日清戦争時の日本艦隊の投稿は間に合いませんでした。
そうこう言ううちに、なんと今週、本ブログへのアクセス数が20万を超えました。個人的なモデルコレクションの整理、リスト化程度の想いで始めた当ブログが足掛け7年、310投稿を数えるまで続けることができました。「こんなマイナーなコレクション、興味を持ってくださる方がいるんだろうか」と首を傾げながらの開始だったわけですが、文章を書くとなると、それはそれでどんどん面白くなり、数字を見るにつけ、ある程度眺めてくださっている方もいるようだと励まされ、ここまで続けることができています。まさに皆さんのお陰、と心より感謝いたします。
以前、本稿で利用させていただいている「はてなブログ」には、アクセス数の推移を見る機能があり、そこではアクセス数の多い投稿を見つけることができる、というお話をしたことがあります。傾向を見ると、やはり架空艦、未成艦など、モデルでしか触れられない艦艇をご紹介した回は、比較的上位に位置しています。
そこで今回は、最近上位に位置することの多い、ナチスドイツ海軍の計画のみで終わった艦艇をご紹介した回、特に未成巡洋艦、計画で終わった巡洋艦をまとめて、再投稿させていただきます。若干再編集もしています。
未成巡洋艦(航空巡洋艦・軽巡洋艦・偵察巡洋艦・敷設巡洋艦など)
既に本稿では何度もご紹介していますが、少しおさらいも含め背景をまとめておきましょう。
ドイツは第一次世界大戦に敗れ、帝政ドイツの崩壊と共に、ヴェルサイユ体制で重い戦後賠償を課せられます。
同時に軍備にも厳しい制限がかけられ、海軍軍備はほぼ19世紀後半の装備を持つ沿岸警備海軍の規模に縮小させられました。
巡洋艦についてみると、再生ドイツ海軍(ワイマール共和国海軍)は1890年代末期に建造された3000トン級の小型防護巡洋艦6隻を保有するのみでした。1920年代になるとこれらの旧式巡洋艦の代艦建造が始まります。(この辺り、もう少し詳しくお知りになりたい方は、本稿の下記の投稿を見てみてください)
代艦として建造が認められた巡洋艦には6000トン以下、備砲は6インチ以下という制限があり、その制限の中でドイツ海軍は1921年に軽巡洋艦「エムデン」、1924年から「ケーニヒスベルク級」軽巡洋艦3隻、1931年から「ライプツィヒ級」軽巡洋艦2隻を就役させてゆきました。こうしてヴェルサイユ体制下で保有が認められた巡洋艦6隻については全て新造軽巡洋艦に置き換えられた訳ですが、この間、ナチス党が政権を掌握し1934年にヒトラーが国家元首に就任すると、1935年には再軍備を宣言します。同年には英独海軍協定が結ばれ、事実上、ヴェルサイユ体制での軍備制限は消滅しました。
ナチス政権下でドイツ海軍は「Z計画」の総称で知られる大建艦計画を始動させます。今回紹介する巡洋艦群は概ねこの計画の中で設計案が上がった、あるいは起工には至りながら第二次世界大戦の勃発でキャンセルされた艦級である、と言っていいと考えています。
まずは一番目を引く変わりどころ、航空巡洋艦の設計案から。
航空巡洋艦「Flugzeugkreuzer A IIa ; カール・フォン・ミュラー」
(「A IIa型」航空巡洋艦の概観:199mm in 1:1250 by C.O.B. Constructs and Miniatures:艦橋部と主砲塔をストック・パーツに置き換えています。右舷側舷側に煙突が見えています。この右舷側の煙突を写したかったので、珍しく右舷側からの写真になっています)
同艦は、上掲のサイトでは再軍備化したドイツ海軍の大建艦計画の「Z計画」の一環として紹介されています。1942年に複数の空母機能と装甲戦闘艦機能を兼ね備えたハイブリッド艦の設計案が開示され、その中の一つが同艦です。他の情報源では、「ビスマルク」の喪失後、航空援護のない水上艦艇の脆さが露わになり、1942年ごろに「A II」「A III」「A IV」の各設計案が提示され、そのヴァリエーションがこの「A IIa」だ、とした記述があったかと記憶します。
排水量は40000トン、速度は34ノット、55口径28センチ砲(史実では「シャルンホルスト級」戦艦の主砲として搭載されました)を主砲として三連装砲塔2基に納め、副砲として15センチ単装砲を片舷3基、ケースメート形式で搭載しています。(上掲のサイトでは15センチ砲12門と記載されています。ここは筆者のモデルとは大きく異なりますね。片舷連装砲塔3基設置、で計12門、でしょうか)さらに10.5センチ連装高角砲を8基も搭載し、かなり強力な火力を有していました。
(下の写真は「A IIa型」航空巡洋艦の細部:55口径28センチ主砲塔(上段)とケースメート形式で搭載されている15センチ副砲+高角砲(中段))
搭載機
搭載機は上掲のサイトでは23機と記述されています。完成していれば、名機メッサーシュミットMe109を艦上戦闘機仕様に改造したMe109T艦上戦闘機と、Ju87T艦上爆撃機(こちらもシュツーカ急降下爆撃機を艦上爆撃機に改造したもの。両機種の形式番号の末尾のTは空母を表しています)を搭載していたのでしょうね。見ての通り飛行甲板の前端中央に艦橋があり、発艦は艦橋両側のカタパルトから行う設計でした。Ju87Tには艦上爆撃機仕様だけでなく雷撃機仕様のタイプも検討されていたとか。
航空機運用能力のある通商破壊艦
ドイツ海軍は同種の艦艇を航空機運用能力を活かした広域の通商破壊戦に投入することを想定し検討していた、とされています。ただし、搭載機種は2種とも第二次世界大戦緒戦で大活躍した機種ですが、いずれも地上侵攻部隊の直接支援を想定した機体で、洋上での運用では航続距離に課題が出ただろうと思います。しかし、日本海軍のような空母機動部隊での運用を想定するわけではなく、単艦(もしくは小さな艦隊)での通商破壊作戦に出るのであれば、一定の広範囲な索敵能力と攻撃力を持てばいいのかもしれません。そういう割り切りがあれば、両機種の航続距離はあまり問題にならない、とも考えられます。
日本海軍が具現化した同様のハイブリッド艦である「伊勢級」航空戦艦は喪失した機動部隊空母の補完として、空母機動部隊の補完的な戦力としての運用が期待されていたようですが、ご紹介している同艦はその搭載機数から考慮しても、機動部隊での運用は考慮されていない、純粋な通商破壊艦だと言っていいと思います。
(下の写真は「A IIa型」航空巡洋艦の大きさ比較:上段から「ビスマルク級」戦艦との比較、「シャルンホルスト級」戦艦との比較(中段)、「ドイッチュラント級」装甲艦との比較(下段))
モデルのお話:C.O.B. Constructs and Miniaturesのモデル
「モデルはShapewaysでいつでも購入が可能です」と、初回投稿時点では書いているのですが、ご承知のように、Shapewaysの倒産以降、入手手段がありませんでした。困ったなあ、と思っていると、Xpforge.comで入手可能であることが判明しました。
Grossflugzeugkreuzer A IIa - CV - German Navy - Wargaming - Axis and Allies - Naval Miniature - Victory at Sea - Warships - C.O.B.xpforge.com
このサイトでは筆者のコレクションのうちで最大のモデルである「H-45」戦艦のモデルなど、いくつかモデルを入手しています。対応も早く、なかなかいい調達先だと思っています。上掲のリンクでは 1:1250スケールの表示がなく、1:1200スケールのみが選択できるのですが、実は発注時に「1:1250スケールでプリントアウトしてほしい」と一言添えればきちんと対応してもらえます。もちろん他のスケールでも対応してくれると思いますので、依頼してみては?
(写真はかつてはShapewaysに掲載されている同艦の1:1800スケールモデルの写真:by C.O.B. Constructs and Miniatures:今はもう見ることはできません:後述する筆者が手を入れた箇所がわかるように、以前の写真を掲載しておきます)
今回筆者は上掲のモデル(C.O.B. Constructs and Miniatures)をベースに、主砲塔と艦橋部を手元のストック・パーツと置き換えています(ちょっと物足りない気がしたので)。艦橋の置き換えには贅沢にもHansa製のポケット戦艦「アドミラル・シェーア」(後期形態)の艦橋部を流用しています。あとはモデルのモールドでは副砲がケースメートだけで砲身がモールドされていなかったので、砲身をプラロッドで足している程度です。(ああ、そうか、この追加したプラロッドを連装風に変更すれば最初に掲載した情報源と同じ仕様(15センチ砲12門装備)にできますね)
冒頭の写真のコメントで記載したように、飛行甲板の右舷側下部に煙突を追加したのですが、ディーゼル機関を主機としているのならば、このような大きな煙突は必要なかったかもしれません。自作ながら違和感が残っています(ちょっと反省)。
「カール・フォン・ミュラー」という艦名
本稿をご覧になるような方ならばおそらく多くの方がご存知でしょうが、同艦の艦名は第一次世界大戦の通商破壊戦で名を馳せた巡洋艦「エムデン」の艦長カール・フォン・ミュラー少佐にあやかっています。(艦長就任直後に中佐に昇進しています)
カール・フォン・ミュラー中佐の指揮する巡洋艦「エムデン」は、グラーフ・シュペー提督の率いるドイツ東洋艦隊に所属していました。このシュペー艦隊は第一次世界大戦勃発時には中国で当時ドイツ帝国の租借地で軍事拠点であった山東省青島にいたのですが、日本海軍による封じ込め等を畏れ、早期に太平洋への通商破壊戦を経た本国への回航を試みます。その途上、コロネル沖海戦で英巡洋艦隊を撃破しながらも、フォークランド沖海戦では英巡洋戦艦の圧倒的な火力の前に全滅させられてしまいました。「エムデン」はこの海戦の前に艦隊を離れ単艦でインド洋での通商破壊戦を命じられ、大暴れすることになるわけです。
こちらもおすすめ。この「エムデン」の活躍を語り出すと随分な長文になってしまいそうなので、今回は控えますが、是非、上掲の書籍など、お楽しみいただければ、と。
Amazonで今なら手頃な値段で手に入りそう。時折、びっくりするくらい高額な値段がついたりしていますので、手頃な価格を見つけたらチャンスかと。
「カール・フォン・ミュラー」のヴァリエーション
少し派生情報の追加を。
Grossflugzeukreuzer A III (「アトランティカ級」航空戦艦 のち航空母艦)
Shapewaysの倒産以前は、同艦の拡大型ともいうべき「A III」デザインのモデルも購入することができました。現在は、大変残念ですが、調達経路が見当たりません。
同艦は仮想戦記小説「レッドサン・ブラッククロス」にも登場していて、排水量70000トン余りの大きな船体を持ち33ノット超の高速を発揮することができました。武装は28センチ三連装砲2基(2番艦は設計の見直しが入り28センチ四連装砲塔1基)を主砲として、28機(2番艦は50機)の航空機を搭載するという設定で登場しています。しかし、戦力としては火力、航空機の搭載能力、いずれお中途半端で、実戦での戦力化に難があるとして、結局、主砲をおろし全通甲板、搭載機62機の正規空母に改造された、という設定になっています
(上図は佐藤大輔著「レッドサンブラッククロス(中公ノベルズ版第2巻掲載)より拝借しています.。下は「アトランティカ」のアップ)
いずれは作ってみたいですね。主砲塔と艦橋は何か手を入れたいですね。
3D printing modelは柔らかな樹脂製(今回の上掲の「A IIa」もWhite Natural Versatile Plasticという樹脂製です)ですので、金属などに比べ比較的加工が容易です。ドイツ艦風の空母艦橋などはあまりストックパーツを筆者は持っていないので、これについては少し研究が必要です。(ああ、こうやってテーマがどんどんとっ散らかっていくんです)
でも手を入れればきっといいモデルになってくれそうです。最大の問題は、どこで入手できるのか、それを見つける事なのですが。どなたかご存知であれば、是非、ご一報ください。
次にご紹介するのは、英独海軍協定の締結により無制約状態となった1936年にドイツ海軍が計画した、「M級」軽巡洋艦です。
M級軽巡洋艦
(「M級」軽巡洋艦の概観:146mm in 1:1250 by Semi-scratched model based on Anker "Enrwulf 1938 M-R")
「M級」軽巡洋艦は通商破壊戦用に1936年に計画された軽巡洋艦です。
ヒトラー政権による再軍備宣言と、英独海軍協定の締結で、それまでドイツ海軍の巡洋艦に課せられていた6000トンという制限が無くなったため、7800トン級の大きな船体を持ち、55口径6インチ連装砲塔4基を主砲として搭載していました。機関にはギアード・タービンとディーゼルを併載し35ノットの高速と19ノットの速力で8000浬という長大な航続距離を併せ持っていました。(参考まで:通商破壊艦として名高い「ドイッチュラント級」装甲艦は速力26ノット、航続距離20ノットで10000浬)
6隻という保有数にも制限が課せられていた本級以前のドイツ海軍の軽巡洋艦はある種の万能艦を目指さねばならないという宿命があり、新基軸を随所に盛り込んだためにやや無理がみられる設計でした(「ケーニヒスベルク級」では軽量化と新開発の三連装主砲塔などの重武装の搭載から、艦自体の構造に負荷がかかり過ぎ、ドイツ近海でしか行動できませんでした)が、同艦は一転して通商破壊に絞った高速性(敵性軍艦を避ける)と航続距離を具現化する堅実な設計となったであろうと考えています。
(上の写真:「M級」軽巡洋艦の主要部の拡大:主砲は、前級「ライプツィヒ」級までドイツ海軍が軽巡洋艦の標準装備としていた3連装砲塔から連装砲塔に変更しています。3連装砲塔は意欲的でしたが、あえてオーソドックスな連装砲塔に。艦橋部の前檣はモデルでは図面(あるいは下のオリジナルモデル)のように同級独特なものでしたが、あえてドイツ軽巡洋艦的な構造に変更してみました。上段写真で艦中央部、船体内に魚雷発射管を装備していたことがわかります)
ちなみに「M級」という名称は、正式艦名が付けられる以前の仮称で、同級はM、N、O、P、Q、Rの6隻が建造される予定でした。このうちM、Nの2隻については1938年、39年に起工されましたが第二次世界大戦の勃発で建造が打ち切られ、他の4隻については計画のみで終了しています。
模型的な視点での「M級」軽巡洋艦
1:1250スケールで本稿でも何度か紹介している未成艦・計画艦のラインナップに強いAnker社からモデルが市販されています。今回はこのモデルをベースにしています。
(下の写真は、Anker社の「Entwulf 1938 M-R」として市販されているモデルの概観:例によって写真はsammelhafen.deより拝借しています)
このAnkerのモデルはおそらく上掲のWikipediaに掲載されている図とも近似しているので、計画に忠実なのだろうとは思うのですが、筆者の「ドイツ艦らしくない、という、根拠も何もない違和感」だけに基づいて前檣部分に大幅に手を入れています。代替した前檣はストックのあるHansa社製の「ライプツィヒ」「ニュルンベルク」の前檣を移植しています。
(上の写真は、軽巡洋艦「ニュルンベルク」(手前)と「M級」軽巡洋艦の比較:「M級」の艦幅が大きいことがわかります。改めてこうして比べると、ドイツ海軍の既成の軽巡洋艦群が、腰高で、つまりトップヘビーで無理のある設計だった、というのも理解できるような気がします。もっと使ってもよかったのに、とずっと思ってきたのですが、多分そうもいかなかったんだろうなあ)
次に、ドイツ海軍の計画した高速偵察巡洋艦を。こちらも通商破壊戦を意識した設計と言っていいでしょう。
偵察巡洋艦計画 (Spahkreuzer 1938)
(偵察巡洋艦の概観。122mm in 1:1250 by Hansa:Wikipediaの図面では艦中央部に水上偵察機関連の装備が描かれていますが、このHansa社のモデルではこの部分に魚雷発射管が2基装備され、大型駆逐艦のような外観になっています)
大西洋での通商破壊戦を海軍戦略の重要な要件の一つとしていたドイツ海軍は、標的となる船団を発見し追跡する「偵察巡艦」の建造を計画していました。6000トン級の船体に、6インチ連装砲塔3基を搭載し、36ノットの高速を発揮する大型の駆逐艦というような形状の艦で、1938年ごろから複数の設計案が検討され1941年に起工されながらも、1942年には中止されています。
(偵察巡洋艦の兵装配置の拡大:艦首部に連装砲塔(写真上段)、中央部に5連装魚雷発射管2基(写真中段)、艦尾部に連装対空砲と連装主砲塔2基(写真下段)、とドイツ海軍の駆逐艦に近い兵装配置になっていることがわかると思います)
模型的には、Hansa製のモデルの前檣を、ドイツ海軍の「巡洋艦らしく」するために手元のドイツ海軍軽巡洋艦から入手したストックパーツに交換しています。Hansa社のオリジナルのモデルはしっかりしていて全体のフォルムは好きなのですが、Neptun等のディテイルが作り込まれたモデルと比べると、ついついどこか手を入れたくなります。
(Hansa製のモデルに筆者が手を入れた前檣と、艦尾の対空砲)
水偵装備タイプの製作
「手を入れたい」という想いが高じて、Wilipedia図面の水上偵察機装備したタイプも作ってみました。
(直上の写真は上掲のWikipediaでの説明の通り艦中央部の魚雷発射管を航空艤装に置き換えたもの。偵察巡洋艦としてはこの方が理に適っているかもしれません。このデザインは1939年版のもののようですので、1938年のオリジナルでは魚雷発射管装備案だったのかも:下の写真は艦中央部の比較:上段が1938年デザインで下が水偵設備を持った1939年デザイン、ということになります)
オリジナルHansaモデル
下の写真はHansa製のオリジナルモデル:以前、本稿では一度オリジナルモデルは紹介しています。その際には「前檣」を交換したい、と言っていました。結局それをやっちゃった、ということですね。
(前回投稿の際に紹介していた偵察巡洋艦とドイツ海軍駆逐艦(手前)の比較:大型駆逐艦的な概観ではありますが、やはりかなり大きさが異なることがわかります)
こちらは未成艦ではなく架空艦、と言った方がいいかも
さて、もう一隻、次にご紹介する艦については、実は公式に計画があった、という資料に当たれていません。今のところGameの世界で計画の資料を見つけたのみ、です。(どなたか計画の断片でも資料をお持ちの方がいらっしゃたら、是非、お知らせください)
「アドミラル・ヒッパー級」巡洋艦、6インチ主砲装備案 (Lutzow (Entwutrf) :リュッツォー試案)
(「ヒッパー級」6インチ主砲搭載軽巡洋艦の概観:169mm in 1:1250 by Semi-scratched model based on Hansa "Lutzow (Enrwulf) )
少し詳細を端折ると、ここでは「プリンツ・オイゲン」の姉妹艦のアイディアとして種々のイラストが示された中で、軽巡洋艦の主砲塔装備案として下の図面が紹介されています。
(下図は上掲のURL:World of Warshipのサイト内のファン・フォーラムへの投稿から拝借しています。この図面の原典がどこかにあるはずのなのですが、これが探せていません)
この図面の下のスペックを見ると14000トン級の船体を持ち、32ノットの速力を発揮、とあるので、ほぼ「アドミラル・ヒッパー級」、記載されている寸法を見ると同級の改良タイプでやや大型の3番艦「プリンツ・オイゲン」に準じたものになっていることがわかります。
上の図面でも記載されているように同級の後期型でいずれも起工されながら建造が中止された「ザイトリッツ」「リュッツオウ」が6インチ砲装備の軽巡洋艦として完成していたら、ということなんでしょうね。
(「ヒッパー級」6インチ主砲搭載軽巡洋艦の細部:「ヒッパー級」に比べて前檣の構造が簡素になっています(上段)。カタパルトを2基装備し。その間を航空機整備甲板に(中段))
史実上ではこうしたスペックの軽巡洋艦が、いわゆる「条約型巡洋艦」として存在していることは、多分ご承知だろうと思います。背景には主力艦の保有数を制限し、増大する一方だった列強の海軍軍備負担を軽減しようという意図で成立したワシントン・ロンドン海軍軍縮条約があります。両条約の制約下で、重巡洋艦・軽巡洋艦の定義が主砲の口径差で生まれ、8インチ砲装備の重巡洋艦の保有枠を使い切った列強海軍が、重巡洋艦に対抗できる速射性の高い6インチ砲を多数装備した大型の軽巡洋艦の建造に移行していったのでした。
日本海軍の「最上級」「利根級」、米海軍の「ブルックリン級」「セントルイス級」、英海軍の「タウン級」などがこれにあたります。
ヴェルサイユ体制ではドイツ海軍は重巡洋艦の保有は認められておらず、あわせて同海軍はワシントン・ロンドン条約の批准国でもないので、同海軍がこの種の艦種を保有する根拠は希薄なのですが、列強が装備していた速射性の高い中口径砲を多数装備し、つまり重巡洋艦よりも手数の多い大型巡洋艦になんらかの興味を持てば、あるいはあり得たのかも、というところでしょうか。
モデルについて
驚くべきことに、1:1250スケールではなんと同種の艦についてもモデルが市販されています。
(下の写真はHansa社から市販されている同艦種のモデル:例によって写真はsammelhafen.deより拝借しています。入手したんだから、手を入れる前に写真を撮っておけばいいのに、そういうのは忘れてるんです、とほほ。「Lutzow (Entwutrf)」という商品名です。「Lutzow」は「ヒッパー級」の5番艦として着工され、大戦勃発で工事中止に。その後、未完のままソ連に売却されたという経緯を持つ艦です。商品名のEntwurf=draftというような意味ですので、「リュッツオウ(試案)」ですかね)
筆者はこれを入手し、例によって同社の主砲と高角砲がややもったりした印象があったので、これらをNeptun社のジャンクモデルからのものに換装して少しディテイルを整えています。
実はその際に後檣も手を入れたかったのですが、同艦はベースとなった「アドミラル・ヒッパー級」重巡洋艦と異なり、カタパルトを2基装備しその間を航空整備甲板としたため、下部を水上偵察機が移動できるようなある種トンネル構造のような特異な後檣の形状をしています。面白いのでそのままで。いずれは上部だけでも真鍮線でリプレイスしてみましょうか。
(重巡洋艦「プリンツ・オイゲン」の概観 by Neptun)
(上の写真は概観比較:「プリンツ・オイゲン」が奥。下の写真では、両者の細部比較(左列が「プリンツ・オイゲン」:主砲塔が最大の相違点ですね。製造者の違いはやはり大きいかも。Neptun社だったらどんな前檣にしたんでしょうか?みてみたい気もしますが、計画でもあれば別ですが、資料もない艦は流石にNeptun社は作らないでしょうね)
「Z計画」から(?)
敷設巡洋艦(4 planned offensive minelayer)
(高速敷設巡洋艦の概観:161mm in 1:1250 by Anker)
こちらでご紹介するのは、ドイツ海軍が計画した高速敷設巡洋艦、です。
ワイマール体制下における再生ドイツ海軍は敷設専任艦を保有していませんでした。ご承知のようにヴェルサイユ体制下で、ドイツ海軍には厳しい軍備制限がかけられ、わずかな数の軍艦しか保有できませんでした。その制約からドイツ海軍が初期に代替艦として建造した「ケルン級」軽巡洋艦は機雷敷設任務もこなせる万能艦として設計されました。また、有事には駆逐艦、高速魚雷艇、潜水艦等がこの任務につくことも想定していました。さらに民間からもペイロードの大きな船舶を徴用することも計画されていました。
しかし「ケルン級」が制限の課せられた中で万能艦を目指したため種々の無理のある設計なったこと、さらに敵前での高速敷設等を考慮すると戦闘能力のある専任艦の建造は必須で、軍備制約の解けた1939年計画では3−4隻の敷設艦の建造が組み込まれていました。
同級のスペックについては筆者の手元には情報がないのですが、入手したAnker製のモデル(つまり今回ご紹介しているモデル)から推測すると5000−6000トン級の船体を持ち、艦尾に4条の機雷敷設軌条を有し、モデルでは再現されていませんが、この形式の艦艇は艦尾に主甲板下の機雷庫から直接海面に敷設する能力も有していただろう、などと想像が膨らみます。速度はおそらく27−30ノット程度、600基程度の機雷搭載能力があったのではないかと推測します。
個艦兵装としては、敵性航空機や駆逐艦との戦闘を想定した速射性の高い4インチ連装対空砲4基を主兵装として備え、さらにおそらく37mm対空機関砲4基を装備しています。
(高速敷設巡洋艦の兵装配置の拡大:艦首部に連装対空砲2基(写真上段)、中央部に対空機関砲座(写真中断)、艦尾部に連装対空砲2基と4条の機雷敷設軌条と広い作業甲板が見ていただけます(写真下段):通常、この時期の敷設巡洋艦は上甲板下にも機雷庫を装備しており、艦尾に敷設用の扉を備えていることが多いのですが、同モデルではそのようなモールドは認められませんでした:下の写真はあくまで参考資料として、同時期に日本海軍が建造した機雷敷設艦「沖島」「津軽」の細部写真から。左下のカットでは艦尾の上甲板下の扉からの機雷敷設が可能であったことがわかるかと。おそらく本艦も同じような機能の上甲板下の敷設用の扉を装備していたのではないかと思います)
Anker社のオリジナルモデル
下の写真はAnker製のオリジナルモデルの写真です。例によって写真はsammelhafen.deより拝借しています。このAnker製のモデルは上部構造が非常にシンプルで、それはそれでいい感じはするのですが、やや全体の作りにシャープさが欠けるような気がしています。ついつい手を入れてみたくなり、「ドイツ艦らしさ」というこだわりから、今回ご紹介した筆者のコレクションでは、前檣を筆者のストックパーツに置き換えたりしています。ちょっとトップヘビーな感じになっちゃったかなあ、と反省しています。
ということで、今回はドイツ海軍の未成艦・計画艦(一部架空艦かも)のまとめ、でした。
次回は一応、日清戦争当時の日本艦隊のご紹介をと考えていますが、どうなることか、ちょっと不安です。あるいはやはり過去投稿の再掲、と言うことにさせていただく事になるかも。
模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。
特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。
もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。
お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。
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