相州の、1:1250スケール艦船模型ブログ 主力艦の変遷を追って

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

新着モデルのご紹介:ドイツ帝国大型巡洋艦、英海軍V-W級駆逐艦改造機雷敷設艦、仏海軍練習巡洋艦 など

本稿で(というよりも筆者が)最近、頻度高く取り上げているモデルメーカーのヴァージョン・アップへの対応、あるいは、モデルメーカー間での精度比較、今回は偶然、そういう視点で語るべきモデルがいくつか手元に到着しましたので、そういうお話を。いつものことですが、予告をあっさり反故にしてしまいました。ごめんなさい。

(ひとつ、混乱を避けるために、もしかすると筆者がミスリードしているかもしれないので。本稿で「新着」という言葉を使っている場合、「筆者の手元へ新たに到着したモデル」を意味しています。世に言う「新着≒新発売」ではありません)

 

まず、モデルメーカーのヴァージョン・アップのお題から。

Navis Nシリーズの新着モデル

本稿で最近よく取り上げているNavis製のモデルのヴァージョン・アップ・シリーズ=Nシリーズ(品番にNの記号が入るので、筆者が勝手に名付けています)の新着モデルを2点、今週入手しました。

これまでこの話題はドイツ帝国海軍の前弩級戦艦装甲巡洋艦、英海軍の装甲巡洋艦などの系統的なヴァージョン・アップ対応の試みのご紹介、ということで下記の回で取り上げてきています。せっかくいったん揃えたモデルがこのヴァージョン・アップで一夜にして旧モデル化してしまう、という筆者にとっては(特にお財布的に)大きな試練でもあります。

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(どこかで一度書いた気もしますが、「ドレッドノート」の登場(1906年)がそれまで営々と整備されてきた、あるいはその時点でも建造の途上にあった所謂「前弩級戦艦・準弩級戦艦」を、一夜にして「旧世代の主力艦:二線級主力艦」に貶めてしまった、そんな現象を思い描いています。これもどこかで描きましたが、たかがモデルの再現精度なのですが、気になりだすと・・・。一番いいのはNシリーズを入手しないこと。だったんだというのが分かったのですが、入手してから気がついたので)

 

ドイツ帝国海軍大型巡洋艦「ヴィクトリア・ルイーゼ級」(1898年から就役、同型艦5隻)

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 (「ヴィクトリア・ルイーゼ級」大型防護巡洋艦のの概観 89mm in 1:1250by Navis N(=新モデル):下の写真は、同級の上部構造、武装配置の拡大:単装主砲塔、艦橋、舷側の副砲、ボート甲板の細部が丁寧に再現されています )

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同級は舷側装甲を持たない所謂「防護巡洋艦」で、5500トン級の船体に21センチ単装速砲2基と15センチ単走速射砲8基という強力な火力を持っていました。石炭専焼のレシプロ機関から19ノットの速力を発揮できる設計でした。ドイツ帝国海軍では大型巡洋艦と類別され、同艦種は次級以降、舷側装甲を有した装甲巡洋艦「フュルスト・ビスマルク」(1900年就役)「プリンツ・ハインリッヒ」(1902年)へと発展してゆきます。

(両艦については本稿の上掲の回

新着モデルのご紹介:ドイツ海軍装甲巡洋艦のモデル更新状況 - 相州の、1:1250スケール艦船模型ブログ 主力艦の変遷を追って

でご紹介しています)

同時期の帝国海軍の戦艦がバルト海での戦闘を想定した、どちらかというと海防戦艦的な艦容を示していたのに対し、同艦種では高い乾舷を有した長距離航行に適応した航洋性の良好な船体形状を有していました。

後に機関を換装したため煙突数が2本に減少しています。

 (下の写真は「ヴィクトリア・ルイーゼ級」大型防護巡洋艦の機関換装後、つまり二本煙突時期の概観 89mm in 1:1250by Navis (=こちらは旧モデル)

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第一次世界大戦期には、既に旧式艦として第一線を離れ、宿泊艦、練習艦等として利用され、1920年前後に解体されています。

 

新旧モデル比較

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 (上の写真は「ヴィクトリア・ルイーゼ級」大型防護巡洋艦のの概観比較:上段が旧モデルの二本煙突時、下段は就役時(新モデル):下の写真は、旧モデル(左列)と新モデルの細部比較:再現されている時期が異なりますので、ストレートに比較していいものか少し迷いますが、新モデルでは艦橋周りや上部構造、ボート甲板の細部の再現精度が上がっているように思われます )

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英海軍「V-W級」駆逐艦、及び改造:機雷敷設駆逐艦

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「V/W級」駆逐艦第一次世界大戦駆逐艦の決定版

まずは改造のベースとなった「V\W級」駆逐艦についてですが、同級は本稿でも何度かご紹介してきています。

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 (上の写真「V/W級駆逐艦の概観:「アドミラルティV級」だと思われます:75mm in 1:1250by Navis N(=多分新モデル):下の写真は、同級の上部構造、武装配置の拡大 )f:id:fw688i:20220703095645p:image

「V/W級」駆逐艦は、英海軍が第一次世界大戦中に建造した駆逐艦の艦級で、艦名がVまたはWで始まっているところから「V/W級」と総称されています。

同級はドイツ帝国海軍が建造中の大型駆逐艦・大型水雷艇への対抗上から、大型・重武装駆逐艦として設計されました。従来の英駆逐艦の基本装備であった40口径4インチ(10.2cm)砲3門を強化し45口径4インチ(10.2cm)4門とし、さらに連装魚雷発射管2基の標準装備を3連装発射管2基搭載へと、魚雷射線の強化も行われました。(実際には3連装発射管の製造が間に合わず、当初は連装発射管を搭載し就役し、後に三連装に換装されています)

「V/W級」と総称されますが実は大別して下記の5つのサブ・クラス(おお大好きなサブ・クラス!)に分類されます。

アドミラルティV級(28隻:大戦に間に合ったのは25隻)

アドミラルティW級(19隻)

ソーニクロフトV/W級(4隻)

ソーニクロフト改W級(2隻)

アドミラルティ改W級(14隻)

さらに「改W級」では搭載主砲を45口径4インチ(10.2cm)から45口径12センチに強化しています。

 

(「V/W級」駆逐艦(旧モデル)の概観:下の写真は:旧モデル(左列)と新モデルの細部比較。マストの形状の差が目立つ程度で、後はあまり大差ないかと)

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同時期の艦隊駆逐艦としては高い完成度を持ち、比較的余裕のある設計でもあったことから、大戦終結後も長く現役に留まり、第二次世界大戦期には装備を改修するなどの手当てを行い数の不足する輸送船団の護衛駆逐艦として多くが使用されました。(この辺りのお話は、ごく最近では本稿の下記の回でも紹介しています)

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機雷敷設駆逐艦への改造

V級」の一部の艦は、魚雷発射管の連装から3連装への換装を行う代わりに、連装発射管1基を撤去し、さらに主砲1基も撤去、艦尾形状を整形すると共に機雷敷設軌条を設置して、60基程度の機雷敷設能力を持つ敷設駆逐艦に改造されています。

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 (上の写真「V級」機雷敷設駆逐艦の概観(新モデル):下の写真は、「機雷敷設駆逐艦」に改装された艦の細部の拡大:艦首部の主砲配置は変わらず、魚雷発射管は連装のまま1基のみ搭載、艦尾部は主砲1基を撤去して艦尾形状を機雷敷設軌条等の張り出しを追加しています))

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新旧モデル比較

 

(上の写真「V級」機雷敷設駆逐艦(旧モデル)の概観:下の写真は、「旧モデル」(左列)と「新モデル」の比較:主砲・魚雷発射管等、兵装の細部の再現性が上がり、艦橋脇の支柱やボート周りも精度が上がっています)

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次に、モデルメーカーの比較を。

仏海軍練習巡洋艦ジャンヌ・ダルク」(Neptun版とTrident版の比較)

今回、Neptun版の「ジャンヌ・ダルク」を入手しました。これまで保有していたTrident版と比較してみましょう。

その前に「ジャンヌ・ダルク」というのはどういう船なのか。

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ジャンヌ・ダルク」は従来は旧式の装甲巡洋艦を士官候補生の遠洋航海訓練の練習艦として使用してきた仏海軍が、初めて練習艦として設計した船です。「デュケイ・トルーアン級」軽巡洋艦タイプシップとして、魚雷発射管等を減らし士官候補生用の居住施設や訓練施設を追加しています。

練習巡洋艦と言いながらも、その兵装は、主砲には新設計の55口径15.5センチ連装砲を採用し、これを4基搭載し、そのほかに7.5センチ単装対空砲を8基搭載するなど、従来の軽巡洋艦に匹敵するものでした。上述のように雷装は減じられましたが、水上偵察機2機と射出用のカタパルトを備えるなど、27ノットに抑えられた速力を除けば、ほぼ軽巡洋艦に匹敵する戦力を有していました。

第二次世界大戦勃発時には大西洋での警戒任務にあたり、独仏休戦協定の締結後(フランスの降伏、戦線離脱後)にはヴィシー政権に従いカリブ海で不稼働状態となりました。1943年に連合国の反攻が始まると自由フランス軍に加わり反攻作戦に参加しています。

 

モデル比較(Trident版とNeptun版)f:id:fw688i:20220703101517p:image

(直上の写真はTrident版練習巡洋艦ジャンヌ・ダルク」136mm in 1:1250:下の写真はNeptun版「ジャンヌ・ダルク」134mm in 1:1250)

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艦尾の形状がやや異なりますが、概観に大差はありません。Trident版では乾舷が高く表現されており、やや客船的なデザインで練習艦らしさが表現されているようです。一方でNeptun版の方がやや低い姿勢で巡洋艦的な表現が表されている、そんなふうに解釈しましたがいかがでしょうか?そして、これは概ね全てのモデルに言えることだと筆者は考えているのですが、Neptun版では細部が繊細に作り込まれています。

(下の写真はNeptun版練習巡洋艦ジャンヌ・ダルク」(左列)とTrident版の比較:乾舷の高さのわずかな違いで随分艦の印象が変わるものですね。主砲塔の表現もかなり異なります。細部の作り込みはNeptun版に軍配が上がると言わざるを得ないかと)

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同価格であれば迷いなくNeptun版を選ぶのですが、実際にはEbayなどでは2倍から3倍の価格差がつきますので、悩ましい選択をしなくてはなりません。

WW2関連の艦船に関してはNeptunは非常にラインナップが充実していて、WW2の主要な参戦国であればほぼNeptun版で揃えることができます。筆者のような体系的なコレクションを目指すならば、それも一つのポイントになってきます。

 

他社からも「ジャンヌ・ダルク」のモデルが

ちょっとおまけにArgonaut版の「ジャンヌ・ダルク」もしたのご紹介しておきます。こちらは筆者はモデルを保有していません。主砲塔の形状など、少しNeptun版ともTrident版とも異なります。

(下の写真はNeptun版練習巡洋艦ジャンヌ・ダルク」(上段)とArgonaut版(未入手)の比較:両モデルに再現精度の大きな差はないように思われます。どちらを選択するかは、かなり難しい判断になりそうですね)

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Argonaut版のモデルはやはりかなり細部の再現精度が高い製品になっているようです。Neptun版とも引けは取らないかと。

Argonaut社製のモデルについては、実は一昨年(?)製作者が亡くなられた為、以降、新製品、新品の流通は望めなくなっています。Ebay等での中古品を調達するしか入手方法がないような状況だと聞いています。筆者が懇意にしているEbay出品者に聞いたところでは、ある出品者が、製作者が亡くなられたのちの在庫を全て引き取ったとか。そうした事情で、今後希少価値が上がることは間違いなく、一般的に大変高値での取引になっています。

 

ちょっとオマケ

スウェーデン海軍海防戦艦「アラン級」を入手

本稿下記の回で第二次世界大戦期の「スウェーデン海軍の海防戦艦」について、ご紹介しています。同海軍は第二次世界大戦当時8隻の海防戦艦保有していました。

fw688i.hatenablog.com

そして下記の回では「アラン級」海防戦艦の艦首形状の異なる「マンリゲーテン」と対空砲座の形状の異なる「タッパレーテン」を入手し、残るは「ヴァーサ」のみ、というようなお話をしています。fw688i.hatenablog.com

そして「ヴァーサ」のモデルがRhenania社初め各社から出ていないとも。おそらくネームシップの「アラン」と大きな差がないからだろう、と結論づけていたのですが、この度「アラン」のモデルをもう1隻入手することができ、これで「アラン級」の4隻が揃いました。

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(今回入手の「アラン級」海防戦艦近代化改装後のモデル by Rhenania:一応モデルが市販されていない同級の二番艦「ヴァーサ」として入手したものです)

ネームシップ海防戦艦「アラン」の近代化改装後の概観:by Rhenania)

海防戦艦「アラン級」三番艦「タッパレーテン」近代化改装後の概観:by Rhenania)

(「アラン級」4番艦「マンリゲーテン」の近代化改装後の概観:by Rhenania:艦首形状のクリッパー型への変更にと同時にボイラーが新型に換装され、対空火器の配置変更等も行われています)

 

「アラン級」海防戦艦4隻

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(直上の写真:「アラン級」海防戦艦4隻の勢揃い:右から「アラン」「ヴァーサ」「タッパレーテン」「マンリゲーテン」の順(上段):「マンリゲーテン」のクリッパー型艦首形状の拡大(中段左):上部構造の差異の拡大(下段))

 

第二次世界大戦期のスウェーデン海軍の海防戦艦一覧

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(左から「スヴァリイェ級」の近代化改装後の「グスタフV世」「ドロットニング・ヴィクトリア」「スヴァリイェ」、「オスカーII世」(近代化改装後:同型艦はありません)、「アラン級」の近代化改装後の「マンリゲーテン」「タッパレーテン」「ヴァーサ」「アラン」の順:スウェーデン海軍は第二次世界大戦では中立を守り抜きますが、にこの8隻の海防戦艦を中心とした海軍を有していました。これらの艦船は主力艦として海軍の象徴的な存在でしたが、戦力としての存在意義は小さくなっており、大戦以降、同海軍は小型高速艦艇と潜水艦の整備に軸足を置き換えてゆきます)

これで第二次世界大戦期のスウェーデン海軍の海防戦艦は、同海軍が当時保有していた8隻を一応揃えることができたと考えています。

 

その他、最近の新着物

Shapewaysからフランス海軍の戦艦黎明期(前弩級戦艦よりも前)の艦級がいくつか届いています。

写真は下地処理をした状態。さあてこれから色を塗らねば・・・。(お楽しみの始まりです)

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(11000トン級装甲艦「アミラル・デュプレ」(写真上段)と「アミラル・ボーダン級」戦艦(写真下段))

上段の「アミラル・デュプレ」は中央砲塔艦の一種と見ることができるでしょう。そして「アミラル・ボーダン」は仏海軍が初めて船体の中央線上に主砲塔を配置した艦、だとか・・・。いずれにせよ前弩級戦艦(近代戦艦)への主力艦黎明期の模索途上、の設計だと言っていいと思います。

こちらは完成次第またご紹介します。

 

ということで、今回は最近の新着モデルのご紹介を中心にしたお話でした。

今回はここまで。

 

次回は、今度こそフランス海軍艦艇の続きで、同海軍の弩級戦艦以降の開発のお話にしましょうか?

もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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