相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

「フラワー級」コルベットの話

本当に申し訳なく思うのですが、今回も筆者の大好きな護衛艦(コルベット)の話です。

ちょっと取り止めのない話になりそう。作りたかった、並べたかった、という感じですので。

 

本稿の「映画「グレイハウンド」に登場する艦船」の回で、「フラワー級コルベットについてはご紹介しました。

fw688i.hatenablog.com

その際に上掲の会の最後の方で、1:350のモデルと1:1250のモデルを数隻調達中と書きました。彼女達が到着。今回はそういうお話です。

 

フラワー級コルベット

フラワー級コルベットがどのような船かは、上掲の回でも紹介していますが今一度ご紹介。

ja.wikipedia.org

概要をまとめておくと、英海軍が第二次世界大戦の開戦後、再び大西洋で猛威をふるい始めた独海軍のUボート対策として、導入した艦種で、短期間での量産性を考慮して、捕鯨船を原型として設計されたほぼ対潜水艦専用の護衛艦艇です。タイプシップ捕鯨船であることから、就役当初は「対潜捕鯨船(A/S whaler)」と呼ばれていた時期もあったようです。

捕鯨船をベースとしたことから、商船出身の乗組員でも比較的運用が容易で、乗組員調達等の面からも数を揃えることができました。

兵装としては、1000トン余りの船体に4インチ砲1門と機関砲数門を搭載し、水中聴音機とアズティック、レーダーを標準装備。船尾に爆雷投下軌条2基と舷側への投射機2基、設計時期によっては前方への投射能力も加味してヘッジホッグも搭載した事例もあったようです。初期の搭載爆雷数は40発が定数とされていましたが、のちに72発まで増備されました。

量産性に対する要求から、調達の容易なレシプロ蒸気機関を主機として、16ノット程度の速力を発揮することができました。航続距離は12ノットの巡行速度で3500海里(約6600キロ)でしたが、大西洋を横断する場合を考慮すると、例えばハリファックスリヴァプール間の直線距離が約2400海里(約4500キロ)、これを約8ノット程度の船団速度にあわせ、寄港地を結ぶ迂回航路を取り、さらに回避行動を取りながら船団周辺を警戒しつつ護衛する、と考えると、航続距離には大きな課題があったと言えるでしょう。

かつ、大西洋を横断する船団の航海は、記録から見ると15日から20日程度かかると思われます。おそらくこういった長期航海の場合には、1000トン余りの船に乗組員定数の最大である85名が乗組み、荒れる大西洋を航海したでしょうから、途中数カ所の経由地での補給等があるとはいえ、居住性は劣悪だったろうと想像できます。

1939年から44年までの間に、イギリスで140隻、カナダで123隻が建造され、うち31隻が失われましたが、沈めた敵潜水艦は42隻、という戦果を残しています。まあ、対潜水艦戦の場合、複数艦、場合によっては航空機との共同作戦である場合が多く、戦果認定はかなり難しいのですが、いずれにせよ、英国のシーレーン防御に多大な貢献を残したことは間違いありません。

 

最近の愛読書「三隻の護送艦」

フラワー級コルベットについて書かれた本、ということでご紹介。知る人ぞ知る第二次大戦の海戦小説の名著「非情の海」の作者であるニコラス・モンサラットの「フラワー級コルベット乗組員時代のの乗組メモ、のような本です。まさにメモで、小説のような構成などされておらず、つらつらと日常が書き綴られています。これをベースに「非情の海」(左下)や「マールボロー号の帰港」(右下に収録)などの名作が生み出されたそうです。大変興味深い。こうした本が絶版状態です。

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古書は今のところそれほど高価ではなく手に入るのですが、本の状態もちょっと不安なので文庫を出してほしいなあ。特に最近、WFHで出勤時にはPC を持ち歩きます。手荷物が重いので、是非、文庫が欲しい! (「光人」文庫あたりにあってもいいかと、お願いしてみてはいるのですが・・・)

でも、いい本ですよ。船団護衛とか興味のある方にとっては、ね。

 

1:1250スケールのモデル

今回調達したのは、本稿でも既にご紹介済みのThe Last Square製のモデルです。

http://www.lastsquare.com/zen-cart/index.php?main_page=index&cPath=103_146_147&sort=20a&page=3

同社には上のリンクのようにCostal Forcesという名称の第二次世界大戦を扱った小艦艇のシリーズがあり、この中で「フラワー級コルベットのいくつかのヴァージョンが展開されています。まあ大雑把にいうと「初期型」(as built)、「後期型」(II)、「カナダ海軍型」「ヘッジホッグ装備型」(III)という感じでしょうか?1:1250スケールという小さなモデルでもあり、どこまでディテイルを信じていいのか、疑問を持ちだすときりがないのですが、種々のバリエーションがあった、ということでザックリ揃えてみます。(何故か、III型だけは発注しませんでした。自分でも理由がわかりません。それと、塗装は例によって筆者のオリジナルです。「こんな感じだったら、なんかそれっぽいんじゃない?」という感じの塗装なので、資料的な価値は全くありませんのでご注意を。これは、何も、今回に限ったことではないのですが)

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(直上の写真:「フラワー級コルベット初期型:1941年までに建造されました。50mm in 1:1250 by The Last Square: Costal Forces) 


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(直上の写真:「フラワー級コルベット後期型:1942年以降、建造されました)

 

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(初期型と後期型の大きな外観上の相違点は艦橋の構造にあります)


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(直上は「フラワー級コルベット、カナダ海軍仕様初期型:と言っても筆者の中では、という程度。製造元の側もタイトルは「カナダ海軍仕様」と明記していますが、特徴説明は前出の「英海軍仕様の初期型」と同じ説明文です。単に造船所の違いだけ、案外そんなところかもしれません。何せ、量産を急いだでしょうから)


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(直上は「カナダ海軍仕様の後期型」艦橋の構造が変わっているのと、艦中央部の仕様が、前出の「英海軍仕様後期型」とはやや異なっています。繰り返しになりますが、塗装は筆者の好み、分類上のご都合=見分けやすい、なので、あまり参考になりません)


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 (カナダ海軍仕様「フラワー級コルベット、前期型・後期型:右の2隻が後期型)

 

ライバル「Uボート」との比較

下の写真はライバルであるドイツ海軍のUボートとの大きさの比較です。

ここでは代表的なUボートを二種ご紹介。

第一次世界大戦でその無制限潜水艦作戦で英国を窒息の一歩手前まで追い詰めたドイツの潜水艦部隊でしたが、敗戦後、潜水艦の保有を禁じられてしまいます。ヒトラー再軍備宣言と英独海軍協定で再保有が認められ、ドイツ海軍は急速にその潜水艦部隊の再建を進めますが、十分な準備に至らないまま第二次世界大戦の海戦を迎えてしまいました。

潜水艦の役割を、艦隊決戦の補助戦力一点張りとして敵艦隊を追尾し襲撃する大型で高性能な潜水艦整備に重きを置いた日本海軍と異なり、ドイツ海軍のUボートは通商破壊戦での運用に主眼を据えて設計されており、多数を配備することにより、常設性が高く、潜水という能力により浸透性に優れるという、総力戦には最適な特徴を兼ね備える潜在脅威の高い存在でした。

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写真の1番手前が700隻あまりが建造されドイツ海軍潜水艦の主力を構成したVII型です。800トン、全長67m余りの船体を持ち、魚雷発射管を艦首に4門、艦尾に1門装備しています。予備を含め14本の魚雷を搭載することができました。両側に張り出したサドルタンクが特徴です。優秀なディーゼルターボエンジンを搭載し、水上では17.7ノットの速力を有し、水中ではモーターで7ノットの速力で移動することができました。水中を4ノットで約20時間潜航して移動することができました。深度230mまでの潜航に耐えることができたと言われています。船体内の50m余りの耐圧郭に43名の乗組員が乗り組んでいました。トイレはひとつだったそうです。

大戦を通じて使われ、多くのヴァリエーションが作られています。(51mm in 1:1250 by ???)

ja.wikipedia.org

 

写真中程に写っているのが、長い航続距離を誇るやや大型のIX型で、各型式を合計して280隻余りが建造されました。1100トン、76mの船体を持ち、艦首に4門、艦尾に2門の魚雷発射管を装備、予備を含め22本の魚雷を搭載することができました。ディーゼルエンジンを搭載し水上で18ノットを発揮し、その航続距離は13000海里に及びました。まさに通商破壊戦にはうってつけでしたが、工数が多く、量産という視点では課題がありました。(63mm in 1:1250 by Neptune)

ja.wikipedia.org

Uボートはすべての型式を合わせると1131隻が建造されており、連合国の商船を3000隻余り沈めています。うち849隻が失われ、これはドイツ軍の中で最も損耗率の高い兵種とされています。

 

ちなみに日本海軍は、単艦で見ればいずれも高性能で、中には航空機も搭載するなど高い偵察能力を有する潜水艦も揃えながら、潜水艦が撃沈した連合国商船は戦争を通じて189隻に過ぎませんでした。

 

船団護衛部隊

映画「グレイハウンド」原作版の再現

下の写真は映画「グレイハウンド」の原作、セシル・スコット・フォレスターの「駆逐艦キーリング」での護衛部隊を再現したもの。奥から「グレイハウンド」(米海軍「マハン級」駆逐艦)、「イーグル」はポーランド海軍駆逐艦「ヴィクター」、「ハリー」は英海軍のコルベット「ジェイムズ」、「ディッキー」は、カナダ海軍のコルベット「ドッジ」。

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米参戦前の護衛艦部隊の一例

さらに下の写真では、アメリカ参戦前の英海軍による典型的な護衛部隊の再現を試みています。

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(奥から、「タウン級駆逐艦、英海軍「フラワー級コルベット、カナダ海軍「フラワー級コルベット、英海軍対潜トロール船2隻)

 

タウン級駆逐艦

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ja.wikipedia.org

第二次世界大戦の緒戦、ノルウェー戦、英仏海峡での撤退戦で、ドイツ空軍の攻撃で英海軍は多くの艦隊駆逐艦を失います。これを補完するために1940年、米英間で結ばれた駆逐艦・基地協定(Destroyers-for bases deal)に基づき、米海軍は50隻の旧式駆逐艦を英海軍に譲渡します。米海軍の「コールドウェル級」「ウィックス級」「クリムゾン級」の3つの艦級の駆逐艦がこれに当てられますが、いずれも4本煙突で、設計に連続性が高く、つまり小改良の艦級であったため、英海軍ではこれらを一括して「タウン級駆逐艦と呼称しました。「タウン級」という呼称の背景には、英海軍がこれら譲渡された駆逐艦の艦名を「アメリカ・英連邦双方に共通して存在する町の名前とする」と規定していたことによります。

譲渡対象となった前述の米海軍の3艦級の駆逐艦は、概ね1000トン級の船体を持ち、30ノットから35ノットの速力を発揮し、兵装として4インチ砲4基、3インチ砲1基、3連装魚雷発射管4基を搭載する駆逐艦でしたが、英海軍は譲渡を受けた後に魚雷発射管を半減(艦によっては全廃)、搭載砲の数を減らすなどして、対潜装備に換装し、再就役させています。(78mm in 1:1250 by Argonaut)

 

対潜トロール

英海軍は船団護衛に多くの改造トロール漁船を投入しました。

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少しだけ 1:1350スケールモデルの話

本稿でも少し触れましたが、筆者はかつて1:350スケールの「フラワー級コルベットの模型を保有していました。一時期1:350スケールの「Uボート」にはまっていた時期がありまして、その流れでオークションか、中古模型店(以前はありましたよね、最近はどうなんだろうか?)でかなり格安で入手した輸入のレジンキットだったと記憶します。

ところがそれが行方不明。1:1250スケールのコレクションに移行した時に処分したのか、どこかに仕舞い込んでしまったのか・・・。

しかし、やはりこのクラスの船になると大スケールの模型もトライしたくなるもの、ということで検索すると、おお、あるではないですか。

www.amazon.co.jp

早速手配、と思ったのですが、意外や国内のチャネルで入手するのは意外と高額で、しかも希少のようです。タイプなども諸々考慮の上、結局、e-bayで購入という選択をしました。

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早速、色だけ大まかに塗り分けてみます。設計書と照らし合わせながら塗り分けたわけではないので、組み立て始めると「あれ、これこっちの色だったの?」なんてこともありそうですが・・・。どうせ、組み立て後に、色入れは改めてするでしょうし、まあそこはいいかな、と。久々の大スケールモデル(実際には、「フラワー級コルベットは、1:144スケールや、1:72スケールなども出ているので、決して大スケールには一般的には言えないのでしょうが、筆者はいつもは1:1250を扱っているので)。
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エッチングの手摺まで付属しています。だから高いのかあ、という感じですが、筆者はイギリスの出品者(多分ストアです)から送料込みで£20強で入手しています。日本円で3000円程度ですから、届くまでの時間さえ気にしなければ(と言っても10日ほどです)、お手頃な感じですね。

 

筆者にとっては久々のいわゆる「プラスティック・モデル」で、少しアウェー感もあり、仕上がりまで、もう少し時間をかけることになるかと思いますが、

仕上がりはこんな感じかなあ、と下記のリンクをご紹介(タイプは違いますが。あれ、エッチング使ってないのね、でもいい感じです。もう少し汚したい感じはしますが)。

www.tapatalk.com

また出来上がったら、ご報告します。(Uボート、作りたくなるんだろうなあ。置くとこないなあ。どうしようかな)

 

取り敢えず今回はここまで。

 

次回は、どうしようかな?

日本海軍の航空母艦開発史」はほぼ全ての艦級が揃いました。今、鋭意塗装中。白線が意外と大変なんです、実は。もう少し時間がかかりそう。

タウン級駆逐艦の話つながりで「英海軍の駆逐艦」の系譜のごしょうかな?あるいは「米海軍の駆逐艦」の系譜?

そう言えば、実は米海軍も英海軍も巡洋艦の体系的な紹介をしていませんね。そういう意味では「ドイツ海軍の巡洋艦駆逐艦」なども・・・。

 

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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