相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

架空艦「改扶桑級」戦艦近代化モデル製作計画の続報

「改扶桑級」=「扶桑級」41センチ主砲搭載案 とは

以前本項では下記の投稿で「扶桑級戦艦 主砲41センチ砲換装型=改扶桑級戦艦の近代化改装」の構想のお話をしました。(内容はほぼ今回でも再録(抄録)します)

fw688i.hatenablog.com

ご承知の通り「扶桑級」戦艦は日本海軍最初の超弩級戦艦として就役しました。

日本海軍は日露戦争では大きな実績を上げましたが、戦後の実情は、莫大な戦費消費からくる経済と疲弊と(結局、戦後賠償金は獲得できませんでした)、戦中の戦備整備計画により生み出された戦艦群、さらに日露戦争の戦利艦の修理と編入などに奔走し、主力艦の保有隻数では世界の列強に数えられる存在になりながらも、完全にそれまでの主力艦の概念を一新した弩級戦艦の時代に乗り遅れた旧式艦(一世代前の旧式設計の主力艦、と言うのが正しいですね)を揃えた二流海軍と言わざるを得ない状態でした。そんな日本海軍にとって、「扶桑級」戦艦は、世界で初めて三万トンを超えた巨艦であり、搭載する12門の14インチ主砲の威力も併せて、まさに待ち望んだ艦級でした。

扶桑級就役時の概観:163mm in 1:1250 by Navis)

しかし、同級は完成後、多くの課題を抱えていることが現れてきます。

例えば、一見バランス良く艦全体に配置されているように見える6基の砲塔は、同時に艦の弱点ともなる弾庫の配置が広範囲にわたることを意味しています。これを防御するには広範囲に防御装甲を巡らせねばなりません。また、斉射時に爆風の影響が艦上部構造全体に及び、重大な弊害を生じることがわかりました。さらに罐室を挟んで砲塔が配置されたため、出力向上のための機関部改修等に余地を生み出しにくいことも、機関・機器類の進歩への対応力の低さとして現れました。

加えて第一次世界大戦ユトランド海戦で行われた長距離砲戦(砲戦距離が長くなればなるほど、主砲の仰角が上がり、結果垂直に砲弾が落下する弾道が描かれ、垂直防御の重要性がクローズアップされます)への対策としては、艦全体に配置された装甲の重量の割には水平防御が不足していることが判明するなど、一時は世界最大最強を歌われながら、一方では生まれながらの欠陥戦艦と言わざるを得ない状況でした。

こうした結果、「扶桑級」戦艦の建造は2隻で打ち切られ、3番艦、4番艦となる予定であった「伊勢」「日向」は新たな設計により生まれることとなりました。

以降、「扶桑級」の2隻は、就役直後、短期間連合艦隊旗艦の任務に就いたのち「艦隊に配置されているよりも、ドックに入っている期間の方が長い」と揶揄されるほど、改装に明け暮れる事になるのです。

軍縮会議と「扶桑級」改装計画

第一次世界大戦による世界的な経済の疲弊は、やがて列強に軍縮への道を開いてゆきます。海軍装備に関しては「ワシントン会議」を皮切りに主力艦の保有制限や新造の原則禁止、などが検討され、日本海軍が「長門級」を皮切りにずらりと41センチ主砲搭載の主力艦を整備しようとしていた「八八艦隊計画」や、米海軍の「ダニエルズ計画」は中止に至る流れができつつありました。

その中で「新造戦艦がダメなら、既存艦の改装を」と言う発想から、当時、上述のように「欠陥戦艦」の烙印を押されていた「扶桑級」戦艦の主砲41センチ換装を軸に置いた再生改装案が検討されたのです。

月刊「丸」2013年8月号の掲載されている「扶桑級」改装案の図面)

これは有名な平賀造船中将による案とされており、上述の同級の課題の源泉ともいうべき主砲塔配置に大きな変更を加え、併せて機関の配置等についても余裕を持たせ、速力不足等についても一気に解決してしまおう、という意欲的な案でした。

同時に軍縮条約下では「長門級」の2隻以上には増やせない41センチ主砲搭載艦の数を少しでも補完しようとする計画でもあったわけです。

扶桑級改装案=改扶桑級:41センチ砲搭載案の概観:165mm in 1:1250 by semi-scratchied besed on C. O. B. Constracts and Miniatures) 

扶桑級改装案:41センチ砲搭載案の特徴細部:特徴的な混載されている連装砲塔と三連装砲塔はSuperior製の金剛代艦級から拝借しています。前檣は基部だけを残し周りと上部はストック部品とプラロッドで。煙突は少し高かったかも。後檣と煙突の間隔はこんな感じかな?もう少し詰めても良かったのか?) 

主砲塔混載の可否

こうしてモデルを見ると、やはり最初に筆者が感じるのは主砲塔の混載についての違和感です。それまで日本海軍には戦艦の主砲級については三連装砲塔の製造実績はありませんでした。併せて砲塔にはその駆動機構の開発も必至で、一元指揮下での主砲の斉射法を考慮すると連装砲塔と三連装砲塔の旋回時間等を同調させる等、機構の複雑化は避けられないであったろうと推測します。

さらにもう一つの41センチ主砲搭載艦である「長門級」が「扶桑級」よりも大きな船体を持ちながら連装砲塔4基8門の搭載で設計されているのに、「扶桑級」が都合10門の41センチ主砲を搭載していることにも、航行の安定性や射撃精度など、やはり違和感を覚えます。

設計者の平賀中将は、その代表作が「古鷹級」重巡や「妙高級」重巡軽巡洋艦「夕張」などであることからも明らかなように、コンパクトな船体に可能な限りの重武装を搭載すると言う傾向があり、それがこの改装案にも現れたのかな、と考えています。

ご承知のように、平賀中将はこの後、ワシントン条約で代艦を建造できる艦齢を迎える「金剛級」に対して、平賀中将は有名な「金剛代艦級」の建造試案を提出するのですが、これも連装砲塔と三連装砲塔の混載です。

この辺り、興味のある方は、本稿で以下の回で触れていますので読んでみて下さい。

fw688i.hatenablog.com

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「改扶桑級」戦艦の近代化改装:モデル製作の計画

さて、改装されたのなら、きっと近代化もされたはず、と言うことで、筆者が近代化改装後のモデルを作る計画を持っていることは既に本稿でお知らせした通りです。そして当然のことと言えばそれまでですが、今回のモデルは「改扶桑級=41センチ砲搭載案」の近代化改装ですので、大まかなレイアウトは決まっています。改装のポイントは、実際の近代化改装の例などとも併せて考えれば、前檣と煙突、後檣のデザインをどうするのか、この辺りになります。

 

とまあ、概略はそんなところなのですが、少し計画に進捗があったので、ご報告をしておきます。

ベースとするモデルの入手

今回のモデル製作にあたり入手したのは3D printingの樹脂製のモデルです。1:1250スケールの市販モデルの多くは金属製のモデルで、大規模な改造にはかなりの困難を伴いますので、工作のしやすい樹脂製の3D printingモデルをベースとして使用するわけです。

今回入手したのはXP ForgeのモデルとShapewaysからGhukek's Miniatureのモデルをそれぞれ2隻づつ準備しています。

Battleship - IJN Fuso - Wargaming - Axis and Allies - Naval Miniature - Victory at Sea - Tabletop Games - Warshipsxpforge.com

Japanese Fuso-Class Battleship (4QJ7GLJCC) by Ghukek

実は上掲の2種のモデルの作者は同じ方です(Ghukek)。

XP Forgeで入手できるモデル(下の写真:上段)は素材がFDMで少し硬く、Shapewaysではプリントアウトの素材を選べるので、かなりな柔らかいWhite Natural Versatile Plasticと言う樹脂素材で発注をかけました。加工等の工程を考えると、実は中間の素材があると嬉しいのですが、それはモデルへの要求としては非常に少数派の要求でしょうから、言ってもせんなき事かと。

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2隻ずつ発注をかけたのは、モデルはいずれも「扶桑」のモデルなのですが(何故か「山城」のモデルは準備されていません)、「山城」のモデルも作り分けをしたいと考えているからです。実艦の「扶桑」と「山城」の外見上の大きな違いは、近代化改装の際に就役時には後ろ向きに装備されていた三番主砲塔を「扶桑」のみ、艦首向きに向きを変えた、と言う点です。この主砲塔装備の向きの違いにより、「扶桑」はあの独特の艦橋を持つこととなったわけです。この艦橋形状は人気があります。筆者も大好きです。この人気の差が「山城」のモデルが希少な理由の一つになっているような気もします。

さて、ここで一つ大発見(考えようによっては「大問題」)が。

今回製作しようとしている「改扶桑級」のモデルでは、基本的に三番主砲塔は艦尾向けに設置されます。そうすると、「扶桑」の最大の魅力であるあの艦橋構造が不要になるではないですか。

あえて史実と同じように三番砲塔を「扶桑」のみ近代化の際に前向きの主砲装備と変更されたとするのかな?「どんなストーリーがあればいいんだろう」とこれは頭の捻りがいがあるテーマかも。

参考までに「扶桑」と「山城」の実艦のモデルを、ご紹介しておきます。

(二次大改装後の「扶桑」の概観:168mm in 1:1250 by Superior? 「扶桑」の最大の魅力は変則的な前檣構造。3番砲塔の向きにも注目)

(二次大改装後の「山城」の概観:168mm in 1:1250 by Superior? 2番砲塔と前檣基部、前檣上部、3番砲塔、艦尾の航空艤装を、上掲の「扶桑」をベースに手を入れています。直下の写真は「扶桑」と「山城」の比較) 

実は上掲の実艦のモデルはいずれもSuperior製の「扶桑」をベースとしたもので(「山城」は筆者がかなり手を入れていますが)で公式なスケールは1:1200です。この機会に、1:1250スケールのモデルもコレクションに加えておこうかな、そんな狙いもあるのです。実は素材の硬さを見て、今回の主目的である「改扶桑級=41センチ砲換装型」の近代化改装などの大規模な改造には、XP Forge製のモデルはあまり向かないと考えましたので、XP Forge製モデルは1:1250スケールモデルとして完成させることとします。

 

41センチ主砲塔のモデル

され、今回のモデル作成にあたってもう一つの目玉が41センチ主砲塔です。上掲の「改扶桑級」戦艦では、ストックにあったSuperior製の日本海軍の41センチ主砲塔を充当してきているのですが、先述のようにSuperior製品のスケールは1:1200で、Neptun製の製品等と比較するとやや大柄なのです。手元にSuperiorの41センチ主砲塔は多くのストックがあるのですが、これでは芸がないかなと考えて、今回、これもShapwaysからdiStephan 3Dprint製の41センチ砲塔を調達してみました。

www.shapeways.com

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(到着した製品がこちら:砲塔の長径は8mm程度の小さなパーツです

 

迷い:主砲塔は三連装と連装の混載で行くのか?

前述のように、筆者には「扶桑級」に10門の41センチ主砲塔歳は過重装備であるように思えてなりません。特に日本海軍が不慣れな三連装砲塔など、元々が課題の多い「扶桑級」に対し、機関も換装して機動性、攻撃力、防御、全てにバランスの取れた艦級とするためには、「長門級」に倣い連装砲塔4基搭載艦とするべきではないかと思うのです。重い三連装砲塔を2基も抱えて、よたよたと航行する「扶桑級」、主砲斉射時に妙に強い振動を受ける「扶桑級」、主砲の旋回時間が微妙にずれる「扶桑級」、そんな姿が思い浮かんでなりません。

一方で、一旦41センチ主砲10門搭載、と言う「形」を実現してしまった後では、用兵側はそのような「改悪」を認めるのだろうか、とも思うのです。

が、改装後に上記のような弊害が頻発したとしたら、再度、三連装砲塔を連装砲塔に換装することで「長門級」並みの高い機動性と同等の砲力を有する高速戦艦として再生できたとしたら、こんなことも考えてしまうのです。そうすると太平洋戦争でもソロモン海あたりの戦場で大暴れする姿も見れたのかも、などと妄想が膨らみます。(実艦の「扶桑級」はほとんど活躍の場を与えられませんでした。まあ、活躍の場がなかったのは「扶桑級」にとどまらず、全ての戦艦群がそうだったのですが。それも「扶桑級」が戦場に常にある形になれば、全然変わっていたのかも、と思います)

かつ、前述の艦橋形状の問題も関連してきます。艦橋後の主砲塔の向きを変えれば、「扶桑級」のあの艦橋を装備できるのです。

・・・と諸々と考えると、混載を諦めて連装砲塔4基搭載の戦艦として製作してみようかな、と言う方向に気持ちが傾いています。(混載形状は、既に「改扶桑級」の就役時のモデルで実現しているし、と、筆者自身を説得している自分がいます)

 

工作に着手

と言うようなことで、「改扶桑級」戦艦の近代化改装は、41センチ主砲の三連装砲塔と連装砲塔の混載を連装砲塔のみに改め、浮いた重量を機関部の充実と防御装甲に当てることで、「長門級」に匹敵する射撃時の安定性と高い機動性を兼ね備えた高速戦艦を目指す、と言うことにします。この主砲換装時に、艦橋後ろに設置される三番主砲塔の向きには議論が起こり、「扶桑」は艦首向き方向に設置方向を変えることが決定された、と言うことで、「扶桑」の実艦の特異な(魅力的な!)艦橋構造を維持することとします。

 

最後に現況をお知らせしておきます。

扶桑級」実艦の製作

上述のようにXP Forge製の2隻は実艦としての「扶桑」「山城」を再現を目指します。

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(上の写真は、「扶桑級」実艦の進捗状況:下段は「山城用」の船体の現状)

写真上段の「扶桑用」船体については、モールドの甘い(と筆者が判断した)主砲塔を切除する程度の手入れで済ませ¥るつもりです。同艦の最大の魅力である前檣はなかなかいい感じなのではと思い、そのまま使わせてもらいます。

写真下段の「山城用」の船体は、同様に主砲塔を切除し、構造の異なる艦橋も基部のみを残して切除してあります。さらに「扶桑」とは向きの異なる三番主砲塔の基部などを設置する予定です。

両艦ともこの後、切除部分の基部をパテで埋めるなどして、塗装をして仕上げてゆく予定です。

 

「改扶桑級」近代化改装モデルの制作進捗

Shapeways製の船体は、これから「改扶桑級」への大改造に向けて、全ての主砲塔を基部から切除、加えて煙突等の中央部の構造物の撤去にかかりました。結構時間がかかる作業です。

まずは「扶桑」を作ります。

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(上の写真では「扶桑」近代化改装後から「改扶桑」近代化改装への移行手順を大まかにを示しています)

上段の写真では、オリジナルの36センチ主砲塔の切除状態を。

中段写真では艦中央の煙突等の上部構造を切除した状態を示しています。

下段写真では、切除した中央の上部構造物をそのまま艦尾寄りに移設し、さらに41センチ主砲塔を仮置きした状態です。まあ、バランスとしては砲塔基部の高さの調整などは必要なはしますが、概ねいけそうな気がしています。

船体はノコを入れて上部醸造を切除したりしているので少し荒れていますので、パテやヤスリ掛けなどで整える必要がありそうです。

(下の写真では仮置きした砲塔や上部構造についての後ろからのカットも追加してみました)
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下段では艦尾部に41センチ砲塔を設置するために、オリジナル(実艦)の五番砲塔、六番砲塔の切除と、五番砲塔については後檣直後の砲塔基部も切除してることが見ていただけるかも。

「山城」については、ほぼ同じ手順を踏む予定で、すでに砲塔の撤去までは作業が進んでいます。上記の「扶桑」の手順に加えて、艦橋の撤去が工程として加わります。あとは三番砲塔の向きを艦尾向きとして、ほぼ同じ工程を踏む予定です。 

 

今後の作業の進捗にはかなり時間がかかるだろうと考えています。本業等が結構忙しく、実はあまり集中的に時間が取れる見込みが立っていません。週に2−3時間取れればいいかな、と言う感じでしょうか。さらにノコでの切除作業や、パテ埋めは時間さえかければいいのですが、実は最後のヤスリがけ作業が、実はこのWhite Natural Versatile Plasticと言う樹脂素材はあまり適性が高くありません。ちょっと軟性が高いと言うか・・・。

まあ、ゆっくりと進めるしかないかな。進捗は時折お知らせしたいと思っています。

と言うわけで今回はここまで。

 

次回は今回の「扶桑級」の主砲換装で筆者が少し気になってきた日本海軍の41センチ主砲搭載主力艦計画、つまり「八八艦隊計画」について、少し触れてみたいと思っています。八八艦隊構成艦(「土佐級」や「紀伊級」ですね)のモデルのヴァージョンアップ計画もあるのですが、実は問い合わせに対する返事待ち等もあって、その辺りのお話もできれば、と考えています。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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