相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

ロイアル・ネイヴィー:少し遡って第一次世界大戦期の軽巡洋艦の系譜

 本稿では前回から「第二次世界大戦期の英海軍巡洋艦」というテーマを取り上げているのですが、第二次世界大戦期の軽巡洋艦を語るには、やはり「軽巡洋艦」の系譜を少し遡ってみておくべきかと考え、今回は「軽巡洋艦」の成り立ち、つまり「第一次世界大戦型の軽巡洋艦」を見ておこうと考えています

少し余談ですが、筆者には、サケやアユの仲間の様に「系統・系譜」という「流れ=川」を見ると遡上する習性がある様です。この「第一次世界大戦期の英海軍軽巡洋艦」というテーマも、第二次世界大戦期の英海軍巡洋艦の系譜を辿るうちに、系譜の流れを遡上して行き着いた、そんな感じです。

更に、その中で、以下のようなサブ・クラスなどが出てくると、もう涎ダラララ。コレクターの哀しい(「愉しい」というべきか)性として、小さな支流だろうが遡ります。

 

今回はそういうお話。

ですので、あれ、どこかで読んだかも、という感じになるかもしれませんが、そこはご容赦を。

 

防護巡洋艦(Protected Cruiser)から「軽巡洋艦=軽装甲巡洋艦(Light Armoured Cruiser)

これまで何度か紹介してきていますので、少しくどい感じなりますが、やや乱暴に整理すると、「軽巡洋艦」という艦種は艦船の燃料の重油化により防護巡洋艦から派生(進化?)した艦種、と言えると考えています。英海軍は世界最初の近代海軍の保有国であり、その長い歴史における海軍の主要な任務は「太陽の沈まぬ帝国」と表現される世界各地に広がった海外植民地との通商路保護でした。

その目的のために「巡洋艦」という艦種が開発されるのですが、通商路保護(あるいは時には適性国の通商路破壊)の目的のためには、保護対象である(あるいは捕捉対象である)商船を凌駕する軽快な機動性と、長い通商路に適応する航続距離が求められました。

この両立を狙い設計された巡洋艦が「防護巡洋艦」(Protected Cruiser)です。

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防護巡洋艦」は、その構造を乱暴に整理すると、舷側の石炭庫を一種の空間装甲とし、加えて船体内に機関部と弾薬庫を保護する中間装甲甲板を装備することで、艦主要部の防御力を確保した艦種です。これにより舷側に装甲帯を装備するよりも船体重量を軽減し、速力と航続力を求めた設計と言えます。

この艦種の始祖は、チリ海軍が英国に発注した「エスメラルダ」(1883)と言われ、後に日本海軍が購入し「和泉」となりました。本艦がアームストロング社エルジック造船所で建造されたところから、以降、同様の設計で建造された防護巡洋艦は、造船所の場所に関わらずエルジック・クルーザーと呼ばれるようになりました。

防護巡洋艦「和泉」

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Japanese cruiser Izumi - Wikipediaf:id:fw688i:20180917122434j:image

(「和泉=エスメラルダ」 68mm in 1;:1250 Navis:3000トン弱の船体に、主要兵装として25.4センチ単装砲2門を主砲、他に15センチ砲6門を装備し、18ノットの速力を出すことが出来ました)

 

やがて、二つの要因が、この「防護巡洋艦」に終焉と進化をもたらすことになります。  

一つは燃料の重油化。重油は燃焼効率、補給の簡便さ(「積み込み作業」(公海上での給炭時など、乗組員が真っ黒になって行った、なんてエピソードもあります)から「給油」への移行)等の点から、急速に進むのですが、一方で「防護巡洋艦」の設計では防御の基本要件の一つであった「石炭庫を利用した空間装甲」が成立しなくなるわけです。

もう一つは、中口径「速射砲」の発達。「速射砲」はその名の通り射撃速度を格段に高め、砲戦時の命中弾を格段に増やす効果があります。「日清戦争」「日露戦争」では、速射砲を搭載した巡洋艦が多用され、これらの実戦での戦訓から「防護巡洋艦」の機関や弾薬庫など主要部分を覆った防護装甲甲板を撃ち抜かれなくても、上部構造の破壊や非装甲部からの浸水などで戦闘力を失うケースが現れ、急速に「防護巡洋艦」の価値が減少してしまいます。

これらの二つの要因から、再び舷側の垂直防御装甲の必要性が見直され、既に補助的な主力戦闘艦として成立し、主力艦の一翼として大型化の一途を辿りつつあった「装甲巡洋艦=やがて巡洋戦艦」をベースとして、これらよりも軽快で長い航海に適応した「軽装甲巡洋艦軽巡洋艦」が生まれます。

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「そもそも「装甲巡洋艦」って、どうなんだっけ?」という方には、こちら。第一次世界大戦期の英独両海軍の装甲巡洋艦を対比しています。ちょっと他にも諸々記述してますが・・・。

fw688i.hatenablog.com

 

第一次大戦型英海軍軽巡洋艦 

前述のように英海軍は世界最初の近代海軍であり、その長い歴史に登場する艦級を網羅することは相当な覚悟がいるので、どこかで遡上の線引きをすることになるのですが、「軽装甲巡洋艦軽巡洋艦」については、以下の様に発展形態を辿ることができます。

タウン級軽巡洋艦(初代)

アリシューザ級軽巡洋艦(初代)

C級軽巡洋艦

ダナイー級(D級)軽巡洋艦

エメラルド級(E級)軽巡洋艦

 

 「タウン級」防護・軽巡洋艦(過渡期的な・・・)

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タウン級(初代)」巡洋艦には以下の5つのサブ・クラスがあります。

ブリストル級」防護巡洋艦

「ウェイマス級」防護巡洋艦

「チャタム級」軽巡洋艦

バーミンガム級」軽巡洋艦

「バーケンヘッド級軽巡洋艦

全ての艦名が、イギリス(あるいは英連邦諸国)の都市の名前に由来するところから「タウン級」と総称されています。

そのうち最初の二つは舷側装甲を石炭庫による空間装甲とする設計で防護巡洋艦に分類されています。

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(「タウン級」サブ・クラスの勢揃い。手前から「ブリスター級」防護巡洋艦、「ウェイマス級」防護巡洋艦、「チャタム級」軽巡洋艦、「バーミンガム級」軽巡洋艦、「バーゲンヘッド級軽巡洋艦の順) 

 

ブリストル級」防護巡洋艦同型艦:5隻)

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 (「ブリストル級」防護巡洋艦の概観:109mm in 1:1250 by Navis)

本級は外洋作戦用の巡洋艦として設計された艦級で、外洋の悪天候化でも行動ができるように4800トンの比較的大きな船体を持ち、良好な航洋性を発揮しました。

しかし、舷側には装甲帯を持たず、防御は舷側の石炭庫と船内の防護甲板による、という未だに防護巡洋艦の設計でした。

艦隊随伴護衛艦としては高い評価を得ましたが、通商路保護の観点からは25ノットの速力は十分とは言えませんでした。6インチ単装砲2基と4インチ単装砲10基を搭載していました。

 

「ウェイマス級」防護巡洋艦同型艦:4隻)

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 (直上の写真:「ウェイマス級」防護巡洋艦の概観:110mm in 1:1250 by Navis)

同級は「ブリストル級」では6インチ砲と4インチ砲の混載であった主砲を、6インチ単装砲に統一し、砲力の強化を図っています。(6インチ単装砲8基搭載)併せて、航洋性改善のために船首楼を延長するなど、船体構造を見直し、排水量が5250トンに拡大しています。

水線部の装甲帯はまだなく、防護巡洋艦の形態であったと言えるでしょう。 

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(直上の写真は、「ブリストル級」(左列)と「ウェイマス級」の細部比較:「ウェイマス級」では主砲を6インチ砲に統一し砲力を強化しています。中段の写真では航洋性改善のために延長された船首楼の形状がよくわかります)

 

「チャタム級」軽巡洋艦同型艦:6隻)

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(直上の写真:「チャタム級」軽巡洋艦の概観:112mm in 1:1250 by Navis)

本級は初めて水線部に装甲帯を装着し、前2級の「防護巡洋艦」の設計から「軽装甲巡洋艦」に基本設計を変更した艦級です。本級によって「軽巡洋艦=軽装甲巡洋艦」の設計が確立されたと言っていいでしょう。船体は前級よりさらに大型化し、船首楼のさらなる延長などにより、航洋性がさらに改善されています。艦種形状をクリッパー型に改めていますが、速力は25.5ノットに留まっています。(5400トン、6インチ単装砲8基搭載)

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(直上の写真は、「ウェイマス級」(左列)と「チャタム級」の細部比較:「チャタム級」では艦首形状をクリッパー型の改め、船首楼を艦中央部まで延長し、さらに航洋性を高めています)

 

  バーミンガム級」軽巡洋艦同型艦:4隻)

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(直上の写真:「バーミンガム級」軽巡洋艦の概観:112mm in 1:1250 by Navis)

本級は、6インチ単装砲を更に1基増設し、9基と砲力を強化しています。しかし、一方で他艦種で改善著しい高速化への対応に遅れを取った結果となり、「タウン級巡洋艦は本級を最後のサブ・クラスとして、建造が打ち切られました。(5440トン、6インチ単装砲9基搭載)

 
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(直上の写真は、「チャタム級」(左列)と「バーミンガム級」の細部比較:艦首部に単装主砲を2基装備しています(上段写真)。その他には大きな差異はなく、「チャタム級」後期型、とでもいうべき艦級です。写真では前檣方位版を搭載した姿を現しています)

 

「バーケンヘッド級軽巡洋艦同型艦:2隻) 

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(直上の写真:「バーゲンヘッド級軽巡洋艦の概観:112mm in 1:1250 by Navis)

本級はギリシア海軍が英国に発注していたものを、第一次世界大戦の勃発に伴い接収し自国艦隊に編入した艦級です。「タウン級」の他のサブ・クラスが6インチ砲装備であったのに対し、一回り小さな14センチ単装砲塔10基を搭載しています。14センチ砲は弾体重量が6インチ砲に比べ20%ほど軽く、扱いが容易で高い射撃速度を発揮することができました。一方で、当然のことながら単体あたりの破壊力が劣り、英海軍では本級のみの装備となりました(5185トン、25.5ノット)

余談ですが、14センチ砲は、日本海軍では、日本人の体格を考慮し、「伊勢級」「長門級」戦艦の副砲、軽巡洋艦主砲などに、広く採用されました。

 

(直上の写真は、「バーミンガム級」(左列)と「バーゲンヘッド級」の細部比較:今回の比較は「艦級」間の比較、というよりも、模型的な視点で見た「再現度の差異」が気になります。以前にも少し愚痴をこぼしましたが、これはコレクションをしていて、いつも頭の痛い問題なのです。まあ、当たり前のことと言ってしまえばそれまでですが、この両者はいずれもNavis社製のモデルなのですが、制作年次が違うのです。当然のことながら模型メーカーは品質改善のために新たなヴァージョンを発売し、ヴァージョン違いで精度に大きな差異が発生するわけです。コレクター的には「キリがない」ということになってしまいます。「思い切り」しか解決法はない、とはわかっているのですが、やはりここまで大きな再現性の進化を見てしまうと・・・。困ったなあ)

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タウン級」の勢揃い

(「タウン級」サブ・クラスの勢揃い。手前から「ブリスター級」防護巡洋艦、「ウェイマス級」防護巡洋艦、「チャタム級」軽巡洋艦、「バーミンガム級」軽巡洋艦、「バーゲンヘッド級軽巡洋艦の順) 

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タウン級」防護・軽巡洋艦のまとめをしておくと、「ブリストル級」防護巡洋艦:5隻が就役し戦没艦はなし、「ウェイマス級」防護巡洋艦:4隻が就役し戦没艦1隻、「チャタム級」軽巡洋艦:就役6隻、戦没艦なし、「バーミンガム級」軽巡洋艦:4隻就役、1隻戦没、「バーケンヘッド級軽巡洋艦:2隻就役、戦没艦なし、という戦歴でした。やはり高速化へ対応の遅れからでしょうか、ほとんどの艦が第一次世界大戦直後の1920年代に退役しています。

 

 「アリシューザ級」軽巡洋艦同型艦:8隻)

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(直上の写真:「アリシューザ級」軽巡洋艦の概観  105mm in 1:1250 by Navis)  

前述の「タウン級巡洋艦での課題を踏まえ、 艦隊巡洋艦の高速化を主眼に置き、速度を重視して、本級は設計されました。駆逐艦で使用されていた機関を使用し、燃料は重油のみとなっています。それまでの巡洋艦の速力が25ノット代であったのに対し、28ノットの速力を出すことができました。3750トンの船体に、6インチ砲2門、4インチ砲6門を装備し、連装魚雷発射管2基を装備していました。

高速性と水線防御装甲帯の装着の両立により、「軽装甲巡洋艦」が確立されたという点で、本級は記念すべき艦級であると言っていいでしょう。

しかし、カタログ上の性能はさておき、実際の運用場面では設計に無理があり、通常運用において性能を全面的に発揮することはできなかったようです。

 

「C級」軽巡洋艦 

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「C級」軽巡洋艦は、艦名が「C」で始まる軽巡洋艦群で、サブクラスが以下の7クラスあり、北海での行動を想定して設計されました。

「カロライン級」Caroline class

「カライアビ級」Calliope class

「カンブリアン級」Cambrian class

「セントー級」Centaur class

「カレドン級」Caledon class

「シアリーズ級」Ceres class

「カーライル級」Carlisle class

 

 

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(直上の写真:「アリシューザ級」と「C級」の形状比較:大型化されていることがわかります)

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(直上の写真は、「C級」軽巡洋艦の7つのサブクラスの一覧。右から、「カロライン級」「カライアビ級」「カンブリアン級」「セントー級」「カレドン級」「シアリーズ級」「カーライル級」の順)

 

 「カロライン級」軽巡洋艦同型艦:6隻)

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(直上の写真:「カロライン級」軽巡洋艦の概観 108mm in 1:1250 by Navis) 

「アリシューザ級」の拡大改良型で、船体を大型化することにより、前級で課題のあった復原性、高速での航洋性を改善しています。大型化した船体により武装を強化しています(「6インチ砲2門:艦尾部に搭載、4インチ砲8門、連装魚雷発射管2基 4219トン 28.5ノット 同型艦6隻)。

 

 

「カライアビ級」軽巡洋艦同型艦:2隻)

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(直上の写真:「カライアビ級」軽巡洋艦の概観 108mm in 1:1250 by Navis) 

「カロライン級」の機関を改良した艦級で、缶数の現象から煙突が2本に減りました。29ノットその速度を発揮し、武装は「カロライン級」を継承し、6インチ砲と4インチ砲を混載していましたが、前級も含め、後に6インチ単装砲に主砲口径を統一し単装砲4基搭載としています。(4228トン。同型艦2隻)

 

「カンブリアン級」軽巡洋艦同型艦:4隻)

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(直上の写真:「カンブリアン級」軽巡洋艦の概観: 艦首部の主砲を4インチ砲から6インチ砲に換装した後の姿 108mm in 1:1250 by Navis) 

1914-1915年次に建造された「カライアビ級」のほぼ同型艦です。前級「カライアビ級」では実験的にセミ・ギアードタービンが搭載されましたが、本級では従来の直結タービン搭載とし、速力が28ノットにやや低下しています。建造後、武装の強化などが行われています。(4320トン。28ノット。同型艦4隻)

 

「セントー級」軽巡洋艦同型艦:2隻)

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(直上の写真:「セントー級」軽巡洋艦の概観 108mm in 1:1250 : 本艦級は既成の模型がありません。そこでNavis社の「カレドン級」をベースに艦首形状を修正しています。サブスクラッチで再現を目指したつもりだったのですが、実はこの艦級は、水中魚雷発射管を艦内に装備していた事に、作業後、気がつきました。ベースとして使用した「カレドン級」では魚雷発射管が水上発射管係式になっています。ちょっと失敗かも

「カンブリアン級」とほぼ同型の船体を持ち、4インチ砲との混載をやめ、武装を6インチ砲5門に統一しています。トルコ海軍向けに製造されたセミ・ギアードタービンを、工期退縮を目的に採用し、速力が29ノットに向上しています。設計当初から三脚式前檣を採用し、大型方位版照準装置を搭載し射撃指揮能力を向上しています。(4165トン。29ノット。同型艦2隻)

 

「カレドン級」軽巡洋艦同型艦:4隻)

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(直上の写真:「カレドン級」軽巡洋艦の概観 109mm in 1:1250 by Navis) 

第一次世界大戦勃発に対応し急造された艦級です。「セントー級」の武装を継承し、6インチ砲5門を搭載し、魚雷発射管をそれまでの水中発射管から甲板上に上げ、連装魚雷発射管4基と強化しています。艦首形状を、直線的な形状に改めています。4120トン。29ノット。同型艦4隻。

第一次世界大戦で失われた「カサンドラ」を除き、第二次世界大戦に参加しています。

 

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(直上の写真:「セントー級」(上段)と「カレドン級」軽巡洋艦の艦首形状の比較。「カレドン級」から艦首形状が変わりました)

 

「カレドン級」防空巡洋艦への改装

前述のように「カレドン級」軽巡洋艦第二次世界大戦にも船団護衛等の任務で運用されました。中でもネームシップの「カレドン」は艦容が全く変わってしまうほどの改装を受けるのですが、残念ながらモデルが筆者の知る限りありません。(どこかで製作してみようかな。ちょっと改装範囲が大きいので、しっかり準備が必要です)

同級の他の艦はあまり改装を受けず、原型に近い状態で任務についたのですが、「もし、防空巡洋艦に改装されていたとしたら」と言ういわゆる「if艦」を作成してみました。

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(直上の写真:「カリドク(Caradoc)」の防空巡洋艦改装後の姿(「If艦」で実在しませんのでご注意を。))

(下の写真:同級4番艦「カリドク(Caradoc)」の防空巡洋艦改装案のスケッチはみたことがあるので、それを参考にし、少し兵装過多のような気がしたので、スケッチよりは兵装を軽くして製作してみました:艦橋前、1番砲座に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を設置(上段)、2番砲座、3番砲座のいちにポンポン砲を設置(中段)、4番砲座と5番砲座に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を(下段):スケッチでは2番砲座も連装高角砲に換装、となっていたと記憶します)
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 「シアリーズ級」軽巡洋艦(同型艦:5隻)

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(直上の写真:「シアリーズ級」軽巡洋艦の概観 109mm in 1:1250 by Navis) 

「カレドン級」の改良型。搭載砲の数は変わりませんが、それまで艦橋を挟んで前後に配置されていた6インチ砲を、艦橋前に背負式に搭載する形式に改め、艦首方向の砲力を強化しています。(4190トン。29ノット・同型艦5隻)

 

防空巡洋艦への改装

同級のうち3隻が、第二次世界大戦前には、早くも兵装を高角砲に換装し、防空巡洋艦として参加しています。主砲を全て高角砲に換装し、艦隊防空を担わせる専任艦種を整備する、という思想に、第二次世界大戦まえに発想が至っていた、というのはある種驚きですね。

同級で防空巡洋艦への改装を受けた3隻のうち「コベントリー(Coventry)」と「カーリュー(Curlew)」は4インチ単装高角砲(QF 4 inch Mk V gun)10基をその主兵装として改装されました。

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(上の写真は防空巡洋艦へ3改造された「コベントリー」の概観:108mm in 1:1250 by Argonait:下の写真では「コベントリー」の単装対空砲の配置をご覧いただけます。艦首部に2基(写真上段)、艦中央部に4基(写真中段)、艦尾部に4基(写真下段)が配置されていました)

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一方「キュラソー(Curacoa)」は4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)4基を主兵装として改装されました。

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今回はこの「キュラソー」をNavis製のモデルをベースにセミ・スクラッチしたものをご紹介。

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(上下の写真は、防空巡洋艦に改装後の「キュラソー(Curacoa)」:同級は3隻が防空巡洋艦に改装されていますが、「キュラソー」が改装時期が最も遅く、他の2艦が4インチ単装高角砲(QF 4 inch Mk V gun)10基を搭載していたのに対し、同艦のみ4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を4基搭載しています。1番砲、3番砲、4番砲、5番砲が連装高角砲に換装されました。2番砲座にはポンポン砲が設置されました)

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防空巡洋艦として就役した3隻はいずれも大戦中に失われています。

 

「カーライル級」軽巡洋艦同型艦:5隻)

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(直上の写真:「カーライル級」軽巡洋艦の概観 109mm in 1:1250 :この艦級は、Navisからは模型が出ていません。そこで入手できたCopy製のモデルをディテイル・アップする事にしました。武装や艦橋の上部構造をNavisの他の模型や他のパーツのストックから転用して、仕上げてみました) 

「シアリーズ級」の改良型。前級で課題であった艦首部の搭載砲への飛沫対策として「トローラー」船首に形状を改めています。(4290トン・29ノット。同型艦5隻)

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(直上の写真:「シアリーズ級」(上段)と「カーライル級」軽巡洋艦の艦首形状の比較。課題だった艦首主砲への飛沫対策が「トローラー・バウ」形式と呼ばれる艦首形状の変更となって現れました。以後、この艦首形状は英海軍巡洋艦の標準仕様となってゆきます)

 

防空巡洋艦への改装

第二次世界大戦には前級「シアリーズ級」同様、改装が間に合わなかった「ケープタウン」をのぞき、主砲を高角砲に換装し防空巡洋艦として参加しています。「シアリーズ級」で紹介した「キュラソー」とほぼ同様の、つまり防空巡洋艦としては最も徹底的に改装されたわけですが、防空巡洋艦に改装された4隻のうち3隻が戦没しています。(モデルはAugonaut製のものが出ていますが、未入手です。Augonautは、最近希少で高い!)

 

 「D級」軽巡洋艦同型艦:8隻・4隻が建造中止)

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(直上の写真:「D級」軽巡洋艦の概観 117mm in 1:1250 by Navis) 

「C級」軽巡洋艦(後期型:「カレドン級」以降の3サブクラス)をタイプシップとして、その拡大強化版。6インチ主砲を1門増やし、雷装も3連装魚雷発射管4基と強化しています。(4970トン。29ノット。同型艦8隻)

 

「D級」軽巡洋艦第二次世界大戦中、英国に亡命したポーランド傍系政府の指揮下にある自由ポーランド海軍に貸与されています。

「ドラゴン級」軽巡洋艦(1943- :同型艦2隻・旧英「ダナイー級」軽巡洋艦f:id:fw688i:20201011135045j:image

(直上の写真:自由ポーランド海軍に貸与された「ドラゴン級」軽巡洋艦の概観。117mm in 1:1250 by B-Plan:)

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 1943年、イギリスは自由ポーランド海軍からの要請を受け「ダナイー級」軽巡洋艦を2隻貸与します。同艦級は自由ポーランド海軍最大の艦となりました。

貸与された2隻はそれぞれ「ドラゴン」(旧名「ドラゴン」)、「コンラッド」(旧名「ダナイー」)と命名され、雷装を全廃し、対空兵装を強化し、船団護衛等の任務への適性を高める改装を受けました。

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(直上の写真:自由ポーランド海軍に貸与された「ドラゴン級」軽巡洋艦の強化された対空装備)

「ドラゴン」は1944年7月に ドイツ海軍の小型潜水艇の雷撃で大破。その後、ノルマンディー上陸作戦で防波堤として自沈しました。

コンラッド」は大戦を生き抜き、1947年にイギリスに返還されています。

 

「E級」軽巡洋艦同型艦:2隻)

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(直上の写真:「E級」軽巡洋艦の概観 138mm in 1:1250 by  Argonaut) 

 「E級」軽巡洋艦は、敵性巡洋艦の排除を目的として、速力を重視して設計されました。大きな機関を搭載するため、艦型は大型化しています。兵装は「D級」よりも6インチ砲を1門増やし、さらに対空兵装を格段に強化しています。(7550トン。33ノット。同型艦2隻)

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(直上の写真は、「E級」軽巡洋艦の主砲配置を表したもの)

『E級」軽巡洋艦は、「エメラルド」と「エンタープライズ」の2隻が建造されましたが、主砲の装備形態が「エメラルド」は全て単装砲架で搭載していますが、「エメラルド」では艦首部に背負式に搭載されている単装砲架を、「エンタープライズ」は連装砲塔で搭載しています。「エンタープライズ」は現在、手元のモデルを整備中ですので、今回は「エメラルド」のみご覧いただきます。

「手元のモデルを調整中・・・」:この件、後日談的に追記すれば、結局、この目論見、あまりにも仕上がりに差が出るので、この方式でのコレクションへの追加は断念しました。質の良い艦船の調達には、模型の世界でも「お金がかかる」、そういうことですね。Argonautの精度は高い。しかし、本稿のどこかで紹介した気もしますが、Argonautのオーナー氏が他界され、以降、Argonautレーベルのモデルが新たに流通に乗ることはなさそうですので、以後、当面。Argonaut製品の調達は、現在の中古市場に頼らざるをえず、各区の高騰が始まっているとか。やれやれ)

 

ということで、突然、割り込んだ形の「第一次世界大戦期の英国巡洋艦」。これで、「第二次世界大戦期の英国軽巡洋艦」紹介への地ならしはできたかな?

取り敢えず今回はここまで。

 

次回は、この流れで「第二次世界大戦期の英国海軍、軽巡洋艦」ですね。ほぼ確定、かな?

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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