相州の、1:1250スケール艦船模型ブログ 主力艦の変遷を追って

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

ロイアル・ネイヴィーの駆逐艦(その1.5=その4:第一次世界大戦期の駆逐艦=アップデート版)

「ああ、「●●●●の箱」を開けてしまったかも」というフレーズから始まった本稿の「ロイアル・ネイヴィーの駆逐艦」発達史のミニ・シリーズですが、初回は下記の通りこのミニ・シリーズが「V/W級駆逐艦のヴァリエーション」に関する筆者の興味からスタートしたこともあって同級が建造された時期、つまり「第一次世界大戦期の駆逐艦」という稿でした。

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第一次世界大戦中に建造された、いわば戦時急造艦の艦級の整理からのスタートだったのですが、その後、駆逐艦の黎明期、航洋駆逐艦への発展期を経て、再び時系列としては舞い戻った感じです。

さらに、この回の脱稿以降、入手した同時期のモデルがいくつかあるので、今回は時系列整理も含め「改稿」という形で、大幅な加筆版を掲載します。

 

 

第一次世界大戦期の英海軍駆逐艦

第一次世界大戦期の「駆逐艦」の艦級のご紹介を。

今回改めてご紹介するのは「M級」「R級」「S級」と前々回でご紹介した「V/W級」の艦級と、第一次世界大戦の開戦に伴い英海軍が半ば強制的に購入し自国海軍に組み入れた他国海軍向けに建造していたいくつかの艦級をご紹介します。

 

第一次世界大戦が勃発すると、英海軍は駆逐艦の大量建造に入ります。折からライバルのドイツ帝国海軍は両海軍の主戦場である北海での活動を想定し、大型で高性能の駆逐艦水雷艇を建造しつつあり、従来の英海軍が大量に揃えてきた近海行動用の警備艦艇としての駆逐艦はもとより、北海での行動を想定し設計されてきた航洋型駆逐艦の艦級では、必ずしも見劣りはせずとも、圧倒できる状況ではなくなることが想定されました。そこで、特にこれらに対抗する目的から、それまでの航洋型駆逐艦よりも、より高速の駆逐艦群が生み出されることになります。

さらに、この時期は本稿前回でご紹介した「航洋型駆逐艦の模索期」から「完成形の実戦配備:実戦参加」の時期とも言え、この時期の特徴として海軍軍令部(アドミラルティ)の設計による基本形の他に、民間造船所の技術・設計能力を積極的に取り込むべく発注された「特型」というヴァリエーションが多出する時期でもありました。つまり筆者の大好きな「枝分かれ」要素がふんだんにあり、しかもそれらが模型的な視点でいうと「比較的顕著な艦型の差異」に現れた時期、と言っていいと考えています。この現象は、一時期は顕著な外観の差異として現れますが、筆者的には少々残念なことに、あるいは模型コレクションの入手・整理の視点からいうと「ホッとする」と、やや複雑な思いではあるのですが、技術の洗練につれて、「艦型」における差異は小さくなってゆくのです(「差異が小さい」=モデルが作られなくなる、ということです。お財布的には、ちょっと一安心)。

 

と、いつもながら、前置きが長くなりましたが、再掲部分も含め今回のベースとなった「ロイアル・ネイヴィーの駆逐艦(その1:第一次世界大戦期の駆逐艦)」とのご紹介内容の差異を、今回の紹介順も踏まえて、先に整理しておきましょう。

M級(アドミラルティ型):前回ご紹介

M級特型ホーソンM級):新着モデル

M級特型(ヤーロウM級):新着モデル

M級特型(ソーニクロフトM級):新着モデル

R級アドミラルティ型):新着モデル

R級特型(ヤーロー後期M級)モデルが見当たらない=ヤーローM級に外観は類似

R級特型(ソーニクロフトR級)モデルが見当たらない=アドミラルティR級に外観は類似

R級アドミラルティ型):前回ご紹介

S級(アドミラルティ型):前回ご紹介

S級特型(ヤーローS級・ソーニクロフトS級)モデルが見当たらない=アドミラルティS級に外観は類似

V/W級のヴァリエーション(今回はアップデートなし)

 

そして英国で他国海軍向けの駆逐艦をいくつか取得しています。

トルコ海軍からの発注駆逐艦(取得)=タリスマン級:新着モデル

ギリシア海軍からの発注駆逐艦(取得)=メディア級:新着モデル

チリ海軍からの発注駆逐艦(取得)前期型・後期型=フォークナー級前期型・後期型:いずれも新着モデル

 

さらに、駆逐戦隊の旗艦任務にあたる嚮導駆逐艦の幾つかの艦級を建造しています。

マークスマン級嚮導駆逐艦:新着モデル

アンザック級嚮導駆逐艦:モデル入手済み、未着

スコット級嚮導駆逐艦:新着モデル

シェークスピア嚮導駆逐艦:モデル未入手

ということで、新着モデルは前半と後半の他国海軍からの取得駆逐艦嚮導駆逐艦が中心です。今回はそういうお話。

 

高速駆逐艦の第一陣

M級駆逐艦(初代)(同型艦:準同型艦103隻)

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(「アドミラルティM級」の概観:66mm in 1:1250 by Navis)

「M級」駆逐艦(初代)は、第一次世界大戦の勃発直前に建造が開始された駆逐艦の艦級で、上記の北海を巡る英独の駆逐艦の性能向上競争での優位を目指し、特に速力の向上に重点が置かれた設計でした。その結果、それまでの英海軍の駆逐艦の速力が27ノットから31ノットの速力であったのに対し、34ノットの速力を有する高速艦が生まれました。

同級は以下のサブ・クラスを含んでいます。

アドミラリティM級:85隻

ホーソンM級:2隻

ヤーローM級:10隻

ソーニクロフトM級:6隻

 

 

建造時期によって、あるいはサブ・クラスによって少し異なるのですが、概ね900トンから1000トン級の船体に、4インチ単装砲3基、53.3センチ連装魚雷発射管2基を搭載しています。また同級は初めて設計段階から高角機関砲を装備に組み入れた艦級で、当初は37mmポムポム砲、後には40mmポムポム砲を搭載していました。

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(直上の写真は「アドミラルティM級」の武装配置:連装魚雷発射管の間に対空機関砲座が設定されています)

問題の速力は「アドミラルティM級」で34ノット、「ホーソン M級」「ヤーローM級」「ソーニクロフトM級」が標準的に35ノットでした。

 

サブ・クラスの名前の見方

以後、暫く同様のサブ・クラス(準同型艦)は多出しますので、ここで少しこの艦級名の見方を整理しておきましょう。

「アドミラル ティ」型はその名の通り「海軍本部=The Admirality」の設計を採用したサブ・クラスの艦級名で、この艦級の設計の基本形となると考えていただいていいと思います。建造される隻数も、準同型艦内では最も多くなっています。

それ以外のサブ・クラスは「海軍本部=アドミラルティ」型の設計をベースとして、民間造船所に設計委託された「特別発注型」であることを意味しています。

ホーソン M級=ホーソンレスリー社の設計案採用型、ヤーローM級=ヤーロー社の設計案採用型、ソーニクロフトM級=ソーニクロフト社の設計案採用型 をそれぞれ意味している、と読んでいただければ。

 

ホーソンM級特型同型艦:2隻)

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(66mm in 1:1250 by WTJ)

ホーソンM級」は高速を発揮するために缶数を1基多く搭載したため唯一4本煙突となりました。ちなみに英海軍が建造した最後の4本煙突駆逐艦となりました。

 

 ヤーローM級特型同型艦:10隻)

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(66mm in 1:1250 by WTJ)

 「ヤーローM級」は軽量化と縦横比の増大(船幅に対し船長を長く取る)により高速化を狙い、二本煙突のスマートな艦型をしていました。39ノットの高速を記録した艦も建造されています。

 

 ソーニクロフトM級特型同型艦:6隻)

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(66mm in 1:1250 by WTJ)

 「ソーニクロフトM級」はやや高い乾舷を有していました。37ノットの高速を記録した艦もあったようです。

 

M級駆逐艦は、サブ・クラスも含め12隻が戦没、もしくは戦争中に事故で失われましたが、残りのほとんどが第一次世界大戦終結後、1920年代に売却されています。

(ちなみに、第二次世界大戦日本海軍が投入した艦隊駆逐艦(一等駆逐艦)の総数が、開戦後に完成したものなど全て合わせても、手元の粗々の計算で167隻ですので、英海軍がいかに大量の駆逐艦を整備しようとしたか・・・)

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(M級駆逐艦のサブクラス一覧:手前からアドミラルティ型、ホーソン特型、ヤーロー特型、ソーニクロフト特型の順)

 

オール・ギアードタービンの採用

R級駆逐艦(初代)(同型艦:準同型艦62隻)

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(「アドミラルティR級」の概観:69mm in 1:1250 by Hai)

 「R級駆逐艦はオール・ギアードタービンの搭載の2軸艦で、以降の駆逐艦の機関・推進機の原型となった艦級です。

1000トン級の船体に、前級と同様4インチ単装砲3基、40mm対空機関砲(ポムポム砲)1基、53.3cm連装魚雷発射管2基を搭載していました。速力は36ノットを発揮することができました。

このため「アドミラルティR級」の外観は、「アドミラルティM級」に酷似していました。

以下のサブ・クラスを含んでいます。

アドミラルティR級:39隻
アドミラルティR級:11隻

ソーニクロフトR級:5隻
ヤーロウ後期M級:7隻(同サブ・クラスはオール・ギアードタービンではなく、従来の直結タービンを搭載していたため、M級の名称を冠していました)

 

それぞれのサブ・クラスの特徴を以下にまとめておきます。

 

 ソーニクロフトR級特型同型艦:5隻):外観はアドミラルティR級に類似

「ソーニクロフトR級」は排水量をやや小さくした設計で、前期型で37ノット、後期型で40ノットを超える速力を記録しました。

 

 ヤーロー後期M級特型同型艦:6隻):外観はヤーローM級特型に類似

「ヤーロー後期M級」はオール・ギアードタービンではなく、従来の直結タービンを搭載していたため、M級の名称を冠していました。従来型の機関ながらヤーロウ社の設計の特徴である縦横比の大きな船体(つまり細長い)を持ち「R級」と同様の速力を有していました。外観は「ヤーロウM級」同様、、2本煙突でした。

 

アドミラルティR級同型艦:11隻)

アドミラルティR級」はその名の通り特型ではなく「海軍本部」の設計した改良型です。荒天時での航行性の確保に向けて、船首楼を長くした船体設計となり、併せて2本煙突となりました。

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(「アドミラルティR級」の概観:68mm in 1:1250 by Navis: 延長された船首楼が特徴ですね) 

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(「アドミラルティR級」の武装配置:基本的な配置は「M級」と変わりません)

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(「アドミラルティR級」(上段)と「アドミラルティR級」の対比。「アドミラルティR級」は英海軍最後の3本煙突駆逐艦となりました)

9隻が戦没、もしくは事故で失われ、残りのほとんどは1920年台後半に売却されていますが、「アドミラルティR級」の「スケイト」のみ、第二次世界大戦に参加しています。

 

2本煙突駆逐艦時代の到来

S級駆逐艦(初代)(同型艦:準同型艦67隻) 

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(「アドミラルティS級」の概観:67mm in 1:1250 by Navis)

 「S級」駆逐艦は艦数の急速な整備という要求に応えるために、「アドミラルティR級」(2本煙突)をベースに量産された艦級です。艦首形状をシアとフレアを強めたものとして乾舷をより高くし凌波性を高めています。1000トン級の船体を有し、兵装は基本従来艦級のものを継承していましたが、従来の標準装備である53.3cm連装魚雷発射管2基に加え、45cm単装魚雷発射管を艦橋両側に装備していました。

 

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(「アドミラルティS級」の武装配置:基本的な配置は「改R級」と変わりませんが、「S級」の場合は、艦橋脇に45cm単装魚雷発射管を両舷に1基づつ設置していました。艦尾の探照灯台が2番連装発射管上に装備されているのは、実際にはどうなっていたんでしょうか?図面で見てもそうなので、発射管の回転軸上に探照灯台があったのかな?) 

第一次世界大戦終結までに20隻が就役し、47隻が大戦後に就役しました。大半が1930年代に売却されていますが、11隻が第二次世界大戦時に参加、7隻が生き残りました。

 

以下のサブ・クラスが含まれています。

アドミラルティS級:55隻
ヤーローS級:7隻
ソーニクロフトS級:5隻

 

サブ・クラスのそれぞれの特徴を少し。

 

 ヤーローS級特型同型艦:7隻)

(モデルが見当たりません)

「ヤーローS級」はヤーロー社の設計の特徴である縦横比の大きな船体を持ち、機関はヤーロー社の拘りともいうべき直結タービンを搭載していました。36ノット内外の速力を発揮。外観的にはやや低いシルエットだったようです。

 

 ソーニクロフトS級特型同型艦:5隻)

(モデルが見当たりません)

 「ソーニクロフトS級」の最大の外観的な特徴は1番主砲を台座の上に装備したことと、艦橋を後ろにずらせたことでしょう。37ノットから38ノットの速力を発揮しました。

 

  (ここからはちょっと手抜きです。本稿、オリジナルから、ほとんど一緒。なので、既読の方は「他国海軍向け駆逐艦の取得」まで飛ばしても大丈夫です)

最後の第一次世界大戦駆逐艦

V/W級駆逐艦(初代)(同型艦:準同型艦67隻)

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 (「V/W級」駆逐艦の概観:写真は「アドミラルティV級」だと思われます:75mm in 1:1250 by Navis)

「V/W級」駆逐艦は、英海軍が第一次世界大戦中に建造した駆逐艦の艦級で、艦名がWまたはVで始まっているところから「V/W級」と総称されています。

同級はドイツ帝国海軍が建造中の大型駆逐艦・大型水雷艇への対抗上から、大型・重武装駆逐艦として設計されました。従来の英駆逐艦の基本装備であった40口径4インチ(10.2cm)砲3門を強化し45口径4インチ(10.2cm)4門とし、さらに連装魚雷発射管2基の標準装備を3連装発射管2基搭載へと、魚雷射線の強化も行われました。(実際には3連装発射管の製造が間に合わず、当初は連装発射管を搭載し就役し、後に三連装に換装されています)

「V/W級」と総称されますが実は大別して下記の5つのサブ・クラス(おお大好きなサブ・クラス!)に分類されます。

アドミラルティV級(28隻:大戦に間に合ったのは25隻)

アドミラルティW級(19隻)

ソーニクロフトV/W級(4隻)

ソーニクロフト改W級(2隻)

アドミラルティ改W級(14隻)

さらに「改W級」では搭載主砲を45口径4インチ(10.2cm)から45口径12センチに強化しています。

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(直上の写真は「V級」の主要武装等の拡大:艦首部・艦尾部に背負い式に主砲(45口径4インチ単装砲)を配置し、3連装魚雷発射管を2基、艦の中央部に搭載しています。艦のほぼ中央部に3インチ対空砲を搭載しています(写真中段))

武装の強化に伴い艦型は大型化(1100トン級)しましたが、機関の見直しは行われなかったため、速力は前級の36ノットから34ノットに低下しています。しかしソーニクロフト社製の「改W級」では機関の強化も併せて行われ36ノットの速力を発揮しています。

就役は1918年からで、この年の11月に第一次世界大戦終結したことから、奇しくも第一次世界大戦型の駆逐艦の最終形となりました。

 

大戦終結後、英海軍は疲弊した国力と、大戦期中に膨大に膨れ上がった大量の艦船の整理に追われるわけですが、最も艦齢の若い同級は多くが残置され、第二次世界大戦でも活用されました。

 

機雷敷設駆逐艦への改造

V級」の一部の艦は、魚雷発射管の連装から3連装への換装を行う代わりに、連装発射管1基を撤去し、さらに主砲1基も撤去、艦尾形状を整形すると共に機雷敷設軌条を設置して、60基程度の機雷敷設能力を持つ敷設駆逐艦に改造されています。

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 (「V級駆逐艦のヴァリエーション機雷敷設駆逐艦の概観 by Navis:下の写真は、「機雷敷設駆逐艦」に改装された艦の細部の拡大:艦首部の主砲配置は変わらず、魚雷発射管は連装のまま1基のみ搭載、艦尾部は主砲1基を撤去して艦尾形状を機雷敷設軌条等の張り出しを追加しています )

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第二次世界大戦時:護衛駆逐艦」への改造

第一次世界大戦駆逐艦としては最も艦齢が若かった「V/W級」は、一部(4隻?)がオーストラリア海軍に供与された他、本稿でも「巡洋艦」の回に見て来たように航空機や潜水艦の脅威の増大を見越して、通商路保護の役割を担う「護衛駆逐艦」への改装に充当されます。

 

WAIR改修艦(14隻・15隻?)

本稿前回・前々回で見たように、航空機の脅威に備えて英海軍は「C級」巡洋艦の数隻を防空艦へと改装しました。WAIR改修は、それと同趣旨で「V/W級」駆逐艦に長射程の対空砲を搭載し、併せて対潜兵装も強化して船団護衛の要として活用しようとする狙いでした。

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 (「V/W級」WAIR改修型駆逐艦の概観 by Argonaut:下の写真は、WAIR改修型の主要武装の拡大:艦首・艦尾に4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)を各1基搭載。魚雷発射管は全て撤去され、対空火器が強化されています。艦尾部には爆雷投射機と投射軌条が搭載され、対潜能力が強化されています)

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改修対象となった艦は全ての主砲・魚雷発射管を撤去し、代わりに4インチ連装高角砲(QF 4 inch Mk XVI gun)2基を搭載、他にも対空機関砲を増設した上で、対潜装備として爆雷投射機、投射軌条を搭載する他、後にはレーダーやソナーなどを装備しています。en.wikipedia.org

主要兵装となった4インチ連装対空砲は、「C級」巡洋艦を改装した防空巡洋艦などにも搭載されていた対空砲で、80度の仰角で11800m、45度の仰角で18000mの範囲をカバすることができました。

***さて、ちょっとこぼれ話。名称の「WAIR」が何に基づくものか、今でははっきりしないようです。「W級」の「対空化(ant-AIRcraft)」ではないか、という説も。

 

 長距離護衛駆逐艦への改装(21隻)

「V/W級」に限らず、「艦隊駆逐艦」は高速をその特徴の一つとするため、実はあまり長い航続距離を持たせる設計にはなっていません。しかし、通商路の保護には経済性を持つ商船で構成される低速の船団の航行に合わせた長い航続距離が必要で、「V/W級」の一部はこれに適応するような改装を受けています。

具体的には機関の一部を撤去し、そのスペースに燃料タンクと居住区画を増設し長い航続距離の獲得と、乗員の居住性を向上させました。当然、速力は落ちましたが、対潜警戒用のソナーの運用等を考慮するとかえって20ノット以上では支障が生じるなどの要件もあり、この目的では25ノット程度の速力があれば十分だったということです。

兵装は主砲を2基減らせて、ヘッジホッグや爆雷投射機・投射軌条を搭載し対潜兵装を充実させ、さらに対空砲・対空機銃等を強化しています。

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(「V/W級」改造長距離護衛駆逐艦の概観 by メーカーは不明:下の写真は、長距離護衛駆逐艦型の主要武装の拡大:艦首1番主砲が撤去されヘッジホッグに換装されています(上段写真)。主砲は45口径4.7インチ(12cm)単装砲を、艦首・艦尾に1基づつ搭載しています。機関搭載数を減らしたため煙突が一本に。魚雷発射管は全て撤去され、4インチ単装高角砲が搭載されています(中段写真)。艦尾部には爆雷投射機と投射軌条が搭載され、対潜能力が強化されています)

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ちょっと余談

以前ご紹介したことのあるニコラス・モンサラットの小説「非常の海:The Cruel Sea」にも、「V/W級」が出て来ます。

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(「非常の海」ちょっと古い本です。古書は今のところそれほど高価ではなく手に入るのですが、本の状態もちょっと不安なので文庫を出してほしいなあ。特に最近、WFHで出勤時にはPC を持ち歩きます。手荷物が重いので、是非、文庫が欲しい! (「光人」文庫あたりにあってもいいかと、お願いしてみてはいるのですが・・・)でも、いい本ですよ。船団護衛とか興味のある方にとっては、ね)

 

この小説、主人公が乗艦しているのは「フラワー級コルベット「コンパス・ローズ」なのですが、「コンパス・ローズ」が属している船団護衛部隊の指揮艦が「旧式のV/W級駆逐艦:ヴァイパラス:Viperous」と表記されています。

「ヴァイパラス」は架空の船ですので、流石に「V/W級」駆逐艦のどのタイプかまでは記述がないのですが、船団護衛部隊はこんな感じかと。

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(左から「V級長距離護衛駆逐艦」、「フラワー級コルベット」(前期型)、「フラワー級コルベット」(改良型)、「対潜型トローラー」の順。船団の規模にもよるでしょうが、ちょっと、重装備すぎるかな。下の編成の方が現実的かもしれません)

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このほかにも、アリステア・マクリーンの「女王陛下のユリシーズ号」にも「V/W級」は登場するようです(ちょっと記憶がないです。「V/W級」が登場するかどうか、というよりも物語そのものの記憶が・・・。読み返してみよう。この小説は、そもそも「ダイドー級」と「ベローナ級」の中間の架空の艦級の防空巡洋艦が舞台でしたよね。大好きな「架空艦」である訳です。作ってみたくなるかも。さらに「シアリーズ級」軽巡洋艦も出てきた記憶があります。読んだ当時には「シアリーズ級」についての認識は旧式の巡洋艦、という程度だったので、今読み返すと、もっと興味深いんだろうなあ、と期待が膨らみます。ああ、話がうんと「V/W級」から外れてしまった)

さらに未邦訳のダグラス・リーマンの「The Destroyer」という小説では「V/W級」で構成される駆逐艦部隊(8隻全部?)が主役(物語の舞台?)のようなのですが、もちろんこれは読んだことがありません。

 

これぞコレクションの醍醐味というカット

(下の写真は「V/W級」駆逐艦のヴァリエーションの贅揃い。手前から第一次世界大戦期の「V級駆逐艦のオリジナル。第一次世界大戦期の「V級」機雷敷設駆逐艦への改造。第二次政界大戦期のWAIR改修護衛駆逐艦への改装。第二次世界大戦期の長距離護衛駆逐艦の順)

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第一次世界大戦期の英海軍駆逐艦総覧

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(今回ご紹介した4艦級:手前からアドミラルティM級、アドミラルティR級アドミラルティS級、V/W級の順) 

 

他国海軍向け駆逐艦の取得

既述のように、第一次世界大戦開戦以降、英海軍は他国海軍から受注していた輸出向け駆逐艦の大半を半ば強制的に購入し、自国海軍に編入しています。

 

トルコ海軍からの取得駆逐艦=タリスマン級(同型艦:4隻)

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(「タリスマン級」の概観:85mm in 1:1250 by WTJ)

 特型ヴァリエーションで何度か登場しているホーソンレスリー社がオスマン・トルコ海軍から受注していた艦級を、英海軍が取得したものです。しかしオスマン・トルコ側には発注記録がなく、かつ当時のオスマン・トルコが親ドイツ色が強かったことから、発注経緯が疑問視されているようです。

同時期のアドミラルティM級駆逐艦よりもやや大きく(1000トン級)、速力はやや低速ながら(32ノット)兵装が強力で4インチ単装砲をM級の3基に対し5基搭載していました。

 (直下の写真は「タリスマン級」の兵装配置。艦首部の主砲は並行配置されていました)

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1隻が戦没しましたが、戦後、オスマン・トルコ帝国の解体とともに、後継のトルコ共和国に引き渡されることはありませんでした。

 

ギリシア海軍からの取得駆逐艦=メディア級(同型艦:4隻)

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(「メディア級」の概観:78mm in 1:1250 by WTJ)

 同級はジョン・ブラウン社とフェアフィールド社がギリシャ海軍から受注し建造中だった駆逐艦を英海軍が取得したものです。アドミラルティM級に準じた性能でしたが、やや、速力は抑えめでした。大戦中に1隻が悪天候で失われ、3隻は戦後ギリシア海軍に引き渡されることなくスクラップになりました。 

 

チリ海軍からの取得駆逐艦=フォークナー級前期型・後期型(同型艦:4隻)

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(「フォークナー級」前期型の概観:78mm in 1:1250 by WTJ:直下の写真は前期型の特徴的な主砲配置。同級の4.7インチ主砲は、艦首部と艦尾部は並列配置、艦橋脇に1基づつ配置されていました)

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(「フォークナー級」後期型の概観:78mm in 1:1250 by Navis:直下の写真は後期型の特徴的な主砲配置。後期型の4.7インチ主砲は、艦首部と艦尾部、いずれも三角形配置されていました)

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 同級はホワイト社がチリ海軍から受注していた6隻の大型駆逐艦のうち4隻を英海軍が取得したものです。

当時の英海軍の標準的な駆逐艦に比較して二回りほど大きな船体を持ち(1700トン級)、4インチ単装砲6基という極めて強力な砲兵装を備えていましたが、英海軍では取得後、主砲を4.7インチ単装砲に置き換え、火力を更に防護巡洋艦並みに強化しました。速力は31ノットとやや控えめでした。

4.7インチ砲の配置の差異から、前期型と後期型に分かれています。

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取得後、英海軍では同級を嚮導駆逐艦として運用していました。1隻が戦没しましたが、大戦後、生き残った3隻はチリ海軍に引き渡されました。

 

 

嚮導駆逐艦の系譜

マークスマン級(同型艦:7隻)

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(「マークスマン級」の概観:79mm in 1:1250 by WTJ)

 英海軍では長年、駆逐艦で構成される水雷戦隊の旗艦任務に偵察巡洋艦を当てていましたが、駆逐艦の高速化に伴い、これに同伴できる嚮導駆逐艦を建造しました。

本稿前回で紹介した「スウィフト」はその先駆けとも言える高速駆逐艦で、やがて嚮導駆逐艦任務への改装が行われ、同艦での知見を得て本級は建造されました。

1600トン級の大きな船体を持ち4インチ単装砲4基、53センチ連装魚雷発射管2基を備え、34ノットの速力を発揮することができました。

英海軍は基本的に性能を同じくする各駆逐艦の艦級ごとに水雷戦隊を組織しており、同級の各艦の艦名には、その率いる水雷戦隊の艦級と同じ頭文字の艦名が与えられました。(ちょっとわかりにくいですね。つまり「マークスマン:Marksman 」はM級駆逐艦で構成される戦隊の旗艦任務につく。同様に「ライトフット:Lightfoot」はL級駆逐艦の戦隊の指揮をとる、という感じです。こういう情報は、英海軍ならではで、ちょっと面白い)

 

アンザック級(同型艦:6隻)

 

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(モデルは取得済み。手元に届き次第、アップデートします)

「マークスマン級」で課題とされた横揺れ対策として、乾舷を増大することにより凌波性を改善した船体を持っています。「後期マークスマン級」と呼ばれることもあったようです。

艦首方向への火力の増強が求められたところから、艦首に主砲が背負い式で配置されました。背景には機関部のコンパクト化の成功があり、これにより艦橋を後方に移動させることができました。

 

スコット級(同型艦:8隻)

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(「スコット級」嚮導駆逐艦の概観:79mm in 1:1250 by Navis)

 同級は、4.7インチ主砲を装備したV/W級駆逐艦の旗艦任務を想定して設計された嚮導駆逐艦の艦級です。

1800トンの大きな船体に4.7インチ単装砲5基、53センチ三連装魚雷発射管2基を装備し、36.5ノットの速力を発揮することができました。

全て大戦末期に就役したため戦没艦はネームシップの「スコット」のみで、第二次世界大戦では船団護衛任務につきました。

 

シェークスピア級(同型艦:5隻)

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 (モデル未入手)

スコット級同様、V/W級駆逐艦で構成される水雷戦隊を指揮する事を想定し設計された駆逐艦の艦級です。

1500トン級の船体に4.7インチ単装砲5基、53センチ三連装魚雷発射管2基を装備し、36ノットの速力を発揮することができました。

第一次世界大戦末期から戦後の就役で、戦没艦はなく、第二次世界大戦には3隻が護衛艦として使用されています。

 

という事で今回はここまでなのですが、上述のように、どうらや全てのサブクラスにモデルが見つかる訳ではないようです。気長に探してはゆきますが、どこまで網羅出来るかどうか。

ようやく第一次世界大戦期の駆逐艦が終わり、これから大戦間の駆逐艦緩急の話に入ってゆく訳ですが、まだまだ先は長いなあ、という実感です。

まあ根気よく、続けてゆきますので、どうか気長にお付き合いください。

 

 

次回は、この続き、つまり大戦間の駆逐艦をやるか、あるいはフランス海軍の第二次世界大戦期の巡洋艦、もしくは日本海軍の空母のミニ・シリーズの開始、あるいは最近、急に取り分けて理由もなく気になってきている第二次世界大戦以降のソ連・ロシアの巡洋艦駆逐艦(大型対潜艦?)あたり???

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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