相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

海上自衛隊:護衛艦隊の対潜水艦戦担当護衛艦(DDK)の系譜

本稿では最近、海上自衛隊護衛艦の整備系譜のお話をつづけています。「汎用護衛艦」「防空担当護衛艦」と続き、今回は「対潜水艦戦担当護衛艦」の系譜をまとめておきたいと思います。

先にお断りしておくと、「防空担当護衛艦」がミサイル誘導システムの高度化に伴い先端化し専任性を高めていったのに反し、「対潜水艦戦担当護衛艦」の役割は「汎用護衛艦」集約されていったため、このジャンルを掲げる護衛艦海上自衛隊の艦艇開発史の初期の短期間に存在し、多くの艦級があるわけではありません。

と言うわけで今回は、ややコンパクトに。

 

「あやなみ級」護衛艦(初代)

(就役:1958-1990:同型艦7隻  DD-103「あやなみ」、

DD-104「いそなみ」、DD-105「うらなみ」、DD-106「しきなみ」、DD-110「たかなみ」、DD-111「おおなみ」、DD-112「まきなみ」)

ja.wikipedia.org

f:id:fw688i:20250803142541j:image

(「あやなみ級」護衛艦の概観:89mm in 1:1250  Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装)

同級は1954年の海上自衛隊発足に伴う整備計画で指揮護衛艦2隻(「あきづき級」)、対空護衛艦3隻(「むらさめ級」)と共に「シーレーン」防衛における対潜水艦戦の充実に重点を置いた護衛艦として、1955年から1958年にかけて、7隻が建造されました。

外観的な特徴として、この計画で設計された3種の護衛艦は全て、以降の護衛艦の運用での電子機器の搭載余力等を考慮して、長い船首楼を持つ長船首楼形式の船体を持ち、艦尾に向けて長い斜面を持つ特徴的な船体を持ったことから「オランダ坂」型護衛艦と呼ばれました。

満載排水量2200トン級の船体に蒸タービンを主機として搭載し、32ノットの速力を発揮することができる設計でした。

同級は海上自衛隊として初めて対潜誘導魚雷を搭載して、国産魚雷を射出するあ4連装魚雷発射管1基アメリカ製のMk.32対潜短魚雷を発射するMk.2短魚雷落射機2基を装備していました。

Mk.32対潜短魚雷とMk.2落射機

ja.wikipedia.org

加えて回転式のヘッジホッグ2基を搭載し、爆雷投射機2基、爆雷投射軌条を搭載していました。

ヘッジホッグ

ja.wikipedia.org

こうしてかなり充実した対潜兵装を搭載する一方で、砲兵装は控えめで、Mk.33 3インチ連装速射砲3基を搭載していました。

Mk.33 3インチ速射砲

ja.wikipedia.org

控えめとは言え同砲は大変優秀な砲で、12000メートル級の最大射程を持ち、自動装填装置により理論的には毎分45発(砲あたり)の発射速度を発揮することができました。実際には給弾は人力で行うため、発射速度を保つには給弾手に大きな負荷がかかったと言われています。

f:id:fw688i:20250803142556j:image

(写真は「あやなみ級」護衛艦の主要兵装の配置拡大:艦首部にはMk.33 3インチ連装速射砲(砲塔式)2基、その後ろに回転式のヘッジホッグ(上段)、艦中央部には4連装魚雷発射管(中段)、艦尾部にはMk.33 3インチ連装速射砲、爆雷投射機と投射軌条などがわかります。「オランダ坂」と呼ばれた長い傾斜を持つ艦尾構造もわかっていただけるかと(下段)このモデルでは対潜短魚雷の落射機の位置がわかりませんが、本来は艦尾の連装3インチ砲(就役当初はシールドなしだったかも)の両脇あたりに設置されていたはずです)

同級は就役時から護衛艦隊の主力として長く活躍しましたが、兵装等に大きな変更は加えられませんでした。

代艦として建造された汎用護衛艦「はつゆき級」が就役し始めると特務艦や練習艦に転用され、1986年から1990年までの間に全ての艦が退役しました。

 

「やまぐも級」護衛艦

(就役:前期型1966-1995:同型艦3隻  DD-113「やまぐも」、DD-114「まきぐも」、DD-115「あさぐも」/就役:後期型1972-2005:同型艦3隻  DD-119「あおぐも」、DD-120「あきぐも」、DD-121「ゆうぐも」)

ja.wikipedia.org

f:id:fw688i:20250803143351j:image

(「やまぐも級」護衛艦の概観:90mm in 1:1250  Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装)

同級は、前出の対潜担当艦「あやなみ級」、防空担当艦「むらさめ級」「あきづき級」の建造により1950年代に具現化されたいわゆるハイ・ロー・ミックス構想を継承し、本稿前回・前々回でご紹介した「たかつき級」護衛艦との役割分割の中対潜水艦掃討戦担当艦(DDK)として設計されました。

第2次防衛力整備計画で前期型3隻、次級「みねぐも級」3隻を挟んで、3次防・4次防で後期型3隻が追加建造されました。

2層の全通甲板を持つ遮浪甲板型の船体を持ち、ディーゼルエンジン6機で構成されるマルチプル・ディーゼルと言う主機方式を採用し、建造当時は世界最速・最大出力のディーゼル推進水上戦闘艦と言われました。この機関は、小型の艦型による少ない燃料搭載にも関わらず長い航続距離をもたらした一方で、満足のいく出力を得られず最大速度は27ノットにとどまりました。(満載排水量:期型2750トン・後期型2850トン)

主要対潜兵装としては、護衛艦では初めて搭載したアスロックと71式ボフォース対潜ロケットランチャー、3連装対潜短魚雷発射管2基を搭載していました。

アスロック

ja.wikipedia.org

アスロックは同級における対潜装備の目玉と言ってもいいと考えています。

アスロックは対潜誘導魚雷をミサイルの先端に弾頭として搭載したもので、発射後は、事前に入力された飛翔距離で弾頭(魚雷)が切り離され、パラシュートにより軟着水した魚雷が捜索パターンで目標を探知し撃破する、というものであり、着水後の魚雷による目標補足能力の活用から、従来の対潜ロケットとは次元の異なる長射程での攻撃が可能となったとされています。(射程:800-9100m)

当初は専用の8連装ランチャーからの発射が主流で、「やまぐも級」もこの形式で搭載されました。後にはターター・システム(Mk.26 GMSL)、あるいはVLSなどからの発射も可能となり、現在も多くの海軍で使用されています。

71式ボフォースロケットランチャー

ja.wikipedia.org

ボフォース対潜ロケットランチャーは1948年ごろにスウェーデンで開発されたベストセラーとも言うべき優れた前投式ロケット爆雷発射機で、弾頭重量により370mから3600mまで広いレンジを射界に収めることが出来ます。

海上自衛隊ではこれをライセンス生産し71式ボフォースロケットランチャーとして制式化しています。

誘導式の対潜兵器の開発により無誘導の対潜ロケット弾は旧式と見做されていますが、対魚雷防御兵器や誘導魚雷の使用が難しい浅海面での対潜水艦戦など、使用場面には事欠かないようです。

第二世代対潜短魚雷とMk.32短魚雷発射管

ja.wikipedia.org

こちらも西側諸国の対潜兵装としてはベストセラーで、高速化した第二世代の誘導式の対潜短魚雷による近距離対潜水艦戦を支えるスタンダード兵装と言っていいでしょう。

Mk.33 3インチ連装速射砲

他の兵装としては、主砲には既述50口径3インチ連装速射砲2基を搭載し高い速射性により、緊密な防空火網を形成することが出来ました。

ja.wikipedia.org

既述の通り同砲は大変優秀な砲で、12000メートル級の最大射程を持ち、自動装填装置により理論的には毎分45発(砲あたり)の発射速度を発揮することができました。

f:id:fw688i:20250803143407j:image

(写真は「やまぐも級」護衛艦の主要兵装の配置拡大:艦首部にはMk.33 3インチ連装速射砲(砲塔式)、その後ろに71式ボフォース対潜ロケットランチャー(上段)、艦中央部には主要対潜兵装として搭載されたアスロック8連装発射機、Mk.32 3連装短魚雷発射管、そして艦尾のMk.33 3インチ連装速射砲と続きます(下段))

対潜哨戒ヘリを標準搭載し、かつシステム化による他艦との連携により、制圧海面(域といったほうがいいのかな?)を飛躍的に拡大した「はつゆき級」(1982年から就役)、「あさぎり級」(1988年から就役)等の新世代の「汎用護衛艦」の就役に伴い、同級は前期型は1990年台前半から、後期型は1990年台後半にそれぞれ第一線を退き特務艦・練習艦に転用されてゆき、2005年には全ての艦が除籍されています。

 

「みねぐも級」護衛艦

(就役:1968-2000:同型艦3隻  DD-116「みねぐも」、DD-117「なつぐも」、DD-118「むらくも」)

ja.wikipedia.org

f:id:fw688i:20250803143731j:image

(「みねぐも級」護衛艦の概観:90mm in 1:1250  Hai製モデルをベースに主砲塔等をSNAFU store製のWeapopn setに換装:モデルは就役時、つまりDASH搭載時を再現したもの。艦尾にDASH発着甲板を有しています)

同級は前出の「やまぐも級」護衛艦タイプシップとして、主要対潜兵装を無人対潜攻撃ヘリコプターDASHとした対潜護衛艦として建造されました。

船型・機関は「やまぐも級」護衛艦に準じていましたが、後甲板をDASH 発着甲板、艦尾部にDASH2機搭載を想定した整備格納ハンガーを装備したため、上部構造の配置が変更され、煙突が一本になりました。(満載排水量2800トン)

f:id:fw688i:20250803143740j:image

(写真は「みねぐも級」護衛艦の主要兵装の配置拡大:艦首部にはMk.33 3インチ連装速射砲(砲塔式)、その後ろに71式ボフォース対潜ロケットランチャー(上段)、艦尾にDASH発着甲板と2機を収容整備するハンガーが設置されています。ハンガー上にMk.33 3インチ連装速射砲、ハンガー左右にMk.32 3連装短魚雷発射管が設置されています(下段))

DASH:無人対潜攻撃ヘリコプター

ja.wikipedia.org

潜水艦に対艦ミサイル搭載が想定されるにつれ、目標の早期探知と掃討海面の拡大ははその重要性を増してゆきます。対潜哨戒ヘリコプターの搭載は有効な解ではあるのですが、ヘリコプター搭載の難しい小型艦に同様な機能を持たせることを期待して、無人対戦攻撃ヘリコプターDASHは開発されました。

DASHシステムは対潜短魚雷2発を搭載できる無線誘導式の無人小型ヘリコプター(UAV)を艦上のレーダーで補足・追尾しつつ、発着艦をコントロールする操縦装置と目標までの飛行・攻撃を担当する操縦装置の2基の操縦装置で操作されます。

無人ヘリコプターは半径52キロを理論上の行動域とすることができ、アスロックの最大射程9100メートルと比較して格段の制圧海面を確保することが出来ました。

同システムの導入は、米海軍の1950年台の既存小型艦(第二次世界大戦型の駆逐艦など)のFRAM改修(艦隊近代化計画)の目玉とされ積極的な配備が進められました。

一方で13.9キロ以上の距離では管制性能が落ち、かつ飛行高度の視認ができないことなどから、機体を失う事例が多発しました。さらに当時のソナーの有効範囲の限界もあり、当初の目的であったアスロックの射程を大きく超える有効射程での運用を期待することは難しいという結論に至りました。

米海軍では1968年にDASHの継続運用の予算が国防総省によって却下され運用は縮小に向かいます。

海上自衛隊では1967年から71年にかけて、新造護衛艦「たかつき級」「みねぐも級」への搭載が始まりましたが、運用実績は米海軍よりも良好とはいえ運用機数の半数を事故で喪失するなど、課題は同様で、1979年に運用が中止されました。

DASHからアスロックへの換装(1978から)

「みねぐも級」では、DASHの運用中止決定前後に、運用設備をSH-2F小型ヘリコプター用に転用する案も検討されましたが実現せず、1979年から82年にアスロックに換装され、その他の兵装も「やまぐも級」に準じ、50口径3インチ連装速射砲、71式ボフォース・ロケット・ランチャー、対潜誘導魚雷となりました。

f:id:fw688i:20250803144050j:image

(「みねぐも級」護衛艦 DASHの運用中止に伴いアスロックに換装後の概観:Hai製モデルをベースに主砲塔等をSNAFU store製のWeapopn setに換装:しています:下の写真では就役時(=DASH搭載時)とアスロックへの換装後の比較))

f:id:fw688i:20250803144056j:image

3番艦「むらくも」の改装(1978)

3番艦「むらくも」は1978年に、後部50口径3インチ連装速射砲を62口径76mm単装速射砲に換装し、方位盤も新型に改め、次世代砲熕兵器システムの導入テスト艦となりました。

ja.wikipedia.org

f:id:fw688i:20250803144358j:image

(写真は次世代砲熕システムのテスト艦となった3番艦「むらくも」:下の写真は後部備砲の比較)

f:id:fw688i:20250803144405j:image

「みねぐも級」は「やまぐも級」と同様に新世代のヘリコプター搭載汎用護衛艦「はつゆき級」(1982年から就役)、「あさぎり級」(1988年から就役)等の就役に伴い、1990年台後半に練習艦に転用されて、1999年から2000年にかけて全ての艦が除籍されています。

 

冒頭にご紹介しましたが、護衛艦隊の編成が対潜装備に関しては対潜哨戒ヘリコプターを主軸に加える構想で汎用護衛艦が整備され始めたため、今回ご紹介した対潜担当護衛艦DDK)という概念はこの汎用護衛艦に吸収されてゆき、対潜担当護衛艦は(DDK)は今回ご紹介した3艦級以降は建造されていません。

fw688i.hatenablog.com

 

ということで今回はこの辺で。

次回は、この流れで行くと残されている主に地方隊むけの小型護衛艦の系譜のご紹介、あるいは少し新着モデルがあるので、そちらのご紹介でも、などと考えています。一応、何度かご紹介している「偽装商船」のお話も控えでおいてありますし、まあ、その辺りは本稿の更新にさける時間次第かな、と。実は次の週末は私用が予定されているので、一回スキップもありうるかも、

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

ブログランキングに参加しました。クリック していただけると励みになります。


艦船ランキング