相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

続・脇道探検:スウェーデン海軍の巡洋艦、その他・中間報告

今回は前回の流れの続きで、スウェーデン海軍の巡洋艦系譜とその他の艦艇をご紹介。

今回もサクッと。短くて読みやすい、かも。

 

スウェーデン海軍の巡洋艦

少しおさらい。

スウェーデンという国は、ボスニア湾(スウェーデンフィンランドの間の湾)からカテガット海峡スカンジナビア半島デンマーク間の海峡)に及ぶ長い海岸線をバルト海に有しています。その海岸線のほぼ中央に首都ストックホルムが位置しています。

これらの長い海岸線を防備することがスウェーデン海軍の主要な任務で、そうした観点に立つと航洋性の高い巡洋艦のニーズはそれほど高いとは言えないかもしれません。

そのせいか、スウェーデン海軍が保有した巡洋艦は5艦級、そのうち2つの艦級は、沿岸防備に特化した艦級(水雷巡洋艦敷設巡洋艦)と言ってもよく、いわゆる航洋性の高い「巡洋艦」は3艦級4隻です。

 

Örnen級水雷砲艦(同型艦5隻?4隻?:1896年より就役)

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(Örnen級水雷巡洋艦の概観:53mm in 1:1250 by Oceanic)

いきなりですが、なんて日本語で表記すればいいのでしょう?

Örnen級水雷巡洋艦。800トンの船体を持ち20ノットの速力を持つ小さな巡洋艦です。4.7インチ単装砲を2基搭載し、38cm口径の魚雷発射管を1基装備していました。形態と装備から見て、水雷砲艦という呼称の方がしっくりくるかもしれません。本級を旗艦として、水雷艇を中心とした沿岸警備用の水雷戦隊が構成されました。その後旧式化すると、水上機母艦練習艦として第二次世界大戦期まで使用されました。

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(Örnen級水雷巡洋艦の率いる水雷艇部隊:水雷艇は5号型:Class N°5 (1906):かな?)

 

装甲巡洋艦「フィルギア」(1907年就役:同型艦なし)

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装甲巡洋艦「フィルギア」の概観:93mm in 1:1250 by Brown Water Navy miniarure: 近代化改装後、第二次世界大戦期の姿)

www.shapeways.com

 スウェーデン海軍が初めて建造した本格的な巡洋艦です。装甲を持ついわゆる装甲巡洋艦で、水雷戦隊の火力支援を行う艦種として設計されました。装甲巡洋艦としては小ぶりの4300トン級の船体に6インチ連装速射砲4基を搭載していました。就役時には21.5ノットの速力を発揮することが出来ました。

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(モデルは近代化改装後の姿)

1940年前後に、艦首形状の修正や対空兵装の増強など、近代化改装が行われ、速力は26ノット、外見的には3本煙突から2本煙突となりました。近代化改装後も、ドイツやソ連巡洋艦に対抗するには既に旧式ではありましたが、“White Swan of Sweden”の呼称で親しまれました。1953年に退役するまで、練習艦として使用され続けました。

 

敷設巡洋艦「クロース・フレミング」(1914年就役:同型艦なし)

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(no photo: 新造時のモデルを調達中です)

第一次世界大戦開戦時に建造された敷設巡洋艦です。1500トン級の船体を持ち、4.7インチ単装砲4基を装備し、機雷を190基搭載することが出来ました。スウェーデン海軍初の、タービンを機関として搭載した巡洋艦でもあります。1939年に機関のディーゼルエンジンへの換装を含む近代化改装が行われ、やや船体が拡張され、煙突が3本になるなどの外観が変化しています。第二次世界大戦後、退役しています。

 

航空巡洋艦「ゴトランド」(1934年就役:同型艦なし)

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航空巡洋艦「ゴトランド」の概観:109mm in 1:1250 by Amature Wargame Figures)

www.shapeways.com

 スウェーデン海軍は1929年代から艦載機による防空を目的とした巡洋艦の建造を計画しました。本稿の前回でご紹介した海防戦艦「ドリスへティン」が水上機母艦に改造されたのも、この構想の一環です。

「4500トン級の水上機母艦案や5500トンの航空巡洋艦案等の検討を経て、本艦は世界初の航空巡洋艦として建造され、4700トンの船体に、6インチ連装砲塔2基、同単装砲2基(ケースメート形式)計6門の主砲を有し、重油専焼缶とタービンの組み合わせで速力27.5ノットを発揮しました。航空艤装としては艦尾部に広い飛行整備甲板を持ち、搭載機6機を定数とし、最大12機まで搭載できる設計でした。(甲板係止:10機・ハンガー収容:2機)搭載機は飛行整備甲板と艦上部構造の間に据えられた回転式のカタパルトから射出される構造でした。

三連装魚雷発射管を両舷に装備し、機雷敷設能力も兼ね備えていました。

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(「ゴトランド」の細部。艦首部の連装主砲(上段)、艦中央部の対空砲群(中段)、艦尾部の連装砲塔と回転式のカタパルト、飛行整備甲板(下段))

巡洋艦という目で見ると、やや速力が物足りないと思われるかもしれませんが、バルト海という主要な行動領域と設計が大戦間の航空機の発達途上の時期であることを考えると、当時としては十分な機動性を持っていたといえるかもしれません。

 

スウェーデンは長く中立を保ったため、大半の艦艇には目立った戦歴がないのですが、同艦はドイツ戦艦「ビスマルク」の最初で最後の戦闘行動である「ライン演習」への出撃に遭遇し、カテガット海峡通過に随伴する形で行動したことでも有名です。結果的にその接触の通報は海軍司令部を経てイギリスに伝達されました。

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(「ライン演習」参加時のドイツ戦艦「ビスマルク」と「ゴトランド」の大きさ比較。カテガット海峡を哨戒中の「ゴトランド」の通報から、「ビスマルク」出撃の情報がもたらされました)

 

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(「ライン演習」参加時のドイツ重巡洋艦プリンツ・オイゲン」と「ゴトランド」の大きさ比較。やはり重巡洋艦とは大きさに大差がありますね)

 

その後、艦載機種更新にあたって、後継予定機種が機体重量の関係で現有のカタパルトでは射出できないことが判明すると、同艦は航空艤装を廃止し、艦尾部の飛行整備甲板に対空兵装を増強するなどして防空巡洋艦に変更されました。

戦後には電子装備を更新するなどして防空巡洋艦として使用が継続されましたが、1956年に予備役艦に変更され、1963年に解体されました。

 

「トレ・クロノール級」軽巡洋艦(1947年より就役:同型艦2隻)

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(「トレ・クノール級」軽巡洋艦の概観:145mm in 1:1250 by Hansa)

 スウェーデン海軍が建造した最後の巡洋艦の艦級です。唯一の本格的航洋型巡洋艦と言ってもいいのではないでしょうか?

第二次世界大戦中に建造されましたが、就役は2隻とも大戦後の1947年となりました。

8200トン級の船体を持ち、重油専焼缶とタービン機関の組み合わせで、33ノットの速力を出すことが出来ました。

主砲として新型の53口径6インチ速射砲を採用し、これを艦首部に3連装両用砲塔1基、艦尾部に連装両用砲塔2基の配置で搭載していました。この主砲は両用砲塔に搭載され70度までの仰角と、毎分10発の発射速度を有していました。当初はこの両用砲が文字通り対空砲を兼ねたため、対空砲を他に有しませんでしたが、後の改装では5.7cm高角機関砲を連装砲塔で2基増設しています。

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(「トレ・クノール級」軽巡洋艦の細部:艦首部の3連装砲塔(上段)、艦中央部の対空砲群(中段)、艦尾部の連装砲塔(下段))

 

「トレ・クノール」は1964年まで就役していましたが、僚艦「イェータ・レヨン」は1971年にチリ海軍に売却され、1984年まで同海軍で就役していました。

 

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スウェーデン海軍の巡洋艦の系譜:手前から「Örnen級」水雷巡洋艦装甲巡洋艦「フィルギア」、航空巡洋艦『ゴトランド」、「トレ・クノール級」軽巡洋艦の順)

 

その他の駆逐艦警備艇・掃海艇など

ぼちぼちと目に止まったものを収集中です。この辺りはいずれまとめて・・・。だから中間報告、ということで。

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 (スウェーデン海軍の小艦艇群:手前から「ランドソルト級」掃海艇、「イェーガレン級」ウーデットボート(汎用警備艇で、哨戒・掃海など種々の任務をこなします)、「エレンスコルド級駆逐艦、「イェーテボリ級」駆逐艦

 

ということで、今回はおしまい。

さて前回から全くの思いつきで、突然、スウェーデン海軍、などという、筆者も馴染みのない領域をまとめて見てきたわけですが、一定の興味はありながらも、こうして体系的にまとめる機会がなければ、スウェーデン海軍の艦艇について理解を深める機会はなかっただろうと思っています。脇道探検は、本当に楽しいし面白い。

「ルーティーン」の持ち方、という話をぼんやりとテレビで見ていました。現在のようなストレスの溜まりやすい状況下では、安定を得るための、さらに何らか自身を成長させるための「ルーティーン」というのは重要だ、というような話だったのですが、「低いハードル=達成感を得やすい」ことを「継続する」というのが重要だそうで、まさに当ブログが筆者の「ルーティーン」なのかもなあ、などと考えています。

「ルーティーン」を継続するためのテーマ探し。そのテーマは「自分の楽しみの中から」。そしてさらに深い興味の領域へ。なんか自画自賛ぽくて申し訳ないですが、「継続しよう」という思いから、何か新しい楽しいことが見つかるサイクルに気づくことが出来て、少し嬉しいのです。それをお伝えしたかった。スウェーデン巡洋艦の発展の知識が深まった、というのが成長か、という疑問があることは重々理解しています。お願いだから、思ったとしても、それは言わないで)

 

ということで、次回はどうしようかな。(毎回、この時点で、次のテーマ探し、というプレッシャーがかかっています。なら、やめればいいのに。まさにその通りなんですが)

実はこのところ、1:144スケールの飛行機ばかり作っています。そしてみんなフィンランドのマークをつけています。そんな話にしようか、それとも本流で「残していること」をしようか。まあ、そこは気まぐれで。

 

いつも申し上げているのですが、模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

***実は模型に関する質問などは、一度もいただいたことがないのです。

 

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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