相州の、1:1250スケール艦船模型ブログ 主力艦の変遷を追って

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

新着モデルのご紹介:長らく捜していた・・・機雷敷設艦艇の話

予告通り(?)「ミッドウエー」ちょっと先送りです。切り口が難しい・・・。

一方で、筆者としてはかなり嬉しい出来事があり、今回はその報告です。(究極のマニアック報告、と言ってもいいかも)

 

機雷敷設艦小史」のミッシングリンク

本稿では以前、下記の回で「日本海軍の機雷戦艦艇小史」を展開しました

fw688i.hatenablog.com

その中でいくつか「未入手」としていた艦級があったのですが、それらを入手できたので、ご紹介します。

 

機雷敷設艦

ご紹介の前に、まず日本海軍の機雷敷設艦のおさらいを。

日本海軍はその創設以来、機雷敷設業務には専用艦船を建造せず、旧式の装甲巡洋艦や徴用した商船等を改造し、その役務に配置してきていました。

ようやく八八艦隊計画の時期に、機雷敷設専用艦船の保有に意向を示し、設計を始めました。

そのグループは大まかに以下の3種類に分類されます。

強行機雷敷設艦敷設巡洋艦:想定決戦海面、あるいは敵前で機雷を敷設する大型の強行敷設艦で、これは目的海面までの長い航続能力を持ち、敵前敷設に対応するための強力な砲力、多数の機雷を搭載できる大型の艦型という特徴を備えています。「厳島」「八重山」「沖島」「津軽」がこれに該当します。これらの艦は、太平洋戦争開戦後は、本来の機雷敷設任務以外にも、その大きな搭載能力(機雷庫)を買われ、高速輸送艦としても活躍しています。

急設網艦:主力艦隊に帯同し艦隊の泊地に、第一次世界大戦以来、飛躍的に性能を向上させ水上艦にとって重大な脅威となりつつある潜水艦の侵入、攻撃を防ぐための防潜網(前述のように、多くの場合、この網には機雷が設置されています)を展張する急設網艦のグループで、この艦種は機雷敷設の能力も併せて持っていました。「白鷹」と「初鷹級」の3隻がこのグループに属します。この艦級は、太平洋戦争中盤以降、防潜網の展張装備を対潜兵装に換装し、船団護衛等の任務に活躍しています。

敷設艇小型の基地防御用の敷設艇です。基地周辺の防潜網敷設や、沿海航路保全の機雷敷設などに従事する艦種です。このグループには「燕級」「夏島級」「側天級」「神島級」の4つの艦級が建造されました。この艦種は太平洋戦争末期、日本本土決戦構想が具体化するにつれ、必要性が増した艦種でもありました。

 

これらの艦級のうち強行機雷敷設艦の「八重山」、敷設艇の「側天級」「神島級」がモデル未入手と紹介していたと記憶します。

sammelhafen.de

上のリンクが市販されている1:1250スケール(1:1200スケールも含みます)のリストなのですが、「八重山」にはMidwayとTremoからモデルが出ています。ところがこれがなかなか見つからない。そもそもが誰が欲しがるんだろう、という感じの船ですからね。生産も小ロットでしょう。

このTremo社のモデルが、ようやくEbayで入手できたのです。

この入手経過がなかなかトリッキーでした。下がその際のEbayのリンクなのですが、Yaeyamaの名前はどこにも表示されていません。しかもEscort Vesselと(まあ、「八重山」の大戦中の主要任務は確かにその通りだったのですが)。我ながらよく気がついたものだと、ちょっと感心しています。

www.ebay.co

 

という訳で「八重山」のご紹介。

機雷敷設艦八重山」(1932-1944)

ja.wikipedia.org

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(「八重山」の概観:74mm in 1:1250 by Tremo)

同艦は、「厳島」に続き二番目に設計された機雷敷設艦です。主力艦隊に先行して想定決戦海面での活動を意識して設計された「厳島」に対し、より近海(前進基地周辺)、浅海域での活動を思慮した設計で、小型・浅喫水の設計となっています。ロンドン条約の制約から補助艦艇に認められた最大速力の20ノットを発揮する設計でした。

1100トン級と、やや小型の艦型を持ち、平時の訓練、戦時には哨戒や船団護衛等の汎用的な目的への対応も考慮して設計されています。兵装は当初から盾付きの12cm単装高角砲を2門搭載していました。小さな艦型ながら185個の機雷を搭載する設計でした。

同艦の大きな特徴は、なんと言っても電気溶接による建艦工程が日本で最初に採用された事で、技術的にも用途的にも実験的な試みの軍艦となっています。同艦で使用された電気溶接の技術は、当然の事ながら未熟で、不具合が多発したようです。併せて復原性に課題があり、大規模な改修工事を受けています。f:id:fw688i:20211205135910p:image

(「八重山」の主砲配置:就役時には盾付きの12.5センチ高角砲を艦首。艦尾に配置していましたが、復原性改善工事の際に艦首のみ盾付きに改められています)

太平洋戦争では開戦時に南方攻略戦に帯同し機雷敷設業務に従事していますが、その後は対空兵装、対潜装備を強化し、護衛艦として船団護衛等に活躍しました。

1944年9月、フィリピン中部で米艦載機による攻撃で沈没しています。

 

第十七戦隊の編成

開戦時、「八重山」は機雷敷設艦厳島」特設敷設艦「辰宮丸」と第十七戦隊を編成し、第三艦隊の指揮下でフィリピン海域で機雷敷設任務についていました。

 

機雷敷設艦厳島」(1929-1944)

日本海軍は機雷敷設業務に、旧式の装甲巡洋艦等を当てていましたが、大正期の八八艦隊計画に準じて、初めて本格的な機雷敷設艦の設計に着手しました。それが「厳島」です。
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(直上の写真は、機雷敷設艦厳島」:89mm in 1:1250 by Authenticast)

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2000トン級の艦型に、主機にはディーゼル機関を採用しています。設計当時の艦隊決戦主戦場と想定されていた南洋諸島方面での機雷敷設任務を想定したため、航続距離と機雷搭載量が重視され、速力は17ノットと少し控えめに設定されています。

日本海軍の常として強行敷設、敵前敷設をも想定したため、2000トンの駆逐艦クラスの艦型の割には比較的強力な砲力をもっています。(14センチ単装砲3基)

2000トンの小ぶりな船体ながら、500個の機雷を上甲板直下の第二甲板の機雷庫に収納する事ができました。上甲板の4条の機雷投下軌条と第二甲板後方の6つの扉を開放する事で、機雷庫から直接機雷敷設ができる仕組みも併せて持っていました。
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(直上の写真:「厳島」主砲配置との特徴的な艦尾形状(下段):艦橋部より後ろの中甲板はほぼ機雷庫になっています。中甲板の機雷庫から直接海面に投下できるよう、投下口を設置した特徴的な艦尾形状になっています)

太平洋戦争開戦時にはフィリピン攻略戦を皮切りに南方作戦に従事し、機雷敷設、船団護衛、上陸支援、物資輸送等に大戦を通じて活躍しています。

1944年10月、スラバヤ方面で、オランダ潜水艦の雷撃で撃沈されました。

 

特設敷設艦「辰宮丸」(1929-1944)

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1941年9月、海軍は民間の12000トン級の貨物船「辰宮丸」を特設敷設艦として徴用しています。同船は1938年に就役した艦齢の若い貨物船で、17ノットの高速を発揮することができました。特設艦船籍に移管後、船倉が機雷庫、居住区に改装され、上甲板には機雷敷設軌条が敷かれました。最大700個の機雷を搭載することが可能で、船尾両舷に投下用の開口部が設けられています。

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(上の写真は特設敷設艦「辰宮丸」の外観と言いたいところですが、流石に「辰宮丸」のモデルまでは市販されていません。従って船体の形状が似ている「東京丸」を「辰宮丸」風に仕立てたものです。実際には水線長が15mmほど長すぎます。下の写真は、「辰宮丸」(風)の主砲配置。12センチ砲4門を主砲として装備していました)
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前述のように1940年9月に第十七戦隊に編入され、開戦時には日本軍の南方作戦展開に対する英東洋艦隊(「プリンス・オブ・ウェールズ」以下の艦隊)の反撃に備え、マレー半島沖での機雷敷設島を実施していました。

その後、特設輸送船へ類別変更され、輸送任務に従事し、1945年舞鶴港で出航準備中に米軍機の空襲で大火災を起こし半没状態で終戦を迎えました。

 

第十七戦隊の概観

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「測天級」敷設艇の製作

機雷戦艦艇のうち、敷設艇については前日のように「燕級」「夏島級」「測天級」「神島級」の4つの艦級が建造されました。このうち「燕級」と「夏島級」についてはOceanic製のモデルを入手していましたが、「測天級」「神島級」についてはモデル未入手のままでした。

 「測天級」敷設艇(同型15隻:1938-終戦時4隻残存)  

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それまでの敷設艇を大型化した艦型で、機関をディーゼルとしてより汎用性を高め、太平洋戦争における敷設艇の主力となりました。前級までの復原性不足を解消し、航洋性に優れ活動範囲は日本近海に留まらず広い戦域に進出し活躍しています。(720トン、20ノット、主兵装:40mm連装機関砲×1・13mm連装機銃×1、機雷120基 /6番艦「平島」以降は主兵装:8cm高角砲×1・13mm連装機銃×1)

 

終戦時に「巨済」「石埼」「濟州」「新井埼」の4隻が残存していました。

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(上の写真は「測天級」敷設艇の概観:59mm in 1:1250 by Tremoの水雷艇モデルをベースにしたセミ・スクラッチ:「測天級」は40mm連装機関砲を主兵装としていましたが、同機関砲は特に対潜水艦戦で有効ではなく、6番間以降、8センチ高角砲を主砲として搭載しています。この艦級は「平島級」とされることもありますが、ここでは「測天級」の第二グループとしています)

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さらに改良型の「網代」級が12隻、建造される予定でしたが、1隻のみの打ち切られ、次級の「神島級」へ計画は移行されました。

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下の写真は、「測天級」のディテイルのクローズアップ。特に写真下段では、敷設艇ならではの艦尾形状に注目)f:id:fw688i:20211205141221p:image

本稿の「機雷敷設艦艇小史」では文中で「測天級」「神島級」については「Oceanic レーベルでモデルあり、未入手」と記載していましたが、実は誤りでどうやら「測天級」にはモデルがないようです。そこで、という訳でもないのですが、「では作ってしまおうか」という訳です。

幸い、前述の「八重山」のモデルを入手した際に、複数のモデルを落札しています。主には送料負担を軽減する目的で、同一出品者の他の出品物を同時落札する事が多いのです。多くはストックモデルとして保管され、部品取りや今回のようなセミクラッチのベースとして利用することを目的にしています(実際には、そんなに計画的ではないし、スキルが低いのでうまくいかず、バラバラにして捨てることが多いのですが)。

今回、ベースに利用したモデルがこちら。f:id:fw688i:20211205140758p:image

全長68mmの水雷艇のモデルのようです(多分、「鴻」級:にしては少し大きい)。なんとこのモデル、実は落札したモデルではなく、筆者が落札したモデルは「駆潜艇」のモデルだったのですが、出品者からのパッケージが届くと中から「ごめんなさい。落札していただいた「駆潜艇」のモデル、なくなって(売り切れ)ました。代わりにこちらで勘弁してください。もし気に入らなかったら返金します」とお手紙に添えて件の「水雷艇」のモデル2隻と中国海軍の砲艦(多分、「永翔」級(いわゆる「中山艦」?)のモデルが、「八重山」のモデルに同梱されていました。ちょっとびっくり。

元々、落札した「駆潜艇」も送料単価軽減の目的で「ストックモデル入り」と考えていたので「このままでいいですよ。代替モデルいいですね」ということにしたのですが、早速、「八重山」を仕上げながら(ちょっと艦橋をもっと別のモデルからのものに差し替えたりしたので)「何に使おうか」などと考えていて、ここで役に立った訳ですね。

上部構造をほぼ全部取り払って、何よりも水線長をうんと短くして(=切り詰めて)、艦尾形状をやすりで整形して、新たにストックパーツとプラ・ロッド等から上部構造(らしきもの)を組み上げて・・・。つまり結構な「セミ・スクラッチ」だったわけです。でも、これでミッシングリンクの一つが埋まったわけですから、筆者としては大満足です。

(ベースにして完成した自称「測天級」とベースの水雷艇の比較がこちら)f:id:fw688i:20211205140754p:image

実はもう一隻、同型の水雷艇のモデルが残っているので、こちらをベースに「神島級」も作ってしまおうかと思っています。(「神島級」は「測天級」の改良型ではあるのですが、戦時急造艦艇らしく直線的で、つまり海防艦的な構造を多用しているので、「測天級」のセミ・スクラッチから、少し制作の方針を変えねばなりません。どうしようかな、と迷っています。と言っても困っている訳ではなく、セミ・スクラッチの醍醐味、といえばそうなのです。つまり、結構楽しんでいる、そういうことです)

 

もう一つ、おまけ。

敷設艦「勝力」(1917−1944)

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(上の写真は日本海軍が初めて建造した敷設艦「勝力」の概観: 65mm in 1:1250 by Tremo(?): 下の写真は太平洋戦争時の=測量艦時代の「勝力」の主砲配置。「勝力」は就役時には12センチ砲3基を搭載していました。艦首部に2基搭載された12センチ単装砲は並行に配置されていました。その後、8センチ高角砲に換装されましたが、3基装備説と2基装備説:もしかすると時期によって搭載数が変わるのかもしれません:がありはっきりしません。高角砲を狭い全部甲板に2基並行配置、というのはどうも腹落ちがしないので、ここでは2基説を採用しています)

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日本海軍の機雷敷設艦艇の紹介の冒頭で、「日本海軍はその創設以来、機雷敷設業務には専用艦船を建造せず、旧式の装甲巡洋艦や徴用した商船等を改造し、その役務に配置してきていました」と記載していました。

「勝力」は日本海軍が最初に建造した敷設艦(就役当初は「敷設船」と呼ばれていた?)です。敷設艇を大型化した発展形で、商船的な構造をしていました。老朽化のため1935年に測量艦に艦種変更され、太平洋戦争でも測量任務に従事していました。

 

1944年9月、フィリピン海域で米潜水艦により撃沈されています。

 

ということで、今回は筆者の大好きな機雷戦関係の艦艇の新着モデルのご紹介でした。(これらのモデルは、本稿の「日本海軍 機雷戦艦艇小史(機雷敷設艦と掃海艇(再録))」にも反映されています)

 

次回は「ミッドウェー海戦」を、お届けする予定です。もしかするとできるところまで、ということになるかもしれませんが。

 

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