相州の、1:1250 Scale の艦船模型ブログ 主力艦の変遷を追って

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

模型週間として:ドイツ海軍の未成巡洋艦と新着モデルなど

本稿、前回の投稿で「この三連休は模型ウィークにしたい」と記載していましたが、少し気になっていたドイツ海軍の未成巡洋艦をアップデートしたので、今回はそちらを簡単にご紹介します。「ドイツ帝国海軍の弩級巡洋戦艦」のモデルヴァージョンアップのお話は少し先送りで。

 

これまで本稿でもご紹介してきたように、ドイツは第一次世界大戦に敗れ、帝政ドイツの崩壊と共に、ヴェルサイユ体制で重い戦後賠償を課せられます。

同時に軍備にも厳しい制限がかけられ、海軍軍備はほぼ19世紀後半の装備を持つ沿岸警備海軍の規模に縮小させられました。

巡洋艦についてみると、再生ドイツ海軍(ワイマール共和国海軍)は1890年代末期に建造された3000トン級の小型防護巡洋艦6隻を保有するのみでした。1920年代になるとこれらの旧式巡洋艦の代艦建造が始まります。(この辺り、もう少し詳しくお知りになりたい方は、本稿の下記の投稿を見てみてください)

fw688i.hatenablog.com

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 代艦として建造が認められた巡洋艦には6000トン以下、備砲は6インチ以下という制限があり、その制限の中でドイツ海軍は1921年軽巡洋艦「エムデン」、1924年から「ケーニヒスベルク級」軽巡洋艦3隻、1931年から「ライプツィヒ級」軽巡洋艦2隻を就役させてゆきました。こうしてヴェルサイユ体制下で保有が認められた巡洋艦6隻については全て新造軽巡洋艦に置き換えられた訳ですが、この間、ナチス党が政権を掌握し1934年にヒトラー国家元首に就任すると、1935年には再軍備を宣言します。同年には英独海軍協定が結ばれ、事実上、ヴェルサイユ体制での軍備制限は消滅しました。

この無制約状態で1936年にドイツ海軍が計画したのが、次にご紹介する「M級」軽巡洋艦です。

 

M級軽巡洋艦

ja.wikipedia.org

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(「M級」軽巡洋艦の概観:146mm in 1:1250 by Semi-scratched model based on Anker "Enrwulf 1938 M-R")

「M級」軽巡洋艦は通商破壊戦用に1936年に計画された軽巡洋艦です。

それまでドイツ海軍の巡洋艦に課せられていた6000トンという制限が無くなったため、7800トン級の大きな船体を持ち、55口径6インチ連装砲塔4基を主砲として搭載していました。機関にはギアード・タービンとディーゼルを併載し35ノットの高速と19ノットの速力で8000浬という長大な航続距離を併せ持っていました。(参考まで:通商破壊艦として名高い「ドイッチュラント級」装甲艦な速力26ノット、航続距離20ノットで10000浬)

6隻という保有数にも制限が課せられていた本級以前のドイツ海軍の軽巡洋艦はある種の万能艦を目指さねばならないという宿命があり、新基軸を盛り込んだ随所に無理がみられる設計でした(「ケーニヒスベルク級」では軽量化と新開発の三連装主砲塔などの重武装の搭載から、艦自体の構造に負荷がかかり過ぎ、ドイツ近海でしか行動できませんでした)が、同艦は一転して通商破壊に絞った高速性(敵性軍艦を避ける)と航続距離を具現化する堅実な設計となったであろうと考えています。f:id:fw688i:20220925135042p:image

(上の写真:「M級」軽巡洋艦の主要部の拡大:主砲は、前級「ライプツィヒ」級までドイツ海軍が軽巡洋艦の標準装備としていた3連装砲塔から連装砲塔に変更しています。3連装砲塔は意欲的でしたが、あえてオーソドックスな連装砲塔に。艦橋部の前檣はモデルでは図面(あるいは下のオリジナルモデル)のように同級独特なものでしたが、あえてドイツ軽巡洋艦的な構造に変更してみました。上段の写真で艦中央部に魚雷発射管を装備していたことがわかります)

ちなみに「M級」という名称は、正式艦名が付けられる以前の仮称で、同級はM、N、O、P、Q、Rの6隻が建造される予定でした。このうちM、Nの2隻については1938年、39年に起工されましたが第二次世界大戦の勃発で建造が打ち切られ、他の4隻については計画のみで終了しています。

模型的な視点での「M級」軽巡洋艦

1:1250スケールで本稿でも何度か紹介している未成艦・計画艦のラインナップに強いAnker社からモデルが市販されています。今回はこのモデルをベースにしています。

(下の写真は、Anker社の「Entwulf 1938 M-R」として市販されているモデルの概観:例によって写真はsammelhafen.deより拝借しています)f:id:fw688i:20220925112025j:image
このAnkerのモデルはおそらく上掲のWikipediaに掲載されている図とも近似しているので、計画に忠実なのだろうとは思うのですが、筆者の独断で(ドイツ艦らしくない、という、根拠も何もない違和感だけ、に基づいた判断なのですが)前檣部分に大幅に手を入れています。代替した前檣はストックのあるHansa社製の「ライプツィヒ」「ニュルンベルク」の前檣を移植しています。

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(上の写真は、軽巡洋艦ニュルンベルク」(手前)と「M級」軽巡洋艦の比較:「M級」の艦幅が大きいことがわかります)

 

もう一つ、ドイツ海軍の計画した軽巡洋艦を。

偵察巡洋艦計画 

en.wikipedia.org

大西洋での通商破壊戦を海軍戦略の重要な要件の一つとしていたドイツ海軍は、標的となる船団を発見し追跡する「偵察艦」の建造を計画していました。6000トン級の船体に、6インチ連装砲塔3基を搭載し、36ノットの高速を発揮する大型の駆逐艦というような形状の艦で、1943年に計画は中止されています。

(偵察巡洋艦の概観。122mm in 1:1250 by Hansa:Wikipediaの図面では艦中央部に水上偵察機関連の装備が描かれていますが、このHansa社のモデルではこの部分に魚雷発射管が2基装備され、大型駆逐艦のような外観になっています 

この前檣、もう少し「巡洋艦らしく」してみましょうかね。Hansa社のモデルはしっかりしていて全体のフォルムは好きなのですが、Neptun等のディテイルが作り込まれたモデルと比べると、どこか手を入れたくなります。(多分、「巡洋艦らしく」手を入れるとHansa社の「エムデン」「ケルン」あたりのストックモデルが移植元の候補になるんだろうなあ、とこれは独り言)

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(偵察巡洋艦とドイツ海軍駆逐艦(手前)の比較:大型駆逐艦的な概観ではありますが、やはりかなり大きさが異なることがわかります

 

さて、もう一隻、次にご紹介する艦については、実は公式に計画があった、という資料に当たれていません。今のところGameの世界で計画の資料を見つけたのみ、です。(どなたか計画の断片でも資料をお持ちの方がいらっしゃたら、是非、お知らせください)

アドミラル・ヒッパー級巡洋艦、6インチ主砲装備案

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(「ヒッパー級」6インチ主砲搭載軽巡洋艦の概観:169mm in 1:1250 by Semi-scratched model based on Hansa "Lutzow (Enrwulf) )

forum.worldofwarships.eu

少し詳細を端折ると、ここでは「プリンツ・オイゲン」の姉妹艦のアイディアとして種々のイラストが示された中で、軽巡洋艦の主砲塔装備案として下の図面が紹介されています。

(下図は上掲のURL:World of Warshipのサイト内のファン・フォーラムへの投稿から拝借しています。この図面の原典がどこかにあるはずのなのですが、これが探せていません)

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この図面の下のスペックを見ると14000トン級の船体を持ち、32ノットの速力を発揮、とあるので、ほぼ「アドミラル・ヒッパー級」、記載されている寸法を見ると同級の改良タイプでやや大型の3番艦「プリンツ・オイゲン」に準じたものになっていることがわかります。

上の図面でも記載されているように同級の後期型でいずれも起工されながら建造が中止された「ザイトリッツ」「リュッツオウ」が6インチ砲装備の軽巡洋艦として完成していたら、ということなんでしょうね。f:id:fw688i:20220925140143p:image

(「ヒッパー級」6インチ主砲搭載軽巡洋艦の細部:「ヒッパー級」に比べて前檣の構造が簡素になっています(上段)。カタパルトを2基装備し。その間を航空機整備甲板に(中段))

史実上ではこうしたスペックの軽巡洋艦が、いわゆる「条約型巡洋艦」として存在していることは、多分ご承知だろうと思います。背景には主力艦の保有数を制限し、増大する一方だった列強の海軍軍備負担を軽減しようという意図で成立したワシントン・ロンドン海軍軍縮条約があります。同条約の制約下で、重巡洋艦軽巡洋艦の定義が主砲の口径差で生まれ、8インチ砲装備の重巡洋艦保有枠を使い切った列強海軍が、重巡洋艦に対抗できる速射性の高い6インチ砲を多数装備した大型の軽巡洋艦の建造に移行していったのでした。

日本海軍の「最上級」「利根級」、米海軍の「ブルックリン級」「セントルイス級」、英海軍の「タウン級」などがこれにあたります。

ヴェルサイユ体制ではドイツ海軍は重巡洋艦保有は認められておらず、あわせて同海軍はワシントン・ロンドン条約の批准国でもないので、同海軍がこの種の艦種を保有する根拠は希薄なのですが、列強が装備していた速射性の高い中口径砲を多数装備し、つまり重巡洋艦よりも手数の多い大型巡洋艦になんらかの興味を持てば、あるいはあり得たのかも、というところでしょうか。

モデルについて

驚くべきことに、1:1250スケールではなんと同種の艦についてもモデルが市販されています。

(下の写真はHansa社から市販されている同艦種のモデル:例によって写真はsammelhafen.deより拝借しています。入手したんだから、手を入れる前に写真を撮っておけばいいのに、そういうのは忘れてるんです、とほほ。「Lutzow (Entwutrf)」という商品名です。「Lutzow」は「ヒッパー級」の5番艦として着工され、大戦勃発で工事中止に。その後、未完のままソ連に売却されたという経緯を持つ艦です。商品名のEntwurf=draftというような意味ですので、「リュッツオウ(試案)」ですかね)

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筆者はこれを入手し、例によって同社の主砲と高角砲がややもったりした印象があったので、これらをNeptun社のジャンクモデルからのものに換装して少しディテイルを整えています。

実はその際に後檣も手を入れたかったのですが、同艦はベースとなった「アドミラル・ヒッパー級重巡洋艦と異なり、カタパルトを2基装備しその間を航空整備甲板としたため、下部を水上偵察機が移動できるようなある種トンネル構造のような特異な後檣の形状をしています。面白いのでそのままで。いずれは上部だけでも真鍮線でリプレイスしてみましょうか。

重巡洋艦プリンツ・オイゲン」との比較

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重巡洋艦プリンツ・オイゲン」の概観 by Neptun)

 

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(上の写真は概観比較:「プリンツ・オイゲン」が奥。下の写真では、両者の細部比較(左列が「プリンツ・オイゲン」:主砲塔が最大の相違点ですね。製造者の違いはやはり大きいかも。Neptun社だったらどんな前檣にしたんでしょうか?みてみたい気もしますが、計画でもあれば別ですが、資料もない艦は流石にNeptun社は作らないでしょうね)
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ドイツ海軍の未成・計画巡洋艦f:id:fw688i:20220925141240p:image

(今回ご紹介した未成艦・計画艦:手前から「計画偵察巡洋艦」「M級軽巡洋艦」「ヒッパー級6インチ主砲装備艦」の順)

 

ということで、今回はドイツ海軍の未成艦・計画艦と、もしかすると計画すら存在しなかったかもしれない軽巡洋艦のお話でした。

でも筆者的には「想像の羽」が伸ばせて、かなり楽しい数日間でした。

今回は短いけどこの辺りで。

ああ、それと、是非とも、もし今回最後にご紹介した「ヒッパー級」6インチ主砲装備案について、何か情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、どんな話でもいいので教えてください。ゲーム内の情報でもいいので、是非。お待ちしています。

 

次回は今回先送りした「ドイツ帝国海軍の弩級巡洋戦艦」のモデルヴァージョンアップのお話、ですかね。

もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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