相州の、1:1250スケール艦船模型ブログ 主力艦の変遷を追って

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

第19回 ドイツ再軍備と新戦艦の時代の開幕

ドイッチュラント級ポケット戦艦の登場と、仏ダンケルク級戦艦

前回紹介した通り、ヴェルサイユ条約下で戦力を限定されたドイツ海軍は、その保有する前弩級旧式戦艦の代艦として、その制約の範囲内でドイッチュラント級装甲艦を建造した。

重巡洋艦並みの1万トンの船体に、重巡洋艦を圧倒する11インチ砲6門を搭載し、ディーゼル機関の採用により標準的な戦艦には捕捉できない27-28ノットの速力と長大な航続力を保有する同艦は、小さな船体に搭載した強力な武装からポケット戦艦の通称で名声を馳せたが、その実情は、可能な限り戦闘艦との戦闘を避け神出鬼没に通称路を襲う、理想的な通商破壊艦と言えた。

ドイッチュラント級装甲艦 - Wikipedia

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(1933-, 10,000t, 27-28 knot, 11in *3*2, 3 ships, 148mm in 1:1250 by Hansa)f:id:fw688i:20190324160045j:image

 この画期的な戦闘艦の建造は、周辺諸国を大いに刺激した。特にフランスは、その長大な航続距離に自国の植民地との通商路に対する重大な脅威を覚え、これに対抗するためと称して、ダンケルク級戦艦を起工した。

 

仏新造戦艦ダンケルク級による波紋 

ダンケルク級戦艦 - Wikipedia

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本級の建造に当たっては、確かに前述のドイッチュラント級装甲艦への即効性のある対抗策としての側面も強かったが、第一次世界大戦前のプロヴァンス級以来、久々の新造戦艦の建造にあたり、攻撃力、防御力、機動力をどのようにバランスをとりながら具現化するかと言う命題に対する、次期本格主力艦建造への実験艦的な性格が強い。

武装としては、新設計の13インチ(33センチ)砲を、未完に終わったノルマンディー級戦艦以来のフランス海軍悲願の4連装砲塔2基に、艦首部に集中的に搭載し、あわせて発展著しい航空機の脅威に備えて、世界初となる水上戦闘にも対空戦闘にも使用できる13センチ両用砲16門を、連装砲塔2基、4連装砲塔3基の形で搭載した。

艦種名に正式に「高速戦艦」の分類が割り当てられ、公称30ノット、実際には31.5ノットの高速を発揮することができた。機関の搭載にも新基軸が見られ、シフト配置を採用することにより、被弾時の生存性を高めるなど、種々の新機軸への取り組みが見られた。

(1937-, 26,500t, 31.5knot, 13in *4*2, 2ships, 170mm in 1:1250 by Hansa)

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本艦は過渡期的なやや小ぶりの船体を除けば(それでもフランス海軍がそれまでに建造した最大の戦艦である)、高い機動性、集中防御の思想、対空戦闘への対応力、ダメージコントロールへの新たな工夫など、それまでの戦艦の概念を一新するものであり、「新戦艦」の幕開けとなった戦艦であると言っていいであろう。

 

本級の登場は諸国海軍の戦艦整備政策に大きな影響を与え、前回述べたようにドイツ海軍はドイッチュラント級4番艦、5番艦を、30,000トンを超える本格的なシャルンホルスト級戦艦として設計変更の上建造した。

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(直上の写真は、ドイッチュラント級装甲艦、ダンケルク級戦艦、シャルンホルスト級戦艦の艦型比較:手前からドイッチュラント級ダンケルク級シャルンホルスト級) 

 

イタリア海軍による弩級戦艦大改装

またイタリア海軍は1915年建造の弩級戦艦コンテ・ディ・カブール級、およびその改良型であるアンドレア・ドリア級の各2隻を大改装し、ダンケルク級に対抗するものとした。

両級とも、その改装は徹底したもので、主砲をボーリングにより30センチから32センチに大口径化し、一方で21.5ノットから28ノットへの高速化のための機関増設のスペース確保のために3番砲塔を撤去した。さらに副砲の砲塔化、対空兵装の強化などを行なった。さらに艦種構造の延長、密閉式艦橋の導入など、艦型も原型をほぼ留めぬほど手を入れられ、直下の写真のように新造戦艦といっても良いほどに異なる外観を得た。

 

コンテ・ディ・カブール級戦艦 - Wikipedia

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(直上の写真:原形を留めぬほどの改装:上段、改装前、下段、改装後)

(改装前:23,100t, 21.5knot, 12in *3*3+ 12in *2*2, 3ships) (140mm in 1:1250 by Navis) 

(1937- 改装後:28,800t, 28knot, 12.6in *3*2+ 12.6in *2*2, 2ships) (150mm in 1:1250 by Neptune) 

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アンドレア・ドリア級戦艦 - Wikipedia

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(直上の写真:上段、改装前、下段、改装後)

(改装前: 23,000t, 21knot, 12in *3*3+12in *2*2, 2 ships) (140mm in 1:1250 by Navis)

(1940- 改装後:28,882t, 28knot, 12.6in *3*2+12.6in *2*2, 2 ships) (150mm in 1:1250 by Neptune)

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英海軍による巡洋戦艦の近代化改装

英海軍はワシントン海軍軍縮条約により、タイガー、レナウン級2隻、フッドの計4隻の巡洋戦艦保有し続けていた。しかし、その防御力の脆弱性から、タイガーは1931年に除籍され、レナウン級もその存続が懸念されたが、ドイッチュラント級装甲艦を捕捉しうる主力艦が同級と巡洋戦艦フッドしかない事、さらには高速を誇る仏新戦艦ダンケルクへの対抗上からも、これらの高機動性を有する主力艦は当面他に存在しないことから、再建造に近い大改装が行われた。

その改装要点はいずれも脆弱性の危ぶまれた水平防御力の強化、対空兵装の強化、副砲の撤去、機関の更新などに充てられた。

レナウン級巡洋戦艦 - Wikipedia

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(直上の写真:上段、改装前、下段、改装後)

 

フッド (巡洋戦艦) - Wikipedia

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(直上の写真:上段、改装前、下段、改装後)

いずれの艦も、防御装甲の強化、あるいは機関の換装などから、就役時よりもやや最高速度が低下してしまったが、いずれにせよ依然、28ノット以上という速度は保持しており、その機動性には引き続き大いに期待された。

 

次回は、ダンケルク級シャルンホルスト級により始まった「新戦艦」の時代の、欧州における各海軍の新造戦艦をご紹介する予定です。

***模型についてのお問い合わせ、お待ちしています。或いは、**vs++の比較リクエストなどあれば、是非お知らせください。

 

これまで本稿に登場した各艦の情報を下記に国別にまとめました。

fw688i.hatenadiary.jp

内容は当ブログの内容と同様ですが、詳しい情報をご覧になりたい時などに、辞書がわりに使っていただければ幸いです。