相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

ワイマール共和国期のドイツ海軍旧式戦艦のモデル更新、そしてシン・ウルトラマン

本稿の読者ならばよくご承知のことと思いますが、先週の金曜日で「スター・トレック ピカード  シーズン2」が終わってしまいました。筆者としては「スター・トレック」ファンのみならず、全ての方に見ていただきたい大変クオリティの高いドラマシリーズで、ドラマとしてのクオリティもさることながら、テーマ自体がわれわれにとって「大切ななにものか」を伝えてくれる、そんな思わず背筋が伸び、見終わると姿勢が良くなっているような、そんなシリーズだったと思っています。

それが終わってしまった、ああ、これから金曜日はどうすればいいんだ、というのが前回のお話の冒頭だったのですが、世の中はよくしたもので(というか筆者が大変幸運に恵まれているのかもしれませんが)、今週末から「シン・ウルトラマン」が公開されています。

今回はそのお話と、本稿の下記の回でご紹介したモデルのアップデート問題に端を発して、さらにその発展系の新着モデルが届きましたので、そのご紹介を。

fw688i.hatenablog.com

上記の回のお話を少しかいつまんでおくと、ドイツ帝国の旧式な前弩級戦艦の艦級コレクションを例に引いて、筆者がこれまで1:1250スケールモデルとしては最も高品質な銘柄の一つと位置付けていたNavis製のモデルですら、新旧のヴァージョンでその品質(ディテイルの再現性など)に大きな差異が見受けられ、知ってしまうと更新せざるを得ない気持ちに駆られ、いつまで経ってもコレクションが完成しない、という悲鳴に近い嗜虐的な「喜び=興味」の話をご紹介したのでした。

そしてそのお話の延長上で、いくつかのより高品質なモデルが入手できたので、そちらをご紹介しておこう、今回はそういうお話です。

 

と言うことなのですが、さていつものように本題の前に、今週の時事ネタ、というか映画「シン・ウルトラマン」のお話を。

映画「シン・ウルトラマン

youtu.be

上掲の予告編でもお分かりのように5月13日公開の映画です。

 

(さてここからは例によってネタバレは大いに予測されます。、もう気にしません。ネタバレ、あります、きっと)

***(ネタバレ嫌な人の自己責任撤退ラインはここ:ネタバレ回避したい人は、次の青い大文字見出しに「engage!」)***

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Star Trek: Picard - Engage! - Episode 3 finale - YouTube

(おお、ピカード 再登場です!)

 

 

この映画は、その表題からも明らかなように「シン・ゴジラ」に続き庵野秀明氏総監修の「空想特撮映画」。早速映画館へ行ってきました(実は2回見ちゃった)。

もう最初のカットから、なんと盛りだくさんな内容の映画だったことか。盛り沢山すぎて、最初はなにやらパロディ的なものを見ているのか、そう思ったほどでした。「シン・ゴジラ」のDNAを受け継いで、もちろん特撮や細部のリアリティ(一見、リアリティ?=ニヤッとするような)には、思わず唸らせられるシーンが散りばめられていますし、凄いテンポで進む物語も「シン・ゴジラ」から受け継がれています。それでいて「子供の頃の」何かを受け取ってしまう、そんな映画でした。もちろん映像のそこここに「エヴァ」の血を受け継ぐカットが。

 

見終わって最初に思ったことは、「何度か見なきゃ」でした。

筆者は家族によく言われるのですが「同じものを、気に入ったら何度も観る」習性があるようです(自覚もしています、ちゃんと)。これもコレクターの性でしょうかね。そして観るたびに発見があるのです、それも驚くほどの(記憶力が弱いだけ、かも。危ない危ない)。それが愉しい。

この映画も見る度に異なる何かを与えてくれる、そんな映画じゃないかな、というのが実は強烈な第一印象、でした。それはいわゆる「胸を揺さぶるような感動」などとは少し異質の、強いて言うなら「新しい何かを見つけた」時の気持ちに近い何か。

 

とにかく「お勧め」です。しかし決して物事をじっくりと考えさせるような、そんな「思索的な深さ」を強要するような物語ではありません。見る側は物語の流れに素直に乗っかってゆけば良い、それでも与えてもらった何かがじっくりと胸の中で成長していくような、そんな映画だと思うのです。

キャストやストーリーのディテイルについて書きたいことは山ほどありますが、これをすると意図的な「ネタバレ」になってしまうので、じっと、しばらくの間は堪えることにします。

(映画のパンフレットには「ネタバレ注意」と言う帯封がされています。何を語ろうとも、ネタバレにはなっちゃうんだろうなあ)

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次は「シン・仮面ライダー」だそうです。実は筆者は「仮面ライダー」についてはほとんど思い入れがなく、あまり興味がないなあ、と思っていたのですが、やはりこのシリーズ(なのかな?)であれば、見にいくでしょうね。

 

 

さてここからが今回の本題。

ワイマール共和国期のドイツ海軍主力艦(Neptun社製のモデルを入手)

少しおさらいを。

第一次大戦前には英国に次ぐ世界第2位の規模の大海軍を誇っていたドイツは、敗戦後のヴェルサイユ条約で装甲を持つ軍艦としては旧式の前弩級戦艦6隻(予備艦を入れて8隻)しか保有を許されず、沿岸警備海軍へと転落しました。

その際に保有を許されたのがブラウンシュヴァイク級」戦艦5隻(「ブラウンシュヴァイク」「エルザス」「ヘッセン」そして予備艦として「プロイセン」「ロートリンゲン」)と「ドイッチュラント級」戦艦3隻(「ハノーファー」「シュレージエン」「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」)でした。

上掲の回ではこれらニ艦級に加えドイツ帝国海軍時代からの前弩級戦艦全てのモデルのアップデート等をご紹介したのですが、今回は「シュレージェン」と「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」のNeptun社製モデルが入手でき、「ブラウンシュヴァイク級」のNavis社製モデルとあわせてクオリティが揃ったので、そちらをご紹介します。

 

建造年代の古い順に、まずは「ブラウンシュヴァイク級」のご紹介から。(この艦級については、ほぼ上掲でのご紹介のまま。新旧モデルの比較はカットしています

ブラウンシュヴァイク級」戦艦(1904- 同型艦5隻)

ja.wikipedia.org

(1904-, 14394t, 18knots, 11in *2*2, 5 ships)

就役時:Navisモデル(NM 11N)

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(「ブラウンシュヴァイク級」戦艦の概観:102mm in 1:1250 by Navis: ようやく実用化がかなった11インチ速射砲を主砲として採用したため、大型の主砲塔を搭載しています)

同級は英海軍との戦闘、つまりバルト海だけではなく北海での運用を想定して設計された艦級です。最大の特徴は実用化された速射砲としては当時最大口径の新開発11インチ速射砲を主砲として採用したことで、さらに副砲の一部を砲塔形式で搭載し、射界を大きくしています。

第一次世界大戦期には、既に二線級戦力と見做され、主として沿岸防備任務につきました。「ヘッセン」のみは英独の決戦であったユトランド沖海戦に参加しています。1917年に補助艦艇に艦種が変更となりましたが、敗戦後、ベルサイユ条約で同級の「ブラウンシュヴァイク」「エルザース」「ヘッセン」の3隻保有が認められ、ワイマール共和国海軍では主力艦とされました。

 

ヴァリエーション・モデルのご紹介 その1

ワイマール共和国海軍時代:1932年の「ヘッセン」(Navis新モデル(NM 11R))

このお話の発端ともなった新たなNavis社のモデルです。

前述のようにベルサイユ条約で、同級は保有を認められましたが、既に第一次世界大戦期にあっても旧式艦であったので、いずれは沿岸警備艦として近代化改装される計画がありましたが、やがてナチスの台頭と再軍備宣言で新型主力艦の建造に注力されたため、大々的な改装は行われませんでした。

同級のネームシップである「ブラウンシュヴァイク」は1932年に、「エルザース」は1936年にそれぞれ破棄され、第二次世界大戦には参加しませんでした。

下の写真は1932年次にワイマール共和国海軍の主力艦であった当時を再現したモデルで、艦橋構造が変更されているのが分かります。

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1905年次モデル(左列)と1932年次モデルの比較

(艦橋と前檣・後檣の構造の差異が目立ちます)

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ヴァリエーション・モデルのご紹介 その2

標的艦ヘッセン

同級はナチスの台頭と共に再軍備宣言が行われると新型艦の就役に伴い順次退役し1930年代に解体されました。「ヘッセン」のみは標的艦として残され、第二次世界大戦では砕氷船としても運用されました。

標的艦となった「ヘッセン」の概観:by Mercator)

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ドイッチュラント級」戦艦(1906- 同型艦5隻)

ja.wikipedia.org

(1906-, 13200t, 18.5knots, 11in*2*2, 5 ships)

就役時:Navis新モデル(NM 10N)

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(「ドイッチュラント級」戦艦の概観:106mm inn1:1250 by Navis: ようやく実用化がかなった11インチ速射砲を主砲として採用したため、大型の主砲塔を搭載しています)

同級はドイツ帝国海軍が建造した最後の前弩級戦艦です。前級「ブラウンシュヴァイツ級」と同一戦隊を組むという前提で建造されたため、基本設計は前級に準じた、前級の拡大改良版です。前級が武装過多から安定性に欠けるという課題を指摘されたため、同級では艦橋の簡素化や副砲塔の廃止が行われました。

1906年から1908年にかけて就役し、前弩級戦艦としては最新の艦級でしたが、就役時には既に弩級戦艦の時代が到来して旧式艦と見做されていました。

第一次世界大戦の最大の海戦であったユトランド沖海戦には第二戦艦戦隊として同級の5隻と「ブラウンシュバイク級」の「ヘッセン」が序列され、英戦艦隊の追撃を受け苦戦していたヒッパー指揮のドイツ巡洋戦艦戦隊の救援に出撃しています。この救援戦闘で同級の「ポンメルン」が英艦隊の砲撃で損傷し、その後英駆逐艦の雷撃で撃沈されました。

前級と同様に1917年には戦艦籍から除かれました。ネームシップの「ドイッチュラント」は宿泊艦となり状態不良のまま1922年に解体されました。

残る「ハノーファー」「シュレージエン」「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」が新生ドイツ海軍で保有を許され、その主力艦となったわけですが、1930年代に上部構造や煙突の改修などの近代化改装を受けて、艦容が一変しています。

 

ヴァリエーション・モデルのご紹介 

ワイマール共和国海軍時代の「シュレージエン級」戦艦(Neptun製)

(今回入手したNeptun製の「シュレージエン」(手前、下段右)と「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」:NeptunとNavisはいわゆる姉妹銘柄で、原則として第一次世界大戦期周辺のモデルをNavis銘柄で、第二次世界大戦期周辺をNeptun銘柄がカバーしています)

前述のように、同級はヴェルサイユ条約保有を認められ、第一次大戦で戦没した「ポンメルン」と状態不良の「ドイッチュラント」を除く「ハノーファー」「シュレージエン」「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」の3隻がワイマール共和国海軍(新生ドイツ海軍)に編入されました。

ネームシップの「ドイッチュラント」が上述のように状態不良により既に除籍されていたため、この3隻を「シュレージエン級」と呼ぶことが多いようです。

その後ヒトラー再軍備を宣言し新造艦艇が就役し始めると同級は練習艦に艦種変更されました。

同級のうち「ハノーファー」は1931年に除籍され無線誘導式の標的艦への改造が計画されましたが実行はされず、爆弾の実験等に使用された後、1944年頃に解体されました。

 

近代化改装後の「シュレージエン」(Neptun製モデル)

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(近代化改装後の「シュレージエン」の概観 by Neptun):

「シュレージエン級:ドイッチュラント級」の残る2隻「シュレージエン」と「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」は、第二次世界大戦期には練習艦として就役していて、主としてバルト海方面で主砲を活かした艦砲射撃任務等に従事し、緒戦のドイツ軍のポーランド侵攻では「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」のポーランド軍のヴェステルブラッテ要塞への砲撃が第二次世界大戦開戦の第一撃となったとされています。その後も主砲力を活かした地上砲撃等の任務に運用され、東部戦線での退却戦の支援艦砲射撃等を行っています。大戦末期には「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」は空襲で、「シュレージエン」は触雷でそれぞれ損傷し、自沈処分とされました。

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(上の写真はこれまで本稿でご紹介した際の同艦のHansa製モデル)

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(直上の写真は「シュレージェン」のNeptun製モデルとHansa製モデルの比較)

細部の再現性には両者でかなり差があるようです。Hansa製のモデルももちろん標準以上のディテイルを備えているモデルだとは思いますが、やや骨太に表現されすぎているように思います。Neptun製はそれを凌駕した繊細なディテイルで表現されているように感じます。下に紹介する「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」も同様です。

 

近代化改装後の「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」(Neptun製モデル)

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(近代化改装後の「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」の概観 by Neptun:「シュレージエン」と異なり一番煙突に誘導路が設けられ2番煙突との集合煙突になったことがわかります)f:id:fw688i:20220515091834p:image

(上の写真はこれまで本稿でご紹介した際の同艦のHansa製モデル)

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(直上の写真は「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」のNeptun製モデルとHansa製モデルの比較:ディテイルの繊細さではNeptun製モデルに「一日の長」が)

 

標的艦への改装後の「ハノーファー(Neptun製:モデル未入手)

(直下の写真は「ハノーファー」の標的艦仕様のモデルの概観(筆者は保有していません):実際にこの形態になったのかどうかは、不明です。こちらいつもモデル検索でお世話になっているsammelhafen.deから拝借しています。by Neptun:Neptunからモデルが出ているということは、実艦が存在したということかな?)

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というわけで、今回「シュレージェン」と「シュレスヴィヒ・ホルスタイン」両戦艦(当時は練習艦)のNeptun製モデルの入手を機に、ワイマール共和国期のドイツ海軍が主力艦として保有していた旧式前弩級戦艦の艦級を再度ご紹介しました。

 

ということで、今回はこの辺りで。

 

次回は、今回の流れを受けてもう一度モデルのヴァージョンアップ対応の進捗のお話を、ドイツ帝国装甲巡洋艦と一部の巡洋艦のモデルの状況を中心に、ご紹介したいと思っています。いつものように、筆者の予告編は、あまり当てになりませんが。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

 

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