相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

第23回 大和級の登場と米海軍の対応

日本海軍の新型戦艦大和級の登場

前回の記述を繰り返すことを恐れずにいうと、満州における資源確保で、ある程度の経済基盤を保有したかに見える日本であったが、やはりその国力を考えると、米国には遠く及ばず、従ってその主力艦状況でも物量的に米海軍を凌ぐことは不可能であることは明白であった。

そのため、新型戦艦には、これまで通り個艦の性能で米艦を上回ることが求められ、その設計の帰結が大和級戦艦となって具現化した。

 

大和型戦艦 - Wikipedia

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同級の計画時にはまだワシントン海軍軍縮条約が有効であったために、その主砲は前級である相模級と同様、新型55口径16インチと公承されていたが、実は条約の制限を超える18インチ砲であった。

集中防御方式を推進し、艦型そのものは大変コンパクトであった。塔式の前檣や、集合式の新設計の通信アンテナ、強烈な主砲爆風対策のための格納式航空兵像、内火艇収納庫、シールド付きの対空砲座など、新機軸が多数採用された。

相模 級戦艦で実績のある18インチ砲ではあったが、同級は新設計の砲を新設計の三連装砲塔に搭載した。さらに27ノットの高速で機動性にも優れる戦艦として設計された。高い機動性と強力な砲力で常に相手に対し優位な位置からのアウトレンジを実施し、相手を圧倒することを実現できることが目指された。

(1941-: 64,000t, 27 knot, 18in *3*3, 3 ships, 215mm in 1:1250 by Konishi/Neptun)

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大和級の2隻:武蔵(手前)、大和。就役時には、副砲塔を上部構造の前後左右に4基配置した) 

 

大和級戦艦の改装

大和級戦艦はその新造時の設計では、6インチ三連装副砲塔を4基、上部構造の前後左右に配置した設計であったが、既述のように一連の既存戦艦の近代化改装の方針である対空戦闘能力の向上に則り、両舷の副砲塔を撤去し、対空兵装に換装した。

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同級3番艦の「信濃」は新造時から対空兵装増強型で建造され、かつその対空砲として新型の長10センチ連装対空砲を採用した。

(直下の写真は大和級戦艦3隻:手前から信濃、武蔵、大和 の順。信濃は上記のように当初から対空兵装強化型として建造され、対空砲として新型の長10センチ連装砲を採用していた)

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米海軍の新造戦艦

日本海軍の大和級の建造をめぐっては、その設計情報が巧みに隠蔽されたことにより、当初16インチ砲搭載の新戦艦との認識で米海軍は対応を検討した。 

本稿前回で記述したノースカロライナ級、サウスダコタ級の戦艦がこれに該当する。さらにこの増強策として、アイオア級戦艦以下の4クラス、14隻が追加建造されることになる。

アイオア級(アイオア、ニュージャージーミズーリウイスコンシン)

改アイオア級:イリノイ級(イリノイネブラスカデラウェアジョージア

イリノイ級:バーモント級(バーモント、ロードアイランド

モンタナ級(モンタナ、オハイオニューハンプシャールイジアナ

 

アイオワ級戦艦 - Wikipedia

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アイオア級戦艦は、当初から空母機動部隊との帯同を前提に建造された高速戦艦である。

米海軍は、来るべき太平洋における艦隊決戦が、単に主力艦同士の砲撃戦のみではなく、その前哨戦として、発展著しい航空戦力の激突が起きることを想定していた。その

勝者がその制空権の元で有利に砲撃戦を展開できる。そのためには前哨戦を制せねばならず、同様の思考を展開すれば日本海軍はその空母機動部隊に、これと帯同しうる高い機動性を誇る金剛級、あるいは畝傍級、高千穂級 などの巡洋(高速)戦艦をその護衛としてつけるであろうと想定した。

しかしながら、米海軍には、同様の高機動性を備えた戦艦がなく、巡洋艦以下の護衛艦隊では、日本海軍の高速戦艦群により砲撃戦で敗北することが懸念された。

このため、これら日本海軍の高速戦艦群を上回る機動性と砲力を備えた主力艦建造を急いだ。こうしてアイオア級は誕生した。

主砲には、それまでのサウスダコタ級を上回る50口径16インチ砲を三連装砲塔3基に装備し、33ノットの戦艦史上最高速度を有する高性能艦となった。

(1943-: 55,000t, 33 knot, 16in *3*3, 4 ships (6 ships planned), 217mm in 1:1250 by Neptun)

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改アイオア級(イリノイ級)18インチ搭載艦の建造

アイオア級建造中に、日本海軍の新型戦艦が18インチ砲搭載艦であることが判明し、加えてその前級である相模級戦艦も18インチ砲を搭載していることが判明した。このため、急遽、建造される予定であったアイオア級5番艦、6番艦を18インチ砲搭載艦として建造することが決定し、さらに、2隻を同級に追加し、4隻の18インチ砲搭載艦を建造することとなった。(イリノイネブラスカデラウェアジョージア

一方で、パナマ運河の通行を可能とするために、艦幅はアイオア級に準ぜねばならず、33ノットの速力を保持した上で、18インチ砲搭載による重量増加、さらには同砲射撃時の砲撃精度をこの艦幅でどのように担保するか、難しい課題に対する設計見直しが行われた。

結果、上部構造をコンパクトにすることにより浮いた重量分を主砲関係の重量増加と、18インチ砲装備による防御力向上に向けられることとなった。結果、機関に充てられる余裕が前級よりも少なくなり、新型機関を採用したにもかかわらず、30ノットの速度に甘んじる結果となった。

(1944, 55,000 t, 30 knot, 18in *3*3, 4 ships, (6 ships planned), 223mm in 1:1250  by Superior)

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(イリノイ級:イリノイネブラスカデラウェアジョージア

 

イリノイ級(バーモント級)の建造:16インチ砲への回帰

上述のように艦幅と排水量の上限が課せられた条件で、様々な工夫が盛り込まれたイリノイ級の設計であったが、そもそもが18インチ砲対応の防御力が予定されていないこと(日本海軍の長門級に対応したコロラド級の設計変更、条約明け後のノースカロライナ級の設計変更時にも、主砲口径のアップとその防御力のアンバランスという同様の事象が発生した)、併せて18インチ砲搭載には不十分な艦幅からくる射撃時の散布界の拡大等、精度不足が判明したことから、イリノイ級5番艦(バーモント)・6番艦(ロードアイランド)は、16インチ砲搭載艦として建造することが決定した。

(1945, 55,000 t, 34 knot, 16in *3*3, 2 ships, 223mm in 1:1250  by Superior)

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この設計変更は非常に成功で、速度はタイプシップであるアイオア級を上回る34ノットとなったし、その射撃精度も、米国の戦艦史上最高を記録した。
 

モンタナ級戦艦 - Wikipedia

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アイオア級の項で記述したように、米海軍では来るべき日米の艦隊決戦では、空母機動部隊を中心とした前哨戦で制空権を握った後に、主力艦同士の砲撃戦を行う、という構想を持っていた。これも前述のようにアイオア級はその前哨戦を制するべく設計された空母部隊との帯同を想定した高速戦艦として建造されたが、モンタナ級は、前哨戦の後、主力艦同士の砲撃戦を想定して設計、建造されたいわゆる「低速戦艦」であった。低速といっても、28ノットを発揮でき、サウスダコタ級、ノースカロライナ級などとは同等に行動できる。

主力艦同士の砲撃戦を制すべく、アイオア級と同じ、新開発の55口径16インチ砲を三連装砲塔4基16門搭載する強力な戦艦となった。

(1946, 60,500 t, 28 knot, 16in *3*4, 4 ships, 234mm in 1:1250  by Superior) 

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モンタナ級が搭載した主砲は、アイオア級以降の戦艦が搭載していたMk.7 50口径16インチ砲であったが、この砲はサウスダコタ級やノースカロライナ級が搭載したMk.6に比較して、発砲初速が速く、長い射程を誇る高性能は砲であった。早い初速から風等の影響を受けにくく、散布界(斉射時の砲弾のばらつき)が小さくなり高い射撃精度を得ることができ、遠距離砲戦に適していた。

 

第二次世界大戦勃発と太平洋の風雲

前回記述したように、ヨーロッパでは1942年5月(史実に遅れること約2年)、ドイツがフランスに侵攻を開始して、第二次世界大戦が勃発した。フランスはわずか2カ月でドイツに降伏し、43年6月には独ソ戦が開始されていた。

フランス、オランダの降伏を踏まえ、日本は南方資源確保に向けて動き始め、英米との関係は悪化の一途をたどり、1943年12月、ついに日米開戦に至ることになる。

開戦時の日米両海軍の主力艦を以下に記しておく。

日本海

金剛級 4隻:14インチ砲8門 (金剛、比叡、榛名、霧島)

長門級 2隻:16インチ砲8門 (長門陸奥

加賀級 2隻:16インチ砲10門 (加賀、土佐)

紀伊級 2隻:16インチ砲10門 (紀伊尾張

相模級 2隻:18インチ砲8門 (相模、近江)

畝傍級 2隻:16インチ砲10門 (畝傍、筑波)

信貴:16インチ砲9門 (信貴)

高千穂級 2隻:16インチ砲10門 (高千穂、白根)

大和級 3隻:18インチ砲9門 (大和、武蔵、信濃

計20隻

 

米海軍

ネバダ級 2隻:14インチ砲10門 (ネバダオクラホマ

ペンシルバニア級 2隻:14インチ砲12門 (ぺンシルバニアアリゾナ

ニューメキシコ級 3隻:14インチ砲12門 (ニューメキシコ、アイダホ、ミシシッピ

テネシー級 2隻:14インチ砲12門 (テネシー、カリフォルニア)

コロラド級 3隻:16インチ砲8門 (コロラド、メリーランド、ウエスト・バージニア

ケンタッキー級 3隻:16インチ砲12門 (ケンタッキー、ノースダコタミネソタ

コンステレーション級 2隻:16インチ砲8門 (コンステレーション、コンスティチューション)

メイン級 2隻:14インチ砲12門 (メイン、サウスカロライナ

バージニア:14インチ砲12門 (バージニア

ノースカロライナ級 2隻:16インチ砲9門 (ノースカロライナ、ワシントン)

サウスダコタ級 4隻:16インチ砲9門 (サウスダコタマサチューセッツアラバマインディアナ

アイオア級 4隻:16インチ砲9門 (アイオア、ニュージャージーミズーリウイスコンシン)

計30隻

 

次回は、大和建造以降の日本の主力艦の系譜を辿ります。

 

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これまで本稿に登場した各艦の情報を下記に国別にまとめました。

fw688i.hatenadiary.jp

内容は当ブログの内容と同様ですが、詳しい情報をご覧になりたい時などに、辞書がわりに使っていただければ幸いです。

 


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