相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

新着3D printing モデルのご紹介

もうすっかりお馴染みの Shapeways

今週(う?先週?)、いつもご贔屓の ShapeWaysからいくつか艦船モデルが届きました。

 

本稿では既に何度か紹介しているので、繰り返しになりますが、Shapewaysはオランダにある3D Printingの、おそらく世界最大手の出力センターで、デザイナー、製作者はここのデータベースにデータを預け、筆者のような依頼者からの依頼を受けることになります。その扱い商品は実に多岐にわたっていて、昨今は Corona対策のマスクや、機器のパーツなども扱っているようです。興味がある方は是非こちらを。

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1:1250スケールの艦船模型の場合、出力まで(つまりモデルが完成するのに)おおよそ1週間、そしてオランダから日本への配送が、同じく1週間、都合、2週間から3週間で手元に届く、という感じです。

デザイナーによって力を入れている分野が違ったりするので、それを整理しながらいろいろとみて見るのも、大変楽しいですよ。「ああ、この人は、この分野に強いんだなあ」とかね。

 

到着したのは、以下の通り。

「改鈴谷級」重巡洋艦:いわゆる「伊吹級」重巡洋艦ですね。

大鷹級航空母艦:「大鷹」「沖鷹」

航空母艦「神鷹」

「吹雪級」駆逐艦

今回はさくっといくつかご紹介。そういうお話。

 

「改鈴谷級」重巡洋艦:「伊吹級」重巡洋艦

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日本海軍が建造に着手した最後の重巡洋艦です。「伊吹級」重巡洋艦と言う呼称の方が通りが良いかもしれません。その名称の通り、「鈴谷級」巡洋艦の改良型で、後部マストの位置の違い程度しか外観上の区別はありません。装備上では「鈴谷級」の3連装魚雷発射管4基から4連装魚雷発射管4基に、雷装が強化されています。着工後、航空艤装を排して5連装発射管5基装備にさらに雷装を強化したと言われています。

1番艦は「伊吹」と命名され、1942年4月に起工され、1943年5月に進水、その後、ミッドウェー海戦での機動部隊主力空母の喪失を受けて急遽航空母艦への改造が決定されましたが、既に重巡洋艦として進水を迎えていた本艦の転用改造の工事は工数が多く、工事途中で終戦を迎えています。

 

今回入手した模型は、「改鈴谷級」の原案をモデル化したもので、航空艤装は装備したままの姿を再現したものです。

制作社は、本稿で紹介した艦船では日本海軍の「5500トン級」軽巡洋艦や「レキシントン級巡洋戦艦などでお世話になっているTiny Thingamajigsで、その細部の再現等には信頼を置いています。

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(直上の写真:「改鈴谷級」重巡洋艦の概観:下地処理をした状態です。この後、塗装をし、マストのトップ部分をプラロッドなどで仕上げれば完成、かな?)

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(直上の写真:今回はSmooth Fine Detail PlasticとWhite Natural Versatile Plasticの2素材で出力を依頼しました。2隻共、重巡洋艦仕様で仕上げていこうか(その場合には「伊吹」と「鞍馬」かな?)、あるいは1隻は条約型巡洋艦の名残りという設定で、主砲を3年式60口径15.5cm砲として、軽巡洋艦仕様で仕上げてみましょうか?(その場合には、「川」の名前を考えねば))

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「大鷹級」航空母艦

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日本海軍は有事の際の航空母艦への改造転用を前提として、政府助成金を拠出した商船群を持っていました。

太平洋を挟んで、日米間の雲行きが怪しくなると、上記のような経緯で日本郵船の「新田丸級」貨客船を母体として、航空母艦「大鷹」(春日丸)「沖鷹」(新田丸)「雲鷹」(八幡丸)の3隻が転用改造されました。

当初の設計では、これらは艦隊空母の補助戦力として活用される予定でしたが、艦載機の発展(大型化、高速化)に従って、商船改装からくる低速(21ノット)と短い飛行甲板では多数機の発艦に必要な合成風力が作れす、太平洋戦争中期まではでは主として航空機の運搬に使用されました。

戦争末期には、米海軍の潜水艦の跳梁が激化し、これに対抗するために輸送船団に随伴して船団護衛などにも用いられましたが、これは対潜哨戒が主任務で、多数機の同時運用の必要がなく、飛行甲板の全長をやや旧式の重量の比較的軽い少数機で利用できるところから、実現できたものでした。

使用機体は、太平洋戦争末期には既に一世代前の機体となっていた97式艦上攻撃機を用い、これに対潜爆弾や爆雷を搭載していました。12機程度を搭載して一回の哨戒飛行には2機程度をあて、2−3時間の哨戒ローテーションで、船団周囲を警戒する、という運用でした。しかし航空機による対潜哨戒は有効ではあったものの、哨戒機の運用は昼間のみに限られ、同船団護衛任務に投入された「大鷹」と同型艦の「雲鷹」は、共に船団護衛任務中、米潜水艦の夜間雷撃(未明雷撃)で失われました。

余談になりますが、これも既に本稿で触れたことですが、米海軍では「大鷹級」などより一回り小さくより低速な護衛空母を多数就役させており、これらは上陸作戦の支援や対戦哨戒などの任務に最新鋭の艦載機を運用していましたが、これは油圧式のカタパルトを実用化できたことにより可能になったものでした。

航空母艦「大鷹」

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(直上の写真:航空母艦「大鷹」の概観:下地処理をした状態です)

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航空母艦「沖鷹」

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(直上の写真:航空母艦「沖鷹」の概観:下地処理をした状態です。上述のように基本的に同型の貨客船をベースとしているため「大鷹」と同型ですが、モデルでは飛行甲板の長さを少し変えた設定になっています)

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航空母艦「神鷹」

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「神鷹」は第二次世界大戦勃発後、ドイツに帰還できなくなり神戸に係留されていたドイツ商船「シャルンホルスト」を日本海軍が買収して航空母艦位改造したものです。

前出の「大鷹級」のベースとなった「新田丸級」と船体構造が類似していたため、改造の要領はほぼ同じだったと言われています。「新田丸級」よりもやや大型の船体ではありましたが、商船ゆえの低速は如何ともし難く、「大鷹級」同様、その用途は限定されたものでした。

船団護衛任務では97式艦上攻撃機14機を搭載して、前出の「大鷹級」と同様の対潜紹介のローテーションを行いました。「神鷹」もやはり米潜水艦の夜間雷撃を受け失われています。

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(直上の写真:航空母艦「神鷹」の概観:下地処理をした状態です。船体両舷のバルジが目立ちますね)

 

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「吹雪級」駆逐艦

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「吹雪級」駆逐艦は、太平洋戦争時の日本海軍の駆逐艦の基礎となった艦型で、一般には「特型駆逐艦」という呼称で知られているかもしれません。本稿で、日本海軍の艦隊駆逐艦の第一期決定版として紹介した「睦月級」の次に建造された艦級ですが、艦型も一新し、また搭載兵装が格段に強化されています。

そういう意味では非常に重要な艦級なのですが、実は1:1250スケールでなかなか良いモデルに巡り会えていませんでした。問題は主砲塔で、この「吹雪級」から日本海軍は駆逐艦の主砲を「睦月級」までの12cmから列強海軍なみの5インチ(12.7cm)にグレードアップし、搭載方法もそれまでの単装砲架から連装砲塔形式へと進化させています。

「吹雪級」ではこの5インチ主砲をA型砲塔という平射砲塔に搭載しており、これがこの艦級の大きな特徴となっています。というのも、以降の艦級では5インチ砲の仰角を上げ、対空射撃にも対応できる砲等に改められているからです。

(直下の写真:日本海軍の駆逐艦が搭載したA型砲塔(上段)とB型砲塔(下段)の資料:軍艦メカニズム図鑑「日本の駆逐艦」より引用しています)

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ところがこのA型砲塔を再現したモデルが見当たらず(Neptuneにあるはずなのですが、滅多に見かけません)、Trident製の「吹雪級」のモデルの砲塔を整形加工するか、などと(それはそれで楽しいのですが)考えていたところ、Shapewaysで同モデルを見つけた、という訳です。なんとこのモデル、実は日本製、 DAMEYAさんの作品です。しかも私が知る限り、DAME YAさんはこのモデル以外には1:1250スケールの艦船模型はお造りになられていないので(もし違ったら、一重に私の認識不足です。ゴメンなさい)、何とも嬉しい救いの手であったわけです。

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(直上の写真:「吹雪級」駆逐艦の概観:下地処理をした状態です。マストは付属パーツがあるのですが、切り出し等が難しく、プラロッドで制作しています)

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(直上の写真:問題の「吹雪級」駆逐艦の主砲塔。見事にA型砲塔の特徴が再現されています。こういうの、嬉しい!)
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この日本海軍の駆逐艦の主砲の話は、本稿、前回で少し触れているのですが、再録しておくと、日本海軍が駆逐艦の主砲として採用した50口径3年式12.7cm砲は基本設計が平射砲で、対空射撃の要請に対する対応として、B型砲塔以降では仰角を75度まで上げるなどの改良が行われましたが、装填機構が対応できず、つまり装填時には平射位置まで仰角を戻さねばならず、高角射撃時の射撃速度は毎分4発程度で、低空からの侵入機に対する以外は対空砲としては全く効果を有しませんでした。

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同時期の米海軍の駆逐艦は既に全てが5インチ両用砲を搭載し、揚弾機構なしの場合でも毎分12−15発の射撃速度を有しており、これに加えて両用砲用の方位盤などとの組み合わせで、既にシステム化を進めていたのに対し、日本海軍の駆逐艦は上記のような事情で実用的な対空砲を持てず、多くの駆逐艦が戦争後期には主砲塔を対空機銃座に置き換えている理由がここにあります。

駆逐艦については、また改めて・・。

 

 ということで、取り敢えず今回は、ここまで。 

 

次回は、どうしようかな?

やっぱり完成編?

先だっての「巡洋艦開発小史」の番外編で、未成巡洋艦、If巡洋艦のまとめでも?

あるいは日本海軍の駆逐艦?「吹雪級」が完成すれば、ほぼ準備が整います。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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