてあります。今回使用したパーツはほとんどがHobbyBoss製の「スプルーアンス級駆逐艦、「タイコンデロガ級イージス艦のもので、特に一番気になっていたマストは「スプルーアンス級」のトラス構造のマストを流用しています。ランチャー下には大きな弾庫を抱えている、と前述していますが、Mk.26連装ランチャーをもう1基艦首部に追加しようかな、などと考えはしたのですが、モデルとしては少しうるさくなるかなと、即応性への対応はVLSへの換装を待った、と言うことで、原型と同じく2基のランチャー搭載としました。(唯一、艦尾部のトマホーク用の装甲ボックスランチャーのみ、適当なパーツがないので、プラロッドを切ってそれらしく作ってあります。

 

タイコンデロガ級」初期タイプとの比較

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(「ロングビーチ」は大きなセンタを生かし、大きなミサイル弾庫を確保することができました)

 

ロングビーチ」;原子力イージス艦改装 第二形態:VLSへの換装(1998年ごろ?)

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原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」のイージスシステム館への改装の第二形態の概観:VLSへの換装で、艦容は水分すっきりしてしまいました)

第二形態は、Mk.26連装ランチャーからVLSへと換装された形態を表しています。第一形態で記述したイージスシステムの複数目標への即応性への対応力強化のために、2基のMk.26はVLSへ換装された、と言う想定のモデルです。Mk.41 VLS(48セル)を5基搭載しています。マストは頑丈なトラスタイプのものからステルス性を意識したレーダー反射の低い塔構造のものに改められました。VLSは対空・対艦・対地上全ての搭載ミサイルに対応しているため、非常にすっきりした外観になっています。f:id:fw688i:20230806151615p:image

(写真は主要兵装のアップ:Mk.41 VLS (48セル)を艦首部に3基、艦尾部に2基、装備しています。固有の対潜哨戒ヘリを2機搭載しています)

タイコンデロガ級VLS搭載タイプとの比較

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(「ロングビーチ」は長い船体を生かし、48セルのVLSを5セット装備し、高い即応性を発揮できたはず)

ロングビーチ」三形態比較

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(「ロングビーチ」三形態の変遷:上から実艦、改装案第一形態、改装案第二形態:やはり巨大な上部構造が・・・)

と言うことで、今回はここまで。

 

次回(次週)は一回お休みです。

その後は新着モデルの到着具合と相談しながら、ロシア海軍フリゲート艦の系譜、あるいは米海軍の第二次世界大戦期の駆逐艦の系譜のお話でも。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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