相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

ドイツ帝国巡洋戦艦「デアフリンガー級」の変遷、+未成に終わった帝国海軍巡洋戦艦

明けましておめでとうございます。

いいお正月をお迎えでしょうか?

年末年始、筆者は大阪の実家に帰省してきましたが、久々に人でごった返す新大阪駅を見てきました。人の移動は分散していたようですが、均等に混み合っていたようで、通常は人の移動の少ない元日も、新大阪駅は混み合っていたようです。暦の巡り合わせか、皆さんが滞在を短めに切り上げたのでしょうか、二日の日も新幹線はほぼ満席状態で、多くの人々が移動しながらも、少しこれまでとは違った様相が垣間見ることができたお正月でした。

 

さて、2023年の初回は、昨年11月あたりからドイツ海軍H級戦艦のモデル取得に端を発した一連の「架空艦」紹介と制作で少し浮き足立っていた感のある本稿を、通常モードに引き戻す意味も兼ねて、かまりマニアックなコレクションのお話です。

今回の主人公はドイツ帝国海軍巡洋戦艦「デアフリンガー級」です。同艦のNavis製就役時モデルの新ヴァージョン(本稿では「Navis Nシリーズ」として度々ご紹介しています)が揃ったので、この機会に短い同級の艦歴の中での形態の変遷等をご紹介します。

 

「デアフリンガー級」巡洋戦艦(1914年から就役:同型艦3隻)

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(「デアフリンガー級」巡洋戦艦(=大型巡洋艦:この後は巡洋戦艦の呼称を使います)の概観:170mm in 1;1250 by Navis :就役時の姿を再現したNavis の新ヴァージョンモデルです。旧モデルのご紹介はもう差し控えますが(長々、愚痴を聞いてもらうことになるので)、ディテイル等が格段に再現性を高めています)

同級はドイツ帝国海軍が建造した最後の巡洋戦艦の艦級です。

正確には、ドイツ帝国海軍が完成させた最後の「大型巡洋艦」の艦級、と言うべきですね。

少し「ちゃぶ台返し」的なお話になりますが、ドイツ帝国海軍に「巡洋戦艦」と言う艦種はありません。これらは全て「大型巡洋艦:Grosser Kreuzer」に区分されています。つまり本稿の下記の回で紹介した艦船群(装甲巡洋艦:これも正式な呼称は「大型巡洋艦」なのですが)の系譜の直系に当たるわけです。でもまあ、一般的な関連に従って、ここでは「巡洋戦艦」と言う艦種名称を使っておきましょう。

同級は基本的には前級「ザイトリッツ」の改良発展型ですが、これまで継承してきた「フォン・デア・タン」「モルトケ級」とやや試作的な色合いの続いてきたドイツ帝国海軍巡洋戦艦第一世代の設計とは異なる全く新しい設計となりました。

参考)ドイツ帝国海軍巡洋戦艦第一世代の総覧

(第一世代の最終艦:巡洋戦艦「ザイトリッツ」の概観:162mm in 1;1250 by Navis:下の写真は「ザイとリッツ」の主砲塔配置の拡大。後方に射界を広く確保し、優速を利用した強行偵察の実施と、離脱時の砲戦を想定した設計、と言うのは穿ち過ぎでしょうか?)

(下の写真は「フォン・デア・タン」に始まる一連の第一世代の巡洋戦艦群:手前から「フォン・デア・タン」「モルトケ」「ゲーベン」「ザイトリッツ」の順:主砲塔の配置、艦首楼構造の変遷等に試行錯誤の過程を見ることができます)

これらの艦級については本稿の下記の回をご覧ください。冒頭の写真下のコメントで記述したNavis新旧ヴァージョンを巡る筆者の「愚痴」もここでなら読んでもらえます

fw688i.hatenablog.com

 

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(「デアフリンガー級」巡洋戦艦の各部の拡大:艦首尾に背負い式に振り分けられた主砲塔が同級の最大の特徴かも。それまでのドイツ帝国巡洋戦艦に割り当てられた「前衛偵察部隊」の任務に加え、対等な砲撃戦への参加も考慮されているような)

前級までとは異なる平甲板型の船型を採用し、主砲には50口径12インチ(30.5センチ)速射砲を採用し、これを連装砲塔4基に搭載しています。27000トン弱の船体に石炭専焼缶と重油専焼缶を併載し27ノットの速力を出すことができました。主砲塔数を減らして減じた重量は装甲の増加と水密区画の増加に回され、戦艦並みの防御力を有した設計でした。

搭載された主砲はそれまでの帝国巡洋戦艦が搭載してきた11インチ砲から、口径をあげた50口径12インチ砲で、405.5kgの砲弾を発射し、16200メートルの射程を有している「ヘルゴラント」級以降の弩級戦艦の標準主砲でもありました。ドイツ帝国海軍は英海軍が新たに建造した超弩級戦艦「オライオン級」以降が装備した13.5インチ砲にも、同砲で同等以上に戦えると想定していた節があります。

1914年の改装で主砲仰角が上げられ、20400メートルまで射程が伸ばされました。

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4基の主砲塔は艦首・艦尾に2基づつ背負い式に振り分けて配置されました。それまでのドイツ帝国巡洋戦艦が、主力艦隊の前衛での偵察を考慮した艦首部に主砲塔1基、艦中央部に主砲塔をオフセット配置で2基、艦尾部に主砲塔2基を背負い式で配置した、一見、優速を利用した逃走時の艦尾方向への射撃を重視したように思える配置であったのに対し、正艦首尾にバランスよく火力を配置した設計でした。

 

同型艦3隻

同級は「デアフリンガー」「リュッツオウ」「ヒンデンブルク」の3隻が建造されました。

「デアフリンガー」

一番艦「デアフリンガー」(1914年就役)は就役するとすぐにヒッパー中将の偵察部隊に配属され、ドッカーバンク海戦では3発被弾しながらも前述の「サイトリッツ」と共に英巡洋戦艦艦隊旗艦の「ライオン」に命中弾を与え大破させています。

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(同級一番艦「デアフリンガー」の就役時の概観)

ユトランド沖海戦でもヒッパー部隊として参加し英巡洋戦艦「クイーン・メリー」「インヴィンシブル」の撃沈に貢献しましたが、自艦も大口径砲を21発、被弾し修理に4ヶ月を要するほどの損害を受けました。

 

「リュッツオウ」

1916年3月に就役以降不調だった機関を修理したのち艦隊に就役した二番艦「リュッツオウ」はユトランド沖海戦では巡洋戦艦で構成されたヒッパー中将が指揮する偵察部隊の旗艦となりました。

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(同級ニ番艦「リュッツオウ」の概観)

ユトランド沖海戦では英巡洋戦艦「インヴィンシブル」の撃沈に貢献しましたが、英海軍の大口径弾を24発被弾して大浸水を起こしやがて航行不能となり、ヒッパー中将の司令部を他艦に以上させた後、しばらく回復に努めましたが断念し、自沈しています。同艦はドイツ帝国海軍が海戦で失った唯一の弩級主力艦となりました。

(下の写真は同級一番艦「デアフリンガー」(上段手前と左下段)と二番艦「リュッツオウ」:1:1250スケールのモデルで見る限り、外観状の相違点は艦橋部の若干の構造の違い程度かと)

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ヒンデンブルク

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(同級三番艦「ヒンデンブルク」の概観:同艦は就役時から遠距離砲戦を想定した射撃指揮所を三脚マストの上に設置していました)

三番艦「ヒンデンブルク」は工期を延長し三脚前檣などを搭載した形で1917年に就役しています。就役後大きな海戦の機会も無く、出撃の回数も数度にとどまっています。休戦後、他の主力艦と同じくスカパ・フローで抑留されましたが、いわゆる6月21日の「艦隊大自沈」に参加して他艦同様自沈しています。

 

改装後の「デアフリンガー

巡洋戦艦「デアフリンガー」はユトランド沖海戦での損傷回復の際、前出の「ヒンデンブルク」に倣い、三脚マスト装備等の大改装を受けています。モデルは大改装以降の概観

「デアフリンガー」もユトランド沖海戦の損傷からの修復時に射程の延長を狙い主砲仰角を上げる改良が加えられました。併せて前檣を三脚化して射撃指揮所をその上に搭載して遠距離砲戦への対応力の向上が図られました。

修復後はさしたる出撃機会のないままに休戦を迎え、他艦同様の経緯で抑留先のスカパ・フローで自沈しました。

(下の写真は改装後の「デアフリンガー」(上段手前・中下段では左列)と「ヒンデンブルク」の比較:前檣の構造と三番主砲塔後ろの構造物の形状の違いがわかります)

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(下の写真は「デアフリンガー」の就役時と改装後の比較:上段と下段左が就役時:目立つのは前檣構造の三脚マストかとその上の射撃指揮所ですが、細かいところでは魚雷防御網のブームが舷側から無くなっています)

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****前出の「魚雷防御網」については、下記に大変わかりやすく解説してくださっている書き込みを見つけましたので、そちらをご参考に。大変面白い!重くて扱いが大変、その割に効果は「?」と言うことだったようですね。

daihonnei.com

 

おまけ:ドイツ帝国海軍超弩級巡洋戦艦(全て計画のみの未成艦)

「デアフリンガー級」巡洋戦艦ドイツ帝国海軍が就役させた最後の巡洋戦艦となりましたが、次に紹介する「マッケンゼン級」と「ヨルク代艦級」という2艦級の計画がありました。「マッケンゼン級」については2隻が第一次世界大戦中に進水しましたが、戦況の悪化により工事は継続せず、全てが未成艦となりました。

両級の特徴としてはいずれも「デアフリンガー級」の拡大改良型でありながら、主砲に大口径砲を採用した、いわゆる超弩級巡洋戦艦を目指したものでした。

 

「マッケンゼン級」巡洋戦艦(計画:同型艦4隻、うち2隻は進水までで工事打ち切り)

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同級の新モデルは未入手です(現時点では入手計画はなし)

(未成巡洋戦艦「マッケンゼン級」の概観:178mm in 1;1250 by Navis)

同級は「デアフリンガー級」をタイプシップとした平甲板型の31000トン級の船体に、35センチ連装砲4基を搭載するという設計で、29ノットの速力を発揮する計画でした。計画された4隻のうち2隻は1917年に進水まで工事が進んでいましたが、戦況の悪化で工事は中止となりました。

(「マッケンゼン級」のディテイルのアップ:同級でドイツ帝国海軍は初めていわゆる超弩級巡洋戦艦保有する予定でした。高い機動性とドイツ艦伝統の重厚な防御力を兼ね備えた同級が戦場に投入されていたら、海戦の様相も相当異なっていたでしょうね。そんなことを想像させる大きな主砲塔)

同級は設計段階では38センチ砲を主砲として採用する予定でしたが重量増加を避けて35センチ砲が採用されたという経緯があったようです。

 

「ヨルク代艦級」巡洋戦艦(計画:同型艦4隻)

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(未成巡洋戦艦「ヨルク代艦級」の概観:182mm in 1;1250 by Navis)

同級は「ヨルク級」装甲巡洋艦2隻、「シャルンホルスト級装甲巡洋艦2隻の代替として計画された巡洋戦艦の艦級で、こういう経緯から「ヨルク代艦(=「ヨルク級の代替艦」)と呼ばれています。

「デアフリンガー級」を基本設計として拡大した平甲板型の33000トン級の船体に、38センチ連装砲塔4基を主砲として搭載する構想で、27.5ノットの速力を発揮する設計でした。概観的な大きな特徴は集合煙突を採用したことで、上部構造がコンパクトにまとまっている印象があります。いずれも計画のみでした。

(下の写真は「ヨルク代艦級」のディテイルのアップ:大きな主砲塔を搭載し、集合煙突の採用で上部構造がかなりコンパクトな印象を与えます。前出の「マッケンゼン級」同様、このクラスが就役していたら、英独の海戦の様子は相当異なっていたでしょうね。英国の主力艦でこれに対抗できるのは「クイーン・エリザベス級」のみかも)

ドイツ帝国海軍巡洋戦艦第二世代の総覧

英海軍が新たに世に送り出した「インビンシブル級」を始めとする巡洋戦艦への急遽の手当として手探り感の強かったドイツ帝国海軍巡洋戦艦第一世代(「フォン・デア・タン」から「ザイとリッツ」までの系譜)に対して、独自の設計を確立した感のある第二世代。持ち前の重防御設計に大口径主砲の搭載の実現による強力な攻撃力が備われば、英独の海軍力のバランスが大きく変わっていた可能性もある、と想像が膨らみます。

(上の写真はドイツ帝国巡洋戦艦第二世代の総覧:手前から「デアフリンガー級」「マッケンゼン級」「ヨルク代艦級」の順)

 

結局、最後は未成艦の話にしてしまいました。模型ならでは、と言うことで・・・。

今回はここまで。

 

次回はどうしましょうか?昨年末に告知した「扶桑級改=16インチ主砲搭載型」の近代化改装については(これはかなり「架空艦」の領域に踏み込んだ話にはなるのですが)、まだ素材が集まりきっていないので少し先、かつかなり大規模な作業になるかと思いますので、新着モデルがあればその辺りのご紹介でも。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

今年もこんな感じで続けてゆきたいと思っていますので、時々見にきていただければ鯛へn嬉しいです。今年もよろしくお願いします。

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

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