相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

Spitheadのモデル到着:Shapewaysの破産後のモデル調達事情の進展 

今回は本稿、前々回(下のリンク)で取り上げた「Shapewaysの破産」という衝撃のニュースに関連し、艦船モデルの調達先として新たに(実際には以前からコンタクトはあったのですが)注目したSpithead Miniatureからのモデル第一陣が早くも到着(少し以下でも紹介しますが、ややこしそうな経緯があったので、本当に期待以上に早い到着でした)したので、そのご紹介です。

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Spithead Miniatureからのモデル到着

Spithead Miniatureについては前々回の投稿でもご紹介していますので、その抄録を以下に引用します。(「」内が引用)

「このコンタクトは筆者にとって全く新しいもの、と言うわけではなく、実は数年前に一度コンタクトしていたのですが、それが上掲のShapewaysのグダグダの煽りで再発掘できた、そんな経緯です。

Spithead Miniatureの代表はおそらくUKの人(価格表がポンドで表示されています)で、本稿でこのところ取り上げている前弩級戦艦の登場以前の南北戦争普墺戦争期の、蒸気軍艦、あるいは蒸気装甲艦などに大変力を入れている製作者です。

(中略)

そのモデル供給のスタイルはかなり特殊で、代表が自身の興味領域でモデル製作の計画を開示し、興味のあるメンバーが「サポート」に手を上げます。「サポーター」が二十人ほど集まると、代表はモデル作成に着手、数量を限定したモデルが作成されます。そして完成後は基本「サポーター」として手を挙げたメンバーだけが、モデルの供給を受けられる、と言うシステムで、運営されています。「サポーター」は「サポート」の宣言時点では住所等個人を特定する情報だけを代表に開示し、特にその時点で金銭的なやり取りは発生しません。どの計画を「サポート」するかは自由で、一旦宣言しても必ずしもモデルを購入する必要はないようです。ですので計画によってはいくつかモデルが残り、筆者のような「ゲスト」にも購入希望の順番待ちの列に並ぶ機会が発生するわけです。

現在、筆者は、下記のフランス海軍の装甲艦についての投稿で穴が開いている複数のモデルの順番待ちの列に並んでいます。

(中略)

上の写真は筆者が現在購入希望者として順番待ちの列に並んでいるモデル群です。上段の写真のうち、「オセアン:Ocean」「リシュリュー:Richelieu」「コルベール:Colbert」そして下の吹き出しにある「ルドゥタブル:Redoutable」に希望を出しています。「すでに何人かサポーターから取り消しが来ているし、君が希望ありと言ったのは早かったので、可能性高いんじゃない?」と言うコメントはもらっていますが、どうなることか」

つまり今回到着したのはこの最後の部分の「予約のキャンセル待ちの列に並んで」いる状況だった「オセアン:Ocean」「リシュリュー:Richelieu」「コルベール:Colbert」そして「ルドゥタブル:Redoutable(就役時)」の4隻です。

順番が来たので支払ってほしいと、請求書が来てから手元に届くまで、わずか1週間ほどだったので、昨今の配送事情の含め、本当に早いなあ、という印象でした(筆者の予想より1週間早かった、というところでしょうか)。

 

これらのモデルはいずれも下記の「フランス海軍 装甲艦」の投稿の際に「モデル未所有」というご紹介をしたもので、フランス海軍装甲艦の系譜が一点(「プロヴァンス級」)を除いて揃えることが出来た、という嬉しい到着でもあったのです。

fw688i.hatenablog.com

 

Spithead Miniature製モデルの概観

モデルは下記のような形で到着しました。

それぞれのモデルは別々の小袋(写真上段)の形状で、そしてそれぞれの小袋の中身はレジン製の船体(最近、3D printingのモデルばっかり見てきたので、少し新鮮です)とホワイトメタル製のマスト、ボート、通気管、砲、上部構造等のパーツがセットされています。組み立て図は入っていないので、自分で資料にあたる必要がありそうですが、多分、この辺りのモデルを探す人ならば、あまり大きな問題にはならなそうです(通気管の位置が少し微妙かも、程度?)。

個別に、前々回投稿と重ね併せて見てゆきましょう。

7,580トン級:「オセアン(Ocean)級」艦隊装甲艦(1870年から就役:同型艦3隻)

ja.wikipedia.org

新着のSpithead Miniatureの「オセアン級」装甲艦のモデル

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(上の写真が今回到着したSpithead Miniature製「オセアン級」装甲艦のモデル:75mm in 1:1200 by Spithead Miniature)

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レジン製の船体はかなりディテイルがシャープに表現されています。舷側の砲門も綺麗に抜かれています。最も気にしていたスケール違い、ですが、このレベルであれば、1:1250スケールと謳われているモデル間での製作者間の解釈違いと、さほど差異はないかと思いますので、気にしなくてもいいかな、と思っています。

ホワイトメタル製のパーツは、マストが帆装を強調した表現になっているのが、筆者的には少し気になりますが、まずは一旦モデル通りに仕上げてみてから(少なくとも一隻はこれで仕上げてみましょう)と思っています。

下の写真はFaceBookのSpithead Miniatureにアップされている読者投稿の写真です。

(上掲の写真は、https://www.facebook.com/spitheadminiaturesへの投稿写真:John Cook氏製作:モデルはリッサ海戦時のイタリア海軍の主力艦の一隻「レ・ディタリア」ですが、マスト周りの作り込み処理が凄い。マスト間のロープの再現までは、筆者の手が届かないと思いますが、一応、こんなのを目指してみようかな、などと・・・)

 

「オセアン級」装甲艦の解説(過去投稿より引用)

同級はフランス海軍が初めて「艦隊装甲艦(キュイラッセ・デスカトーレル)」と言う艦種呼称を用いた装甲艦の艦級です。世界初の航洋型装甲艦と言われる「グロワール」から量産型の「プロヴァンス級」までの16隻の「装甲フリゲート艦(フリガイト・キュイラッセ)」と一線を画し、新たな呼称としたのは、搭載している艦砲が格段に強化されているところにあります。

船体は前級よりも大きな7600トン級となり、これに3460馬力の蒸気機関を搭載して13.5ノットの速力を発揮する設計でした。

同級の目玉である主砲としては、18口径27センチ単装砲4門と19口径24センチ砲4門が搭載され、他に14センチ単装砲8門が副砲として装備されていました。搭載方法はこれまでの舷側砲門方式ではなく砲郭式が取り入れられています。分厚い装甲で覆われた砲郭は艦の中央に八角形で設置され、上甲板の砲郭の4角のバーベット上にに24センチ単装砲が単装砲架で搭載されていました。それぞれの単装砲は人力で旋回でき、広い射界がが与えられていました。各バーベット上の単装砲架は基部のみ装甲で覆われた露砲塔でした。

バーベットの一段下の砲郭内には27センチ単装砲4門がレールに乗せた回転可能な砲架上に搭載されており、左右両舷に対し各5ヶ所に設けられた砲門から、砲撃が可能でした。この方式により、少ない搭載主砲を効率よく運用することができました。

 

前々回投稿を読み返して、そういえばモデルの製作をBrown Water Navyにも依頼していたことを思い出しました。

(引用こちら)

Brown Water Navy Miniatureへのモデル制作のリクエス

少し余談になりますが、筆者のコレクションからは同級も含めいくつか未保有のモデルがあります。市販モデルが「ある」艦級については、鋭意、探してはいるのですが、なかなか見つからず、現在3Dモデルで度々お世話になっているBrown Water Navy Miniatureさんにモデルの制作をいくつか依頼しています。

一応、「リストに入れておく」と言う趣旨のお返事をいただいてはいますが、一方で「フランスの軍艦はデザインが独特で、制作が結構難しいんだよなあ」と言う反応ももらっています。だからこそ作ってほしいんですけどね。首を長くして楽しみにいい知らせ(「出来たぜ」の一言)を待ちましょう。

(引用ここまで)

Shapewaysのゴタゴタでこの件がどうなるかわかりませんが、実はこのモデルの到着と前後して、夏のヴァケーション明けからモデル製作を独力で再開するから、リクエストがあったら送っておいてくれ、という連絡をBrown Water Navyから、もらっています。

さて、うれしい悲鳴になるのかなあ。

 

8,900トン級艦隊装甲艦「リシュリュー (Richelieu)」(1875年就役)

ja.wikipedia.org

(艦隊装甲艦「リシュリュー」の概観:モデル未保有かつモデルの写真が見つからないため、Wikipediaより拝借しています。:1:1250スケールでは、Hai製のモデルがあるようですが、筆者はみたことがありません)

新着のSpithead Miniatureの装甲艦「リシュリュー」のモデル

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(上の写真が今回到着したSpithead Miniature製の装甲艦「リシュリュー」のモデル:81mm in 1:1200 by Spithead Miniature)

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上掲の写真と見比べても艦首部の再現などいい感じなんじゃないでしょうか?レジン製の船体は本当にシャープで、「仕上がりの品質にこだわりたいので、限定したロットしか製造しないのさ」とSpithead Miniatureの主催が書いていたのを思い出しました。

 

装甲艦「リシュリュー」の説明本文(過去投稿より引用)

同艦は「オセアン級」艦隊装甲艦の改良型で、「フリードランド」が全鉄製の船体を持っていたのに対し、木造鉄皮構造でした。同型艦はありません。

「オセアン級」をやや拡大した9000トン級の船体を持ち、4200馬力の蒸気機関を搭載し、13ノットの速力を発揮することができました。運動性の向上を狙い、2軸推進でした。

主砲は「オセアン級」同様、18口径27センチ単装砲6門と19口径24センチ砲5門が混載されており、27センチ砲は全て砲郭内に収められ、24センチ砲は砲郭上部4角のバーベットに露砲塔形式で4門、艦首楼内に1門が搭載されていました。艦首喫水下には衝角が装備されており、艦首楼内の砲と併せて、艦首方向の攻撃威力が強化されています。他に副砲として当初12センチ単装砲10門を装備していましたが、就役後すぐに14センチ砲6門に換装されました。

 

8,750トン級:「コルベール(Corbert)級」艦隊装甲艦(1877年から就役:同型艦2隻)

ja.wikipedia.org

(「コルベール級」艦隊装甲艦の概観:モデル未保有かつモデルの写真が見つからないため、Wikipediaより拝借しています。:1:1250スケールでは、Hai製のモデルがあるようですが、筆者はまだ見たことがありません)

Spithead Miniatureの「コルベール級」装甲艦のモデル

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(上の写真が今回到着したSpithead Miniature製の「コルベール級」装甲艦のモデル:79mm in 1:1200 by Spithead Miniature)

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上掲の写真では少し分かりにくいかも知れませんが、フランス艦の特徴の一つであるタンブルホーム形状がうまく再現されていると思います。こちらのモデルも実に質の高いレジン製の船体になっています。

 

「コルベール級」装甲艦の説明本文(過去投稿より引用)

同級は1865年度計画の最後の艦級で、フランス海軍史上最後の、木造の艦隊装甲艦となりました。

8750トンの船体に4600馬力の蒸気機関を搭載し、14ノットの速力を発揮する設計でした。

主砲は27センチ単装砲8門として、2門は砲郭上のバーベット2基に、残る6門は砲郭内に収められています。さらに艦首楼内と艦尾に24センチ単装砲各1基が装備され、艦首尾方向の火力が強化されています。他に副砲として14センチ単装砲8門が搭載されました。

 

9,200トン級艦隊装甲艦「ルドゥタブル (Redoutable)」(1882年就役)

ja.wikipedia.org

(艦隊装甲艦「ルドゥタブル」の概観:モデルはStaffenberg製:見たことないですね。:写真は就役時に近い形態のもので、当初は三檣式の機帆併装艦でした。この時期のモデルは未保有ですので、いつものようにsammelhafen.deから写真を拝借しています)

新着のSpithead Miniatureの装甲艦「ルドゥタブル」のモデル

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(上の写真が今回到着したSpithead Miniature製の装甲艦「ルドゥタブル」のモデル:80mm in 1:1200 by Spithead Miniature)

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同艦のこのキットでは、タンブルホーム形状の船体が実にうまく表現されています。

後掲の近代化改装後のHai社製モデル(1:1250スケール)と比較すると、Spithead Miniature製モデルは1:1200スケールでありながら、少し小さな仕上がりになっています。「ルドゥタブル」の水線長は97.1メートルですので、近代化改装時に船体を延長したという記録は特にみたことがないので、そうした事実がないとすれば、試算ではHai製モデルの水線長85mmは実艦の水線腸に対して1:1250にせよ1:1200にせよスケールによらず、やや大きすぎ、少なくとも寸法ははSpithead Miniatureの方が再現性が高い、ということになります。

(装甲艦「ルドゥタブル」のHai製モデル「近代化改装後」(上)とSpithead Miniature製モデル「就役時」(下)の比較:水線長に大きな差異がありますが、計算上は1:1250スケールで77mm、1:1200スケールで80mmで、Hai製モデルが長すぎることになります)

 

装甲艦「ルドゥタブル」の説明本文(過去投稿より引用)

同艦は普仏戦争に敗れたフランスがナポレオン3世の帝政を廃し第三共和制に移行した後の、1872年度計画で建造された最初の艦隊装甲艦です。普仏戦争に何お貢献もできなかった海軍への強い風当たりの中で設計され、新基軸と回帰主義などが入り混じった設計になっています。(フランス海軍ファンとしては、そこがなんとも言えず「いい感じ」なのですが)

以降、フランス海軍の主力艦の特徴の一つとなる「タンブル・ホーム」型船体の基本形が示された艦と言ってもいいかと。

9200トン級の船体には鉄材に加え鋼材が用いられ、5900馬力の蒸気機関から14ノットの速力を発揮する設計でした。

主砲には20口径27センチ砲が採用され、艦首楼内に1門、艦尾に1門、両舷の砲郭部上部のバーベットに各1門が配置され、さらに砲郭内に4門が搭載され、計8門を搭載していました。副砲として14センチ単装砲6門を装備していました。

近代化改装(1894年ごろ)

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(筆者が保有している上の写真のモデルは、近代化改装後のもの。2本マスト形態となり、帆装を全廃しています::85mm in 1:1250 by Hai)

1893年から1894年にかけて、同艦は近代化改装を受けます。

帆装が全廃されて3本マストから2本マスト形態に改められ、水雷艇防備用の機関砲を設置した見張り台が置かれました。

主砲である27センチ砲は長砲身(28口径)砲に換装され、これを4門と、24センチ砲4門に変更されました。副砲も10センチ砲6基に変更されました。

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(艦隊装甲艦「ルドュタブル」の兵装の拡大:艦首楼に前方方を装備し(写真上段)、艦の中央砲郭部に上部に主砲バーベットを設け1門、下部の砲郭部内に2門を搭載しています(写真中段:ちょっとわかりにくいですが、舷側のふくらみと砲身がみえるかな?)。さらに艦尾部に主砲1門を装備していました(写真下段))

 

機関も換装され、6070馬力となり、速力も14.6ノットまで向上しました。

1900年にはフランス東洋艦隊に所属し、そのままハノイ(仏領インドシナ:現在のベトナム)でハルクとなりました。

 

新着Spithead Miniatureモデルの一覧

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下から、「オセアン級」「リシュリュー」「コルベール級」「ルドゥタブル(就役時)」の順です。

 

こうして一覧すると、やはりフランス海軍の装甲艦の系譜で唯一の欠落モデルとなる「プロヴァンス級」装甲艦のモデルも欲しくなります。Spithead Miniatureには「プロヴァンス級」モデルがリストにあり、Batch 2のサポーターを募集中とあるので、早速、サポーターに名乗りをあげてみました。

Spithead Miniatureの事情

Spithead Miniatureからの最近のFacebookでの投稿では、彼(等)のビジネスモデルである「サポータ制」の精度(信頼度?)が落ちてきていて、「サポート」に名乗りをあげた人のうち30−40%が実購入に至ってくれない、という状況で、なんとか他の人への販売(筆者なんかこれに該当するんでしょうね)でなんとか賄ってきている。これでは今の製作手法を維持出来ない、と泣きが入っています。自身の製作期間が結構かかるので(レジンですからね。しかも今回ご紹介したように精度がかなり高い)、きっと3D printingなどでの調達に移行しちゃってるんだよねえ、と一定の理解を示してはいますが、「危機的な状況」です、と言い切っています。

確かにいつ出来上がるのか、目安が立たない(特に初動の段階では)、というのは筆者のようなコレクターにとっては結構致命的で、今回の投稿でも記述しましたが、筆者もモデル製作をBrown Water Navyにも依頼しながらも、Spithead Miniatureから調達する、なんてことをやっていますので、せめて製作時期を明記する等が必要かな、などと考えています。

と言いつつ、Spithead Miniatureに対しては上掲の「プロヴァンス級」装甲艦やリッサ海戦時のオーストリア海軍の装甲艦、あるいは木造艦の「サポーター」追加募集に名乗りをあげたり、今回の帆装マストのパーツにストックがないかどうか聞いてみたり、コンタクトが増えていきそうな気配です。

 

ということで今回はこの辺りで。

次回は今回のモデルも含め製作中のモデルのアップデート、あるいは英海軍の装甲艦の開発系譜の続き、いよいよ弩級戦艦編、この辺りを予定しています。

もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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