今回は最近の新着モデルと、その周辺のシュラウド再現のアップデートのご紹介を。
まずはドイツ帝国海軍の黎明期の巡洋艦で、前回の投稿ではモデルが欠けていたものを入手したのでそちらのご紹介と、その周辺でシュラウド再現法をアップデートしていますので、そちらのご紹介を。
今回の投稿の元ネタはこちらにあります。(こちらもモデル写真の差し替え等、行なっておきます)
上掲の投稿ではドイツ帝国の成立と海外植民地の拡大に伴い、植民地警備と居留民の保護を目的として建造された巡洋艦の艦級のご紹介をしています。
その中でモデルが欠けていた三等巡洋艦「ゲフィオン」のモデルが到着しましたので、まずはそちらから。
三等巡洋艦「ゲフィオン:Gefion」(1894年就役:同型艦なし)
(三等巡洋艦「ゲフィオン」の概観:88mm in 1:1250 by Yorck :前回投稿ではSpidernavyの未保有モデルの写真を掲載していましたが、Yorck製のモデルを入手しました。ややディテイルの再現は異なりますが、細部まで行き届いたモデルだと思っています。前檣と後檣をコンバットマスト風に少し手を入れてあります)
同艦は1891年計画で建造された「イレーネ級」に続く防護巡洋艦で、同型艦はありません。限定的な予算から、同艦の設計時に、ドイツ帝国海軍がのちに「ガツェレ」級小型巡洋艦で具現化できた艦隊随伴偵察艦と植民地警備艦の両機能を期待した設計にしたために、やや中途半端な仕上がりとなったと言っていいと思います。
船体は「イレーネ級」をやや小型化した4500トン級として、これに9800馬力の強力な機関を搭載し20ノット強の速力を発揮できました。
「イレーネ級」に続き船内に40mm厚の防御甲板を貼り機関・弾薬庫等の主要部を防御する防護巡洋艦の形式を踏襲し、砲兵装としては設計当初は15センチ単装砲6基を装備する予定でしたが、最終的には新型の35口径10.5センチ単装速射砲10基、40口径5センチ単装速射砲6基、加えて魚雷発射管2基(水上)を装備していました。
(三等巡洋艦「ゲフィオン」の主要兵装等の配置拡大:その後の一連の同海軍の小型巡洋艦の標準的な兵装配置がおおよそ形作られつつあるのがわかるかと:写真中段のカットでほぼ中央におそらく水上魚雷発射管が写っています)
同艦は1897年に東洋艦隊に配属され、義和団の乱鎮圧戦に参加しています。1901年には本国に戻り近代化改修ののち予備艦となりました。第一次世界大戦勃発後、再就役の予定がありながらも長く兵舎船として使われました。大戦後、1920年に売却され民間の貨物船に改造されましたが、あまり好評価ではなく、1923年に解体されました。
そして「ブッサルト級」四等巡洋艦のMercator製モデルの新ヴァージョン(多分)が2種類手に入ったので、こちらをご紹介。
「ブッサルト級:Bussard-class」四等巡洋艦(1890年から就役:同型艦6隻)
(「ブッサルト級」四等巡洋艦の概観:64mm in 1:1250 by Mercator:Mercator社の新モデル。帆装を展開した状態を再現しています。兵装の配置などもしっかり表現されているように思います。さらに筆者のいわゆる「新方式」でシュラウドや索具(リグ)の造作を加えてみました)
同級は「シュヴァルべ級」の拡大改良型として1888年計画で6隻が建造されました。
前級から拡大した1800トン級の船体を持ち、2800馬力のレシプロ蒸気機関を搭載し、16ノット前後の速力を出すことができました。備砲は前級と同じく35口径10.5センチ単装砲8基でしたがたが、二番艦以降は同口径の新型速射砲に改められ火力が強化されています。他には近接火器として37mm機砲5基を搭載し、加えて魚雷発射管2基も装備していました。
(下の写真は、「ブッサルト級」の主要兵装の配置拡大:35口径10.5センチ速射砲は舷側のスポンソンに配置されています)
同級はドイツ帝国海軍で帆装を設計に組み混んだ最後の艦級となりました。
Marcatorの新モデルについて
新旧を比較するとモデル全体のフォルムについて全面的な見直しが行われた様に感じます。
(上の写真は本稿で前回ご紹介したMercator製の旧モデルです(シュラウドの再現は旧来のネット素材利用のままです)。新モデルの写真と日買うしていただくと、ディテイルの再現性が新モデルではかなり充実していることがわかるかと。これまで筆者のコレクションではNavis製モデルのヴァージョン・アップの話は再々してきていますが、ここにきて他社でも同様の状況が発生してくるとは・・・)
寸法には大きな差異はないものの、旧モデルに比べ細っそりとした巡洋艦らしさが表現されている様に思います。もちろん新モデルの方が「それらしさ」は再現できている様に思います。あまりこれまでNavis・Neptun製モデル以外でヴァージョンアップを意識したことはなかったのですが、今後は少し気をつけてみることにします。
近代化改装(1895〜1909年)
同級は就役後種々の金譜代か改装を受けましたが、「コンドル」と「ファルケ」を除く4隻は補助帆装の形式をさらに軽くして2檣のトプスル・スクーナ形式に改められました。
(「ブッサルト級」四等巡洋艦6番艦「ガイアー」の近代化改装後のモデル by Mercator(新モデルです):下では就役時と改装後(下段)の比較:改装後も帆装を展開している姿が必要だったんでしょうか?モデルとしては格好良いので何の文句もありませんが)
モデルについての解説: 補助帆装をさらに軽く2檣形式にした状態です。一見、マストの数の変更だけを再現しているように見えますが、マストの位置を微妙に変更し、関連する上部構造物にも差異が認められます。よくわかるのは艦橋の形状と主砲用の舷側のスポンソンが設定されていないところでしょうか。これは近代化で廃止されたわけではなく、「ガイアー」では舷側のスポンソンは最初から設定されていませんでした。
(下の写真は「コルモラン級」の就役時と近代化改装後(下段の2カット)のモデルの比較:マストの位置が微妙に異なっていて、それに伴い上部構造物の配置なども異なっています。また艦橋の構造、舷側のスポンソンの有無など、細部にこだわりのあるヴァリエーションになっていると思います)
同級は就役後は、当初の設計通り海外植民地で広範囲で活動しています。「ゼーアドラー」は1900年の義和団の乱の鎮圧に、「コンドル」「コルモラン」は1911年のカロリン諸島での反乱鎮圧などに貢献しました。「ブッサルト」と「ファルケ」は比較的早い時期に退役し1912年に解体されていますが、残りの艦は砲艦籍に移籍し、海軍で活動を継続しました。「コルモラン」と「ガイヤー」は第一次世界大戦勃発時には太平洋にあって、「コルモラン」は機関が不調のため青島で自沈し、「ガイヤー」は太平洋で通商破壊戦を展開したのち、シュペー提督の東洋艦隊との合流を目指しましたが、燃料切れでハワイ(米国)に入港し、そこで抑留され、アメリカ軍艦「シュルツ」として再就役しました。1918年に貨物船と衝突し沈没しています。「ゼーアドラー」は第一次世界大戦中に爆発事故で失われ、唯一「コンドル」は大戦を生き延び1921年に解体されました。
Mercator製モデル vs Helge Fuscher製モデル(下段)
写真はMercator製の「ガイヤー」とHelge Fischer製の「コルモラン」を比較すると、上述のとおり舷側のスポンソン以外は大変よく似た概観かと。少し穿った見方をすると、Helge Fischer製モデルがMercator製モデルの見直しのきっかけになったのかも、などと考えてしまいます。
さらにもう一つ、「シュヴァルべ級」四等巡洋艦のセミ・スクラッチモデルのシュラウド再現をアップデート。
「シュヴァルべ級:Schwalbe-class」四等巡洋艦(1888年から就役:同型艦2隻)
(モデルは未保有:どうもモデルは市販されていないようです。モデル検索ではいつも頼りにさせていただいているsammemhafen.deでも見当たりません。試算では50mm程度のモデルになりそうです。以前ならShapewaysでも探すのですが・・・:写真はWikipediaより拝借しています:下のカットは今回筆者が製作したセミスクラッチが、どこまでいけているのかを検証するための・・・。舳先の形状と舷側のスポンソンが大きすぎる。かな?)
1880年代にドイツ帝国悪軍は2種類の小型巡航戦闘艦を建造していました。そのうちAviso(=通報艦)については本稿でも以前の投稿でご紹介しましたが、こちらは主として艦隊に随伴してその連絡・護衛等を務める高速小型艦で雷装を有し時として水雷艇部隊の指揮艦としても活動しました。
そしてもう一方が今回投稿の冒頭で記述した、当時拡大基調にあった海外植民地での警備活動に主眼を置いた艦種で、長い航続距離を持ち有力な火力を有する巡航性に優れた艦が要求されました。従来、こちらは航続距離の確保を念頭に置き帆装での航行に重点を置いたコルベット艦がその任に当たっていましたが、1886−87年度計画で建造された「シュヴァルべ級」は機走を主とし、これに補助帆装を設けた設計で、同海軍で初めて「巡洋艦」という艦種類別を用いられた艦級でした。
同級は1300トン級の船体に1500馬力のレシプロ蒸気機関を搭載し、14ノット強の速力を発揮する設計でした。35口径10.5センチ単装砲8基を主砲として搭載し、他に近接火器として37mm機砲を5基搭載していました。
(写真は市販モデルが見当たらないという情報を背景として、筆者が制作した「シュヴァルべ級」らしき艦の概観:50mm in 1:1250 by semi-scratched based on WTJ : WTJ製のロシア海軍の砲艦「コレーツ」のモデル(今はカタログ落ちしているようです)をベースにしています。今回はこのモデルのシュラウドと索具を、新方式で再現してみました:下は同モデルの旧来手法でのシュラウド再現をしたものの写真を再掲)
同級は就役後ほとんどの時期を海外派遣任務に従事し、1890年には東アフリカでの反乱鎮圧、1900年には清国の義和団の乱に対応した八カ国同盟軍に参加しています。1911年までに巡洋艦籍からは外れましたが、その後も練習艦、標的艦、砲艦等の役割を担い、第一次世界大戦後に売却され1922年に解体されています。
ということで、今回はドイツ帝国海軍の巡洋艦(黎明期)の新着モデルとその関連で本稿で前回投稿から導入した特に帆装艦でのマスト周りでのディテイルアップ(シュラウドと索具(リグ)の展張)のご紹介でした(前述しましたが今回投稿の内容は関連投稿にも反映されるようにしておきます)。
今回の新方式のマスト周りのディテイルアップはかなり作業時間をかけることになっています。ですので少しづつ気長に取り組んでいきたいと思っています。
次回はこの関連で、今回同様に新方式でのマスト周りディテイルアップに着手している日本海軍黎明期の軍艦などのお話を予定しています。
もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。
模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。
特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。
もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。
お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。
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