相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

アップデート編集版:大好きなドイツ帝国巡洋戦艦のコレクション:最後の装甲巡洋艦から未成に終わった計画艦まで

またまた言い訳から。

このところ「次回こそ黄海海戦日清戦争)」と書き続けているような気がします。今回も先送りに。言い訳を少し。モデルはほぼアップデートが完了したのですが、今度は「黄海海戦」をどうまとめるか、ちょっと迷ってしまいました。模型のブログなのでそんなの放っておいたらいいのかもしれませんが、そこの思い切りもつかず、またもや先送りです。

 

ということで、今回は筆者の大好きな「ドイツ帝国海軍の巡洋戦艦」のモデルコレクションを、最新のアップデート状況も踏まえてのご紹介です。

アップデートの背景は:Navisモデルの新旧ヴァージョンの話:愚痴に聞こえるかも、しかし最大の楽しみ、と言ってもいいかも

本稿では過去に数回に渡りNavis社モデルの新ヴァージョンへの更新のお話をしてきました。fw688i.hatenablog.com

fw688i.hatenablog.com

少しかいつまんで、以下にこのモデル・ヴァージョンにまつわるお話をまとめておきます。モデルコレクターには「あるある」のお悩みかもしれません。

 

本稿ではたびたびご紹介しているように、筆者のコレクションでは第一次世界大戦期とその前の時期(日本で言うと日清・日露両戦役のあたりですね)の艦船はNavis社のモデルコレクションに深く頼っています。主要海軍の主力艦についてのコレクションはほぼ完了しているのですが、このNavis社が新ヴァージョンのモデルを投入してきている、と言うのがことの発端なのです。当然、新ヴァージョンモデルでは種々のディテイル等の改善が顕著に行われているので「良いに決まっている」のですが、この更新に付き合うとなるとこれまでのコレクションが一瞬で二級品に見えてしまい(筆者はこれを勝手に「モデル・コレクションにおけるドレッド・ノート・ショック」と名づけています)、同時に更新には莫大な(筆者にとっては)経済的な負担も覚悟せねばならず(1:1250スケールのモデルは結構高いのです)、かつ日本のモデラーでは調達ルートが非常に限定されてしまっている(特に筆者のような「お小遣いモデラー」という経済的な制約を持った者にとっては)、「さて、困ったなあ」と言う状況ではあるのです。

とは言え、一旦その差異を目にしてしまうと放っておけず、気がついてしまう度に、筆者の重大な関心事になっている、そう言うことです。新旧モデルの差異については上掲の投稿でも比較をしていますので、ご覧ください。深刻さが伝わる人には伝わると思います。まあ、今回もその話にはなるのですが。

 

ドイツ帝国海軍:装甲巡洋艦から弩級巡洋戦艦

まず、最初に少し「ちゃぶ台返し」的なお話になりますが、ドイツ帝国海軍に「巡洋戦艦」と言う艦種はありません。これらは全て「大型巡洋艦:Grosser Kreuzer」に区分されています。つまり本稿の下記の回で紹介した艦船群(装甲巡洋艦:これも正式な呼称は「大型巡洋艦」なのですが)の系譜の直系に当たるわけです。

fw688i.hatenablog.com

この「装甲巡洋艦」の系譜の最終艦において、ドイツ帝国海軍は画期的な「装甲巡洋艦」を建造しました。

それが大型巡洋艦ブリュッヒャー」でした。

 

装甲巡洋艦ブリュッヒャー」(1909年就役:同型艦なし)

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(1909年、15,840トン、21cm(44口径)連装速射砲6基、25.4ノット 同型艦なし:128mm in 1;1250 by Navis)

前級「シャルンホルスト級」の設計で、新たな設計段階に至った感のあるドイツ帝国海軍の装甲巡洋艦大型巡洋艦)でしたが、同艦ではその設計思想が更に深められることになります。

艦型を更に大型化し15000トンを超える大きな艦となり(「シャルンホルスト級:11600トン)、強力な機関から25ノットを超える速力を発揮することができました(「シャルンホルスト級:23.5ノット)。主砲は前級と同口径(21センチ)ですがさらに長砲身(45口径)を採用し(21cm SK L/45)、弩級戦艦並みの射程を得ています。連装砲塔6基12門の主砲数は、従来の装甲巡洋艦の概念を一新するものでした(「シャルンホルスト級:主砲:40口径21センチ砲8門:6門での片舷斉射が可能)。

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(上の写真は「ブリュッヒャー」の砲配置のアップ:新設計の45口径21センチ砲をこちらも新設計の連装砲塔6基に装備し配置しています。中段写真ではケースメート式の副砲の配置も見ていただけます)

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同砲はほぼ「ブリュッヒャー」専用に開発されたような大口径速射砲です。前級に搭載されていた主砲と同口径(21センチ)ですが、さらに長砲身(45口径)を採用し(シャルンホルスト搭載砲は40口径)、初速を高め弩級戦艦並みの長射程を保有し(仰角30度で29000m)、併せて高い射撃精度を得ています。連装砲塔6基という形式での主砲搭載は中央での射撃管制の精度を高め、12門の主砲数(片舷に8射線)は、従来の装甲巡洋艦の概念を一新するものでした(「シャルンホルスト級:主砲:40口径21センチ砲8門:6門での片舷斉射が可能)。

装甲巡洋艦から弩級巡洋戦艦への過渡的存在

上掲のように「ブリュッヒャー」は従来の「装甲巡洋艦」の概念を一新するいわば「超装甲巡洋艦」、「装甲巡洋艦ドレッドノート的な存在」として就役したのですが、同時期に既に英海軍は「インヴィンシブル」を始めとする同時期の戦艦と同口径主砲(45口径30.5センチ:連装砲塔4基)を装備した「弩級巡洋戦艦」を建造し始めており(1908年より就役開始:速力25.5ノット)、完成時点で「ブリュッヒャー」は既に二線級戦力の感が否めなくなっていました。

実戦でも「ブリュッヒャー」は新型主砲の長射程とある程度の高速を有するがゆえに、巡洋戦艦部隊(大型高速巡洋艦部隊)に組み入れられました。しかし新型主砲とはいえ、弩級巡洋戦艦超弩級巡洋戦艦との差は如何ともし難く、また高速とはいえ新設計の巡洋戦艦の速度には及ばず、大変苦戦をすることになりました。1915年のドッガー・バンク海戦にも、フランツ・フォン・ヒッパー提督率いるドイツ巡洋戦艦部隊(偵察部隊)の一艦として参加しましたが、速度的にも配置的にも縦列の殿艦となり、英艦隊の砲撃で被弾、後落したところを集中砲火を受け、撃沈されてしまいました。

そもそも、「ブリュッヒャー」は「英海軍が設計中の次期装甲巡洋艦は従来の英海軍の装甲巡洋艦と同口径(23センチクラス)の主砲を装備するものと見られる」と言う諜報に基づいて、これを凌駕する設計として登場した経緯があり、ドイツ帝国海軍は全く裏をかかれた状況、諜報に失敗したと言わざるを得ませんでした。こうした経緯で同艦以降、装甲巡洋艦の建造は見送られ、ドイツ帝国海軍も巡洋戦艦の建造へと計画を移行させてゆくことになります。

 

巡洋戦艦「フォン・デア・タン」(1910年就役)

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巡洋戦艦「フォン・デア・タン」の概観:136mm in 1;1250 by Navis)

同艦は、上記のような経緯でドイツ帝国海軍が初めて建造した巡洋戦艦です。

英海軍の「インビンシブル級」に始まる巡洋戦艦群が高速の装甲巡洋艦の強化発展型として設計され、結果として従来の装甲巡洋艦の概念を一新し、装甲巡洋艦という艦種に終止符を打つ存在として登場したのに対し、ドイツ帝国海軍の巡洋戦艦は、当初から英海軍の巡洋戦艦との砲撃戦を想定し、装甲巡洋艦の発展型の設計ではなく、むしろ同時期に設計されていた「ナッサウ級」弩級戦艦の高速化と言う視点で設計されていました。つまり弩級戦艦の重厚な防御設計を引き継いでいたわけです。この視点の差異は非常に重要で、以降、ドイツ帝国海軍の堅牢で撃たれ強い特性の起源となったと言えると考えます。

20000トン級の大きな船体を持ち、高速タービンと低速タービンを併載した四軸推進で25ノットの速力を有していました。主砲には当時の弩級戦艦「ナッサウ級」と同じ45口径11インチ(28センチ)速射砲を連装砲塔で4基搭載し、艦中央部の主砲塔配置をオフセットした「アン・エシュロン型」の配置を採用し、艦首尾方向にはそのうちの3基、舷側方向には4基全てが指向できる設計でした。

(「フォン・デア・タン」のディテイルのアップ:艦中央部の主砲塔は艦首尾方向への射界を確保するために、「アン・エシュロン型」の配置をしていました)

第一次世界大戦期にはヒッパー中将の指揮する巡洋戦艦で構成される偵察部隊の一艦として行動し、ドッカーバンク海戦には機関修理中で参加しませんでしたが(代わりに「ブリュッヒャー」が参加し撃沈されています)、ユトランド沖海戦では英巡洋戦艦「インディファティガブル」と砲戦を交わし数発の命中弾を与えこの艦の撃沈に貢献しました。その後、自艦も英海軍の超弩級巡洋戦艦超弩級戦艦部隊に追撃され38センチ砲弾、34センチ砲弾それぞれ2発を被弾し全主砲が射撃不能になる損害を受けましたが、持ち前の強靭さで生還しています。

休戦後、他の主力艦と同じくスカパ・フローで抑留されましたが、いわゆる6月21日の「艦隊大自沈」に参加して自沈しています。

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巡洋戦艦「フォン・デア・タン」と装甲巡洋艦ブリュッヒャー」(手前):船体の大きさの違い、主砲塔の大きさの違いに注目)

 

Navis Nシリーズのモデルについて:ebayの魔法と呪縛

筆者のコレクションに編入した一連のドイツ帝国巡洋戦艦のモデルは、その塗装と、さらに普通は気にもしないであろう(実際に筆者はこれまで気にしたことはありませんでした)クレーンにワイヤーを作り込んであったり、マストの細部に手が入れられているところから、おそらくどこかの個人コレクションが手放されたものだと思います。

全てのモデルが塗装されていますが、これもほぼ手塗りで、少々荒っぽいものの細部にこだわりのある仕上がりになっていました。

ebayには、今回、筆者が入手した一連のモデル以外にもドイツ帝国海軍の弩級戦艦超弩級戦艦等が一斉に十数点程度、出品されていました。

こうしたおそらく個人のマニアックなこだわりの感じられるモデルには、相応の高値がつきます。結果的には筆者の懐具合との兼ね合いもあって、入札終了の朝、目が覚めるといくつか落札に失敗していました。これが全て落札できていたら、筆者の小遣いが間違いなく1ヶ月分は吹っ飛んでいたのは間違いないですが、それと引き換えにおそらくドイツ帝国海軍の弩級戦艦超弩級戦艦・巡洋戦艦のNavis新モデルへの置き換えは完了していたでしょう。惜しかったなあ。今となっては絶好の機会を逃したような。

 

モルトケ級」巡洋戦艦(1911年から就役:同型艦2隻)

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(「モルトケ級」巡洋戦艦の概観:152mm in 1;1250 by Navis)

同級は試作的な「フォン・デア・タン」に続いて建造された巡洋戦艦の艦級で、「モルトケ」と「ゲーベン」の2隻が建造されました。

「フォン・デア・タン」を改良強化し、船体を大型化し(22000トン級)主砲塔も一基増やした5基としています。重防御は前級から継承し、撃たれ強い艦級でした。

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(「モルトケ級」巡洋戦艦のディテイルのアップ:同級も艦中央部の主砲塔は「アン・エシュロン型」の配置をしていました)

缶数を増やして機関を強化し28ノットの高速を発揮することができました。

二番艦の「ゲーベン」は第一次世界大戦の開戦時、地中海に配置され、そのまま同盟国トルコ海軍に編入され「ヤウズ・スルタン・セリム」と改名されました。オスマン(トルコ)帝国の解体後もトルコ海軍の主力艦として残り「ヤウズ・セリム」と改名し、1960年代まで同海軍の象徴的な存在として在籍していました。NATOからも艦番号を付与され(370)、最も長く現役にとどまった弩級(巡洋)戦艦として記録されています。

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(「モルトケ級」の2隻:「モルトケ」(手前)と「ゲーベン」:「ゲーベン」は第一次世界大戦当時、ドイツ帝国の同盟国だったオスマントルコ海軍に編入され、1960年代までトルコ海軍に在籍していました)

モルトケ」は第一次世界大戦にはヒッパー中将の偵察部隊の一艦として活躍し、ドッカーバンク海戦、ユトランド沖海戦に参加しました。ユトランド沖海戦では、英超弩級巡洋戦艦「タイガー」と砲火をかわし9発の命中弾を与え、同艦を大破しています。一方で砲戦で大口径砲弾4発を受け損害を出しながらも生還しています。

休戦後、他の主力艦と同じくスカパ・フローで抑留されましたが、いわゆる6月21日の「艦隊大自沈」に参加して他艦同様自沈しています。

 

巡洋戦艦「ザイトリッツ」(1913年就役)

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巡洋戦艦「ザイトリッツ」の概観:162mm in 1;1250 by Navis)

同艦は「モルトケ級」の改良型であり、「フォン・デア・タン」に始まるドイツ帝国海軍の巡洋戦艦第一世代の最終艦であると言って良いと思います。

改良点としては艦首甲板を一層追加し「モルトケ級」で課題が顕在化した艦首部への波被り等への対策をとり凌波性を改善しています。また主砲を長砲身の50口径11インチ砲(28センチ砲)として火力を強化しています。

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(「ザイトリッツ」(上段)と「フォン・デア・タン」の艦首部の比較:「ザイトリッツ」では甲板を一層追加し凌波性が開演されています)

これらの改良の伴い船体は24500トン級に大型化し、速力はやや低下し26.5ノットとなりました。「フォン・デア・タン」以来の堅牢な設計は継承しています。

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(「ザイトリッツ」の細部:50口径の長砲身主砲を採用しています)

大戦中は他の巡洋戦艦同様、ヒッパー提督の偵察部隊に属し、ドッカーバンク海戦ではヒッパー提督の旗艦として参加し、英海軍の超弩級巡洋戦艦「ライオン」の13.5インチ砲弾2発を被弾しました。そのうちの1発は後部主砲塔を直撃し後部の2基の主砲塔の機能を奪った上、弾庫で火災が発生し装薬が誘爆し始めたため、それ以上の重大な損害を防ぐために注水が命じられましたが、機関が健在であったため生還し、ドイツ艦の堅牢性を実証しました。砲戦を交わした相手の英巡洋戦艦部隊旗艦の「ライオン」は「ザイトリッツ」の主砲弾2発の直撃を受けて大傾斜し行動不能となりました。このため指揮系統に乱れが生じ、英海軍は追撃による戦果を拡大することができませんでした、

ユトランド沖海戦ではヒッパー中将は将旗を最新の「デアフリンガー級」の「リュッツオウ」に掲げましたが、同艦が被弾大破したのち、旗艦を「ザイトリッツ」移し戦闘を継続しました。同海戦では当初「ザイトリッツ」は英海軍の超弩級巡洋戦艦「クイーン・メリー」と砲戦を交わし、13.5インチ砲弾4発を被弾しますが、「デアフリンガー」と共に「クイーン・メリー」に砲火を浴びせ、これを撃沈しています。

その後継続した戦闘で同艦は英海軍の15インチ砲、12インチ砲など21発を被弾し2300トンもの大浸水を被り、特に艦首部が大きく沈降する被害となりましたが、乾舷を高く保持した設計にも助けられ、なんとか生還しています。復旧には3ヶ月を要るす大損害でしたが、ここでもドイツ艦の堅牢さを実証することとなりました。

その後、主砲塔の仰角を上げるなどの改良が行われましたが、海戦への参加機会がなく、休戦を迎え、他艦同様の経緯で抑留先のスカパ・フローで自沈しました。

 

ドイツ帝国海軍巡洋戦艦第一世代の総覧

下の写真は上記の第一世代に装甲巡洋艦ブリュッヒャー」を加え比較したものです。下から「ブリュッヒャー」「フォン・デア・タン」「モルトケ」「ゲーベン」「ザイトリッツ」の順です。

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ドイツ帝国海軍巡洋戦艦で構成されたヒッパー戦隊の出撃

ドッガー・バンク海戦時の偵察部隊の序列

上から旗艦「ザイトリッツ」「モルトケ」「デアフリンガー」「ブリュッヒャー」の順。最後尾となった「ブリュッヒャー」は追撃してくる英国艦隊の集中砲火を浴びて、撃沈されました。

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ユトランド沖海戦時の偵察部隊の序列

上から旗艦「リュッツオー」「デアフリンがー」「ザイトリッツ」「モルトケ」「フォン・デア・タン」の順。旗艦の宿命で「リュッツオー」は多数の命中弾を受け航行不能になり、その後地鎮しています。他の艦もそれぞれ損傷を負いましたが、持ち前の堅牢さのおかげで回線を生き抜きました。

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ドイツ帝国海軍巡洋戦艦第二世代の登場

「デアフリンガー級」巡洋戦艦(1914年から就役:同型艦3隻):各艦のヴァリエーションと、それぞれの変遷も踏まえたモデルのご紹介

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(「デアフリンガー級」巡洋戦艦(=大型巡洋艦:本稿では以降、巡洋戦艦の呼称を使います)の概観:170mm in 1;1250 by Navis :就役時の姿を再現したNavis の新ヴァージョンモデルです。旧モデルのご紹介はもう差し控えますが(長々、愚痴を聞いてもらうことになるので)、ディテイル等が格段に再現性を高めています)

同級はドイツ帝国海軍が建造した最後の巡洋戦艦の艦級です(正確には、ドイツ帝国海軍が完成させた最後の「大型巡洋艦」の艦級、と言うべき?)。

同級は基本的には前級「ザイトリッツ」の改良発展型ですが、これまで継承してきた「フォン・デア・タン」「モルトケ級」等、やや試作的な色合いの続いてきたドイツ帝国海軍巡洋戦艦第一世代の設計とは異なる全く新しい設計となりました。

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(「デアフリンガー級」巡洋戦艦の各部の拡大:艦首尾に背負い式に振り分けられた主砲塔が同級の最大の特徴かも。それまでのドイツ帝国巡洋戦艦に割り当てられた「前衛偵察部隊」の任務に加え、対等な砲撃戦への参加も考慮されている、というのは穿ち過ぎ?)

前級までとは異なる平甲板型の船型を採用し、主砲には50口径12インチ(30.5センチ)速射砲を採用し、これを連装砲塔4基に搭載しています。27000トン弱の船体に石炭専焼缶と重油専焼缶を併載し27ノットの速力を出すことができました。主砲塔数を減らして減じた重量は装甲の増加と水密区画の増加に回され、戦艦並みの防御力を有した設計でした。

搭載された主砲はそれまでの帝国巡洋戦艦が搭載してきた11インチ砲から、口径をあげた50口径12インチ砲で、405.5kgの砲弾を発射し、16200メートルの射程を有している「ヘルゴラント」級以降の弩級戦艦の標準主砲でもありました。ドイツ帝国海軍は英海軍が新たに建造した超弩級戦艦「オライオン級」以降が装備した13.5インチ砲にも、同砲で同等以上に戦えると想定していた節があります。

1914年の改装で主砲仰角が上げられ、20400メートルまで射程が伸ばされました。

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4基の主砲塔は艦首・艦尾に2基づつ背負い式に振り分けて配置されました。それまでのドイツ帝国巡洋戦艦が、主力艦隊の前衛での偵察を考慮した艦首部に主砲塔1基、艦中央部に主砲塔をオフセット配置で2基、艦尾部に主砲塔2基を背負い式で配置した、一見、優速を利用した逃走時の艦尾方向への射撃を重視したように思える配置であったのに対し、正艦首尾にバランスよく火力を配置した設計でした。

 

同型艦3隻

同級は「デアフリンガー」「リュッツオウ」「ヒンデンブルク」の3隻が建造されました。

「デアフリンガー」

一番艦「デアフリンガー」(1914年就役)は就役するとすぐにヒッパー中将の偵察部隊に配属され、ドッカーバンク海戦では3発被弾しながらも前述の「サイトリッツ」と共に英巡洋戦艦艦隊旗艦の「ライオン」に命中弾を与え大破させています。

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(同級一番艦「デアフリンガー」の就役時の概観)

ユトランド沖海戦でもヒッパー部隊として参加し英巡洋戦艦「クイーン・メリー」「インヴィンシブル」の撃沈に貢献しましたが、自艦も大口径砲を21発、被弾し修理に4ヶ月を要するほどの損害を受けました。

 

「リュッツオウ」

1916年3月に就役以降不調だった機関を修理したのち艦隊に就役した二番艦「リュッツオウ」はユトランド沖海戦では巡洋戦艦で構成されたヒッパー中将が指揮する偵察部隊の旗艦となりました。

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(同級ニ番艦「リュッツオウ」の概観)

ユトランド沖海戦では英巡洋戦艦「インヴィンシブル」の撃沈に貢献しましたが、英海軍の大口径弾を24発被弾して大浸水を起こしやがて航行不能となり、ヒッパー中将の司令部を他艦に移乗させた後、しばらく回復に努めましたが断念し、自沈しています。同艦はドイツ帝国海軍が海戦で失った唯一の弩級主力艦となりました。

(下の写真は同級一番艦「デアフリンガー」(上段手前と左下段)と二番艦「リュッツオウ」:1:1250スケールのモデルで見る限り、外観状の相違点は艦橋部の若干の構造の違い程度かと)

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ヒンデンブルク

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(同級三番艦「ヒンデンブルク」の概観:同艦は就役時から遠距離砲戦を想定した射撃指揮所を三脚マストの上に設置していました)

三番艦「ヒンデンブルク」は工期を延長し三脚前檣などを搭載した形で1917年に就役しています。就役後大きな海戦の機会も無く、出撃の回数も数度にとどまっています。休戦後、他の主力艦と同じくスカパ・フローで抑留されましたが、いわゆる6月21日の「艦隊大自沈」に参加して他艦同様自沈しています。

 

改装後の「デアフリンガー

巡洋戦艦「デアフリンガー」はユトランド沖海戦での損傷回復の際、前出の「ヒンデンブルク」に倣い、三脚マスト装備等の大改装を受けています。モデルは大改装以降の概観

「デアフリンガー」もユトランド沖海戦の損傷からの修復時に射程の延長を狙い主砲仰角を上げる改良が加えられました。併せて前檣を三脚化して射撃指揮所をその上に搭載して遠距離砲戦への対応力の向上が図られました。

修復後はさしたる出撃機会のないままに休戦を迎え、他艦同様の経緯で抑留先のスカパ・フローで自沈しました。

(下の写真は改装後の「デアフリンガー」(上段手前・中下段では左列)と「ヒンデンブルク」の比較:前檣の構造と三番主砲塔後ろの構造物の形状の違いがわかります)

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(下の写真は「デアフリンガー」の就役時と改装後の比較:上段と下段左が就役時:目立つのは前檣構造の三脚マストかとその上の射撃指揮所ですが、細かいところでは魚雷防御網のブームが舷側から無くなっています)

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****前出の「魚雷防御網」については、下記に大変わかりやすく解説してくださっている書き込みを見つけましたので、そちらをご参考に。大変面白い!重くて扱いが大変、その割に効果は「?」と言うことだったようですね。

daihonnei.com

 

未成艦:ドイツ帝国海軍超弩級巡洋戦艦(全て計画のみ)

「デアフリンガー級」巡洋戦艦ドイツ帝国海軍が就役させた最後の巡洋戦艦となりましたが、次に紹介する「マッケンゼン級」と「ヨルク代艦級」という2艦級の計画がありました。「マッケンゼン級」については2隻が第一次世界大戦中に進水しましたが、戦況の悪化により工事は継続せず、全てが未成艦となりました。

両級の特徴としてはいずれも「デアフリンガー級」の拡大改良型でありながら、主砲に大口径砲を採用した、いわゆる超弩級巡洋戦艦を目指したものでした。

 

「マッケンゼン級」巡洋戦艦(計画:同型艦4隻、うち2隻は進水までで工事打ち切り)

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同級のNavis新モデルは未入手です(現時点では入手計画はなし)

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(未成巡洋戦艦「マッケンゼン級」の概観:178mm in 1;1250 by Navis)

同級は「デアフリンガー級」をタイプシップとし拡大した平甲板型の31000トン級の船体に、35センチ連装砲4基を搭載するという設計で、29ノットの速力を発揮する計画でした。計画された4隻のうち2隻は1917年に進水まで工事が進んでいましたが、戦況の悪化で工事は中止となりました。

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(「マッケンゼン級」のディテイルの拡大:同級でドイツ帝国海軍は初めていわゆる超弩級巡洋戦艦保有する予定でした。高い機動性とドイツ艦伝統の重厚な防御力を兼ね備えた同級が戦場に投入されていたら、海戦の様相も相当異なっていたでしょうね。そんなことを想像させる大きな主砲塔)

同級は設計段階では38センチ砲を主砲として採用する予定でしたが重量増加を避けて35センチ砲が採用されたという経緯があったようです。

「マッケンゼン級」巡洋戦艦のNavis 新モデル(Nシリーズ):少しモデル調達事情のお話を

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筆者は残念ながら「マッケンゼン級」のNavis社新モデルを入手できていません。上の写真はいつもお世話になっているsammelhafen.deから新モデルの全景を拝借したものですが、ボート類のディテイルや副砲のケースメートの作り込みなどが異なるように見えますね。

これらの入手を巡って少し下世話な話をすると、投稿時点でのebayでの「マッケンゼン」の出品の価格が、Navis旧モデル(Navis 21)の場合、入札開始時の設定価格が€3(500円くらい?落札価格は多分4000円位でしょうか?)であるのに対しNavis新モデル(Navis 21N)の即決価格設定は$80(12500円)となっています。これに送料が上乗せになり、€表記のEUからは英独あたりなら2000円程度(郵便であつかってもらえるから?)で済むのですが、$表記のUSからは宅配扱いで保険等出品者の条件によっては本体価格並みの送料がかかったりします(通常でも5000円はかかる感じだと思います)。出品自体が多くなく、選択肢もあまりないので、なかなか新モデルの入手に至らないのはこういう事情です。旧モデルをもう一隻入手して、あるいは既に保有しているモデルを、失敗覚悟で塗装をする、というのが筆者としては現実的なのかなあ、と考えたりしています。

 

「ヨルク代艦級」巡洋戦艦(計画:同型艦4隻)

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(未成巡洋戦艦「ヨルク代艦級」の概観:182mm in 1;1250 by Navis)

同級は「ヨルク級」装甲巡洋艦2隻、「シャルンホルスト級装甲巡洋艦2隻の代替として計画された巡洋戦艦の艦級で、こういう経緯から「ヨルク代艦(=「ヨルク級の代替艦」)級」と呼ばれています。

「デアフリンガー級」を基本設計として拡大した平甲板型の33000トン級の船体に、38センチ連装砲塔4基を主砲として搭載する構想で、27.5ノットの速力を発揮する設計でした。概観的にはそれまでの二本煙突形態を改め、大きな(筆者の大好きな)集合煙突を採用したことで、上部構造がコンパクトにまとまっている印象があります。いずれも計画のみでした。

(下の写真は「ヨルク代艦級」のディテイルのアップ:大きな主砲塔を搭載し、集合煙突の採用で上部構造がかなりコンパクトな印象を与えます。前出の「マッケンゼン級」同様、このクラスが就役していたら、英独の海戦の様子は相当異なっていたでしょうね。英国の主力艦でこれに対抗できるのは「クイーン・エリザベス級」のみかも)

ドイツ帝国海軍巡洋戦艦第二世代の総覧

英海軍が新たに世に送り出した「インビンシブル級」を始めとする巡洋戦艦への急遽の手当として手探り感の強かったドイツ帝国海軍巡洋戦艦第一世代(「フォン・デア・タン」から「ザイとリッツ」までの系譜)に対して、独自の設計を確立した感のある第二世代。持ち前の重防御設計に大口径主砲の搭載の実現による強力な攻撃力が備われば、英独の海軍力のバランスが大きく変わっていた可能性もある、と想像が膨らみます。

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(上の写真は「デアフリンガー級」以降のドイツ帝国巡洋戦艦第二世代の総覧:手前から「デアフリンガー」「ヒンデンブルク」「マッケンゼン級」「ヨルク代艦級」の順。「マッケンゼン級」「ヨルク代艦」などが揃っていたら、という妄想膨らむカットです)

 

結局、最後は未成艦の話にしてしまいました。模型ならでは、と言うことで・・・。

今回はここまで。

 

次回はどうしましょうか?昨年末に告知した「扶桑級改=16インチ主砲搭載型」の近代化改装については(これはかなり「架空艦」の領域に踏み込んだ話にはなるのですが)、まだ素材が集まりきっていないので少し先、かつかなり大規模な作業になるかと思いますので、新着モデルがあればその辺りのご紹介でも。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

今年もこんな感じで続けてゆきたいと思っていますので、時々見にきていただければ鯛へn嬉しいです。今年もよろしくお願いします。

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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