相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

ロイヤル・ネイヴィーの駆逐艦(その8):大戦後の駆逐艦からミサイル駆逐艦への系譜

さて、今回は英海軍の駆逐艦開発小史の8回目。

このミニシリーズ、未入手モデルなど気にすることなく、かなり強引に話を進めてきましたが、ようやく今回でひと段落です。

脱稿時点では未入手だったモデルが到着したりしていますので、それはまた順次アップデートしてゆきますが、とりあえずは今回で一旦終了です。しばらくはアップデート版が時々登場するとは思いますが。

最後は、第二次世界大戦中に設計されながらも間に合わなかった艦級と、少しの開発休止期を経て、ミサイル化の趨勢に乗って登場したミサイル駆逐艦の艦級をご紹介します。

今回はそんなお話を。

 

両用砲搭載の大型駆逐艦開発

本稿前回では、第二次世界大戦の勃発に伴い相次ぐ喪失艦の補充や、想定以上に拡大した戦域に対応するために14次にわたり組まれた戦時急造計画で生み出された艦級のご紹介をしてきました。

これらの艦級により数的には帳尻をなんとか合わせることができつつも、一方で、駆逐艦の艦隊護衛任務における対空戦闘力不足は重大な課題で、これに対する解の一つである両用砲の開発が遅れていることも事実でした。

両用砲の開発には対空戦闘の性格から給弾・装填機構を持ちかつ機動性の高い駆動系を組み込んだ砲塔の開発が必須で、これらは必然的に砲塔の重量が格段に増加するため、大型駆逐艦の設計が必要でした。

そうした背景から生み出された艦級を紹介してゆきたいと考えています。

課題の両用砲については前回ご紹介した戦時急造艦の「Z級」で端緒につき、続く「C級」シリーズで射撃管制システムとこれに連動した自動化にも充実を見せてきていましたが、1700トン級の船体では、単装砲の搭載が限界で、連装砲塔を搭載した本格的な艦隊防空駆逐艦としては2300トン級の「バトル級」の登場を待たねばなりませんでした。

 

バトル級駆逐艦(就役期間:1944-1972年:同型艦24隻)

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 (「バトル級駆逐艦の概観。93mm in 1:1250 by Hansa:煙突後部に単装砲が装備されているので、後述のように後期型のモデルです

同級は1942年度計画及び43年度計画で建造された、英海軍待望の連装両用砲を搭載した艦隊防空駆逐艦の艦級です。戦時急造艦との並行設計等の影響もあり、第二次世界大戦終結までに就役した艦は1隻のみで、同級の大戦中の艦隊編入は間に合いませんでした。

2300トンの大型の船体を持ち、50000馬力の機関を搭載して、35.75ノットの速力を発揮する設計でした。

42年度計画型(前期型)が16隻が建造され、43年度計画型(後期型)は24隻の建造が計画されていましたが、大戦の終結で8隻のみ建造されました。

兵装面では、なんと言っても仰角80度まで射撃可能な4.5インチ(11.4cm)連装両用砲塔2基を主砲として搭載しているところが最大の特徴で、加えて40mm連装機関砲2基、20mm連装機関砲2基、同単装機関砲2基など、充実した対空兵装を備えていました。更に英海軍が伝統的に重視してきた雷装も4連装魚雷発射管2基を搭載し、更に爆雷投射機4基を搭載するなど対潜装備も備えた万能艦でした。

43年度計画艦(後期型)では前期型でやや不足とされた対艦戦闘力を補うために、煙突後部の体躯機関砲座を4.5インチ単装砲(仰角55度)に変更されています。雷装も4連装発射管2基から5連装発射管2基搭載に改められ、対潜装備も対潜迫撃砲である「スキッド」を搭載するなどの充実が図られました(「スキッド」は後に前期型も搭載しています)。これらの改正に伴いやや排水量が増加しています。

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(「バトル級」の主要兵装の配置の拡大:艦首部に45口径4.5インチ連装砲を2基(写真上段)、煙突後方に単装砲塔、こちらは仰角55度までの射撃が可能な4.5インチ砲です(写真中段)、後部建屋の上にあるの対空砲(おそらく連装20mm砲だと思います。このモデルでははっきりしませんね。やはりArgonautのモデルが欲しくなるなあ。さらに艦尾には対潜迫撃砲「スキッド」が搭載されています(写真下段))

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(上掲のArgonautのモデルが欲しいなあ、という呟きを受けて、Ebayで見つけたArgonaut製の「バトル級」のモデル(おそらく前期型)。対空兵装の再現がこんなふうになるんだなあ:写真はEbayから拝借しています)

大戦後は、レーダー装備の強化や戦闘指揮所の機能向上による航空管制能力を備えたレーダーケット艦への改装や、防空火器のミサイル化などにより、1960年代中期まで多くの艦が使用されました。2隻がパキスタン海軍、1隻がイラン海軍に譲渡され、オーストラリア海軍には準同型艦2隻が就役しています。

 

ウェポン級駆逐艦(就役期間:1947-1971年:同型艦4隻:計画では20隻)

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(写真は「ウエポン級」の概観:by Mountford:Ebayで入札中です<<<落札に失敗しました!写真は入札中のモデルの写真をEbayから拝借しています:一本煙突に見えますが、前部煙突はマストに組み込まれています)

同級は一種の廉価版防空艦隊駆逐艦で、本格的な「バトル級駆逐艦の補完戦力として、1943年度計画で20隻の建造が計画されました。戦時急造艦(1700トン級)と同程度という想定でしたが、大戦の戦訓から帰還のシフト配置の有効性などを反映する設計としたため、やや大型化し2000トンの船体をmぉつ駆逐艦となりました。

前述のように計画では20隻の建造が予定されましたが、大戦終結で実際には4隻の建造にとどまりました。

兵装は射撃速度も合わせて勘案し4インチに口径を下げた連装砲塔(仰角80度)を3基搭載して主兵装とし、近接防空火器として40mm連装機関砲2基、20mm連装機関砲2基を搭載しています。雷装重視の伝統は同級でも見られ、5連装魚雷発射官2基が搭載され、対潜兵装としては投射機と投射軌条がそれぞれ2基装備されました(後に「スキッド」2基に換装)。

50年代終盤に4隻全て航空管制艦に改装され、1970年前後まで使用されました。

(下の写真は就役時(上段)と航空管制艦改装時(下段)の比較:雷装を廃止してレーダーを強化し「スキッド」等の対潜兵装を更新しています:モデルはいずれもMB-Modelで、写真は例によってsammelhafen.deより拝借しています)

 

デアリング級駆逐艦(就役期間:1951-1971年:同型艦8隻:計画では16隻)

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(「デアリング級」の概観:94mm in 1:1250 by Wiking:モデルは後部発射管を撤去した1958年以降の姿を再現していると思われます:同級のモデルはどうやらWikingかTriangから発売されているようですが、Triang製のモデルは原則1:1200スケールで、やや大柄、という筆者は評価をしているため、コレクションの対象としてはあまり考えていません)

同級は1944年度計画で建造された「バトル級」の強化型と言える艦級です。計画では16隻の建造が予定され「バトル級」の設計当初から不安視されていた水上砲戦能力を考慮して、4.5インチ連装両用砲塔3基搭載を基軸とした設計とされました。他の兵装は「バトル級」に準じています。

英海軍の艦隊駆逐艦としては最大の2600トン級の船体に54000馬力の機関を搭載し、34.75ノットの速力を発揮する設計でした。

完成が大戦終結後になることは明らかだったために就役延期が決定され、就役時からスキッドなどの装備が組み込まれました。大戦の終結により計画は縮小され、結局1950年代になって英海軍に8隻、オーストラリア海軍に3隻が就役しました。f:id:fw688i:20231202180234p:image

(「デアリング級」の主要兵装の配置の拡大:艦首部に45口径4.5インチ連装砲を2基(写真上段)、5連装魚雷発射管、4.5インチ連装両用砲塔、さらに艦尾には対潜迫撃砲「スキッド」が装備されています(写真中段)、さらに写真下段左ではトラス式のマストに組み込まれた前部煙突の排煙口(黒色)が見ていただけるかと。写真下段右では艦尾の対潜迫撃砲「スキッド」を再掲)

英海軍では1970年代まで就役し、オーストラリア海軍では1986年まで使用されました。

砲兵装と魚雷を主要兵器とし、一方で急速な発展を遂げる航空機への対応を模索し続けてきたいわゆる艦隊駆逐艦としては最後の艦級となりました。

 

艦隊警備の変容と駆逐艦のミサイル艦化

第二次世界大戦後、英国が両対戦を通じて対面した通商路への潜水艦の脅威の記憶は生々しく、英海軍においては通商露保護や船団護衛が任務としては優先され、従って対潜水艦戦により特化した小型の護衛艦艇(小型駆逐艦護衛駆逐艦等)へと、戦備の重点が移ってゆく事になります。

一方、大戦後、1966年国防白書で固定翼機用空母の廃止が決定され、英海軍は米海軍型の空母機動部隊を保有しなくなります。大戦中、輸送船団やその護衛等にあたる空母の護衛を主要任務とする艦隊駆逐艦の整備優先度は低くなり、かつ、大量の戦時急造駆逐艦やそれに並行して建造された上述の最後の艦隊駆逐艦の艦級群を抱えていた英海軍では、結局、1950年台後半まで、新しい駆逐艦の建造計画は一旦途絶えることになったわけです。

英海軍は、この1966年度防衛白書によって、これまで伝統的に保持してきた「大洋に安定をもたらす海軍」つまり大戦型の戦備としての海軍から、英連邦などの旧植民地をめぐる局地紛争への介入や警備に舵を切る大きな方向転換を迎えたとも言えたわけですが、これらの任務においても紛争局地での航空優勢の確保や、回転翼機等を中心とした航空機動力の発揮は必須で、英海軍は第二次世界大戦型空母の改装による回転翼機運用を中心とした軽空母機動部隊を保持することとなります。

すなわち局地的な紛争を想定した場合においても、軽空母を中心として紛争地に派遣される海上戦力の艦隊防空を担う艦級の開発は必須であり、かつ航空機のジェット化等の著しい発展を見ると搭載する主要防空兵装が従来の対空砲ではなく長射程を持つ対空ミサイルでなくては有効な艦隊防空が不可能であることは自明であり、防空を担う艦級群のミサイル化は喫緊の課題でした。さらに対空ミサイルの運用には目標発見、追尾、誘導管制等の装備が不可欠であることから、運用を担う艦にはこうした装備を搭載する一定規模の大きさが求められることとなります。こうして最初のミサイル駆逐艦カウンティ級」が誕生する事になりました。

ここからはこのような経緯で再開された駆逐艦の発展を見てゆきたいと思います。

 

カウンティ級ミサイル駆逐艦(就役期間:1962-1987年:同型艦8隻)

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 (「カウンティ級ミサイル駆逐艦の概観。128mm in 1:1250 by Allbatros:今回ご紹介ているモデルは後期型(バッチ2)ですね。ブリッジ前に「エグゾセ」対艦ミサイルの発射筒を搭載しています

同級は主要兵装を「シーズラグ」艦対空ミサイルとして搭載した英海軍初のミサイル駆逐艦です。5000トン級の余裕のある大きな船体に、ミサイルの情報処理システム、ミサイル弾庫、哨戒ヘリ運用庫、さらには蒸気タービンとガズタービンを搭載し、32ノットを発揮することができました。

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対空兵装の他には、初期型(バッチ1)には主砲として45口径4.5インチ連装砲2基が搭載されていました。

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(「カウンティ級」の主要兵装の配置の拡大:前述のようにこのモデルは後期型ですので、艦首に45口径4.5インチ連装砲を1基、「エグゾセ」対艦ミサイル発射筒(写真上段)、対潜用の短魚雷発射管(同級に搭載されたという記録が見当たらないんですが)、シーキャット短対空ミサイル(写真中断)、哨戒ヘリの格納庫と発着甲板と同級の主要兵装であるシースラグ対空ミサイル発射機(写真下段))

加えて対艦兵装として「シースラグ」発射機から射出できる対艦ミサイル「ブルースラグ」を後日搭載する予定でしたが、「ブルースラグ」が開発中止となったため、後期型(バッチ2)では連装砲は1基として、2番砲の位置に対艦ミサイル「エグゾセ」の単装発射筒4基が搭載されました。

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対潜戦闘は当初対潜迫撃砲や短魚雷の搭載などが検討されましたが、採取的には搭載ヘリコプターに託されることとなりました。

個艦防御用の兵装としては「シーキャット」短対空ミサイルと機関砲が搭載されていました。

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模型的な視点:Albatros社製品の質の高さ

同級のモデルはAlbatros製のモデルの質の高さを体感できるモデルでした。下の写真は同級で再現されている搭載兵器の拡大です。前述のように同級では短魚雷発射管の搭載記録が見られないなど、疑問点はなくもないですがこのスケールでの再現性の高さには目をみあるものがありますね。その分、希少でかつ高価なのでなかなか手が出ません。

(上段左:45口径4.5インチ連装砲、上段右:エグゾセ」対艦ミサイル発射筒、中断左:対潜用の短魚雷発射管(搭載されていたのかどうか?)、中断右:シーキャット短対空ミサイル、下段左:哨戒ヘリの格納庫と発着甲板、下段右:シースラグ対空ミサイル発射機の順)

 

ブリストルミサイル駆逐艦(就役期間:1973-1987年(以降は練習艦):同型艦なし)

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(モデル未保有です)

同艦は英海軍の第二世代のミサイル駆逐艦として4隻が建造される予定でしたが、護衛すべき空母の新造計画が破棄されたため(1966年度国防白書)、1隻のみしか建造されませんでした。

主要兵装は前級の「シースラグ」対空ミサイルに換えてより射程が長くコンパクトな「シーダート」が搭載されました。

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他には主砲として新型の55口径4.5インチ単装砲塔、さらに対潜兵装として「アイカラ」対潜ミサイルと対戦迫撃砲が搭載されましたが、一方で対潜ヘリの搭載は見送られました。

個艦防御兵装としては短対空ミサイルは搭載せず、機関砲のみでした。

 

模型的な視点でのお話

筆者は未保有ですが下の写真のようにAlbatros社(上段)とTriron社からモデルは市販されています。筆者の経験から見ると、いずれのモデルも希少で、オークション等でも高額で取引されています。おそらく細部の仕上がり等はAlbatros社製の方が一枚上手なのだろうと思いますが、筆者としては管弦の高さ等がTriton社製の方がしっくりくるなあ、という感じです。

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いずれのモデルも常時Ebay等で探してはいるのですが、なかなかお目にかかりません。

 

42級ミサイル駆逐艦(就役期間:1975-2013年:同型艦14隻)

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 (「42級」ミサイル駆逐艦の概観。95mm in 1:1250 by Triton:今回ご紹介ているモデルは「サザンプトン(バッチ2)」です。かつ後述しますが艦中央部にCIWSを搭載しているので、1987年以降を再現したのモデルかと)

前述の1966年度国防白書での空母新造計画破棄により、英海軍は将来的に正規空母を持たない海軍となることが決定されたため、駆逐艦の建造計画も見直され「カウンティ級」「82級」のような大型艦から小型のミサイル駆逐艦へと移行します。

これが同級「42級」ミサイル駆逐艦です。

同級はそれまで蒸気タービンとガスタービンを併載していた機関をガスタービンのみに改め、省力化の結果、「ブリストル」とほぼ同等の兵装を60%の大きさの船体に収めることに成功しています。

主要兵装は前級と同じ「シーダート」対空ミサイルで、他に前級と同じ55口径4.5インチ単装砲を装備していました。「アイカラ」対潜ミサイルは廃止し、代わりに短魚雷発射管と哨戒ヘリを搭載し、対戦兵装としています。

個艦防御は2基の20mm機銃に委ねられましたが、のちにフォークランド戦争では対艦ミサイルを防ぎきれず2隻の戦没艦を出し、あらためて個艦防御の重要性が見直され、CIWSが追加装備されています。

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(「42級」の主要兵装の配置の拡大:前述のようにこのモデルはバッチ2のしかも1987年以降、CIWSを搭載後のものです。艦首に55口径4.5インチ単装砲を1基、同級の主要兵装である「シーダート」対空ミサイル発射機(写真上段)、フォークランド戦争での2隻の喪失の戦訓から個艦防御の重要性が検討され、1987年以降同級に搭載されたCIWSと対潜用の短魚雷発射管(写真中断)、哨戒ヘリの格納庫と発着甲板(写真下段);ディッピングソナー搭載の必要性から、搭載されたのは大型の哨戒ヘリだったのですが、格納庫はさておき発着甲板はやや窮屈な印象です)

 

42級バッチ3の登場

「42級」は艦型をコンパクトにまとめる事には成功しましたが、この影響で主要兵器である「シーダート」の弾庫が縮小され、搭載弾数が前級の約半分の22発となっていました。併せてコンパクト化の影響が凌波性の不足となって現れたため、1982年以降就役を開始した11番艦以降の4隻は艦首部を延長した設計と改められました(バッチ3)。この延長により「シーダート」の搭載数は「ブリストル」と同じ40発となりました。

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 (「42級」ミサイル駆逐艦バッチ3(「マンチェスター」)の概観。105mm in 1:1250 by Triton:まだCIWSを搭載していませんね。したがって1987年以前、就役直後を再現したものかと思います。下の写真は、上掲の「サザンプトン」(バッチ2)と「マンチェスター」(バッチ3)の比較:艦首が延長され、煙突位置などややレイア右羽とも変更されているように見えます。模型ですのでどこまで信じていいのか?もの改良で、対空ミサイルの搭載数は22発から40発に増加し、かつ凌波性も改善されたようです

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模型的な話:Albatros製のモデルはどうだろうか?

今回、筆者が保有しているのはTriton製のモデルですが、実はつい最近Albatros製モデルに入札する機会がありまいした。しかもバッチ2((エクセター」)とバッチ3(「エディンバラ」)に同時に入札できるという滅多にない機会でした。いずれも落札には至りませんでしたが(高値がついてしまっていました。このクオリティですからね、仕方がないかとは思うのですが、特に最近の円安は筆者にはとても痛い)、いい機会なので、Ebeyで掲載されていた写真を再掲させていただきます。

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(上の写真はEbayで筆者が落札できなかったAlbatros製の「42級」バッチ2「エクセター」(上段)とバッチ3「エディンバラ」:下の写真ではその主要兵装を拡大しています。上段左:55口径4.5インチ単装砲、上段右:「シーダート」対空ミサイルの連装ランチャー:Tritonのモデルとはこの辺りの作り込みが違いますね。下段左:後日装備されたCIWS、下段右:短魚雷発射管)

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U細部はやはりAlbatrosクオリティとでもいうべき質の高さを感じます。チャンスがあったらまた狙ってみよう。

ちょっとEbay裏話

実はこのEbayの出品者は、筆者がいつもお世話になっている1:1250スケールモデルのデータベース、sammelhafen.deの主催者の息子さんなのです。だから引用させていただいている写真はほとんど同じものなのです。この出品者も私のお気に入りのお一人で、筆者のコレクションの中にはこの方からの落札品がたくさん含まれています。

つまり筆者のコレクター人生を楽しいものにしてくださっているお一人、ということです。感謝!

 

45級ミサイル駆逐艦(就役期間:2009-現在:同型艦6隻)

ja.wikipedia.org Is

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 (「45級」ミサイル駆逐艦の概観。122mm in 1:1250 by Bill's Bits n Pieces製の3D printing model)

同級は「42級」ミサイル駆逐艦以降、長らく新たな駆逐艦を建造しなかった英海軍の最新鋭駆逐艦です。

英海軍はNATO加盟国との新型フリゲート艦のカイハウ計画を進めていました。「42級」の後継艦としても期待が高かったのですが、各国の運用要件の差異からこの計画は断念され、ついで英仏両海軍の共同開発が模索されます。のちにイタリア海軍も加わりますが、各国の意見調整が難航し、「42級」の後継艦開発に間に合わないと危惧した英海軍は、結局これからも脱退し独自に艦級開発をする事になります。

システムの複雑化と主力センサーであるサンプソン多機能レーターの搭載位置に対する要請から、「42級」から一転して同級は7000トン級の船体を持つ大型艦となっています。

機関は電動推進で、これを支えるためにガズタービン発電機とディーゼル発電機各2基が搭載されています。ここで生み出された電力で電動機2機を稼働させて29ノットの速力を発揮するとされています(実際には31ノット強を記録しているとか)。

12の目標追尾が可能とされるサンプソン多機能レーダーの特徴的なアンテナとミサイルを全てVLS搭載としたことから、これまでのミサイル駆逐艦とは異なる外観を示しています。

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(上の写真はサンプソン多機能レーダーの特徴的な外観)

主要兵装としては「アスター」対空ミサイルを48セルのVLSに収容して艦首甲板に搭載しています。その他にステルスタイプの砲盾に収容された55口径4.5インチ単装砲、「ハープーン」対艦ミサイルの4連装発射筒を2基装備しています。個艦防御用の兵装として、CIWS2基を装備し加えて「シーセプター」短対空ミサイルを艦首部のVLSに併載していますが、更に運用性を向上させるために24セルの「シーセプター」専用VLSを追加搭載することが決定されているようです(2026年?)。

対潜戦闘用に哨戒ヘリ1機を搭載しています。

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(「45級」の主要兵装の配置の拡大:艦首にステルスタイプの55口径4.5インチ単装砲を1基、その背後に48セルの「アスター」対空ミサイルを収容するVLS、その後ろに「ハープーン」対艦ミサイルの発射筒(上段写真)。中段写真では機銃やCIWSが見て取れます。下段写真はヘリコプター格納庫と発着甲板)

 

以前掲載していたTriangモデルとの比較

上記のどこかで触れていますが、Triang製のモデルは1:1200スケールですので、ややコレクションに入れるには大柄です。本稿前回投稿ではTriangモデルを限定的に掲載していましたが、今回は、Bill's Bits n Pieces製の3D printing modelが管制したので、そちらに差し替えています。ちょっと下記で比較を。

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(寸法はこの写真では分かりにくいですが、実装でやはり4mmほどTriangモデルが長い(写真上段と中段の比較)。計算と一致しますのでTriangモデルは1:1200スケールとしては正確だということがわかると思います。さらに写真下段の左右で同級の特徴の一つであるサンプソン多機能レーダーのアンテナの概観比較を。前回投稿でTriangモデルには継ぎ目の仕上げなどに問題ありとしたのですが、再現性が両者でかなり異なることがわかると思います)

 

6隻で建造終了、既に次期駆逐艦の構想に

同級は就役後、発電機の容量不足から停電を発生しており、ディーゼル発電機2基をより強力な3基に置き換える改修が順次行われるということです。さらに水中騒音の問題も現れてきており、対潜戦闘をも担う駆逐艦としては致命的な気もします。

当初の12隻建造の計画も財政的な事情もあって再三縮小され、結局現行の6隻以上は建造されないということで落ち着きそうです。

 

既に次期ミサイル駆逐艦についても構想が取り沙汰され始めており、これからの動向に注目しています。

en.wikipedia.org

(次期駆逐艦:Type 83 の構想図:同様の情報はいくつか開示されています。上図は次のサイトから拝借しています:Royal Navy Type 83 destroyer concept. Image:3 by Scifi-Shipyards on DeviantArt

 

ということで、第二次世界大戦後に英海軍が建造した駆逐艦の艦級を見てきたわけですが、戦争の終結後から今日に至る78年間にわずか4艦級というのは、あらためて意外でした。もちろん駆逐艦以外にフリゲート艦等の開発も見ていかねばなりませんが(こちらは随分と複雑な系譜を追う作業になりそうです。嬉しい悲鳴、というやつですね)、やはり今回少し触れた1966年度国防方針での正規空母建造計画の中止が、その分岐点だったのではないかと思います。

この方針で、英海軍は正規空母を中心とした機動部隊という戦闘単位(つまり艦隊)の運用を断念し、それまでの「大洋を安定させる海軍」から、「局地紛争への介入(旧宗主国としての責任?あるいはいまだに点在して残る海外領に関連した利権保持?)を想定した海軍」へと、海軍のあり方自体も大きく変化したと考えます。

しかし、英海軍には、2010年代に入り再び6万トンを超える「クイーン・エリザベス級」空母(STOVL式ではありますが前述のように大型艦です)を就役させるなど、海軍のあり方を再び変化させる動きが現れてきているように思われます。これは当然、空母機動部隊構想とその艦隊防空の必要性が関連してきているわけで、その任を負う艦艇の開発が「45級」の就役として実現していると思われます(この辺りの動きは本稿で米海軍のフリゲート艦開発についてご紹介した際に、一旦は「ペリー級」の建造を最後にフリゲート艦から局地紛争への介入や周辺警備への対応に主軸を置いた沿海域戦闘艦の整備へと軸足を移した米海軍が、再び敵対する水上戦力(つまり艦隊)を想定した海上戦闘等に対応するフリゲート艦建造に回帰し始めた、という流れと同じような国際情勢変化に対応するものなのかもしれません)。

ということで今回はこの辺りで。

次回はアップデートがいくつかご紹介できるかと。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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