今回は前回までの流れで英海軍の装甲艦の次のステップへ。
英海軍の装甲艦開発は、どちらかというと他国海軍の装甲艦の登場を追う形で進められてきた感があります。その先駆者はフランス海軍であり、あるいはイタリア海軍、そのアドリア海でのライバルであるオーストリア海軍でした。
少し装甲艦の発達経緯を簡単に振り返っておくと、蒸気機関の搭載により帆装軍艦では搭載できなかった重い装甲を装備する事が可能になります。一方で従来の艦砲(作業性を考えると前装式滑空砲が主流でした)では装甲を貫通できなくなり、艦砲の大型化が次の課題となって顕在化します。艦砲の強大化は重量物である艦砲の搭載数に制限を生じ、この有効活用に向けた搭載方法の模索も始まるわけです。
この過程が、装甲艦自体の設計としては、舷側砲門式装甲艦、中央砲郭式装甲艦、砲塔式装甲艦という発達過程を生み出し、搭載艦砲については、前装式滑空砲、前装式ライフル砲、後装式ライフル砲という過程を生み出すこととなりました。
一方で運用が想定される海域を考えると、フランス海軍の装甲艦、イタリア海軍の装甲艦を仮想敵として想定している間は、比較的穏やかな地中海、あるいは英仏海峡等の自国沿岸部だったわけで、ある程度の航洋性があれば十分だったのですが、特に英海軍の場合には世界各地に広がる植民地とそこに至る航路での運用にも耐えられる設計を目指す必要がありました。
こうして近代戦艦(のちの前弩級戦艦)の基本形が形作られ、列強海軍もこれに倣う最初の大嫌韓競争の時代が訪れてゆきます。
今回はその辺りの時期の英海軍のお話を。
英海軍の近代戦艦
1890年代の初めに登場した「ロイヤル・サブリン級」によって近代戦艦の基本形が定められ、この時代はその後約14年間ほど続きます。
その間に英海軍は以下の10艦級(数え方によっては11艦級)の近代戦艦を設計し建造しました。
「ロイヤル・サブリン級」戦艦(1892年から就役:同型艦7隻)
「バーフラー級」二等戦艦(1894年から就役:同型艦2隻)
「マジェスティック級」戦艦(1895年から就役:同型艦9隻)
「カノーパス級」戦艦(1899年から就役:同型艦6隻)
「フォーミダブル級:ロンドン級」戦艦(1901年から就役:同型艦8隻)
「ダンカン級」戦艦(1901年から就役:同型艦6隻)
「スウィフトシュア級」戦艦(1904年から就役:同型艦2隻)
「キング・エドワード7世級」戦艦(1905年から就役:同型艦8隻)
「ロード・ネルソン級」戦艦(1908年から就役:同型艦2隻)
近代戦艦の始祖
「ロイヤル・サブリン級」戦艦(1892年から就役:同型艦7隻)
(「ロイヤル・サブリン級」戦艦の概観:94mm in 1:1250 by WTJ)
同級はそれまで英仏海峡での警備活動や、地中海での行動を想定した設計であった装甲砲塔艦の設計を発展させ、より広く大西洋・北海での運用を想定し、そうした大洋での運用に耐える航洋性を加味した設計でした。
想定海域での荒天時の航洋性を考慮して、これまでの砲塔式装甲艦の基本レイアウトを継承しつつ凌波性を考慮した高い乾舷を得るための代償として、主砲塔は重量の嵩む密閉型装甲砲塔を諦め露砲塔としました。
結果として航洋性は良好で、「強力な火力(30口径34.3センチ連装露砲塔2基)を有し、荒天時の大洋での良好な航洋性を持ち、高速性を備えた、近代戦艦(前弩級戦艦)」の基本設計が同級で確立されたとされています。
以降、各列強も同級を原型として、近代戦艦の建艦競争に鎬を削ることになります。
14100トン級の船体を持ち、11000馬力の期間を搭載、16.5ノットの速力を発揮することができました。
露砲塔形式で搭載された主砲(30口径34.3センチ後装砲)
前述のように同級の主砲は航洋性向上に向けた高い乾舷確保の代償、重心上昇への対策として重量のかさむ密閉砲塔ではなく露砲塔形式で搭載されました。
(下の写真は、同級の露砲塔部分の拡大
主砲は装甲防御された回転砲台基部の砲架に固定され、13.5度の仰角と3度の俯角を与える事が可能でした。露砲塔は左右各135度の旋回が可能で、旋回、揚弾・装填は蒸気ポンプによる水圧によって行われ、人力での補助が必要でした。
同級では主砲弾の揚弾機構が回転砲台外に固定されていたため(写真では露砲塔の後ろの艦橋・後橋部に円形のくぼみがあります。この辺り)、装填時には砲尾をこの揚弾機構の位置に合わせなければならず、都度、正艦首尾方向に砲身位置を戻す必要がありました。
その他の兵装
搭載された主砲は30口径34.3センチ後装砲で、最大射程は10930m、発射速度は2分に1発でした。揚弾機構が旋回砲台外にあったため、装填時には砲身位置を正艦首尾方向に戻す必要がありました。
その他の兵装としては、副砲には40口径15.2センチ単装速射砲(毎分5-7発)が片舷5基ずつ計10基装備され、さらに水雷艇防御用として57mm単装速射砲16基とフランス・ホチキス社製の47mm単装機関砲(毎分20発)がライセンス生産され、12基搭載されました。
さらに対艦用として魚雷発射管7基も装備していました。
露砲塔形式の課題
前述のように重量軽減策として同級では主砲を露砲塔形式で搭載したのですが、当時は射撃法が未発達な状況で、砲側照準での射撃が行われていました。したがって有効な砲撃距離はせいぜい2000mで、砲弾の弾道も低い直線的なものが想定されていたため、砲台基板の防御装甲のみでも十分、という判断だったのですが、一方で水雷艇の発達から、この対策として小口径砲・中口径砲の速射砲化が促進され、大量に打ち出される小口径弾・中口径弾の弾片による砲身・砲員への損害が無視できなくなってきました。さらに航海時には大洋での高い波浪による露砲塔からの浸水も発生し、次級以降では、密閉式装甲砲塔式での主砲搭載が検討されることになります。
二等戦艦という概念
「バーフラー級」二等戦艦(1894年から就役:同型艦2隻)
(「バーフラー級」二等戦艦の概観:89mm in 1:1250 by WTJ)
同級はアジアでの権益確保のための基幹戦力として建造された軽戦艦で、二等戦艦という艦種に分類されました。
中国方面での河川を遡行することを想定した浅吃水、遠方での活動に適した長い航続力、さらに予算面に配慮した10000トン以下の排水量等の要求事項に対応し、「ロイヤル・サブリン級」の縮小版として設計されました。
主砲には25.4センチ砲が採用され、これを連装砲2基として装甲シールド付きで搭載されました。同級のシールドは、天蓋部分は装甲されておらず、合わせて背面は解放されていました。揚弾機構は「ロイヤル・サブリン級」よりも新しく砲台と同軸に組み込まれ、砲塔がどの方向に向いていてもその位置での装弾が可能でした。
(「バーフラー級」二等戦艦の各部の拡大)
副砲としては12センチ単装速射砲10基を搭載し、57mm単装速射砲8基、47mm単装機関砲12基、魚雷発射管5基が搭載されました。
10500トン級の船体に13000馬力の期間を搭載し、18.5ノットの高速を発揮できました。
(二等戦艦「レナウン」の概観:98mm in 1:1250 by WTJ)
同艦は「バーフラー級」二等戦艦と同じ目的で建造された同級の改良型で、12000トン級の船体を持ち18ノットの速力を発揮できる設計でした。中国方面の河川での使用も考慮されたため浅吃水を確保するために船体の長さ・幅が大きくなりました。
(二等戦艦「レナウン」の各部の拡大:主砲は「バーフラー級」と同じものを搭載し、副砲は全て装甲ケースメート形式で片舷に6基搭載されました)
兵装は副砲が15.2センチ単装速射砲12基に強化され、全ての副砲が舷側の装甲ケースメートに装備されました。
高い機動性、速力が評価され、度々、王室のお召艦となりました。
「バーフラー級」と「レナウン」の比較
(手前が「バーフラー級」です。奥の「レナウン」が高速の発機に適した艦型であったことがわかるショットかも)
近代戦艦基本仕様の確立
「マジェスティック級」戦艦(1895年から就役:同型艦9隻)
(「マジェスティック級」戦艦の概観:98mm in 1:1250 by Navis)
同級は「ロイヤル・サブリン級」の改良型で、前級で完成後に課題とされた露砲塔は密閉装甲砲塔に改められました。
ハーヴェイ・ニッケル鋼の採用で装甲厚を前級の半分とできたので、その分でカバー範囲を拡大、さらに前述の主砲の密閉装甲砲塔形式での搭載などが可能となりました。
主砲には新設計の35口径30.5センチ砲を採用して貫徹力をほぼ倍に強化しています。
兵装を見ると、同砲を連装砲塔2基に装備した他、副砲は40口径15.2センチ単装速射砲を12基に増強、さらに水雷艇防御用として76mm単装速射砲16基、40mm単装機関砲12基を装備していました。魚雷発射管も5基搭載していました。
船体の大きさは前級とほぼ同し14500トン級で、17ノットの速力を発揮する設計でした。
当時英国は艦隊編成に二国標準主義(二カ国と同時に対峙できる戦力を整備する)を掲げており、9隻が建造されました。
(「マジェスティック級」戦艦の各部の拡大:同モデルは7番艦「マース」(前期型)のもので、主砲は装弾時に砲身位置を正艦首尾位置に戻す必要がありました)
主砲塔の改良
ネームシップ「マジェスティック」から7番艦の「マース」までは、揚弾機構が砲塔外に固定されており、装填時には「ロイヤル・サブリン級」同様、正艦種尾方向に砲身位置を戻す必要がありましたが、8番間以降の「シーザー」と「イラストリアス」では揚弾機構が砲塔内に同軸で内蔵されたため、旋回状態のまま次発装填が可能となり、主砲の射撃効率が格段に向上しました。日本海軍「敷島級」の4隻は、同級の8番艦、9番艦を原型として設計されました。
(「マジェスティック級」前期型(上段)と後期型(下段)の主砲塔形状の違い:砲塔基部の形状が異なり、後期型では砲塔と揚弾機構が同軸で回転できたため、砲塔基部が丸型となり、どの方向に主砲塔が向いていても向きを変えずに次発の装填が可能になりました:写真はWTJから拝借しています)
第一次世界大戦時にはすでに前弩級戦艦の時代は終わり旧式化していましたが、輸送艦、砕氷艦、警備艦等の補助艦的な役割で全艦が参加しています。
「カノーパス級」戦艦(1899年から就役:同型艦6隻)
(「カノ―パス級」戦艦の概観:99mm in 1:1250 by Navis)
同級は「ロイヤル・サブリン級」戦艦に対する「バーフラー級」二等戦艦と同様に、極東地域での運用を想定して設計された「マジェスティック級」戦艦の高速軽量版です。
「マジェスティック級」で採用されたハーヴェイ鋼からクルップ鋼への変更で、装甲厚をさらに減じる事ができたので、軽量化(13000トン級)が叶い、高速化(18ノット)を実現しています。
兵装は「マジェスティック級」にほぼ準じて火力は同等、装甲砲塔も揚弾機構を内蔵したものとされたため、砲塔位置をそのままに次発装填が可能でした。加えて軽量化にも関わらほぼ同等の防御力を有していました。
(「カノーパス級」戦艦の各部の拡大:同級では副砲はケースメート形式で搭載され(写真上中段)、煙突は前後に装備されました(写真下段))
外観的な特徴として、新ボイラーの採用で前級までは2本並列であった煙突が、前後設置に改められました。6隻の同型艦が建造され、主として地中海方面で運用され、2隻が戦没しています。
「フォーミダブル級:ロンドン級」戦艦(1901年から就役:同型艦8隻)
(「フォーミダブル級/ロンドン級」戦艦の概観:102mm in 1:1250 by Navis)
同級は前出の日本海軍が建造した「敷島級」戦艦が「マジェスティック級」戦艦を原型としながらも同級を大きく上回った性能を有しているところに刺激を受けて「マジェスティック級」の改良型として設計されました。
主砲にはそれまでの35口径砲に変えて強力な40口径砲が採用され、これを連装装甲砲塔2基に搭載しています。副砲もより長砲身の45口径15.2センチ単装砲に強化され、これを12基搭載していました。
防御方式は「カノーパス級」に準じクルップ鋼を採用して「マジェスティック級」を上回る設計でした。
機関出力が増大され、18ノットの速度を発揮できる設計でした。
4番艦「ロンドン」以降の設計の5隻では、防御装甲の配置が変更され、防御範囲の強化等が行われたため、後期型の5隻を「ロンドン級」と分類する場合もあります。
(「フォーミダブル級・ロンドン級」戦艦の各部の拡大:この二級は防御方式、装甲配置などでの変更点があり、外観的にはほとんど差異がありませんでした:ちなみにここで掲載したモデルはNavisの新シリーズで、細部の再現性が各段に向上しています)
「フォーミダブル級」3隻と「ロンドン級」5隻の合わせて8隻が建造され、第一次世界大戦では主として地中海方面(対トルコ戦線)で戦い、2隻が戦没し1隻が事故で失われました。
「ダンカン級」戦艦(1901年から就役:同型艦6隻)
(「ダンカン級」戦艦の概観:102mm in 1:1250 by Navis)
同級はロシア海軍の「オースラビア級」戦艦(艦隊装甲艦:どちらかというと戦艦からの発展系というよりは装甲巡洋艦の強化型と見るべきかも)の就役に刺激されて、英海軍が設計した軽防御高速戦艦の艦級です。
14000トン級の船体に「フォーミダブル級」と同等の兵装を搭載し、装甲厚をやや減じながら性能を向上させた機関の搭載によって19ノットの高速を発揮できる設計でした。
(「ダンカン級」高速戦艦の各部の拡大)
同型艦6隻が建造され、事故で失われた1隻を除き5隻が第一次世界大戦に参戦しました。うち1隻はUボートの雷撃で、もう1隻が触雷により失われました。
「スウィフトシュア級」戦艦(1904年から就役:同型艦2隻)
(「スウィフトシュア級」戦艦の概観:114mm in 1:1250 by Navis)
同級はチリ海軍がアルゼンチン海軍の装甲巡洋艦への対抗策として英国に発注していた2隻の高速戦艦です。
11800トン級の船体に、明らかに装甲巡洋艦に対する抑止力的な位置付けを想定したと思われる45口径25.4センチ砲を連装砲塔2基形態で搭載し、さらに長砲身の50口径19センチ単装速射砲14基を装備する設計でした。19ノットの高速を発揮する設計で、これも装甲巡洋艦への対抗を想定したものでした。
英海軍による同級の取得経緯
同級の英海軍への編入にはやや複雑な経緯があり、当時、同級の発注元であるチリとアルゼンチンの間の緊張関係を好まない英国の介入で協定が結ばれ、両海軍が英国とイタリアにそれぞれ発注していた軍艦の売却が決定されました。折からロシア帝国との関係悪化から海軍の強化に努めていた日本海軍から購入の打診があったものの不調に終わり(日本海軍はアルゼンチン海軍がイタリアに発注していた2隻の装甲巡洋艦を購入しました。この2隻が後の装甲巡洋艦「日進」「春日」となります)、この2隻がロシア帝国へ売却されることを懸念した、当時ロシアの極東での勢力拡張を警戒して日本と日英同盟を結んでいた英国が買い取ることになりました。
(「スイフトシュア級」高速戦艦の各部の拡大:同級はチリ本国の港湾事情に合わせて、艦幅を細身にし、高速発機に適した形状として長い船体を持っています。英海軍の主力艦としてはやや構造が弱いとみなされ、主力艦隊には組み込まれませんでした:ちなみにこのモデルもNavisの新シリーズで、細部の再現性が向上しています)
元々の発注国であるチリ海軍の事情に合わせて設計されたため、船体の形状が縦長(ドックへの入渠を考慮したため船幅が狭い設計でした)で、高速航行には適した形状でしたが、構造的にはやや強固さが損なわれていました。
英国海軍内ではやや異質な設計であるため、他の戦艦との戦隊が組めないなど、運用面で困難がありましたので、主として海外派遣任務に用いられました。
第一次世界大戦では他の旧式艦と同様に地中海方面(トルコ戦線)で活動し、1隻が戦没しています。
準弩級戦艦の登場
「キング・エドワード7世級」戦艦(1905年から就役:同型艦8隻)
(「キング・エドワード7世級」戦艦の概観:110mm in 1:1250 by Navis)
同級の設計にあたり、英海軍はそれまでの近代戦艦の基本兵装の構成を大きく見直しました。
米海軍、イタリア海軍で先行して試行された副砲の口径の強化に刺激されて、同級ではそれまでの戦艦の標準主砲(40口径30.5センチ砲)と副砲(50口径15.2センチ単装速射砲:50口径の長砲身砲に強化されています)の間に47口径23.4センチ単装速射砲を中間砲として単装砲塔形式で4基搭載し、火力は格段に強化されています。しかし理論上の火力強化はともかく、実戦では主砲と中間砲の異なる口径の砲の射撃を管制することは困難でした。
(「キング・エドワード7世級」戦艦の各部の拡大:同級はいわゆる準弩級戦艦で、主砲を補助する中間砲を搭載していました。写真下段の2点は、同級の搭載する中間砲である23.4センチ単装砲塔を拡大したものです:ちなみにこのモデルもNavisの新シリーズで、細部の再現性が著しく向上しています)
船体は15500トン級まで拡大され、英海軍で初めての石炭と重油の混焼缶の採用を含む新型機関の搭載で加速性が高まり、速力も18.5ノットを発揮する設計でした。一方で中間砲、強化された副砲などの影響で重量がかさみ乾舷が低く、荒天時には揺れが大きいなどの課題も抱えていました。
1905年から7年にかけて8隻が就役しましたが、1906年に単一口径主砲装備の革命的な戦艦「ドレッドノート」が就役したことで、一気に同級は(中間砲という概念自体が)陳腐化してしまいました。
第一次世界大戦では2隻が戦没し、残りの艦についても1920年前後に解体されており、短命な艦級でした。
「ロード・ネルソン級」戦艦(1908年から就役:同型艦2隻)
(「ロード・ネルソン級」戦艦の概観:108mm in 1:1250 by Navis)
同級は「キング・エドワード7世級」で試みられた中間砲搭載による火力強化をさらに進めて設計で、副砲を全廃し、搭載火力を主砲と多数の準主砲(中間砲)の2種構成としています。
主砲には新設計の45口径30.5センチ砲が採用され、同砲は「ドレッドノート」の主砲としても採用されています。「ロード・ネルソン級」では同砲を連装砲塔2基で搭載しています。準主砲には50口径23.4センチ速射砲が採用され、同砲を各舷に連装砲塔2基と単装砲塔1基で混載していました。同砲は速射性も良好で、水雷艇追尾も可能だったと言われています。
(「ロード・ネルソン級」戦艦の各部の拡大:同級は片舷に対し30.5センチ主砲4門、23.4センチ中間砲5門を指向することが出来ました。しかし異なる口径(主砲と中間砲)さらに異なる搭載形式(連装砲塔と単装砲塔)の巨砲群を統一して射撃完成することは大変難しかったでしょう。さらに同級の就役時にはすでに単一主砲搭載の「ドレッドノート」が完成済みで、新造時に既に大二線級のレッテルを貼られることになりました)
これらの巨砲の多砲塔搭載のために船体は17800トン級となり、防御装甲の一部の増厚など防御の強化策も盛り込まれた設計でしたが、それでも18ノットの速力を発揮できました。
新型主砲の「ドレッドノート」への供給が優先されるなどの影響で、完成と就役が「ドレッドノート」完成後になってしまい、新造艦でありながら二線級戦力という烙印を押されるという状況に甘んじなければなりませんでした。
ということで、今回は英海軍の航洋型装甲艦の到達点ともいうべき前弩級戦艦・準弩級戦艦の発達経緯を見てきました。今回ご紹介した艦級の整備中に、極東では日本海軍とロシア海軍の間に「黄海海戦」「日本海海戦」が戦われており、その戦訓(特に「黄海海戦」)から、射撃法、さらに射撃管制法等が模索され、他ならぬ英海軍によって単一口径多主砲搭載の新しい主力艦の形式が生み出されます。そうして主力艦の新たな形式「弩級戦艦」の時代が幕を開けることになるのです。
次回はこの続きで英海軍の弩級戦艦の開発系譜のお話、あるいは諸々整備中の新着モデルのお話、いずれかを予定しています
もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。
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特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。
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