相州の、ほぼ週刊、1:1250 Scale 艦船模型ブログ

1:1250スケールの艦船模型コレクションをご紹介。実在艦から未成艦、架空艦まで、系統的な紹介を目指します。

続「脇道探索」:脇道彷徨のさらなるアップデートと、A-140計画艦のデザインバリエーション

A-140計画艦のデザインバリエーション

表題とは後先になりますが、まず、A-140計画艦のお話です。

本稿前回をお読みいただいた方はお分かりになると思いますが、このところA-140計画艦のうち、主砲前部集中配置案から発想を得た「大和級」戦艦のバリエーションのセミクラッチに勤しんでいます。

少し前回と重複になりますが、発端は京商製「大和」「武蔵」の1:1250モデルのストックを棚の奥から発見したこと。京商製のこのモデルは、樹脂製のパーツで構成されており、下の写真にあるように非常にバランスが良く、かつディテイルもかなりしっかり作られています。

ただ、大変惜しいことに、船体の長さが197mmで、一般に知られている「大和級」の船体長263.3mの1:1250モデルとしては、やや船体長が短いのです(Neptune社製のモデルは約210mm)。このため筆者の1:1250コレクションには加われず、長い時間、デッドストックとして棚の奥に眠っていました。これが4隻発見された(単に筆者が忘れてただけなんですが)わけです。(就役時=副砲塔4基搭載を再現した「武蔵」が3隻と、対空兵装強化後の「大和」が1隻)

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京商製の「武蔵」立派な台座に乗っています。ディテイルはバッチリです。下段はDelphin社製の船体との大きさ比較。約13mm短い!)

よく見ると、船体長こそ短いものの、その他の主砲、副砲、上部構造等はそれほど小さいわけではなく(まあ、誤差程度、小振りではありますが)、 ムクムクとこれを何かに生かせないだろうか、とイタズラ心が蠢き始めました。

 

大和級」で残っているものと言えば・・・

そもそもこのブログは、実は筆者が「大和級」のバリエーションとして海上自衛隊のイージス護衛艦「やまと 」を制作したところからスタートしています。かつ、筆者の制作していた「八八艦隊」の戦艦群バリエーションの完成と、超「大和」、スーパー「大和」などのコレクションを備忘録的にまとめておきたい、という想いからスタートしています。

(以下のリンクは、上記に関連しそうな回を総覧したもの。ちょっと手前味噌な宣伝ぽくて申し訳ないですが。よろしければお楽しみください)

fw688i.hatenablog.com

fw688i.hatenablog.com

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というようなわけで、今回発見された京商製のモデル以外にも、これら「大和級」のバリエーション制作過程で、お蔵入りした試作品、あるいは制作のための部品取りで入手したモデルのストックなどがいくつか眠っているのです。

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(上の写真:眠っていたDelphin社製「大和」の船体部分(上段および下段左)と、京商製「武蔵」就役時モデルの上部構造と主砲塔(下段右))

これらを組み合わせて、比較的大きなモデル改造を伴う「A-140計画艦」のうち「主砲前部集中搭載案」を作ってみよう、というのが前回の試みでした。

 

A-140計画艦:主砲搭載形式のバリエーション

と前置きが長くなったのですが、結局、今回はその主砲搭載案のバリエーションを制作しました。

まずは、前回ご紹介した前方への主砲斉射界を広くとった「主砲配置案」が、下の前回紹介した戦艦「甲斐」(もちろん仮称・If称(?))です。

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(戦艦「甲斐」(=「大和級」というより「A-140計画艦」というべきか。主砲前部集中搭載案から)の概観:主砲の前部集中配置で防御装甲の配置を効率化し、ちょっとこの写真ではわかりにくいのですが、やや細めの煙突で確認できるタービンとディーゼルの混載により、日本海軍悲願の高速性と長い航続距離を両立させることを目指しました)

 

これも前回と重複しますが「A-140計画艦」には20数種のデザイン案があると言われています。これはその中でも最初期の案とされる「A-140a」をベースにし、これに「大和級」建造の実現技術を反映した形としています。副砲の配置も、「大和級」の配置案に準じています。

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 (A-140a案の資料を示しておきます。諸々、Net上で見つけた資料から)

 

主砲塔山形配置案の制作

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(戦艦「美濃」A-140a案の山形主砲配置デザイン:主砲の配置位置がよりコンパクトになっていることがよくわかります。主砲配置以外は上掲の「甲斐」と同じスペックです)

そして今回制作したのは、主砲の山形配置案(重巡那智級」などでお馴染みの配置)です。後方への主砲斉射界を広く取ることができると言う点と、主砲弾庫をコンパクトにまとめられる、と言うメリットもあるかも。もしこのメリットがあるとすると、機関に余裕を持たせることができたかもしれませんね。f:id:fw688i:20210228115632j:image

(直上の写真:主砲配置と副砲配置の拡大カット)

(下の写真は「甲斐」と「美濃」のレイアウト比較:中段は主砲の前方斉射の射角比較。下段は後方斉射の射角比較。かなり両者の斉射射角に差があることがわかります)

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「東郷元帥は戦艦の主砲は首尾線の砲力を重視せよ、とおっしゃった」というお言葉が、こういう場合にも影響するのかな?

 

どっちがいいかな?

と言うのも、あとワンセット、船体と上部構造にストックがあるのです。代わりに京商製の「大和級」のモデルは使い切ってしまうのですが・・・。

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(手持ちストック:京商「武蔵」とDelphine製「大和級」の船体。上部構想を撤去して下地処理などしてあります)

 

このストックを用いて大戦後期向けの対空兵装強化案を作るか、それとも副砲の配置バリエーションを作るか。

今回制作したセミ・スクラッチは意図的に上掲のスケッチの「A-140a案」とは異なり、実在の「大和級」と同じく、舷側の2基の副砲塔は上部構造物の中央配置、としています。こんなに何隻も作る予定はなかったので、1隻だけ作るとしたら実在の「大和級」に準じた配置にしようと決めていました。「どうもこの副砲の集中配置は、納得いかない」と言うような理論的な選択ではなく、感覚的に好きじゃない、と言うのが正直なところなのですが。

Ifの話をすると、この主砲前部集中配置型の戦艦はタービンとディーゼルの混載で30ノットの高速と長い航続距離を持っています(歴史的に見て、大型ディーゼルが不調だった、と言う話は少し脇に置いておきます)。すると重巡洋艦等と同じ戦場に投入され続けて、つまりソロモン諸島方面の戦場に展開して(第二艦隊?第八艦隊?)、改装機会がなかった、とすると、対空兵装強化方は不要、と言うことになります。一方で、同様の特性から、空母機動部隊直衛として帯同するため、早期に対空兵装が強化された、とするか・・・。

模型として面白いのは「副砲集中配置案」の制作で、史実としてありそうなのは(もともと架空艦の話なので「何を言っているんでしょう」と言う感じではありますが)「対空兵装強化改装タイプ」の制作、なんでしょうね。まあ、両方面白い、ということか・・・。

さて、少し時間をかけて考えてみようかな。

 

ご希望や、ご意見があれば、是非、教えてください。

ストックは1隻分しかないので、早い者勝ちになるかも。今のところ筆者の中で有力なのは「対空兵装強化改装タイプ」の方です。

 

さて、ここからは話題が変わって。

脇道彷徨:第二次世界大戦期のスウェーデン海軍の海防戦艦:その近代化

何度か繰り返しているのですが、スウェーデンは二度の世界大戦を中立の態度で貫いた稀有な国の一つです。従って、長い期間に渡り同海軍は戦闘を経験せず、もちろん戦没艦もありません。(事故等での喪失艦はありますが)

以前本稿では、スウェーデン海防戦艦6艦級のご紹介をしました。

fw688i.hatenablog.com

少しおさらいしておくと、その6艦級とは以下の通りです

スヴェア級(同型艦3隻:1886年から就役)

オーディン級(同型艦3隻:1897年から就役)

ドリスへティン(同型艦なし:1901年から就役)

アラン級(同型艦4隻:1902年から就役)

オスカー2世(同型艦無し:1907年から就役)

スヴァリイェ級(同型艦3隻:1921年から就役)

上記のうち「スヴェア級」3隻、「オーディン級」3隻については、1920年代に海防戦艦の艦籍を外れ、「スヴェア」は潜水母艦に、残りは「ハルク」つまり宿泊施設や燃料や弾薬その他物資の収納施設として転用され、1930年台から徐々に解体されました。

 

ドリスへティン(1927年に水上機母艦に改装)

en.wikipedia.org

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海防戦艦「ドリスへティン」の概観:72mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature in Shapeways:竣工時の姿)

海防戦艦「ドリスへティン」は1901年に就役した海防戦艦で、同型艦はありません。ほぼ前級である「オーディン級」と同じ規模の3400トンクラスの船体に、主砲を新型の44口径8.2インチ単装砲に変更し2基を搭載しています。副砲に6インチ単装速射砲6基を搭載し、魚雷発射管2基を装備していました。16.5ノットの速力を発揮することが出来ました。

 

水上機母艦への改装(1927年)

1927年に主砲、副砲等を撤去し、水上機母艦に改装されました。主兵装は高角砲、高角機関砲として、水上機3期の運用能力を有していました。

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(「ドリスへティン」の水上機母艦への改装後の概観:72mm in 1:1250 by C.O.B. Construvts and Miniature in Shapewaysからのセミ・スクラッチ)f:id:fw688i:20210228113324j:image

(艦首・艦尾の主砲を撤去し、飛行整備甲板を装備し、対空火器を増強しています。)

少し制作の裏話:水上機母艦形態の「ドリスへティン」には、Mercator社から、1:1250スケールのモデルが発売されています。しかし、なかなか見かけないし、入手の目処が立たなかったので、「では、ストックしているモデルをベースにセミ・スクラッチしてみようか」と。

実はこのセミ・スクラッチには、Brown Water Navy MiniatureのDristighetenのモデルをベースにはしていません。ベースとなったのは同じくShapewaysに出品されているC.O.B. Construvts and Miniatureのスウェーデン海防戦艦「アラン級」の近代化改装後のモデルです。ほぼ同寸であることと、近代化後の姿ということで、前部艦級、三脚マストなどが再現されていた、というのが主な理由です。

主砲塔を削り、副砲等部分をマスクして上甲板を制作、というのが大まかな工程ですが、実は飛行整備甲板の形状を少し簡略化し過ぎてしまっているのです。正確な写真も図面も見つけられなかった、という背景はあるものの、「まあ、ベースも違うし、ダメならダメでいいか」といわゆる習作のつもりで作ったので、今一度、Brown Water Navy MiniatureのDristighetenをベースに制作し直すかもしれません。

 

アラン級(同型艦4隻:1902年から就役)

ja.wikipedia.org

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海防戦艦「アラン級」の概観:70mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature in Shapeways:竣工時の姿)

「アラン級」海防戦艦は前級「ドリスへティン」の改良型として建造されました。3600トン級にやや拡大された船体を持ち、前級と同じ44口径8.2インチ単装砲を主砲として2基装備していました。副砲も同様に6インチ単装速射砲を6基、魚雷発射管を2基装備していました。

石炭専焼缶とレシプロ主機の組み合わせで、17ノットの速力を出すことが出来ました。

 

近代化改装

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海防戦艦「アラン級」近代化改装後の概観:by Rhenania)

 1910年ごろから順次、前部マストを3脚化し射撃指揮所を設置したのを皮切りに、機関の重油専焼缶への換装、魚雷発射管の撤去、対空兵装の強化など近代化改装が行われました。改装のレベルは艦によって異なり、外観にも差異が生じました。f:id:fw688i:20210228113655j:image

(近代改装で概観の変化が大きかった前部艦橋部と後橋部分の拡大:主砲塔上に対空砲、後部艦橋上にも対空火器を増強しています) 

 

オスカーII世(同型艦無し:1907年から就役)

ja.wikipedia.org
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海防戦艦「オスカーII世」の概観:86mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature in Shapeways:竣工時の姿)

 前級「アラン級」の武装強化版として1隻だけ建造されました。船体は4200トン級に拡大され、主砲は44口径8.2インチ単装砲塔2基のままですが、副砲が6インチ連装砲塔4基に強化されました。魚雷発射管を2基装備していました。

機関は、石炭専焼缶の搭載数が増やされ、18.5ノットの速力を出すことが出来ました。

 

近代化改装

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海防戦艦「オスカー2世」の近代化改装後の概観:by Mercator)

 1911年に近代化改装が行われ、前部マストを3脚化し射撃指揮所が設けられ、1937年にボイラーを重油・石炭混焼缶に変更した際に煙突の太さが変更されるなどの外観の変更がありました。兵装面では魚雷発射管の撤去が行われ、一方で対空火器の近代化、増強が行われました。
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(上掲の「アラン級」と同じく、近代改装で概観の変化が大きかった前部艦橋部と後橋部分の拡大:主砲塔上に対空砲、後部艦橋上にも対空火器を増強しています) 

 

スヴァリイェ級(同型艦3隻:1921年から就役)
ja.wikipedia.org

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海防戦艦「スヴァリイェ級」の概観:96mm in 1:1250 by Navis:ほぼ竣工時の姿を再現しています)

 

同級は結果的に、スウェーデン海軍が建造した最後の海防戦艦の艦級となりました。

設計段階で各国海軍の装備は弩級戦艦の時期に達しており、これに準じてそれまでの海防戦艦とは一線を画する設計となりました。

船体は前級を大幅に上回る6800トン級となり、これに石炭専焼缶と初めてのタービン機関を組み合わせ22.5ノットの速力を有することが出来ました。

主砲には44口径11インチ砲を連装砲塔形式で2基搭載し、副砲として6インチ連装速射砲1基と同単装砲6基、魚雷発射管2基を装備していました。

 

近代化改装

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海防戦艦「スヴァリイェ級」1番艦「スヴァリイェ」の近代化改装後の概観:湾曲煙突が特徴的。by Argonaut: )

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(他の海防戦艦の近代化改装と同じく、近代改装で概観の変化が大きかった前部艦橋部と後橋部分の拡大:後部艦橋上にも対空火器を増強しています) 

1920年代には主として射撃管制関連の改装が行われ、前部マストが三脚化され同時に艦橋が大型化されました。1930年代には主として機関の換装が行われ、全て重油専焼缶と改められました。その際に煙突形状の改装が行われ、「スヴァリィエ」は湾曲煙突、「ドロットニング・ヴィクトリア」は前部煙突にキャップ、「グスタフ5世」は集合煙突に、それぞれ外観が変わりました。

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(上掲の写真は、同級3番艦の「グスタフ5世」の近代化改装後の概観。集合煙突を搭載しています。写真はebayへの出品物の写真から。落札できなかった!

英国王ジョージ6世の戴冠記念観艦式に参加する際に、長距離の外洋航行能力を持たない隣国フィンランド海防戦艦「イルマリネン」を曳航したのは、同級の「ドロットニング・ヴィクトリア」でした。

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(上掲の写真は、同級2番艦の「ドロットニング・ヴィクトリア」の近代化改装後の概観(from wikipedia)。煙突の形状は就役時のままですが、先端にキャップをつけています。こちらもebayで見かけましたが、落札できなかった!

 

少し模型コレクション的な話を。上掲の「グスタフ5世」「ドロットニング・ヴィクトリア」ともにArgonaut社からモデルが出ています。ただし、おそらく流通量が少なく、ebayでも滅多に見かけませんし、大変高額な落札金額になってしまい、前回も最終コーナーで持っていかれました(ヨーロッパの出品者が多いので、終了時刻が日本時間では未明になることが多く、筆者が眠っている時間なのです)。

そこで現在、困ったときのShapewaysということでもないのですが(実際にはそうなのですが)、海防戦艦で出品の多いBrown Water Navy Miniatureにシリーズ制作を依頼中です。実は既に「やる予定だよ。でもその前に改装前でしょ」という返事をもらっています。そしてなんと今週。Sverige級の改装前のモデルがShapewaysにアップされました。このまま近代化改装後のモデルに進んでくれるのか、あるいは史実に従い他の海防戦艦の近代化改装から着手されるのかはわかりませんが、ラインナップの完成に少し光が見えてきました。

 

もう一つ、おまけ。未成海防戦艦のデザイン・バリエーション・モデルを入手しました。

未成海防戦艦:Project 1934

1933年(34年?)に設計された未成の海防戦艦がありました。www.naval-encyclopedia.comf:id:fw688i:20210117120604j:image

(未成海防戦艦「Project 1934」の概観:103mm in 1:1250 by Anker) 

それまでの「海防戦艦」と異なり、塔形状の前部マストやコンパクトにまとめられた上部構造など、フィンランド海軍の「イルマリネン級」にやや似た近代的な(?)外観をしています。7500トン級の船体に、武装は11インチ連装砲2基と、5インチ両用連装砲(多分)6基を予定していたようです。速力は22−23ノット程度。

 

こちらもデザインバリエーションを入手。(と言うか、こちらの方が上掲の図面には近いのかも)

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(直上の写真と直下の写真:未成海防戦艦「Project 1934」の別案の概観:by Anker: 対空砲等を艦の左右舷側に配置し、対空砲を強化したデザインになっています。図面にはこちらのほうが近いかもしれません) 

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(下の写真は両案の比較)
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というわけで今回はここまで。

 

次回は・・・。

前回の「スウェーデン駆逐艦の調達」に何らかの進展があれば、それも併せてご紹介します。多分、続々と後続艦が到着する予定ですしね。

 

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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「脇道探索」:脇道彷徨のアップデート、と、ちょっと面白いもの(A-140計画艦)作ってみた

彷徨の現在:「スウェーデン海軍艦艇」その後

本稿の読者は既にご存知とは思いますが、このところ、大変目先の「脇道探索」という名目で、「第二次世界大戦期のスウェーデン海軍」の艦艇群に興味が集中しています。

ご承知のように、スウェーデンという国は二度の世界大戦のいずれでも中立を守り続けた、稀有な国です。バルト海という大きな内海に抱かれ大洋に接続海面を持たない、という地勢的な条件が、この中立維持にとって大きな要因だった、というように考えるのですが、いずれにせよ騒然とする周辺情勢の中で「中立」を謳うことは、それ自体に大きな勇気がいったでしょうね。

 

で、そのバルト海沿岸を守った「スウェーデン海軍」の艦艇コレクションですが、二つのトピックがありました。

一つは機雷敷設巡洋艦「クロース・フレミング」の到着。

 

機雷敷設巡洋艦「クロース・フレミング(Clas Fleming)」

詳しくはいずれまた総覧編でご紹介しますが(と言っても、そんなに詳しい情報はないのですが)1750トンの比較的小さな船体に15cm単装砲を主砲として2基搭載し、200基の機雷敷設を行う能力を持っていました。

1912年就役の古い船なのですが、1939年から徹底した近代化が行われ、艦容が一変しています。改装前後のモデルが両方とも到着しました。ちょっとご紹介。

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(敷設巡洋艦「クロース・フレミング」就役時の概観:66mm in 1:1250 by Argonaut: 右下カットには機雷敷設用の二つの投下軌条口がよくわかります。就役時の機雷搭載数は100基でした)
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(敷設巡洋艦「クロース・フレミング」近代化改装後の概観:69mm in 1:1250 by Rhenania: 1939年次の大改装で機関をディーゼルに換装し、船体も延長されています。煙突の数も増えて、全く別の艦容を示しています。右下カットには機雷敷設用の二つの投下軌条口。これは残ったんですね。改装後の機雷搭載数は200基に。中立を明示する白線が目立ちます)


**既述のように、スウェーデンは両大戦で中立を保ちえたため基本的に「戦没艦」というのがありません(稀に事故等での喪失艦は発生していますが)。このため、大型艦の多くが比較的長く現役に止まっており、近代化改装、あるいは他艦種への大規模改装などを受けています。来るべき「スウェーデン海軍艦艇総覧編」では、その辺りをある程度ご紹介できればいいなあ、と考えつつ、モデルの収集、あるいは保有モデルのアップデートなど行っています。

 

もう一つのトピックは駆逐艦コレクションでの朗報。

駆逐艦コレクション」の現在:かなり嬉しいお話

本稿の前回で、筆者はスウェーデン海軍の駆逐艦を例に挙げ、筆者がどんな手順でそのコレクションを行っているか少しご紹介しました。その中で6艦級あるスウェーデン海軍の第二次大戦期の艦隊駆逐艦のクラスについては「ヴィズビュー級:Visby class」を除いてはほぼ調達の目処が立った、とご紹介していました。

その時点で、「クラース・ホルン級:Klas Horn-class」が筆者向けに出荷されていたのですが、結局手元に着いてみると、大きさ等は再現されているものの、少し「眠たい」モデルでした。

幸いなことに同級は次級の「ヨーテボリ級:Goteborg-class」とほぼ同じ艦容をしており、寸法を少し詰めればなんとか見られる形にはできそうでしたので、結局、手持ちの「ヨーテボリ級:Goteborg-class」を一隻そのように手を入れたわけですが、そもそもがそのベースとした「ヨーテボリ級:Goteborg-class」のモデル自体もあまり納得が行っていないことに対する意識がどんどん強くなってしまいました。

本稿前回で、Rhenania 社がこの分野に充実したラインナップを揃えていそう、というご紹介をしたのですが、筆者は偶々これら一連のスウェーデン海軍の艦隊駆逐艦シリーズの原点ともいうべき「エレンスコルド級:Ehrenskjold-class」のモデルを保有しています。

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(「エレンスコルド級駆逐艦の概観:73mm in 1:1250 by Rhenania: 第一次世界大戦後に建造された1000トン足らずの同級は、以降のスウェーデン海軍の駆逐艦タイプシップとなりました。モデルは素晴らしいディテイルを見せてくれます。中立を明示する白線が目立ちます)

このモデルはディテイルまで再現されており素晴らしいモデルです。当然、出来れば同じRhenania社製のモデルで他の艦級を揃えたいと。早速、通常の調達ルートを総浚いしたのですが、「エレンスコルド級:Ehrenskjold-class」とその他既に手元に保有するモデル以外の艦級は見つかりません。どうやら流通してないらしい。古いモデルですし、マイナーな船なので・・・。

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(直上の写真:Rhenania社製の「エレンスコルド級駆逐艦に比べると、手前のWiking社製の「ヨーテボリ級」がやや寝ぼけて見える、というのはわかっていただけるのではないかと。筆者としてはそれなりに手を入れているので、愛着はあるのですが。Rhenania製モデルで揃えたい、という気持ちがわかっていただければ

 
これはダメもとでご本尊に当たるしかないのかな、と、Rhenania社とのコンタクト方法を探し始めました。すると、Facebookで下記を発見。

Rhenaniaとのコンタクト

https://www.facebook.com/rhenaniajuniorminiaturen

早速、「失礼ですが」とドアをノック。「Rhenania製のスウェーデン海軍の駆逐艦を探しているのですが」と。

すると「ああ、それは親父の方だから、Facebookですぐに見つかると思うので、そちらにコンタクトしてよ。在庫してるかどうかは知らないけど、あまり期待しないで、聞いてみて頂戴」というお返事。「Jr.」と確かに表記がありますね。

で、今一度、検索して、発見。

https://www.facebook.com/Rhenania-Miniaturen-100880794897213/

 改めて「すみません」とトントン。「実は・・・」

「ああ、どこかに残っているかもしれないから、少し探してみるね。見つかったら連絡しますよ」と、気軽なお返事。社交辞令かな、と思っていると間髪入れずに「Visby-classと Klas Horn-classは見つからないけどGoteborg-class、Ehrenskjold-classとWrangel-classなら見つかったけど、どれが欲しいの?」

「できればGoteborg-classを何隻か欲しいのですが(Ehrenskjold-classは既に手元にあるし、Wrangel-classは入手の手当が済んでいます。Klas Horn-classがないなら、これまでと同じ要領でGoteborg-classを一隻ベースにしてサブ・スクラッチしようかな、と考えていたので、Goteborg-classが何隻か欲しくなってしまいました)」と、トントンと話が進んでいきます。

「そのクラスは6隻あるでしょ。どの船か指定してよ」

ええっ?一隻づう違うのか?と思いつつ「では、1番艦、2番艦、4番艦、6番艦をお願いします」と返事しました。(2番艦はKlas Horn-classのセミクラッチのベースにするつもり。番号の間隔を開けたのは、相違点があるならきっと数字を飛ばしたほうが差異が目立ったものになるだろうな、となんとなく思ったからで、相違点についての知識があるわけではありません)

「了解した。準備ができたら連絡するから。日本語の宛名も送ってよ。最近息子が韓国の人とやりとりしてるんだけど、どうも韓国語のラベルがあったほうがトラブルがなくて便利らしいんだよね」(筆者の場合、英語表記で配送が滞ったことは一度もありません。日本の郵便屋さん、配送業者さんは、皆さん優秀です。不在票に記載される差出人が時折「外国様」「Germany様」と書かれているのは、ご愛嬌です。でも、筆者でも彼らの作る宛名ラベル、特に差出人が手書きだったりしたら、読めないから)

価格は一隻15€とのこと。通常の筆者の調達ルートでの感覚的な相場が手持ちのEhrenskjold-classの中古で22€、新品で30€位ですので、かなり安い。実は一点、「いくらって言われるんだろう」と、そこが不安だったのですが、これは嬉しい驚き。やり取りの中で「型が生きていたら、また、キャストするという手もあるし」と仰っていたし、「準備ができたら」のメッセージも併せて考えると、キットで届くのかもしれません。(筆者としては、それはそれで、組み立てたり彩色したりと、手がかけられるので、とても嬉しい。パーツが小さいのを除くとね)

さらに「昨日、息子が来て、あなたから連絡あったか、と言ってたよ」と仰っていました。

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(Rhenania: Facebookの住所表記周辺の航空写真:なんか良さげなところ by Google Map)

住所を見るとドイツのライン川沿いの小さな町のようですが(デュッセルドルフの少し北側、オランダとの国境近く)、こういう結びつきがとても簡単にできるのは、それはとても嬉しいです。今は行くことが出来ないのが残念ですが。早くどこにでも安心して行けるようにならないかなあ?

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(直上の写真:というような次第で、このまま話が上手くまとまれば、多分、陽の目を見ない現在の「ヨーテボリ級」駆逐艦と、それをベースにセミ・スクラッチした「クラース・ホルン級」駆逐艦(手前:少し小さい)の勇姿を。私事の繰り返しになり恐縮ですが、手を入れた分、愛着はあるのです。特に右下カットの魚雷発射管などはプラロッドからの手作りです

 

ebayでVisby-classの出品を発見!

と、ワクワクしていると、gmailにいつもお世話になっているebay出品者のcroschwigさんから「スウェーデン駆逐艦、今週末に出品しまっせ」とメッセージを受信しました。「おお」と見ると、なんとVisby-classがあるではないですか。RhenaniaのモデルではなくStar製ですが、これもとても嬉しいお知らせ。

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(Croschwigさんのご出品の写真 by ebay: Star社製のVisby-class  入札結果が判明するのは来週末3/1 手の入れどころはたくさんありそうですが、それはそれで楽しいので。Star社だから、ちょっと乾舷が高すぎる感じなんだろうなあ、とか。まあ、金属ヤスリで削ればいいだけなのですが)

というわけで、早速、入札!

これでなんとか形が整いそう、というお話でした。

 今週をサマライズすれば、「叩け。されば開かれるであろう」ということかと。

 

てなやりとりをしながら、一方で以前から気になっていた「大和級」のヴァリエーションを作ってみました。

ここからは、全く別のお話しです。

大和級計画案(A-140計画)」から、戦艦「甲斐」(仮称)の制作

大和級」の建造にあたっては、その設計案が20数案あったことはよく知られています。

そのヴァリエーションは多岐にわたり、例えば排水量では50000トン案から70000トン案、主砲も18インチ砲10門搭載案から16インチ砲9門搭載案等々、種々検討されて、最終案として纏まったのが我々が知る「大和級」ということになります。

その概観も種々あり、その中でも筆者が気になっていたのは原案の当初から数案に展開され続けた「主砲前方集中配置案」とでも呼ぶべき形状でした。

他のディテイルの再現はさておき、この「主砲前方集中配置」だけでも再現できないか、というのが筆者のぼんやりとした「想い」だったのですが、今回それを一気に形にすることに。

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(戦艦「甲斐」(=「大和級」というより「A-140計画艦」というべきか。主砲前部集中搭載案から)の概観:主砲の前部集中配置で防御装甲の配置を効率化し、タービンとディーゼルの混載と共に、日本海軍悲願の高速性と長い航続距離を両立させることを目指しました)

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(直上の写真:「大和」(奥)と「甲斐」の概観比較:「甲斐」がほんの少し小振りで、主砲搭載位置の差異など見ていただけるかと。何故か主砲前部集中配置の方が、機動性が高そうな気がしませんか?写真ではわかりにくいですが、煙突が「甲斐」の方がやや細く、タービンとディーゼルの混載だから、と無理やり・・・)

 

きっかけは棚の整理。そこで「京商」製の「大和級」のモデルを4隻発見。正確にいうと就役時を再現した、つまり副砲4基搭載時の「武蔵」3隻と対空兵装強化時の「大和」1隻の箱入り在庫を、発見したことでした。実はこの「京商」のモデル、樹脂製でディテイルは素晴らしいのですが、船体の長さが197mmで、いっぽう実艦の長さが263.3mであることから1:1250スケールの場合、210mm程度は欲しいのですが、明らかに小ぶりに再現されています。それに併せて上部構造もやや小さめで、このためNeptune社やDelphin社のモデルと一緒に扱えず「お蔵入り」して、棚の奥にしまっていたのです。

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京商製の「武蔵」立派な台座に乗っています。ディテイルはバッチリです。下段はDelphin社製の船体との大きさ比較。約13mm短い!)

一方で、何度か本稿では触れてきているのですが、Delphin社製の「大和級」は、安価に入手でき部品取り用として大変重宝するため、何隻か船体(ハル)のみストックされています。(ちなみに本稿の表題バックに掲載されている「イージス艦大和」もベースになっているのはこのDelphin社製のモデルです)

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(上の写真:Delphin社製「大和」の船体部分(上段および下段左)と京商製「武蔵」就役時モデルの上部構造と主砲塔(下段右))

(上の写真:Delphin社製「大和」の船体部分に京商製「大和」最終時モデルの上部構造を組み合わせてみたもの(上段):「甲斐」の対空砲強化改装後の姿を再現?)
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これも本稿では何度か触れていることですが、このDelphinium 社製のモデルは、構造上パーツの分解が容易で、上部構造を取り払って船体のみを別に使用するなどの用途には大変重宝します。(だから筆者宅のDelphin 社モデルは、たいていバラバラのパーツとして保管されている事が多いのです。ごめんなさい、Delphin社さん)

こうして少し小ぶりな、しかしディテイルのしっかりした「京商」の「大和級」上部構造と、加工のし易いDelphin社製「大和級」ハルの組み合わせで、「主砲前方集中配置案」を作ってみよう、という構想に至ったわけです。

 

大和級」設計案での機関に関する議論

大和級」の多様な設計案の一つの重要な軸は、主機選択の変遷であったと言ってもいいかもしれません。

資源の乏しい日本にとって、燃料問題は常に重大な課題であり、従って高速力と航続距離を並立させることを考慮すると、燃費に優れるディーゼル機関の導入は重要な目標であったわけです。さらに大型潜水艦用のディーゼル機関の開発の進展など、これを後押しする要素も現れ始めていました。

このため原案はタービン機関のみの搭載案でしたが、その後の案は全てディーゼル機関とタービンの併載案、あるいはディーゼル機関のみの搭載案、でした。

艦隊決戦の想定戦場を、日本海軍はマーシャル諸島辺りとしていたので、航続距離はできるだけ長くしたかった、そういう事ですね。

最終的には、当時のディーゼル機関の故障の多さ、性能不足(潜水艦なら「大型」と言っても2000トン程度、1番大きな潜特型(伊400型)でも3500トン程度だったのですが、10000トン級の潜水母艦「大鯨」のディーゼル機関は所定の性能を発揮できませんでした)から、工期との兼ね合いを考え、結局ダービン機関のみの搭載案が採用されましたが。「大和級」他の戦艦群が大戦中に後方(トラック等)からなかなか前に出れなかった理由の一つは、この辺りにありそうです。

 

そんな背景を改めて振り返ると、「京商大和級」の少し小ぶりな上部構造物、特に少し細身の煙突は、念願のディーゼル機関とタービン機関を併載し長い航続距離と高速性を兼ね備えることが実現できた、というようなカバーストーリーにしてみてもいいかもしれません。「しかし就役後、慢性的な機関の不調に悩まされ、期待通りの活躍はできなかった」的なオチなのかもしれませんが。

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(筆者の世界では、タービンとディーゼルの混載で、30ノットの高速と長い航続距離を誇り、46cm砲装備戦隊の露払い的な役割で建造された「富士級」高速戦艦と共に第2艦隊に所属し、活躍する想定でした。でも実は機関の故障が多くて・・・、というようなお話かな?)

「富士級」高速戦艦については以下で。

fw688i.hatenablog.com

 

というわけで今回はここまで。

 

次回は・・・。

今回の「スウェーデン駆逐艦の調達」に何らかの進展があれば、それも併せてご紹介します。多分、続々と後続艦が到着する予定ですしね。

 

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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「脇道探索」:脇道彷徨の現在と、新着モデルから少しメーカー比較など

彷徨の現在「スウェーデン海軍艦艇」

本稿の読者は既にご存知とは思いますが、このところ、大変目先の「脇道探索」にはまっています。

少しこの「脇道探索」をおさらいしておきますと、この「脇道」は「イルマリネン級」海防戦艦フィンランド)に始まり、スウェーデン海軍の海防戦艦の発展小史、さらに北欧諸国の海防戦艦の系譜という比較的太い幹と、さらにそこからスウェーデン海軍の第二次世界大戦期の巡洋艦という枝葉を生じ、現在はその先の駆逐艦他の小艦艇、というあたりを彷徨っています。

 

都度、上にあげたような諸国の海軍(現時点では「スウェーデン海軍」ですが)に関する知識のなさに戸惑い、またそこに新たな興味を見出し、少しづつ手探りで進む、という感じです。もちろんこれに本稿の主題である「1:1250スケールの模型の検索とその入手」というプロセスが絡んできますので、結構、多くの時間をかけることになっています。

 

今回は、内輪話的に、少しこの収集プロセスをご紹介しておきます。あまり模型は出てこないけど、ご容赦を。チラチラでてくるのは、いずれまとめてご紹介します。

 

まずは、概要把握から

今回のような、特に予備知識等の少ない領域にあたる際に、まずはベースキャンプを設定します。迷った時にここに戻ろう、という地点ですね。

今回の「スウェーデン海軍」の場合、例えば下記のサイトです。

www.naval-encyclopedia.com

このサイトは、写真等も豊富で、それぞれの海軍の任務やその背景の基礎的な理解に加えて、各艦種の艦級を網羅的に記述していて、模型的な視点(つまり視覚的な要素も加えて)で 各国海軍の艦艇整備史を概観するには、大変便利なサイトです。

 

スウェーデン海軍」の駆逐艦とは?

例えば上記で示した「スウェーデン海軍」で駆逐艦を見てゆくと、いわゆる「駆逐艦」(艦隊駆逐艦)として第二次世界大戦期(1939年−1945年)には6艦級が存在し、さらにこれとは別に「coastal destroyer(「海防駆逐艦」あるいは「沿岸警備駆逐艦」というような訳がいいでしょうか?)」が2艦級存在する、ということがわかります。

細かく見ると「駆逐艦」6艦級のうち、1艦級はイタリア海軍の中古を購入したもので、あまりバルト海での活動には適性が高くなかったようです(Psilander class)。そして続く4艦級(Ehrenskjord class, Klas Horn class, Goteborg class, Visby class)は同系統の改良型であり、最後のOland classは全く新たな設計である、というようなことが理解できてきます。

同様にCoastal Destroyerの艦級を見ると、第二次世界大戦の勃発後に調達されたイタリアからの中古輸入艦(Romulas class)の艦級と、それをベースに少し小型化した国産艦級(Mode class)があることがわかります。Romulas classはイタリアから移送される際に、英海軍によってフェロー諸島スカパフロー のあるところですね)で1ヶ月抑留されたというようなエピソードはあるようですね。

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(直上の写真は、現在収集中のスウェーデン海軍駆逐艦群。右から、沿岸警備駆逐艦(coastal destroyer): 「レムス級=旧イアリア水雷艇「スピカ級」」、艦隊駆逐艦「エレンスコルド級」「ヨーテボリ級」「エーランド級」の順。詳細は、また改めてご紹介します。現在続々到着中)

 

ちょっと気になるのが、「2等駆逐艦:2nd class destroyer」4艦級とそれに続いて記述のある「水雷艇:Torpedo boat」3艦級ですね。これらは、第一次世界大戦期の駆逐艦水雷艇を近代化改装の上で補助戦力として配置していたということのようです。どこまで踏み込むのか、これは思案のしどころです。

 

模型探し

まあ、だいたいこの辺りことを頭に入れて、以前ご紹介したことのある1:1250スケール模型のデータベース、頼りになるsammelhafen.deで模型の存在を確認してゆきます。

このサイトは以前にも本稿でご紹介しましたが、筆者が模型収集に最もお世話になっているebay出品者sarge 2012さんのお父さんが運営していらっしゃるサイトです。(sammelhalfen=collection port=コレクションの港!)

sammelhafen.de

上掲のリンクは、検索情報として既にSweden, Destroyer, 2nd WW等で絞り込んだ結果です。

これを見ると、「スウェーデン駆逐艦」ではRehenania社製のモデルが最もラインナップが充実していることがわかります。どうやら私が日頃、その品質を最も評価しているNeptune社はこの領域に興味を示していないらしい、ということもわかります(まあ、マイナーで需要も多くないでしょうから、大手は興味を示さなくてもいいのかも。筆者が興味を示したのも、上掲のような偶然から迷い込んだようなものですので。でもちょっと残念、かも)。

次にストックをゴソゴソさらってみて、筆者の在庫をチェック。

 

そして調達へ 

こうした情報を入手した上で、次に主な調達先として、以下のようなサイトを検索。これらは個別のショップサイトですが、その中でも中古品のコーナーを主に、筆者は常時サーチしています。

Antics Online Model Shops and Hobby Stores

Ships-and-more - Ships-and-more Homepage Startseite webshop

mikes-modelle.de - Index

Waterline-Ships, A great place to buy 1:1200/1250 waterline ships

The World of Miniature Ships – 1250Ships.com

LaWaLu models

Olivers Welt der Schiffsminiaturen - Schiffsmodelle 1:1250

1/1250 Coastal Forces : The Last Square, Gaming and Hobbying for Two Decades

そしてなんと言っても最も利用頻度が高いのは、こちら。

Electronics, Cars, Fashion, Collectibles & More | eBay

そう、eBayですね。

 

これらの過程を経て、懐具合とも慎重に相談の上でモデルの調達に入るわけですが、今回ご紹介した「スウェーデン海軍の第二次世界大戦期の駆逐艦」については、艦隊駆逐艦6艦級と海防駆逐艦(coastal destroyer)2艦級については、Visby classを除いては、ほぼ調達の目処が立ちました。二等駆逐艦(2nd class destroyer)と水雷艇も半分は目処が立ちました。ついでに潜水艦やその他の小艦艇もいくつかは入手できそうです。

後は到着を待ち(だいたい10日前後?)、塗装等、少し手を入れる時間を見て、だいたい1ヶ月後には、本稿でご紹介できそうな感じ。まあ、そこまでこの楽しい「彷徨」は続く、という訳です。

 

さて問題はどうしても見つからないVisby classですが、もう少し前出のサイト等を探しながら、1:1200-1:3000 SCALE NAVAL BUY, SELL,TRADE & COMMISSION GROUP OF ALL ERAS(Face Book上の情報交換グループです。ストックモデルの売買も行われているようなのですが、筆者はまだ使ったことがありません)でも、尋ねてみることにします。見つかるといいなあ。

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(現時点で入手見込みの立たないVisby級駆逐艦。入手不可能なら類似艦を下敷きに作ってしまおうか、という発想になるのですが、実はVisby級は前級のGoteburg級よりも船体が大きく、主砲の装備数は同じく3基ながら中央砲の配置がそれまでの煙突間から艦尾部に2門集中配置に変更されており、筆者の手技ではちょっと難しいかも。大きなモデルをベースに小さくするのは、比較的容易なのですが、大きくする、というのは、これは結構難度が高い。主砲配置の際差異は、煙突の位置を含んだ上部構造全般の配置に及び、これも大変です。こういう際には本来は工作が容易な筈の1:1250スケールがかえって作業にふりに働きます)

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(直上の写真は、計画だけに終わったスウェーデン海軍の海防戦艦。1936年計画で設計案が提出されましたが、結局、起工されませんでした。上の2隻は対空砲の配置バリエーション。詳細は、また改めてご紹介します。海防戦艦も近代化改装後のモデル等が続々と到着中。これも併せてまたいずれ)

 

さて、次は新着モデルのご紹介と、そのモデルを巡って、1:1250スケールモデルの製作メーカーについて少しお話を。

新着モデルのご紹介

今回ご紹介する新着モデルはNeptune社製の「セントルイス級」軽巡洋艦です。

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(「セントルイス級」軽巡洋艦の概観。150mm in 1:1250 by Neptune:「ブルックリン級」の対空兵装改良型)

 

同級は、2021年の年頭、本稿の「制作モデルのアップデートと、アメリカ海軍:第二次世界大戦期の巡洋艦総覧」の回(2021年1月10日)で、「ブルックリン級」軽巡洋艦の準同型艦として紹介しています。

fw688i.hatenablog.com

この際にはNeptune社製のモデルが未入手でしたので、Hansa社製のモデルで、「ブルックリン級」と「セントルイス級」の比較を行いました。

「ブルックリン級」は、ロンドン条約の制限化で設計されたいわゆる条約型軽巡洋艦の艦級で、重巡洋艦と撃ち合っても引けを取らない重防御の大型船体と、速射性の高い6インチ砲を15門装備して手数の多さで相手を圧倒する高い攻撃力を兼ね備えた軽巡洋艦でした。日本海軍の「最上級」軽巡洋艦(のち主砲を換装して重巡洋艦に改装)や、英海軍の「サウサンプトン級」「グロスター級」「エディンバラ級」などの軽巡洋艦が同様の設計思想で建造されました。

今回モデルを入手した「セントルイス級」軽巡洋艦は、「ブルックリン級」の改良型で、5インチ対空砲を、「ブルックリン級」の単装砲架形式8基から、より機動性の高い連装砲塔形式4基に変更し、艦橋や後橋を併せてやや小型化し復原性をより高めた形状となっています。

 

「ブルックリン級」軽巡洋艦にかんする記述は上掲のリンクから元の回に手読んでいただくとして、本稿ではHansa社製のモデルで「ブルックリン級」「セントルイス級」の比較を行っていました。その際に使用していたのが以下の写真2点でした。

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(直上の2点の写真は、「ブルックリン級前期型」と「後期型=セントルイス級」の概観比較をしたもの。対空装備の差が、微妙に艦橋構造や後橋の構造などに及ぼしているのが分かります。モデルはいずれもHansa製)

 

下の写真は今回入手したNeptune社製の「ブルックリン級」と「セントルイス級」の比較で、対空砲の装備形態の他に艦橋・後橋の小型化も再現され、Neptune社製のモデルの品質の高さを改めて認識する結果となりました。

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(直上の2点の写真は、「ブルックリン級前期型」と「後期型=セントルイス級」の概観比較をしたもの。対空装備の差と合わせて艦橋・後橋などの上部構造が簡素化、小型化されているのがよくわかります。モデルはいずれもNeptune製)

 

本稿は艦艇の発達史を、可能な限り「模型」で追体験するのが本来の目的ですので 、できればメーカー間の精度の差異などは気にしたくないのですが、各社の模型のラインナップからも、あるいはもう少し現実的な側面では経済的な視点からも、全てを同一供給先(模型メーカー)で揃えるわけにもいかず、筆者の一定基準を満たしたモデルで可能な限り揃えてゆく、という方針でコレクションを続けています。従って上記のようなことも時にはあるかと。

まあ、これからもこの方針で続けてゆきますので、お付き合いくだされば幸いです。

 

ということで今回はおしまい。

 

さて、次回はどうしましょうかね。

北欧編は、もう少し時間がかかりそうです。

あるいは「第二次世界大戦のフランス巡洋艦」なら間に合うか?(何度か繰り返しているので「やるやる詐欺」化しているかも)

第二次世界大戦シリーズなら、「ドイツ海軍駆逐艦」「イギリス海軍駆逐艦」「アメリカ海軍駆逐艦」などもそろそろという感じ。今、揃っていないのは、かなり難航しそうなので、一旦見切りで?大きな展開としては「日本海軍空母発展史」も、一応、モデルは揃ってきました。

後は、いずれもちょっと纏まった時間が作れるかどうか。

 

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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DDH「いずも級」二番艦「かが」到着!

DDH「いずも級」二番艦「かが」の到着

前回で少し予告した通り、海上自衛隊護衛艦のうち唯一、コレクションから欠けていた「いずも級」を入手しました。F -toys製のインジェクションキットです。

今回は本稿としては珍しく(?)予告通り、ご紹介します。

 

例によって、本稿の「海上自衛隊 護衛艦発達史(5) 空母型DDHの登場」の回(2019年10月)で、「いずも級」DDHについて触れた記述があるので、少し関連部分も含めて、再掲しておきます。(全文は下記で)

fw688i.hatenablog.com

 

(以下、抜粋)

全通甲板型護衛艦(空母型DDH)の登場

潜水艦の静粛化、高性能化を想定する場合、多数のヘリコプターを搭載する空母型護衛艦保有は、海上自衛隊にとって、多年の念願であった。本稿で既述ではあるが、遡れば、古くは海上自衛隊発足時に既に米海軍からはヘリ空母として運用可能な小型空母の貸与の申し出があった。

併せて、冷戦終結後の複雑化する周辺の国際状況、非正規軍事勢力への対応等を想定した場合、あるいは要請が高まりつつある国際平和活動、災害救援活動等にも、機動性に富む多数の航空機運用が可能な艦艇の保有は、次第に必要性の度合いを高めた。

こうして、いよいよ海上自衛隊は空母型DDHを中心とした編成の時代を迎えるのである。

 

という前文に続いて、海上自衛隊初の空母型護衛艦「ひゅうが級」DDHのご紹介へと続いています。

 

 DDH ひゅうが級ヘリコプター搭載護衛艦(2009- 同型間2隻)

ja.wikipedia.org

Hyūga-class helicopter destroyer - Wikipedia

海上自衛隊が初めて導入した空母型(全通甲板型)ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)である。最大の特徴は、なんと言っても多数のヘリコプターの運用能力がある事で、固有の搭載機こそ、「はるな級」DDHや「しらね級」DDHと同様に3機であるが、格納甲板には8機分の収納スペースが確保されており、最大10機のヘリコプター運用能力があるとされている。

併せて、護衛隊群司令部の収容に対応する司令部施設も設計当初から組み込まれており、高い通信機能等も保有し、災害時の対策本部機能、海外派遣時の統合任務部隊の司令部機能などへの活用が期待されている。

これらを具現化するために、船体は非常に大型化し、護衛艦としては初めて基準排水量が10000トンを大きく超える大型艦となった(13950トン、30ノット)。

(158mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)

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 同級がDDHと規定され、いわゆる通常の航空機の運用に特化した「空母」と異なる点は、Mk.41 VLS 16セルから、対空・対潜ミサイルを発射する護衛艦としての戦闘能力を有し、併せて対潜短魚雷発射管も保有しているところである。

加えて個艦防御用には、2基のCIWS保有している。

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(直上の写真は、飛行甲板最後尾に配置されたMk.41 VLS)

 

DDH いずも級ヘリコプター搭載護衛艦(2015- 同型艦2隻)

ja.wikipedia.org

Izumo-class multi-purpose operation destroyer - Wikipedia

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(200mm in 1:1250 F-Toys 現用艦船キットコレクションをほぼストレートに組んだもの)

前級「ひゅうが」級をさらに大型化し、航空機運用能力や多用途性を強化したものとなっている。「ひゅうが」級の船体を排水量で6000トン、長さにして51m拡大し、搭載機数も固有の艦載機を7機、最大搭載機数を14機とした。(19500トン、30ノット)

一方で個艦戦闘能力は抑えられ、近接戦闘用のCIWS2基とSea RAM近SAMシステム2基を搭載するのみとなった。

ja.wikipedia.org


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(「いずも級」の固有武装のアップ:艦尾に配備されたSea Ram(上段手前)とCIWS。艦首のCIWS(下左)と艦橋前のSea Ram) 

上述のように固有武装を最小限にした背景には、同級はもはや単独での運用を想定されておらず、すなわち常に他の護衛艦を伴い、その旗艦機能を果たすことを想定されていることに準じている。この構想のもと、前級「ひゅうが」級で設定された司令部施設は充実されており、100名規模の統合任務部隊司令部が収容できる多目的スペースを有している。

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(「ひゅうが級」(手前)と「いずも級」の大きさ比較。「いずも級」がいかに本格的かを示している?)

「いずも級」は以降の整備時に艦首部を角形に変形しするなど、固定翼機の配備にも対応できるような改修を施される予定。最大の改修ポイントは、飛行甲板や上部構造物の熱耐性を上げることになると思われる。

 

そして同回では、発展形として空母「いぶき」も、こんなふうにご紹介しています。

 

DDHからDDV(固定翼機搭載型護衛艦)へ 

既に前出の「いずも級」DDH 竣工前から本級での固定翼機搭載の可能性が議論されていた。防衛省の公式見解としては、検討の事実すら否定しているが、本級が最も近い距離にある事は間違いない。

「いずも級」で実現するかどうかはさておき、本稿では既にDDV「いぶき」が登場しており、これを再度紹介しておくこととしたい。

 

ja.wikipedia.org

正確には、本稿での「いぶき」は、オリジナルの設定通り「いずも型護衛艦」にスキージャンプ台形式の飛行甲板をつけたもので、例によって「いずも型護衛艦」のモデルを既に上市されていた3D Printing メーカーさんにジャンプ台の追加をリクエストし、制作していただいた。

www.shapeways.com

製作者のAmature Wargame Figures(Nomadire)は、主として第二次大戦以降のいわゆる現用艦(もしくは計画艦)に多くの作品があり、スケールも実に多岐にわたるラインナップを揃えていらっしゃる。今回のリクエストのような既成モデルの改変、あるいはスケール間のコンバージョンにも比較的気楽に対応してくださるので、大変ありがたく利用させていただいている。

モデルの素材は、White Natural Versatile Plasticというやや柔らかめで粘度のある樹脂で、下地処理をした後、普通に塗装ができる。(私の場合にはサーフェサーで下地処理をしたのち、エナメル塗料で塗装をしています。基本、全て筆塗りです)上掲の写真の通り、マスト、CIWS、SeaRAMなどの対空火器も全て一体整形された完成形で手元に届いた。下記の写真ではマストのみ、F-toys製のストックモデルと交換し、仕上げた。

搭載機も同様、3D Printing メーカーさん(SNAFU Store:   SNAFU Store by Echoco - Shapeways Shops)によるもので、F-35JBの他に、X-47Bという無人機(下の写真では、ブリッジ後方の黒っぽく塗装されている数機)を搭載している、という設定になっている。(多分、オリジナルの設定はそんなことにはなっていないと思います。ヘリはF-toysのモデルから流用)

 

(Ibuki: 26,000t, CWIS *2, SeaRAM *2, F-35JB *15 etc, 202mm in 1:1250)

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(直上の写真は「いずも級」DDH(手前)と「いぶき」の大きさ比較。「いぶき」は「いずも級」の設計をベースにした為、外観や上部構造物の配置は「いずも級」に準じたものになっているのがよくわかる。固定翼機の運用を想定した艦首形状や スキージャンプ台の配置が、架空艦とはいえ興味深い)

kuboibuki.jp

www.youtube.com

 

(これらの内容は前掲の「海上自衛隊 護衛艦発達史(5) 空母型DDHの登場」にも反映しておきます)

 

ドイツ海軍Uボートのコレクションにも新顔が加入 

本稿下記の回で、第二次世界大戦期のドイツ海軍Uボートの各形式についても概論しています。その中で、いくつかコレクションに欠けていたもののうち、II型とVIID型のモデルを入手しましたので、ご紹介します。

fw688i.hatenablog.com

 

沿岸警備用、小型潜水艦:みんな最初はこれで訓練したのかな(?)

II型(A〜Dタイプまで、同型艦60隻)

沿岸警備用に設計された小型潜水艦で、250トン級の船体に艦首部に魚雷発射管3基を持ち、魚雷5本を搭載していました。水上速力は13ノット、水中速力は7ノットで圧壊震度150mとされていました。(いずれもIIA型)

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(II型:U9の1:350スケールモデル。下段右の写真は、II型の特徴である艦首の3門の魚雷発射管。(底辺を上にしたような逆三角形配置なんだけど、ちょっと暗くてわかりにくいかな?)私がずいぶん以前に楽しんだUボートのPCゲームでは、II型の艦長からキャリアをスタートしました)

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from uboat.net

小改良を加えながらIIAからIIDまでの3タイプが建造され、同型艦は総数で60隻でした。大戦初期には北海、バルト海等、近海での作戦行動を行いましたが、大西洋等の遠洋に戦場が移ると作戦従事は困難で、主として訓練用と沿岸警備に用いられました。乗組員は25名でした。

ja.wikipedia.org

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(U9:II型とU552:VIIC型の大きさの比較)

 

VII型派生形:機雷敷設潜水艦

VIID型(同型艦6隻)

VIID型はVIIC型をベースに艦橋後方に機雷敷設のための機雷筒ブロックを挿入した機雷敷設潜水艦で、900トン級のやや大きな船体を持ち、魚雷発射管5基と魚雷12本の他に機雷15基を敷設する能力がありました。機雷敷設ブロックの挿入により船体が延長され、燃料搭載量が増えたため、11200海里という長大な航続距離を持っていました。

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(直上の写真: VIID型の概観:61mm in 1:1250 by Neptune: 下段右では艦橋後部の特徴である機雷射出筒がよくわかります)。

 

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(U214: VIID型の1:350スケールモデル。艦橋後部の機雷射出筒が、よりよくわかります)

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(上の二点の写真は、いずれもVIID型とVIIC型の1:1250スケールと1:350スケールでのそれぞれの艦型比較。いずれでもVIID型がVIIC型をベースに艦橋後部に機雷射出筒関連のブロックを挿入して設計されたことがよくわかります)

 

(これらの内容は前掲の「ドイツ海軍の第二次世界大戦での通商破壊戦:Uボート総覧」にも反映しておきます)

 

ということで今回はおしまい。

少し予告編「北欧諸国の海防戦艦

fw688i.hatenablog.com

上記の回で少し火がついた感のある「海防戦艦」ですが、フィンランド、スウエーデンについづいて、続々とバルト沿岸の北欧諸国のモデルが到着中です。現在、鋭意、ディテイルアップと塗装に構想中、あるいは奮闘中。近いうちにご紹介できるかも。

調べるにつれて(そんなに日本語で当たれる資料もないのですが)、奥が深くて結構面白い。興味深い「脇道」ではありますが、なかなか総覧、というところに踏み込むには・・・。でも、そういう迷走も含め、「脇道探検」満喫中です。

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(直上の写真は、続々と到着しつつある北欧諸国の海防戦艦群。右から、デンマーク海軍「ヘルルフ・トロル級」ノルウェー海軍「ハーラン・ホールファグレ級」同海軍「ノルゲ級」そしてスウェーデン海軍「ドリスへティン」の水上機母艦への改装後のスクラッチ途上の姿。1番左は北欧でも海防戦艦でもありませんが、制作途上のフランス海軍機雷敷設巡洋艦「プリュトン」。ちょっと塗装がワンパターンになってきているかも、という反省がむくむくと湧き上がりつつ) 

 

という訳で、次回はどうしましょうかね。

北欧編は、もう少し時間がかかりそうです。一旦、北欧海防戦艦編で中間報告、ならありかも。

あるいは「第二次世界大戦のフランス巡洋艦」なら間に合うか?

第二次世界大戦シリーズなら、「ドイツ海軍駆逐艦」「イギリス海軍駆逐艦」「アメリカ海軍駆逐艦」などもそろそろという感じ。今、揃っていないのは、かなり難航しそうなので、一旦見切りで?大きな展開としては「日本海軍空母発展史」も、一応、モデルは揃ってきました。

後は、いずれもちょっと纏まった時間が作れるかどうか。

 

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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コレクションのミッシングリングの補填とその周辺(「初鷹級」急設網艦と護衛艦「いしかり」)

今回はこれまでコレクションでかけていたいくつかの艦艇が整備できたので、そのご紹介と、そこから少し派生した話題も。

 

まずは、下記の「日本海軍の機雷戦艦艇小史」で欠けていた「初鷹級」級設網艦のご紹介。

fw688i.hatenablog.com

 

下記の記述は再録です。

「初鷹級」急設網艦 (1939-:同型艦3隻「若鷹」のみ残存)

ja.wikipedia.org

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(「初鷹級」急設網艦の概観:76mm in 1:1250 by Oceanic:モデルは8cm高角砲への主砲換装後の姿)

「初鷹級」急設網艦は、「白鷹」以来、約10年ぶりで建造された急設網艦です。基本設計は「白鷹」の改良型で、乾舷を低くして復原性を改善、主機を「白鷹」のレシプロ機関から蒸気タービンとして速力を20ノットに向上させ、併せて航続距離を「白鷹」の1.5倍としています。重量軽減のために主兵装を40mm機関砲としています。その他、復原性の改善のために煙突を低くするなど、全体的に駆逐艦のようなスマートな艦型となりました。

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(日本海軍の急設網艦の比較:「白鷹」(奥)と「初鷹級」(手前)。「初鷹級」が「白鷹」で課題であった復原性に配慮された設計であったことがよくわかります)

 

後に不具合の多い主兵装40mm機関砲を8cm高角砲や25mm機関砲に換装するなど、兵装には変更が加えられました。f:id:fw688i:20210131102927j:image

(本級は船団護衛等の任務につく機会が多く、対空戦闘、特に対潜戦闘での40mm機関砲の威力不足が課題とされ、順次8cm高角砲へ、主砲を換装していました)

「初鷹級」は、いずれの艦も太平洋開戦当初から上陸作戦支援や船団護衛につく事が多く、本来の機雷敷設・防潜網敷設任務に従事する機会はあまりありませんでした。特に1944年からは船団護衛が主任務となり、敷設関連の軌条を撤去して対潜装備が配置されています。

1944年9月に「蒼鷹」、1945年5月に「初鷹」がいずれも米潜水艦の雷撃で失われ、「若鷹」のみ終戦時に残存していました。

 

依然として、機雷敷設艦八重山」と敷設艇は未入手です。引き続き、鋭意検索中、とお伝えしておきますが、いずれも古いモデルだったり、そもそもがマイナー艦(旧日本海軍機雷敷設艦や敷設艇ですからね。誰が欲しいんだろう?)で、全体の流通量が少ないのでしょうね。なかなか巡り会えません。が、「継続は力なり」を信じて。

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(急設網艦と敷設艇の艦型比較:手前から、「燕級」敷設艇、「夏島級」敷設艇、「初鷹級」急設網艦、急設網艦「白鷹」の順)

 

海上自衛隊の艦船を少し充実

次は海上自衛隊に時間を下って、護衛艦のコレクションで欠けていた「いしかり」のご紹介を。

「いしかり」は北方警備専従を想定して建造された沿岸警備用の護衛艦です。

 

以下の回で触れた記述があるので、そちらを補完する形式で。

fw688i.hatenablog.com

 

DDE 護衛艦いしかり(1981- 同型艦なし)

ja.wikipedia.org

JDS Ishikari - Wikipedia

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(護衛艦「いしかり」の概観:67mm in 1:1250  by Hai: マスト先端部を少し触ったのですが、少し大きすぎたかも)

 護衛艦「いしかり」およびその拡大改良型である「ゆうばり級」護衛艦は、ともに、主として北方配備を想定して建造された沿岸警備用護衛艦(DDE)である。

当時、特に北方海域で仮想敵と想定されたソ連海軍は、艦対艦ミサイルを装備した大型対潜巡洋艦に加え、同じく艦対艦ミサイルを主兵装としたミサイルコルベットなど小型艦の配備傾向が見られ、これに対抗するために艦対艦ミサイルを装備した護衛艦の導入が求められた。

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(「いしかり」の主要兵装の拡大:76mmコンパクト砲と艦橋前に据えられたボフォース対潜ロケットランチャー(上段)、対艦ミサイル「ハープーン」の発射キャニスター(下段))

 

「いしかり」および「ゆうばり級」には、艦対艦ミサイルハープーンが特徴的な4連装キャニスター形式で、自衛艦として初めて搭載された。

ja.wikipedia.org

艦対艦タイプのハープーンは約140kmの射程を持ち、発射時に与えられた目標の位置データに向けて完成誘導されたのち、最終段階で自らの搭載レーダーによるアクティヴ・ホーミングにより目標に突入する。

 

また「いしかり」は自衛艦として初めて機関をガスタービンにした記念すべき艦でもある。小型の艦型へのガスタービンの採用により、その船型は中央船楼型となり、この船型は「ゆうばり級」でも踏襲された。

ハープーン以外の兵装としては、対潜装備としてボフォースロケットランチャーと短対潜誘導魚雷を装備している。

主砲には62口径3インチ単装速射砲(76mmコンパクト砲)を、これも自衛艦としては初めて採用した。

ja.wikipedia.org

高い速射性能を持つ速射砲を小型軽量で優れた動作性を有する砲塔に搭載した個艦防御用の無人速射砲システムで、1分間に85発の発射速度を誇っている。(スーパーラピッドタイプでは1分間に120発)砲塔直下に回転式の弾倉を2層、もしくは3層備え、弾丸を供給する。

コンパクトで軽量な特性から、ミサイル艇などの小型艦艇にも搭載可能である。

 

DDE ゆうばり級護衛艦(1983- 同型艦 2隻)

ja.wikipedia.org

Yūbari-class destroyer escort - Wikipedia

(「ゆうばり級」護衛艦の概観:71mm in 1:1250  Hai製モデルをベースに主砲塔のみSNAFU store製のWeapopn setに換装)

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前述のような構想で建造された護衛艦「いしかり」であったが、元来が沿岸警備を担当していた「駆潜艇」の代替から発送された計画であったためもあって、船体が小型で、装備の目覚ましい進歩に対して余裕がなく、かつ北方海域の荒天下での運用にもやや課題があったため、本来同型艦として構想されていた2番艦以降の設計が見直され、一回り大きな「ゆうばり級」護衛艦が誕生した。

機関、兵装等は「いしかり」を踏襲したものとなった。中央船楼が延長されそこにCIWSを追加する計画もあったらしいが、実現されなかった。

 

「いしかり」を拡大改良した本級であったが、艦型が小型に過ぎるという評価は同級でも拭えず、後に「あぶくま級」護衛艦の登場を待たねばならなかった。

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(「いしかり」(手前)と「ゆうばり級」の概観比較:「ゆうばり級」が「いしかり」の拡張改良版であることがよくわかります。 「いしかり」:1290トン 25ノット 「ゆうばり級」:1470トン 25ノット)

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(手前から「いしかり」「ゆうばり級」そして海上自衛隊のDDEの現時点での最終形「あぶくま級」の艦型比較:これらの3艦級については、以下でご紹介)

fw688i.hatenablog.com

 

この辺りまで、過去の稿へも反映しておきます。 

(コラム)文体のお話:

ちょっと内輪の話で恐縮ですが、本稿ではしばしば文体が変わってきています。実は筆者はすごく気になっていて、どこかで統一すべきだろうか、などど考えています。・・・が、きっとやりません。

少しネタバラシ的にお話しすると、本稿を始めた頃、実は十回くらいのブログで「日本海軍の主力艦の発達史」だけをやるつもりだったのですが、当時、NHKのミニシリーズ「坂の上の雲」の再放送を見ていまして、司馬遼太郎先生の文章をベースとした渡辺謙さんのナレーションがお気に入りでした。ですので、実はブログの最初期は「渡辺謙さんのナレーション」を録音したものを繰り返し聞きながら、筆者が聞きたい文章を書いてみよう、という試みを行ったのです。筆者の周りからは「よくあんなに読みにくい文章が書けるな」という声もあったのですが、「一度、渡辺謙さんの声をイメージして読んでみてください。きっと良さがわかるから」と答えていました。

しかし、次第に回が進むにつれ、そうもいかなくなり、かと言って急に文体を変えるわけにもいかず、「渡辺謙さん」だけがどこかへ行ってしまって、「普通の読みにくい文章」になっていきました。

やがて、当ブログの当初テーマを終えて、海上自衛隊の艦船シリーズが一段落したあたりから、ようやく少し楽な文章に変えていこう、という決心がつき、今に至る、という感じです。

 

ですので今回のように、ミッシングモデルの補完のような場合には、元の回の文体をできるだけ踏襲しようと。読みにくくてごめんなさい(まあ、長い文章でしたが、書きたかったのは最後の一文です。気にはしているんですよ、一応ね)

 

次は、前述の「いしかり」「ゆうばり級」に少し出てきた「海上自衛隊駆潜艇」のご紹介です。これまで本稿では護衛艦の発達史を追ってきたため、「駆潜艇」については触れてきませんでしたが、前述の両級は駆潜艇の代替として設計された沿岸警備護衛艦であるため、少しご紹介しておきましょう。モデルもあるしね。

 

PC うみたか級駆潜艇(1959-1989同型艦 4隻)/PC みずとり級駆潜艇(1960-1989同型艦 8隻)

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

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(「みずとり級」駆潜艇の概観:48mm in 1:1250  by Hai)
海上自衛隊は沿岸哨戒、港湾哨戒用の艦艇として「駆潜艇」の艦種を保有していました。「駆潜艇」の艦級としては、上記の2級以前に「かり級」「かもめ級」「はやぶさ」などが存在しました。いずれも400トン程度の大きさの船体を持ち、20ノット程度の速力を有していました。(「はやぶさ」のみやや小型で速力は26ノット)

兵装は40mm機関砲を主砲として、対ヘッジホッグや爆雷投射機、投射軌条を装備しています。

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(「みずとり級」駆潜艇の主要兵装:40mm機関砲と艦橋前のヘッジホッグ(上段)と、艦尾部の爆雷投射兵装類。他ん魚雷発射管は未装備か?)

「うみたか級」「みずとり級」は第二世代とも言え、兵装として短魚雷発射管もしくは落射装置を装備しているところが特徴と言えます。

 

周辺諸国の潜水艦配備が原子力潜水艦装備に移行すると、「駆潜艇」的な装備では対応に不足が生じ、本来の対潜哨戒は「護衛艦」へ、水上沿岸哨戒は「ミサイル艇」等の高速艇に移管されて行くことになります。

余談ですが前出の「はやぶさ」の艦名は、現在では「ミサイル艇」に引き継がれています

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(「うみどり級」駆潜艇(手前)と「はやぶさ級」ミサイル艇(奥)の艦型比較の概観)

 

はやぶさ級」ミサイル艇(2002- 同型艦6隻

ja.wikipedia.org

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(「はやぶさ級」ミサイル艇の概観:43mm in 1:1250  by  F-toys:本級のモデルはF-toysの「現用艦船キットコレクションの一部のおまけとして同梱されています)
沿岸警備用の現役高速艇です。

200トンの線型を持ち、76mm単装速射砲と90式SSM(艦対艦ミサイル)連装発射機を2基搭載しています。主機をガスタービンとしてウォータジェットポンプを推進機として44ノットの高速を発揮できます。f:id:fw688i:20210131104858j:image

(「はやぶさ級」ミサイル艇の主要兵装:ステルス性に配慮した設計の76mm速射砲(上段)と日本版「ハープーン」というべき90式SMSを搭載しています(下段))

2002年から6隻が配備されています。2021年から順次退役し、新型の護衛艦と建造中の「哨戒艦」(どんな船だろう?)に現在の任務を引き継ぐ予定です。

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(「はやぶさ級」ミサイル艇の勢揃い、というタイトルをつけるには、ああ、一隻足りない。残念!)

一方で「はやぶさ級」はフィリピンとの防衛協力でのフィリピン側からの貸与希望装備のリストにあげらているとの情報もあります。南シナ海に火種を抱えるフィリピン海軍としては、高速・高性能の本級は欲しい装備でしょうね。

 

予告編:「いずも級」DDH  近日入手

さて、「いしかり」のラインアップ入りで、いよいよ現行の護衛艦のうち、手元にないものは最新鋭艦の一つと言っていい「いずも級」DDHだけになりました。これも近日中に入手できる予定ですので、入手次第、ご紹介します。

 

ということで、今回はここまで。

 

次回はもしかすると「いずも級」紹介できるかも。一連の北欧諸国の「海防戦艦」も手元に届く予定です。そのあたりの話でも?

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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続・脇道探検:スウェーデン海軍の巡洋艦、その他・中間報告

今回は前回の流れの続きで、スウェーデン海軍の巡洋艦系譜とその他の艦艇をご紹介。

今回もサクッと。短くて読みやすい、かも。

 

スウェーデン海軍の巡洋艦

少しおさらい。

スウェーデンという国は、ボスニア湾(スウェーデンフィンランドの間の湾)からカテガット海峡スカンジナビア半島デンマーク間の海峡)に及ぶ長い海岸線をバルト海に有しています。その海岸線のほぼ中央に首都ストックホルムが位置しています。

これらの長い海岸線を防備することがスウェーデン海軍の主要な任務で、そうした観点に立つと航洋性の高い巡洋艦のニーズはそれほど高いとは言えないかもしれません。

そのせいか、スウェーデン海軍が保有した巡洋艦は5艦級、そのうち2つの艦級は、沿岸防備に特化した艦級(水雷巡洋艦敷設巡洋艦)と言ってもよく、いわゆる航洋性の高い「巡洋艦」は3艦級4隻です。

 

Örnen級水雷砲艦(同型艦5隻?4隻?:1896年より就役)

en.wikipedia.org

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(Örnen級水雷巡洋艦の概観:53mm in 1:1250 by Oceanic)

いきなりですが、なんて日本語で表記すればいいのでしょう?

Örnen級水雷巡洋艦。800トンの船体を持ち20ノットの速力を持つ小さな巡洋艦です。4.7インチ単装砲を2基搭載し、38cm口径の魚雷発射管を1基装備していました。形態と装備から見て、水雷砲艦という呼称の方がしっくりくるかもしれません。本級を旗艦として、水雷艇を中心とした沿岸警備用の水雷戦隊が構成されました。その後旧式化すると、水上機母艦練習艦として第二次世界大戦期まで使用されました。

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(Örnen級水雷巡洋艦の率いる水雷艇部隊:水雷艇は5号型:Class N°5 (1906):かな?)

 

装甲巡洋艦「フィルギア」(1907年就役:同型艦なし)

ja.wikipedia.org

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装甲巡洋艦「フィルギア」の概観:93mm in 1:1250 by Brown Water Navy miniarure: 近代化改装後、第二次世界大戦期の姿)

www.shapeways.com

 スウェーデン海軍が初めて建造した本格的な巡洋艦です。装甲を持ついわゆる装甲巡洋艦で、水雷戦隊の火力支援を行う艦種として設計されました。装甲巡洋艦としては小ぶりの4300トン級の船体に6インチ連装速射砲4基を搭載していました。就役時には21.5ノットの速力を発揮することが出来ました。

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(モデルは近代化改装後の姿)

1940年前後に、艦首形状の修正や対空兵装の増強など、近代化改装が行われ、速力は26ノット、外見的には3本煙突から2本煙突となりました。近代化改装後も、ドイツやソ連巡洋艦に対抗するには既に旧式ではありましたが、“White Swan of Sweden”の呼称で親しまれました。1953年に退役するまで、練習艦として使用され続けました。

 

敷設巡洋艦「クロース・フレミング」(1914年就役:同型艦なし)

en.wikipedia.org

(no photo: 新造時のモデルを調達中です)

第一次世界大戦開戦時に建造された敷設巡洋艦です。1500トン級の船体を持ち、4.7インチ単装砲4基を装備し、機雷を190基搭載することが出来ました。スウェーデン海軍初の、タービンを機関として搭載した巡洋艦でもあります。1939年に機関のディーゼルエンジンへの換装を含む近代化改装が行われ、やや船体が拡張され、煙突が3本になるなどの外観が変化しています。第二次世界大戦後、退役しています。

 

航空巡洋艦「ゴトランド」(1934年就役:同型艦なし)

ja.wikipedia.org

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航空巡洋艦「ゴトランド」の概観:109mm in 1:1250 by Amature Wargame Figures)

www.shapeways.com

 スウェーデン海軍は1929年代から艦載機による防空を目的とした巡洋艦の建造を計画しました。本稿の前回でご紹介した海防戦艦「ドリスへティン」が水上機母艦に改造されたのも、この構想の一環です。

「4500トン級の水上機母艦案や5500トンの航空巡洋艦案等の検討を経て、本艦は世界初の航空巡洋艦として建造され、4700トンの船体に、6インチ連装砲塔2基、同単装砲2基(ケースメート形式)計6門の主砲を有し、重油専焼缶とタービンの組み合わせで速力27.5ノットを発揮しました。航空艤装としては艦尾部に広い飛行整備甲板を持ち、搭載機6機を定数とし、最大12機まで搭載できる設計でした。(甲板係止:10機・ハンガー収容:2機)搭載機は飛行整備甲板と艦上部構造の間に据えられた回転式のカタパルトから射出される構造でした。

三連装魚雷発射管を両舷に装備し、機雷敷設能力も兼ね備えていました。

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(「ゴトランド」の細部。艦首部の連装主砲(上段)、艦中央部の対空砲群(中段)、艦尾部の連装砲塔と回転式のカタパルト、飛行整備甲板(下段))

巡洋艦という目で見ると、やや速力が物足りないと思われるかもしれませんが、バルト海という主要な行動領域と設計が大戦間の航空機の発達途上の時期であることを考えると、当時としては十分な機動性を持っていたといえるかもしれません。

 

スウェーデンは長く中立を保ったため、大半の艦艇には目立った戦歴がないのですが、同艦はドイツ戦艦「ビスマルク」の最初で最後の戦闘行動である「ライン演習」への出撃に遭遇し、カテガット海峡通過に随伴する形で行動したことでも有名です。結果的にその接触の通報は海軍司令部を経てイギリスに伝達されました。

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(「ライン演習」参加時のドイツ戦艦「ビスマルク」と「ゴトランド」の大きさ比較。カテガット海峡を哨戒中の「ゴトランド」の通報から、「ビスマルク」出撃の情報がもたらされました)

 

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(「ライン演習」参加時のドイツ重巡洋艦プリンツ・オイゲン」と「ゴトランド」の大きさ比較。やはり重巡洋艦とは大きさに大差がありますね)

 

その後、艦載機種更新にあたって、後継予定機種が機体重量の関係で現有のカタパルトでは射出できないことが判明すると、同艦は航空艤装を廃止し、艦尾部の飛行整備甲板に対空兵装を増強するなどして防空巡洋艦に変更されました。

戦後には電子装備を更新するなどして防空巡洋艦として使用が継続されましたが、1956年に予備役艦に変更され、1963年に解体されました。

 

「トレ・クロノール級」軽巡洋艦(1947年より就役:同型艦2隻)

ja.wikipedia.org

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(「トレ・クノール級」軽巡洋艦の概観:145mm in 1:1250 by Hansa)

 スウェーデン海軍が建造した最後の巡洋艦の艦級です。唯一の本格的航洋型巡洋艦と言ってもいいのではないでしょうか?

第二次世界大戦中に建造されましたが、就役は2隻とも大戦後の1947年となりました。

8200トン級の船体を持ち、重油専焼缶とタービン機関の組み合わせで、33ノットの速力を出すことが出来ました。

主砲として新型の53口径6インチ速射砲を採用し、これを艦首部に3連装両用砲塔1基、艦尾部に連装両用砲塔2基の配置で搭載していました。この主砲は両用砲塔に搭載され70度までの仰角と、毎分10発の発射速度を有していました。当初はこの両用砲が文字通り対空砲を兼ねたため、対空砲を他に有しませんでしたが、後の改装では5.7cm高角機関砲を連装砲塔で2基増設しています。

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(「トレ・クノール級」軽巡洋艦の細部:艦首部の3連装砲塔(上段)、艦中央部の対空砲群(中段)、艦尾部の連装砲塔(下段))

 

「トレ・クノール」は1964年まで就役していましたが、僚艦「イェータ・レヨン」は1971年にチリ海軍に売却され、1984年まで同海軍で就役していました。

 

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スウェーデン海軍の巡洋艦の系譜:手前から「Örnen級」水雷巡洋艦装甲巡洋艦「フィルギア」、航空巡洋艦『ゴトランド」、「トレ・クノール級」軽巡洋艦の順)

 

その他の駆逐艦警備艇・掃海艇など

ぼちぼちと目に止まったものを収集中です。この辺りはいずれまとめて・・・。だから中間報告、ということで。

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 (スウェーデン海軍の小艦艇群:手前から「ランドソルト級」掃海艇、「イェーガレン級」ウーデットボート(汎用警備艇で、哨戒・掃海など種々の任務をこなします)、「エレンスコルド級駆逐艦、「イェーテボリ級」駆逐艦

 

ということで、今回はおしまい。

さて前回から全くの思いつきで、突然、スウェーデン海軍、などという、筆者も馴染みのない領域をまとめて見てきたわけですが、一定の興味はありながらも、こうして体系的にまとめる機会がなければ、スウェーデン海軍の艦艇について理解を深める機会はなかっただろうと思っています。脇道探検は、本当に楽しいし面白い。

「ルーティーン」の持ち方、という話をぼんやりとテレビで見ていました。現在のようなストレスの溜まりやすい状況下では、安定を得るための、さらに何らか自身を成長させるための「ルーティーン」というのは重要だ、というような話だったのですが、「低いハードル=達成感を得やすい」ことを「継続する」というのが重要だそうで、まさに当ブログが筆者の「ルーティーン」なのかもなあ、などと考えています。

「ルーティーン」を継続するためのテーマ探し。そのテーマは「自分の楽しみの中から」。そしてさらに深い興味の領域へ。なんか自画自賛ぽくて申し訳ないですが、「継続しよう」という思いから、何か新しい楽しいことが見つかるサイクルに気づくことが出来て、少し嬉しいのです。それをお伝えしたかった。スウェーデン巡洋艦の発展の知識が深まった、というのが成長か、という疑問があることは重々理解しています。お願いだから、思ったとしても、それは言わないで)

 

ということで、次回はどうしようかな。(毎回、この時点で、次のテーマ探し、というプレッシャーがかかっています。なら、やめればいいのに。まさにその通りなんですが)

実はこのところ、1:144スケールの飛行機ばかり作っています。そしてみんなフィンランドのマークをつけています。そんな話にしようか、それとも本流で「残していること」をしようか。まあ、そこは気まぐれで。

 

いつも申し上げているのですが、模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

***実は模型に関する質問などは、一度もいただいたことがないのです。

 

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新着モデルのご紹介/あるいは素晴らしき脇道探検:スウェーデン海軍の海防戦艦の系譜:中間報告

今回は、このところ少し集中してモデルを集めつつあった海防戦艦の、中間報告です。

・・・と言うか、「コレクター」なる人種の一種の心象風景として読んでいただければ。(まあ、毎回そうなんですけどね)

 

さて、海防戦艦のコレクション。火付け役は、昨年末に、以下の回でご紹介したフィンランド海軍の海防戦艦「イルマリネン級」。

fw688i.hatenablog.com

 

以下、同級の概要部分を抜粋してご紹介。

フィンランド海軍「イルマリネン級」海防戦艦 

ja.wikipedia.org

 

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(直上の写真は「イルマリネン級」海防戦艦の概観。74mm in 1:1250 by XP Forge:移動式要塞砲台的な感じ?)

 

同級はオランダの企業によって設計され、フィンランド湾での活動を想定し、幅広の吃水の浅い船体を持ち、かつ冬季の海面凍結から砕氷能力も考慮された船型をしていました。4000トン級の船体を持ち、機関には砕氷時の前進後進の操作性、速力の調整等への配慮から、デーゼル・エレクトリック方式の主機が採用され、16ノットの速力を発揮する事ができました。しかしフィンランド湾沿岸での任務に特化した強力な艦として、外洋への航行は想定から外されて設計されたため、燃料搭載量が極めて少なく航続距離は700海里程度に抑えられていました。

武装としては、主砲には 隣国スウェーデンボフォース社が新設計した46口径25.4センチ連装砲を2基装備し、併せてこれもボフォース社製の新設計の10.5センチ高角砲を連装両用砲塔で4基搭載するという沿岸警備用の海防戦艦としては意欲的な設計でした。

これらの砲装備管制のために高い司令塔を装備したために、明らかにトップ・ヘビーな艦容をしています。とはいえ、その主要任務が活動海域を限定した移動要塞砲台的なものであることを考えると、それほど大きな問題ではないのかもしれません。

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(直上の写真:「イルマリネン」(左)と「ヴァイナモイネン」(右):塗装は例によって筆者オリジナルですので、資料的な価値はありません)

 

「主力艦の変遷を追う」本稿としては、海防戦艦は、やや避けて通ってきた感のあった領域です。一部、本稿の最初期のあたりで、「バルティック艦隊」の構成艦として何隻か紹介した程度でした。

fw688i.hatenablog.com

(この回では、日本海海戦に参加したロシア海軍海防戦艦「ナワリン」「シソイ・ヴェリキー」「アドミラル・セニャーウィン」「アドミラル・ウシャコフ」「アドミラル・アプラクシン」などを紹介しています)

 

本稿の読者ならば(あるいは本稿に興味を持たれる方ならば)、おおよそ推測はつく(多分、同意もいただける?)と思うのですが、実はこうした一見の枝葉、あるいは脇道こそが、コレクションを続ける醍醐味でもあるわけで、上記のロシア海軍海防戦艦のあたりから少しづつ気になり始め、昨年末のフィンランド海軍の「イルマリネン級」で、「この脇道、一度ちゃんと探検しよう」と決意した(ちょっと大げさ?)という訳です。

 

さてどこから手をつけようか。

前述の「イルマリネン級」の艦歴の中に、1937年5月に同艦は英国のジョージ6世戴冠記念観艦式にフィンランド艦隊旗艦として参加した折に、同艦の航続距離不足から「スウェーデン海軍の海防戦艦「ドロットニング・ヴィクトリア」に曳航してもらった」という記述を見つけました。

「へえ、なるほどお隣の国の海軍に曳航してもらったんだな」と、脇道に一歩。「ところで「ドロットニング・ヴィクトリア」というのはどんな船なんだ?」と二歩め。そんな感じで、いつの間にか「まずはスウェーデン海軍から初めてみようか」という訳です。

でも、この脇道、足を踏み入れてみて、筆者がいかに情報を持っていないかに痛感させられます。まさに手探り状態で本稿書き進めています。脇道探検はこれだから楽しい。

 

海防戦艦という艦種

今回の本題であるスウェーデン海防戦艦に触れる前に、「海防戦艦」という艦種が概ねどういう艦種なのか、少し触れておきたいと思います。

英語では概ね coastal defence ship と表記されます。直訳すると「沿岸防備艦」というわけで、この文字通りの意味であれば、警備艦艇はほとんどこの領域の任務に就くことになるのですが、この中でも比較的小型の船体(沿岸部で行動することを念頭におくと、あまり深い吃水を持たせられない。このために船体の大きさに制限が出てくるのかも)に大口径の主砲を搭載し、かつ一定の装甲を有する艦を特に「海防戦艦」(Coastal defence ship)と呼ぶようです。

保有国には、以下のような大きな二つの地政学的な条件があるように思われます。つまり防備すべき比較的長い海岸線、港湾都市を持つこと。そしてその海岸線が比較的浅い、そして大洋に比べて比較的波の穏やかな内海に面していること。

結果、バルト海、地中海、黒海などに接続海岸を持つ国の占有艦種と言っても良いのではないでしょうか?従って保有国は限定され、バルト海の沿岸諸国として、ロシア帝国、初期のドイツ帝国(彼らは後に大洋海軍を建設します)、スウェーデンデンマークノルウェイフィンランド。地中海ではイタリア(装甲砲艦という艦種で装備されました)、フランス、ギリシアオーストリア=ハンガリー帝国などが同艦種に分類される軍艦を保有しました。(一部、地政学的な条件から見ると例外は南米諸国ですが、これらは新興諸国が海岸線防備のために比較的手軽に装備できる(購入できる)艦種、として整備を競った、という別の歴史的な背景があると、筆者は理解しています)

類似艦種としては沿岸防御の浮き砲台としての「モニター艦」がありますが、これは海防戦艦に比べると、さらに局地的な防御任務に適応しており、航洋性、機動性はより抑えられた設計になっています。

 

 スウェーデン海軍の海防戦艦

繰り返しになりますがスウェーデンという国は、ボスニア湾(スウェーデンフィンランドの間の湾)からカテガット海峡スカンジナビア半島デンマーク間の海峡)に及ぶ長い海岸線をバルト海に有しています。その海岸線のほぼ中央に首都ストックホルムが位置しています。

これらの長い海岸線を防備することがスウェーデン海軍の主要な任務で、19世期の後半から沿岸警備用の大口径砲を搭載した「海防戦艦」の整備に力を入れ始めました。

艦級は以下の6クラスが建造されました。

スヴェア級(同型艦3隻:1886年から就役)

オーディン級(同型艦3隻:1897年から就役)

ドリスへティン(同型艦なし:1901年から就役)

アラン級(同型艦4隻:1902年から就役)

オスカー2世(同型艦無し:1907年から就役)

スヴァリイェ級(同型艦3隻:1921年から就役)

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スウェーデン海軍の海防戦艦一覧:右から、「スヴェア級」「オーディン級」「ドリスへティン」「アラン級」「オスカー2世」「スヴァリイェ級」の順)

 

スウェーデン永世中立を唱え、二回の世界大戦には参加していません。従ってこれらの艦級に戦没艦はありません。

しかし第二次世界大戦で顕著になった航空主兵化の中では、機動力の低い海防戦艦には活躍の場面はあまり多くなく、スウェーデン海軍も「スヴァリイェ級」の次級の建造計画を放棄し、その沿岸防備戦力の主力を潜水艦と高速艇に移してゆきます。

1960年代までに全ての艦級が退役しています。

 

スヴェア級(同型艦3隻:1886年から就役)

ja.wikipedia.org

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海防戦艦「スヴェア級」の概観:63mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature in Shapeways:射撃指揮所が前部マストに設置されているのですが、連装砲塔はそのままなので、近代化改装の途中段階?)

Brown Water Navy Miniatures by MG_Lawson - Shapeways Shops

同級は、スウェーデン海軍が最初に建造した海防戦艦です。32口径の10インチ連装砲を主砲として艦種部に1基搭載していました。他に副砲として6インチ単装砲を6基、艦種部に35.6cm魚雷発射管を装備していました。

3000トン級の船体に石炭専焼缶とレシプロ機関を搭載し、14.7ノットの速力を有していました。

後に1903年ごろから近代化改装が行われ、同型艦3隻のうち2隻は主砲を8.2インチ単装砲に換装し、副砲を速射砲に、魚雷発射管を45.7cmの口径に換装しています。

 

オーディン級(同型艦3隻:1897年から就役) 

ja.wikipedia.org

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海防戦艦オーディン級」の概観:68mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature in Shapeways:射撃指揮所が前部マストに設置されているので、近代化改装後の姿を再現しているかと思われます)

 

同級はスウェーデン海軍が建造した2番目の海防戦艦の艦級です。主砲は射程距離を延ばした42口径の10インチ砲を採用し、これを単装砲塔で2基、艦種部と艦尾部にそれぞれ1基筒搭載しています。副砲には12センチ速射砲を4基から6基搭載し、艦首には魚雷発射管を有していました。

前級を二回りほど拡大した3400トン級の船体に石炭専焼缶とレシプロ機関を搭載して16.5ノットの速力を発揮することができました。

1910年代に近代化改装が行われ、前部マストに射撃指揮所が設けられ、機関が換装されことに伴い煙突が一本になった艦もあります。

 

ドリスへティン(同型艦なし:1901年から就役)

en.wikipedia.org

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海防戦艦「ドリスへティン」の概観:72mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature in Shapeways:竣工時の姿)

 

同型艦はありません。3400トン級とほぼ前級と同じ大きさの船体に、44口径8.2インチ単装砲塔2基を主砲として搭載しています。副砲に6インチ単装速射砲6基を搭載し、魚雷発射管2基を装備していました。16.5ノットの速力を発揮することが出来ました。

1927年に主砲等の主武装を対空砲に換装し水上機母艦に改装されました。

 

アラン級(同型艦4隻:1902年から就役)

ja.wikipedia.org

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海防戦艦「アラン級」の概観:70mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature in Shapeways:竣工時の姿:近代化改装時のモデルを入手中)

 

同級は前級「ドリスへティン」の改良型として建造されました。3600トン級にやや拡大された船体を持ち、前級と同じ44口径8.2インチ単装砲を主砲として2基装備していました。副砲も同様に6インチ単装速射砲を6基、魚雷発射管を2基装備していました。

石炭専焼缶とレシプロ主機の組み合わせで、17ノットの速力を出すことが出来ました。

1910年に前部マストを3脚化し射撃指揮所を設置したのを皮切りに、順次、機関の重油専焼缶への換装、対空兵装の強化など近代化改装が行われました。改装のレベルは艦によって異なり、外観にも差異が生じました。

 

オスカーII世(同型艦無し:1907年から就役)

ja.wikipedia.org

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海防戦艦「オスカーII世」の概観:86mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniature in Shapeways:竣工時の姿:近代化改装時のモデルを入手中)

 

前級「アラン級」の武装強化版として1隻だけ建造されました。船体は4200トン級に拡大され、主砲は44口径8.2インチ単装砲塔2基のままですが、副砲が6インチ連装砲塔4基に強化されました。魚雷発射管を2基装備していました。

機関は、石炭専焼缶の搭載数が増やされ、18.5ノットの速力を出すことが出来ました。

1911年に前部マストを3脚化し射撃指揮所が設けられ、1937年にボイラーを重油・石炭混焼缶に変更した際に煙突の太さが変更されるなどの外観の変更がありました。

 

スヴァリイェ級(同型艦3隻:1921年から就役)
ja.wikipedia.org

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海防戦艦「スヴァリイェ級」の概観:96mm in 1:1250 by Navis:ほぼ竣工時の姿を再現しています:近代化改装は順次行われ、同型艦3隻はそれぞれ異なった姿となりました。改装後のモデルを探索中ですが、全て揃うのはいつのことやら)

 

同級は結果的に、スウェーデン海軍が建造した最後の海防戦艦の艦級となりました。

設計段階で各国海軍の装備は弩級戦艦の時期に達しており、これに準じてそれまでの海防戦艦とは一線を画する設計となりました。

船体は前級を大幅に上回る6800トン級となり、これに石炭専焼缶と初めてのタービン機関を組み合わせ22.5ノットの速力を有することが出来ました。

主砲には44口径11インチ砲を連装砲塔形式で2基搭載し、副砲として6インチ連装速射砲1基と同単装砲6基、魚雷発射管2基を装備していました。

1920年代には主として射撃管制関連の改装が行われ、前部マストが三脚化され同時に艦橋が大型化されました。1930年代には主として機関の換装が行われ、全て重油専焼缶と改められました。その際に煙突形状の改装が行われ、「スヴァリィエ」は湾曲煙突、「ドロットニング・ヴィクトリア」は前部煙突にキャップ、「グスタフ5世」は集合煙突に、それぞれ外観が変わりました。

冒頭に紹介したフィンランド海軍の海防戦艦「イルマリネン」が英国王ジョージ6世の戴冠記念観艦式に参加する際に同艦を曳航したのは、同級の「ドロットニング・ヴィクトリア」でした。

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(英国王ジョージ6世の戴冠記念観艦式に参加したフィンランド海軍戒能戦艦「イルマリネン」(手前)とそれを曳航したスウェーデン海軍海防戦艦「ドロットニング・ヴィクトリア:スヴァリイェ級」の比較)

 

未成海防戦艦:Project 1934

1933年(34年?)に設計された未成の海防戦艦がありました。www.naval-encyclopedia.comf:id:fw688i:20210117120604j:image

(未成海防戦艦「Project 1934」の概観:103mm in 1:1250 by Argonaut)

 

それまでの「海防戦艦」と異なり、塔形状の前部マストやコンパクトにまとめられた上部構造など、フィンランド海軍の「イルマリネン級」にやや似た近代的な(?)外観をしています。7500トン級の船体に、武装は11インチ連装砲2基と、5インチ両用連装砲(多分)6基を予定していたようです。速力は22−23ノット程度。


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海防戦艦「Project 1934」(奥)と「スヴァリイェ級」(竣工時)の比較)

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海防戦艦「Project 1934」(奥)とフィンランド海軍海防戦艦「イルマリネン級」の比較)

 

 

未成海防戦艦:Project 1940

 

さらに1940年の設計では、さらにこれを拡大したスウェーデンポケット戦艦(15000トン級:11インチ連装砲塔3基、5インチ両用連装砲4基ほか)の計画もあったようです。ちょっと見てみたかった(かも)。Swedish Ansaldo design

 

 Hai社から市販モデルが出ているのですが、入手には至っていません。鋭意、探索中。

 

ということで、今回はおしまい。

なぜ「中間報告」としたかというと、上記に記載した「近代化改装」後のモデルを調達中です。いくつかは多分こちらに発送されているのですが、いくつかは入手の目処が立たず、という状況です。全部は無理だろうなあ。

さらにもう一つ、同様にノルウェーデンマークも数は少ないながら同様の艦種を建造しています。これらは第二次世界大戦では母国のドイツによる占領作戦と共に、作戦途上で撃沈されたものもありますが、何隻かはドイツ海軍に移籍し、防空艦等として運用されました。

これらも鋭意(既に何隻かは手元にあるのですが)収集を試みていますので、いずれはそれらも併せて改めてご紹介の機会を、と考えています。

なので今回は「中間報告」です。

 

次回は、どうしようか? 

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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制作モデルのアップデートと、アメリカ海軍:第二次世界大戦期の巡洋艦総覧

2021年のご挨拶

あけましておめでとうございます。

それにしても、混沌とした新年になってしまいましたね。筆者はおそらく生まれて初めて実家に戻らず自宅で年越しを迎えました。ある意味、のんびりとした数日ではあったのですが、メリハリなく、長めの休日を過ごしてしまった、そんな感じでした。

年が開ければ、何か見えるかと、漠然とした期待があったにもかかわらず、どうも現実はもう少し厳しいようです。どうか安全第一に、お過ごしください。

そして時折、ここを覗きに来ていただけると、幸いだとおもっています。今年もどうぞよろしくお願いします。

 

と言うことで、2021年最初の投稿ですが、表題の通り「第二次世界大戦期のアメリカ海軍の巡洋艦」を総覧してみたいと思います。

筆者の事情としては、引き続き、制作ラッシュが続いており、比較的負担の軽い稿、と言うことで、やや過去の投稿を多用しながら、進めてゆきます。少し文体等、矛盾や揺れ幅が大きいかと懸念しつつ。

 

と言うことで、最初は少し最近のモデル作製のアップデートを。

まずはあの「赤い戦闘飛行艇

直下の写真はあの「赤い戦闘飛行艇」の飛行時の再現。以前本稿でもご紹介しましたが、おそらく世界で唯一の入手可能な1:144スケールのモデルです。ディスプレイ台と飛行士はついていませんのでご注意を。

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下の写真は同様に着水時のモデル。ウォーターライン(?)モデルです。こちらも飛行士のフィギュアは付いていませんのでご注意ください。筆者はフィギュアはいずれも1:144モデルのストックから転用しています。
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現在、良きライバルである「青いカーチス」を製作中です。

 

次に、フィンランド軍装備から、「冬戦争」時の主力戦闘機を。

「フォッカー D-21」(フィンランド風にいうと「フォッケル」ですかね)

こちらは頼りになるShapeways(Kampffieger models)の製品をストレートに塗装し、Mark I Model製のデカールを貼っています。

素材は White Natural Versatile Plasticで安価なのですが、表面がかなり粗い感じで仕上がります。下地処理はしているのですが、やはり塗装面は光が当たると目立ちますね。どこまでこだわるかですが、別素材でもう一回トライしていようかな。

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こちらは本稿の下記の稿にも反映しておきます。

fw688i.hatenablog.com

ああ、なんだか1:144スケールモデルのサイトっぽくなってきたなあ。 

 

という事で、少し長い前置きになりましたが、さていよいよ今回の本論部分へ。

米海軍の第二次世界大戦期の巡洋艦

米海軍は第二次世界大戦に、重巡洋艦6クラス32隻、軽巡洋艦5クラス59隻、そして大型巡洋艦1クラス2隻という大量の巡洋艦を投入しました。

その設計思想は戦術の変遷に従って柔軟に変更され、当初は補助戦闘艦、偵察艦としての性格が強くみられましたが、後半の設計は艦隊の航空主兵化に伴い、空母機動部隊や輸送部隊の艦隊防空に重点が置かれる設計となりました。

 

重巡洋艦

6クラス32隻が投入され7隻が戦没しています。

いわゆる条約型重巡洋艦(カテゴリーA)として5クラス18隻が建造され、条約失効後に1クラス14隻が建造され、第二次世界大戦に参加しています。

 

ペンサコーラ級重巡洋艦同型艦: 2隻)

ja.wikipedia.org

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(直上の写真は、「ペンサコーラ級」重巡洋艦の概観。143mm in 1:1250 by Neptune) 

 「ペンサコーラ級」は米海軍が初めて建造した重巡洋艦です。当初は、日本海軍の「古鷹級」と同様に強化型の軽巡洋艦として設計されましたが、建造途中にロンドン条約により巡洋艦にカテゴリーが生まれそれぞれに制限を課せられたため、「カテゴリーA=重巡洋艦」に類別されたという経緯があり、結果的に条約型重巡洋艦の第一陣となりました。

設計当初は8インチ3連装主砲塔4基を搭載する予定でしたが、艦型の大型化を抑制するために4基のうちの2基を連装主砲塔にあらためて建造されました。雷装としては53.3cm3連装魚雷発射管を2基搭載していました。

やや装甲を抑えめにし9100トンと列強の重巡洋艦としてはやや小ぶりながら、強力な砲兵装を有し、抗堪性に考慮を払い初めて採用された缶室分離方式で配置された主機から32.5ノットの速力を発揮することができました。

強力な兵装配置と、やや変則的な砲塔配置に伴い、トップへービーの傾向があり、復原性に課題があるとされていました。

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(直上の写真は、「ペンサコーラ級」重巡洋艦の特徴的な主砲塔配置。連装砲塔を低い位置に、3連装砲塔を背負い式に高い位置に配置しています。高いマストとも相まって、重心がいかにも高そうに見えます) 

 

2隻が建造され、2隻ともに大戦を生き抜きました。

 

ノーザンプトン重巡洋艦同型艦:6隻)

ja.wikipedia.org

Northampton-class cruiser - Wikipedia

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(直上の写真は、「ノーザンプトン級」重巡洋艦の概観。146mm in 1:1250 by Neptune) 

ノーザンプトン級」は米海軍が建造した条約型重巡洋艦の第2グループです。

前級「ペンサコーラ級」から8インチ主砲を1門減じて、3連装砲塔3基の形式で搭載しました。砲塔が減った事により浮いた重量を装甲に転換し、防御力を高め、艦首楼形式の船体を用いることにより、凌波性を高めることができました。9000トンの船体に8インチ主砲9門、53.3cm3連装魚雷発射管を2基搭載し、32ノットの速力を発揮しました。

航空艤装には力を入れた設計で、水上偵察機を5機搭載し、射出用のカタパルトを2基、さらに整備用の大きな格納庫を有していました。

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(直上の写真は、「ノーザンプトン級」の主砲配置と航空艤装の概観。水上偵察機の格納庫はかなり本格的に見えます(中段)。同級は竣工時には魚雷を搭載していたはずですが、既にこの時点では対空兵装を強化し、魚雷発射管は見当りません) 

 

前級で課題とされた復原性の不足は、細身の艦型から引き継がれており、後に対空装備の増強の際には魚雷兵装を全撤去するなどの対応を取らざるを得ませんでした。

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(直上の写真は、「ノーザンプトン級」と前級「ペンサコーラ級」(上段)の主砲配置の差を見たもの) 

同型艦は6隻が建造されましたが、そのうち「ヒューストン」がバタビア沖海戦(1942年3月)で、「ノーザンプトン」がルンガ沖海戦(1942年11月)で、そして「シカゴ」が1943年1月のレンネル沖海戦でいずれも日本海軍と交戦し失われました。

 

 ポートランド重巡洋艦同型艦:2隻)

ja.wikipedia.org

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(直上の写真は、「ポートランド級」重巡洋艦の概観。155mm in 1:1200 by Superior :メーカーの差この場合にはスケールの差も顕著に現れています。1:1250スケールでの寸法は148mmと試算できます) 

 

同級は、前級「ノーザンプトン級」の拡大改良型で、米海軍としては初めて10000トンを超える艦型を持った重巡洋艦となりました。

砲兵装は基本前級「ノーザンプトン級」を継承していますが、復原性を改善するために、建造当初から雷装は廃止されました。しかし一方で対空装備の増強、艦橋の大型化などにより、一見バランスの取れた重厚な艦型に見えますが、実は復原性は悪化した、とされています。

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(直上の写真は前級「ノーザンプトン級」(上段)と「 ポートランド級」との艦容の比較。重厚さを増したように見えますが、重心の高さから生じる復原性の課題は改善されませんでした)「

 

同級の「インディアナポリス」が3発目の原子力爆弾の部品をテニアンに輸送中に日本海軍の潜水艦に雷撃され撃沈されたことは大変有名なエピソードです。

 

ニューオーリンズ重巡洋艦同型艦:7隻)

ja.wikipedia.org

New Orleans-class cruiser - Wikipedia 

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(直上の写真は、「ニューオーリンズ級」重巡洋艦の概観 142mm in 1:1250 by Neptune) 

 

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(直上の写真は、「ニューオーリンズ級」重巡洋艦の特徴を示したもの。艦橋の構造を、前級までの三脚前檣構造から塔状に改めています(上段)。航空艤装の位置を改めて、運用を改善(中段)。この艦級に限ったことではないですが、アメリカの建造物は理詰めで作られているためか、時として非常に無骨に見える時がある、と感じています(下段)。フランスやイタリアでは、こんなデザインは、あり得ないのでは、と思うことも。「機能美」と言うのは非常に便利な言葉です。でも、この無骨さが良いのです)

 

米海軍の条約型重巡洋艦としては第四段の設計にあたります。

主砲としては8インチ砲3連装砲塔3基を艦首部に2基、艦尾部に1基搭載するという形式は「ノーザンプトン級」「ポートランド級」に続いて踏襲しています。魚雷兵装は、「ポートランド級」につづき、竣工時から搭載していません。航空艤装の位置を少し後方へ移動して、搭載設備をさらに充実させています。

乾舷を低くして艦首楼を延長することで、米重巡洋艦の課題であった復原性を改善し、32.7ノットの速力を発揮することができました。

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(直上の写真は、前級「ポートランド級」と「ニューオーリンズ級」の艦橋構造の比較。艦橋構造をそれまでの三脚前檣構造から塔構造に改めています)

 

同型艦は7隻が建造されましたが、そのうち第一次ソロモン海戦に参加した3隻(「アストリア」「ヴィンセンス」「クインシー」)全てが撃沈されてしまいました。

第一次ソロモン海戦については本稿でも以下の回で触れています。

fw688i.hatenablog.com

その後も、ソロモン海域での戦闘では常に第一線で活躍し、サボ島沖夜戦では同級の「サンフランシスコ」が旗艦を務める艦隊がレーダー射撃によって、日本海軍の重巡「青葉」を大破させ、「古鷹」を撃沈する戦果を上げています。一方で、第三次ソロモン海戦では、同じく艦隊旗艦を務めた「サンブランシスコ」が「比叡」「霧島」との乱打戦で大破していますし、ルンガ沖夜戦では、日本海軍の駆逐艦部隊の輸送任務の阻止を試みた同級の「ニューオーリンズ」「ミネアポリス」が、日本駆逐艦の放った魚雷で大破する、といったような損害も被っています。

 

米海軍の「ヤラレ役」を一身に背負った感のある緩急ですが、それだけ「切所」を踏ん張った、と言うことだと考えています。

 

 

重巡洋艦「ウィチタ」

ja.wikipedia.org

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(直上の写真は、重巡洋艦「ウィチタ」の概観 150mm in 1:1250 by Hansa) 

条約型重巡洋艦の第5弾として1隻のみ建造されました。

当初は前級「ニューオーリンズ級」の8番艦として建造される予定でしたが、並行して建造中の条約型軽巡洋艦「ブルックリン級」の設計構想を大幅に取り入れたものとなりました。そのため艦容は「ブルックリン級」に類似しています。f:id:fw688i:20210110140911j:image

(直上の写真は、設計の際にベースとなった「ブルックリン級」軽巡洋艦(上段)との鑑容の比較。基本的な配置は極めてよく似ていることがよくわかります)

 

航空兵装を初めて艦尾配置とした他、対空兵装にMk 12 5インチ両用砲を採用し、これを単装砲塔形式で4基、単装砲架形式で4基、計8基搭載しています。f:id:fw688i:20210110140442j:image

(直上の写真は、「ウィチタ」の対空砲配置。Mk.12 5インチ両用砲を単装砲塔で4基:艦橋周りに3基と後橋直後に1基配置しています(写真上段と下段)単装砲架形式で艦中央部に4基配置しています(写真中段))

 

艦型は条約型巡洋艦としては最大で、速力33ノットを発揮することができました。

 

 

両用砲という先見性

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この砲は同艦以降後建造された巡洋艦のみならず、戦艦、空母、駆逐艦など米海軍艦艇のほぼ全ての艦級に搭載され、実に1990年まで使用された優秀な砲で、単装砲架から連装砲塔まで、多岐にわたる搭載形式が採用されました。

同砲は楊弾機構付きで毎分15-22発、楊弾機構なしの場合でも毎分12-15発の射撃が可能で、これとMk 33両用方位盤との組み合わせで、それまでに比べ飛躍的な射撃能力を得ることができました。「砲」そのものもさることながら、装填機構や方位盤などの射撃管制機構との組み合わせで「両用砲」と言う「システム」を駆逐艦に搭載したアメリカ海軍の先見性には、本当に驚かされます。

 

ボルチモア重巡洋艦同型艦:14隻)

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(直上の写真は、「ボルチモア級」の概観 165mm in 1:1250 by Poseidon?) 

 同級はワシントン・ロンドン体制終了後に米海軍が建造した重巡洋艦で、条約による制限が無くなったため排水量14000トンの大型艦となりました。f:id:fw688i:20210110141203j:image

(直上の写真は、同級がタイプシップとした「ウィチタ」との鑑容比較。概観はよく似ていますが艦型が大型化し、対空兵装などが改められています)

 

前級「ウィチタ」をタイプシップとしながらも、大幅に艦型が大型化し、主砲はそれまでの錠悪形重巡洋艦と同等ながら、副兵装として「ウィチタ」で採用したMk 12 5インチ両用砲を連装砲塔6基搭載するなど、充実した対空兵装を保有していました。また装甲が大幅に強化されています

計画では16隻が建造される予定でしたが、14隻が完成し、戦没艦はあリませんでした。ほとんどの艦が1960年代、70年代まで現役に止まり、4隻はミサイル巡洋艦に改造されました。

 

派生形に「オレゴンシティ級」がありますが、同級は全て戦後の就役となりました。

 

軽巡洋艦

5クラス59隻が投入され、3隻が失われました。

 

オマハ軽巡洋艦同型艦:10隻)

(直下の写真は、米海軍が建造した「オマハ級」軽巡洋艦。136mm in 1:1250 by Neptune)

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Omaha-class cruiser - Wikipedia

オマハ級」軽巡洋艦(1923- 同型艦10)は、「チェスター級」に次いで米海軍が建造した軽巡洋艦で、7000トンのゆとりのある船体に、6インチ砲(15,2センチ)12門と3インチ高角砲8門と言う強力な火力を有していました。4本煙突の、やや古風な外観ながら、主砲の搭載形態には連装砲塔2基とケースメイト形式の単装砲を各舷4門という混成配置で、両舷に対し8射線(後期型は7射線)を確保すことができる等、新機軸を盛り込んだ意欲的な設計でした。最高速力は35ノットと標準的な速度でしたが、20ノットという高い巡航速度を有していました。また最初からカタパルト2基による高い航空索敵能力をもっていました。

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(直上の写真は、「オマハ級」の概観 135mm in 1:1250 by Neptune) 

 

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(直上の写真は、「オマハ級」軽巡洋艦のカタパルト2基を装備し充実した航空艤装(上段)と連装砲塔とケースメートの混成による主砲配置、写真の艦は後期型で、後部のケースメートが2基減じられています)

 

10隻が第二次世界大戦に参加し、喪失艦はありませんでした。

 

ブルックリン級軽巡洋艦同型艦:9隻=準同型艦セントルイス級2隻を含む)

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Brooklyn-class cruiser - Wikipedia

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(直上の写真:「ブルックリン級」の概観。150mm in 1:1250 by Neptune )

本級は日本海軍の「最上級」同様、ロンドン条約保有に制限のかかった重巡洋艦(カテゴリーA)の補完戦力として設計された大型巡洋艦で、それまでの偵察任務等に重点の置かれた軽快な軽巡洋艦とは異なり条約型重巡洋艦に撃ち負けない砲力と十分な防御力を併せもった設計となっていました。

このため主砲にはカテゴリーB=軽巡洋艦に搭載可能な6インチ砲を3連装砲塔5基、15門搭載していました。同砲はMk16 47口径6インチ砲と呼ばれる新設計の砲で、59kgの砲弾を毎分8−10発発射することができました。

en.wikipedia.org

重防御を施した10000トンを超える船体を持ち、33.6ノットの速力を発揮することができました。

魚雷兵装は搭載しませんでしたが、対空兵装としては5インチ高角砲を単装砲架で8基搭載していました。「セントルイス級」として分類されることもある後期型では、「ボルティモア級」重巡洋艦で採用されたMk 12 5インチ両用砲の連装砲塔4基を搭載し、汎用性を高めています。

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(直上の写真は、速射性の高Mark 16 15.2cm(47口径)速射砲の3連装砲塔を5基搭載しています。対空砲として5インチ両用砲を8門搭載していますが、後期の2隻はこれを連装砲塔形式で搭載していました。このため後期型の2隻を分類して「セントルイス級」と呼ぶこともあります)

 

同型艦セントルイス

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セントルイス級」軽巡洋艦は、「ブルックリン級」の改良型で、5インチ対空砲を、「ブルックリン級」の単装砲架形式8基から、より機動性の高い連装砲塔形式4基に変更し、艦橋や後橋を併せてやや小型化し復原性をより高めた形状となっています。

 

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(直上の2点の写真は、「ブルックリン級前期型」と「後期型=セントルイス級」の概観比較をしたもの。対空装備の差が、微妙に艦橋構造や後橋の構造などに及ぼしているのが分かります。モデルはいずれもNeptun製)

 

第二次世界大戦では、日本海軍とのクラ湾海戦でセントルイス級の「ヘレナ」が失われました。

 

クリーブランド軽巡洋艦同型艦:27隻)

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Cleveland-class cruiser - Wikipedia

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(直上の写真:「クリーブランド級」の概観。150mm in 1:1250 by Neptune。主砲塔を1基減らし、対空兵装として、連装5インチ両用砲を6基に増やしし、対空戦闘能力を高めています )

同級は、条約失効後に設計された軽巡洋艦です。当初は次に紹介する対空巡洋艦アトランタ級」の拡大版として計画されましたが、設計途上から汎用的な前級「ブルックリン級」「セントルイス級」の対空兵装強化版として設計変更されました。

対空兵装をMk 12 5インチ両用砲の連装砲塔6基にする代わりに、主砲塔を1基減らしています。

戦時の海軍増強のため、計画では52隻が建造される予定でしたが、13隻が同級の改良型である「ファーゴ級」に設計変更され、9隻は「インディペンデンス級」軽空母に転用、3隻が建造中止とされたため、最終的には27隻が就役しました。正確にいうと27隻のうち1隻は就役が戦後となったため第二次世界大戦には参加していません。

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(直上の2点の写真は、「ブルックリン級」と「クリーブランド級」の概観比較をしたもの。艦橋の位置や煙突の位置の差に注意。両級の差は主に主砲塔の数と対空装備の差ですが、艦橋構造や後橋の構造などに設計の差異があることも分かります。モデルはいずれもNeputune製)

 

第二次世界大戦での喪失艦はありませんでした。


アトランタ級軽巡洋艦同型艦:11隻)

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Atlanta-class cruiser - Wikipedia

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(直上の写真は、「アトランタ級軽巡洋艦の概観。131mm in 1:1250 by Neptune) 

 

当初は「オマハ級」軽巡洋艦の代替として、駆逐艦部隊の旗艦を想定して設計がスタートしましたが、設計途上で防空巡洋艦への設計変更が行われました。6000トン級の船体に、主砲とし38口径5インチ両用砲の連装砲塔を8基搭載し、併せて53.3cm魚雷の4連装発射管2基も搭載し、当初設計の駆逐艦部隊の旗艦任務にも適応できました。速力は32.5ノットを発揮することができました。

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(直上の写真は、「アトランタ級軽巡洋艦の細部をアップしたもの。なんと言っても全体をハリネズミのように両用砲塔が覆っているのがよくわかります。第一次ソロモン海戦では、持ち場が主戦場から離れていたため(ツラギ東方警備)、戦闘には参加しませんでしたが、こののち、ソロモン海での海戦にはたびたび登場します。前掲の「ニューオーリンズ」級とは一転して、やや華奢な優美な艦形をしています)

 

8基の両用砲塔の搭載により、やや復原性に課題が見出され、5番艦以降では、砲塔数を2基減じて、復原性を改善しています。

同型艦は11隻が建造され、艦隊防空の中核を担いました。

 

ネームシップの「アトランタ」と2番艦「ジュノー」がいずれも日本海軍との交戦で失われました。

 

ファーゴ級軽巡洋艦同型艦:2隻 但し両艦とも就役は終戦

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(直上の写真は、「ファーゴ級」の概観 150mm in 1:1250 by Hansa) 
同級は前級「クリーブランド級」の改良型です。

改良のポイントとしては、兵装の低重心化と同じく低重心化の効果を狙って上部構造の簡素化、小型化に置かれ、併せて期間の配置、煙突の集合化により、外観が「クリーブランド級」とはやや異なっています。

(下の二点の写真は、前級「クリーブランド級」(いずれも上段)と「ファーゴ級」の概観を比較したもの。艦橋の小型化、集合煙突の採用、対空兵装の位置など、米巡洋艦が課題として共通に抱えていた重心のたかさ、復原性の不足に対する改善の試みが見受けられます)

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戦争中に9隻が起工されましたが、7隻は建造中止となり、完成した2隻も就役は終戦後となりました。

 

(直下の写真は、「ブルックリン級」をベースとして発展した米軽巡洋艦の3級の外観比較。手前から「ブルックリン級」「クリーブランド級」「ファーゴ級」の順。重心の低下、復原性の改善を主題に、次第にバランスの良い概観になっていっている?)

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アラスカ級大型巡洋艦同型艦:2隻)

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(直上の写真「アラスカ級大型巡洋艦の概観。194mm in 1:1250 by Hansa)

ja.wikipedia.org

アラスカ級大型巡洋艦は、30000万トン級の船体に主砲として「1939年式 Mark8型 30.5cm(50口径)砲」を3連装砲塔3基、そして米海軍ではお馴染みの5インチ両用砲の連装砲塔を6基搭載していました。空母機動部隊の直衛を意識して33ノットの高速を有しています。6隻が計画され、2隻が完成しています。

主砲として搭載された「1939年式 Mark8型 30.5cm(50口径)砲」は、12インチの口径ながら、米海軍の戦艦の標準主砲であった14インチ砲と同等の重量の砲弾を発射できるという優秀砲でした。(この辺り、本稿でもご紹介した日本海軍の「超甲巡」に搭載予定であった新型31センチ砲と良く似ています)

この両級が、実際に砲火を交えていたら、どんな展開になったんでしょうね。

(直下の写真:上から「シャルンホルスト級」「アラスカ級」「超甲型巡洋艦」の艦型比較。各国が異なる狙いで類似性のある設計をしていたことが興味深いですね) 

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と、米海軍の第二次世界大戦期の巡洋艦、総覧してみました。戦争中に起工された「デ・モイン級重巡洋艦や「ウースター級」軽巡洋艦の扱いをどうしようかな、と少し迷ったのですが、両級共にコレクションにモデルがないこともあり、登場いただきませんでした。

しかし、改めてこのように一覧してみると、「ボルティモア級」重巡洋艦や「クリーブランド級」軽巡洋艦のように、本来「一点物」であるはずの艦船すら量産してしまうアメリカという国の国力と、迷いなくそれを実行する実行力(合理的な、と呼んでいいのか?)には、改めて驚かされます。

良きにつけ悪しきにつけ、「信じるとやってしまう」あたり、何かこの年明けのトランプ騒動と何か通じるものがあるような・・・。

 

こんな感じで、2021年もよろしくお願いします。

もちろん「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

 

さらに、模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。こんな模型探しているんだけど、どこかにあるだろうか、と言うような問い合わせや、調達方法など、どんなことでも結構です。

 

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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2020年も、ありがとうございました。+Encyclopedia of 1:1250 scale model shipのご案内

ご挨拶

2020年、お付き合いいただき、ありがとうございました。

振り返ると2018年9月から2年と3ヶ月、よく続いたものです。最初は10回程度で日本海軍の主力艦をチラチラっと並べて、くらいの気持ちで始めたのですが、手をつけるとコレクター魂に中途半端に火がついてしまいました。まとめが一段落したら全部どこかに片付けて、猫を飼えるように綺麗にしようかなんて考えていたのですが(模型と猫は相性が悪い!)いつの間にか投稿数が120回を超えてしまいました。

コレクションは「片付ける」どころか、ますます深みにはまっていく、というのが現状で、「猫を飼う」なんて言うのは、夢のまた夢、です。

それにしても、こうして自分なりに整理をし始めると、それまで知らなかった事、考えてもみなかった事、「なんでこんなもの作ったんだろう」が「なるほど」そういう事だったのか、と気がつく事、ほとんど毎回新たな発見があって、大変楽しい時間を過ごしています。

たかが模型なのですが、歴史と地政学的な必要性、そこで育った民族性など、「たかが模型」と侮るなかれ。

併せて、それにも増して、どこかで楽しみにしていただいている方がいるのかも知れない、それがアクセス数として現れて、これも大きな励みになっていることは間違いありません。

「皆さんに育てていただいた」と、表現としては陳腐ですが、まさに偽らざる心境です。

本当にありがとうござました。

 

それにしても、2020年、これまでに経験したことのない一年でしたね。いろいろな事が、当たり前ではなくなってしまいました。どこかで「この星は今、傷ついている」と言うような言葉をしばしば聞きました。等しい脅威、それが生活の中に入って来ている、というのを日常的に感じる、そんな日々を送られた方も多いのではないでしょうか?

働き方が変わり、子供たちの教育が変わり(筆者は外資系企業に勤めてるのですが、海外の同僚の中には、未だに子供たちの学校は閉鎖、全ての授業はオンラインで、特にネットにアクセスの難しい貧困層の子供たちへの教育は全て放置状態、と言うような話を聞きます)、当たり前の風習を変えざるを得ませんでした(筆者は1月に父を亡くしました。天寿を全うした、と言ってもいい年齢だったので、それはそれで仕方ないと思いながら、葬儀はまだ騒動の始まる前でなんとか執り行えたのですが、その後の法要は最低限のことしかできていません。一周忌もどうなることやら)。

しかも、今のところ、どんな風になったらこの状態を抜け出せるのか、それが見えていません。こんな状況も、おそらく初めてじゃないでしょうか?これは、実は結構辛いですね。

 

そんな中でも、筆者の荷物は毎日海外から届くのです。ああ、ちゃんと仕事してくれている人がいるんだなあ、人の移動がこれだけ制限されながら、筆者の荷物をちゃんと運んでくれている人がいる、これはもう感謝しかないですね。

これは自分もできることを頑張るしかないか、どこかで誰かの助けになっているかもしれない、と信じながら、という、これも「脅威を感じる」一方での偽らざる実感でもあるわけです。

・・・と、何かと考えることの多かった一年でしたが、と言う次第で2021年も「できることを続けていく」(楽しいだけじゃないの、ってそんなこと言わないでくださいよ)つもりですので、何卒、今しばらくお付き合いください。

本当に1年間、ありがとうございました!

そして、2021年もよろしくお願いします。

 

少しお知らせ

これまでの投稿を、以下のブログにまとめています。

**本稿での投稿を適宜そのまま関連がありそうな項目をまとめて移設しているので、実は文体が投稿時期によってまちまちです。大変、気にはなっているのですが、改稿する「勇気」が今のところありませんので、そこはご容赦を。 

本稿と併せて、縦糸と横糸のような関係にできればいいなあ(どっちが縦糸か、と言うようなツッコミは置いといて)、とこれは「小さな野望」ですね。

fw688i.hatenadiary.jp

 

内容をご紹介。

各国海軍の主力艦開発のまとめ

言うまでもなく、本稿では年表風に投稿して来た各国海軍の主力艦開発を、国別にまとめたものです。筆者のお気に入りの順に。

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そして未成艦・If艦のまとめも

未成艦・If艦のご紹介。今のところ多分主力艦(戦艦・巡洋戦艦)でけですが、いずれは手をもう少し広げるかも。

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主力艦以外のミニシリーズも。

日本海軍の補助艦艇はこちらで(もう少し残っていますね)

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2021年の早い時期に前々から公言している「日本海軍の航空母艦」を多分ミニシリーズで投稿する予定なので、これもいずれは「まとめ」としてこちらにも追加します。

 

さらに本稿でぼちぼち始めている日本海軍以外の補助艦艇のに未シリーズも、適宜、こちらにも掲載していく予定です。

 

海上自衛隊シリーズ

これは説明、いらないですかね。

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そして模型サイトらしく、こんな話のまとめ 

今のところ3D  Printingの話だけです。そもそも筆者が1:1250スケールのコレクションを始めた当時は、3D printingがこんなに充実するとは考えていませんでした。今や最重要な選択肢、かも。

fw688i.hatenadiary.jp

 

と言うことで、内輪のご紹介、のような投稿になりましたが、こちらも時折、よろしくお願いします。

 

予告編:2021年の本稿の投稿予定を(順不同です)

構想中の投稿ラインナップは以下の通りです。

日本海軍の航空母艦開発小史:ミニシリーズで。モデルはほぼ全て揃っています。甲板の白線を整備中。

装甲巡洋艦のミニ・シリーズ:これまで紹介してこなかった海軍の装甲巡洋艦の補完計画。モデルはほぼ揃っています:米海軍、オーストリア=ハンガリー帝国海軍、イタリア海軍

第二次大戦期の巡洋艦総覧シリーズ:英海軍、フランス海軍、米海軍(?)

第二次大戦期の駆逐総覧シリーズ:英海軍、ドイツ海軍、米海軍、フランス海軍(?)、イタリア海軍(?)

残された主力艦のミニシリーズ:バルト海海防戦艦スウェーデンノルウェーデンマークフィンランド

アドリア海の空賊物語:これはどんな展開になるか???

 

こんな感じで、2021年もよろしくお願いします。

もちろん「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

さらに、模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。こんな模型探しているんだけど、どこかにあるだろうか、と言うような問い合わせや、調達方法など、どんなことでも結構です。

 

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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寒くなると、やっぱり「フィンランド」

仕込み期間、継続中。今回も、サクッと。

・・・という訳でもないのですが、「訳のわからない」タイトルになりました。

今回は「フィンランド」です。と言っても、行ったことないし、多分、「行きたい、行きたい」と言いながら、きっと行かないんだろうなあ、と思いつつ。でも行ってみたい国の上位にはずっとい続けています。何が見たい、とか、そう言うのないんですけどね。ただ土が踏めればいい、と言う感じ。

 

と、訳の一層わからない冒頭になってしまったので最初に本稿の本分である 1:1250スケールの艦船模型をご紹介してしまいましょう。

フィンランド海軍「イルマリネン級」海防戦艦

ja.wikipedia.org

 

フィンランド第一次世界大戦中のロシア帝国の崩壊の後、フィンランド共和国として念願の独立を果たします。そして独立と同時に小さな海軍を創設します。

創設当初は、崩壊したロシア帝国海軍の統治時代からの残置艦艇を接収する形で発足しましたが、いずれも時代遅れの砲艦などの小艦艇ばかりでした。

そもそもフィンランド海軍の主要な任務は、陸上砲台の運用等も併せて、首都ヘルシンキの面するフィンランド湾の沿岸警備でした。フィンランド湾 - Wikipedia

が、フィンランド湾はその最奥部にサンクトペテルブルグレニングラード)を抱え、これはつまりは、新生ソビエト連邦バルト海への玄関口を扼する位置にあるという微妙な(危険な?)地勢的な背景を抱えているということでもあり、予想される紛争に対し近代的な戦力の整備は必須でした。

1925年の議会で承認された海軍近代化計画の中で、潜水艦5隻、魚雷艇4隻と共に、同海軍初の戦闘艦艇として同級の建造は承認され、1930年、31年と相次いで就役しました。

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(直上の写真は「イルマリネン級」海防戦艦の概観。74mm in 1:1250 by XP Forge:移動式要塞砲台的な感じ?)

今回モデル調達には少し複雑な経路をとっています。元々はお馴染みのShapewaysで見つけたGhukek's Miniatures製の1:1800スケールモデル

www.shapeways.com

これを、例によって1:1250スケールへのスケールダウン(アップ?)をお願いしたところ、そういうリクエストはXP Forgeが対応しています、という事で調達はそちらで行いました。

xpforge.com

入手したモデルの主砲塔だけが少し大きさディテイル等、気になったので、手持ちのストックの砲塔と換装しています。

 

同級はオランダの企業によって設計され、フィンランド湾での活動を想定し、幅広の吃水の浅い船体を持ち、かつ冬季の海面凍結から砕氷能力も考慮された船型をしていました。4000トン級の船体を持ち、機関には砕氷時の前進後進の操作性、速力の調整等への配慮から、デーゼル・エレクトリック方式の主機が採用され、16ノットの速力を発揮する事ができました。しかしフィンランド湾沿岸での任務に特化した強力な艦として、外洋への航行は想定から外されて設計されたため、燃料搭載量が極めて少なく航続距離は700海里程度に抑えられていました。

武装としては、主砲には 隣国スウェーデンボフォース社が新設計した46口径25.4センチ連装砲を2基装備し、併せてこれもボフォース社製の新設計の10.5センチ高角砲を連装両用砲塔で4基搭載するという沿岸警備用の海防戦艦としては意欲的な設計でした。

これらの砲装備管制のために高い司令塔を装備したために、明らかにトップ・ヘビーな艦容をしています。とはいえ、その主要任務が活動海域を限定した移動要塞砲台的なものであることを考えると、それほど大きな問題ではないのかもしれません。

 

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(直上の写真:「イルマリネン」(左)と「ヴァイナモイネン」(右):塗装は例によって筆者オリジナルですので、資料的な価値はありません)

 

イルマリネン:1931年就役。1941年9月、ドイツ軍がエストニア進出を企図して始動したノルトヴィント作戦に、ロシア艦隊への陽動部隊として参加中に触雷して喪失されました。沈没までの間、同艦はフィンランド艦隊の旗艦を務めていました。

ヴァイナモイネン:1930年就役。就役順としてはこちらの方が早かったため、資料としては同級を「ヴァイナモイネン級」と呼称する場合もあります。大戦終盤、ソ連フィンランドに対し反攻作戦を展開しますが、その中で同艦は、唯一の大型戦闘艦として数次の空襲で重要目標とされましたが、大戦を生き残りました。

大戦終結後は賠償艦としてソ連に引き渡され、バルティック艦隊に編入され、1958年に破棄が決定され、1966年に解体されました。

 

少し予告。

海防戦艦という艦種は、バルト海沿岸諸国で好んで建造された艦種です。古くはロシアのバルティック艦隊が保有していましたし(多くは日本海海戦に参加し、撃沈、あるいは日本海軍に鹵獲されました)、スウェーデン海軍はこの艦種を多く保有していました。現在、このスウェーデン海軍の系譜を整備中。2021年のどこかで、ご紹介できると思っています。その際には今回のフィンランド海軍の2隻も再登場していただくかも。ちょっと予告でした。

 

「冬戦争」と「継続戦争」

少し乱暴に整理しておきますと、フィンランド第二次世界大戦参加は、ソ連との国境問題に起因すると言っていいと思います。従って、彼らの参加は「第二次世界大戦への参加」と言う理解よりも、フィンランド国土をめぐる「冬戦争」と「継続戦争」、と言う整理をした方が理解しやすいと考えています。

 

「冬戦争」

1939年ソ連は国境線の変更とフィンランド国内への軍事施設の設置と軍の駐留を拒むフィンランドに侵攻し、いわゆる「冬戦争」が勃発します。圧倒的な戦力を誇るソ連に対し、フィンランドは抵抗しますが、その善戦も虚しく(なんか、初めて書いたお決まりのフレーズ!)、第二次世界大戦下にあって、頼みのドイツは独ソ不可侵条約により動けず、一方の英仏は対独戦展開中のため支援をフィンランドに送れず、孤立化の中で、領土の割譲など過酷な条件を受け入れ停戦せざるを得なくなりました。

ja.wikipedia.org

 

筆者は、直下に掲げた小さな空軍の活躍を描いた中山雅洋さんの名著「北欧空戦史」に触れたことで、第二次世界大戦の最中に行われた「冬戦争」「継続戦争」と「フィンランド軍」に興味を持ち始めました。

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https://www.amazon.co.jp/北欧空戦史-文庫版航空戦史シリーズ-13-中山-雅洋/dp/4257170131

 

そして「冬戦争」については梅本弘氏の「雪中の奇跡」を忘れることはできません。

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https://www.amazon.co.jp/s?k=梅本弘&i=stripbooks&page=2&__mk_ja_JP=カタカナ&crid=1SH9VFGKLOKCO&qid=1609031006&sprefix=梅本%2Cstripbooks%2C254&ref=sr_pg_2

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(手持ちの1:144スケールモデルからのワンショット。冬季装備歩兵(一部はスキーを履いています)と軽戦車部隊。戦車は後にご紹介するBT-42突撃砲と、フィンランド軍が冬戦争当時主力戦車として30両保有していただビッケルス軽戦車(もしくは鹵獲したT-26戦車:いずれも英国製のビッカ-ス6t戦車がベースになっています。ビッケルスはビッカースのフィンランド語読み))

 

そして下記の映画はあまりにも有名。

www.youtube.com

 

そして「継続戦争」へ

1941年6月ドイツ軍が独ソ不可侵条約を一方的に破棄してソ連侵攻を始めると、フィンランドに駐留していたドイツ軍も同様に活動を開始し、これに反撃したソ連空軍がフィンランド空爆フィンランドも対ソ連戦を開始します。

フィンランドとしてはこの戦争を「冬戦争」から継続したソ連との領土問題に起因する二国間の戦争であると主張して、「継続戦争」の呼称が使われています。

この戦争では、フィンランドは「冬戦争」の停戦条件としてソ連軍の駐留を許し、軍事施設の設置を認めざるを得なかったフィンランド領内のハンコ半島を取り戻し、カレリア地方へ侵攻しレニングラード包囲戦の一翼を担います。一方で、ドイツ軍第36山岳軍団と協力し、北極海の米国からソ連に向けての支援物資の窓口であるムルマンスク方面等ラップランドへの侵攻作戦にも参加しますが、こちらは米国からの政治圧力等でフィンランド軍が侵攻を中止したため、作戦は成功しませんでした。

ja.wikipedia.org

 

「継続戦争」に興味を持たれた方、必読書をご紹介しておきます。

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https://www.amazon.co.jp/流血の夏-梅本-弘/dp/449922702X/ref=sr_1_3?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords=梅本弘&qid=1609031326&s=books&sr=1-3

 

最近はこんな映画も。

プライベートライアン」や「ブラックホーク・ダウン」などの迫力に比べれば地味ながらも・・・。

www.youtube.com

 

最大の魅力は、その装備の「寄せ集め」感?

表題はフィンランド軍の魅力を一言で言うと、こんな感じかな、と筆者が思うこと、です。「分かる人はわかる」そんな感じでしょうか?とにかく独立直後の小さな新興国が、手に入る兵器はともあれ入手して、と言う感じがあります。当時の余剰兵器の見本市のような状態。そして、これはミリタリーマニア、あるいは模型マニアにとっては、とても魅力的。

 

まずは「冬戦争」時の主力戦闘機。

「フォッカー D-21」(フィンランド風にいうと「フォッケル」ですかね)

ja.wikipedia.org

オランダ製の固定脚の単葉戦闘機で、21機を完成機あるいは組み立てキットで購入し、さらに21機をライセンス生産しています。105日間の「冬戦争」で、12機が失われましたが、120機以上の撃墜記録を残したとか。

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(こちらは頼りになるShapeways(Kampffieger models)の製品をストレートに塗装し、Mark I Model製のデカールを貼っています。欲を言うと、スキーを履いたモデルがあるともっと雰囲気が出たかもしれません。全長57mm 翼端長77mm

www.shapeways.com

 「冬戦争」当時ですら、既に一般的には旧式機として認識されていましたが、その後の継続戦争でも引き続き地上攻撃機として使われ続けました。

 

鹵獲兵器もどんどん活用。その代表格として。

Iー16

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(鹵獲兵器もどんどん投入されました。冬戦争当時のソ連軍主力戦闘機の一つ「I-16」もその一つ。F-toys ウイング・キット・コレクション Vol.3?から。全長45mm 翼端長63mm)

 

そのほとんどが、型落ち、正式採用を見送られたような、本国ではちょっと「ポンコツ」評価をされながら、フィンランド軍の手にかかると第一線兵器として蘇る、そんな魔法を見る事があります。

その代表格が、次にご紹介するF2A戦闘機。

 

F2A艦上戦闘機ja.wikipedia.org

F2A艦上戦闘機は米海軍初の全金属単葉戦闘機として採用された艦上戦闘機ですが、 当時新興の航空機メーカーであったブルースター社は、生産能力の点で納期に所定の数量を間に合わせる事ができず、主力艦上戦闘機の座は、結局グラマン社のF4F「ワイルドキャット」に奪われてしまいます。

その後、F2Aは米軍では海兵隊で採用され、さらに輸出仕様の機体がイギリス空軍、オランダ空軍等で採用されましたが、いずれのケースでも特に太平洋戦線で配備されたF2Aは日本軍の零式艦上戦闘機や陸軍の一式戦闘機「隼」には歯が立たず、次第に第一線から姿を消してゆきます。

一方、同時期、「冬戦争」での経緯から、戦闘機をかき集めていたフィンランド空軍にも採用され、44機が納入されました。これらの機体は、それまでフィンランド軍が保有していたどの戦闘機よりも性能が上回るところから、「冬戦争」でフォッカーD-21の機体を運用して大戦果を挙げた第24戦闘機隊に配備され「ブルーステル」の通称で親しまれました。「継続戦争」初期には、同部隊で実に456機のソ連軍機を撃墜し、35人のエース・パイロットを生み出すと言う大活躍をし、「空の真珠:タイバーン・ヘルミ(Taivaan helmi)」と賞賛されました。

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(直上の写真:筆者の手持ちストックから1:144のF2Aフィンランド空軍仕様。F-toys ウイング・キット・コレクション Vol.9から。全長55mm 翼端長74mmの可愛いモデルです)

1943年にドイツ軍からメッサーシュミット109G 型の供給が始まると、流石にエース戦隊はこちらに装備替えをしてゆきますが、運用は継続され、戦争末期のソ連軍による反攻作戦ではカレリア方面で再び活躍しました。

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 (直上の写真はF2Aの後継主力戦闘機となったMe-109G。直下の写真は3機種の比較。意外とMe-109Gが小さい!)

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一方で、魅力的なオリジナル兵器も。

その代表格がスオミ短機関銃。この銃は、歩兵といえば小銃(単発式ライフル銃)の時代にあって、時代を先取りする形で、見通しの悪い森林での運用を想定されて正式採用されたサブマシンガンの先駆者的存在、と言ってもいいでしょう。

同様に見通しの悪い市街戦等の状況への適応性の高さから、各国陸軍が競って同種の兵器を開発します。

ja.wikipedia.org

 

そして、鹵獲兵器や型落ち兵器の組み合わせからも、魅力的な装備が。 

BT-42突撃砲

フィンランド軍は多くのソ連戦車を「冬戦争」「継続戦争」鹵獲し、自軍の陣営に投入していますが、その中でも代表格、と言うとやはり「BT-42突撃砲」でしょうか。

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(直上の写真:筆者の手持ちストックから1:144のBT-42突撃砲。39mmの可愛いモデルです。メーカーはPtshead)

http://nowear.se/pitheadphp/www/products.php?prtid=507

 

フィンランド軍は「冬戦争」当時、ソ連軍の主力戦車であった「BT -7」戦車を多数鹵獲しました。この既に主力戦車としてはやや非力とみなされていた戦車をベースに、こちらもやや旧式化していたイギリス製4.5インチ榴弾砲を搭載し、火力支援任務用の戦闘車両として改造されたものが同突撃砲です。18両が「継続戦争」に投入され、「継続戦争」初期(1942年)の突撃砲大隊の基幹戦力となりました。1943年頃から同大隊の装備がドイツ製の3号突撃砲に置き換えられると、独立戦車中隊に配置替えされ、特にソ連軍の反攻作戦に対し、ビーブリ防衛戦等に投入されました。

ja.wikipedia.org

 

最近では、こんなところでも有名になっちゃって。なんと所属は「継続高校」ですよ。

girls-und-panzer-finale.jp

 

と言う事で、思いつくままに(というか手持ちの模型を見ながら?)ツラツラと、ミリタリファン視点での、あるいは模型ファン視点でのフィンランド軍の魅力をご紹介してきたつもりですが、伝わっていますかね?もちろんこれはほんの一部分で、前出のF2A戦闘機の導入前に主力戦闘機として「冬戦争」を戦ったフォッカーD-21戦闘機、F2Aの後継となったMe109Gの大活躍や、これも前出のBT-42の後継として導入された3号突撃砲部隊の話など、ご紹介したい話は山ほどあります。

これはまた改めて、というか、もっと詳しい人がたくさんいらっしゃるような気がします。

 

最後に、「継続戦争」ものの映画で、日本では未公開の映画も。

Tail Ihantala 1944

1944年のソ連軍の反抗作戦に対し撤退戦を繰り広げるフィンランド軍を、モノクロの実写フィルム映像を織り交ぜながら(?)描いた映画です。3号突撃砲はもちろん、フォッケウルフ190(らしき機体)も登場します。軍服や装備品のマニア(筆者はあまりそちらは詳しくないのですが)は、たまらんのじゃないかな?

冒頭から3号突撃砲とT34の砲戦シーンが・・・。

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(直上の写真:Tali Ihantala 1944のブルーレイ。筆者はEbayで入手しました。日本語字幕が入っていないので、気合を入れてみなくてはなりません)

筆者はBlue Reyを入手し、必死で英語字幕で見たのですが、最近、Youtubeで下記を発見。なんと日本語字幕を入れていらっしゃいます。ありがたや。

フィンランド製戦争映画 『Tali Ihantala 1944』 - YouTube

 

という事で、今回はここまで。

年内にもう一回?(もしかすると、2020年はこれでおしまいにするかもしれませんが)

 

次回は、どうしようか? 

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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イタリア海軍 第二次世界大戦期の巡洋艦 その2・特設コラム付き

制作週間、まだまだ継続中。

と言うわけで、今回も少し短めに。

今回は前回の続きというわけで、イタリア海軍の第二次世界大戦中の巡洋艦の2回目。

軽巡洋艦、「コンドッティエリ型」という総称で知られる軽巡洋艦の艦級の紹介です。

 

「コンドッティエリ型」軽巡洋艦

少し前回の記述とも重複しますが、そもそも第一次世界大戦後、それまでの仮想敵であったオーストリア=ハンガリー帝国の崩壊により、イタリア海軍が主として東地中海(アドリア海)に受けていた大きな圧力は消滅しました。しかし、今度は西地中海、北アフリカに展開するフランス海軍が新たな仮想敵として浮上します。

ところが、とりわけそれまでの仮想敵であるオーストリア=ハンガリー帝国海軍との想定戦場であるアドリア海に適応して小型高速艦を充実させてきたイタリア海軍の駆逐艦では、西地中海に展開する大洋海軍であるフランス海軍の大型高速駆逐艦には対抗できず、これに対応できる高速軽防御の巡洋艦を建造することとしました。

この建艦思想に基づき建造された5つの艦級の軽巡洋艦を総称して「コンドッティエリ型」軽巡洋艦と呼ぶわけですが、これはこの艦級の軽巡洋艦が、いずれも中世末期から近世にかけてのイタリアの著名な傭兵隊長(コンドッティエリ: condottiere)の名前を艦名に冠しているところに起因しています。

 

 

ジュッサーノ級軽巡洋艦同型艦4隻:アルベリコ・ダ・バリアーノ、アルベルト・ディ・ジュッサーノ、バルトロメオ・コレオーニ、ジョバンニ・デレ・バンテ・ネレ)

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(直上の写真:「ジュッサーノ級」軽巡洋艦の概観:137mm in 1:1250 by Star)

 

本級は上述のように新たな地中海での仮想敵となったフランス海軍の大型駆逐艦の排除を主目的として設計されたイタリア海軍最初の軽巡洋艦です。5000トン級の比較的小型の艦型に仮想敵よりも一回り大きな主砲(53口径15.2センチ砲)を連装砲塔で4基搭載し、目的のためには十分な火力を有していました。36ノットの高速性を得る代わりに駆逐艦からの砲撃に対抗する比較的軽防御の艦となりました。

 

イタリア海軍の艦船の特徴でもあるのですが、航空艤装は艦首部に搭載していました。

小型の艦型に重武装を施したため、復原性に課題があり、凌波性・居住性も良好とは言えませんでした。

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(直上の写真:「ジュッサーノ級」軽巡洋艦の航空艤装の配置。前回でもご紹介しましたが、イタリア艦の一つの特徴として、一時期まで航空艤装を艦首部に装備する傾向がありました。これは一つにはイタリア海軍の活動領域があくまで地中海であり、太陽に比較すると穏やかな海域、という地勢的な要因も働いていると考えています。本級では、艦首部にカタパルトを搭載し(写真上段)、艦橋下部に格納庫を有していました(写真下段)。もう一つ、主砲塔にも注目。前回の重巡洋艦の回でも少し記述しましたが、イタリア海軍の巡洋艦では、主砲塔をコンパクトで軽量なものにするために、砲塔内で同一砲火に搭載するという設計が採用されていました。このため砲身間の位置が近く、斉射時には左右砲身の干渉波により散布界に課題がありました。同級でも同様の設計の主砲塔を搭載していました)

 

4隻が建造され、「バルトロメオ・コレオーニ」は1940年7月クレタ島を巡るスパダ岬沖海戦でが英・豪艦隊との交戦で失われ、「アルベリコ・ダ・バリアーノ」と「アルベルト・ディ・ジュッサーノ」の2隻が1941年12月の北アフリカへの輸送路をめぐるポン岬沖海戦で英艦隊との交戦で失われました。残った1隻「ジョバンニ・デレ・バンテ・ネレ」も、1942年4月英潜水艦の雷撃で沈没しています。

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カルドナ級軽巡洋艦同型艦2隻:ルイージ・カルドナ、アルマンド・ディアス)

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本級はイタリア海軍が設計した軽巡洋艦の第2陣です。基本的な設計、武装配置などは前級「ジュッサーノ級」軽巡洋艦に準じていますが、前級で課題であった復原性を改善するために上部構造の軽量化などが設計に盛り込まれました。

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(直上の写真:航空艤装が艦首部から艦中央部に移動され、艦首部。艦橋基部等が軽量化されました。直下の写真:「ジュッサーノ級」(上段)と「カルドナ級」の環境構造の比較:上述のように航空艤装が艦首部から艦中央部に移動したため、艦橋基部にあった航空機の格納庫がなくなり、艦橋がコンパクトになっています)

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2隻が建造され、「アルマンド・ディアス」が1941年2月輸送支援活動中に英潜水艦の雷撃で失われました。

 

モンテクッコリ級軽巡洋艦同型艦2隻:ライモンド・モンテクッコリ、ムツィオ・アッテンドーロ)

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(直上の写真:「モンテクッコリ級」軽巡洋艦の概観:146mm in 1:1250 by Copy )

 

本級は「コンドッティエリ型」軽巡洋艦の第3陣ですが、設計思想を一新した第二世代と言えるでしょう。その設計上の特徴は、艦型をそれまでの5000トン級から7500トン級に大幅に大型化して主兵装はほぼそのままに、装甲が格段に強化され巡洋艦を相手とした戦闘にも耐えられる設計となっています。一方で37ノットの高速性は引き継がれています。f:id:fw688i:20201220110745j:image

(直上の写真:艦橋はそれまでの支柱構造から塔構造に改められ、航空艤装は艦中央部に搭載されています)

2隻が建造されましたが、「ムツィオ・アッテンドーロ」が1942年空襲で戦没しています。大戦を生き抜いた「ライモンド・モンテクッコリ」は1964年まで就役していました。

 

デュカ・ダオスタ級軽巡洋艦同型艦2隻:エマヌエレ・フィリベルト・デュカ・ダオスタ、エウジェニオ・ディ・サボイア) 

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(直上の写真:「デュカ・ダオスタ級」軽巡洋艦の概観:148mm in 1:1250 by Neptune)

 

「コンドッティエリ型」軽巡洋艦の第4陣で、前級「モンテクッコリ級」軽巡洋艦の拡大強化型です。兵装はほとんど前級のものを踏襲していますが、艦型が8500トン級に拡大され、装甲がさらに強化されています。f:id:fw688i:20201220110821j:image

(直上の写真:塔構造の艦橋と艦中央部の航空艤装、魚雷発射管などの同級の特徴のアップ)

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(直上の写真:「デュカ・ダオスタ級」(奥)と「ジュッサーノ級」(手前)の艦容の比較。前級の「モンテクッコリ級」以降、採用された新たな設計により、艦は大型化し、艦容がそれまでとは一変しました。以後、同級の設計がイタリア軽巡洋艦の標準的なものになってゆきます)

 

2隻が建造され、2隻ともに大戦を生き抜き、いずれも戦後、賠償艦としてソ連(1959年まで在籍)とギリシア(1964年まで在籍)に引き渡されました。



アブルッチ級軽巡洋艦同型艦2隻:ルイジ・ディ・サボイア・デュカ・デグリ・アブルッチ、ジュゼッペ・ガリバルディ

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(直上の写真:「アブルッチ級」軽巡洋艦の概観:151mm in 1:1250 by Neptune)

「コンドッティエリ型」軽巡洋艦の第5陣で、艦型が前級よりもさらに1000トン拡大され、9000トンを超える大型軽巡洋艦となりました。装甲がさらに強化されたほか、兵装が見直され、55口径15.2センチ砲という新型砲を採用。艦首部、艦尾部にそれぞれ3連装砲塔と連装砲塔の組み合わせで背負式に配置され、それまでの主砲8門から10門に強化されています。さらに砲架構造も、砲身間の干渉波により散布界に課題があるとされた前級までの同一砲架構造を改め単独砲架として砲身の間隔を広げて、散布界の改善を狙っています。

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(直上の写真:「アブルッチ級」の特徴のアップ。55口径の新型砲を3連装砲塔と連装砲塔の背負い式で搭載しています(上段)。艦中央部の航空艤装は強化されています(下段))

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(直上の写真:「アブルッチ級」(奥)と前級「デュカ・ダオスタ級」(手前)の艦型の比較。煙突の配置をはじめとする艦中央部の変更が顕著です。直下の写真:両級の砲塔および艦橋の比較。上段が前級「デュカ・ダオスタ級」下段が「アブルッチ級」。上述のように、それまで散布界に課題があるとされていた同一砲架構造を、単独砲架構造に改める事で砲身の間隔を確保しています)
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同級は2隻が建造され、両艦ともに大戦を生き抜き、それぞれ1961年、1972年までイタリア海軍に在籍していました。

 

新型嚮導巡洋艦

カピターニ・ロマーニ級軽巡洋艦同型艦計画12隻完成4隻:アッティリオ・レゴロ、ポンペオ・マーノ、シビオーネ・アフリカーノ、ジュリオ・ジェルマニコ(完成は大戦後))

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(直上の写真:「カピターニ・ロマーニ級」軽巡洋艦の概観:113mm in 1:1250 by Neptune)

これまでに見てきたように、本来フランス海軍の大型高速駆逐艦対策としてスタートした「コンドッティエリ型」軽巡洋艦の当初設計案は、結果的に9500トンクラスの大型重武装の巡航戦闘艦へと発達を遂げました。

一方で、当初設計への要求がなくなったかというと、そういうわけではなく、新たな大型駆逐艦対策巡洋艦の設計が求められました。本級はそういう要求に応えて建造された新型軽巡洋艦です。

本級は、本来の要求に立ち返り4000トンを切る仮想敵駆逐艦よりも少し大きい程度の艦型を有し、40ノットの高速と駆逐艦の標準的な主砲である5インチ砲をアウトレンジ、あるいは制圧できる13.5センチ砲を主砲として連装砲塔4基を有した設計となりました。量産性を考慮し、艦型をコンパクトにすることに重点を置いたため航空艤装は搭載していませんでした。

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(直上の写真:「カピターニ・ロマーニ級」軽巡洋艦の特徴のアップ。「コンドッティエリ型」軽巡洋艦の原点に立ち返り、駆逐艦対応を主眼として新たに設計された本級は、全体の構造が巡洋艦というよりも拡大された駆逐艦に近い外観をしています。写真ではちょっとわかりニキですが、魚雷発射管なども艦中央部に配置され、両舷方向に射界が確保される駆逐艦形式を採用していました。上段写真では、それまでの塔形状の艦橋が駆逐艦に近いものに改められています。固有の高角砲を持たず、その代わり多数の37mm対空機関砲を搭載しているのも見ていただけると思います。直下の写真では、「デュカ・ダオスタ級」(奥)との大きさや特徴を比較しています)
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同級は12隻の建造が計画されていましたが、結局3隻が建造され、全てが大戦を生き抜き、2隻がフランスへの賠償官として引き渡されましたが、残存した1隻と、戦後完成した1隻の計2隻がイタリア海軍でそれぞれ1971年、1980年まで就役していました。

 

未成巡洋艦

エトナ級軽巡洋艦同型艦2隻:エトナ、ヴェスヴィオ(いずれも未成))

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(直上の写真:「エトナ級」軽巡洋艦の概観:131mm in 1:1250 by Anker)

同級は、イタリアがタイ海軍の発注を受けて建造していた軽巡洋艦です。「タクシン級」という名称の下、4000トンの船体に15.2センチ連装砲3基を搭載し30ノットの速力を有する艦となるはずでした。

1941年にイタリア海軍が取得し、搭載主砲を13.5センチ連装両方砲3基に改め、その他にも対空砲を搭載し、高速輸送艦防空巡洋艦として完成する予定でしたが、建造途中でイタリアの降伏を迎え、完成しませんでした。イタリアの降伏後、ドイツ軍が接収して港湾封鎖目的で自沈処分されました。

 

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(直上の写真:「エトナ級」軽巡洋艦の特徴のアップ。モデルはおそらくタイ海軍の発注した15.2センチ主砲を搭載した原設計案を再現しています。イタリア海軍は同級を取得後、主砲を「カピターニ・ロマーニ級」と同じ13.5センチ砲に改、さらに連装の両用砲塔に搭載し、防空巡洋艦として輸送路護衛等に活用する計画でした。直下の写真では、「デュカ・ダオスタ級」(奥)との大きさや特徴を比較しています)f:id:fw688i:20201220111820j:image

 

前回でも触れましたが、イタリア海軍は戦争中期以降、艦隊保全の傾向が強くなり、活動を控える傾向が強くなり、特に戦闘での戦没艦は前半に集中しています。この傾向は今回紹介した軽巡洋艦でも同様で、力を発揮する場所に巡り合うことすらできずに戦争は終結します。

 

特設コラム:1:1250モデルのメーカー間の差異は?

その1:まずは、大きさ比較
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(直上の写真は、「ジュッサーノ級」軽巡洋艦のStar社製モデルとNeptune社製モデルの比較。奥がStar社、手前がNeptune:Star社の方がやや大ぶりで、特にStar社のモデルの特性として、乾舷の高さが気になる事があります。筆者はあまり気になる場合には、金属用のヤスリでガリガリと削ったりすることもあります。金属粉が飛ぶので、家族区からの「非難轟々」状態になります)

 

実はコレクションの根幹にも関わってくるので、あまり筆者としては触れたくはないのですが、結局避けては通れないので、ちょっとまとめをしておきましょう。

写真でも歴然かと思いますが、メーカーによりかなり解釈が異なり、それがフォルムやサイズに現れます。コレクション本来を考えるとどこか1社に統一すべきだとはもちろん思いますが、お財布事情と、ラインナップ、さらには日本というこのスケールではマイナーなロケーションを考慮すると、そうも言っておれず、という現実的な要因から、メーカー混在のコレクションに甘えているのが実態です。

 

その2:ディテイルの差異について

直下の二枚の写真では、外観的には準同型艦と言える「モンテクッコリ級」(Copy社)と「デュカ・ダオスタ級」(Neptune社)のモデルを比較しています。

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直上の写真では、左列がCopy社の「モンテクッコリ級」、右列がNeptune社の「デュカ・ダオスタ級」。直下の写真では上段が「モンテクッコリ級」、下段が「デュカ・ダオスタ級」。いずれを見てもらっても、両社の差は歴然としています。

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Neptune社で統一したいところではあるのですが・・

これまでにも何度か触れてきていますが、サイズ感。ディテイルのバランス等を考慮するとNeptune社が他社を頭二つ程度リードしているのが実情、という事が言えると思います。しかし、入手の価格等を考慮すると、特に筆者のように中古モデルを中心にコレクションする場合には(1:1250スケールマイナー国の日本では、入手経路が非常に限られています)おそらくNeptune社のモデルは他社の倍はする、と考えていいと思います。これは「コレクション」の充実には、大きな障害、です。

一方でHai社、Delphin社、Hansa社そしてStar社などは、モデル自体の質も決して低いわけではなく、価格もかなり手頃に入手ができますし、さらに加えてモデルの分解がしやすいという特徴があり、筆者は最近コレクションの中に多く加わり始めている3D printingモデルのディテイルアップなどには大変重宝しています。

もう一つ、同じNeptune社のモデルでもヴァージョン(制作年)によってかなり大きな差があります。もちろん後のヴァージョンになるほど、技術的な改善からディテイルの再現度は高くなっていますし、場合によっては新資料によってモデルが変更されていたり、それまでのエラーが修正されていたりする場合もあります。

特に筆者のように主として経済的な理由から(本当は中古モデルに手を入れたりするのが楽しかったりするのですが)中古市場を頼りにすると、当然、中古として放出されるのは旧ヴァージョンの比率が高くなりますので、注意と、何よりどこかで「思い切り」が必要です。そうしないときりがないから・・・。(あれれ、これは以前にも書きましたね)

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もし、これからこのスケールでコレクションを初めてみようかな、などとお考えの方のご参考になれば。

 

という訳で、今回はここまで。

 

次回は、どうしようか? 年末も近づいてきましたね。

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

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イタリア海軍 第二次世界大戦期の巡洋艦 その1

制作週間、継続中。

と言うわけで、今回も少し短めに。

前回のアドリア海に少し関連して、今回から2度にわたりイタリア海軍の第二次世界大戦期の巡洋艦のご紹介です。

 

イタリア海軍の巡洋艦は概ね以下の3つの系統に分かれています。

ワシントン・ロンドン体制で制限された戦力として整備された戦闘艦としての条約型重巡洋艦(3艦級:7隻)

嚮導巡洋艦(艦名に中世の傭兵隊長の名がつけられたところから「コンドッティエリ型」巡洋艦と総称されることがあります):駆逐艦部隊を支援して仮想敵であるフランスの大型駆逐艦を撃破する目的で建造された艦種で、いわゆる軽巡洋艦ですね。(5艦級:12隻)

新嚮導巡洋艦:上記の嚮導巡洋艦の艦級は次第に大型化し、重巡洋艦に匹敵する強力な戦闘艦になりました。一方でフランス海軍の新型の高速大型駆逐艦に対抗するため、嚮導巡洋艦本来の建造目的に準じた艦級を設計しました。(1艦級:12隻を建造する計画でしたが、3隻が大戦中に完成し、戦後1隻が完成しました)

 

今回は重巡洋艦の巻。

 

条約型重巡洋艦

第一次世界大戦の結果、イタリアが仮想敵としてきたオーストリア=ハンガリー帝国が解体されます。イタリア海軍にとって最大の仮想敵が消滅したわけですが、この仮想敵との想定主戦場はアドリア海であり、この多くの島嶼部を含んだ海域での活動を想定しイタリア海軍の主戦力は比較的小型に設計されていました。

第一次世界大戦後、西地中海、北アフリカ沿岸に展開するフランス海軍が新たな仮想的となったわけですが、同海軍は大型の高速重武装駆逐艦を揃えており、上述のアドリア海での活動を想定したイタリア海軍の小型駆逐艦では対抗できませんでした。

これらのフランス海軍の重装備駆逐艦に対抗するためにイタリア海軍は一連の高速軽装甲の軽巡洋艦を建造しますが、これらは艦名に中世の著名は傭兵隊長の名がつけられたことにちなみ、「コンドッティエリ(傭兵隊長)型」軽巡洋艦と総称されました。

さらにこの設計思想を強化し、ワシントン軍縮条約で保有制限を受けた主力艦を補完する戦闘艦として一連の重巡洋艦を建造します。

 

トレント重巡洋艦同型艦2隻:トレントトリエステ

ja.wikipedia.org

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(直上の写真:「トレント級」重巡洋艦の概観:157mm in 1:1250 bu Copy(Neptune))

 

トレント級」重巡洋艦は、イタリア海軍が最初に設計した重巡洋艦の艦級です。

基本的には前述のフランス海軍の高速大型駆逐艦を仮想敵とした「コンドッティエリ型」軽巡洋艦の強化型であり、主砲を8インチ砲としました。しかし、基本設計は高速重武装駆逐艦の排除を目的とした軽巡洋艦の延長上にあり、公称38ノット(実際には35ノット)の高速を有するものの比較的軽装甲でした(舷側70mm:1929年就役)。

この辺りの建造までの経緯は日本海軍の「古鷹級」重巡洋艦(就役1926年)と類似しており、これらの強力な巡洋艦の登場が重巡洋艦(カテゴリーA)、軽巡洋艦(カテゴリーB)の艦種規定を始め、補助艦艇の保有制限を設けるロンドン会議の開催へのきっかけとなったといえるでしょう。

 

1000トン級の船体に、前述のように主砲には8インチ砲を採用し、これを連装主砲塔4基に搭載して艦首部と艦尾部に各2基づつ、バランスよく配置していました。同砲は50口径の長砲身砲で、118kgの砲弾を28000mまで届かせることができました。しかし軽量化を狙いコンパクトな砲塔設計を狙ったため、同砲塔内の左右砲の干渉波によりせっかくの長砲身砲を採用しながら散布界には課題があったようです。

魚雷発射管は船体内に内蔵する形式で搭載されていました。

艦首甲板下に水上偵察機の格納庫を持ち、これを艦首方向に設置した固定カタパルトから射出し運用する方式を採用していました。

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(直上の写真:「トレント級」重巡洋艦の特徴である艦首部の航空艤装(上段):1番砲塔直前の水上偵察機の格納庫と艦首にのびたカタパルトが特徴です。下段写真は特徴的な支柱構造の艦橋部)

 

トレント:就役:1929年 1942年6月:英潜水艦の雷撃によりイオニア海で失われました。

トリエステ:就役:1928年 1943年4月:米軍機の爆撃で沈没。

 

 ザラ級重巡洋艦同型艦4隻:フューメ、ポーラ、ゴリチィア、ザラ)

ja.wikipedia.org

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(直上の写真:「ザラ級」重巡洋艦の概観:145mm in 1:1250 by Neptune: 戦隊をやや小型化し、速力を抑えた代わり、装甲を強化したため、重量は前級「トレント級」を上回りました)

 

「ザラ級」重巡洋艦は前述の「トレント級」重巡洋艦の改良型で、 「トレント級」重巡洋艦がフランス海軍の重武装高速駆逐艦への対抗策として設計された「コンドッティエリ型」軽巡洋艦の延長線上ににある軽装甲の巡洋艦であったのに対し、速力を少し抑えて重装甲とし、より戦闘艦としての性格を強めた本格的な重巡洋艦として建造されました。

条約制限内に収めるために関係をやや小型化し、装甲重量の増大から武装の削減として雷装を廃止するなどの方策が取られましたが、やや条約制限をオーバーする11800トンとなってしまいました。

主砲は53口径の8インチ砲を採用しています。この砲は125kgの砲弾に対し31500mの射程を有する優秀な砲でしたが、前級同様、重量削減を狙いコンパクトな砲塔に搭載したことから、散布界に課題を抱えたままでした。

航空艤装は、前級同様、艦首部に搭載していました。

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(直上の写真: 航空艤装を前級に倣い艦首部に搭載しています(上段):1番砲塔直前の水上偵察機の格納庫と艦首にのびたカタパルトが特徴です。下段写真は特徴的な支柱構造の艦橋部)

 

ザラ:就役:1931年 1941年3月:マパタン岬沖海戦で英艦隊と交戦。沈没。

フィウメ:就役:1931年 1941年3月:マパタン岬沖海戦で英艦隊と交戦。沈没。

ゴリツィア:就役:1931年 1943年9月:イタリア降伏後、ドイツ軍に接収。1944年6月:国側に立って参戦したイタリア海軍の特殊潜航艇による潜入攻撃で撃沈されました。

ポーラ:就役:1932年 1941年3月:マパタン岬沖海戦で英艦隊と交戦。沈没。

 

マパタン岬沖海戦

1941年2月、枢軸国のギリシア侵攻に備え、イギリス軍はギリシア防衛のために陸軍部隊をギリシアに派遣しようと試みます。この阻止を目的としてイタリア海軍が出撃し、1941年3月、英海軍地中海派遣艦隊との間で海戦が発生します。イタリア海軍は保有する重巡洋艦7隻のうち6隻をこの海域に投入し、さらに新鋭戦艦「ヴィットリオ・ベネト」も投入します。

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(1940-, 41,377t, 30 knot, 15in *3*3, 3 ships, 192mm in 1:1250 by Neptune)

 

一方、英艦隊も軽巡洋艦部隊に加え地中海艦隊の主力である戦艦3隻と空母1隻も投入し、これに対抗しました。

当初は英軽巡洋艦部隊と伊重巡洋艦部隊の間で砲戦)が交わされますが、両軍に損害は出ませんでした。

その後。英空母「フォーミダブル」の艦載機とクレタ島基地から発進した雷撃機の空襲で、伊戦艦「ヴィットリオ・ベネト」重巡洋艦「ポーラ」が損傷し、「ポーラ」の救護に海域に止まった僚艦「ザラ」「フィウメ」を、英戦艦3隻(「ウォースパイト」「ヴァリアント」「バーラム」)がレーダ照準による夜間奇襲砲撃を加えこの3隻を撃沈してしまいました。

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(マパタン岬沖海戦に参加した英海軍の戦艦:上段「バーラム」下段「「ウォースパイト」「バリアント」 いずれも「クイーン・エリザネス級」ですが、近代化改装のレベルがやや異なります。余談ですが、「ウォースパイト」は第1次世界大戦でも活躍したロートルですが、第2次世界大戦でも、数次の損傷を受けながらも、そのほぼ全期間を通じて前線で活動し、挙げた戦果から第2次世界大戦期の最優秀戦艦とも称されています。154mm in 1:1250 by Neptune/Argonaut) 

 

 重巡洋艦ボルツァーノ同型艦なし)

ja.wikipedia.org


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(直上の写真: 重巡洋艦「ボルツァリーノ」の概観:158mm in 1:1250 by Neptune)

 

前述のように地中海の展開するフランス海軍の大型高速駆逐艦への対抗として、イタリア海軍は「コンドッティエリ型」軽巡洋艦の整備を進めるわけですが、フランス海軍もこれに対抗して新設計の「ラ・ガソニエール級」軽巡洋艦を整備します。

これへの対抗策として、再び高速軽装甲の重巡洋艦整備の必要性が高まり、「トレント級」重巡洋艦を対応シップとして1隻だけ建造されたのが重巡洋艦ボルツァーノ」です。同艦はイタリア海軍が建造した最後の重巡洋艦となりました。

タイプシップとした「トレント級」との相違点は航空艤装の配置。従来、イタリア海軍の巡洋艦は航空艤装を艦首部に配置してきましたが、艦首配置は、搭載機の発艦については艦首の向かい風を利用できる利点があったものの、少しの荒天でも艦首波により搭載機の運用が妨げられるなどの課題があったため、配置を艦中央部へと変更しました。f:id:fw688i:20201213140357j:image

(直上の写真: 本艦では、それまでイタリア巡洋艦の特徴の一つであった艦首部に搭載していた航空艤装を艦中央部に移動しています)

主砲は前級同様、優秀な諸元を持つ53口径の8インチ砲を採用しましたが、コンパクト砲塔への搭載による散布界の課題は同様に引き継がれました。

前級では廃止した雷装を復活し、船体内に内蔵する形式で搭載していました。

 

1933年:就役 イタリア降伏後、ドイツ軍に接収。1944年6月:国側に立って参戦したイタリア海軍の特殊潜航艇による潜入攻撃で撃沈されました。

 

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(直上の写真: イタリア海軍の重巡洋艦3艦級の艦型比較。手前から「トレント級」「ザラ級」「ボルツァリーノ」。設計の重点が、速力、戦闘力・防御力、再び速力、と移って行ったことが、そのまま艦型に現れています)

 

上述のマパタン岬沖海戦で、出撃した6隻の重巡洋艦のうち一気に3隻を失うと言う一方的な損害を被ったイタリア艦隊は重度の艦隊保全主義に陥り、以降、艦隊全体の行動が限定的となり、活躍の場を見いだせず順次失われてしまいました。

 

という訳で、今回はここまで。

 

次回は、今回に引き続きイタリア海軍の第二次世界大戦期の巡洋艦のその2。「コンドッティエリ型」軽巡洋艦の系譜を総覧する予定です。

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アドリア海編:脇役登場!イタリア空軍、飛行警備艦「オッタビアーノ・アウグスト」

今週も引き続き制作週間、と言う事で、進行中の「アドリア海」編(いつの間に「編:シリーズ化」したのかな)に登場する予定のイタリア空軍(海軍?まだ設定はまだ迷っていますが。空軍のマークつけちゃったしなあ)飛行警備艦「オッタビアーノ・アウグスト」のご紹介です。

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(イタリア軍飛行警備艦「オッタビアーノ・アウグスト」の概観。72mm in 1:1250 by Kaja's Models and Machinations:(右下写真)3機の水上飛行機を腹部のハンガーに懸吊しています。腹部にはイタリア空軍のマークが見えます。「黄金の嘴」の二つ名の由来はご覧の通り)

 

本艦は第一次世界大戦の戦訓を踏まえ、飛行船の機動力と大きなペイロードの注目したイタリア軍が、アドリア海で跳梁する海賊・空賊対策の基幹戦力として、機動力を備えた警備拠点として活用すべく建造した艦級です。

固有の武装としては20センチ連装主砲塔1基と15センチ単装速射砲4門を搭載しています。さらに後方のハンガーに戦闘飛行艇3機を懸吊することができました。

2基のエンジンを搭載し、12ノット程度の飛行速度を出すことができました。

「オッタビアーノ・アウグスト」とローマ帝国初代皇帝の名を冠してはいましたが(日本ではオクタビアヌスの方が通りがいいかも)、「空飛ぶオルカ:Orca volante」あるいは「金の嘴:Becco dorato」の通り名で知られていました。

・・・・と言うような設定、かな?

 

モデルの原型は、本稿の読者ならお馴染みのShapewaysの下記の出品。元は少しSF的な(下記のサイトではご本人はSteampunk Airshipに分類されています)飛行船のモデルで、浮揚装置を4基、船体周辺に配置しています。元は1:700スケールでしたが、例によってリクエストして1:1250にスケールダウンしてもらっています。先っちょがとんがった形状がとても魅力的で、どうしても作りたくなってしまった!

www.shapeways.com

上記の説明で確認していただきたいのですが、オリジナルモデルは「グロサリオン浮揚装置」を装備し118ノットの高速を発揮するハイブリッド飛行船、と言う設定です。その肝心の「浮揚装置」をとってしまった。叱られるかも。

 

ちょっと余談ですが、実はこの方のSteam Shipの制作品にはBorodino Class Battleshipがあり、筆者の制作したモデルの写真を作例として使っていただいています。本稿でご紹介した日露戦争戦利艦「石見」はこのモデルを原型として製作しています。

www.shapeways.com

戦艦「石見」の制作記は下記の2回で触れています。興味のある方は是非。

fw688i.hatenablog.com

fw688i.hatenablog.com

 

 

f:id:fw688i:20201206151153j:image

(上掲の写真は、「オッタビアーノ・アウグストス」の20センチ連装主砲、15センチ単装副砲、飛行艇ハンガーの拡大。基本的に主砲・副砲は、眼下の標的(艦船か建造物)に対する撃ち下ろしが想定されています。眼下の要塞や軍事施設などの固定目標ならなんとか効果のある砲撃ができそうですが、艦船など移動目標に対しては実効性はどうでしょうね?まあ、威嚇射撃で停船させるとか、そんな感じでしょうなね。デカールは1:144スケールのイタリア戦闘機からの転用。迷彩塗装が結構面白い、と思いませんか?とんがった先端は、今のところ何か特殊な武装など、と言う設定は考えていません。何かセンサー類はありかな?ハンガーに懸吊した水上飛行機が、本艦の機動性を拡張しています)

 

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(上の写真は本艦の大きさをイメージしてもらうために、写真上では第一次世界大戦の対潜飛行船との比較。かなり大きいことがわかると思います。下の写真では本稿の前回でご紹介したイタリア海軍の1920年台の大型駆逐艦「レオーネ級」(90mm in 1:1250)との比較。実戦ではこうした水上艦とのコンビで運用されたんでしょうね。「空賊」を海と空中から追い詰める、と言う感じでしょうか:と言っても実存はしませんので、ご注意を)

 

いずれは、本稿でご紹介した遊覧飛行母船「アドリア海の真珠」号などと絡みで「銭形警部」的な役回りを演じてくれるはず。

 

と言うことで、だんだん準備が整ってきましたが、今回はこの辺でおしまい。

 

次回はアドリア海つながりで「イタリア海軍の巡洋艦の系譜」でもやりましょうか

あるいは、もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

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新着モデルのご紹介:「アドリア海」編の準備?

今回は、ちょっと手抜き、という訳ではないけれど、制作の方にも週末の時間を使いたくて、サクッと行きます。

そういう時は、お決まりの「最近の新着モデルのご紹介」です。

 

以前、本稿では、Shapewaysで発見したスペイン海軍の「海軍移動航空基地:Estación Transportable de Aeronáutica Naval: デダロ」のご紹介をしています

fw688i.hatenablog.com

「デダロ」を少しおさらいしておくと、第一次世界大戦後スペイン海軍が、飛行船と水上機母艦としてイギリスから購入した商船を改造した、日本海軍風に言うといわゆる「特設水上機母艦」です。

www.shapeways.com

ちょっと面白くて購入したのですが、どんどん想像が膨らんで「アドリア海の遊覧飛行母船」のような仕上げにしてしまいました。民間の遊覧飛行母船だけど、実はアドリア海の空賊連合(あれ、どこかで耳にしたような?)が隠れ蓑に使っている、と言うような・・・。第一次世界大戦後の混乱期で、オーストリア=ハンガリー帝国が解体され、イタリアではムッソリーニファシスト党が台頭してきている、ちょうどそのような時代。

 

1920年台のイタリア海軍駆逐艦水雷艇4種

空賊連合が出てくれば取締りのイタリア海軍も出てくる、と言う訳で、まず最初の新着はイタリア海軍のちょっと古い小艦艇群です。アドリア海の警備に当たっている、と言う想定。時々、遊覧飛行母船「アドリア海の真珠」号の動向にも注意を払っています、と言うような設定でしょうか。

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上の写真:奥から「レオーネ級」駆逐艦(90mm in 1:1250 by Argonaut)、「セラ級」駆逐艦(69mm in 1:1250 by Hai?)、水雷艇「アウダーチェ」(70mm in 1:1250 by Hai?)、「クルタトーネ級」水雷艇(69mm in 1:1250 by Hai?)の順。

 

詳しくご紹介する機会は後々にあるとは思いますので、今回は簡単に。

 

「レオーネ級」駆逐艦 

1920年台に3隻が建造されました。駆逐艦としてはやや大型で、当初は「軽偵察艦」と呼ばれていました。12cm連装速射砲4基とかなり重武装です。1700トン 34ノット

en.wikipedia.org

 

「セラ級」駆逐艦

1920年台後半に建造された駆逐艦で、4隻の同型艦を持っています。12cm連装砲2基と533mm連装魚雷発射管を搭載し、その後のイタリア駆逐艦の雛形となりました。1200トン 35ノット

en.wikipedia.org

 

水雷艇「アウダーチェ」

1910年台後半から就役し、同型艦はありません。日本海軍が英国に発注した「浦風級」駆逐艦の2番艦「江風」をイタリア海軍譲り受けた艦です。当初駆逐艦とされましたが、後に水雷艇に艦首が変更されました。10cm単装砲7基と450mm連装魚雷発射管を各舷に1基づつ搭載していました。900トン 30ノット

en.wikipedia.org

 

クルタトーネ級」水雷艇

1920年台後半から就役した水雷艇で、当初は駆逐艦に分類されていました。同型艦4隻。10cm連装砲2基と450mm3連装魚雷発射管2基を搭載していました。880トン 32ノット

en.wikipedia.org

 

サヴォイアS21試作戦闘飛行艇(1:144)

そして今回の目玉ですが、「アドリア海飛行艇」といえば、やはりこの機体が欲しいなあ。

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 サヴォイアS21試作戦闘飛行艇ですね。1:1250スケールではわずか**mmほどの小さなモデルになってしまいます。もちろん市販モデルなどありませんので、手持ちの艦載飛行艇(イギリスの巡洋艦が時折積んでいます)を改造して製作しています。

とはいえ、もう少しやはり大きいモデルも欲しい、と言うことで収納と、できれば他のコレクションのスケールを考えて1:144スケールのモデルを探していました。しかし、市販のモデルはレジンキット等も併せて、筆者の知る限りでは見当たらず、ついに Shapewaysにアップされていた1:87スケールのモデルの作者にスケールダウンをお願いする事にしました。

www.shapeways.com

お願いの際に色々とやりとりがあって(なんとこの方、おそらくスイス在住の方で、私の英語のリクエストに対し、必ずフランス語でお返事が返ってきます)、下記の写真を頂きました。

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shared by Swiss Models Factory MF-CH

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shared by Swiss Models Factory MF-CH

写真を拝見すると、なんとHOゲージ(=1:87)のジオラマの一部に組み込んでいらっしゃいますね。うらやましい。技術もスペースも。(出来上がったら、写真を送ってね、とちょっとプレッシャーをかけられています)

 

到着したモデルが下の写真。Smooth Fine Detail Plastic素材の素晴らしいディテイルを持ったモデルです。(最初は単純に1:87のデータを縮小処理してくださったようなのですが、Shapeways ではそのまま出力、と言うわけにはいかなかったようで、いくつか手を加えてくださったようです)

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このモデルには飛行時と着水時の二つの形態があり、上が飛行時で、下が着水時。

 

いずれも素晴らしい! しかも、長年求めていた、おそらく世界初の1:144スケールのモデルです。大感激!

お求めはこちらで。

www.shapeways.com

www.shapeways.com

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(直上の写真は下地処理をした状態:上が飛行状態、下が着水時)

 

で、もちろんこのライバルも忘れてはいけません、と言う事で、こちらも入手。

カーチスR3C-0非公然水上戦闘機(1:144)
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こちらの作者の方は1:144スケールのモデルをたくさん作っていらっしゃる方で、「カーチス」はその中のゴールデンエイジ・エア・レーザー(1:144 Golden Age Air Racing)のシリーズにラインナップされていました。

www.shapeways.com素材はWhite Natural Versaitile Plasticで、こちらもなかなかいい感じです。機体とフロートのバランスが、なんともいい感じです。

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(直上の写真は下地処理をした状態)

 

そして最後にご紹介するのは、Shapewaysでの上記のショッピングで偶然見つけたスウェーデン海軍の装甲巡洋艦「フィルギア」。(こちらは「アドリア海」とは関係ないですね)

装甲巡洋艦「フィルギア」スウェーデン海軍
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ja.wikipedia.org

同艦はスウェーデン海軍が沿岸防備のために1907年に就役させた同海軍唯一の装甲巡洋艦で、入手した模型は1944年当時の対空火器を強化したのちの姿を再現したものになっています。

www.shapeways.com

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(直上の写真は下地処理をした状態 93mm in 1:1250 by Brown Water Navy Miniatures)

 スウェーデン海軍、ちょっと心がそそられますね。バルト海がその主な活躍の場、なんでしょうね。知識としてはスターリング機関を搭載した非大気依存型潜水艦の実用化先駆国と言う感じですかね。模型としては海防戦艦軽巡洋艦駆逐艦があったかな、と言う感じです。

もうちょっと調べてみよう。

 

と言う事で、今回はここまで。

冒頭にも述べましたが、ちょっと制作の方に時間を割きたいと思っています。

 

次回は、どうしようか?

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

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特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

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ドイツ海軍の第二次世界大戦での通商破壊戦:Uボート総覧

本稿ではこれまで通商路保護のための護衛艦艇を種々紹介してきましたが、今回は前回に引き続き、「通商路破壊」の視点から、ドイツ海軍が大量に投入した潜水艦をご紹介します。

いわゆる「Uボート」ですね。

筆者はこれまで「護衛艦艇が大好き」というお話をしてきましたが、経緯的には「Uボート」好きから転じて護衛艦艇への興味を持った、というのが事実でして、したがって「Uボート」も大好きなのです。

今回はそういうお話。

本稿は基本的に1:1250スケールのモデルを中心に話を進めていくのですが、潜水艦などをご紹介するには、少しスケールが小さいのかな、と考えています、ですので、今回は他のスケールのモデルも併せてご紹介しながら・・・。

 

ドイツ海軍Uボートの復活とその戦果

本稿では何度か触れてきましたが、第一次世界大戦後のベルサイユ条約で、ドイツは大幅な海軍軍備に関する制約を課せられました。潜水艦の保有は禁じられ、海軍は沿岸警備に限定された戦力の保有しか許されませんでした。

しかし、大戦後の混乱の中でナチスが台頭し政権を掌握すると、1935年にヒトラー再軍備を宣言。同年に締結された英独海軍協定で、潜水艦の保有も含め事実上の制限撤廃が行われました。

第一次世界大戦で様相が垣間見られた総力戦の諸相の中でも、特に対英戦略の中で潜水艦を用いた通商路破壊の有効性は顕著で(であるがゆえに潜水艦保有が禁じられたのですが)、ドイツ海軍は潜水艦戦力の再整備を急ぎます。

ドイツ海軍の想定では通商破壊戦でUボートが効果を上げるには、300隻の通商破壊作戦用Uボートが必要とされていましたが、ドイツのポーランド侵攻と共に第二次世界大戦が勃発し、その時点でドイツ海軍が就役させていた潜水艦はわずか57隻、しかも通商路破壊戦に適した航洋型のUボートはそのうち30隻程度にすぎませんでした。

 

その後、ドイツの敗戦まで5年8ヶ月の戦いの中で、1131隻のUボートが就役し、830隻が作戦行動を実施し、連合国船舶約3000隻、約1400万トンを撃沈する戦果を挙げました。これに対し失われたUボートは793隻で、約40000人の将兵が潜水艦戦に身を投じ、戦死約28000名(損耗率70%!)、捕虜となったもの約5000名という大きな犠牲が払われました。

 

Uボートの諸形式

第二次世界大戦で投入されたドイツ海軍のUボートの形式は、以下の通りです。

 

Uボート復活:バランスの取れた航洋型潜水艦。ちょっとサイズが中途半端でしたかね?

I型(同型艦2隻)

航洋型潜水艦として設計された艦級で、700トン級の船体に魚雷発射管を艦首部に4基、艦尾部に2基搭載し、魚雷14本を搭載していました。

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(直上の写真: I型の概観:56mm in 1:1250 by Neptune)

第一次世界大戦に投入されたUBIII型を原型とし、水上で18ノット、水中で8ノットの速力を発揮することができました。12ノットの速度で6300海里の航続距離を持っていました。43名が乗組み、200mまで潜水可能とされていました。

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(U26 I型 1:350スケール モデル)


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その後、設計の方針が量産性を考慮した中型潜水艦(VII型)と、より長期の作戦行動に適した大型潜水艦(IX型)に定まったため、この形式は2隻しか建造されませんでした、

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(直上の写真: ドイツ海軍が建造した航洋型潜水艦の比較:I型(中央)、手前がVII型、奥がIX型です。I型が中間的なサイズで2隻が建造され、以降はVII型、IX型の量産体制へと移行してゆきます)

 

沿岸警備用、小型潜水艦:みんな最初はこれで訓練したのかな(?)

II型(A〜Dタイプまで、同型艦60隻)

沿岸警備用に設計された小型潜水艦で、250トン級の船体に艦首部に魚雷発射管3基を持ち、魚雷5本を搭載していました。水上速力は13ノット、水中速力は7ノットで圧壊震度150mとされていました。(いずれもIIA型)

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(II型:U9の1:350スケールモデル。下段右の写真は、II型の特徴である艦首の3門の魚雷発射管。(底辺を上にしたような逆三角形配置なんだけど、ちょっと暗くてわかりにくいかな?)私がずいぶん以前に楽しんだUボートのPCゲームでは、II型の艦長からキャリアをスタートしました)

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from uboat.net

小改良を加えながらIIAからIIDまでの3タイプが建造され、同型艦は総数で60隻でした。大戦初期には北海、バルト海等、近海での作戦行動を行いましたが、大西洋等の遠洋に戦場が移ると作戦従事は困難で、主として訓練用と沿岸警備に用いられました。乗組員は25名でした。

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(U9:II型とU552:VIIC型の大きさの比較)

 

 

中型航洋潜水艦:通商破壊戦の主役。Uボートといえばコレ!

VII型(VIIA, VIIB, VIIC, VIIC/41、併せて同型艦734隻)

I型の紹介で触れたように、通商破壊戦の主戦力として大量に戦場に投入されることを想定して設計された艦級で、I型よりも少し小ぶりな500トン型(中型)と称して設計されました。

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(直上の写真: VII型の概観:51mm in 1:1250 by Mercator? 両舷にあるサドルタンクが大きな特徴です)

大まかにVIIA、VIIB、VIIC、VIIC後期型(VIIC/41)の4形式があり、VIIAは10隻、VIIBは24隻、VIIC前期型はさらに諸形式に分化しながらも626隻、VIIC後期型(VIIC/41)が74隻、それそれ就役しています。

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(直上の写真: VII型の艦橋のヴァリエーション。米国の参戦以降、連合国の航空機による通商路警戒が活発化するとUボートの兵装も対空兵装へと重点が移ってゆきます)

小差はもちろんありますが基本的な設計は同じで、艦首部に4基、艦尾部に1基の魚雷発射管を備え、魚雷を11本から14本搭載していました。乗組員は44名でうち4名が士官でした。圧壊震度は200mとされていましたが、VIIC後期型では耐圧殻を厚くしたことにより300mとなりました。

いずれも10ノットの巡航速度でVIIA型で6200海里、VIIB型で8700海里、VIIC型で8500海里のそれぞれの航続距離を持ち、大西洋での通商破壊戦の主役を務めました。

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(U47 VIIB型 1:350スケールモデル:初期のUボートエース プリーン大尉の乗艦でした。ブリーン大尉の率いる本艦は英海軍の根拠地スカパフロー に侵入し、戦艦「ロイヤル・オーク」を撃沈しています)

 

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(U552 VIIC型 1:350スケールモデル 197,460トンを沈め歴代三位の戦績を誇るエーリヒ・トップの乗艦でした)

 

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(U255 VIIC型 1:350スケールモデル 47,640トンの商船撃沈する戦果を上げています)

 

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(VII型の艦橋のヴァリエーション。特に大戦後期には対空火器が増備され、これら以外にも多彩なヴァリエーションが生まれました) 

 

VII型派生形:機雷敷設潜水艦

VIID型(同型艦6隻)

VIID型はVIIC型をベースに艦橋後方に機雷敷設のための機雷筒ブロックを挿入した機雷敷設潜水艦で、900トン級のやや大きな船体を持ち、魚雷発射管5基と魚雷12本の他に機雷15基を敷設する能力がありました。機雷敷設ブロックの挿入により船体が延長され、燃料搭載量が増えたため、11200海里という長大な航続距離を持っていました。

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(直上の写真: VIID型の概観:61mm in 1:1250 by Neptune: 下段右では艦橋後部の特徴である機雷射出筒がよくわかります)。

 

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(U214: VIID型の1:350スケールモデル。艦橋後部の機雷射出筒が、よりよくわかります)

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(上の二点の写真は、いずれもVIID型とVIIC型の1:1250スケールと1:350スケールでのそれぞれの艦型比較。いずれでもVIID型がVIIC型をベースに艦橋後部に機雷射出筒関連のブロックを挿入して設計されたことがよくわかります)

 

VII型派生形:補給潜水艦:ウルフパックへの補給係

VIIF型(同型艦4隻)

VIIF型はVIIC型をベースに予備魚雷搭載用のブロックを艦橋後方に挿入した魚雷補給用の潜水艦で、、1000トンの船体に、通常のVII型同様、魚雷発射管5基と魚雷14本を搭載した上に予備魚雷21本を搭載し、他のUボートに補給することができました。VIID型と同様に延長された船体により燃料搭載量が増え、14700海里の航続距離を持っていました。大戦後期にはその大きな航続距離と搭載能力を買われ、貨物の輸送任務にも活躍しました。

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(直上の写真: VII F型の概観:60mm in 1:1250 by Mercator?)

 

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(直上の写真: 通常のVII型とVIIF型の比較。VIIF型は通常のVII型の艦橋の後部に補給用魚雷の収納スペースを挿入した船体を持っていました)

 

大型航洋潜水艦:狩場を広げるぞ!

IX型(IXA, IXB, IXC, IXC/40、併せて同型艦 165隻)

IX型はより遠洋での通商破壊戦の展開を意図して設計された潜水艦で、1000トンを超える大きな船体を持ち、水上で18ノット、水中で7.7ノットの速力を発揮し、10ノットの巡航速度でそれぞれIXA型で10500海里、IXB型で12000海里、さらに改良が加えられIXC型で13450海里、IXC/40型で13800海里という長い航続距離を持っていました。

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(直上の写真: IXC型の概観:61mm in 1:1250 by Neptune: IXA,IXB,IXCはほぼ同型でした。VII型と同様に、砲兵装は対空火器に重点が移行してゆきます)

 

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(直上の写真: IXC/40型の概観:61mm in 1:1250 by Neptune) 

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(直上の写真: IXC/40型とIXC型の関係の比較。概観も違うのですが、時期によって砲兵装の配備重点が対空火器に移行してゆきました)

主要武装はいずれの形式もほぼ同等で、艦首部に4基、艦尾部に2基の魚雷発射管を装備し、予備魚雷を含め22本の魚雷を搭載していました。

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大型航洋潜水艦の完成形

IXD2型(同型艦29隻)

形式名としてはIX型を冠してはいますが、1600トンの大きな船体を持つ全く別形式の潜水艦です。通常の4基のディーゼルエンジンに加え、低速巡航用のディーゼルエンジンを2基搭載し、長距離作戦への適用をいとして設計された潜水艦です。水上では19.2ノットの高速を発揮し、10ノットの巡航速度で31500海里という長大な航続距離を誇っていました。

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(直上の写真: IXD2型の概観:69mm in 1:1250 by Neptune)

 

艦首部に4基、艦尾部に2基の魚雷発射管を備え、予備魚雷を含め24本の魚雷を搭載し、長期の作戦行動を行い南アフリカやインド洋まで進出しました。

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(直上の写真: IXD2型(奥)とIXC/40型(手前)の概観比較。同じIX型の形式表示ながら、全く異なる設計です)

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(U181 IXD2型 1:350スケールモデル 歴代二位の撃沈記録を持つヴォルフガンク・リュート大尉の乗艦。モザンビーク南アフリカに進出し活躍しました。リュートが少佐に進級し司令官として下船すると、インド洋に進出し活躍を続けました。ドイツ降伏後は日本軍が接収して、呂501号潜水艦となりました)

 

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(U181 IXD2型とU 47 VIIB型の大きさの比較)

 

IXD2型派生形:補給潜水艦

IXD1型 (同型艦2隻)

本来は20ノット超えの速力を持つ高速巡洋潜水艦を目指した設計でしたが、搭載したエンジンが期待の性能を発揮せず、主機をVIIC型と同型式として予備燃料を252トン搭載できる補給潜水艦に改造されました。

(ほぼ上掲のIXD2型と同型です)

 

大型機雷敷設潜水艦

X型(同型艦8隻)

1600トン級の船体を持ち、機雷筒30本を搭載した機雷敷設潜水艦です。魚雷発射管2基を艦尾に備え予備も含め15本の魚雷と66基の機雷を搭載していました。

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(直上の写真: X型の概観:70mm in 1:1250 by Mecator?)

 

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(直上の写真: X型の機雷筒の配置状況。写真上:艦首部の機雷筒、写真下:艦尾部に2列に並列配置された機雷筒)

大きな燃料タンクを持ち、10ノットの巡航速度で18450海里の航続距離を持っていましたが、このタンクの燃料は他の作戦展開中の潜水艦への給油にも広く使用され、「Uタンカー」と称されることもありました。

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大型補給潜水艦:「おーい、ミルヒ・クーが来たぜ!野菜、積んでる?」

XIV型(同型艦10隻)

最初から前線で展開する潜水艦への補給用潜水艦として設計されました。1600トンの大きな船体を持ち、補給用燃料432トン、食糧45トン、魚雷4本を搭載することができました。

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(no photo:残念ながら、模型を保有していません)

 

自艦の兵装としての魚雷発射管は搭載していませんでした。遠隔地で展開するUボートの活動に大きく貢献し、「ミルヒ・クー(乳牛)」の愛称で親しまれました。

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 水中高速攻撃型潜水艦:「可潜艦」から真の「潜水艦」へ

XXI型(同型艦118隻)

米国の参戦に伴い、有力な海軍航空機により空中からの船団護衛やレーダーの発達によって、VII型やIX型など従来型の水上航行を主たる移動手段とする潜水艦の活動は次第に困難になってゆきます。

こうして水中高速潜水艦の構想への要求は高まってゆきます。

一方、ドイツ海軍は非大気依存推進の研究を進め、高濃度過酸化水素を用いた推進機関(ヴァルター機関)の試作潜水艦を既に建造していました。

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(直上の写真: ヴァルター機関の実験艦として試作されたXVII型の概観:22mm in 1:1250 by Mercator? なのですが、この寸法は水上に露呈している部分だけの寸法なのでご注意を。同艦はヴァルター機関を搭載した水中高速艦であり、基本的にほとんどの行動を、現在の潜水艦同様に水中で行う前提で設計されていました。・・・・というか、現在の潜水艦のある意味ご先祖がこの船なのですが)

 

しかし実際の運用面でのヴァルター機関には、水中での低速航行が難しい、過酸化水素自体の取り扱いの難しさ、機関室を密閉せねばならず、過酸化水素の補給等を考えると限定的な運用しか想定できない(実際には従来型の主機の搭載も不可欠)、排出された二酸化炭素が気泡化し、探知されやすくなる、種々の等の課題が明らかになるにつれ、戦局に合わせた早急な実用化は困難という判断がされます。そして、次善の選択肢として、多数の蓄電池の搭載と新開発のモーターの組み合わせによる水中高速潜水艦建造へと、構想を転換しました。これがXXI型で、エレクトロ・ボートとも呼ばれ、従来の潜水艦の概念を覆す画期的なものでした。

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(直上の写真: XXI型の概観:61mm in 1:1250 by Mercator?)

 XXI型はシュノーケルも装備しており、その行動は原則水中で行われ、それまでの「潜水することも出来る」可潜艦とは一線を画する真の「潜水艦」の登場と言っても良いでしょう。

船体の設計は、実用化までの時間短縮のために既に準備されていたヴァルター機関搭載予定のXVIII型のものが使われました。

船体は水中での運行が基本となるために水中抵抗の排除に配慮された流線形を多用したものになり、1600トンの従来のUボートの概念から考えると大型のものとなりました。艦首部に6基の魚雷発射管を備え、23本の魚雷を搭載していました。水中で17.5ノットの速力を発揮することができ(従来型は7ノット程度)、水中5ノットの速度で365海里の航続距離がありました(VIIC/41 では4ノットで80海里)。乗組員は57名でした。

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建造方法にも徹底的なブロック形式での建造が取り組まれ、建造期間を6ヶ月に縮めるなどの量産が目指されました。しかし油圧系統の不具合などから最初の艦の実戦投入はドイツ降伏の前月の1945年4月で、戦局に寄与することはありませんでした。

この時期、既にドイツ海軍はホーミング魚雷を開発していましたので、実際に戦場に投入される機会があれば大きな威力を発揮したでしょうね。

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(直上の写真: XXI型(奥)と従来型航洋潜水艦(IXD型(中央)、VIIC型(手前)の艦型比較。XXI型ではいわゆる甲板的なスペースがほとんど考慮されていないことが良くわかります)

 

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(U2540 XXI型 1:350スケールモデル 敗戦時に自沈しましたが、その後浮揚されドイツ連邦海軍の「ヴィルヘルム・バウアー」として再就役しました。写真下段では、XXI型の各部の特徴をクローズアップしてみました。左:引き込み式の潜舵。中央:艦橋部。環境に組み込まれた対空砲とシュノーケル。右:推進器と潜舵・方向舵)

 

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(U2540  XXI型とU47 VIIB型の大きさと関係の比較)

 

戦後、賠償艦として連合国各国に譲渡され、その後の潜水艦設計の基礎となりました。

 

XXI型の派生形:斜め後方へ6社戦?12射線?船団、丸ごと面倒見ようじゃないか。

XXIB型・XXIC型(計画のみ)

XXI型は艦首部に魚雷発射管を6基搭載していましたが、ブロック建造であったため、バリエーションの設定が可能でした。例えば、前方の魚雷発射管室の後に斜め後方むけの魚雷発射管6基を搭載するブロックを挿入し後方向けの魚雷6射線を持たせる設計案がXXIB型として提出されています。

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(XXIB型の図面。艦首の発射管室の後方に、斜め後方向けに設置された魚雷発射管がわかります。グランドパワー別冊より)

さらにもう1組、斜め後方向けの魚雷発射管室のブロックを挿入し、斜め後方向けに12射線を持たせる案がXXIC型です。これらはいずれも建造されませんでした。

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(XXIC型の図面。斜め後方向けの魚雷発射管がもう1組追加されています。「世界の艦船」より)

XXI型の建造時期には、魚雷の次発装填装置も完成していましたので、短時間で最大36本の魚雷を発射することができました。

ホーミング魚雷と組み合わせれば、船団丸ごと撃破する、なんてことも可能だったかもしれません。

(no photo:残念ながらいずれも模型を保有していません)

 

XXI型の発展型:中型エレクトロ・ボート、VIIC型の後継。これが量産されていればなあ。究極のIF兵器かも?

XXX型(計画のみ)

XXX型はXXI型をやや小ぶりにした1100トン級の船体を持つ設計で、XXI型よりも取り扱い易い艦型でVIIC型の後継として検討されました。兵装の配置は前述のXXIB型に類似して、艦首部に前方向けの魚雷発射管を8基、その直後に斜め後方向けの魚雷発射管を4基の発射室ブロックを保有していました。

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(XXX型の図面。艦首に魚雷発射管8基が装備されています「世界の艦船」より)

 

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(直上の写真: XXX型の概観:44mm in 1:1250 by Mercator? このモデル、もう一つ小型のヴァルター機関搭載の量産型航洋潜水艦XXVI型のものかもしれません。航洋型のエレクトロ・ボートは蓄電池を大量に搭載する必要があるため、ここまで小型化はできなかったかも)

 

ブロック工法が安定し、XXX型が量産されていれば、と、妄想してしまいます。

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(直上の写真: XXI型とXXX型の二つのエレクトロ・ボート。もう少し早ければ・・・)

 

小型水中高速潜水艦:こっそり忍び寄って、侵攻作戦はこれで防げる(?) 

XXIII型(同型艦63隻)

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from boat.net

(no photo:残念ながら、模型を保有していません)

沿岸警備用の小型水中高速潜水艦として、XXI型とほぼ同じ構想で設計、建造された潜水艦です。230トンの小さな船体を持ち、水中で12.5ノットを発揮することができました。艦首部に魚雷発射管2基を装備し、予備魚雷は搭載していませんでした。ドイツの降伏までに63隻が完成しましたが、戦果を上げることはできませんでした。

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ということで、今回はここまで。

ああ、映画の話をしなかった。Uボートエースの話も・・・。

 

次回は、どうしましょうか。準備中は、英海軍巡洋艦、イタリア海軍巡洋艦、英海軍駆逐艦、米海軍駆逐艦・・・。

 

もし、「こんな企画できるか?」のようなアイディアがあれば、是非、お知らせください。

 

模型に関するご質問等は、いつでも大歓迎です。

特に「if艦」のアイディアなど、大歓迎です。作れるかどうかは保証しませんが。併せて「if艦」については、皆さんのストーリー案などお聞かせいただくと、もしかすると関連する艦船模型なども交えてご紹介できるかも。

もちろん本稿でとりあげた艦船模型以外のことでも、大歓迎です。

お気軽にお問い合わせ、修正情報、追加情報などお知らせください。

 

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