まず、個人的なお話ですが、夏休みに突入しました。とはいえ帰省とお盆のお参り等で、なかなか模型三昧というわけにはいきません。自宅を開ける時間が長く、モデルに触れる時間が普段以上に作れないのが実情です。加えて昨今の「南海トラフ注意報」など出ていて、家族の帰省、移動等も考えると、なかなか落ち着かない感じの今年の夏休みになりそうです。
と言うような次第で、今回はサクッと新着モデルのご紹介です。
その前に、制作15周年ということで「サマー・ウォーズ」を劇場で観てきました(期間限定の記念イベントだったとか)。もう何十回も観ているはずなのですが、実は劇場で見るのはもしかすると初めてかも、と思いながら。
(実は筆者が観に行った映画館にはこのようなディスプレイはありませんでした。これは娘が観に行った劇場。その代わり(?)、筆者の言った劇場では「花札」が全員に配られていました)
「昨今の家族事情や価値観に合わない」「令和では作れない映画」など巷の批判はあるようですが、夏休みに見る映画だなあ、帰省前に見ておいてよかった、などと、年甲斐もなく涙しました。やっぱりいいものはいい、と思います。親の世代が徐々に姿を消し、なかなかあの映画の世界には戻れないとは思いますが、確かに近い世界に触れていたんですよね、我々は。
縁側、朝顔、スイカ、「ただいま」「お、きたきた」「元気かいな」「大きくなったなあ」「これ、美味しそうやなと思って、みんなで食べへんか」(確かに叔母さんたち、女性陣は忙しく立ち働いて、お世話をしてくださっていましたね、今になって思うと)・・・そんなものが全部詰め込まれた暖かさが。・・・やっぱり涙です。
世代論になっちゃうのは嫌なのでこの辺にします。
中村草田男風にまとめると「ひぐらしや、昭和は遠くなりにけり」この色彩感を体感できた筆者は幸せ者です。何度見ても思うのですが、それを思い出させてくれる映画、でした、やっぱり。
さて、本論です。
本稿では5月に「リッサ海戦」について投稿しています。
表題の通り、「装甲艦の海戦史」として取り上げたもので、本稿はこの辺りからこのところ継続している19世紀後半の蒸気装甲艦の登場以降の艦船発達史的な展開に至っており、その流れの起点となった投稿だったと言ってもいいでしょう。
「リッサ海戦」は史上初の蒸気装甲艦同士の本格的な海戦で、1866年に勃発した普墺戦争の一環として戦われた海戦でした。
普墺戦争自体は、統一ドイツの方向性を定める覇権争いで、乱暴に整理してしまうと、産業革命推進の必須条件である一定規模の経済圏の確立範囲をめぐりプロイセン王国(小ドイツ主義=ドイツ民族経済圏構想)とオーストリア帝国(大ドイツ主義=中央ヨーロッパ経済圏構想)の間で争われた戦争でした。この戦争に、オーストリア帝国との間に多年にわたる領土問題を抱える統一間もないイタリア王国が、プロイセン陣営側に立って参戦したわけです。
イタリア王国の参戦の狙いはイタリア北部に隣接するベネツィア、ロンバルディアの支配権獲得と、併せてアドリア海での覇権確立で、あわよくばイタリア王国にとってアドリア海対岸であるダルマシアへの領土拡大、影響力の強化も視野に入れたものでした。
そのアドリア海のほぼ中央にオーストリア帝国によって要塞化されたリッサ島(現クロアチア、ヴィス島)があり、この島の攻略がアドリア海の制海権獲得に重要であることは明白であり、この攻略戦の一環として起こった海戦が「リッサ海戦」として後に呼称されるようになります。
上掲の本稿の投稿では、「リッサ海戦」に登場したイタリア海軍の装甲艦とオーストリア海軍の装甲艦のモデル(こちらは全くの未整備)をご紹介しているのですが、イタリア海軍の主要装甲艦のうち、前回投稿時には「パレストロ級」装甲砲艦のモデルが未保有でした。
今回、「パレストロ級」装甲砲艦のSextant製モデルを入手したので、こちらをご紹介します。
「パレストロ級」装甲砲艦(1866年就役:同型艦2隻)
(「パレストロ級」装甲砲艦の概観:49mm(水線長) in 1:1250 by Sextant:小さなモデルです。Sextantモデルはマストが気になるので真鍮線等で手を入れています。前回投稿から少しトライしているマスト周りのネット仕上げも取り入れてみました:下の写真は同級の細部の拡大:舷側砲門形式の美砲配置など、同級の特徴がわかっていただけるかと)
同級はイタリアがフランスに発注した2隻の装甲砲艦の艦級で、アドリア海での戦闘行動を想定して設計されました。2000トン級の小さな船体ながら20.3センチライフル単装砲2基、20.3センチ滑空砲2基を主要砲兵装とした強力な火力を搭載していました。
リッサ海戦では同級2隻(「パレストロ」「ヴァレーぜ」)は小艦ながら舷側装甲を有するということで主力部隊に加わり、旗艦と誤認され(実際、海戦直前までは旗艦でした。旗艦の変更は自艦隊ですら十分に認識されていませんでした)集中砲撃を受けたイタリア艦隊第二梯団の先頭艦「レ・ディタリア」に後続する位置にいた「パレストロ」はオーストリア艦隊の装甲艦に囲まれる形となり、集中砲撃を受けて撃沈されました。
マスト周りのリメイクは効果があるのか?
(上の写真は筆者がマスト周りに手を入れたモデルと市販されているSextant製のオリジナルモデル(下段)の比較;写真は例によってsammelhafen.de,より拝借)
筆者としては他のモデルとの統一感を取ろうとしてマスト周りに手を入れているのですが、いかがですかね?いい感じじゃない、と一応、自画自賛しておきます。こう言う小さな加工は結構、好きなんです。一気に何隻もやると、肩こりは半端ないですが。
**使用する模型用のネットは、実は網目の向きが気になっています。以前、同スケールの帆船のモデルではもっと網目が正位置に見える透明なネット素材を選び、これを着色して使用していたのですが、塗料は樹脂素材内部には浸透しませんので切断面が白く目立ってしまい、あまり使わなくなりました。一番いいのは着色された樹脂で成形されたネット素材なのですが、ちょっと見当たりません(やっと見つけたのが、今使っているものです。多分、自動車模型用のディテイルアップ素材です)。
キッチンのシンクの排水口用のネット素材とか、黒のストッキングなどがこれに近いのですが、今度は少し網目が細かすぎて。
いい素材があったら、是非教えてください。
リッサ海戦に参加したイタリア海軍装甲艦
(リッサ海戦に投入されたイタリア艦隊の装甲艦4艦級:手前から「パレストロ」級装甲砲艦、、「レジナ・マリア・ピア級」装甲艦、「レ・ディタリア級」装甲艦、装甲艦「アフォンダトーレ」の順)
「パレストロ級」が小さな艦であることがわかっていただけるかと思います。「パレストロ級」以外のモデルは、まだマスト周りを完成していないので、徐々に実施する予定です。
同時に到着したオーストリア海軍の木造砲艦
今回、「パレストロ級」装甲砲艦を入手する過程で、同じ出品者がオーストリア海軍の「リッサ海戦」時の艦船を何隻か出品していらっしゃったので、送料のセーブも考えて同時に落札しています。
ご存じのようにオーストリア帝国は基本的に内陸国家で、わずかにアドリア海への接続海面を持っていました。したがってオーストリア海軍の活動域はこのアドリア海沿岸で、この海域に点在する島嶼地域とそこに張り巡らされた通商路の警備と治安維持がその主任務でした。多民族国家であることもあり、内外問わず紛争域への展開の即応性が求められ、浅海面で小回りのきくある程度足の速い小型艦艇を数多く揃える必要があり、いわゆる「砲艦」級の船が多く作られたようです。
1866年の「リッサ海戦」には装甲戦闘艦でまとめた第一戦隊(1st Division)、木造戦闘艦でまとめた第二戦隊(2nd Division)、につづき、第三戦隊(3rd Division)として9隻の木造砲艦と1隻の外輪式通報艦がまとめられ、戦闘に参加しています。
**しかし困ったことが。実はこれらの艦級についての情報があまり見当たりません。どなたか詳しい方がいらっしゃったら、参考情報のありか、あるいはお持ちの情報をシェアしていただけないでしょうか?
現在、筆者が参考としている資料
https://mateinfo.hu/oldmate/a-navy-lissa.htm
https://military-history.fandom.com/wiki/Battle_of_Lissa_(1866)
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_ships_of_Austria-Hungary
「レカ級:Reka class」砲艦(1861年ごろ就役:同型艦4隻)
(「レカ級:Reka class」砲艦の概観:42mm(水線長) in 1:1250 by Sextant:Sextantモデルの共通課題だと筆者は考えていますが、マストが気になるので真鍮線等で手を入れています。前回投稿から少しトライしているマスト周りのネット仕上げも取り入れてみました:下の写真は同級の細部の拡大:備砲の搭載形式など、同級の特徴がわかっていただけるかと)
同級は18561年ごろに4隻が建造された木造蒸気推進砲艦です。2等砲艦に区分され、852トンの船体に、48ポンド前装滑空砲(SB)2門と24ポンド後装ライフル砲(RBL)2門を船体中央の首尾線上に装備し、11ノットの速力を発揮する設計でした。
「リッサ海戦」には「レカ:Reka」「ゼーフント:Seehund」「ヴァル:Wall」「ストレイター:Streiter」の同型艦4隻全てが、第3戦隊として参加しました。
「ダルマト級:Dalmat class」砲艦(1861年ごろ就役:同型艦3隻)
(「ダルマト級:Dalmat class」砲艦の概観:57mm(水線長) in 1:1250 by Sextant:こちらも同様にマストが気になるので真鍮線等で手を入れています。前回投稿から少しトライしているマスト周りのネット仕上げも取り入れてみました:下の写真は同級の細部の拡大:備砲の搭載形式など、同級の特徴がわかっていただけるかと)
同級は18561年ごろに3隻が建造された木造蒸気推進砲艦です。2等砲艦に分類され、869トンの船体に、48ポンド前装滑空砲(SB)2門と24ポンド後装ライフル砲(RBL)2門を船体中央の首尾線上に装備し、11ノット強の速力を発揮する設計でした。
「リッサ海戦」には「ハム:Hum」「ダルマト:Dalmat」「ヴェレビッチ:Velebich」の同型艦3隻全てが投入され、「ハム:Hum」は第三戦隊の旗艦を務めました。
「リッサ海戦」にはもうひとクラス、木造砲艦「ケルカ級」が投入されています。
「ケルカ級:Kerka class」砲艦(1860年ごろ就役:同型艦2隻)
(写真は「ケルカ級:Kerka class」砲艦の概観(Hai製モデル?ebayの出品者情報ではFKというモデルレーベルになっています。F K=Friedrich Kermauner):モデルは未保有です。現在、ebayで入札中です。写真はebayに掲載されている写真を拝借)
同級は前掲の2級の砲艦よりも小ぶりな501トンの船体を持つ木造砲艦でした。手元の資料では上掲の2艦級と同じ48ポンド前装滑空砲(SB)2門と24ポンド後装ライフル砲2門を装備していた、とありますが少しこの情報は怪しい気がします。モデルを見ても上甲板状には2門の大砲しか見えません。建造年次は前出の2級よりも1年古く、「ケルカ級」をベースに砲艦の各艦級へと発展したと考える方がしっくりくるのですが。
「リッサ海戦」には「ケルカ:Kerka」「ナレンタ:Narenta」の2隻が第三戦隊(木造砲艦部隊)参加しています。
モデルは現在、ebayでHai製モデル(FK製?)の出品を見つけ、これに対し入札中です。
「リッサ海戦」の砲艦モデル
(リッサ海戦に投入されたイタリア艦隊の装甲砲艦「パレストロ級」(手前)とオーストリア海軍の木造砲艦「ハム級:Hum class」「ケルカ級:Kerka class」)
さらに現在、オーストリア海軍の初めての装甲主力艦であり「リッサ海戦」にも参加した「ドラッヘ級」装甲艦も落札できたので日本に向かっているはずです。
(上の写真は筆者が落札し到着を待っている「ドラッヘ」(Sextant製:ebay掲載の写真):これを見る限り、マストのテコ入れは必須かと)
このように「リッサ海戦」への参加艦艇についてはかなりモデルが充実してきているのですが、前回、本稿でもお知らせしたようにSpithead Miniatureから、52隻の「リッサ海戦」セット製作へのサポートのお誘いがあり、これに応募しています。当然のことながらご紹介したモデルも含まれているはずで(含まれているどころか、同型艦も全てモデル化されているはず)、これらが2024年から2025年にかけて徐々に到着した際には、また改めてモデル比較などご紹介することになると考えています。
制作の時間をどうしよう、など、課題がなくはないのですが、それはそれで嬉しい楽しみになるでしょう。・・・とこれは少し予告編。
もう一つ、ことらは広告かな?
前掲の5月の投稿では「リッサ海戦」の展開や、「リッサ海戦」がその後の列強の主力艦開発にどのような影響を及ぼしたか、など、記述しています。ある意味、主力艦の概念を一新する戦訓を残した重要な戦いでもあったので、未読の方は是非一読いただければと思います。
ということで、今回はこの辺で。
次回は帰省から戻った直後で、何やら予定がありそうですので、過去投稿の再掲が有力です。「ドラッヘ級」装甲艦のモデルはきっと到着しているでしょうが(本当は今回の投稿でご紹介しようと思っていたのですが、間に合いませんでした)。
もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。
模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。
特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。
もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。
お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。
ブログランキングに参加しました。クリック していただけると励みになります。