今回は、前回からの展開で、「扶桑級」戦艦の新モデル制作と、表題の「改扶桑級近代化」モデルの制作の進捗状況のご紹介を簡単に。
制作開始の経緯は下記でお願いします
「改扶桑級」戦艦とは何か
本稿、初読の方のために、「改扶桑級」戦艦について背景を簡単にまとめておきましょう。
ご承知の通り「扶桑級」戦艦は日本海軍初の超弩級戦艦として誕生しました。就役当時は世界最大、最強と称されたのですが、第一次世界大戦の戦訓への対応力不足、そもそもの設計上の無理等が、就役直後から表れ、生まれながらの欠陥戦艦と言わざるを得ない状況でした。その後短期間連合艦隊旗艦の任務に就いたのち「艦隊に配置されているよりも、ドックに入っている期間の方が長い」と揶揄されるほど、改装に明け暮れる事になるのです。
折から世界列強間では軍縮条約の締結の話が進められ、新造戦艦の建造ができなくなる見通しが濃厚に漂っていました。日本海軍は軍縮条約の一つの火種ともなった世界初の40センチ級主砲を持った「長門級」を皮切りに40センチ主砲の主力艦を16隻揃える(そのうち4隻は46センチ主砲を装備する予定でした)、いわゆる「八八艦隊計画」を進行中でしたが、これも中止になることは間違いないことでした。
新造ができないなら既存艦の改装を、ということで槍玉に上がったのが上述のように「欠陥戦艦」のレッテルを貼られた「扶桑級」戦艦で、同級を対象に、改装計画が組まれていた、という記録があるのです。
本稿で取り上げているのは平賀造船中将による計画で、改装の要目は同級の欠点の根源をなすとされた36センチ主砲塔6基を「長門級」と同じ41センチ主砲に転換し連装・三連装の混載で4基搭載とし、同時に整理された艦内スペースを機関の換装に利用、併せて機動力も高め「長門級」と行動を共にできる戦艦にしてしまおうというものでした。
(上の写真は月刊「丸」2013年8月号の掲載されている「扶桑級」改装案の図面。平賀案を元に作成されたのものか? :下の写真は上掲の図面をもとに筆者が製作した扶桑級改装案=改扶桑級:41センチ砲搭載案の概観:165mm in 1:1250 by semi-scratchied besed on C. O. B. Constracts and Miniatures)
「改扶桑級」戦艦の近代化改装(筆者の妄想の具現化!)
上記のように「改扶桑級」が建造されていれば、「長門級」に次ぐ重要な主力艦として、当然近代化改装が行われていただろう、という筆者の妄想から生じたもので、こちらは計画の記録など、もちろんありません。
(これぞ模型ならでは、と膝を叩きたくなるような、そんなお話です)
妄想がどんなふうに発展していったかは上掲の本稿前回を読んでいただくとして、準備したのは「扶桑級」戦艦の近代化改装後(史実で存在したもの)と41センチ主砲塔の3D printing modelでした。
(上の写真では「扶桑」近代化改装後から「改扶桑」近代化改装への移行手順を大まかにを示しています:上段の写真では、オリジナルの36センチ主砲塔の切除状態を。中段写真では艦中央の煙突等の上部構造を切除した状態を示しています。下段写真では、切除した中央の上部構造物をそのまま艦尾寄りに移設し、さらに41センチ主砲塔を、いずれも仮置きした状態:そして下の写真は今回使用するdiStephan 3Dprint製の41センチ砲塔)
主砲塔の三連装と連装の混載の是非について
主砲塔の混載については、本稿前回で連装砲塔のみの搭載に改めることとしています。前回その経緯についてはこんなことを書いています。
「筆者には「扶桑級」に10門の41センチ主砲塔歳は過重装備であるように思えてなりません。特に日本海軍が不慣れな三連装砲塔など、元々が課題の多い「扶桑級」に対し、機関も換装して機動性、攻撃力、防御、全てにバランスの取れた艦級とするためには、「長門級」に倣い連装砲塔4基搭載艦とするべきではないかと思うのです。重い三連装砲塔を2基も抱えて、よたよたと航行する「扶桑級」、主砲斉射時に妙に強い振動を受ける「扶桑級」、連装砲塔と三連装砲塔で主砲の旋回時間が微妙にずれる「扶桑級」、そんな姿が思い浮かんでなりません。
一方で、一旦41センチ主砲10門搭載、と言う「形」を実現してしまった後では、用兵側はそのような「改悪」を認めるのだろうか、とも思うのです。
が、改装後に上記のような弊害が頻発したとしたら、再度、三連装砲塔を連装砲塔に換装することで「長門級」並みの高い機動性と同等の砲力を有する高速戦艦として再生できたとしたら、こんなことも考えてしまうのです。そうすると太平洋戦争でもソロモン海あたりの戦場で大暴れする姿も見れたのかも、などと妄想が膨らみます。(実艦の「扶桑級」はほとんど活躍の場を与えられませんでした。まあ、活躍の場がなかったのは「扶桑級」にとどまらず、全ての戦艦群がそうだったのですが。それも「扶桑級」が戦場に常にある形になれば、全然変わっていたのかも、と思います)」
という次第で、今回製作する「改扶桑級」戦艦近代化改装は41センチ連想主砲塔4基搭載、つまり「長門級」と同じ主砲装備、ということになります。
作業の進捗状況は・・・
「改扶桑級」下地処理まで完了
今回は作業が切断面等を整え、パテ埋めなどを施し、サーフェサーでの下地処理まで進みました。
(上の写真は「扶桑」:砲塔切除と煙突部等の上部構造を切断して移設。その際の「ノコあと」等をパテ埋めしてサーフェサーを塗っています /下の写真は「山城」の同段階の写真:「扶桑」同様の作業に加え、前檣を「扶桑」独特の形状のものから日本海軍の太平洋戦争当時の比較的標準的な形状のもの(ストックパーツ)に差し換えてあります
そして41センチ連装主砲塔も砲身をセットして下地処理を行なってあります。その際に砲塔基部の高さを調整しています。これを「改扶桑」用と「改山城」用の2隻分、準備しました。
さて、ちょっと主砲塔を仮置きしてみよう
下地処理まで終わったので、次は船体の塗装等の作業に入りますが、その前に砲塔を仮置きしてみます。やなり上述のような次第で、連装・三連装の混載から、連装砲塔での搭載に踏み切ったのですが、迷いはまだ残ります。どんな感じになるんだろうか?
(上は「改扶桑」の主砲仮置き。三番主砲塔は艦首向き:もちろん下は「改山城」の主砲仮置き:なんかいい感じじゃない?と自画自賛)
うん、かなりスッキリしますね。「長門級」とも一緒に行動できそう。
二隻、並べてみましょう。三番砲塔の向きが異なります。これが前檣の形状の差異に現れるので、この設置向きは大好きな「扶桑」の独特の前檣形態を残すためには必要なのです。
(下の写真では、奥が「改扶桑」、手前が「改山城」)
そして前檣と三番砲塔を中心に「改扶桑」と「改山城」の比較を。
(上段の2カットが「改扶桑」下段が「改山城」)
ということで、次の工程は塗装と最終仕上げです。今日が2月12日なので、なんとか月内には完成まで行きたいのですが。
この両艦は41センチ主砲を搭載し、かつ「長門級」と同様、あるいはそれ以上の26ノット程度の速力を発揮できるという想定です。そうするとソロモン海の戦場に「金剛級」と並んで投入されたかも。第三次ソロモン海戦は「比叡」「霧島」ではなく、「改扶桑」「改山城」と米海軍の「サウス・ダコタ」「ワシントン」の主砲戦になったかも、などとさらに妄想が膨らんでゆきます。ああ、でもソロモン海あたりに投入されると「レイテ沖海戦」までは残存していないかも。「長門級」と41センチ主砲艦で第二戦隊を組んで大暴れする姿が見たいのですが。このお題は完成後にまた。
並行して作業中の「扶桑級」実艦のモデル制作の進捗も
これも前掲の前回投稿でお知らせしていますが、「扶桑級」の実艦についてのモデル製作も並行して進めています。これは筆者の「扶桑級」コレクションがSuperior製の1:1200スケールモデルをディテイルアップしたものであるために、微妙に大きさが他の艦級と合わない懸念を持っていたためです。
こちらも少し進捗のご紹介を。
(上の写真は「扶桑」の現在の状態:36センチ主砲塔はモデル自体のものがあまり満足いかないので換装を考慮して全て切除しています。さらに少しわかりにくいですが後檣の上のマストを真鍮線に交換しています。下の写真は「山城」として製作中のもの。主砲塔の切除と後檣のマスト交換は同じですが、前檣を「扶桑」の特徴的な構造のものから、日本海軍の一般的(?)な構造のものに筆者のストックパーツから交換しています)
下の写真では、「扶桑」と「山城」の最大の外観的な差異である前檣と三番砲塔基部の位置の違いを示しています。「扶桑」の三番主砲は艦首向きに標準設置方向を就役後変更しています。一方、「山城」の三番主砲塔は就役時からのまま、後ろ向きに設置されています。
下の写真は、筆者のストックパーツから換装を予定している36センチ連装主砲塔のアップ。具体的にはDeAgostini製の「霧島」の主砲塔への換装を予定しています。
こうなって来ると、「扶桑級」と「改扶桑級」を比べてみたくなるのは人の常、というものでしょう。特に片方は架空艦ですので、まさに模型ならでは、こんなことが実現できる、ということです。
(上は「扶桑」(上段)と「改扶桑」の比較:そして下の写真は「山城」(上段)と「改山城」の比較)
並べると実艦と今回の架空艦、好みが分かれそうですね。まあ、そのお話は完成後にすることにしましょう。塗装する時間、作らなきゃ。
前回では各艦順番に作業してゆくのかな、と考えていたのですが、気がつくとほぼ四隻同時に作業しています。おそらく塗装もこの調子で四隻同時進行になるんでしょうね。
と言うわけで今回はここまで。
次回は今回の続きで進捗状況のご紹介を(?)。あるいは「扶桑級」の主砲換装で筆者が少し気になってきた日本海軍の41センチ主砲搭載主力艦計画、つまり「八八艦隊計画」について、少し触れてみたいと思っています。八八艦隊構成艦(「土佐級」や「紀伊級」ですね)のモデルのヴァージョンアップ計画もあるのですが、実は問い合わせに対する返事待ち等もあって、その辺りのお話もできれば、と考えています。
そしてもう一つ、重要なお知らせ!
2月17日からAmazon Primeにて!
なんとなんと「ピカード・ファイナルシーズン」が2月17日からAmazon Primeで配信開始です。
うわあ、忙しいなあ。月末には久々の海外出張ありそうだし(何年ぶりだろう。パスポートが期限切れになっていて少し慌てました)。
この2週間ほど、シーズン1とシーズン2を見返していました。いつもながら見る度に新しい発見や学びがあります。ストーリーに心が震え、細部に数えきれない学びがある。
本当に楽しみです。
もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。
模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。
特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。
もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。
お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。
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