相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

スウェーデン海軍:謎の未成巡洋艦:情報が見つからない!

今回は予告通り、スウェーデン海軍の未成巡洋艦のモデルをご紹介します。

普段ならここで何か資料のありかなど提示しながら本題に入るのですが、実のこの船については、情報が全く見つけられていません。通常、モデルが製作されるような計画艦(その後、建造されなかったので「未成艦」となるのですが)の場合、どこかに計画のカケラのような情報があるものなのですが筆者は未だ見出せていません。

モデルはAnker社から発売されているもので、艦名は「Planung 32」でいつもモデル検索の際に頼りにしているsammelhafen.deでは「1932年の発表」とされています。という訳で、とりあえず「1932年計画軽巡洋艦」と仮称してご紹介します。

(もし、情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、是非お知らせください)

 

「1932年計画」軽巡洋艦(未成)

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(「1932年計画」軽巡洋艦の概観:110mm in 1:1250 by Anker :下の写真は主要兵装の配置等の拡大:艦首に連装砲塔1基(上段)、中央部に単装高角砲(40mm)6基と連装魚雷発射管2基(中段)、艦尾に連装砲塔2基(下段)が配置されています。主砲塔はやや特徴的な形状をしています。これは・・・)

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概観とその細部は上の写真の通りなのですが、船体の大きさ、搭載武装等は推測するしかなさそうです。

「1932年計画」軽巡洋艦はどの程度の規模の艦だったのか?

という訳でまずは下の写真を。

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この写真は今回ご紹介している「1932年計画」軽巡洋艦(写真中央)と、スウェーデン海軍が同級以前に建造した装甲巡洋艦「フィルギア」(1907年就役:写真奥)と、さらにほど同年時に計画し建造した航空巡洋艦「ゴトランド」(写真手前)を比較したものです。

「フィルギア」は4300トンの装甲巡洋艦、「ゴトランド」は4700トンの航空巡洋艦ですので、それぞれの装甲の重量、航空艤装等の重量と「1932年計画艦」が「軽」巡洋艦として計画されていたことを考慮すると、おそらく「1932年計画」軽巡洋艦は4000トン前後の規模を持つ軽巡洋艦だったのではないかと推測します。

計画年次がモデルの示す通り1932年次だとすると、丁度この時期は以下でご紹介する航空巡洋艦「ゴトランド」の設計年次とも重なります。更に同時期はスウェーデン海軍が1000トン級の高速航洋型駆逐艦を量産し始めた時期でもあり、バルト海対岸のドイツにおけるナチスの台頭、再軍備など周辺有事の想定と合わせて領海保全に向けて機動力・対応能力の向上に向けて装備の飛躍的な近代化を行っていた時期でもありました。

一方、同海軍はそれまで抑止力としての海防戦艦の建造に装備の主軸を置いてきており、緊張局面の発生に即応して高速で展開できる艦種を欠いていたこともあり、同級はその対策として計画された、と考えるのが妥当かと思います。

結果的には、そのような艦種は航空巡洋艦「ゴトランド」しか建造されず、第二次世界大戦終結期の「トゥリア・クロノール級」軽巡洋艦の登場を待たねばなりませんでした。

 

上述の装甲巡洋艦「フィルギア」と航空巡洋艦「ゴトランド」については以下に詳細を。

装甲巡洋艦「フィルギア」(1907年就役:同型艦なし)

ja.wikipedia.org

就役時(1907年)

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(装甲巡洋艦「フィルギア 」の竣工時の概観: 91mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature:下の写真は主要搭載兵装」主砲等の拡大)

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同艦はスウェーデン海軍が初めて建造した本格的な巡洋艦です。装甲を持ついわゆる装甲巡洋艦で、水雷戦隊の火力支援を行う艦種として設計されました。装甲巡洋艦としては小ぶりの4300トン級の船体に6インチ連装速射砲4基を搭載していました。就役時には21.5ノットの速力を発揮することが出来ました。

列強の装甲巡洋艦が軒並み8000トン、10000トン級であったことを考慮すると、小ぶりな装甲巡洋艦です。が、バルト海での運用を考慮すると、このサイズがベストと言えるかもしれません。主砲を全て連装砲塔とするなど、意欲的な設計と言ってもいいと感じています。

改装時(1939−41年)

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装甲巡洋艦「フィルギア」の近代化改装後、第二次世界大戦期の姿:93mm in 1:1250 by Brown Water Navy miniarure::艦首の形状が変更されています:下の写真は主砲塔の配置に加えて。追加装備された対空砲など)

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1940年前後に、艦首形状の修正や対空兵装の増強など、近代化改装が行われ、機関は 重油専焼に換装されボイラー数が減っています。速力は26ノット、外見的には3本煙突から2本煙突となりました。近代化改装後も、ドイツやソ連巡洋艦に対抗するには既に旧式ではありましたが、優美な艦容から“White Swan of Sweden”の呼称で親しまれました。1953年に退役するまで、練習艦として使用され続けました。

二形態比較

(艦首形状がクリッパー型に変更されている他、艦橋の形状、煙突の数、位置も変更されています)

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航空巡洋艦「ゴトランド」(1934年就役:同型艦なし)

ja.wikipedia.org

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航空巡洋艦「ゴトランド」の概観:109mm in 1:1250 by Rhenania: 実に端正に作り込まれたモデルです。Rhenaniaのオーナには筆者のコレクションが3D printingモデルを多用していることにお叱りをいただいたことがあります。日本で1:1250スケールをもっと普及させるには、上質のモデルをもっと紹介してくれなくては、というわけです。その主張を十分に裏付ける精度を持ったモデルです)

スウェーデン海軍は1929年代から艦載機による防空を目的とした巡洋艦の建造を計画しました。本稿の前回でご紹介した海防戦艦「ドリスへティン」が水上機母艦に改造されたのも、この構想の一環です。

この水上艦艇に航空索敵能力を持たせる構想は「4500トン級の水上機母艦案」や「5500トンの航空巡洋艦案」等の検討を経て本艦で具現化されます。本艦は世界初の航空巡洋艦として建造され、4700トンの船体に、6インチ連装砲塔2基、同単装砲2基(ケースメート形式)計6門の主砲を有し、重油専焼缶とタービンの組み合わせで速力27.5ノットを発揮しました。航空艤装としては艦尾部に広い飛行整備甲板を持ち、搭載機6機を定数とし、最大12機まで搭載できる設計でした。(甲板係止:10機・ハンガー収容:2機)搭載機は飛行整備甲板と艦上部構造の間に据えられた回転式のカタパルトから射出される構造でした。

三連装魚雷発射管を両舷に装備し、機雷敷設能力も兼ね備えていました。

(下の写真では、「ゴトランド」の特徴である艦首部の連装砲塔、中央部の上甲板下の魚雷発射管(影になっていてわかりにくいですが)、艦尾部の航空甲板を拡大:航空甲板下に機雷敷設用の軌条が見えています)

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巡洋艦という目で見ると、やや速力が物足りないと思われるかもしれませんが、バルト海という主要な行動領域と設計が大戦間の航空機の発達途上の時期であることを考えると、当時としては十分な機動性を持っていたといえるかもしれません。

その後、艦載機種更新にあたって、後継予定機種が機体重量の関係で現有のカタパルトでは射出できないことが判明すると、同艦は航空艤装を廃止し、艦尾部の飛行整備甲板に対空兵装を増強するなどして防空巡洋艦に変更されました。

1956年まで現役に留まり、1963年に解体されました。

 

参考:水上機母艦に改造された海防戦艦「ドリスへティン」

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(「ドリスへティン」の水上機母艦への改装後の概観:72mm in 1:1250 by C.O.B. Construvts and Miniature in Shapewaysからのセミ・スクラッチ)

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「1932年計画」軽巡洋艦の主要兵装は?

下の写真は1934年に設計案が上申されたされたスウェーデン海軍の次期海防戦艦「Project 1934:トゥリア・クロノール級」の完成予想モデルとの比較です。上下段ともに「1932年計画」経巡洋艦(手前)の主要兵装と、「Project 1934」の対空兵装の拡大比較を示しています。

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この写真から、Anker社の解釈では、明らかに「1932年計画」軽巡洋艦は4.5インチ(12センチ)連装両用砲を主砲として想定していたことがわかります。同艦は同連装両用砲塔3基を主要兵装とし、さらにボフォース40ミリ対空砲6基を搭載する対空火器に重点を置いた防空巡洋艦であったと考えられるわけです。

この航空機重視の方向性は航空索敵能力に重点を置いてほぼ同時期に設計され実際に建造された航空巡洋艦「ゴトランド」の運用思想とも表裏を成していると考えらえます。

4.5インチ連装両用砲自体は上述の海防戦艦も建造されなかったため、実現しませんでしたが、後に「トゥリア・クロノール級」軽巡洋艦の主砲として搭載されたふた周り口径の大きな15センチ両用砲が70度の仰角での射撃が可能な両用砲塔に搭載され、毎分10発の射撃が可能な給弾機構を装備していたことを考えると、同様に仰角70度で毎分15発程度の射撃が可能だったのではないかと考えられます。

砲兵装以外では533ミリ連装魚雷発射管2基を搭載していました。

(下の写真は連装魚雷発射管の拡大)

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後に建造された「トゥリア・クロノール級」軽巡洋艦が33ノットの速力を発揮できたことを勘案すると、「1932計画」艦も有事には同等の高速を発揮して、いち早く紛争海面に到着して対空・対水上警備にあたることを想定された艦級であったのではないかと、空想してみたりするのですが、いかがでしょうか?

おそらくその際には航空巡洋艦「ゴトランド」は搭載機で広範囲な航空警戒域を展開し、その下で同級が現場海域を制圧していると・・・。

 

以下に「Project 1934」級海防戦艦についての詳細を掲載しておきます。

「Project 1934:トゥリア・クロノール級(仮称)」

1933年(34年?)に設計された未成の海防戦艦がありました。

「トゥリア・クロノール級(仮称:三つの王冠=スウェーデンの国章)」と命名される予定だった同級は、それまでの「海防戦艦」と異なり、塔形状の前部マストやコンパクトにまとめられた上部構造など、フィンランド海軍の「イルマリネン級」にやや似た近代的(?)な外観をしています。7685トン級の船体に、武装は11インチ(28cm)連装砲2基と、4.5インチ(12cm)両用連装砲6基を予定していたようです。速力は前級「スヴェリエ級」と同じ22−23ノット程度で、水平防御、水中防御を強化した設計でした。

 "Viking class" (1934/36): Dimensions: 133m x 19,5m x 6,85m, Displacement: 7.150tons standard, Populsion: 20.000shp, 4 shafts, 22 knots, protected by a belt 254mm thick and 50 mm decks, four 254mm Guns (2x2) and 2x3 120m DP-AA Guns, 4x2 40m AA Guns.

https://naval-encyclopedia.com/ww2/swedish-navy.php

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(直上の写真と直下の写真:未成海防戦艦「Project 1934」の概観: 102mm in 1:1250 by Anker:ここで示しているのは両用砲搭4基搭載案) 

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「Project1934」には「ヴァイキング級」という呼称が予定されていたという説もある様です。

(下の写真は、未成の海防戦艦「Project1934」と「グスタフ5世」の外観の比較:主兵装や上部構造の配置から、集中防御等への意識が高い設計であったことが推測されます)

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上掲のProject 1934は海軍から政府に予算申請があげられましたが、政府が議会に諮ることはなかったようです。予定された名称は第二次世界大戦中に就役した巡洋艦に引き継がれました。

 

ということで「1932年計画」軽巡洋艦のスペックをざっくりとまとめておくと、排水量4000トン、最高速力33ノット、12センチ連装両用砲3基、40ミリ単装高角砲6基、533ミリ連装魚雷発射管2基、機雷70基搭載可能・・・こんな感じでしょうか。

 

「1932年計画」軽巡洋艦、15センチ主砲搭載案のモデル

これまでのお話はAnker社「1932年計画」軽巡洋艦のオリジナル・モデルを起点に、その規模や搭載兵装についての推測を記載してきましたが、今回、2隻同じモデルを入手したことで、15センチ主砲搭載案も作成してみました。

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(「1932年計画」軽巡洋艦:15センチ平射砲搭載型の概観:by Anker +主砲塔のみストックから転用しています::下の写真は主要兵装の配置等の拡大:基本配置はオリジナル案と変わりません。

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同時期に設計され建造された「ゴトランド」の主砲がやはり15センチ砲で、60度の仰角での射撃が可能で対空戦闘能力もある、とのことでしたが、同時期の航空機の高速化は目覚ましいものがあり、対空射撃には早い射撃間隔を実現する給弾機構、装填機構、さらには射撃式装置が必要で、これが同時期の15センチ級の中口径砲でどれほど実現できていたか、やや疑問です。

ということで、同級も対空射撃の能力はあったが、平射砲としての実運用が基本だったというようなことでいかがかと思っています。

12センチ両用砲搭載艦、15センチ平射砲搭載艦、それぞれ1隻づつが建造され、状況に合わせて緊張海面に派遣され、場合によっては組み合わせて派遣される、このような運用を想像してみるのも興味深いかと。

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(上の写真は航空巡洋艦「ゴトランド」と2隻の「1932年計画」軽巡洋艦で構成されたかもしれない、スウェーデン海軍の警戒機動部隊:特に下段の写真で15センチ平射砲塔と12センチ両用砲搭の大きさの違いがわかっていただけるかと)

 

というわけで今回はここまで。

次回は前回の流れに戻って、八八艦隊計画のこれまでの投稿記載の統合を試みてみようかと。あるいは、その前の「マスト周りのディテイル・アップ」関連の投稿か・・・。

もちろん、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

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