相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

第二次世界大戦期のアメリカ戦艦(その1)

本稿では、主力艦の変遷を追う、と言いつつも、肝心の各国「主力艦」について、表題のようなまとめを行なってこなかった事に、はたと気がつきました。

これも最近の興味領域である「ロイアル・ネイヴィーの駆逐艦」発達史のミニコーナーを行なっている波及効果かと。併せて件の「ロイアル・ネイヴィーの駆逐艦」については、未だにモデル収集を並行して行なっているので、少し「箸休め」的におさらいをする事にします。

 

第二次世界大戦期のアメリカ戦艦

今更ながら、大きなタイトルですね。

アメリカ海軍は第二次世界大戦に、日本海軍の真珠湾奇襲攻撃以降、参加するわけですが、参戦当時の艦級としては、以下の通りでした。

 

ワイオミング級:2隻:12インチ砲12門装備(参加緩急の中では唯一の弩級戦艦ですね)

ニューヨーク級:2隻:14インチ砲10門装備(米海軍初の超弩級戦艦ですね)

ネバダ級:2隻:14インチ砲10門装備(いわゆる標準型戦艦の基本スペックが決まった艦、と言ってもいいのでは?)

ペンシルバニア級:2隻:14インチ砲12門装備

ミシシッピ級:3隻:14インチ砲12門装備

カリフォルニア級:2隻:14インチ砲12門装備

コロラド級:3隻:16インチ砲8門装備(いわゆるビッグセブンの一角)

そして大戦中に、以下の艦級が就役し戦列に加わります。

ノースカロライナ級:2隻:16インチ砲9門装備(速力が27ノットに)

サウスダコタ級:4隻:16インチ砲9門装備

アイオア級:4隻:16インチ砲9門装備(速力は空母機動部隊への帯同を想定して、なんと33ノットと巡洋艦なみに)

そしてこれら以外に、未成艦・IF艦として、以下の艦級をご紹介。

サウスダコタ級(1920年計画):16インチ砲12門(ワシントン条約で建造中止)

レキシントン級:16インチ砲8門(ワシントン条約で建造中止、2隻のみ航空母艦として完成。アメリカ海軍唯一の巡洋戦艦です)

ノースカロライナ級14インチ砲搭載計画:14インチ砲12門

改アイオア級:アイオア級の改良版

モンタナ級:16インチ砲12門搭載(アイオア級の拡大型ですね)

 

とこうして改めてリストにしてみると、やはりその数の多さに圧倒されます。特に大戦中、つまり戦時に就役した艦が10隻もある、と言うことが驚きで、改めて国力の強大さを感じます。

これらの戦艦群を2回に分けてご紹介してゆきます。

今回は、前半の「標準型戦艦」のお話を。

 

標準型戦艦の時代

アメリカ海軍は艦隊決戦に臨み、主力艦の性能を標準化しています。具体的には主砲の口径は14インチ砲、速力は21ノットで統一し、会戦にあたり統一指揮のもとに行動できる、と言うことを目指しています。当時、列強では主力艦の機動性を高めた巡洋戦艦を併用し、有力な補助戦力として活用する傾向がありましたが、米海軍は巡洋戦艦の設計にはほとんど関心を持たなかったようです。統一スペックで標準化された船を数多く揃えれば、最終的には勝利を得られる、と言う思想が窺え、これは艦船に限らず、その他の兵器でも(戦車や、航空機、火器)色濃く見られる傾向ではないかと考えています。

かと言って、各艦級が平凡な性能だったかと言うと、決してそうではなく、常に設計当時の最新技術が常に盛り込まれる努力が行われていたことは、間違いありません。ただ、設計に大きな飛躍がなく、物量的な劣勢から常に数的劣性を想定せねばならず、個艦性能で他国を凌駕することで、この劣勢への対応を目指さざるを得なかった日本海軍とは、ある意味対局の構想を持っていたと言えるかと考えています。どちらが設計の王道かと言えば、答えば明らかかも。

 

ワイオミング級(同型艦:2隻)

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Wyoming-class battleship - Wikipedia

(1912-,  27,243t, 20.5knot, 12in *2*6, 2 ships)(137mm in 1:1250) 

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 第二次世界大戦に参加した唯一の弩級戦艦の艦級です。米海軍の弩級戦艦としては最終形にあたり、12インチ連装砲塔を6基装備していました。速力は就役時には石炭・重油混焼缶と直結タービンの組み合わせで20.5ノットでしたが、その後の近代化改装で21ノットの標準速度となりました。

ロンドン条約ではワイオミングは練習戦艦として保有が認められ、主砲搭載数の削減、舷側装甲の撤去などが行われました。真珠湾奇襲攻撃で、太平洋艦隊の戦艦群に大きな損害が出て、急遽太平洋に回航されましたが、ワイオミングは兵装撤去等が進行していて、戦艦としての復帰には工数が掛かるため、アーカンソーのみ、第二次近代化改装を受け戦艦として戦列に復帰し、大戦を戦い抜きました。

(近代化改装後のモデルは未保有です。どこかで調達できればアップします)

 

ニューヨーク級同型艦:2隻)

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New York-class battleship - Wikipedia

(1914-, 27,000t, 21knot, 16in *2*5, 2 ships)

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米海軍初の超弩級戦艦で、前級ワイオミング級の設計をベースに45口径14インチ連装砲塔を5基搭載していました。機関は燃費と航続距離(西海岸からフィリピンまで航行できる)への考察からレシプロ機関を採用し、21ノットを発揮しました。

第一次世界大戦期には、米海軍最新・最強の戦艦でありながら、ややコンパクトに纏め過ぎた設計と、海面近くの開口部の多さから、凌波性に課題があるとされ、余り活躍できませんでした。第二次世界大戦期には対空火器の大幅な増強と、レーダーの搭載により、船団護衛や火力支援任務で活躍しました。

両艦とも大戦を生き抜き、テキサスは記念艦として保存されています。

(近代化改装後のモデルは調達中。なかなかうまく入手できません。入手次第、アップします)

 

 ネバダ級(同型艦:2隻)

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Nevada-class battleship - Wikipedia

(1916-, 27,500t, 20.5knot, 14in *3*2 + 14in *2*2, 2 ships)(142mm in 1:12501 by Navis)

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前級で 採用した14インチ砲を新開発の3連装砲塔と連装砲塔の組み合わせで艦首と艦尾に背負い式で搭載し、前級「ニューヨーク級」と同様主砲10門の搭載としました。背負い指揮配置により、集中防御方式を採用した最初艦級です。本来なら3連装砲塔4基12門の搭載艦とする希望もあったようですが、予算面で3連装と連装の混載となったようです。

主機の燃料を初めて重油のみとし、機関はレシプロ(オクラホマ)とタービン(ネバダ)を1隻づつに搭載し、ある種の実用実験を行っています。

米海軍は同級から「標準型戦艦」(長距離射撃・21ノットの速力・700ヤードの行動半径・ダメージコントロールの改善)の展開を開始しています。

 

第一次改装(1927-29)

射撃システムの更新に伴い、艦橋構造が籠マスト方式から三脚式に改められ、射撃方位盤室がそれぞれの頂上に設けられました。
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 (by Neptun:「オクラホマ」は上記の姿で真珠湾攻撃を受け横転沈没しました)

 同級の両艦は、ともに日本海軍の真珠湾奇襲の際に攻撃を受け、「オクラホマ」は転覆沈没し、「ネバダ」は損傷しましたが故意に座礁し、損害の拡大を防ぐことができました。

オクラホマ」は復旧が断念されましたが、「ネバダ」は損傷回復の際に大規模な改装を受け、艦容を一変させました。

 

ネバダ」最終改装時(1942)

舷側の副砲を廃止し、対空・対艦射撃の可能な砲塔式の両用砲に換装しています。更に、上部構造物をコンパクトにまとめています。この姿でノルマンディー上陸作戦の支援砲撃に参加し、後に太平洋戦線で硫黄島・沖縄の上陸作戦に参加しました。沖縄戦では、日本陸軍の特攻攻撃を受け損傷しました。
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 (by Neptun:「ネバダ」最終改装時の姿)

 

ペンシルバニア級(同型艦:2隻)

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Pennsylvania-class battleship - Wikipedia

(1916, 31,400t, 21knot, 14in *3*4, 2 ships)(147mm in 1:1250 by Navis)

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「標準型戦艦」の第二弾。主砲塔を全て前級からの懸案であった3連装砲塔とし、12門の主砲をコンパクトに搭載し集中防御を進めています。この主砲兵装の強化に伴い、艦型が拡大し、初めて30000トンを超えた大型艦となり、就役当時は世界最大の戦艦でした。前級での比較実証実験の成果から、この艦以降、機関は直結タービンを採用し、4軸推進から21ノットの速力を得ています。

 

第一次改装(1927-29)

射撃システムの更新に伴い、艦橋構造を三脚式に改められ、射撃方位盤室がそれぞれの頂上に設けられました。同級は太平洋戦争開戦時、太平洋艦隊に所属し、「ペンシルバニア」は同艦隊の旗艦を務めていました。両艦ともに日本海軍の真珠湾攻撃にさらされました。

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 (by Neptun:「アリゾナ」はこの姿で真珠湾攻撃の際に爆沈しました)

アリゾナ」がその際に爆沈したことはあまりにも有名ですが。「ペンシルバニア」も損傷を受け、その後、修復に伴い大規模な改修を受けましたが、損傷程度が他の艦ほどには大きくなく、ある程度原型を留めて形で戦線に戻されました。

 

ペンシルバニア最終改装時(1942)

舷側の副砲を廃止し、対空・対艦射撃の可能な砲塔式の両用砲に換装しました。前部の三脚マスト構造等は残されています。

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 (by Superior)

(by Neptun)

 

ニューメキシコ 級(同型艦:3隻)

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New Mexico-class battleship - Wikipedia

(1918-,  32,000t, 21knot, 14in L50 *3*4, 3 ships)(152mm in 1:1250 by Navis)

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「標準型戦艦」の第三弾。主砲は前級同様3連装砲塔4基を艦首・艦尾に背負い式に配置した形式を継承していますが、口径を50口径に強化し、併せて主砲塔の設計も一新されています。艦首の形状を凌波性に優れたクリッパー形式とし、艦型が洗練されています。機関は前級同様、直結蒸気タービンの4軸推進としましたが、「ニューメキシコ」 のみ、ターボ電気推進(タービンにより発電し、その発生電気で推進モーターを回す)の試験艦とされました。速力は両形式とも「標準型戦艦」の21ノットでした。

採用された50口径14インチ砲は、高初速により射程距離と高い貫徹力を得た一方で、3連装砲塔の狭い砲身間隔の影響で散布界に課題が残りました。

 

第一次改装(1931-33)

改装時に主砲が散布界改善のためにやや初速を抑え、一方で射程距離確保のために仰角を上げたMk7の50口径14インチ砲に換装されました。射撃システムの更新に伴い、籠マストが撤去され、艦橋構造が塔構造に改められました。このため、他の米戦艦とは大きく艦容が異なっています。これは同時に遠方からの視認性を低める効果を狙ったともされています。 

機関はこの改装の際に、全てタービンに統一されました。タービンも換装され、出力の向上に伴い速力は21.8ノットに向上し、航続距離が伸びています。

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 (by Neptun)

同級は、太平洋戦争開戦時には大西洋に配置されており、真珠湾奇襲での損害は受けませんでした。その後ダメージを受けた太平洋艦隊の戦力回復のために太平洋戦線に回されました。

同級の「ミシシッピ」は、レイテ沖海戦においてオルデンドルフ部隊に所属し、史上最後のし主力艦同士の砲撃さんに参加しました。同級は三隻とも第二次世界大戦を生き抜いています。

 

テネシー級(同型艦:2隻)

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Tennessee-class battleship - Wikipedia

(1919-, 32,600t, 21knot, 14in L50*3*4,2 ships)(152mm in 1:1250 by Navis) 

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「標準型戦艦」の第四弾。「ニューメキシコ 級」の改良型で、就役時から籠マスト上に射撃指揮装置が設置され、火器管制システムが強化されていました。機関には前級「ニューメキシコ」 でテストされていた電気推進式タービンを採用し、「標準型戦艦」の21ノットを確保ています。

太平洋戦争開戦時には同級の両艦ともに太平洋艦隊に所属し、共に日本海軍の真珠湾攻撃を受けました。両艦ともに損傷し、「カリフォルニア」は大破着底する程の損害を受けています。両艦は「カリフォルニア」の修復に合わせて大改装を受け、艦容が一変しています。

 

最終改装時(1942)

水雷防御強化の一環と、安定性の強化を目的として巨大なバルジを両舷に追加しています。舷側の副砲を廃止し、対空・対艦射撃の可能な砲塔式の両用砲に換装されたほか、多数の対空火器が搭載され、対空火器の管制システムの搭載等のため上部構造はほとんど全て作り替えられ、コンパクトで洗練された姿になりました。

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 (by Neptun)

 前述の「ミシシッピ」同様、「カリフォルニア」「テネシー」共にレイテ沖海戦のスリガオ海峡海戦で、日本海軍の西村艦隊との史上最後の主力艦同士の砲撃戦に参加しています。

2隻ともに、特攻機の攻撃等で損傷を受けたものの、太平洋戦争を戦い抜きました。

 

コロラド級同型艦:3隻)

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Colorado-class battleship - Wikipedia

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(1921-, 32,600t, 21knot, 16in *2*4, 3 ships, 152mm in 1:1250 by Navis)

「標準型戦艦」の最終形。米海軍は、日本海軍の長門級建造の詳報を得ると、テネシー級改良型として建造する予定であったコロラド級戦艦の搭載砲を急遽16インチ砲に変更し建造しました。ワシントン条約では、この3隻は保有を認められ、英海軍の「ネルソン級」2隻、日本海軍の「長門級」2隻と合わせ、16インチ砲を搭載した世界で最も強力な7隻の戦艦、「ビック・セブン」として知られる存在となりました。

上記仕様に明らかなように主砲口径を長門級に同等にした以外は、速力、装甲の厚さなどの防御力は基本仕様はテネシー級と変わらず14インチ砲搭載艦と同等のままではありましたが、米戦艦は設計の基本が堅牢性に配慮されたものになっており、特に大きな課題ではなかったと考えてもいいのかもしれません。

前級同様、ターボ戦記推進を採用した機関は「標準型戦艦」の指定速度21ノットを発揮しました。

 

コロラド・メリーランド最終改装時(1942)

ネームシップの「コロラド」は1941年夏に大規模な改修を行い、後部の籠ますとを撤去し塔状の構造物に改めるなどしています。

太平洋戦争開戦時、「ウエスト・バージニア」と「メリーランド」は共に太平洋艦隊所属で真珠湾日本海軍の攻撃を受けました。

損傷復旧にあたり、比較的損害の軽微だった「メリーランド」は「コロラド」に準じた改装を受けています。

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 (by Neptun: 前部の籠マストは面影が残っていますね。二本煙突もそのままですので、比較的、変わらなかった方ですね)

 

 エスト・バージニア最終改装時(1944) 

「ウエスト・バージニア」は魚雷を複数受け、着底していますが、その後浮揚され、「カリフォルニア級」の2隻同様の大規模な復旧を受けました。両舷に大型のバルジをつけ安定性の向上と雷撃に対する防御を充実させ、兵装面では舷側の副砲を廃止し、対空・対艦射撃の可能な砲塔式の両用砲に換装したほか、上部構造物をほぼ全面的に作り替えるなどして、コンパクトな艦容に改められました。

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 (by Neptun:艦容一変。サウスダコタ級に似ていますね)

 本級の「メリーランド」「ウエスト・バージニア」は、レイテ沖海戦にレイテ上陸部隊支援任務のオルデンドルフ部隊に参加し、スリガオ海峡海戦で、日本海軍の西村艦隊との史上最後の主力艦同士の砲撃戦に参加しています。

特攻機などによる小さな損傷は受けたものの、3隻とも大戦を生き抜きました。

 

と、こうして米海軍のいわゆる「標準型戦艦」を見てきたわけですが、このグループは、大西洋艦隊に所属していた「ニューメキシコ 級」の3隻を除き、大半が太平洋艦隊に所属していました。緒戦、日本海軍がその大戦果を華々しく謳った真珠湾攻撃で大損害を受けたにもかかわらず、最終的には、喪失艦はわずか2隻に過ぎませんでした。しかもその2隻はいずれも真珠湾で沈没した艦で、つまりその後の海戦では一隻も失われていないわけです。 

設計から来る生存性の高さ、なのか、ダメージ・コントロールなどの人的要件も含め技術的な基礎力の高さ、なのか。

あるいは日本海軍が諦めが良すぎるのか・・・。

 

ということで今回はここまで。

 

次回は、多分、この続きをやります。新戦艦の時代に建造された艦級と、計画のみに終わった未成艦、そこから着想を得た架空艦のご紹介をおさらいする予定です。

これら以外に、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、いつでも大歓迎です。是非、お知らせください。

 

併せて模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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