相州の、1:1250スケール艦船模型ブログ 主力艦の変遷を追って

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

ロイアル・ネイヴィーの新着モデルとあれこれ

今回は前回からの流れでロイアル・ネイヴィーの新着モデルとその関連、そういうお話を少々。

 

前回の「第一次世界大戦期の英国(ロイアル・ネイヴィー)の駆逐艦」の4艦級で欠けていた「S級」が到着しましたので、まずはそのご紹介から。(以下の項は、前回分にも反映しておきます)

 

2本煙突駆逐艦時代の到来

S級駆逐艦(初代)(同型艦:準同型艦67隻) 

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(「アドミラルティS級」の概観:67mm in 1:1250 by Navis)

 「S級」駆逐艦は艦数の急速な整備という要求に応えるために、「アドミラルティR級」(2本煙突)をベースに量産された艦級です。艦首形状をシアとフレアを強めたものとして乾舷をより高くし凌波性を高めています。1000トン級の船体を有し、兵装は基本従来艦級のものを継承していましたが、従来の標準装備である53.3cm連装魚雷発射管2基に加え、45cm単装魚雷発射管を艦橋両側に装備していました。

 

以下のサブ・クラスが含まれています。

アドミラルティS級:55隻
ヤーロウS級:7隻
ソーニクロフトS級:5隻

サブ・クラスのそれぞれの特徴を少し。

「ヤーロウS級」はヤーロウ社の設計の特徴である縦横比の大きな船体を持ち、機関は直結タービンを搭載していました。
「ソーニクロフトS級」の最大の外観的な特徴は1番主砲を台座の上に装備したことと、艦橋を後ろにずらせたことでしょう。

 

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(「アドミラルティS級」の武装配置:基本的な配置は「改R級」と変わりませんが、特に「S級」に場合は、艦橋脇に45cm単装魚雷発射管を両舷に1基づつ設置したことです。艦尾の探照灯台が2番連装発射管上に装備されているのは、実際にはどうなっていたんでしょうか?図面で見てもそうなので、発射管の回転軸上に探照灯台があったのかな?) 

第一次世界大戦終結までに20隻が就役し、大半が1930年代に売却されていますが、11隻が第二次世界大戦時に参加、7隻が生き残りました。

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アドミラルティR級アドミラルティS級の比較)

 

第一次世界大戦期の英海軍駆逐艦総覧

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(今回ご紹介した4艦級:手前からアドミラルティM級、アドミラルティR級アドミラルティS級、V/W級の順) 

 

第一次世界大戦期の駆逐艦のトピック

実はあるところでフランス海軍の「アラブ級」駆逐艦についてモデルを紹介する機会がありました。

フランス海軍:アラブ級駆逐艦同型艦:12隻)

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(「アラブ級」駆逐艦の概観:65mm in 1:1250 by Navis)

同級はフランス海軍が第一次世界大戦中に就役させた駆逐艦の艦級なのですが、実は日本海軍の「樺」級二等駆逐艦を原型としフランス海軍が日本に発注した、という経緯があるのです。

第一次世界大戦中、日本海軍は連合国として参戦し、船団護衛部隊として、第二特務艦隊を編成し、これを遠く地中海に派遣しています。この艦隊の主力を構成したのが、「桃級」駆逐艦と「樺級」駆逐艦でした。

当時、日本海軍は外洋での航洋能力を持つ駆逐艦の整備に着手したところでした。そのため、それまで400トン前後であった駆逐艦は一気に1000トン級の「海風級」に発展し、航洋性という視点では合格であったものの、駆逐艦という艦種の特性から数を揃える必要があり、並行して中型駆逐艦(600トン級:二等駆逐艦)のに建造にも着手します。この中型駆逐艦の初めての量産型が「樺級」でした。折から第一次世界大戦の勃発を受け、プロトタイプの「桜級」をベースに幾つかの小規模な改正を施し、民間造船所を総動員して起工から竣工まで105日という短期間で完成させられました。

地中海に派遣された第二特務艦隊は、初めての対潜水艦戦という不慣れな状況に直面しながら、およそ一年半の派遣期間に70万人の兵員輸送に貢献し7000人の救出に携わるなど、非常に高い評価を受けています。世界のどの海軍も対潜水艦戦は初めての経験であり、当初は対潜水艦戦用の装備などあるはずもなく、掃海具であるパラベーンを流してワイアにUボートを引っ掛け破壊するというような方法で、ドイツ帝国オーストリア=ハンガリー帝国の潜水艦と戦ったようです。同級の「榊」は雷撃で艦首を吹っ飛ばされ、死傷者を出しています。

一方、フランスはもちろん第一次世界大戦のまさに当事国であり、自国での造船も思うに任せないまま航洋型駆逐艦の不足に悩んでいました。そうした状況下で日本海軍の派遣艦隊の活躍を目にし、かつその短期間での量産実績と併せて日本への発注となったようです。

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(直上の写真は「アラブ級」の武装配置:艦首に12cm砲、艦橋直後に45cm連装魚雷発射管、艦中央部両舷に8cm砲を各一門、砲台上に8cm高角砲:「樺級」ではここには8cm平射砲が装備されていました。そして2番連装魚雷発射管、艦尾に8cm砲、と高角砲をの除いてはほぼタイプシップの「樺級」と同じ兵装配置でした。速力は30ノット)

 

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(直上の写真は、上段:「アラブ級」(手前)と「樺級」の対比。模型ですので、色違いくらい? 下段:「アラブ級」と同時期の英海軍の航洋型駆逐艦アドミラルティM級」の対比:1000トン級の「M級」に対して「アラブ級」はかなり細身に見えます)

「アラブ級」駆逐艦をめぐり、そのルーツが日本海軍の「樺級」駆逐艦であること、その導入経緯が地中海への派遣艦隊であったことなど、色々と面白いことを思い出させてもらいました。

そして、上の写真を見ていると、1000トン級の「M級」を準同型艦を合わせれば105隻も揃えていたこと、さらには戦時に「M級」に続けて「R級(62隻)」「S級(67隻)」「V/W級(67隻)」と量産を続けることができた(?)当時の英国の「凄み」を改めて感じました。

 

ダイドー級軽巡洋艦のヴァリエーションモデルの到着

本稿では英海軍の巡洋艦紹介の際に、「ダイドー級軽巡洋艦防空巡洋艦)のご紹介をしました。その際に、同級では建造時に主砲として搭載を予定されていた5.25インチ連装両用砲の生産が間に合わず、最初の3隻では1基を欠いた4基搭載の状態で就役せざるを得ず、同級の最後の2隻については駆逐艦や空母の対空火器として搭載されていた4.5インチ対空連装砲を4基搭載して就役した、と書きました。

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この「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」のArgonaut社製のモデルが到着しましたので、ご紹介しておきます。

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(「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」の概観:by Argonaut:やはり主砲がやや弱々しく見えませんか?) 

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(直上の写真は、「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」(左列)と「ダイドー級5.25インチ両用砲装備型」の対比。武装の違いだけながら、かなり細部の造作が異なることがよくわかりますね。大きくは両用砲が砲塔になっているのに対し、高角砲が防盾仕様になっているところから砲座周辺の波返板、ブルワーク等に差異が出てくるのでしょうね)

 

結局、この両艦「カリブディス(HMS Chrybdis)」「シラ(HMS Scylla)」は、巡洋艦とは言いながら対艦戦闘では駆逐艦並みの火力で就役せねばならなかったわけです。

一方、対空戦闘に関していうと5.25インチ両用砲が毎分7−8発の射撃速度で、かつ連装砲塔の重量から高速化する航空機に対しては運動性が不足する等、対空砲としては十分とはいえなかったのに対し、4.5 インチ砲は毎分16発ほどの射撃速度をもっていたため、どちらが有効だったか。

 

もう一つの英海軍防空巡洋艦の話:つまり「ユリシーズ号」

実は上掲の「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」を2隻入手しました。

何故2隻か?その目的の一つとして、これをベースとした「もう一つの英防空巡洋艦」のモデル制作があったのです。(1隻はもちろんそのまま、です。ですから2隻欲しかった)

本稿でも既にご紹介した通り英海軍は第二次世界大戦期に、第一次世界大戦型の巡洋艦を防空艦に改造したものに加え、新たに防空巡洋艦を2艦級、投入しています。「ダイドー級」とその改良型である「ベローナ級」ですが、この両艦級の間に非常に有名な防空巡洋艦が、ある意味、存在しているのです。

アリステア・マクリーンの海洋小説の名作「女王陛下のユリシーズ号」に登場する「ユリシーズ」です。

本書はフィクションで、もちろん「ユリシーズ」は物語に出てくる架空の軍艦です。小説の本文中に「有名なダイドー級改型の5500トン、ブラック・プリンス級の先駆で、この型のものとしてはただ一艦である」(ハヤカワ文庫版:村上博基氏訳56ページより)という文章があり、全長510フィート(155.5m)、5.25インチ連装両用砲4基(前後に2基づつ)、ポムポム砲3基などの搭載火器に関する記述が続きます。

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スペックで比較すると「ダイドー級」「ベローナ級」(本文では「ブラック・プリンス級」と表記されています)のいずれよりも少し小さく、乱暴にまとめると主要武装は「ベローナ級」と同等、速力はやや早い、そんな感じです。

当初は今回入手した「ダイドー級4.5インチ対空砲装備型」をベースに主砲を換装すればいいかと考えていたのですが(オリジナルの「ダイドー級」は、艦首部に主砲塔が三段背負式で装備されていて、艦橋部がやや高すぎる、と思うのです)、先述のように砲塔前の波返板などの造作が想像以上に大きく、細部も思いの外4.5インチ対空砲に合わせた仕様に変更になっているので、さて、どうしたものか、と・・・。

違和感や作業の大変さを考えると、いっそ、記述されているスペックを全部無視して新しいストーリーに基づいて全くの架空艦(どうせ元々架空艦なんだし)を作ってもいいかな、と思い始めているところです。

そうすると、「ダイドー級」がそもそも「アリシューザ級」軽巡洋艦をベースに設計された、という背景に乗っかって、「アリシューザ級」の防空艦改造版、というのでも良いかな、という妄想がむくむくと頭をもたげてきます。

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(直上の写真は、「アリシューザ級」軽巡洋艦の概観:123mm in 1:1250 by Neptune)

ダイドー級」と「ベローナ級」の間で建造されながら、どちらよりも少し小さい、というのも設定としてそもそも違和感がありますし、建造の経済性を考慮するあまり「ちょっとスペックダウンしすぎたかな」と思われ始めた「アリシューザ級」の建造途中の5番艦が船団護衛の中核艦として防空巡洋艦として完成させられた、というのもなかなか良いストーリーではないかと。(もう全然、小説とは関係なくなるかも、ですが)

ということで、「ユリシーズ」の制作は現在入手途上にある「アリシューザ級」のモデル(2隻目)が到着してから、じっくり改造手順なども併せて考えることにします。「ユリシーズ」の名前をつけずに、作ってしまいそうです。

 

違和感といえば・・・

実は以前から「女王陛下のユリシーズ号」という邦題には違和感を抱いていました。原題は「H.M.S. Ulysees」で、第二次世界大戦当時の英国は国王ジョージ6世の治下にあり、H.M.S.は当然 His Majesty's Ship=「国王陛下の船」であるべきだと思ってきたのです。艦船ファンとしては原題のまま「H M.S. ユリシーズ号」でも良いのに、と思いながら。

ダグラス・リーマンの本は「国王陛下のUボート」になっているのに。(こちらは原題は"Go In and Sink!" で全く似ても似つきませんが)

まあ、今となっては名作としてもう定着してしまっているから、改題とかはしないほうがいいのかもしれませんが。

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と言うことで今回はここまで。

 

 次回は・・・。やっぱりこんな感じで、とりとめなく、になりそうな。

日本海軍の航空母艦小史」やるやると言いながら、なかなか重い腰が上がりませんが、モデルは全部、揃いましたので、必ずやりますから、気長にお待ちください。(「アラブ級」仏海軍駆逐艦、なんて、また別の箱が開いた感もありますが・・・)でも「脇道探索」はやっぱり楽しいなあ。

 もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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