相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

架空戦艦群:八八艦隊製作のアップデート

八八艦隊2023年ヴァージョンの再現計画

前回からの流れで、今回は八八艦隊の戦艦群の製作です。中間報告、と考えていたのですが、実は完成したので、いくつかヴァリエーションも交えてご紹介を。

今回はそういうお話。

 

・・・と本論の前に、やっぱり今週の「ピカード 」を

もう7話まできてしまいました。

***(ネタバレがあるかも。嫌な人の自己責任撤退ラインはここ:ネタバレ回避したい人は、次の青い大文字見出しに「engage!」)***

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怒涛の展開編へ

出るべき人たちは出揃った、というところでしょうか、今回は物語が怒涛の展開を迎えました。物語の終盤を迎える前に、戦術論でよくある「先の先」なのか「後の先」なのか、「後の後」なのか、いずれにせよピカード たちが仕掛け、結果、主人公たちが窮地に追いやられるのは、ある種このシリーズの定石です。

高潔な理想に基づいているはずの連邦の過去の可変種への残虐性が明らかにされ、その澱んだ連邦の実態が露呈する辺りは、昨今の世情を反映した物語づくり、と言ってもいいかも、など、色々と考えさせられる展開でした。

勢揃いしている仲間達の行く末もさることながら、こうした連邦の暗黒面(ピカードは一貫して、全てのシリーズで「連邦」の老廃を物語ってきていますが)をどう回収するのか、苦い結末も少し予想しながら、興味が尽きません。

盗まれた「ピカード 」の体と可変種が求めてやまないジャックの血。復活したピカード がどんな意味を持つのか。ロアとデータの結末は?

さあて、後3回しかないぞ。・・・ああ、今回は言うまいと思っていたのに、また言っちゃった。

 

2023年版 八八艦隊

さて、本論です。

このところ何度か続けてモデル調達のご紹介をしているので、繰り返しになりますが、くどいのを承知の上で少しおさらい的にまとめておくと、今回のヴァージョンは「長門級」の就役時モデルにはHai製のモデルを当てていますが、その他は3D printing modelをベースとしています。

お馴染みのShapewaysで見つけたModelFunShipyard製のモデルが、今回のヴァージョンアップのきっかけでした。この製作者のモデルは本来は1:600や1:700スケールと言った大きなスケールのモデルとしてShapewaysにアップされていました。ディテイルの素晴らしさ、特に前檣周りの素晴らしさを1:1250スケールでも再現できないか、と言う思いから、製作者にスケールダウンをご相談したのがスタートでした。するとほぼ即答で、快く「やってみよう。ちょっと時間ちょうだい」とお返事をいただき、さらに「そのスケールならワンパーツの方がいいよね」と追伸が。実は分割されたパーツはパーツで使い勝手が色々とあると考えていたのですが、確かに各パーツが薄くて工作しにくいモデルになったかもしれず、この辺りを配慮していただけるのは大変ありがたかったです。

こうしてお願いしていたスケールダウンモデル群が、先週、本稿の前回投稿の脱稿中に到着、到着したての無垢のモデルをご紹介しています。

ベースモデルの到着

「土佐級」戦艦

紀伊級」戦艦

「13号級」巡洋戦艦

さて今回はこれらを仕上げたもののご紹介をするわけですが、その前に、これもくどいようだけど、「八八艦隊」について簡単におさらいしておきましょう。

 

史実の八八艦隊計画

史実の八八艦隊計画第一次世界大戦後に列強の軍備拡張に倣い日本海軍が実施しようとした大建艦計画で、「長門級」戦艦2隻、「土佐級」戦艦2隻、「紀伊級」4隻のいずれも41センチ主砲を搭載し26ノット以上の速力を発揮する戦艦8隻で構成される高速戦艦群と、30ノット以上の速力を発揮する「天城級巡洋戦艦4隻(41センチ主砲搭載)、「13号級」巡洋戦艦4隻(46センチ主砲搭載)の8隻の巡洋戦艦で構成される強大な艦隊を建造する、という計画でした。これらの諸主力艦の建造は、「長門級」戦艦2隻を除いて、大鑑の建造競争により国家財政の破綻を恐れた列強各国の間で締結されたワシントン軍縮条約により中止されてしまいます。

 

筆者版八八艦隊計画

一方、筆者版の八八艦隊計画では、史実よりも少し制約の緩いワシントン軍縮条約の下で「長門級」戦艦2隻、「土佐級」戦艦2隻はそのまま、「紀伊級」戦艦は2隻のみ建造され、「13号級」巡洋戦艦が「改紀伊級」戦艦として防御構造を強化され、46センチ主砲搭載の戦艦として建造されています(筆者版ワシントン条約でも主砲口径は16インチを最大とする、という制約はありましたので、条約失効を前提として計画された「改紀伊級」戦艦は条約の制約外の46センチ主砲を搭載する戦艦として建造されるので、設計段階では未だ条約は有効であったため同級の搭載する46センチ主砲は新開発の「2年式55口径41センチ砲」と実態を偽った正式名称を与えられていました)。こうして揃えた8隻の戦艦と、既に存在した「金剛級巡洋戦艦4隻を可能な限り改装等により延命させ、加えて条約で認められる「金剛級」の耐用艦齢年次における代艦4隻を加え8隻の巡洋戦艦(この頃には巡洋戦艦の概念はほぼ無くなっており、「高速軽戦艦」的な存在でしたが)を揃える、という計画でした。

 

長門級」戦艦(同型艦2隻)

ja.wikipedia.org

同級は世界初の16インチ級(41センチ)主砲搭載戦艦で、同級の建造がワシントン海軍軍縮条約の実現化に大いに影響したとされています。この条約の結果、41センチ級の主砲搭載戦艦は同級の2隻(「長門」「陸奥」)を含め世界に7隻しか存在が認められないことになりました。いわゆる「ビッグ7」と言われる7隻(日本2隻、英国2隻、米国3隻)ですね。

長く連合艦隊の旗艦を務めるなど、日本海軍の象徴的な位置にあり続けました。

(「長門級」竣工時のモデル:by Hai: Hai製のモデルは前部煙突が「長門級と言えば湾曲煙突」と言うほど有名な湾曲煙突の状態を再現していますが、上掲のモデルでは就役時を再現したかったので、前部煙突を直立のものに交換しています。下の写真は「長門級」竣工時の細部の拡大:Hai製のモデルの前檣もかなり繊細に再現されています)

 

戦艦「陸奥」変体(by ModelFunShipyard)

戦艦「陸奥」は「長門級」戦艦の二番艦ですが、その建造過程でちょうど研究中であった八八艦隊計画の次級「土佐級」の設計案を知った用兵側が、前倒しで「長門級」二番艦にその構想を盛り込み41センチ主砲10門搭載艦として実現できないか、と言う着想をもつに至りました。その構想のもとに強化型「長門級」の計画が動き出しました。これが「陸奥」変体(「変態」じゃないですよ)と呼ばれる設計案でした。

舷側に傾斜装甲を用いるなどして浮いた装甲重量を追加主砲塔に当てる、と言うのが構想の根底にあったとされています。

ワシントン条約の締結時点で「就役している」と言う状態でなければ保有が認められず、工事を中止せねばならなかったため、結局、「陸奥」は建造時間等を考慮して「長門」とほぼ同設計で完成されますが、この「陸奥」変体が実現していたら、という「架空艦」のモデルのご紹介です。

(戦艦「陸奥」変体の概観:173mm in 1:1250 by ModelFunShipyard: 下の写真は同モデルの特徴である前檣付近と、艦尾部の山形配置された連装主砲塔群のアップ・全体として大変すっきりとした、しかし細部は繊細に表現されたモデルです)

 

「土佐級」戦艦:同型艦2隻(by ModelFunShipyard)

ja.wikipedia.org

同級は八八艦隊計画の戦艦の二番目の艦級です。「長門級」戦艦の強化改良型、と言っていいと思います。「土佐」と「加賀」が建造される予定でした。

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(「土佐級」戦艦の概観:188mm in 1:1250 by ModelFunShipyard: 下の写真は同モデルの特徴である前檣付近と、艦尾部の山形配置された連装主砲塔群のアップ・上掲の「陸奥」変体とは副砲の配置、後部の連装砲塔3基の配置が異なります全体として大変すっきりとした、しかし細部は繊細に表現されたモデルです)

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戦艦「加賀」湾曲煙突装備案(by ModelFunShipyard)

長門級」の就役後、前檣直後の煙突が煤煙の逆流で課題が出たように、おそらく「土佐級」の煙突も同じような課題が現れたであろう、と言う前提で、湾曲煙突を装備した二番艦「加賀」を製作してみました。これはこれでなかなかいいかも。

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(湾曲煙突装備の「加賀」の概観: by ModelFunShipyard: 下の写真はオリジナル煙突(上段)と湾曲煙突装備案の比較。今回このモデルの最大の魅力である(と筆者が思っている)前檣構造がいずれのモデルでもやはりかなりいい感じではないかと、自画自賛的に感心しています)

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紀伊級」戦艦:同型艦2隻(計画当初は4隻)(by ModelFunShipyard):「天城級巡洋戦艦もほぼ同型

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紀伊級」戦艦は「土佐級」戦艦に続き4隻が建造される予定でした。(「紀伊」「尾張」「駿河(仮称)」「近江(仮称)」)設計は「土佐級」とは一線を画し、巡洋戦艦天城級」設計をベースとして防御強化を図り本格的な高速戦艦としての完成を目指したものでした。そのため速力は「長門級」「土佐級」の26ノット台から29ノット台へと飛躍しています。

米海軍の新戦艦「サウスダコタ級(1926年版)」が16インチ主砲を12門搭載する設計であることが判明し、「紀伊級」戦艦ではこれに対抗するには「やや心もとない」と評価されたため、建造は「紀伊」「尾張」の2隻で打ち切られ、次の「改紀伊級=相模級」戦艦の建造へと移行してゆきます。

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(「紀伊級」戦艦の概観:200mm in 1:1250 by ModelFunShipyard: 下の写真は同モデルの特徴である前檣付近と、艦中央部から艦尾部にかけて装備された連装主砲塔群のアップ。全体として、やはり前檣が最大のこのモデルの魅力かと思っています)

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紀伊級」戦艦:集合煙突装備案(by ModelFunShipyard)

紀伊級」の設計図面はかなりの数が残されており、その中には前述したように「長門級」で問題となった煤煙の逆流問題への対応策として、設計段階から集合煙突を装備したデザイン案がありました。筆者は元々集合煙突が大好きでもあり、こちらのモデルを作成してみました。(というか筆者版の八八艦隊ではこちらが本命です。もう一隻こちらを作成する予定です。煙突も調達済み!)

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(「紀伊級」戦艦・集合煙突デザイン案の概観:200mm in 1:1250 by ModelFunShipyard: 下の写真はオリジナルの二本煙突(上段)と集合煙突案に比較:やはり個人的には集合煙突案の方が圧倒的に好みですね。前檣の少しクラシックなデザインと集合煙突の先進性のアンバランスというか、妙な調和を感じるのですが。やや日本艦離れした感じがするもの好きな点かも)

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「改紀伊級=相模級」戦艦:「13号級」巡洋戦艦の設計をベースとして:同型艦2隻(巡洋戦艦設計時期には同型艦4隻)(by ModelFunShipyard)

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同級は筆者版八八艦隊計画の戦艦の最終整備艦級で、元々は巡洋戦艦として30ノットを超える速力を持ちながらも「紀伊級」戦艦を凌駕する強力な砲力も併せ持つ設計であった「13号級」巡洋戦艦の設計がベースとされました。主砲にはそれまでの八八艦隊の戦艦の標準装備であった41センチ主砲を上回る46センチ主砲の搭載が採用されました。しかし計画段階では46センチ主砲については開発に相当な時間がかかることが予想されたため、従来の41センチ主砲を三連装砲塔4基搭載する設計案もあったとされています。

今回はもちろん46センチ主砲装備の方を。

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(「改紀伊級=相模級」戦艦の概観:250mm in 1:1250 by ModelFunShipyard: 下の写真は同モデルの特徴である前檣と煙突付近と、巨大な主砲塔の拡大)f:id:fw688i:20230402101840p:image

今回のモデル製作にあたり、「13号級」の図面を見る限り、その大きな特徴である巨大な煙突(米海軍の「レキシントン級巡洋戦艦でも同じような話がありましたが、高速の巡洋戦艦の搭載する巨大な機関を考えると、排煙は大きな課題なのでしょうね)が、筆者にはどうしても違和感があり、「紀伊級」と同じ集合煙突に換装したモデルを製作しています。46センチ主砲搭載艦ですので長大な射程を想定した一際高い前檣を考えると、もう少し高いものにしないと煤煙の全焼への逆流等に悩まされることになるかもしれませんね。(これは作製後の独り言)

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(上の写真は今回製作したモデル(上段)と、製作の際に切除した煙突をモデルに戻してみた際の比較:オリジナルの煙突が1センチほど高い、というのはこんな感じです。このモデルだけ見るとオリジナルのデザインでもあまり違和感はない(むしろ今回の製作案の煙突の低さが気になるかも)のですが、他のモデルと並べると違和感が出てくるのです(と筆者は感じるのです))

オリジナルの煙突はモデルよりも約1センチほど全高が高くなっています(オリジナルも作るべきだったかな)。

 

「改紀伊級」などと言いながらも

「改紀伊級」は前述のようにワシントン条約の失効を前提に設計されていました。実態は全く別物の新設計であったにも関わらず、条約の制約を満たした設計であると宣言せねばならず、そうした意味では「改紀伊級」という名称自体が欺瞞でした。ワシントン条約では主砲口径は16インチ以下と制約されていましたので、46センチ主砲は新開発の「2年式55口径41センチ砲」と呼称されていました(フィクションです。史実ではないのでご注意を)。もちろん全体の大きさに関する制約も大きく超えていました。

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(「改紀伊級=相模級」戦艦と「紀伊級」戦艦の比較:船型の大きさも大きく異なりますし、主砲塔の大きさの差異も一目瞭然です。主砲口径の拡大から想定される砲戦距離の延長に対応して、前檣の高さが大きく異なっています)

 

今回ご紹介した2023年版「八八艦隊」の戦艦の一覧

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(上の写真は今回ご紹介した「八八艦隊計画」の戦艦の艦級の総覧:「陸奥」変体(左上)、「土佐級オリジナル」(左中)、「加賀:湾曲煙突装備」(左下)、「紀伊級オリジナル」(右上)、「紀伊級:集合煙突案」(右中)、「改紀伊級=相模級」(右下)の順:下の写真は「陸奥」変体から「改紀伊級」までの船型の推移を一覧したもの:手前から「陸奥」変体、「土佐級」「紀伊級」「改紀伊級=相模級」の順)

筆者の当初のプランでは、主砲を別のディテイルの整ったものに換装することも考えていたのですが、今回一連を製作してみて、かえって主砲塔にフォーカスしすぎたモデルになることも想定されるなあ、と別の懸念が出てきました。あと数隻は作成したいとは思っているのですが、主砲のモデル換装までは実行しない、という結論に至りそうです。(これまでの筆者の経験では、多くの3D printing modelでは1:1250スケールの元では、主砲塔の特に主砲砲身の再現が今ひとつ満足がいかず、別のモデルに置き換えるというようなこともあったのですが、今回のモデルの主砲塔周りの再現は十分に満足のいくものでした)

 

ということで今回はここまで。

次回は、今回ご紹介した各艦級が太平洋戦争時に存在していれば、どのような姿になっていたか、その辺りを、いくつか既にモデルがありますので、まとめ的にご紹介しようかな、と考えています。

もちろん「ピカード ・シーズン3」のお話も。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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