相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

海上自衛隊 護衛艦発達史(4) イージス艦の登場

ターターシステムからイージスシステムへ

既述のように、海上自衛隊シーレーン防衛を担う基幹単位として護衛隊群を構想、整備し、理想とする護衛艦8隻と搭載ヘリコプター8機からなる8艦8機編成、4個護衛隊群の保有を、1980年代後半に実現した。

8艦8機編成における各護衛隊群は、一般的には、DDH(ヘリコプター搭載護衛艦:ヘリ3機搭載)1隻、DDG/DDA(ミサイル護衛艦・対空戦闘担任艦)2隻、汎用護衛艦(ヘリコプター1機搭載)5隻 からなる。

この各護衛隊群の艦隊防空を担うのが、DDG2隻(もしくはDDG+DDA)であり、艦対空システムとして、永らくターターシステムがその主力防空システムであった。1960年代に建造されたミサイル護衛艦「あまつかぜ」で初めて導入され、続く「たちかぜ級」ではシステムのデジタル化、戦術情報処理装置が導入され、さらに「はたかぜ級」ではCIC化、機関のガスタービン化などにより、一応の完成形と評価されるに至った。

しかし一方で、仮想敵の機載対艦ミサイルの著しい発展、さらには発射プラットフォームである攻撃機自体の性能向上、電子戦機の導入などから、同時に1-2目標への対応を想定した従来のシステムでは性能上対処困難な事態が想定されるようになった。

こうした要請から、イージスシステムを搭載した護衛艦の導入が検討され始める。(システムの詳細は、下記のリンクに委ねたい)

ja.wikipedia.org

イージスシステム(Aegis Weapon System: AWS)は、ターターシステムなど従来のいわゆる防空システムの枠にとどまらず、レーダー等のセンサーシステム、情報処理システム、武器システムを全て連結した統合的戦闘システムである。

同時に128目標を補足・追跡し、脅威度の大きい10目標程度を特定し迎撃することが、自動でできる。

このシステムへの接続は、イージスシステム搭載艦にとどまらず、他の機器搭載艦艇とも接続可能で、従って、個艦の武器システムのみでなく、例えば導入護衛隊群全体の武器システムによる艦隊防空が可能となる。

 

DDG こんごう級イージス護衛艦(1993- 同型艦4隻)

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Kongō-class destroyer - Wikipedia

海上自衛隊初のイージスシステム搭載ミサイル護衛艦である。 

米海軍の同じくイージスシステム搭載艦であるアーレイ・バーク駆逐艦タイプシップとし、艦型・機関ともこれに準じている。

併せて、本級から、従来DDHが担っていた護衛隊群旗艦が同級に移管されることとなったため、上部構造および艦型も大型化した。(7250トン、30ノット)

(129mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)

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本級の中核的な装備となるのはもちろんイージスシステム(AWS)であるが 、そのセンサーシステムの中心的な役割を負う多機能レーダーは、艦橋の4面に固定された巨大なパッシブ・フューズドアレイアンテナに象徴され、これに上記の旗艦施設などを加え、非常に重厚な上部構造物を構成している。

これに連動するミサイル発射機はMk. 41 VLS(垂直発射機)を艦首甲板に29セル、艦尾甲板に61セルを装備している。

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(Mk.41 VLS こんごう級艦首甲板の29セルと艦尾甲板の61セル。VLS前方には主砲として装備されたオート・メララ製54口径5インチ単装速射砲(127mmコンパット砲)が写っている)

 

ja.wikipedia.org

他に対空兵装としては、主砲にオート・メララ製の54口径5インチ単装速射砲(127mmコンパット砲)を装備し、近接個艦防空用に2基のCIWSを艦上部構造の前後に保有している。

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対潜兵装としては、前述の艦首部のMk.41 VLSに垂直発射型のアスロック(VLA)を装備し、併せて対潜短魚雷発射管を両舷に装備している。

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対艦兵装としては、艦対艦ミサイルハープーンを4連装ランチャーで2基装備している。

 

DDGとして前級に当たる「はたかぜ級」DDGと同様に、艦後部にはヘリコプターの発着甲板が設けられたが、ハンガー等の設備はなく、従って固有の対潜ヘリコプターは保有しない。

 

 DD むらさめ級護衛艦(1996- 同型艦9隻)

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Murasame-class destroyer (1994) - Wikipedia

汎用護衛艦の第二世代として、「むらさめ級」は9隻が建造された。現在の護衛隊群の基準構成艦となっている。

兵装等の装備は前級と同様を想定しながら、搭載電子機器類の増加への対応や、ヘリ運用能力の強化、居住性改善等の要請から、船体は大型化した。(4550トン、30ノット)

(120mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)

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前述のように、兵装は前級である「あさぎり級」とほぼ同様である。

砲熕兵器としては、主砲に62口径3インチ単装速射砲(76mmコンパクト砲)、個艦防御兵器としてCIWSを両舷に1基づつ搭載している。

主要対潜装備としては短対潜誘導魚雷発射管とアスロックを装備し、対空兵装としてはSAM(シースパロー)を、いずれも垂直発射式で搭載している。

アスロックは艦首部のMk. 41 VLS 16セルに搭載されている。

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SAM(シースパロー)は、艦中央部にMk. 48 VLS 16連装のキャニスターに収容された。

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いずれも、搭載弾数は前級と同様ながら、いずれもVLS搭載とすることで、即応発射弾数は倍になった。

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(前部甲板に装備されたMk.41 VLS 16セル:アスロック用と、艦中央部に装備されたMk.48 VLS 16キャニスター:シースパロー用)

 

艦対艦兵装としては、従来のハープーンに替えて国産の90式対艦誘導弾を4連装キャニスター2基に搭載している。

ja.wikipedia.org

 

加えて1機の対潜ヘリコプターを固有の搭載兵装として保有したが、ハンガーは「あさぎり級」よりも大型化され、「あさぎり級」ではあくまで応急的な運用とされていたのに対し、2機運用を想定したものとな離、実際にソマリア派遣等の際には2機運用が実施されている。

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(艦尾部のヘリコプター発着甲板と大型化したヘリハンガー)

 

DD たかなみ級護衛艦(2003- 同型艦5隻)

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Takanami-class destroyer - Wikipedia

第二世代の汎用護衛艦として前級「むらさめ級」は建造されたが、本級はその最小限の改正型として建造された。前級の「むらさめ級」、次級の「あきづき級」と共に、現在の護衛隊群の基準構成艦となっている。(4650トン、30ノット)

その主たる改正点は、Mk.41 (アスロック用)とMk.48(シースパロー用)の2種のVLSの併載の解消による運用の合理化と、主砲射撃能力の向上の要請への対応、更に前級で可能となったヘリコプター2機運用体制への本格的対応等であった。

(120mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)

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兵装は基本的に前級「むらさめ級」に準じるが、VLSは艦首部のMk. 41 32セルに統合され、 主砲は「こんごう級」と同様のオート・メララ製の54口径5インチ単装速射砲(127mmコンパット砲)を搭載した。

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(艦首甲板のMk.41 VLS 32セル :たかなみ級ではVLSを艦首部の一か所にまとめて装備した。セル数の増加で装備方法が変更され、甲板よりも一段上がった装着方法となった。VLS前方には主砲として装備されたオート・メララ製54口径5インチ単装速射砲(127mmコンパット砲)が写っている)

 

ヘリの2機運用体制については、前級「むらさめ級」では1条であったRAST発着艦支援装置の機体移送軌条を2条とし、さらに上記の「むらさめ級」では艦中央部、ハンガー前部に隣接していたシースパロー用のMk. 48発射機を、艦首部に統合移設したことから生まれたスペースでハンガーを拡大、ヘリ運用スペースやヘリ用の弾庫の拡大により本格的な2機運用体制を充実させた。

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(艦尾部のヘリコプター発着甲板と大型化したヘリハンガー)

 

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(艦尾部のヘリコプター発着甲板:むらさめ級(上)では1条だったRAST発着艦支援装置の機体移送軌条が、たかなみ級(下)では2条に追加されたことがわかる)

 

当初計画では、本級を11隻建造し、8艦8機編成を充足する予定であったが、実際には5隻で打ち切られ、新装備を搭載した次級の建造に移行することとなった。

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(第二世代汎用護衛艦比較:むらさめ級(右)とたかなみ級(左)。主砲、VLS配置を除き、全体の配置は非常によく似ている。最小限の改正、ということか

 

 

DDG あたご級イージス護衛艦 (2007- 同型艦2隻)

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Atago-class destroyer - Wikipedia

海上自衛隊の2代目のイージスシステム護衛艦である。護衛隊群の8艦8機編成の維持にあたり、退役する「たちかぜ級」DDGの代替艦として建造された。

基本的には前級「こんごう級」の性能向上型であり、船体後部にハンガーを設けヘリコプター搭載能力を付加したことにより艦型がさらに大型となった。(7750トン、30ノット)

(131mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)

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イージスシステムは下位ユニットも含めバージョンアップされたものになっており、性能は向上している。

ミサイル発射機はMk. 41 VLSを前部甲板に64セル、艦尾部のヘリハンガー上部に32セルを搭載している。また近接防御兵器としてはCIWS2基を「こんごう級」同様、艦上部構造の前後に配置している。

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(Mk.41 VLS あたご級艦首甲板の64セルと艦尾ヘリコプターハンガー上の32セル。本級から前部、後部のそれぞれの装填用クレーンが廃止された。上の写真にはあたご級から採用された主砲62口径5インチ単装砲(Mk. 45)が写っている)

 

対潜兵装は「こんごう級」と同じく垂直発射式のアスロックをMk. 41 VLSに収め、さらに対潜短魚雷3連装発射管を両舷に装備している。

対艦兵装としては、前出の汎用護衛艦と同様、ハープーンに替え国産の90式対艦誘導弾を装備、さらに主砲として62口径5インチ単装砲(Mk. 45)が装備されている。

ja.wikipedia.org

「あたご級」の兵装変更の最大の目玉は既述の通りヘリコプター搭載能力の付加であり、艦後部にはヘリコプターハンガーが設けられた。

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(あたご級の追加装備の目玉、艦尾部のヘリコプター発着甲板と大型ヘリコプターハンガー)

 

イージス時代の護衛艦「やまと」

2000年代に入り、海上自衛隊の艦隊防空システムがイージスシステムとなった。

同時に長らく海上自衛隊の艦隊防空を担当してきたDDG「やまと」も、イージス艦として生まれ変わった。

艦の上部構造はイージスシステム搭載に対応する巨大なものに改装され、艦の前後左右に全体で240セルのMk 41 VLS(スタンダードSAM、アスロックSUM、シースパロー短SAM用)を搭載した。

その他、近接防空用兵装として23キロの最大射程、毎分45発の発射速度を持つオート・メララ54口径5インチ速射砲4基、CIWS4基を搭載している。(もちろん9門の18インチ主砲はそのまま)
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 模型視点でのコメントを少し:こちらのモデルは、Delphin社製の「大和」をベースとし、その船体を利用し、あわせて主砲塔を換装している。上部構造はF-toy社製の現用艦船シリーズからストックしていた何隻かの上構をあわせて転用している。さらに同じく現用艦船シリーズのストックから、武装を選択して搭載している。

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(直上の写真はイージス護衛艦「やまと」の上部構造:左右にMk 41 VLS、5インチ速射砲、CIWSなどを搭載している

 

(ちょっとぶつぶつ。ご意見募集)

18インチ主砲を与えられたイージスシステムは、どのようにこれを使いこなすのだろうか?それ以前に、デリケートなイージスシステムが18インチ主砲の発射時の衝撃に耐えられるのだろうか?おそらくVLSは大和のバイタルパートの外になっているのだが、それで問題ないのだろうか?等々、疑問満載の艦ではあります。本稿の初回でも記載しましたが、そもそも本稿はFaceBookの”Cancelled, Never Were & What If Ships - Plastic Model Ships”というグループに”Aegis BB Yamato”というタイトルで投稿したところに着想を得て始まっています。

制作途上では、三番主砲塔を撤去しそこにVLSを集中装備するか、とも考えたのですが、やはりそういうデザインを私自身も受け付けず、現在のフォルムになっています。上記のFacebookのグループで「そんなことを考えるなんて、君はなんてやつだ。絶対に主砲は外しちゃダメだ」と、不思議な激励を受けました。

では、主砲はどう使われるのか?例えば、「イージスシステムが健常に機能している間は、おそらくイージスシステムは主砲を選択しない。全てのミサイルを撃ちつくし、さらにその後に大きな脅威が現れた時にのみ、主砲は選択される。ましてや運用しているのは海上自衛隊である。沿岸部に艦砲射撃、などという場面はまず発生しない」、つまり万策尽きた時の最終手段案。あるいは「最大射程での防空射撃目的なので、大仰角での射撃となるため、あまり影響は受けない(そんなことないよね?)」とか。

ご意見を伺えれば嬉しいのですが。

 

次回は海上自衛隊護衛艦開発史の最終回を予定しています。空母型DDHが登場します。

 

***模型についてのお問い合わせ、お待ちしています。或いは、**vs++の比較リクエストなどあれば、是非お知らせください。

 

これまで本稿に登場した各艦の情報を下記に国別にまとめました。(今回紹介した艦船からのアップデートは特にありません。でも、こっそり日本海軍の筑波級巡洋戦艦装甲巡洋艦の写真が変わっていたりするかも)

fw688i.hatenadiary.jp

内容は当ブログの内容と同様ですが、詳しい情報をご覧になりたい時などに、辞書がわりに使っていただければ幸いです。

 

 


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