相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

Neptun版「伊勢級」戦艦のモデルを入手:「伊勢級」戦艦の変遷を総覧:架空の空母改造案もあります

このところ本稿は「扶桑級」戦艦の「41センチ主砲搭載型への改装案=改扶桑級」とその近代化改装形態、というテーマで数回の投稿を費やしてきました

 

「改扶桑級」戦艦の構想

少し前回までをおさらいしておくと、ワシントン軍縮条約の締結により中止されるであろう八八艦隊計画での戦艦整備を補完するために、日本海軍嘱望の初の超弩級戦艦でありながら「産まれながらの欠陥戦艦」のネガティブな評価が定まった感のあった「扶桑級」戦艦の改装案(実際に存在した)が実現されたら、というような「IF」の世界の「架空艦」を再現してみよう、そんな試みでした。

扶桑級」戦艦就役時

扶桑級就役時の概観:163mm in 1:1250 by Navis)

ja.wikipedia.org

扶桑級」戦艦:近代化改装後(実艦)

(近代化改装後の「扶桑級」戦艦の概観:写真奥が「扶桑」手前が「山城」:改装時に三番主砲塔の係止方向を「扶桑」は正艦首方向、「山城」は艦尾向けと異ならせたため、「扶桑」の前檣は艦船ファンに人気の高い得意な形態をしています。史実は主砲を41センチ砲に換装されることなく、上掲のような形態で太平洋戦争に投入され、レイテ沖海戦で失われました) 

 

ここから「架空艦」のオン・パレード

まずは「改扶桑級=41センチ主砲への換装改装形態」

(上の写真は「改扶桑級」の概観:163mm in 1:1250 by semi-scratchied besed on C. O. B. Constracts and Miniatures:この改装案の要目は、「扶桑級」の諸課題の元凶というべき6基の主砲塔とその配置を改め、八八艦隊計画の中止で「長門級」の2隻のみとなることが予想された41センチ主砲装備艦を補完し、攻撃力の強化と機動性の向上を同時に目指したものでした。下は連前檣と41センチ主砲塔艦首部は連装砲塔2基の背負式配置、前檣直後に三連装砲塔を1基、さらに艦尾部に1基配置した姿:模型ならではの「架空艦」です:でも一応計画はありました)

そして「改扶桑級」戦艦近代化改装後形態

(「改扶桑級」が実現したら、当然、近代化されていただろうという想定のもとで:「改扶桑級」近代化改装後のモデルを制作してみました:上の写真は戦艦「改扶桑」近代化改装後形態の概観:「改扶桑」は近代化改装の際に史実のように三番主砲塔の係止位置を正艦首方向としたため、前檣の構造がかなり特異な物になりました(実情はこの特異な艦橋を再現するために主砲塔の向きを変えたわけですが)。下は「改山城」近代化改装後形態の概観:「改山城」は近代化改装の際にも主砲塔の係止位置の補正(変更?)を行いませんでした:まさに「架空艦」を筆者の妄想で上書きした、「模型の醍醐味(だと筆者は思うんですが)」のようなモデルです)

さらに「長門級」二番艦:「陸奥」変体(=主砲塔5基搭載案)

(戦艦「陸奥」変体の概観:173mm in 1:1250 by ModelFunShipyard: 八八艦隊計画トップランナーである「長門級」戦艦の二番艦「陸奥」には、すでに設計が出来上がりつつあった次級「土佐級」戦艦に倣った主砲塔5基搭載案がありました。これがいわゆる「陸奥」変体とよbれる設計案です:下の写真はオリジナルの「長門」との比較(「長門」が奥)。構造。配置とも全く異なることがよくわかります)

ということでこの数週間、想像の羽を大いに伸ばしたのですが、今回は本来は「扶桑級」三番艦、四番艦として建造されるはずだった「扶桑級」の次級「伊勢級」のNeptun製モデルが入手できたので、そのご紹介を中心に。今回はそういう、少し地に足のついたお話。

 

その前に

ピカード ・シーズン3」

あっという間に四話まできてしまいました。

***(ネタバレがあるかも。嫌な人の自己責任撤退ラインはここ:ネタバレ回避したい人は、次の青い大文字見出しに「engage!」)***

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Star Trek: Picard - Engage! - Episode 3 finale - YouTube

 

再び、これは「ピカード ・シーズン3」なのか?

ストーリーは面白いし、多くの謎が提示され、これからの展開もとても気になります。しかし(とあえて言っておきます)、これは「新スター・トレック=ジェネレーション」の後日譚ではないだろうか、と、これは前回の感想としても書いたことですが、ますますその思いが深まってゆきます。「艦隊」「宇宙の広がり」「仲間」「家族」「絆」「信頼」と、幾つもの重要な、しかしどこか「懐かしい言葉」が散りばめられた美しいストーリーが間違いなく語られているのですが、果たしてこれは「ピカード 」のタイトルで語られるべき話なのだろうか、そんな戸惑いが正直にいうと筆者にはあるのです。

「可変種」や「ドミニオン戦争」、「ウルフ357」などのトレッキーなら堪らないネタ満載のストーリーが、筆者をどこに連れて行ってくれるのか、あわせて時折、ピカード が見せる迷いに似た表情が、もしかすると筆者の懸念への率直な回答なのかな、などと思いながら、やはり金曜日が待ち遠しいですね。

 

Neptun版「伊勢級」戦艦近代化改装後のモデルが到着

ja.wikipedia.org

伊勢級」戦艦は上述のように元々は「扶桑級」戦艦の三番艦、四番艦として建造される予定でした。しかし「扶桑級」戦艦に次いては就役直後から種々の課題が頻出し、結局、同型艦としての建造は見送られ、新設計の元に建造されることとなりました。

前級「扶桑級」との最も大きな相違点は主砲配置にあると言っていいでしょう。「扶桑級」では6基の主砲塔を艦の首尾線上に均等に配置したことから、発砲時の爆風が艦全体をおおい艤装への損害が発生すること、均等配置により防御装甲の配置が広範囲になり、このために防御に十分な重量配分をできなかったこと、砲塔と機関配置が交互となり、当時、性能向上のペースが著しく高まった機関の改装、更新などへの対応のためのスペースが十分に取れないこと、などの弊害が現れていました。

そこで「伊勢級」では主砲塔を2基づつ3群に分けて配置しこれらの弊害に対応しました。これにより弾庫の集中など集中防御の構想が進み、装甲配置の効率を高めることはできましたが、それぞれを背負い配置にした結果、上部構造が縮小される結果となり、居住スペースが影響を受け、居住性は大幅に低下する結果となりました。

(「伊勢級」戦艦就役時の概観:166mm in 1:1250 by Navis)

1930年代の近代化改装形態

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(「伊勢級」戦艦近代化改装時の概観:171mm in 1:1250 by Neptun: 下の写真は「伊勢級」の主砲塔配置を中心に全体の配置を見たもの)

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近代化改装の際に、主砲の41センチ砲への換装なども検討されたようですが、主砲の換装には至らず(実施されていたら、上掲の「改扶桑級」のように艦首部に背負式で2基、艦中央部に1基、艦尾部に1基のような配置になっていたんでしょうか)、仰角の引き上げによる射程の延長、射撃指揮装置の改善・大型化に伴う艦橋の大型化、ボイラーの石炭・石油混焼から重油専焼への換装による航続距離の延長、タービンの換装などによる速力の向上等が図られました。艦型的には艦尾が延長され、速力向上と直進性が改善されました。合わせて大型バルジの装着や主砲塔装甲の追加等も実施され、防御能力も高められました。

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(「伊勢級」戦艦 就役時(手前)と近代化改装後の比較:前檣の大型化と煙突が一本になったこと、艦尾が延長されたことが大きな変化)

 

航空戦艦への改造

太平洋戦争開戦後は「伊勢級」のみならず日本海軍の戦艦全般にとって、あまり活躍の場はなく、ミッドウェー海戦で機動部隊の主力空母4隻が失われるとわずか2隻の「艦隊空母」建造計画しか持たなかった日本海軍は大型主力艦の空母編転用を検討し始めます。「伊勢級」戦艦も例外ではなく、全通甲板の空母への改造が検討されました。

全通甲板空母への改造案も検討された

(「伊勢級」の本格空母への改造案の完成予想形態の概観:163mm in 1:1250 by semi-scratched model based on Delphin model :2基のエレベーターを持ち、煙突一体型のアイランド型の艦橋を持っています。これも模型ならでは、では?)

具体的な改造案としては、実績のある空母「赤城」「加賀」の転用工程に倣い、主砲・前檣等も含むすべての上部構造物を一旦撤去して機関部等のみ残した船体に格納庫を追加し、その上に飛行甲板を設けるというものでした。

完成すれば216メートル級の飛行甲板を持ち、搭載機54機を運用できる「雲龍級」空母、あるいは「隼鷹級」空母に匹敵する規模を持つ艦隊空母になることが期待できました。機関の換装は計画しないため速力は25ノットでしたが、これも「隼鷹級」中型空母と同程度ですが、戦艦出自から来る防御性能は商船改造の「隼鷹級」を遥かに凌駕するものになるはずでした。

計画図面では「隼鷹級」と同様の煙突一体型のアイランド艦橋を持った案が残されています。

(上の写真は、「伊勢級」を全通甲板を持つ本格空母化した場合に、どの程度の空母たり得たのかを把握するための「隼鷹級」空母(奥)との比較:船体規模はほぼ同等で、「伊勢級」を改造した場合、構造から見て一段半の格納庫を設定できそうですから、個有の搭載機数も、おそらくほぼ同等になり得たのではないかと想像します。速力も「伊勢級」は25ー26ノットで、ほぼ同等。戦艦出自ですので、防御力の備わった「隼鷹級」と考えるべきかも。しかし、標準的な艦隊空母としての運用は可能だったのではないでしょうか?)

結論としては、この案では改造工期が一年半ほどかかり、その間、資材の分配等から他の新造空母の建造工事にも影響が出るとして見送られ、結果的にはより短工期で完了する航空戦艦としての改造を受けることなったのです。

 

航空戦艦として

ミッドウェー海戦には「伊勢級」戦艦の2隻は第一艦隊(連合艦隊主力)の一員として出撃しますが、実はこの時期に「日向」の五番砲塔が爆発事故で失われており、砲塔基部に蓋をしてその上に対空兵装を設置するなどの臨時処置がとられていました。

これもありいずれにせよ修理が必要とされていた「伊勢級」戦艦は喪失空母の補完計画に優先的に組み入れられ、やがて「航空戦艦」への改造が決定されたわけです。

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(直上の写真は伊勢級航空戦艦の概観:172mm in 1:1250 by Delphin)

航空戦艦に改造された「伊勢」と「日向」は、それぞれ22機の水上機「瑞雲」、もしくはカタパルト射出用に補強された機体を持つ「彗星艦爆」を搭載する予定で、空母「隼鷹」「竜鳳」と共に第四航空戦隊を編成し、4隻で132機の艦載機を運用する部隊となる予定でしたが、肝心の航空隊が台湾沖航空戦に投入されて消耗してしまい、部隊として出撃する機会は太平洋戦争中にはついにありませんでした。第四航空戦隊自体は小沢機動部隊の一員としてレイテ沖海戦に参加しましたが、参加艦艇は対空戦闘能力を買われた「伊勢」「日向」のみで、両艦ともに艦載機を持たない出撃となりました。

 

伊勢級」航空戦艦:小西製作所モデルの入手

これまで筆者が保有していたのは上掲の写真にあるDelphin製のモデルでしたが、最近、小西製作所製のモデルを入手しました。

小西製作所について

www.konishimodel.sakura.ne.jp

小西製作所は上掲のHPで見ていただけるように金属製の各種モデルを製作していらっしゃる会社ですが、筆者的には1:1250スケールの唯一の金属製モデルを製作している日本メーカーという存在です。これまで「大和」就役時モデル(三連装副砲塔4基搭載形態)、「高雄級」重巡洋艦(筆者コレクションでは、同級は4隻とも小西製作所製じゃないかなと記憶します)や、「妙高級」重巡洋艦の竣工時のモデルなど、主として旧日本海軍を中心にいくつか筆者も保有させていただいています。

細部が非常に精密に再編されており、筆者のコレクションの中枢を占めるNeptun製モデルとも遜色はないと思っています。両者の対比で言うと、Neptunモデルの唯一の弱点とも言うべき曲がりやすい砲身が、小西製の場合には曲がる心配をしなくていい、という大きなアドバンテージを持っていらっしゃると言っていいと思います。

しかし全般に流通量が少なく、Ebay等でもかなり高価で取引されている為、なかなか筆者のようなコレクターには入手が困難だったりします。(正価を出す覚悟があれば、国内ですのでオンラインショップで容易に直接入手ができるんですけどね。まあ、そこは筆者事情で財布との相談もありますし。筆者の「妙高級」竣工時のモデルは確か直接購入したものだったはずです)

妙高級」竣工時のモデル

(直上の写真は、小西製作所製の「妙高級」重巡洋艦の竣工時(「羽黒」の名称でカタログには載っているのでは?)の概観。166mm in 1:1250 by Konishi:下の写真は小西製作所製妙高級」重巡洋艦の竣工時の細部。「古鷹級」と同様、当時の魚雷の強度を考慮し、魚雷発射管は船体内に搭載されています(上段写真の舷側の発射管口。こう言うのがとても嬉しいのです): 下段写真は航空艤装。当初からカタパルトを装備していました。水上偵察機を2機収納できる格納庫はカタパルトの手前の構造物) 


小西製航空戦艦「伊勢」のモデル

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(直上の写真は小西製作所製 「伊勢級」航空戦艦の概観:179mm in 1:1250 by Konishi)

全体的にしっかりとしたフォルムで、細部も細かく再現されています。小西製作所のモデルは全般に「骨太」な気がします

 

Neptunモデルとの比較

Delhpinとの比較

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(Delhpin製「伊勢級」航空戦艦(奥)とNeptun製「伊勢級」戦艦の比較:Delphin製モデルはやや小ぶりで、細部の再現は簡素化されています)

小西製作所モデルとの比較

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(小西製作所製「伊勢級」航空戦艦(奥)とNeptun製「伊勢級」戦艦の比較:同スケールの表記ですが、小西製作所のモデルは全体的に大柄です)

結論からういと、Neptun製のモデルを基準として対比をした場合には(Neptunを基準としているのは筆者のコレクションがNeptun製を中心に構成されているためで、評価等の優劣を意味しているわけではありませんのでご注意を)、Delphin製モデルは全体のサイズはほぼ同寸ながら、やや小ぶりな印象を受けます。かつ細部の再現性はDelphinがやや簡素に省略されている、と言う感じでしょうか?

一方で小西製モデルは、再現性は遜色ないものの、全体的にも煙突や前檣などの各パーツもやや大柄ということになろうかと思っています。f:id:fw688i:20230311205931p:image

(前檣の再現の比較:Neptun製(上段)、Delphin製(中段)、小西製作所製(下段):Delphin製モデルはやや再現が簡素化されてるのがわかると思います)

結局は好みの問題、ということだと思います、と言うと実も蓋もないのですが、後はNeptun・Navisトータルでの第一次世界大戦期から第二次世界大戦期にかけてのラインナップの豊富さは、その再現性も含めやはりコレクションのベースとして考えると一つ頭が抜けている、そんな感じでしょうか?

 

おまけ:航空戦艦「扶桑」(作ってみた:計画はあったようですが、架空艦です)

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(ちょっと作ってみたの類ですが、航空戦艦「扶桑」です。主砲塔は前部寄りの3基のみ。航空機の搭載方法や射出方法は「伊勢級」航空戦艦と同じ、と言う想定です。ベースとなっているモデルはSuperior製のモデルなので、基本的にスケールは1:1200で、少し大きい。四番主砲塔後は対空砲砲座群と航空指揮所、と言う想定です)
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と言うことで、今回はこの辺りで。

 

次回は新着モデルのご紹介、もしくは始動した八八艦隊のモデル・リニューアル計画の進捗のお話などを、と考えています。

もちろん「ピカード ・シーズン3」のお話も。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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