相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

第20回 新戦艦の時代

欧州列強の新戦艦

ワシントン海軍軍縮条約開けに、各国はそろって新型戦艦を起工した。

起工は条約明け後のではあったが、ヨーロッパ諸国は条約の継続を深く期待していたため、設計時点では条約の制約を強く意識した。加えて、さらに他国をいたずらに刺激しないようにと、数字の上ではやや控えめな設計が揃った。

一方で、ユトランド沖海戦から得られた、機動性に劣る戦艦は戦場で役に立たないとする戦訓、戦場での生存性を高めるための防御力に対する配慮、さらには高度に発達する航空機等を意識して、いずれも27ノット以上の速力を持ち、多くの対空兵装を装備するなど、共通した設計上の特徴があった。

 

各国の新型戦艦 

ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦 - Wikipedia

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新戦艦時代の幕開けともいうべきフランス海軍のダンケルク級の建造に刺激され、第一次大戦時の弩級戦艦の大改装によって陣容を整えようとしたイタリア海軍であったが、早急な新型戦艦の開発が急がれた。

主砲として採用された15インチ砲は50口径の長砲身砲で、高初速を誇り16インチ砲にも劣らない威力を発揮した。副砲にも高初速の55口径の6インチ砲が採用され、これを3連装砲塔4基に収めた。対空火器としては9センチ高角砲をシールド付きの単装砲で12基装備していた。

4軸推進を採用し30ノットの速力を発揮した。

攻撃力と機動力を備えたバランスの良い艦であったが、一点難を挙げるとすれば、航続距離の短さが挙げられねばならないであろう。これは活動海域を地中海と想定したことからくるもので、その想定内では特に重大な問題にはならなかったであろう。

(1940-, 41,377t, 30 knot, 15in *3*3, 3 ships, 192mm in 1:1250 by Neptune)

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リシュリュー級戦艦 - Wikipedia

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ダンケルク級の建造によりイタリア海軍が15インチ砲装備の高速新型戦艦を建造を開始し、また英独海軍協定によりヴェルサイユ条約の制約から解放されたドイツ海軍も、シャルンホルスト級戦艦に続き、やはり15インチ砲搭載の新型戦艦を建造するという情報を得るに至り、フランス海軍も新型戦艦の建造に着手した。

基本形は前級ダンケルク級の拡大版であり、主砲口径を15インチに拡大し、これを自慢の4連装砲塔2基に、ダンケルク級と同様前甲板に搭載した。この15インチ砲は非常に優秀な砲で、20,000メートル台の砲戦距離ならば、日本海軍が後日建造する大和級を除くすべての戦艦の装甲を打ち抜くことができた。

前級では対艦・対空の両用砲を搭載したが、本級では対空射撃の可能な6インチ砲を採用し、これを3連装砲等3基に搭載した。高角砲としては10センチ砲を連装砲塔で6基搭載した。

また本級では煙突と後檣を合体させたMACK構造が採用されており、その特徴的な主砲配置と合わせて非常に近代的なフォルムとなった。

速力は30ノットを発揮し、4連装砲塔の採用で浮いた重量を防御装甲に回すなど、機動性と攻守を兼ね備えた強力艦となった。

(1940-, 48,180t,  30 knot, 15in *4*2, 2 ships, 197mm in 1:1250 by Hansa)

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キング・ジョージ5世級戦艦 - Wikipedia

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本級の建造に当たっては、当初、主砲口径の選択肢が16インチ、15インチ、14インチの三案あったとされている。英国は海軍軍縮条約の継続を強く望んだため、新造戦艦の設計で他国を刺激することを恐れ、その政治的配慮から最も控えめな設計を選択したとされている。

結果、本級は14インチ砲を選択し、さらに当初4連装砲塔3基12門の予定であった搭載数を、防御装甲への割り当てを増やすために4連装砲塔2基と連装砲塔1基、計10門の変則配置とすることになった。

結果、本級は防御力を重視した戦艦として建造された。

一方で、その攻撃力は、新設計の主砲、新設計の4連装砲塔など、大変意欲的な取り組みが見られたが、軽量化のために砲塔の高さを減じた窮屈な設計となり、故障の多発など信頼性に疑問が持たれるものとなった。

副砲として対艦・対空の両用砲を初めて採用し、連装砲塔8基16門を搭載した。両用砲として採用されたこの砲であったが、対艦射撃時の威力を重視したために、重い弾体が採用され、対空射撃時の速射性に課題が残った。

速力は28ノットと、前出のフランス、イタリアの新造戦艦に比較するとやや抑えた設計であった。 

(1940-, 42,245t, 28.3 knot, 14in *4*2 +2*1, 5 ships, 181mm in 1:1250 by Neptune)

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独戦艦ビスマルク級の登場

ビスマルク級戦艦 - Wikipedia

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1935年、ドイツは再軍備を宣言し、同年、英独海軍協定の締結により、事実上、ヴェルサイユ条約による新造艦の建造制約から解き放たれた。

手始めにフランスのダンケルク級戦艦に対抗すべくシャルンホルスト級戦艦が建造されたが、その後、前出の諸列強の新造戦艦の設計に対しては見劣りがし、より強力な戦艦の建造が望まれた。

ビスマルク級戦艦はそのような背景から設計され、最終的には15インチ連装砲塔4基8門を主兵装とする強力な攻撃力、速力30ノットの高い機動性、防御装甲の全体重量へ占有率39%の堅牢な艦体を有する有力な戦艦となった。

英独海軍協定では、一応35,000トンという新造戦艦に対する制限が謳われていたが、公称は制限内としたものの、実際には制限を無視した41,700トンの、就役当時としては世界最大の戦艦であった。

一方で、主砲等兵装配置、防御設計の基本骨子などは非常にオーソドックスなもので、当時の列強の新造戦艦が、様々な新機軸をその設計に盛り込んだのに対し、目新しさ、という点では特筆すべきところのない、いわゆる手堅い設計の戦艦であった。

これは、ドイツがヴェルサイユ条約下で厳しい海軍戦力に対する制限を課せられ、設計人材、技術等のブランクが生じたため、とする説も見られる。

上記に示すように、本級は確かに強力な戦艦ではあったが、史実では、最初で最後の出撃となった「ライン演習」での目覚ましい戦果(戦艦フッド、プリンス・オブ・ウェールズとの対決と、フッドの轟沈)とその後の悲劇的な最後が伝説化(当時、英海軍はその動かしうるほとんどの戦力を、ビスマルク一隻の補足と撃沈に集中した)し、実情以上にその戦闘力が過大に評価された傾向がないわけではないと考えられる。

(1940-, 41,700t, 30 knot, 15in *2*4, 3 ships, 202mm in 1:1250 by Hansa)f:id:fw688i:20190331144058j:image

 

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ビスマルク級の3隻:手前から、ティルピッツ、ヒンデンブルクビスマルク

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(前級シャルンホルスト級との比較。ビスマルク(上)、シャルンホルスト(下)。艦幅が一回り大きいことがよくわかる。シャルンホルスト級は主砲をビスマルク級と同じ15インチに換装後の姿)

 

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(ヨーロッパ4カ国の新造戦艦の艦型比較。上から、ビスマルク級リシュリュー級、ヴィットリオ・ベネト級、キング・ジョージ5世級。ビスマルク級がやや大きいことがわかる。一方で、本文でも触れたが、ビスマルク級武装配置、艦橋等の上構造の配置が非常にオーソドックスであることもよくわかる)

 

英独海軍協定で、戦艦の建造に対する呪縛から逃れたドイツ海軍は、このビスマルク級を起点として、Z計画なる海軍再建を目論んでおり、この後に続くすべての戦艦が、このビスマルク級の設計を基本計としていた。

 

次回はドイツ海軍のZ計画とそれに対する特に英仏両海軍の対応をご紹介する予定。

そして、その後の回では、舞台を太平洋に移し、日本帝国海軍と米海軍の動向をご紹介する予定です。いよいよ「大和」「超大和」「スーパー大和」など、登場です。 

最終回も近い!

 

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これまで本稿に登場した各艦の情報を下記に国別にまとめました。

fw688i.hatenadiary.jp

内容は当ブログの内容と同様ですが、詳しい情報をご覧になりたい時などに、辞書がわりに使っていただければ幸いです。

 


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