相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

宝箱のようなフランス海軍:装甲巡洋艦の系譜

「宝箱のようなフランス海軍」その2回目です。

前回、本稿では奇しくも当時の仮想敵国から「サンプル艦隊」と揶揄された試行錯誤の連続として現れたフランス海軍の主力艦(前弩級戦艦)の系譜を再整理したのですが、この「サンプル艦隊」の実現の背景には、当時急速な発展を遂げ、かつ日清・日露両戦役で行われた史上初の蒸気装甲艦同士の実戦からもたらされたデータや戦訓からあるべき「主力艦」の姿についての議論が沸騰し、蒸気装甲艦(蒸気機関による自前の推力を得た為、装甲を装備できるに至ったわけですが)の建造と運用を巡る主導権争いがあったわけです。

少し乱暴に整理すると、「いろいろと実戦をみてみたが、実戦では戦艦の巨砲は特にその射程をより優位に生かせる遠距離射撃ではめったに当たらない。当たらない巨砲で敵艦を沈めることはなかなかできない。当たっても真っ当に設計された装甲を打ち破るためには、少数の命中弾では難しい。こんな実態の艦種の整備が必要なんだろうか」と、まあこんな主題だったのだろうと推測します。

一方で同時期に世に現れた水雷兵器の威力の大きさも実戦で証明されてきました(日露開戦時の旅順要塞への水雷艇攻撃は沈没艦こそ出ませんでしたが、一定の効果がありましたし、日本海海戦以前に両海軍が失った主力艦(戦艦)は全て機雷によるものでした(「ペトロパブロフスク」「初瀬」「八島」))。砲弾に対し装備された装甲のない船底を抜いて仕舞えばいい、と言うわけですね。しかし当時の水雷兵器は射程が短くかつ高価で、これを運用するには敵艦まで肉薄する必要がありました。これには小型で俊敏な運動性を持つ高速艦艇が向いており、つまり水雷艇が開発され、フランス海軍の艦艇整備の議論は限られた財源を不沈性の高い戦艦か、大量の水雷艇整備か、どちらに振り向けるのか、その辺りの綱引きになってゆくわけです。

こうした背景から一種の戦艦の理想型を見出す試行錯誤の過程として「サンプル艦隊」が生み出されるわけですが、模型コレクターとしては、この期間に実に創意に飛んだ艦級が多く生み出されているので、興味は尽きず、一方でコレクションのためのこれは個人としての財源を気にしながら、と言うまさにうれしい悲鳴をあげながらの取り組みになるわけで、つまりこれが「宝箱のような」と言う言葉になって現れています。

 

長々とした説明になってしまいましたが、今回はその「宝箱のような」前弩級戦艦時代のフランス海軍の主力艦の流れを汲んで、同時期に開発が進んでいたフランス海軍の「装甲巡洋艦」の系譜を改めてご紹介しておこうと考えています。今回はそう言うお話。

 

ちょっとくどいけど、装甲巡洋艦とは

前回ご紹介したように(上掲でも言及していますが)、開発に「迷い」の見られた「戦艦」に比べ、「装甲巡洋艦」についてはそのような迷いは見受けられないように筆者は感じています。おそらくこれは「装甲巡洋艦」の成り立ち、つまりその原型となった「巡洋艦」からこれらの艦種の任務の必要性が明らかで、その必要性に沿った発展を遂げた、と言うことなのだろうと考えています。

すでに何度も何度も本稿では言及しているので「耳にタコ」状態かもしれませんが、あえてできるだけ簡単に再掲すると、「巡洋艦」と言う艦種はそもそもがすぐれた航洋性と高速性を兼ね備え、かつ長い航続距離を持って適性国の通商路・植民地周辺に出没してこれを脅かし、あるいは同様に適性国からの自国通商路、植民地への襲撃からこれを防御することを目的として開発された艦種です。襲撃対象が通商路を航行する商船ですので、元来はそれほど重武装を施す必要はなかったのですが、蒸気機関の出力・効率の向上(高速で大きな火力を搭載し長い距離運べる)と速射性を向上させた中口径砲の開発が、上述の通商破壊(あるいは通商破壊艦からの商船護衛)を主任務とする巡洋艦の防御力強化の必要性を顕在化させていったわけです。こうして船団護衛、もしくは通商破壊戦の展開をその主任務とする巡洋艦(当時は防護巡洋艦が全盛)に、近接戦闘での戦闘能力を喪失し難い能力を与えるべく、舷側装甲を追加した「装甲巡洋艦」という艦種が生まれたわけです。

 

そしてフランス海軍の装甲巡洋艦

フランスはイギリスに次いで、海外に多くの植民地を保有し、当然、それらとの間に守るべき長大な通商路を展開していました。まさに上記の通商路破壊と保護を巡る状況の急速な変化と脅威を肌で感じていたわけで、巡洋艦の防御力強化の必要性から「装甲巡洋艦」の発想に至ります。日本海軍などに代表される、戦艦戦力の補助、いわばミニ戦艦的役割の艦隊決戦戦力としての「装甲巡洋艦」とは、一線を画し、速力と航続力を重視した設計になっています。

この艦種、「強化型巡洋艦」と言う構想は新たな艦級が生まれるごとに大型化し、やがては巡洋戦艦登場によりこれに統合され姿を消すまでの約20年間に、フランス海軍は11クラス、25隻を建造しました。

 

その系譜は大雑把に以下の三つに区分できると考えています。

第一期:防護巡洋艦を凌駕する防御力と戦闘力を持った戦闘艦の開発

第二期:汎用戦闘艦としての発達

第三期:補助主力艦としての発達

 

創設期:防護巡洋艦を凌駕する戦闘艦の開発

フランス海軍は世界初の装甲巡洋艦の栄誉を担う「デピュイ・ド・ローム同型艦なし)」、その縮小量産型の「アミラル・シャルネ級」、その強化版の「ポテュオ (同型艦なし)」を立て続けに送り出しますが、これが第一期のグループで、速射砲の発達により全盛を極めた通商路とそこを航海する商船を保護する任務を帯びた防護巡洋艦を圧倒して通商破壊戦を実施する、あるいは通商破壊戦を防止する目的で建造されました。

4,000トンから6,000トン程度の中型艦艇で、いずれも流麗なタンブルホーム形式の船体を持っていました。

 

世界初の装甲巡洋艦「デュピュイ・ド・ローム(1895年就役:同型艦なし)

(1895: 6,676t 19.7knot, 19.4cm *2 + 16.3cm *8)

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装甲巡洋艦「デュピュイ・ド・ローム」の概観:92mm in 1:1250, WTJ:以後ご紹介するモデルの迷彩塗装は筆者のオリジナルなので、気にしないでください)

1895年、フランスは世界に先駆けて、舷側に装甲帯を施し、かつ従来の防護巡洋艦よりも口径の大きな方を搭載した世界初の装甲巡洋艦を建造します。これが「デュピュイ・ド・ローム」です。

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装甲巡洋艦「デュピュイ・ド・ローム」の砲塔配置:特徴は主砲(19.4センチ速射砲)、副砲(16.3センチ速射砲)全てを単装砲塔で搭載しているところです。実は資料により配置には諸説があるようですが、模型を見ていただければ、主砲である19.4センチ速射砲は舷側、艦のほぼ中央部に各舷1基づつ配置されていることがわかります。艦首部と艦尾部には各3基の副砲塔が配置されていました。:Dupuy de Lôme's main armament consisted of two 45-calibre Canon de 194 mm Modèle 1887guns that were mounted in single gun turrets, one on each broadside amidships. Her secondary armament comprised six 45-calibre Canon de 164 mm Modèle 1887 guns, three each in single gun turrets at the bow and stern. The three turrets at the stern were all on the upper deck and could interfere with each other.(英文版wikipediaより引用 French cruiser Dupuy de Lôme - Wikipedia )

6600トン級の船体に19.4センチ速射砲2基と16.3センチ速射砲8基を装備し、19.7ノットの速力を出すことができました。特徴的な船体の軽量化を狙ったタンブルホーム形式の流麗な船体を持ち、これに高速を発揮するための大型機関を搭載し、三軸推進方式を大型軍艦としてはこれも世界で初めて採用した意欲的な一隻でした。

主砲は艦のほぼ中央部に格言に1基づつ配置されていましたが、艦首尾線上には主砲の全てを思考させることが可能ですが、各舷側方向には最も強力な主砲を一射線しか振り向けられず、以降の搭載配置ではこの形式はとられませんでした。

1920年にベルギーの海運会社に売却され高速貨物船となり1923年に解体されました。

 

「アミラル・シャルネ級」装甲巡洋艦(1895年から就役:同型艦4隻)

(1895, 4,748t, 18knot, 19.4cm *2 + 13.8cm *6, 4 ships

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(「アミラル・シャルネ級」装甲巡洋艦の概観:89mm 9n 1:1250 WTJ)

自国の広範囲にわたる通商路を意識して隻数を確保することを狙い、船体の大きさを前級の6600トン級から4600トン級まで大幅に下げています。小型化に伴い副砲の口径を13.8cmに下げ、二軸推進方式として、速力の若干の低下を甘んじて受け入れています。f:id:fw688i:20220605093842p:image

(主砲:19.4センチ速射砲は同級では艦首と艦尾に1基づつ装備されています)

船体形状は前級を踏襲した流麗なタンブルホーム形式を採用していました。

 

装甲巡洋艦「ポデュオ」(1897年就役:同型艦なし)

(1897, 5,374t, 19knot, 19.4cm*2 + 13.8cm*10)

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装甲巡洋艦「ポデュオ」の概観:93mm in 1:1250, Hai)

前級「アミラル・シャルネ級」の改良型として1隻のみ建造されました。船体をやや大型化し(4600トン級から5400トン級へ)砲塔、艦橋等の防備装甲をやや強化しています。副砲 (13.8cm速射砲)を2基増やしています。f:id:fw688i:20220605094216p:image

(「ポデュオ」の砲兵装の配置)

1919年に対空砲射撃用の練習艦に転用され1929年に解体されています。

筆者としてはやや残念なことに、同艦はフランス海軍の艦船の特徴であった流麗なタンブルホーム形式の船体を採用した最後の装甲巡洋艦となりました。

(下は「装甲巡洋艦創設期」の3艦級の比較:手前から建造年次順に「デュピュイ・ド・ローム」「アミラル・シャルネ」「ポデュオ」の順:いずれも顕著なタンブルホーム形態の船体を持っていて、筆者は大のお気に入りです)

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発展期:汎用戦闘艦への発展

第二期のグループは外洋での通商破壊活動(あるいはその防御)を行えるように大型の高揚製の高い形状の船体を持ったグループで、「ジャンヌ・ダルク同型艦なし)」、その縮小量産型である「ゲイドン級」、植民地警備に主題をおいて開発された「デュプレクス級」、「ゲイドン級」の改良版として計画された「アミラル・オーブ級」がこれに属していると考えています。

通商破壊活動から艦隊直衛まで幅広い任務への適性を持つことを狙った一連の艦級でした。

大好きなタンブルホーム形式の船体は廃止されましたが(実に残念!)、高い乾舷を持ち、外洋での凌波性の良好さを狙った艦型となりました。本稿、前回でご紹介した「前弩級戦艦」の系譜でも、「レピュブリク級」のあたりで同様の変化が起こったと考えています。

 

装甲巡洋艦ジャンヌ・ダルク(1902年就役:同型艦なし)

(1902, 11,445t, 21knot, 19.4c,m*2 + 13.8cm *14)

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装甲巡洋艦ジャンヌ・ダルク」の概観:116mm in 1:1250, WTJ)

 フランス海軍の装甲巡洋艦の設計は、同艦からそれまでのタンブルホーム形式を改め、設計を一新してより航洋性に優れ、より高速を目指しました。大出力の機関(それまでの10000馬力から一気に33000馬力に)を搭載し速力を21ノット超まで向上させたため艦型が10000トンを超える大型になりました。武装は主砲は従来と同様の19.4cm単装速射砲2基でしたが、副砲は口径は前級と同様(13.8cm)ながらの搭載数を14基と増やしています。

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(砲兵装等の拡大:艦型を一気に大型化し、高速と大航続距離を兼ね備えた艦となりました。以降のフランス海軍の装甲巡洋艦の標準的な設計に。タンブルホームではなくなってしまって少し残艶な気がしつつも、やはりフランス艦らしい配置で、これはこれでいい感じ(ではないですか?))

ボイラー室を分離配置するなど、意欲的な試みが盛り込まれた試作艦的な性格の強い鑑でした。

フランス海軍は同感の設計で以降のの装甲巡洋艦の標準を確立したと言っていいでしょう。

 

「ゲイドン級」装甲巡洋艦(1902年から就役:同型艦3隻)

(1902-, 9,516t, 21.4knot, 19.4cm *2 + 16.3cm *8, 3 ships

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(「ゲイドン級」装甲巡洋艦の概観:101mm in 1:1250/ Hai社製改造)

同級は、新世代の装甲巡洋艦を目指した試作鑑的な色合いの濃かった「ジャンヌ・ダルク」を原型として、やや小型化し量産を目指した艦級となりました。機関には初めて石炭・石油の混焼缶を採用しています。艦型は10000トンを少し切るところまで減量され、機関出力は抑えたものになっていますが、減量の結果速力は「ジャンヌ・ダルク」と同等を発揮できる設計でした。

主砲は従来のまま19.4センチ単装速射砲でした。副砲の口径が従来の13.8センチから16.4センチに強化されましたが、搭載数は8基に抑えられています。f:id:fw688i:20220605095502p:image

(「ゲイドン級」装甲巡洋艦の砲兵装等の拡大:モデルの作り(Hai製のメタルモデル)によるところも大きいかもしれませんが、かなり手堅い設計であるように感じます)

第一次世界大戦で同級の「デュプティ・トゥアール」がドイツUボートの雷撃で撃沈されています。

 

デュプレクス級」装甲巡洋艦(1904年から就役:同型艦3隻)

(1904-, 7,600t, 20knot, 16.3cm*2*4, 3 ships )  

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(「デュプレクス級」装甲巡洋艦の概観:103mm in 1:1250, WTJ)

同級は植民地警備等の遣外任務を主目的として想定され設計された艦級で、1897年計画で3隻が建造されました。船体は7400トンクラスと、初期の艦級を除くとフランス海軍の装甲巡洋艦としては最も小型で従来は装甲巡洋艦の副砲として搭載されていた16.3センチ速射砲を主砲として搭載していました。搭載形式は装甲巡洋艦としては初めて採用された連装砲塔形式で艦首尾方向にも舷側方向にも連装砲塔3基が指向できる設計となってました。

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(前出の「ジャンヌ・ダルク」や「ゲイドン級」が強力な砲兵装を搭載した戦闘艦的な色合いが濃い一方で、同級は植民地警備等、遣外任務用に設計されたクラスで、前級よりもやや小型で、やや小さな口径の主砲を連装砲塔で装備するなど軽快で機能的な「巡洋艦」本来の任務を意識して設計されたように感じます)

石炭・石油混焼缶を搭載し、21ノットの速力を発揮し、従来よりも2割程度長い航続距離を備えていました。

 

「アミラル・オーブ級」装甲巡洋艦(1904年から就役:同型艦5隻)

(1904-, 9,534t, 21knot, 19.4cm *2+16.3cm *8, 5 ships)  

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(「アミラル・オーブ級」装甲巡洋艦の概観:113mm in 1:1250, WTJ)

同級は「ゲイドン級」の改良型として設計されました。最大の改良点は副砲(16.3センチ速射砲)の搭載形式で、搭載数は8門と同等ながら、半数を単装砲塔形式で搭載し、広い射界を確保しています。

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(砲兵装配置の拡大:6.5インチ(16センチ)副砲の半数を砲塔形式で装備し、広い射界を確保しています。フランス的な機能美、というと言い過ぎでしょうか?)

5隻が建造されました。

(下は「装甲巡洋艦第二期」の4艦級の比較:手前から建造年次順に「ジャンヌ・ダルク」「ゲイドン級」「デュプレクス級」「アミラル・オーブ級」の順:タンブルホーム形態でなくなってしまって少し残念なのですが、新たな機能美というか、なんとも言えない新たな「フランス艦」らしさが表れています)

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展開期:補助主力艦へ

第三期の装甲巡洋艦のグループは、砲力と防御力を前汎用巡洋艦のグループから格段に強化し、艦隊主力艦を補助する、いわゆるミニ戦艦的な運用を意識したものになったと考えています。

このグループには、「レオン・ガンベッタ級」、「ジュール・ミシュレ」、「エルネスト・ルナン」、そして「エドガー・キーネ級」が含まれています。いずれも12,000トンを超える大型艦でした。英海軍、ドイツ帝国海軍の装甲巡洋艦がそれぞれ開発の系譜は異なるものの巡洋戦艦に吸収統合されていったのに対し、フランス海軍は巡洋戦艦という艦種を結果的には持ちませんでした(計画はあったようですが)。

これも艦隊決戦用の強力な戦艦戦隊を持てなかった(持たなかった?)のと同じ理由でしょうか?英独海軍の激突で戦艦(主力艦)が揚げた戦果を見れば(決定的な戦果はお互いあげていません)、ある種「慧眼」と言えるかもしれません。「新生学派」時代の議論は無駄ではなかった、ということかな?

 

「レオン・ガンベッタ級」装甲巡洋艦1903年から就役:同型艦隻)

(1903, 12,400t, 22.5knot, 19.3cm *2*2 + 16.3cm*2*6 +1*4, 3 ships

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(「レオン・ガンベッタ級」装甲巡洋艦の概観: 115mm in 1:1250, Navis)

同級は「アミラル・オーブ級」の改良型として設計されましたが、艦型が大幅に拡大され、特に火力が強化されました。具体的には主砲には口径は従来と同じ19.4センチ速射砲が採用されていますが、従来の単装砲塔形式を連装砲塔形式に改めてで艦首、艦尾に1基づつが搭載され、2倍とした他、副砲も口径は同じながら前級の8門の搭載数を連装砲塔で6基、単装砲で4基と一気に倍の搭載数と強化しています。

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(「レオン・ガンベッタ級」の砲兵装配置: 主砲・副砲とも連装砲塔での搭載として、火力を格段に強化、砲塔としたことにより、副砲も広い射界を確保しています)

機関も出力を強化されたものを搭載し、22.5ノットを発揮することができました。

3隻が建造されました。

 

装甲巡洋艦「ジュール・ミシュレ1906年就役:同型艦なし)

(1906, 13,105t, 22.5knot, 19.3cm *2*2 +16.3cm*12)

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装甲巡洋艦「ジュール・ミシェル」の概観:115mm in 1:1250, Hai)

「レオン・ガンベッタ級」の改良型として1隻のみ建造されました。主砲に新開発の長砲身の50口径砲を採用し、これを艦首・艦尾に連装砲塔で搭載しています。

新型の機関を搭載して速力を上ていますが、新型主砲と主砲塔の重量増を副砲の数を減じることでカバーし、速力向上を実現させました。

副砲は8基を単装砲塔形式で、残り4基をケースメイト形式で搭載し、広い射界を確保する配置としています。

(下の写真は「ジュール・ミシュレ」の砲兵装配置: 長砲身の主砲を連装砲塔で搭載し、重量増分を副砲の数w歩減少させることでまかなっています。副砲は12基中8基を単装砲塔で装備し、射界を広く確保しています)

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装甲巡洋艦「エルネスト・ルナン」(1909年就役:同型艦なし)

 (1909, 13,644t, 23knot, 19.3cm*2*2 +13.4cm*12)

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装甲巡洋艦「エルネスト・ルナン」の概観:126mm in 1:1250,by Hai)

同艦は前出の「ジュール・ミシェル」同様、「レオン・ガンベッタ級」の改良型として1隻のみ建造されました。主砲、副砲の数、搭載形式は「ジュール・ミシェル」と同様でしたが、速力を上げるために艦を12メートル延長し、新型の機関を搭載して速力を23ノットまで上げることに成功しています(公試時には24ノットを上回る速力を記録しています)。一方で艦型は13000トンを超える大型艦となりました。

(下の写真は「エルネスト・ルナン」の砲兵装配置: 搭載砲、搭載形式などは「ジュール・ミシュレ」に準じています。より強力な機関を搭載したため、煙突の数が6本に増えています。ボイラー室を前後に振り分けたため、煙突の位置は2箇所に離れた配置となりました(これは他の装甲巡洋艦との共通の配置))

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エドガー・キーネ級」装甲巡洋艦(1911年就役:同型艦2隻)

(1911-, 13,847t, 23knot, 7.6in *2*2 +7.6in *10, 2 ships

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(「エドガー・キーネ級」装甲巡洋艦の概観:129mm in 1:1250 3D printing model by Master of Miy)

同級はフランス海軍が建造した最後の装甲巡洋艦で、2隻が建造されました。その最大の特徴は副砲を廃止し、19.3センチ速射砲を連装砲塔で2基、単装砲塔形式で6基(片舷3基)そして船体内にケースメイト方式で四基(片舷2基)搭載しています。この配置により艦首尾方向にはそれぞれ19.3センチ速射砲を6門、舷側方向には9門指向することが出来ました。

(下の写真は「エドガー・キーネ級」の砲兵装配置等:副砲を廃止して主砲(19.3センチ速射砲)のみの搭載としています。大型の機関を搭載したため、煙突のk図は6本に)f:id:fw688i:20220605102203p:image

新型の機関を搭載し24ノットの速力を得ています。

 

(下は「装甲巡洋艦第三期」の4艦級の比較:手前から建造年次順に「レオン・ガンベッタ級」「ジュール・ミシュレ」「エルネスト・ルナン」「エドガー・キーネ級」の順:いずれも大型で高速の戦闘艦として、主力艦部隊を支える役割を果たすべく、建造されました)

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(下は「フランス海軍の装甲巡洋艦」の形態変化を総覧したもの:手前から第一基の代表として「デュピュイ・ド・ローム」第二期から「デュプレクス級」と「あみらる・オーブ級」第三期から「レオン・ガンベッタ級」と最後の装甲巡洋艦エドガー。キーネ級」の順:艦型の大型化を顕著にみることができます。この中でも「デュプレクス級」は大型戦闘艦というよりも、植民地警備など本来の巡洋艦任務に回向製が高い摂家だということがわかります)

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というわけで、前回のフランス海軍の前弩級戦艦の系譜に続いて、同時期の装甲巡洋艦の開発系譜を見ていただいたわけですが、前弩級戦艦のケースほどの迷走は見られず、少し物足りない感じ(?)ではないかと思います。

この2回を振りかっえってみて、「巡洋艦」には通商路保護をめぐる比較的明確な、そして基本的な自国商船の保護という目的があるのに対し、「戦艦」にはそれほど明確な保有目的がないのかな、などと考えさせられました。特にフランス海軍の場合には、艦隊決戦に対するそれほど明確な必要性を感じていなかったんじゃないかと。

この辺りは、もっと時間をかけて、そして他の艦種の開発系譜やその背景なども考えてみると、きっと面白そうです。

というわけで今回はこの辺で。

 

次回はフランス海軍艦艇の続きで、同海軍の弩級戦艦以降の開発のお話にするか、あるいは少し週末を跨ぐプライベートなイベントがあるので、もしかすると最近新着が続いている英海軍の装甲巡洋艦のモデルで、再びモデルメーカー(Navis Nモデル)のヴァージョンアップに関するぼやきなどを聞いていただくかも。どうしようかな。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

 

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