相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

ドイツ帝国海軍小型巡洋艦の開発系譜(その4−1):近代的小型巡洋艦の建造:レシプロ機関からオール・タービン艦へ

 今回はドイツ帝国海軍期の小型巡洋艦の四回目。

これまで(本稿の「ドイツ帝国海軍小型巡洋艦の開発系譜(その2)」を中心に)ご紹介したように、ドイツ帝国海軍は同艦種の更なる高速化を目指して、早い時期から主機の蒸気タービン化に向けて種々の形式のタービンを試験してきました。

そしてこの時期から、いよいよオールタービン艦の建造に踏み切るのです。

 

「コルベルク級:Kolberg-class」小型巡洋艦(1909年から就役:同型艦4隻):最後の防護巡洋艦

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(「コルベルク級」小型巡洋艦の就役時の概観:104mm in 1:1250 by Navis N:Navis社の新モデル(Nシリーズ)らしい大変細部まで行き届いたモデルです

同級は1906-07年計画で建造された小型巡洋艦で、4隻が建造されました。

上述のように主機を従来の小型巡洋艦のレシプロ機関に変えて全てタービン機関として、2ノットの速力向上に成功しています。搭載するタービンについては決定版には至らず、4隻が全て別形式のタービンを搭載し、引き続きデータを取得しています。

タービンの搭載で船型が拡大し4900トン級となり(前級「ドレスデン級」は4000トン級)、これに30000馬力の出力のタービン機関を搭載し(前級「ドレスデン級」は16000馬力から18000馬力)、26.5ノットの速力を発揮する設計でした(前級「ドレスデン級」は24から25.2ノット)。

艦体の設計は基本的に従来の小型巡洋艦の設計を踏襲し、船内に40ミリ厚の防御甲板を持ついわゆる防護巡洋艦の設計でした。

主砲も新型の45口径10.5センチ単装速射砲12基(前級「ドレスデン級」は40口径10.5センチ単装速射砲10基)に強化され、近接防御用の火器として55口径5.2センチ単装速射砲4基、対艦兵器として水中魚雷発射管2基を搭載していました。

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(上の写真は、「コルベルク級」の主要兵装の配置拡大:45口径10.5センチ単装速射砲は艦橋前と艦尾に各2基づつ並行配置されているほか、舷側のケースメート的な配置4箇所(資料写真で見ると実は完全なケースメートではなく線何に取り込まれたスポンソンのように見えます)と上甲板状に4基、計12基配置されています。さらにこのモデルでは5.2センチ単装速射砲4基も写真の上下段のそれぞれ中央に写っているのがわかるかと)

主砲:45口径10.5センチ単装速射砲

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同砲は従来のドイツ帝国海軍の小型巡洋艦の標準的な主砲であった40口径10.5センチ単装速射砲を強化したもので、17.4キロの弾体を毎分15発の発射することができました。長砲身により早い初速(710m/s)と安定した弾道で

長い有効射程(12700m)を確保していました。

近接防御火器:55口径5.2センチ速射砲

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各国海軍が大型装甲艦への有効な攻撃手段としての魚雷に注目し、これを発射するプラットフォームとして高速小型の水雷艇が開発されました。やがて元々は水雷艇撃退絵お主任務として開発された駆逐艦という艦種が、大型水雷艇の機能を有し、水雷艇以上の脅威となると判明するのですが、このある種、強化型水雷艇である駆逐艦に対抗するためにはそれまでの37mm機砲の射程範囲と火力では威力不足である事は明らかで、ドイツ帝国海軍ではこれにに替えて同砲を装備することとなりました。

同砲は毎分10発の射撃速度を持ち、1.7キログラムの弾体を7000メートル先の目標に届けることができました。

戦歴

4隻は全て第一次世界大戦に参戦し、「アウグスブルク」はロシアに対して最初の砲撃を加えた軍艦となりました。「マインツ」と「ケルン」は大戦のごく初期のヘルゴラント湾での英海軍との海戦で失われ、英海軍の軽巡洋艦に対するドイツ帝国海軍の小型巡洋艦の火力の弱さが露呈する結果となりました。ja.wikipedia.org

「コルベルク」と「アウグスブルク」は共に大戦を戦いぬき、1915−17年の間に上述のように火力不足を露呈した10.5センチ主砲12基を45口径15センチ単装速射砲6基に換装し、加えて水上魚雷発射管2基を追加装備し、機雷100基の搭載施設を増設するなどの改造を受けました。

主砲を15センチ速射砲への換装後の「コルベルク級」(Navis 旧モデル)

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(上の写真は主砲を15センチ単装速射砲に換装した後の「コルベルク級」の姿:by Navis(旧モデルです):換装された15センチ砲の配置がよくわかります)

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(上の写真では主要兵装の配置を拡大:ケースメート的なスポンソンは撤去され、すっきりした軽巡洋艦的なフォルムに変更されています。さらに下段写真では増設された水上魚雷発射管と対空砲2基が見えています。Navis社の旧モデルですので、Nシリーズに比べるとやや甘い細部表現ですが)

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(上の写真は「コルベルク級」小型巡洋艦の就役時と改装後の比較:主砲配置の差、さらによく見ると艦橋前に、その後の艦級と同様の装甲司令塔が設置されていることがわかります)

大戦後、「コルベルク」はフランスに戦利艦として接収され、フランス巡洋艦コルマール」として一時期就役した後、1929年に解体されました。「アウグスブルク」は日本に引き渡され、1922年に解体されました。

 

マグデブルク級:Magdeberg-class」軽(装甲)巡洋艦(1912年から就役:同型艦4隻)

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(「マグデブルク級」小型巡洋艦の就役時の概観:111mm in 1:1250 by Navis N:Navis社の新モデル(Nシリーズ)の標準を満たしたディテイルを再現した素晴らしいモデルです)

同級は1908-09年改革で建造された小型巡洋艦の艦級で4隻が建造されました。

前級「コルベルク級」での機関のタービン化に加え、同級ではさらにいくつかの発展が盛り込まれました。その最も重要なものが防御能力向上のための舷側装甲帯(60ミリ)の追加で、これによりドイツ帝国海軍の小型巡洋艦はそれまでの防護巡洋艦形態から軽装甲巡洋艦(いわゆる軽巡洋艦)へと移行して行きます。

同級で船体は満載時には5500トン級へと拡大され、これに33000馬力級のタービン機関を搭載し27.6ノットの速力を発揮する設計でした。

船体形状も改められ、特に艦首形状が従来の衝角型から航洋性に優れた傾斜型に改められ、舷側には装甲帯の導入により舷窓が廃止されました。さらに艦尾形状も機雷敷設に適応性を高くするため一段低い形状に改められ、多くの点で、従来の同海軍の小型巡洋艦とは異なる艦容となりました。そして同級はその後のドイツ帝国海軍の小型巡洋艦の兵装等の配置の基礎形を作ったと言っていいと思います。

兵装は魚雷口径が50センチに強化された他は前級とほぼ同じでしたが、就役当初から機雷120基の搭載が盛り込まれていました。

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(上の写真は、「マグデブルク級」の主要兵装の配置拡大:45口径10.5センチ単装速射砲の配置は、前級「コルベルク級」に準じていますが、舷側に配置された砲はケースメート式を改め上甲板状に設置されています。上段では艦橋の前に設置された装甲司令塔がわかるかと。

下の写真では、「コルベルク級」(上段の2カット)と「マグデブルク級」(下段の2カット)の艦首形状、艦尾形状の比較を。特に艦尾は「マグデブルク級」(右下)が設計当初から機雷敷設に適した一段下げた構造を盛り込んでいることがよくわかると思います)

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戦歴

ネームシップである「マグネブルク」は第一次世界大戦開戦直後の1914年8月にバルト海で対ロシア作戦に従事中に座礁して失われました。この際に暗号書がロシア海軍に回収され、後の北海での海戦に大きな影響があったと言われています。

「ブレスラウ」は巡洋戦艦「ゲーベン」と共に地中海に配置され、戦争勃発と共に乗員ともども同盟国であったオスマン・トルコ帝国に売却され、そのままトルコ海軍巡洋艦「ミディリ」に改名して再就役しました。1918年にインブロス海戦に参加中に英海軍の機雷に触雷し失われました。 

シュトラスブルク」と「シュトラールズント」は本国艦隊に所属して主要海戦に参加し、大戦を生き延びました。1915年から16年位かけて先述の主砲の火力不足への対策として、10.5センチ主砲12基を45口径15センチ単装速射砲7基、加えて45口径8.8センチ単装速射砲2基に換装する改装を受けています。

大戦後「シュトラスブルク」はイタリアに引き渡され、イタリア海軍巡洋艦「タラント」と改名し再就役、第二次世界大戦に参加し、大戦末期(1944年)に連合軍の爆撃で失われました

シュトラールズント」は大戦後フランスに引き渡され、同海軍の巡洋艦「ミュルーズ」と改名され再就役し、1925年に現役を引いた後も1933年まで使用され、1935年に解体されました。

小型巡洋艦の進化

下の写真はレシプロ機関搭載防護巡洋艦の最終形である「ドレスデン級」(手前)とタービン機関搭載防護巡洋艦「コルベルク級」、さらに軽装甲巡洋艦マグデブルク級」(奥)の比較を。ドイツ帝国海軍の小型巡洋艦は「マグデブルク級」から、新たな進化のフェイズに入ったと言っていいと考えています。

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カールスルーエ級:Karisruhe-class」軽巡洋艦(1914年から就役:同型艦2隻)

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(「カールスルーエ級」小型巡洋艦の就役時の概観:115mm in 1:1250 by Navis N:Navis社の新モデル(Nシリーズ)らしい再現性の高いモデルです)

同級は1910年計画で建造された軽巡洋艦で2隻が建造され、第一次世界大戦勃発期の最新鋭小型巡洋艦でした。前級「マグデブルク級」の改良型で、船体構造、兵装、防御方式などは全球に準じています。

速力向上を狙ってボイラーとタービンの形式が海軍型に統一され38000馬力の機関を6200トン級の船体に搭載し、27.8ノットの速力を発揮する設計でした。

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(上の写真は、「カールスルーエ級」の主要兵装の配置拡大:45口径10.5センチ単装速射砲の配置など、ほぼ「マグデブルク級」を踏襲していることがわかります。装甲司令塔が艦橋の前に設置されています)

戦歴

カールスルーエ」は就役直後にパナマ運河の開通式典に派遣されていましたが、そのまま第一次世界大戦の海戦を迎え、すぐさま西インド諸島方面で通商破壊戦を開始しました。3ヶ月で商船17隻(76600トン)を撃沈又は拿捕、という優れた戦果を上げましたが、1914年11月、爆発事故で失われました。

ロストック」は就役後に本国艦隊に所属し、1916年5月のユトランド沖海戦に第一水雷戦隊旗艦として参加、2隻の英駆逐艦撃沈に寄与しましたが、続く夜戦で英駆逐艦の魚雷攻撃で損傷、英艦隊による拿捕を避けるため味方魚雷で処分されました。

 

「グラウデンツ級:Graudenz-class」軽巡洋艦(1914年から就役:同型艦2隻)

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(「グラウデンツ級」小型巡洋艦の主砲換装後の概観:117mm in 1:1250 by Navis N:Navis社の新モデル(Nシリーズ)らしい大変細部まで行き届いたモデルです

同級は1911年計画で建造された小型巡洋艦で1隻が建造されました。水密区画の構造、に従属の範囲等が異なるのみで兵装・防御・機関・船体の大きさなどはほぼ前級を踏襲した「改カールスルーエ級」と言っていい艦級でした。

外観的な相違点としては艦尾部の主砲配置を並列から背負い式に改めた点と、ボイラー数を減じたことから煙突が従来の4本から3本になった点でした。

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(上の写真は、「グラウデンツ級」の主砲換装後の主要兵装の配置拡大:45口径15センチ単装速射砲は艦首に1基、艦橋両脇に1期ずつ、後檣両脇に1基ずつ、そして艦尾に背負い式に2基配置されています。また中段写真では両舷に設置された魚雷発射管2基がよくわかります。艦橋前の装甲司令塔も確認できます)

戦歴

「グラウデンツ」「レーゲンスブルク」共に第一次世界大戦海戦後に就役し、本国艦隊に所属し偵察部隊として作戦に従事しました。1916年から17年にかけて、主砲の火力不足への対策として、10.5センチ主砲12基を45口径15センチ単装速射砲7基、加えて45口径8.8センチ単装速射砲2基に換装する改装を受けています。

両艦は大戦を生き抜き、戦後は「グラウデンツ」はイタリアに引き渡されイタリア巡洋艦アンコーナ」と改名され、1937年まで使用されました(1938年解体)。

レーゲンスブルク」はフランスに引き渡され、フランス巡洋艦ストラスブール」と改名され、1936年以降は兵舎船として使用されました。第二次世界大戦中、ドイツ占領下でも兵舎船として使用された後、1944年ロリアンUボート基地を守るために港内に沈められました。

 

ということで今回はこの辺りで。

第一次世界大戦緒戦のヘルゴラント海戦でドイツ帝国海軍の小型巡洋艦の砲力の劣勢が露呈し、15センチ速射砲を搭載する軽巡洋艦群がこの後登場してゆきます。そのご紹介を時間に予定しています

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