相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

夏休み:新着モデルの完成:「超甲巡」!

本稿で前回紹介した「超甲巡」が完成!

今回は「超甲巡」を中心に、「本稿「大好きな小艦艇特集」の回で、未入手だったモデルがいつか届いたので、そちらも地味に紹介します。

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超甲巡」(超甲型巡洋艦

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(直上の写真は、「超甲巡」の概観。198mm in 1:1250 by Tiny Thingamajigs:  マストをプラロッドで追加した他は、(珍しく?)ストレートに組み立てました。元々が素晴らしいディテイルで、手をいれるとしたら「65口径長10センチ高角砲(九八式十糎高角砲):いわゆる長10センチ高角砲」のディテイルアップくらいですが、少し大ごとになりそうなので、そちらはいずれまた)

 

65口径長10センチ高角砲(九八式十糎高角砲)の話

65口径長10センチ高角砲(九八式十糎高角砲)は、日本海軍の最優秀対空砲と言われた高角砲で、18700mの最大射程、13300mの最大射高を持ち、毎分19発の射撃速度を持っていました。これは、戦艦、巡洋艦、空母などの主要な対空兵装であった12.7cm高角砲(八九式十二糎七粍高角砲に比べて射程でも射撃速度でも1.3倍(射撃速度では2倍という数値もあるようです)という高性能で、特に重量が大きく高速機への対応で機動性の不足が顕著になりつつあった12.7cm高角砲の後継として、大きな期待が寄せられていました。

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上記、射撃速度を毎分19発と記述していますが、実は何故か揚弾筒には15発しか搭載できず、従って、15発の連続射撃しかできなかった、ということです。米海軍が、既に1930年台に建造した駆逐艦から、射撃装置まで含めた対空・対艦両用砲を採用していることに比べると、日本海軍の「一点豪華主義」というか「単独スペック主義」というか、運用面が置き去りにされる傾向の一例かと考えています。

 

モデルのディテイルアップの話に戻すと、正直にいうと、現時点で筆者にとって満足のいくディテイルが再現された「長10センチ高角砲」は、Neptune社製の「秋月級」駆逐艦に搭載されているものくらいしか、思い当たりません。

実はこれまでにも、本稿では「架空防空巡洋艦」の回などで、同砲は「架空防空巡洋艦」の主砲として登場しています。

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同艦は長10センチ高角砲の連装砲塔を12基搭載しており、併せて準同型艦として同回に紹介した「汎用軽巡洋艦」も同連装砲を6基搭載しています。これらも含めディテイルアップのために換装しようとすると、Neptune製の「秋月」を7隻つぶさねばならず、ちょっと現実的な対処法ではない。

既に皆さんもある程度予想がつくと思いますが、筆者の場合、こういう時は「困った時のShapeways 」ということになるのですが、なんと、実は Shapewaysにはちゃんと連装砲塔のセットがあるのです。

www.shapeways.com

16砲塔で1セットですのでこれが2セットあれば、良い、という計算です。

ということで、早速入手してみたのですが、今度はNeptune製「秋月」の砲塔よりかなり小さい。かつ、砲身を自作しなくてはなりません(まあ、砲身の自作の方はプラロッドか真鍮線でチマチマと作れば良いので、時間はかかりますが、なんとかなりそう(楽しいしね)なのですが)。何れにせよ、全砲塔の換装を視野に入れると、少し結論を先延ばし、ということで。

 

超甲巡」の話

行きがかり上とはいえ、話が同艦級の搭載した「長10センチ高角砲」に終始しましたが、そもそも「超甲巡」についても少しご紹介しておきましょう。

超甲巡」とは「超甲型巡洋艦」の略称で、いわゆる「甲型巡洋艦重巡洋艦」を超える性能の「巡洋艦」を意味します。

マル五計画、マル六計画で建造が計画されたいわゆる「If艦」です。一応、設計スケッチは残っているようなので「未成艦」と言っても良いのかもしれません。3万トン級の船体に30センチクラスの主砲を3連装砲塔で3基搭載し、対空砲は長10センチ高角砲を連装砲塔で8基という強力な火力を誇っています。33ノットの速力を発揮する予定だった、ということだから、空母機動部隊の直営としても活躍できたでしょうね。

 

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そもそもの同艦級の設計構想は、日本海軍の「艦隊決戦」構想の一環として、本稿でも何度も取り上げている「漸減邀撃作戦」での水雷戦隊による夜戦の中核艦とするものでした。

同作戦構想では、敵主力艦隊に対し日本海軍自慢の酸素魚雷を搭載した重巡洋艦部隊、水雷戦隊、総数約80隻を展開し夜戦が展開されます。この際にこれらを総指揮し、あるいは敵主力艦隊の前衛の警戒戦を突破する有力な砲力を有した艦として、当初「金剛級高速戦艦が当られる予定でした。しかし同艦級は、ご承知のように日本海軍の主力艦の中では最も艦齢が古く、優れた基本設計のために数次の改装を経て、なお一線の高速戦艦として有力な存在ではあったものの、25年の艦齢を考慮すると、これに代わる有力艦級の整備は急務でした。

こうして生まれたのが「超甲巡=超甲型巡洋艦」の設計構想で、水雷戦隊に帯同できる高速性と「艦隊決戦」の仮想敵である米艦隊が急速に整備しつつあった大型の重巡洋艦軽巡洋艦を凌駕する砲戦力とこの砲戦に耐えられる防御能力を有した艦となる予定でした。

同時期に各国海軍が建造した「シャルンホルスト級」「ダンケルク級」、とりわけ米海軍が建造した「アラスカ級大型巡洋艦を強く意識したもので、6隻が建造される予定でした。

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(直上の写真:「超甲型巡洋艦超甲巡」の新型31センチ主砲(上段)と65口径長10センチ高角砲(九八式十糎高角砲)

 

その後、海軍戦力の重点が航空優位に移行し、従来の「艦隊決戦」のあり方に変化が現れると、同艦級は「金剛級高速戦艦同様、その高速性から空母機動部隊の直衛戦力としての期待をも担うことになります。

こうして有力な新設計の31センチ主砲(設計上は「金剛級」の36センチ主砲を凌駕する性能だったと。製造されていないので、実力の程はわかりませせんが)と並び、帝国海軍の最優秀対空砲である「長10センチ高角砲」が搭載されました。

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 (直上の写真:巡洋艦の艦型比較。下から「改鈴谷級=伊吹級」重巡洋艦、「蔵王級」重巡洋艦、「超甲型巡洋艦超甲巡」:「超甲巡」の主砲の大きさが目立ちます)

 

佐藤大輔氏の短編集「仮想・太平洋戦史 目標、砲戦距離四万!」に、確か同級の活躍するお話がありましたね。

www.amazon.co.jp

 

米海軍大型巡洋艦アラスカ級

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(直上の写真「アラスカ級大型巡洋艦の概観。194mm in 1:1250 by Hansa)

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前述の「超甲巡」のライバル、「アラスカ級大型巡洋艦です。30000万トン級の船体に主砲として「1939年式 Mark8型 30.5cm(50口径)砲」を3連装砲塔3基、そして米海軍ではお馴染みの5インチ両用砲の連装砲塔を6基搭載していました。空母機動部隊の直衛を意識して33ノットの高速を有しています。6隻が計画され、2隻が完成しています。

主砲として搭載された「1939年式 Mark8型 30.5cm(50口径)砲」は、12インチの口径ながら、米海軍の戦艦の標準主砲であった14インチ砲と同等の重量の砲弾を発射できるという優秀砲でした。(この辺り、上述の「超甲巡」に搭載予定であった新型31センチ砲と良く似ています)

この両級が、実際に砲火を交えていたら、どんな展開になったんでしょうね。

(直下の写真:上から「シャルンホルスト級」「アラスカ級」「超甲型巡洋艦」の艦型比較。各国が異なる狙いで類似性のある設計をしていたことが興味深いですね) 

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さらに「シャルンホルスト級」と「ダンケルク級」、本稿でのご紹介を以下に再掲しておきます。(まだ、主力艦の発達史をやっていた頃なので、ちょっと文体が違うけど、ご容赦を。併せて皆さんは大丈夫だとは思うのですが、架空の記述など含まれているので、そちらもご注意、ご容赦を)

 

ドイツ再軍備宣言と英独海軍協定、そして新戦艦時代の開幕

ヴェルサイユ体制による重度の賠償責任等により、ドイツ経済は疲弊の極みにあり、その混乱の中で1934年、ヒトラーが首相と大統領の両機能を統合し国家元首に就任し政権を握る。

1935年、ヒトラーヴェルサイユ条約の軍事制限条項を破棄し再軍備を宣言する。

同年、再軍備は受け入れざるを得ないとしながらも、その拡張に歯止めをかけるべく英独海軍協定が結ばれ、総トン数で英海軍の35%、潜水艦保有も英海軍の45 %まで保有が認められた。

これにより戦闘艦の建造制約が名実ともになくなり、ドイッチュラント級装甲艦の強化型として建造される予定で、フランスのダンケルク級戦艦への対抗上から設計を大幅に見直されていたシャルンホルスト級は、30,000トンを超える本格的な戦艦として起工された。

 

シャルンホルスト級戦艦 - Wikipedia

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(1939-, 31.500t, 31.5 knot, 11in *3*3, 3 ships, 191mm in 1:1250 by Hansa)

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シャルンホルスト級戦艦は当初、前述のように、フランス海軍によって建造されたダンケルク級戦艦に対抗するべく誕生した。この為、主砲は、当初15インチ砲の搭載を想定したが、建造時間を考慮しドイッチュラント級と同様の11インチ砲3連装砲塔を1基増やし9門に増強するにとどめた。一方でその装甲はダンケルク級の33センチ砲弾にも耐えられるものとし、ドイツ海軍伝統の防御力に重点を置いた艦となった。

速力は重油燃焼高圧缶と蒸気タービンの組合せにより、31.5ノットの高速を発揮した。

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(シャルンホルスト級3隻:手前からグナイゼナウ、マッケンゼン、シャルンホルスト)手前味噌的な記述になることを恐れずに言うと、本級はバランスのとれた美しい外観をしている、と感じている。

 

15インチ主砲への換装により、本格的戦艦に

のちに、11インチ主砲はビスマルク級戦艦と同様の15インチ連装砲に置き換えられ、攻守にバランスのとれた、加えて31.5ノットの高速力を持つ優秀艦となった。

特に31.5ノットの高速性能は、当時、ヨーロッパにはこれを捕捉できる戦艦がなく、ヨーロッパ諸国の危機感を強く刺激した。

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(主砲を15インチ連装砲塔に換装後のシャルンホルスト級3隻:手前からシャルンホルストグナイゼナウ、マッケンゼン)

出典元はこちら↓。

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仏新造戦艦ダンケルク級による波紋 

ダンケルク級戦艦 - Wikipedia

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本級の建造に当たっては、確かに前述のドイッチュラント級装甲艦への即効性のある対抗策としての側面も強かったが、第一次世界大戦前のプロヴァンス級以来、久々の新造戦艦の建造にあたり、攻撃力、防御力、機動力をどのようにバランスをとりながら具現化するかと言う命題に対する、次期本格主力艦建造への実験艦的な性格が強い。

武装としては、新設計の13インチ(33センチ)砲を、未完に終わったノルマンディー級戦艦以来のフランス海軍悲願の4連装砲塔2基に、艦首部に集中的に搭載し、あわせて発展著しい航空機の脅威に備えて、世界初となる水上戦闘にも対空戦闘にも使用できる13センチ両用砲16門を、連装砲塔2基、4連装砲塔3基の形で搭載した。

艦種名に正式に「高速戦艦」の分類が割り当てられ、公称30ノット、実際には31.5ノットの高速を発揮することができた。機関の搭載にも新基軸が見られ、シフト配置を採用することにより、被弾時の生存性を高めるなど、種々の新機軸への取り組みが見られた。

(1937-, 26,500t, 31.5knot, 13in *4*2, 2ships, 170mm in 1:1250 by Hansa)

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本艦は過渡期的なやや小ぶりの船体を除けば(それでもフランス海軍がそれまでに建造した最大の戦艦である)、高い機動性、集中防御の思想、対空戦闘への対応力、ダメージコントロールへの新たな工夫など、それまでの戦艦の概念を一新するものであり、「新戦艦」の幕開けとなった戦艦であると言っていいであろう。

 

本級の登場は諸国海軍の戦艦整備政策に大きな影響を与え、前回述べたようにドイツ海軍はドイッチュラント級4番艦、5番艦を、30,000トンを超える本格的なシャルンホルスト級戦艦として設計変更の上建造した。

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(直上の写真は、ドイッチュラント級装甲艦、ダンケルク級戦艦、シャルンホルスト級戦艦の艦型比較:手前からドイッチュラント級ダンケルク級シャルンホルスト級

 

出典元はこちら↓。

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小艦艇部門の新着モデル

最近入手した小艦艇モデル2点のご紹介です。

 

まずは「第7号級」掃海艇 

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(直上の写真「第7号級」掃海艇の概観。59mm in 1:1250 by Trident 前部マストをプラロッドに変更)

「友鶴事件」「第四艦隊事件」等を経て、設計された掃海艇です。艦型は復原性・船体強度などの前級が抱えていた問題を考慮して、異なる外観となっています。しかしその任務想定が艦隊の前路開削や、上陸地点の航路掃海等、敵前での業務を想定していたため、船体の大きさに対して大きな砲力を有していました。(630トン、12cm平射砲3門、20ノット)

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(直上の写真:「第7号級」掃海艇と本稿では既出の「第19号級」掃海艇との艦型比較。直下の写真:主砲が「第7号級」掃海艇では平射砲であるのに対し(上段)、「第19号級」ではM型砲架の採用により、仰角が挙げられているのが分かります) 

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第51号級駆潜艇

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直上の写真「第51号級」駆潜艇の概観。44mm in 1:1250 by Trident 前部マストをプラロッドに変更)

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マル二計画(1933年度)で計画された小型駆潜艇です。

150トンの船体に40ミリ機関砲と爆雷18個を搭載し、23ノットのこの艦級としては比較的高速の速力を有していました。主として主要海軍根拠地の防備隊で使用され、同級3隻全てが終戦時に現存していました。

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(直上の写真:駆潜艇の系譜。左から「第1号級」駆潜艇、「第51号級」駆潜艇、「第13号級」駆潜艇

 

ということで、今回はこの辺りでおしまい。

さて次はどうしようかな。

何度かお話に出ている日米の艦隊駆逐艦の系譜については、現在、着々と準備中です。もう少し?何せ数が多いので。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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