相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

「脇道探索」:脇道彷徨のアップデート、と、ちょっと面白いもの(A-140計画艦)作ってみた

彷徨の現在:「スウェーデン海軍艦艇」その後

本稿の読者は既にご存知とは思いますが、このところ、大変目先の「脇道探索」という名目で、「第二次世界大戦期のスウェーデン海軍」の艦艇群に興味が集中しています。

ご承知のように、スウェーデンという国は二度の世界大戦のいずれでも中立を守り続けた、稀有な国です。バルト海という大きな内海に抱かれ大洋に接続海面を持たない、という地勢的な条件が、この中立維持にとって大きな要因だった、というように考えるのですが、いずれにせよ騒然とする周辺情勢の中で「中立」を謳うことは、それ自体に大きな勇気がいったでしょうね。

 

で、そのバルト海沿岸を守った「スウェーデン海軍」の艦艇コレクションですが、二つのトピックがありました。

一つは機雷敷設巡洋艦「クロース・フレミング」の到着。

 

機雷敷設巡洋艦「クロース・フレミング(Clas Fleming)」

詳しくはいずれまた総覧編でご紹介しますが(と言っても、そんなに詳しい情報はないのですが)1750トンの比較的小さな船体に15cm単装砲を主砲として2基搭載し、200基の機雷敷設を行う能力を持っていました。

1912年就役の古い船なのですが、1939年から徹底した近代化が行われ、艦容が一変しています。改装前後のモデルが両方とも到着しました。ちょっとご紹介。

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(敷設巡洋艦「クロース・フレミング」就役時の概観:66mm in 1:1250 by Argonaut: 右下カットには機雷敷設用の二つの投下軌条口がよくわかります。就役時の機雷搭載数は100基でした)
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(敷設巡洋艦「クロース・フレミング」近代化改装後の概観:69mm in 1:1250 by Rhenania: 1939年次の大改装で機関をディーゼルに換装し、船体も延長されています。煙突の数も増えて、全く別の艦容を示しています。右下カットには機雷敷設用の二つの投下軌条口。これは残ったんですね。改装後の機雷搭載数は200基に。中立を明示する白線が目立ちます)


**既述のように、スウェーデンは両大戦で中立を保ちえたため基本的に「戦没艦」というのがありません(稀に事故等での喪失艦は発生していますが)。このため、大型艦の多くが比較的長く現役に止まっており、近代化改装、あるいは他艦種への大規模改装などを受けています。来るべき「スウェーデン海軍艦艇総覧編」では、その辺りをある程度ご紹介できればいいなあ、と考えつつ、モデルの収集、あるいは保有モデルのアップデートなど行っています。

 

もう一つのトピックは駆逐艦コレクションでの朗報。

駆逐艦コレクション」の現在:かなり嬉しいお話

本稿の前回で、筆者はスウェーデン海軍の駆逐艦を例に挙げ、筆者がどんな手順でそのコレクションを行っているか少しご紹介しました。その中で6艦級あるスウェーデン海軍の第二次大戦期の艦隊駆逐艦のクラスについては「ヴィズビュー級:Visby class」を除いてはほぼ調達の目処が立った、とご紹介していました。

その時点で、「クラース・ホルン級:Klas Horn-class」が筆者向けに出荷されていたのですが、結局手元に着いてみると、大きさ等は再現されているものの、少し「眠たい」モデルでした。

幸いなことに同級は次級の「ヨーテボリ級:Goteborg-class」とほぼ同じ艦容をしており、寸法を少し詰めればなんとか見られる形にはできそうでしたので、結局、手持ちの「ヨーテボリ級:Goteborg-class」を一隻そのように手を入れたわけですが、そもそもがそのベースとした「ヨーテボリ級:Goteborg-class」のモデル自体もあまり納得が行っていないことに対する意識がどんどん強くなってしまいました。

本稿前回で、Rhenania 社がこの分野に充実したラインナップを揃えていそう、というご紹介をしたのですが、筆者は偶々これら一連のスウェーデン海軍の艦隊駆逐艦シリーズの原点ともいうべき「エレンスコルド級:Ehrenskjold-class」のモデルを保有しています。

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(「エレンスコルド級駆逐艦の概観:73mm in 1:1250 by Rhenania: 第一次世界大戦後に建造された1000トン足らずの同級は、以降のスウェーデン海軍の駆逐艦タイプシップとなりました。モデルは素晴らしいディテイルを見せてくれます。中立を明示する白線が目立ちます)

このモデルはディテイルまで再現されており素晴らしいモデルです。当然、出来れば同じRhenania社製のモデルで他の艦級を揃えたいと。早速、通常の調達ルートを総浚いしたのですが、「エレンスコルド級:Ehrenskjold-class」とその他既に手元に保有するモデル以外の艦級は見つかりません。どうやら流通してないらしい。古いモデルですし、マイナーな船なので・・・。

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(直上の写真:Rhenania社製の「エレンスコルド級駆逐艦に比べると、手前のWiking社製の「ヨーテボリ級」がやや寝ぼけて見える、というのはわかっていただけるのではないかと。筆者としてはそれなりに手を入れているので、愛着はあるのですが。Rhenania製モデルで揃えたい、という気持ちがわかっていただければ

 
これはダメもとでご本尊に当たるしかないのかな、と、Rhenania社とのコンタクト方法を探し始めました。すると、Facebookで下記を発見。

Rhenaniaとのコンタクト

https://www.facebook.com/rhenaniajuniorminiaturen

早速、「失礼ですが」とドアをノック。「Rhenania製のスウェーデン海軍の駆逐艦を探しているのですが」と。

すると「ああ、それは親父の方だから、Facebookですぐに見つかると思うので、そちらにコンタクトしてよ。在庫してるかどうかは知らないけど、あまり期待しないで、聞いてみて頂戴」というお返事。「Jr.」と確かに表記がありますね。

で、今一度、検索して、発見。

https://www.facebook.com/Rhenania-Miniaturen-100880794897213/

 改めて「すみません」とトントン。「実は・・・」

「ああ、どこかに残っているかもしれないから、少し探してみるね。見つかったら連絡しますよ」と、気軽なお返事。社交辞令かな、と思っていると間髪入れずに「Visby-classと Klas Horn-classは見つからないけどGoteborg-class、Ehrenskjold-classとWrangel-classなら見つかったけど、どれが欲しいの?」

「できればGoteborg-classを何隻か欲しいのですが(Ehrenskjold-classは既に手元にあるし、Wrangel-classは入手の手当が済んでいます。Klas Horn-classがないなら、これまでと同じ要領でGoteborg-classを一隻ベースにしてサブ・スクラッチしようかな、と考えていたので、Goteborg-classが何隻か欲しくなってしまいました)」と、トントンと話が進んでいきます。

「そのクラスは6隻あるでしょ。どの船か指定してよ」

ええっ?一隻づう違うのか?と思いつつ「では、1番艦、2番艦、4番艦、6番艦をお願いします」と返事しました。(2番艦はKlas Horn-classのセミクラッチのベースにするつもり。番号の間隔を開けたのは、相違点があるならきっと数字を飛ばしたほうが差異が目立ったものになるだろうな、となんとなく思ったからで、相違点についての知識があるわけではありません)

「了解した。準備ができたら連絡するから。日本語の宛名も送ってよ。最近息子が韓国の人とやりとりしてるんだけど、どうも韓国語のラベルがあったほうがトラブルがなくて便利らしいんだよね」(筆者の場合、英語表記で配送が滞ったことは一度もありません。日本の郵便屋さん、配送業者さんは、皆さん優秀です。不在票に記載される差出人が時折「外国様」「Germany様」と書かれているのは、ご愛嬌です。でも、筆者でも彼らの作る宛名ラベル、特に差出人が手書きだったりしたら、読めないから)

価格は一隻15€とのこと。通常の筆者の調達ルートでの感覚的な相場が手持ちのEhrenskjold-classの中古で22€、新品で30€位ですので、かなり安い。実は一点、「いくらって言われるんだろう」と、そこが不安だったのですが、これは嬉しい驚き。やり取りの中で「型が生きていたら、また、キャストするという手もあるし」と仰っていたし、「準備ができたら」のメッセージも併せて考えると、キットで届くのかもしれません。(筆者としては、それはそれで、組み立てたり彩色したりと、手がかけられるので、とても嬉しい。パーツが小さいのを除くとね)

さらに「昨日、息子が来て、あなたから連絡あったか、と言ってたよ」と仰っていました。

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(Rhenania: Facebookの住所表記周辺の航空写真:なんか良さげなところ by Google Map)

住所を見るとドイツのライン川沿いの小さな町のようですが(デュッセルドルフの少し北側、オランダとの国境近く)、こういう結びつきがとても簡単にできるのは、それはとても嬉しいです。今は行くことが出来ないのが残念ですが。早くどこにでも安心して行けるようにならないかなあ?

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(直上の写真:というような次第で、このまま話が上手くまとまれば、多分、陽の目を見ない現在の「ヨーテボリ級」駆逐艦と、それをベースにセミ・スクラッチした「クラース・ホルン級」駆逐艦(手前:少し小さい)の勇姿を。私事の繰り返しになり恐縮ですが、手を入れた分、愛着はあるのです。特に右下カットの魚雷発射管などはプラロッドからの手作りです

 

ebayでVisby-classの出品を発見!

と、ワクワクしていると、gmailにいつもお世話になっているebay出品者のcroschwigさんから「スウェーデン駆逐艦、今週末に出品しまっせ」とメッセージを受信しました。「おお」と見ると、なんとVisby-classがあるではないですか。RhenaniaのモデルではなくStar製ですが、これもとても嬉しいお知らせ。

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(Croschwigさんのご出品の写真 by ebay: Star社製のVisby-class  入札結果が判明するのは来週末3/1 手の入れどころはたくさんありそうですが、それはそれで楽しいので。Star社だから、ちょっと乾舷が高すぎる感じなんだろうなあ、とか。まあ、金属ヤスリで削ればいいだけなのですが)

というわけで、早速、入札!

これでなんとか形が整いそう、というお話でした。

 今週をサマライズすれば、「叩け。されば開かれるであろう」ということかと。

 

てなやりとりをしながら、一方で以前から気になっていた「大和級」のヴァリエーションを作ってみました。

ここからは、全く別のお話しです。

大和級計画案(A-140計画)」から、戦艦「甲斐」(仮称)の制作

大和級」の建造にあたっては、その設計案が20数案あったことはよく知られています。

そのヴァリエーションは多岐にわたり、例えば排水量では50000トン案から70000トン案、主砲も18インチ砲10門搭載案から16インチ砲9門搭載案等々、種々検討されて、最終案として纏まったのが我々が知る「大和級」ということになります。

その概観も種々あり、その中でも筆者が気になっていたのは原案の当初から数案に展開され続けた「主砲前方集中配置案」とでも呼ぶべき形状でした。

他のディテイルの再現はさておき、この「主砲前方集中配置」だけでも再現できないか、というのが筆者のぼんやりとした「想い」だったのですが、今回それを一気に形にすることに。

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(戦艦「甲斐」(=「大和級」というより「A-140計画艦」というべきか。主砲前部集中搭載案から)の概観:主砲の前部集中配置で防御装甲の配置を効率化し、タービンとディーゼルの混載と共に、日本海軍悲願の高速性と長い航続距離を両立させることを目指しました)

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(直上の写真:「大和」(奥)と「甲斐」の概観比較:「甲斐」がほんの少し小振りで、主砲搭載位置の差異など見ていただけるかと。何故か主砲前部集中配置の方が、機動性が高そうな気がしませんか?写真ではわかりにくいですが、煙突が「甲斐」の方がやや細く、タービンとディーゼルの混載だから、と無理やり・・・)

 

きっかけは棚の整理。そこで「京商」製の「大和級」のモデルを4隻発見。正確にいうと就役時を再現した、つまり副砲4基搭載時の「武蔵」3隻と対空兵装強化時の「大和」1隻の箱入り在庫を、発見したことでした。実はこの「京商」のモデル、樹脂製でディテイルは素晴らしいのですが、船体の長さが197mmで、いっぽう実艦の長さが263.3mであることから1:1250スケールの場合、210mm程度は欲しいのですが、明らかに小ぶりに再現されています。それに併せて上部構造もやや小さめで、このためNeptune社やDelphin社のモデルと一緒に扱えず「お蔵入り」して、棚の奥にしまっていたのです。

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京商製の「武蔵」立派な台座に乗っています。ディテイルはバッチリです。下段はDelphin社製の船体との大きさ比較。約13mm短い!)

一方で、何度か本稿では触れてきているのですが、Delphin社製の「大和級」は、安価に入手でき部品取り用として大変重宝するため、何隻か船体(ハル)のみストックされています。(ちなみに本稿の表題バックに掲載されている「イージス艦大和」もベースになっているのはこのDelphin社製のモデルです)

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(上の写真:Delphin社製「大和」の船体部分(上段および下段左)と京商製「武蔵」就役時モデルの上部構造と主砲塔(下段右))

(上の写真:Delphin社製「大和」の船体部分に京商製「大和」最終時モデルの上部構造を組み合わせてみたもの(上段):「甲斐」の対空砲強化改装後の姿を再現?)
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これも本稿では何度か触れていることですが、このDelphinium 社製のモデルは、構造上パーツの分解が容易で、上部構造を取り払って船体のみを別に使用するなどの用途には大変重宝します。(だから筆者宅のDelphin 社モデルは、たいていバラバラのパーツとして保管されている事が多いのです。ごめんなさい、Delphin社さん)

こうして少し小ぶりな、しかしディテイルのしっかりした「京商」の「大和級」上部構造と、加工のし易いDelphin社製「大和級」ハルの組み合わせで、「主砲前方集中配置案」を作ってみよう、という構想に至ったわけです。

 

大和級」設計案での機関に関する議論

大和級」の多様な設計案の一つの重要な軸は、主機選択の変遷であったと言ってもいいかもしれません。

資源の乏しい日本にとって、燃料問題は常に重大な課題であり、従って高速力と航続距離を並立させることを考慮すると、燃費に優れるディーゼル機関の導入は重要な目標であったわけです。さらに大型潜水艦用のディーゼル機関の開発の進展など、これを後押しする要素も現れ始めていました。

このため原案はタービン機関のみの搭載案でしたが、その後の案は全てディーゼル機関とタービンの併載案、あるいはディーゼル機関のみの搭載案、でした。

艦隊決戦の想定戦場を、日本海軍はマーシャル諸島辺りとしていたので、航続距離はできるだけ長くしたかった、そういう事ですね。

最終的には、当時のディーゼル機関の故障の多さ、性能不足(潜水艦なら「大型」と言っても2000トン程度、1番大きな潜特型(伊400型)でも3500トン程度だったのですが、10000トン級の潜水母艦「大鯨」のディーゼル機関は所定の性能を発揮できませんでした)から、工期との兼ね合いを考え、結局ダービン機関のみの搭載案が採用されましたが。「大和級」他の戦艦群が大戦中に後方(トラック等)からなかなか前に出れなかった理由の一つは、この辺りにありそうです。

 

そんな背景を改めて振り返ると、「京商大和級」の少し小ぶりな上部構造物、特に少し細身の煙突は、念願のディーゼル機関とタービン機関を併載し長い航続距離と高速性を兼ね備えることが実現できた、というようなカバーストーリーにしてみてもいいかもしれません。「しかし就役後、慢性的な機関の不調に悩まされ、期待通りの活躍はできなかった」的なオチなのかもしれませんが。

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(筆者の世界では、タービンとディーゼルの混載で、30ノットの高速と長い航続距離を誇り、46cm砲装備戦隊の露払い的な役割で建造された「富士級」高速戦艦と共に第2艦隊に所属し、活躍する想定でした。でも実は機関の故障が多くて・・・、というようなお話かな?)

「富士級」高速戦艦については以下で。

fw688i.hatenablog.com

 

というわけで今回はここまで。

 

次回は・・・。

今回の「スウェーデン駆逐艦の調達」に何らかの進展があれば、それも併せてご紹介します。多分、続々と後続艦が到着する予定ですしね。

 

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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