相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

第27回 (一応、最終回) 海上自衛隊「護衛艦 やまと」の誕生、そしてその先へ

日本海軍主力艦の終焉

本稿、前回末尾で記述したように、旧海軍の残存主力艦のうち「大和」のみが海上自衛隊編入された。

終戦時に行動可能であった「大和」以外の4隻の主力艦「紀伊」「加賀」「土佐」「長門」は米軍に引き渡され、後に全てビキニ環礁での核実験での効果検証に供された。

修理中の「伊予」「尾張」、航行不能、または着底状態にあった「劔」「白根」「榛名」は、いずれも現地で解体、賠償原資に充当された。列強がしのぎを削った技術の結晶ともいうべき主力艦の末路としては、いささか拍子抜けするほどの淡白な処分とも言えなくもないが、これも大戦中の航空機のジェット化と、それに伴う航空機のペイロードの増大と搭載兵器の強大化が、海上における主力艦の存在意義を著しく低めた結果とみることができる。日本海軍はマリアナ沖海戦、レイテ沖海戦、台湾沖海空戦を通じて、その至宝とした主力艦群をすり潰し、主力艦時代の終焉を実演するという役割を果たした。

 

 海上自衛隊黎明期の自衛艦 「やまと」

海上自衛隊編入された「やまと」は、艦隊防空艦としての役割を負うべく、再武装と改装を受けた。

再武装にあたっては、主砲は従来のままとし、自衛艦隊の艦隊防空艦としての役割期待が大きいところから、対空火器とレーダー装備が一新された。主要な対空火器としては、旧海軍の最も成功した対空砲と言われた長10センチ高角砲を自動化した単装砲を多数搭載している。この砲は最大射程18キロ、最大射高13キロ、毎分19発の発射速度を持つとされ、旧日本海軍では、この対空砲にVT信管を組み合わて運用したが、日本製のVT信管そのものの信頼性が低く、その能力を十分に発揮できたとは言い難かった。

それでも旧海軍では「格段の命中率」「抜群の効果」と賞賛され、その実績以上に士気向上に効果があった。

今回の装備にあたっては米海軍のVT信管技術の導入し、さらに砲塔に自動化機構を組み入れてその信頼性と発射速度を高めた。

一方、個艦防衛用兵装として、多数の機関砲を搭載しているが、これらの小口径砲についてはVT信管には対応しておらず、実戦で効果が期待できないことは、大戦で実証済みであった。

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(直上の写真は自衛艦「やまと」:外観は大戦時のそれとほとんど変わらない。艦隊防空用の兵装として自動長10センチ高角砲を16基、個艦防衛用の兵装として、多数の機関砲を搭載している)

 模型視点でのコメントを少し:上記の模型は、Delphin社製の「大和」をベースとし前部艦橋と通信アンテナ、主砲砲塔を換装している。更にその主対空砲とした自動長10センチ高角砲として、イタリア戦艦「ヴィットリオ・ベネト」の対空砲を流用した。

 

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(直上の写真は自衛艦「やまと」とその僚艦:奥から護衛艦「あきづき(初代)」「むらさめ(初代)」、「やまと」「あやなみ」の順。いずれも国産の護衛艦第一世代に属する。この時期の自衛隊は、こうした国産の護衛艦に加え、米海軍からの貸与艦で構成されていた)

***予告)登場する護衛艦いついては、近々、別途「開発史」的なシリーズを展開する予定です。お付き合いください。

 

上記は、本稿前回で紹介した自衛艦「やまと」であったが、もう一案「B案」を作成してみた。 

自衛艦「やまと」B案

「やまと」は、艦隊防空艦としての役割を負うべく、再武装と改装を受けた。

再武装にあたっては、主砲は従来のままとし、自衛艦隊の艦隊防空艦としての役割期待が大きいところから、対空火器とレーダー装備が一新された。主要な対空火器として米海軍の38口径Mk 12, 5インチ両用砲を連装砲塔に装備し、14基28門を搭載した。

この砲は、米海軍の戦艦、巡洋艦に広く採用されている砲で、最大射程21キロ、最大射高11キロ、発射速度15-22発/分とされていた。これに加えて毎分45発の発射速度をもつラピッド・ファイア型のMk 33, 3インチ砲を連装で8基、さらに個艦防衛用に40mm機関砲を装備し、もちろんこれらは全てVT信管を標準仕様としていたため、その対空能力は、旧海軍時代から格段に強化された。

(直下の写真は、自衛艦「やまと」:外観的には、多数の対空機銃が徹去されたことを除けば、旧海軍時代とそれほど大きな違いはない。この時期、水上偵察機、観測機等の航空兵装の搭載は廃止されているが、後部の航空機用の運用装備はそのまま残されている)

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模型視点でのコメントを少し:こちらのモデルも、前出のDelphin社製の「大和」をベースとし、前部艦橋と通信アンテナ、主砲砲塔を換装している。さらに3D printing makerのSNAFU store製のWeapopn setから、いくつか武装を選択し搭載している。

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(直上の写真は自衛艦「やまと」の対空兵装:艦の上部構造物周辺にMk 12, 5インチ連装砲塔を配置している。下段お写真はいずれもMk 33, 3インチ連装砲塔(ラピッド・ファイア)の配置状況。すこし分かりにくいが上部構造周辺にも、同砲が防楯なしの露出砲架で配置されている)

 

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(直上の写真は自衛艦「やまと」とその僚艦:奥から護衛艦「あきづき(初代)」「やまと」「はるかぜ」「あやなみ」の順。いずれも国産の護衛艦第一世代に属する。この時期の自衛隊は、こうした国産の護衛艦に加え、米海軍からの貸与艦で構成されていた)

 

(質問)どちらの方が、自衛艦「やまと」にフィットするとお考えになりますか?感想など伺えれば、幸いかと。

もちろん他のアイディアもあるかと思います。

幸い、まだ数隻の「やまと」のストックがありますので、私が実現可能なアイディアは模型に落とせるかもしれません。ぜひお知らせください。

これも、If艦ならではの楽しみ方かと。

お待ちしています。私のスキルの問題で「実現不可能」も十分ありえますので、その際には平にご容赦を。

 

DDHとDDG時代の護衛艦「やまと」 

海上自衛隊は、領海警備とシーレーン保護がその主要任務であり、従って、対潜戦闘能力を中心に、その活動保護のための艦隊防空を、両軸で発展させてきた。

1970年代に入ると、対潜ヘリを搭載したヘリ搭載型護衛艦(DDH)を中心に、汎用護衛艦を複数配置し、この艦隊の艦隊防空を担う防空ミサイル護衛艦(DDG)から構成される護衛隊群、という構成をその艦隊編成の基幹として設置するようになった。

海上自衛隊の発足時から艦隊防空をその主任務としてになってきた「やまと」もこの構想に従い、防空ミサイルシステムを搭載する。

主要艦隊防空兵装としてはスタンダードSM-1を2基搭載し、艦隊の周囲30-40キロをその防空圏とした。他の防空兵装としてはMk 42 54口径5インチ砲を6基搭載している。この砲は23キロの最大射程を持ち、毎分40発の発射できた。個艦防空兵装としては、上記の他にCIWS3基を搭載している。

水上機の運用設備を全廃し、ヘリコプターの発着設備を新設した。ヘリの搭載能力はない。

改修時には、米海軍から巡航ミサイルの搭載能力も検討するよう要請があったが、専守防衛を掲げ、その要求を受け入れなかった、と言われている。

(直下の写真は、1970年代の護衛艦「やまと」(DDG):外観的には、旧海軍の「大和」の上部構造を大幅に改修した。多くのシステムを米海軍と共用し、アイオア級の戦艦等と似た上部構造物となったため旧海軍時代の外観をほとんど残していない)f:id:fw688i:20190609190556j:image

 模型視点でのコメントを少し:こちらのモデルも、前出のDelphin社製の「大和」をベースとし、その船体を利用し主砲塔を換装している。上部構造は同じくDelphin社製のSouth Dakotaの上構を転用している。さらに3D printing makerのSNAFU store製のWeapopn setから、いくつか武装を選択し搭載した

 

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(直上の写真は70年代DDG「やまと」の対空兵装:艦の上部構造物前後にSM-1の単装ランチャーを2基搭載し、上部構造周辺にMk 42, 54口径5インチ砲を配置している。近接防空兵器として、上部構造の前部と左右に CIWSを搭載している。専守防衛を掲げ搭載を拒んだ巡航ミサイルは、下段写真の前部CIWSとMk 42 5インチ砲の間あたりに搭載される構想であったとされている

 
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(直上の写真はDDG「やまと」とその僚艦:奥からヘリ搭載型護衛艦(DDH)「しらね」対潜護衛艦「やまぐも」「やまと」ミサイル護衛艦(DDG)「さわかぜ」の順)

 

イージス時代の護衛艦「やまと」

2000年代に入り、海上自衛隊の艦隊防空システムがイージスシステムとなった。

同時に長らく海上自衛隊の艦隊防空を担当してきたDDG「やまと」も、イージス艦として生まれ変わった。

艦の上部構造はイージスシステム搭載に対応する巨大なものに改装され、艦の前後左右に全体で240セルのMk 41 VLS(スタンダードSAM、アスロックSUM、シー・スパロー短SAM用)を搭載した。

その他、近接防空用兵装として23キロの最大射程、毎分45発の発射速度を持つオート・メララ54口径5インチ速射砲4基、CIWS4基を搭載している。
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 模型視点でのコメントを少し:こちらのモデルも、前出のDelphin社製の「大和」をベースとし、その船体を利用し、あわせて主砲塔を換装している。上部構造はF-toy社製の現用艦船シリーズからストックしていた何隻かの上構をあわせて転用している。さらに同じく現用艦船シリーズのストックから、武装を選択して搭載している。

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(直上の写真はイージス護衛艦「やまと」の上部構造:左右にMk 41 VLS、5インチ速射砲、CIWSなどを搭載している


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(直上の写真はイージス護衛艦「やまと」とその僚艦:奥から汎用護衛艦(DD)「あきづき」、「やまと」、イージス護衛艦(DDG)「あたご」の順)

 
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 海上自衛隊は初の航空機搭載型護衛艦(DDV)を導入し「いぶき」と名付けた。専守防衛の建前から、あくまで護衛艦と称しているが、空母「いぶき」の通称で通っている。F-35B15機を基幹航空部隊として搭載し、その為、無人機、救難ヘリ等を搭載している。

このDDV「いぶき」を中心に、第五護衛隊群が編成される。第五護衛隊群はその機動性から紛争地域周辺に展開されることが多く、イージス艦「やまと」も、持ち前のその戦闘力から、この護衛隊群に組み入れられることが多かった。

 

最終回の完了宣言

ご記憶の方がいらっしゃるかどうか。本稿は、その第一回で、下記の写真を掲げ、「これは大和級の究極形であり、ここへたどり着く主力艦の変遷をたどることが、このブログの当面の目標になると考えている」という記述で始まった。

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更に第一回では、明治維新政府海軍の「東」艦を日本海軍の主力艦開発・整備の始点としたうえで、次のような文章で〆られている。「この二隻の間に、およそ150年の時が横たわっている。あるいは、オリジナルの「大和」就役までの時間軸でとらえれば、「わずか70年余り」という表現の方が、よりふさわしいかもしれない」と。

そして、今回、ようやく、イージス護衛艦「やまと」にたどりつくことができた。

約150年に渡る「主力艦の変遷をたどる旅」、第一回に記述したとおり、「寄り道満載の(といっても、もっと本当は寄り道の要素はたくさんあったのだが)」の道のりとなったが、一応の目的を達成したと考えている。

 

 

心からのお礼 

長きに渡るお付き合いに、心から感謝いたします。

当初は日本海軍だけを扱うつもりで、「多分、3ヶ月」と言う気分で始めたのでしたが、約9ヶ月もの期間に渡るものになってしまいました。

筆者にとって初めての長期展開企画でした。そもそもが、こんな話に興味のある人が本当にいるんだろうか、と思いながら、溜まってきた艦船模型の整理の意味から初めた本稿であった訳ですが、毎回のアクセス数には本当に勇気付けられました。ともかくも、曲がりなりにも最終回まで辿り付けたことは、ひとえに皆さんのおかげであると、心から感謝しています。

 

今後の予定(予告)

本稿は、これからも不定期に更新していく予定です。

あるいは、これまでの本文も、十分なものであるとは限らず、適宜手を入れていくことがあるかもしれません。時々、覗いていただけるとありがたいと思っています。 (正直に言うと、毎回、読み返す度に少しづつ手を入れているのです。それほど、初稿は頼りない)

もちろん「もっとここを詳しく」あるいは「ここは情報が全然足りない」など、ご指摘があれば、ぜひお知らせください。その様なリクエスト、ご叱責は大歓迎です。

 

今後、今のところ明らかになっている追加要素としては、本文中にも記述しましたが、海上自衛隊護衛艦開発史を、近々展開しようと考えています。まだいくつか未整備の艦船等があり、その到着を待ちながら、と言う感じでです。

そもそも「東」艦からイージス護衛艦「やまと」までを150年と規定し、太平洋戦争までが約70年、いわゆる「戦後」が約80年としてみた場合の、「戦後艦艇開発史」を、もう少し丁寧に拾ってみよう、と言う試みになるかと考えています。(といっても、3-4回?甘いかな?)

 

さらには、巡洋艦駆逐艦など、ある程度数が揃っているものについても、まとめてゆきたい、という思いはありますが、さすがに各国網羅して、と言うところまでは力が及ばず、さて、どこで思いきろうか、と言う感じです。

さらに、現時点でも着々と艦艇が到着する予定です。あるものは自衛艦の欠けているモデルであり、あるいはあるものは既に登場した艦の、リニューアルモデルであったりもします。そうすると写真を差し替えたり、あるいは比較をしてみたりと、いろいろなバリエーションが想定できます。

それらは適宜、ご紹介させていただくつもりです。あるいはその中から「主力艦」に代わる新たなテーマなど見つかると、またまとまったシリーズで、というようなこともあるかもしれません。

 

そして、その後の「ヤマト」と言えば・・・(早速、おまけ!)

最終的には「やまと」は「ヤマト」となり、もちろんご存知の通り、宇宙へ飛び出すのである。

タイトルには「2199」や「2202」の文字が散見するので、さらに150年以上後の話である。艦首に波動砲という途轍もない兵器を搭載している。「大和」は常に「何か」を他に凌駕することを宿命づけられている、と言うことだろうか。

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写真は1:1000の「ヤマト」。最終的には、オリジナルのデザインに比較的近いところへ回帰することが興味深い。まあ、「ヤマト」は坊ノ岬沖で沈んでいたものに作り込まれた訳なので、当たり前か。

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直上の写真は、「ヤマト」僚艦と共に:奥から金剛型宇宙戦艦「キリシマ」、「ヤマト」、磯風型突撃宇宙駆逐艦「ユキカゼ」。

こちらは1:2000スケールの「ヤマト」を中心に。他はノンスケール?(こちらも本格的に展開するなら、星空バックが必須!まあ、その予定は、今のところはないが)

「キリシマ」は、後に「ヤマト」の艦長となる沖田が、「ヤマト」誕生以前に乗艦し艦隊指揮をとった旗艦である。もう一つ「ユキカゼ」は、「ヤマト」に乗組み大活躍をした古代の兄が艦長を務めた艦である。この両艦はガミランの侵攻艦隊との戦闘で、「キリシマ」は大破し、「ユキカゼ」は「キリシマ」の撤退を援護して沈められた。「ヤマト」が姿を現すのはこの戦闘の後であり、従って、この写真の組み合わせは、ありえない、と言うことになる。

それにしても、「突撃宇宙駆逐艦」とは、なんという名称だろうか。勇ましいことこの上ないが、なんとなく悲惨な響きが気にはなる。

 

「ヤマト」は任務を果たし、還ってくる。何度でも。

 

 

***模型についてのお問い合わせ、お待ちしています。或いは、**vs++の比較リクエストなどあれば、是非お知らせください。

 

これまで本稿に登場した各艦の情報を下記に国別にまとめました。(今回紹介した艦船からのアップデートは特にありません。でも、こっそり日本海軍の筑波級巡洋戦艦装甲巡洋艦の写真が変わっていたりするかも)

fw688i.hatenadiary.jp

内容は当ブログの内容と同様ですが、詳しい情報をご覧になりたい時などに、辞書がわりに使っていただければ幸いです。

 

ともあれ、これで一段落です。本当にありがとうございました。今後も時折おつきあいを、お願いします。 

 


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