ようやく、本当にようやく、海上自衛隊の「はやぶさ級」ミサイル艇が6隻揃いました。
「はやぶさ級」ミサイル艇は、F-toys社の現用艦船キットコレクションの付属品として、数種類のキットに同梱されているのですが、同梱されている本体キットが発売以来時間の経過とともに流通量が減り、オークション等でもなかなか入手できなくなってきています。筆者のコレクションでは長らく5隻体制だったのですが、今回ようやくebayへの出品を見つけ揃えることができました。
まずはこちらのお披露目を。

(本当は艦番号(824〜829)をちゃんと入れてとも思うのですが、まずはほぼ素組で)

「はやぶさ級」ミサイル艇といえば2015年に日本とフィリピンの両国間で防衛協力拡大の議論の際に、日本からの供与品の希望リストに含まれていたことを思い出します。
結局、この件は2027年に退役がほぼ決まっている「あぶくま級」護衛艦の譲渡という形で決着しそうですが、この間のフィリピン側の関心の変化には、フィリピンを取り巻く国際情勢の変化、それに関連して想定される「周辺有事」のあり方が大きく変わってきている、という背景が見てとれます。
冷戦終結以降、2010年ごろまでは、フィリピン政府の想定する「有事」はイスラム原理主義武装勢力との戦闘がその主たるもので、7000内外の島で構成される群島国家内でのゲリラ活動にどう対応するか、という主題が掲げられてきました。これには高速で機動でき、狭い水路でも小回りの効く、加えて重武装の「はやぶさ級」ミサイル艇の購入はある意味、最適解だったわけです。

(「はやぶさ級」ミサイル艇の小さな船体による小回り、ジェットホイルから発生される高速による機動性と強武装は、狭い水路、入り組んだ地形などの島嶼部での活動に最適かと)
しかし2012年以降、中国の南沙諸島への進出が、埋立による人工島建設や、滑走路の設置、海軍基地の構築等、露骨さを日々増してゆくことになり、これに伴いフィリピン海軍も正面装備の充実により重点を置かざるを得ず、おそらくこの辺りの事情の変化が「あぶくま級」護衛艦の譲渡が先行して決定された背景にあるのではないかと思われます。
一方、「はやぶさ級」ミサイル艇も2032年までには退役が予定されていますので、こちらのお話はどうなるのか。自衛隊の武器輸出についてのガイドラインも整備されてきていますので、引き続き要注意ではないかと思います。
(就役:2002-就役中: 同型艦6隻 PG-824〜829)

(「はやぶさ級」ミサイル艇の概観:43mm in 1:1250 by F-toys:本級のモデルはF-toysの「現用艦船キットコレクション」の一部の艦に同梱されています。「おまけ」的な扱いのモデルではあるのですが、かなり細部までしっかり作り込まれているのが嬉しいですね)
「はやぶさ級」ミサイル艇は、沿岸警備用の高速艇です。
満載排水量240トンの船体を持ち、76mm単装速射砲と90式SSM(艦対艦ミサイル)連装発射機を2基搭載しています。主機をガスタービンとしてウォータジェットポンプを推進機として44ノットの高速を発揮できます。

(「はやぶさ級」ミサイル艇の主要兵装:ステルス性に配慮した設計の76mm速射砲(上段)と日本版「ハープーン」というべき90式SMSを搭載しています(下段)上段写真のブリッジ後方には6連装デコイ発射器が。模型ではモールドされていませんが、艦橋と煙突の間に不審船対応用の重機関銃の銃架が設置されています)
2002年から6隻が就役しており、現在は2隻づつペアで、北海道余市(横須賀地方隊函館基地隊)、舞鶴、佐世保の各地方隊に配置され、高速性と強力な武装から、近海の不審船や外国船監視等の任務に従事することが多いようです。
ロービジ塗装への変更等が進められ、2032年までに退役という計画のようですが、その間にこのフィリピンへの譲渡案件がどう動くのか、ちょっと注目ではあります。
個人的にはフィリピンの島嶼部で駆け回る日本製のミサイル艇が見たいですが。
そして、ほぼ譲渡が決定している模様の「あぶくま級」護衛艦とは?
「あぶくま級」護衛艦
(就役:1989-就役中:同型艦6隻 DE-229〜234)

(「あぶくま級」護衛艦の概観:88mm in 1:1250 Hai製モデル、ほぼストレート)
同級はシステム艦世代の艦船設計に対応した、沿岸警備用小型護衛艦(DE)として、1990年代に相次い配備されました。当初は11隻が建造される計画でしたが、海上自衛隊の建造の力点がイージス艦を中心とした護衛隊群の充実に向けて新型汎用護衛艦の建造に移行すると、汎用護衛艦の代替わりにより護衛艦隊の構成を外れる旧型の汎用護衛艦を地方隊に充当する方針が明らかにされ、同級の建造は6隻で打ち切られることとなりました。
沿岸警備目的と言いながらも、護衛艦隊のシステムとのリンク等を想定すると、システム機器の搭載スペース、これらを賄う電力供給等から、従来のDEとは一線を画する満載排水量2900トンの大型艦となりました。この船体にディーゼルエンジン2基、ガスタービンエンジン2基を主機として搭載し、27ノットの速力を発揮する設計です。
個艦防空能力も求められ、ヘリコプターの搭載能力を除けば、「はつゆき級」汎用護衛艦とほぼ同等の装備を搭載することとなりました。
主砲に62口径3インチ単装速射砲(76mmコンパクト砲)、個艦防御兵器としてCIWSを艦尾に1基、対潜兵装としてアスロック発射ランチャー、短対潜誘導魚雷、さらに艦対艦ミサイルハープーンの4連装キャニスター2基等を搭載しています。あえて言うと防空装備は個艦防空に限定され、僚艦防空を担う短SAMが装備されていません。実は艦首部の単装速射砲と艦橋の間のスペースは、近接防御対空ミサイルの設置が予定されていたようですが(このスペースだとVLS?)、同級はすでに2027年度までに全艦退役の計画が発表されており、これから追加装備することはなさそうです。

(「あぶくま級」の主要兵装の拡大:76mmコンパクト砲、同胞と環境の間のスペースには近接防御対空ミサイルを装備する予定があったとか。退役の話が出てきていますので、多分未装備のまま海上自衛隊での退役を迎えるのでしょうね。その後フィリピン海軍ではどうなるか・・・。(上段)、アスロック発射機、対潜短魚雷三連装発射管、対艦ミサイル「ハープーン」の発射キャニスターとCIWS(下段))
現時点では全て現役にある同級ですが、上記のように2027年度までに全艦退役し、その後、フィリピン海軍への輸出が両国間でほぼ合意されているようです。フィリピン海軍旗を掲げた「あぶくま級」が観れるのかなあ。
と言うことで、今回の投稿はここまでなのですが、せっかくの機会なので、フィリピン海軍の艦艇の情報も少しまとめておきましょう。
と言いつつ、実は筆者のコレクションには同海軍の艦艇のモデルは全くないので、拝借した写真のオンパレードになることはご容赦を。
フィリピン海軍の主要艦艇
フィリピン海軍の主要艦艇は現状では、水上戦闘艦艇として2600トン級のフリゲート2隻、3200トン級のフリゲート2隻が2025年から就役開始、1200トン級の中古コルベット1隻、さらに海域警備用の3250トン級の中古哨戒艦3隻、700トン級の中古哨戒艦3を中核戦力として保有しています。そして2400トン級の哨戒艦6隻が2026年から順次就役を予定されています。
「ホセ・リサール級」フリゲート
(就役:2020-就役中:同型艦2隻)

(「ホセ・リサール級」フリゲートのベースとなった韓国海軍の「仁川級」フリゲートの概観:モデル未保有:写真はRhenania製のものをいつものようにsammelhafen.deより拝借しています)
同級は韓国海軍の「仁川級」フリゲートをタイプシップとして、韓国の現代重工業がフィリピン海軍向けに建造したもので、2600トン(満載排水量)の船体を持ち4基のディーゼルエンジンから25ノットの速力を発揮する設計です。同型艦は2隻で、2020年から就役しています。
オート・メララ76mm単装速射砲1基、フランス製ミストラル連装短対空ミサイル発射機2基、韓国製海星連装対艦ミサイル発射機4基(4連装2基と言うべきか?)、三連装対潜短魚雷発射管2基、30mm個艦防御機関砲1基を搭載し、対潜哨戒ヘリコプター1機を搭載しています。
「ミゲル・マルバー級」フリゲート
(就役:2025-就役中:同型艦2隻)

(「ミゲル・マルバー級」フリゲートのモデルは見当たらないのでWikipediaから同級のコンペで現代重工業が示した完成予想モデルの写真を拝借)
同級は現在、韓国の現代重工業がフィリピン海軍向けに建造中のフリゲートで、前級「ホセ・リサール級」をベースに拡大改良したもので、3200トン級の船体にディーゼルを主機として搭載し25ノットの速力を発揮する設計となっています。
一番艦「ミゲル・マルバー」は2025年5月に就役し、二番艦が2026年に就役予定です。
兵装的には前級よりも対空装備に重点が置かれた設計で、目玉は艦橋前に設置された短・中距離対空ミサイルVLS(16セル)で発射の即応性を高めています。他にはほぼ前級の武装に準じ、オート・メララ76mm単装速射砲1基、韓国製海星連装対艦ミサイル発射機4基(4連装2基と言うべきか?)、三連装対潜短魚雷発射管2基、35mmCIWS1基、さらに哨戒ヘリコプター1機を搭載しています。
(就役:2019-就役中:同型艦なし)

(「コンラッド・ヤップ」はもちろん、その前身となった「浦項級(Pohang class)」コルベットのモデルは見当たりません:写真はWikipediaから拝借しています)
同艦は韓国海軍の「浦項級(Pohang class)」コルベットの六番艦「忠州(Chungju)」をフィリピン海軍が購入したもので、2019年からフィリピン海軍に就役しています。オリジナルの「忠州」は1986年から2016年まで韓国海軍に在籍していました。
1220トンの船体にディーゼルを主機として搭載し、32ノットの速力を発揮できました。対潜戦闘に重点を置いた設計で、搭載する武装はオート・メララ76mm単装速射砲2基、40mm連装砲2基、三連装短大戦魚雷発射管2基、爆雷投下軌条2基、重機関銃銃架6基等となっています。
「デル・ピラール級」哨戒艦
(就役:2011-就役中:同型艦3隻)

(「デル・ピラール級」哨戒艦のベースとなった米沿岸警備隊「ハミルトン級」長距離カッターの概観:モデル未保有:写真はArgos製のものをいつものようにsammelhafen.deより拝借しています)
フィリピン海軍は米沿岸警備隊の「ハミルトン級」長距離カッター3隻を海軍力整備の一環として購入しました。
3300トン級の船体は同海軍の水上戦闘館としては最大で、ディーゼルとガスタービンを主機として混載し、29ノットの速力を発揮することができます。
前身が沿岸警備隊のカッターであるため、武装は控え目で、オート・メララ76mm単装速射砲1基と25mm単装機関砲2基、加えて哨戒ヘリコプター1機を搭載しています。既に前身である「ハミルトン級」の就役から50年以上が経過していますが、レーダー・システムのアップデート、遠隔操作式25mm機関砲への換装、ハープーン対艦ミサイルの搭載等が検討されているようです。
「ジャシント級」哨戒艦
(就役:1997-就役中:同型艦3隻)

(「ジャシント級」哨戒艦の前身である英海軍の「ピーコック級」哨戒艦の概観:モデル未保有:写真はAlbatros製のものをいつものようにsammelhafen.deより拝借しています:英国海軍仕様のモデルであるため25mmチェーンガンは見当たりません)
同級は1983年から英海軍に就役していた「ピーコック級」哨戒艦のうち3隻をフィリピン海軍が購入したもので、1997年から3隻が就役しています。
712トンの船体にディーゼルを主機として搭載し28ノットの速力を発揮することができます。
小さい船体ながら主砲としてオート・メララ76mm単装速射砲1基を艦首に搭載、副兵装として個艦防御用の遠隔操作式の25mmチェーンガン(ブッシュマスター)1基を艦尾に装備しています。加えて20mm機関砲2基と重機関銃2基を搭載しています。対艦ミサイルの装備計画もあるようですが、まだ実現していません。
原型である「ピーコック級」がアジアでの使用を想定して設計されたため、空調・台風対策など、良好な設定がされているようで、就役依頼、数次にわたる改修が行われ、航法システム・レーダーシステム、戦闘システムなどがアップグレードされながら就役を続けています。
そしてこの後、2026年から、フィリピン海軍としては初めてとなる新造哨戒艦の艦級が順次就役する予定です。
(就役:2026から順次就役予定:同型艦6隻)

(「ラジャ・スレイマン級」哨戒艦の現代重工業による完成予想図(?):メタへの投稿より拝借しています)
同級はフィリピン海軍が韓国の現代重工業に発注した哨戒艦です。6隻の同型艦が建造される予定で、2026年からの就役が予定されています。
2400トンの船体にディーゼルを主機として搭載し22ノットの速力を発揮する計画です。
同級は低強度から中強度の紛争を哨戒艦の投入場面として措定し比較的軽く、主要武装は主砲としてオート・メララ76mm単装速射砲1基を艦首部に、哨戒ヘリコプター格納庫上部に遠隔操作式30mmチェーンガン(ブッシュマスター)、加えて重機関銃2基を装備する予定です。さらに、哨戒ヘリコプター1基を搭載しています。
「あぶくま級」導入による効果(ある種の架空艦かも)
「あぶくま級」護衛艦6隻が予定通りフィリピン海軍に譲渡されれば、隻数だけで言うとフリゲート・コルベットの数は倍に強化されます。気になるのは「あぶくま級」の対空ミサイルの欠如ですが、日本の防衛装備移転三原則によれば護衛艦をそのまま譲渡することはでき図、なんからの両国の共同作業での改造等を施した上での輸出となりますので、おそらくその工程で何らか手が入れられることになるのでしょう。ブリッジ前のスペースに16セル程度のVLSを装備するスペースは取れそうですし、艦尾のCIWSはブッシュマスターに換装されるのかな?

(艦橋前に16セルのVLSを仮置きしてみると、測ったように収まりそうです。対空ミサイルの搭載も可能に)
想像の羽が広がるばかりです。
と言うわけで今回はこの辺りで。
筆者としてはまだ手付かずのフィリピン海軍について、なんとなく模型を収集する際の「艦船の整備計画」的なものまで手をつけることができて(実はほとんど市販のモデルがない、と言うことも判明し、これは新たな悩みの種になりそうですが)多くの収穫があり満足なのですが、模型的には全く新しいものが紹介できませんでした。申し訳なく思っています。
次回はいよいよ予告ばかり続いている「旧ソ連・ロシア海軍の小艦艇」に手をつけようかと思っています。まずはミサイル艇(今回の「はやぶさ級」に刺激された?)あたりをご紹介しようかと。
もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。
模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。
特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。
もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。
お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。
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