相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

マスト周りのディテイル・アップ:リッサ海戦時のイタリア艦隊の装甲艦艇群

今回は、このところの流れで、マスト周りのディテイル・アップのお話を。

本稿では何度かお話ししていますが、筆者はこの作業を小型艦艇群から始めています。今回は、史上初の蒸気装甲艦同士の本格的な海戦として有名な「リッサ海戦」時(1866年)のイタリア海軍の装甲艦のディテイル・アップ・モデルのご紹介です。

ちなみにオリジナルの投稿はこちら。

fw688i.hatenablog.com

読んでいただければ良いのですが、少し背景である「リッサ海戦」(1866年)のお話を抄録しておきましょう。

「リッサ海戦」とイタリア海軍

リッサ海戦は、1866年に勃発した普墺戦争の一環として戦われた海戦でした。

普墺戦争は、統一ドイツの方向性を定める覇権争いで、産業革命推進の必須条件である一定規模の経済圏の確立範囲をめぐりプロイセン王国(小ドイツ主義=ドイツ民族経済圏)とオーストリア帝国(大ドイツ主義=中央ヨーロッパ経済圏)の間で争われた戦争でした。この戦争に、オーストリア帝国との間に領土問題を抱える統一間もないイタリア王国1861年成立)がプロイセン陣営側に立って参戦したわけです。

イタリア王国の参戦の狙いはイタリア北部に隣接するロンバルディアの支配権獲得と、併せてアドリア海での覇権確立、加えて、あわよくばアドリア海対岸であるダルマシアへの領土拡大でした。

そのアドリア海のほぼ中央にオーストリア帝国によって要塞化されたリッサ島(現クロアチア、ヴィス島)があり、この島の攻略がアドリア海制海権獲得に重要であることは明白であり、この攻略戦の一環として起こった海戦が「リッサ海戦」として後に呼称されるようになります。

イタリア海軍とその艦艇群の状況

前述のようにイタリア王国は、1840年代後半から機運の高まりを見せたイタリア統一運動を経て、1861年にサボイア家の統治する北西部のサルデーニャ王国を中心に統一されました。

同時期にイタリア海軍も成立したわけですが、成立当初は統一以前の各地方勢力(サルデーニャ王国ナポリ王国トスカーナ大公国教皇領)の抱える各海軍を統合したものでした。この辺りは明治維新後の日本海軍の成立過程によく似ています。

この成立したての海軍は規模としてはそこそこのもの(戦列艦1隻、フリゲート艦9隻、コルベット4隻、その他の帆走艦7隻)でしたが、もとより建造年次はまちまちで、設計思想には統一感など臨むべくもなく、一元化した運用には大きな困難がありました。

人材面でも状況は同様で、それぞれの地方勢力が母体となった旧所属海軍の教育・昇進制度等を経歴として引きずっており、それぞれは派閥を形成し、統一海軍の成立には大きな障害となりました。

併せて成立したてのイタリア王国には海軍の艦艇を建造する工業力も未整備で、海軍装備の整備は短期的には外国からの購入に頼らざるを得ませんでした。

当時の海軍大臣カルロ・ベルサーノは積極的に海外からの艦艇購入を進め、1866年の「リッサ海戦」時の艦隊主力(黎明期の装甲艦)はこうした輸入艦艇で構成されていました。

「リッサ海戦」にはベルサーノ自らが、艦隊を率いて出撃しています。

海戦経緯

1866年7月16日夕刻、ベルサーノの指揮するイタリア艦隊はリッサ島上陸部隊を伴いリッサ島に向かい出撃します。18日にはリッサ島に対する攻撃を開始しますが、断崖絶壁を利用して建設された要塞砲台への有効な砲撃が叶わず、また19日、リッサ湾からの上陸も悪天候などが原因で予定通りには進みませんでした。

19日、オーストリア帝国側からはこれを阻止するために艦隊が出撃、20日には両艦隊がリッサ島沖で激突(文字通り=これは後で種明かし)するわけです。

艦隊の構成を見ておくと、イタリア艦隊が装甲艦(木造鉄皮)12隻、非装甲14隻、その他の非戦闘艦9隻で構成され、オーストリア艦隊は装甲艦(木造鉄皮)7隻、非装甲艦14隻、非戦闘艦4隻からなっていました。海戦での主力戦闘力となるであろう装甲艦の数ではイタリアが優勢で、かつ同海軍の装甲艦は王国成立後に購入(一部国内で建造)されたものばかりで艦齢が若く(どの時代でもそうですが、兵器の製造年が新しいというのは、著しい性能の進歩を意味します)、併せて総砲門数でもイタリア艦隊の641門に対しオーストリア艦隊532門と、スペック上でのイタリア艦隊の優位は明らかでした。

しかしテゲトフ提督に率いられたオーストリア艦隊の士気は高く、イタリア人をダルマシアに対する侵略者と見做していたのに対し、イタリア艦隊は艦艇はともかく、乗員や指揮系統は前述のように母体となる旧所属海軍の寄せ集め、派閥が色濃く残されていて、統一指揮を難しくしていました。

イタリア艦隊は舷側砲門を有効に生かすべく装甲艦9隻(3隻は要塞攻撃に分派)のみによる単縦陣隊形を取り、3隻づつ3グループに分けてオーストリア艦隊の包囲を目指します。一方のオーストリア艦隊は7隻の装甲艦を第一列に、木造戦闘艦を第二列、第三列に並べた1000メートル間隔の3列からなる楔形陣形をとり、イタリア艦隊の横腹をつく隊形を取りました。

オーストリア艦隊の指揮官テゲトフ提督にはいくつか確信があったようで、前述のように自艦隊の士気の高さに加え、当時の砲撃が、静止目標に対してはともかく、移動目標に対し命中させることが著しく困難であること、併せて命中弾が与える損害がそれほど大きなものではないことなどから、楔形陣形による突撃と体当たりという戦法を目指す決断をしたようです。

これに加え、以下でも再度記述することになると思いますが、戦闘直前の旗艦変更による隊形と指揮系統の混乱などがイタリア艦隊側に加わり、イタリア艦隊の第一グループと第二グループ以降に大きな間隔が生じてしまい、装甲艦の数の優位性がイタリア艦隊からは失われました。

戦闘は楔形体系で突撃をかけたオーストリア艦隊の装甲艦7隻によるイタリア艦隊の第二グループ3隻への攻撃、イタリア艦隊の装甲艦第三グループ以降(4隻)とオーストリア艦隊の非装甲艦14隻の戦闘という様相を呈し、結果、イタリア艦隊は主力装甲艦「レ・ディタリア」を集中砲火とオーストリア艦隊の旗艦「エルツヘルツォーク・フェルディナンド・マックス」の衝角攻撃で、装甲砲艦「パレストロ」を衝角攻撃による損傷とその後の集中砲火で失い、オーストリア艦隊には喪失艦はなく、オーストリア艦隊の勝利となりました。

 

オーストリア帝国イタリア王国との戦いでは陸戦でも、この海戦でも勝利を挙げますが、これらの勝利は戦争そのものへの寄与はほとんどなく、ケーニヒグレーツの戦いでプロイセン軍に大敗し、8月23日に休戦条約が結ばれます。結果統一ドイツからオーストリア帝国の影響力は排除され、以降、ドイツはプロイセン中心で統一へと向かうことになります。

 

「リッサ海戦」のイタリア王国艦隊装甲艦

今回ご紹介するモデルは「リッサ海戦」に投入されたイタリア艦隊の装甲艦のマスト周りをディテイル・アップしたものです。海戦の前提となるリッサ島攻略戦に投入された装甲艦は以下にご紹介する6つの艦級から構成される12隻、そのうち海戦に参加した装甲艦は5艦級9隻でした。

就役年次順にご紹介しておきます。

 

「フォルミダビーレ級」装甲艦(1861年就役:同型艦2隻)

ja.wikipedia.orgFormidabile-class ironclad - Wikipedia

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(「フォルミダビーレ級」装甲艦の概観:54mm in 1:1250 by Hai )

同級はフランスに発注されたイタリア海軍初の航洋型装甲艦の艦級です。フランス海軍が建造した世界初の装甲艦「グロアール」に刺激を受けています。

2700トン級の船体に20.3センチ砲4門と16.4センチ前装ライフル砲16門を搭載し、10ノットの速力を発揮できる設計でした。

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(「フォルミダビーレ級」装甲艦の主要兵装の拡大:舷側に各舷8箇所の砲門があります。さらに上甲板上に単装主砲3基が設置されています。スペックでは4基ということになっていますが・・・??)

リッサ海戦に参加しなかった装甲艦

リッサ島攻略戦には、当時イタリア海軍が保有していた装甲艦の大半が参加していました。攻略戦に参加しながらも「フォルミダビーレ」はリッサ島要塞との砲撃戦で損傷しており、僚艦「テリビーレ」は上陸作戦に備えてリッサ島周辺に留まっていたため、海戦には参加していません。さらに「パレストロ級」装甲砲艦の1隻「ヴァーレーゼ」も参加していません。

模型的な話を少し:シュラウドの仕上げスタンダードの話

下の写真の上段は以前のネット素材を用いたシュラウドの再現。そして下段が今回の試行です。シュラウド部分には乗員がマストに登攀するためのラットラインが横に貼られているのですが、そこまでは再現できていません。ネット素材に比べるとシュラウドの存在がやや希薄な様な気もしますが、全体の再現性は向上しているかと。いかがでしょうか?

 

「プリンチペ・ディ・カリニャーノ級」装甲艦(1863年から就役:同型艦3隻:リッサ海戦時には1隻のみ就役)

ja.wikipedia.orgPrincipe di Carignano-class ironclad - Wikipedia

(モデル未保有:Hai社からモデルは出ているようですが、筆者はまだ見たことがありません。写真はWikipediaに掲載されているもの。下の図面はNaval Encyclopediaに掲載されているもの。同級の全体配置等がよくわかります)

Principe di Carignano class ironclads (1862)

同級は草創期のイタリア海軍が国産した木造鉄皮の装甲艦の艦級で3隻が建造されました。3500トン級の船体に20.3センチライフル砲16門、16.4センチライフル砲12門を搭載する舷側砲門艦で、11ノットの速力を発揮することができました(2番艦、3番艦は国産鉄製装甲の製造の遅れから、就役までに時間を要し、建造中に備砲についても見直しが行われ、25.4センチライフル砲を搭載して就役しました)。

上記のように就役に時間がかかったことから、リッサ海戦には1番艦「プリンチペ・ディ・カリニャーノ」のみ参加し、前衛部隊の先頭艦を努めました。しかしオーストリア帝国艦隊がイタリア艦隊の前衛部隊をやり過ごしてから攻撃をかけたため、海戦には寄与できませんでした。

 

「レジナ・マリア・ピア級」装甲艦(1864年就役:同型艦4隻)

ja.wikipedia.org Regina Maria Pia-class ironclad - Wikipedia

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(「レジナ・マリア・ピア級」装甲艦の概観:65mm in 1:1250 by Sextant)

同級はイタリア海軍がフランスに4隻を発注した装甲艦で、4300トン級の船体に20.3センチライフル単装砲4基、16.4センチ単装滑空砲22基を舷側に搭載した舷側砲門艦でした。速力は13ノットを発揮できました。

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(「レジナ・マリア・ピア級」装甲艦の主要兵装の拡大:同級は就役当初は舷側砲門艦形態でした)

リッサ海戦には4隻全てが投入され、ネームシップの「レジナ・マリア・ピア」は大火災を起こす損傷を負いましたが、他の3隻には深刻な損害はありませんでした。

リッサ海戦時には左右舷側方向への射撃しかできませんでしたが、その後、艦首尾方向への砲撃もできるように改造を受けました。1890年台には寛容を一変するほどの近代化改造を受け、長く海軍に在籍しました。

マスト周り再現の比較を:模型的な視点

下の写真の下段が今回の新しいマスト周りの再現の試行です。筆者としては全体的な再現精度が上がっていのではないかと自画自賛しているのですが、いかがでしょうか?

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「レ・ディタリア級」装甲艦(1864年就役:同型艦2隻)

ja.wikipedia.orgRe d'Italia-class ironclad - Wikipedia

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(「レ・ディタリア級」装甲艦の概観:75mm in 1:1250 by Hai:マスト周りの仕上げを少し変えています)

同級はイタリア海軍がアメリカから購入した装甲艦の艦級です。

木製鉄皮の構造で、5700トン級の船体に20.3センチライフル単装砲2基、20.3センチ滑空単装砲4基、16.4センチ単装ライフル砲30基を搭載する舷側砲門装甲艦でした。12ノットの速力を発揮することができました

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(「レ・ディタリア級」装甲艦の主要兵装の拡大:典型的な舷側砲門艦形でした)

リッサ海戦には同級の2隻はイタリア艦隊の主力として参加しました。同級のネームシップの「レ・ディタリア」はイタリア艦隊の旗艦を務めていましたが、直前に新鋭艦「アフォンダトーレ」に旗艦は変更されました。

海戦では旗艦の「アフォンダトーレ」が縦列外に位置したため、第二梯団の先頭に位置した「レ・ディタリア」は旗艦と誤認されて集中砲火を受け、操舵不能になったところをオーストリア艦隊の旗艦「エルツヘルツォーク・フェルディナンド・マックス」の衝角攻撃を受けて数分で転覆沈没してしまいました。

同級のもう一隻「レ・ディ・ポルトガッロ」は第三梯団の先頭に位置していましたが、オーストリア艦隊の第二列の非装甲木造艦部隊の標的となり、その旗艦であった「カイザー」の衝角攻撃を受けました。しかし木造艦である「カイザー」の衝角攻撃は装甲艦には効果が少なく、逆に艦首を大破した「カイザー」に「レ・ディ・ポルトガッロ」は近距離から砲撃を加え大損害を与えています。

マスト周り再現の比較を:模型的な視点

この大きさになるとシュラウドの横索(ラットライン)入れてみたいかもしれません。筆者の根気が続かないのが、最大の課題かも。

 

「パレストロ級」装甲砲艦(1866年就役:同型艦2隻)

ja.wikipedia.or

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(「パレストロ級」装甲砲艦の概観:49mm(水線長) in 1:1250 by Sextant:小さなモデルです。Sextantモデルはマストが気になるので真鍮線等で手を入れています。前回投稿から少しトライしているマスト周りのシュラウド仕上げも取り入れてみました:下の写真は同級の細部の拡大:舷側砲門形式の美砲配置など、同級の特徴がわかっていただけるかと)

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同級はイタリアがフランスに発注した2隻の装甲砲艦の艦級で、アドリア海での戦闘行動を想定して設計されました。2000トン級の小さな船体ながら20.3センチライフル単装砲2基、20.3センチ滑空砲2基を主要砲兵装とした強力な火力を搭載していました。

リッサ海戦では同級2隻(「パレストロ」「ヴァレーぜ」)は小艦ながら主力部隊に加わり、集中砲撃を受けたイタリア艦隊第二梯団の先頭艦「レ・ディタリア」に後続する位置にいた「パレストロ」はオーストリア艦隊の装甲艦に囲まれる形となり、集中砲撃を受けて撃沈されました。

マスト周り再現の比較を:模型的な視点

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装甲艦「アフォンダトーレ」(1866年就役:同型艦なし)

ja.wikipedia.org

Italian ironclad Affondatore - Wikipedia

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(装甲艦「アフォンダトーレ」の概観:72mm in 1:1250 by Sextant)

同艦はイタリア海軍がイギリスに発注した装甲砲塔艦です。同型艦はありません。

4100トン級の船体を持ち12ノットの速力を出すことができました。イタリア海軍唯一の帆装を備えた砲塔艦でした。2基の砲塔には22センチライフル単装砲が収められ、主砲の他に80mm砲2門を搭載していました。

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(装甲艦「アフォンダトーレ」の主要兵装の拡大:同艦はそれまで舷側砲門艦のみだったイタリア艦隊で初めて砲塔形式で主砲を搭載した最新鋭艦でした。)

就役からわずか1ヶ月でリッサ海戦に投入されますが、海戦の直前に戦場に到着し、その直後、既述のように旗艦となりました。一説ではこの旗艦変更が隊列に乱れを生じさせ、先頭縦列の3隻と後続部隊に大きな隙間を生じさせ、さらには旗艦変更の通知が自艦隊内にも徹底されず、旗艦からの指令が認識されず、これが敗因の一つでもあったとも言われています。海戦の乱戦で砲撃を受け損傷し、それが遠因となり1ヶ月後の嵐でアンコナ港内で沈没しました。その後浮揚され、3度改装を受け最後は水雷練習艦となり、1907年に除籍されました。

水雷練習艦に改造後の「アフォンダトーレ」:ほとんど原型をとどめていませんね。モデルはHai製;写真は例によってsammelhafen.de,より拝借)

マスト周り再現の比較を:模型的な視点

このレベルのシンプルさの場合、マスト周りに手を入れなくても良いのかもしれないなあ、と思います。

 

リッサ海戦(攻略戦)に参加したイタリア海軍装甲艦

統一間もないイタリア海軍の主力艦をかき集めた感のある一覧です。

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(リッサ海戦(攻略戦)に投入されたイタリア艦隊の装甲艦4艦級:下から「フォー身ダブル級」装甲艦、「レジナ・マリア・ピア級」装甲艦、「レ・ディタリア級」装甲艦、「パレストロ級」装甲砲艦、装甲艦「アフォンダトーレ」の順)

 

「リッサ海戦」が残したもの

前回と今回の2回で、モデルのアップデートを中心に「リッサ海戦」に参加したオーストリア・イタリア両艦隊の艦艇を見てきましたが、この海戦がその後の艦艇開発にどのような影響を与えたのか、少しまとめておきます。

既述のようにこの海戦は蒸気機関搭載の装甲艦同志の初めての本格的な海戦だったと言われています。

戦訓としては、まず、それまで列強が整備してきた木造戦闘艦は、装甲戦闘艦(と言っても木造鉄皮=木造艦に装甲を貼り付けた戦闘艦)には歯がたたないということが明らかになりました。

併せて、それまでの木造艦の主兵装であったレベルの艦砲では、まず当たらず、当たっても装甲艦に(木造艦にも?)致命傷が与えられないことも明らかになりました。装甲艦といえども当時の装甲艦が搭載していた砲兵装は木造艦と同じレベルで、そのために逆に見出されたのが衝角戦法の有効さでした。

この戦訓から、以降の艦砲については、より大きな破壊力を目指すということが最大の命題となり、具体的には、初速の速い大口径砲、つまり長砲身を持つ貫徹力の強い艦砲の搭載を目指すことになってゆきます。これは艦砲の大型化と砲の搭載重量の増大を伴い、舷側砲門形式のような多くの砲を舷側に並べる搭載法では対応できなくなってゆくことを意味します。すなわち少数の強力な砲に最大限の射界を与えるための搭載法が工夫されてゆくこととなるわけです。

さらに有効と実証された衝角戦法の実行においては、敵艦を自艦の正面に捉えおくことが求められ、従って艦砲も正面への射界確保が重要となってゆきます。

一方で、搭載砲の大型化は自艦が被弾した場合の弾薬類の誘爆への防御の重要性をも顕在化させることとなります。こうした射界の確保、防御の強化という視点から、舷側砲門形式は主力艦の主砲搭載形式として終焉を迎え、やがて砲郭・砲塔という形式の艦砲の搭載法が生み出され、中央砲郭艦、中央砲塔艦などが世に問われることとなり、やがて航洋型近代戦艦(いわゆる前弩級戦艦)として一定の結実を迎える事となるのですが、これはまた別の機会に。

 

ということで今回はこの辺りで。

次回は同じくマスト周りのアップデートを実行したその他の鑑定のモデルのご紹介を、と考えています。(残るはオーストリア=ハンガリー帝国海軍の装甲艦とフランス海軍の装甲艦?結構、数はあるのでゆっくり順々に・・・)

時間がかかるので少し寄り道をするかもしれません。

 

少し予告編:木造帆船の世界へ

(そんなに遠くない将来、このお話をするか、あるいはもしかすると「手に負えない・目がついていけない」と投げ出すかも。しかし今は鋭意計画中、ということで)

あわせて、少しスケール違いになりますが(1:1200)、蒸気化以前の帆船にも取り組んでみようかな、と資材を集め始めています。マスト周りを今の延長でできないかと。

大好きな映画「マスター・アンド・コマンダー」の主人公の乗艦を少し追いかけてみようかと・・・。

www.youtube.com

この映画、ナポレオン時代の英海軍のお話で、実は20話(ハヤカワの文庫本では前半の10話までが各話上下巻の20巻構成で文庫化されています)の膨大な原作があり、映画化されたのはその10話目を中心に構成された話になっているようです。2000年に作者のパトリック・オブライアン氏は21話目を執筆中で亡くなっているので、未完のシリーズになっています。映画のタイトル「マスター・アンド・コマンダー」は原作第1話のタイトルで当時の英海軍の階級を表しています。「航海長兼海尉艦長」という様な階級で、いわゆる正式の艦隊構成艦である等級艦(戦列艦からフリゲート艦:1等艦から6等艦)の艦長が「ポスト・キャプテン:勅任艦長」と呼ばれるのに対し、等級外の小型艦の指揮官に与えられる階級呼称です。

この階級を経て大型艦の艦長に就任することを目指すわけです。

主人公は第1話で小型のブリック型の軍艦の海尉艦長に任命されるわけですが、現状の最終話(映画化された話です)では、小型フリゲート艦(多分6等艦)の艦長を務めています。筆者はまだ第1巻を読み始めたばかり(実は最終話は映画化された際に読んでいるかも・ですので手元には1話(文庫本の1・2巻)と最終話(19・20巻)があるのです)ですので、その間の経緯については知らないのですが、まずはこの二形態から始めてみようかな、などと考えています。

蒸気軍艦が主として黒からグレー基調で塗装されていたのに対し、木造帆船は色合いが異なるので、マスト周りの索具(リグ)の造作に加えてその辺りも筆者にとっては新たなトライアルになりそうです。

一応、GW狙いで手元にモデルが集まり始めています。

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原作について少し

下の写真はこのシリーズの第1話です。

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この第1巻、Amazonでの書評が大きく分かれています。

まあ、端的に言ってしまうと読みにくいのです(読むのに恐ろしく時間がかかる、という方が正しいかも)。登場人物紹介と物語の背景を説明した第1巻ではあるのですが、このストーリだてがあまり面白くはない。しかし、帆船軍艦がどのような構造で、どの様に運用されていたのかを実に詳しく記述しています。筆者のように帆船の構造に興味がある、運用する乗員構成にも興味がある、というような読者には、知識の宝庫、と言って良いでしょう。数ページ読み進めては図面が見たくなってネットをググる、という様なことの繰り返しで、全くページが進みません。

下のコメントではその辺りが実に的確に記述されています。

www.amazon.co.jp

これさえ乗り越えれば後はスイスイと、なんですね。これを励みにしてなんとか乗り切ろう!

さらに蒸気コメントにもあるように、確かに設定書として読むと、非常に面白いです。(丸々1巻使うかね!?)

 

もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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